JP5328731B2 - プラズマ・エッチング中に帯電粒子からウェハを遮蔽する方法 - Google Patents

プラズマ・エッチング中に帯電粒子からウェハを遮蔽する方法 Download PDF

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Description

本発明は、一般に、マイクロ電子機器などの薄膜構造のプラズマ・エッチングに関する。より詳細には、本発明は、プラズマ・エッチング中に帯電粒子から基板を遮蔽(shielding)して、特定のプロセス条件の間の保護を実現する、またはエッチング異方性を調整
する方法に関する。
プラズマ・エッチングは、マイクロ電子機器およびマイクロ機械デバイスの製造で広く利用されている。プラズマ・エッチングを用いて、薄膜を除去する、薄膜のパターン形成をする、または微細加工構造体を形成する。プラズマ・エッチングでは、高周波電力を混合ガスに印加して、エッチング・プロセスを促進する帯電粒子を生成する。帯電していない反応性粒子も、材料除去の大部分をもたらすので、プラズマ・エッチング・プロセスでは重要である。
プラズマ・エッチングのほとんどの用途において、特定の材料に対する選択性をプラズマに持たせるようにプラズマ特性を制御することが重要である。また、異方的または等方的に材料を除去するようにプラズマを制御することも、それがエッチングした構造体の形状に大きな影響を与えることになるので、多くの場合に重要である可能性がある。これは、エッチングした側壁の形状がデバイスの電気的特性を決定する可能性があるマイクロ電子機器の製造において、きわめて重要である可能性がある。また、マイクロ機械デバイスの製造においても、エッチングの異方性によって最終のデバイス形状が決まる可能性があるので、プラズマ・エッチングの異方性/等方性は重要な要素である可能性がある。プラズマ・エッチング・プロセスの異方性/等方性を調整する方法が提供されれば、プラズマ・エッチングの技術分野の大きな進歩となるであろう。また、同一のエッチング・システムで同一のエッチング混合ガスを用いながら、高異方性と高等方性の間の切替えを行うことが可能であれば、これも1つの進歩になるであろう。このような能力があれば、新しい構造の作製が可能になり、マイクロ電子機器製造のスループットを向上させることもできるであろう。
プラズマ・エッチングに関するもう1つの問題は、プラズマ・エッチング・チャンバ壁面に薄膜が蓄積することである。薄膜は、プラズマ・エッチング中または堆積プロセス中にチャンバ壁面に堆積することが多い。例えば二酸化シリコンのプラズマ増強化学的気相堆積(PECVD)を行うと、対象ウェハから遠く離れたチャンバ表面上に堆積酸化物が形成されることがよくある。また、プラズマ・エッチング中には、チャンバ壁面にポリマー(高分子化合物)が堆積することもある。チャンバ表面上のこうした不要な薄膜により、チャンバの電磁気的特性(例えばインピーダンス)が変化し、それによりプラズマに与えられる高周波エネルギーの量が変化する恐れがある。これにより、プラズマ・エッチング特性が不安定になり、製造歩留まりが低下する恐れがある。
チャンバ特性の変化を防止し、安定したプラズマ・エッチング特性を維持するために、チャンバを定期的に洗浄し、堆積した薄膜を除去する(「シーズニング」と呼ばれるプロセス)。シーズニングでは、特殊なシーズニング混合ガスをチャンバに流入させる。シーズニング混合ガスの配合は、チャンバ壁面から膜を除去してチャンバを最初の状態に戻すように行われる。シーズニングを行う間は、シーズニング混合ガスがウェハ上の薄膜に損傷を与える恐れがあるので、通常はウェハを取り出しておく。例えば、チャンバに付着した不要な膜がウェハ上の膜と同じである可能性もあり、ウェハがシーズニングの作用を受けると、ウェハから薄膜も除去されてしまうことになる。
ただし、シーズニング中にウェハを取り出すと時間がかかるので、システムのスループットが低下することになる。また、ウェハを取り出してシーズニングを行うと、シーズニング用プラズマがチャックを損傷し得るので静電チャックに損傷を与える可能性がある。ウェハをチャンバ内に置いたままウェハに損傷を与えることなくチャンバのシーズニングを行う方法が提供されれば、プラズマ処理およびチャンバ・シーズニングの技術分野の進歩となるであろう。このような進歩により、製造スループットが向上し、プラズマ処理の制御性を向上させることができるであろう。
したがって、本発明は、プラズマ・エッチング・プロセスの等方性/異方性を調整または変更し、その状態で(in-situ)チャンバ・シーズニングを可能にする装置を提供する
。したがって、本発明は、プラズマ・システムの性能の向上やスループットの向上、歩留まりの向上など、数多くの利点を提供する。
したがって、本発明は、第1の態様では、プラズマ・エッチング装置であって、ウェハ・チャックと、ウェハ・チャックの上方のプラズマ用の空間(volume)と、ウェハ・チャック上に配置されたウェハの表面と平行な磁場を発生させる、ウェハ・チャック内の磁石とを含み、磁場が、プラズマからウェハに向かって移動する電子を反射するように、ウェハの近傍で最も強く、プラズマに向かって減少していく、プラズマ・エッチング装置を提供する。
好ましくは、ウェハに向かって移動するプラズマから生じた電子の50%超が、磁場によってウェハから遠ざかるように反射される。
好ましくは、磁石は、ウェハ・チャックの上方から見て時計回りの向きを有する円形の磁場を発生させる。
好ましくは、磁石は、ウェハ・チャックの上方から見て反時計回りの向きを有する円形の磁場を発生させる。
好ましくは、磁石は電磁石である。
好ましくは、磁石は永久磁石である。
好ましくは、磁場は直線状である。
好ましくは、磁場は、ウェハの位置で約5〜50ガウスの範囲の強度を有する。
好ましくは、磁場の強度は、ウェハからプラズマ用空間に至るまでに少なくとも約75%低下する。
好ましくは、磁場は、ウェハに向かってZ方向に移動する2eV以下のエネルギーを有する電子を反射する。
好ましくは、磁場は、ウェハに向かってZ方向に移動する10eV以下のエネルギーを有する電子を反射する。
第2の態様では、本発明は、プラズマ中の帯電粒子からウェハを遮蔽する方法であって、ウェハの上方でプラズマを発生させるステップと、ウェハとプラズマの間で磁場を発生させるステップとを含み、磁場がウェハと平行であり、磁場がプラズマからウェハに向かって移動する電子を反射するように、磁場の強度がウェハ上方の距離とともに減少する、方法を提供する。
好ましくは、ウェハに向かって移動するプラズマから生じた電子の50%超が、磁場によってウェハから遠ざかるように反射される。
好ましくは、プラズマの化学的性質(chemistry)は、ウェハを帯電粒子から遮蔽する
ことによりエッチング・プロセスの等方性が向上するように選択される。
好ましくは、磁場は、ウェハに向かってZ方向に移動する2eV以下のエネルギーを有する電子を反射する。
好ましくは、プラズマの化学的性質は、プラズマがチャンバのシーズニングを行うように選択される。
好ましくは、磁場は、ウェハに向かってZ方向に移動する10eV以下のエネルギーを有する電子を反射する。
好ましくは、磁場は、ウェハに向かってZ方向に移動する4eV以下のエネルギーを有する電子を反射する。
第3の態様では、本発明は、ウェハを原位置のままにしてチャンバのシーズニングを行う方法であって、ウェハの上方にチャンバ・シーズニング・プラズマを発生させるステップと、ウェハとシーズニング・プラズマの間に磁場を発生させるステップとを含み、磁場がウェハと平行であり、磁場の強度がウェハ上方の距離とともに低下し、磁場が、ウェハに向かってZ方向に移動する100eV以下のエネルギーを有する電子を反射する、方法を提供する。
したがって、好ましくは、本発明は、ウェハ・チャックと、ウェハ・チャックの上方のプラズマ用の空間とを有するプラズマ・エッチング装置を含む。ウェハ・チャック上のウェハと平行な磁場を発生させる磁石は、ウェハ・チャック内に位置決めされる。磁場の強度は、ウェハの近傍で最も強く、ウェハ上方の距離とともに減少し、ウェハに向かって移動するプラズマから生じた電子が磁場によってウェハから遠ざかるように反射されるようになっている。
磁場は、ウェハ・チャックの上方から見て丸形(例えば円形)にすることができる。この場合には、磁場は、時計回りの向き(好ましい)に配向することも、反時計回りの向きに配向することもできる。磁石は、電磁石でも永久磁石でもよい。磁場は、直線状にすることもできる。
一実施形態では、磁場の強度は、ウェハからプラズマ空間に至るまでに少なくとも75%低下する。これは、磁場による過度のプラズマの封じ込めまたは高密度化は本発明では望ましくないので、プラズマが磁場によって過度に封じ込めまたは高密度化されないようにするためである。磁場は、ウェハに向かってZ方向に移動する20eV以下のエネルギーを有する電子を反射するように設計することができる。エッチングに使用される通常のプラズマでは、ほとんどの電子は20eV未満のエネルギーを有することになる。
本発明は、プラズマ中で発生した帯電粒子からウェハを遮蔽する方法を含むことが好ましい。本発明の方法は、ウェハの上方でプラズマを発生させるステップと、ウェハとプラズマの間で磁場を発生させるステップとを含む。磁場はウェハと平行であり、磁場の強度は、ウェハに向かって移動するプラズマから生じた電子が磁場によってウェハから遠ざかるように反射されるように、ウェハ上方の距離とともに低下する。
プラズマの化学的性質は、帯電粒子からウェハを遮蔽することによってエッチング・プロセスの等方性が向上するように選択することができる。磁場は、ウェハに向かって移動する20eV以下のエネルギーを有する電子を反射するように設計することができる。
また、プラズマの化学的性質は、プラズマがチャンバのシーズニングを行うように選択することもできる。この場合には、磁場は、シーズニング・プロセス中にウェハが損傷しないように遮蔽する。磁場は、100eV以下のエネルギーを有するプラズマから生じた電子を反射するように設計することができる。
さらに、本発明は、ウェハの上方にチャンバ・シーズニング・プラズマを発生させるステップと、ウェハとシーズニング・プラズマの間に磁場を発生させるステップとを含む、チャンバをシーズニングする方法も含むことができる。磁場はウェハと平行であり、磁場の強度は、ウェハ上方の距離とともに低下する。磁場は、ウェハに向かって移動する100eV以下のエネルギーを有する電子を反射する。
本発明は、帯電粒子からウェハを遮蔽することができるプラズマ・エッチング・システムを提供する。プラズマ・エッチング・システムは、その内部に磁石を備えたウェハ・チャックを有する。この磁石は、ウェハ表面と平行な磁場を発生させる。磁場は、ウェハに向かって進むプラズマ電子を反射する。磁場の強度を変化させることにより、ウェハに入射する帯電粒子の数を制御することができる。磁場は、プラズマ・エッチング・プロセスの異方性/等方性を調整することができ、またチャンバ・シーズニング中にウェハが損傷することを防止することができる。実際に、特定のプラズマ・エッチングの化学作用と高磁場とを組み合わせて、エッチングをほぼ完全に等方性にすることができる。シーズニング中には、磁場が帯電粒子を遮断し、これによりシーズニング用プラズマがウェハに損傷を与えることをほぼ完全に防止することができる。
図1は、チャンバ20内のウェハ・チャック22と、チャック22上のウェハ24と、プラズマを発生させるプラズマ空間26とを有する本発明の実施形態を示す側面図である。電極28は、ウェハの上方に配置することができる。空隙間隔30は、ウェハと電極28の間の間隔である。ウェハ・チャック22内に、電流が環状に流れる構成の電磁石32が配置される。電磁石32内の電流の向きは、矢印で示してある。電磁石が生み出す磁場34は、ウェハ24の上方に位置する。ウェハの上方から見た磁場は円形であり、A記号は紙面の奥に向かう磁場を指し、O記号は紙面から出てくる向きの磁場を指す。図1には、本発明を説明するための基準座標系29も示してある。Z方向はウェハに対して垂直な方向である。
チャンバ20は、プラズマ処理器で使用されるタイプの従来の真空チャンバでよい。当技術分野で既知のように、チャンバ20の壁面は、プラズマを励起するための電極としての役割を果たすことができる。
ウェハ・チャックは、当技術分野で既知の従来の静電ウェハ・チャックでよい。その他の種類のウェハ・チャックを使用することもできる。
空隙間隔30は、プラズマ・エッチング・システムでよく用いられる、約1〜20cmの範囲内にすることができる。
電磁石32は、セラミック磁石や希土類磁石などの永久磁石で置き換えることができる。磁石32は、磁場をより均一にするための磁極片(図示せず)を含むことができる。永久磁石を使用する場合、図1に示す実施形態の場合と同様に円形の磁場が形成されるように永久磁石をリング型にすることができる。また、永久磁石を使用する場合には、可変リラクタンス磁気回路を形成して、ウェハ上方の磁場の強度を制御することができる。電磁石を使用する場合には、磁場強度は、電流を変化させることによって調節することができる。
この装置に加えることができるその他の要素(図示せず)としては、プラズマを励起するための高周波エネルギー発生器、RF発生器をプラズマに結合するためのインピーダンス整合ネットワーク、チャンバを排気するための真空ポンプ、プラズマとチャンバ壁面の接触を防止する外部磁石がある。
磁場34はウェハ表面で最も強く、その強度はZ方向に急激に低下する。磁場は、空隙間隔30の約1/4の距離だけウェハより高い位置で約75%低下している、あるいはウェハとプラズマ空間26の間の位置で約75%低下している可能性がある。磁場は、均一である(例えば、ウェハ表面のX−Y平面内で10%以内の均一さである)ことが好ましい。磁場の強度は、例えば、ウェハ表面において約5〜50ガウスにすることができる。磁場は、ウェハと平行であることが好ましい(例えば傾斜は約20度まで)が、縁部におけるウェハに対する角度はこれより大きくてもよい。
図2は、ウェハ2の上面図である。円形磁場34をはっきりと見ることができる。また、電磁石32の巻線も、電流の向きとともに示してある。電磁石の上部の電流は、中心から外に向かって流れる。点線36は、図1の切断面を示す。円形の磁場を示しているが、最も一般的には、磁場は、上から見て長円形など丸い形状を有する。
図3は、動作中の本発明を示す拡大図である。励起状態のプラズマにさらされると、磁場34は、プラズマ電子に対する「磁気ミラー」として作用する。また、程度は弱いが、プラズマ・イオンに対しても「磁気ミラー」として作用する。電子e−は、ウェハに接近するとローレンツ力を受ける。ローレンツ力は、力=QV×Bで定義される。ここで、Qは帯電粒子の電荷(例えば電子の電荷)、Vは速度、Bは磁場強度、×はベクトル外積である。図2および図3に示すように磁場の向きが時計回りである場合には、電子は図3に示すようにウェハの縁部に向かって偏向されることになる。磁場強度が十分であれば、最大のエネルギーを有する電子以外のすべての電子はウェハ表面に到達することができなくなる。ただし、イオン(図示せず)は、電子より質量が大きいので、より容易に磁場34を通り抜ける。その結果として、ウェハ24およびチャック22は、(数回のRFサイクルの間に)正に帯電することになる。その後、正に帯電したウェハは、イオンを反発する。こうした現象の結果として、磁場34が印加されている間にすべての帯電粒子(電子およびイオン)がウェハ表面に衝突することが防止される。
図4は、本発明の代替実施形態を示す図である。この実施形態では、電磁石32内の電流が図3に示す実施形態とは反対向きになっている。この場合、上から見た磁場の向きは、反時計回りになる。ウェハ24に向かって進む電子は、ウェハ24の中心に向くローレンツ力によって偏向され、それによりウェハ表面に衝突することが防止される。この場合も、イオンによりウェハ24上に正電荷が生じ、これが最終的に、イオンがウェハ24に衝突することを防止する。したがって、図3および図4に示す実施形態はともに、帯電粒子がウェハ表面に衝突することを防止するように作用する。
ただし、図3および図4に示す実施形態には重要な相違点がある。図3に示す実施形態の場合のように電子をウェハの縁部に向けると、それにより生じるプラズマの変動(perturbation)(例えばプラズマの化学的性質およびエッチング特性の変化)は小さくなる傾向がある。これは、電子がプラズマから離れてチャンバ壁面に向かうように偏向されるからである。これに対して、図4の場合のように電子を中心に向けると、磁場を印加したときにそれにより生じるプラズマの変動は大きくなる傾向がある。プラズマの変動は、プラズマ・エッチングの特性を変化させる恐れがあるので、通常は回避することが最良である。プラズマ変動の範囲は、チャンバ20の形状によってある程度決まることに留意されたい。チャンバが非常に幅広である(すなわちウェハの大きさに比べてX方向およびY方向に大きい)場合には、図4の実施形態でも生じるプラズマ変動が小さくなることがある。これは、電子が、遠く離れたチャンバ壁面より、チャンバ20の上部または電極28に向かって進まざるを得ないからである。逆に、チャンバが狭い場合(ほとんどのプラズマ処理器の場合)には、電子をウェハの縁部に向けると電子が側壁に向かうので、電子をウェハの縁部に向けることが最良である。これらの理由から、一般には、磁場の向きは上から見て時計回りであることが好ましい。
図5および図6は、本発明の別の実施形態を示す図である。この実施形態では、磁場34は直線状であり、ウェハ24の表面と平行である。図5は、ウェハ24および磁場34の平面図である。磁場34は、直線状であり、ウェハ表面と平行であり、ウェハ表面全体にわたって約10%程度の均一さである。図6は、動作中の図5のデバイスを示す図である。プラズマ電子e−は、ローレンツ力によってウェハ24の片側に向かって偏向される。図5および図6に示す磁場34は、図2、図3および図4に示す実施形態と非常によく似た態様で帯電粒子に対する磁気ミラーとして作用する。ただし、図5および図6に示す磁場に必要な電磁石は、作製がより困難である可能性がある。したがって、一般に図2、図3および図4に示す実施形態と比較すれば好ましいとは言えないが、図5および図6に示す実施形態も本発明の機能を実施することができ、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
本発明では、磁場34がウェハ24の付近で最も強くなり、その強度がZ方向に低下するように勾配を有することが重要である。この勾配は、ローレンツ力によって大部分のプラズマ電子e−をウェハ24から逸らす程度に大きくなければならない。ローレンツ力によってすべての電子を偏向する必要はない(あるいはすべての電子を偏向することができるとは限らない)ことに留意されたい。磁場34を通り抜けてウェハ24に衝突する電子e−の数は、プラズマ中の電子のエネルギー分布と、磁場の強度および勾配と、磁場の均一度とによって決まる。
また、プラズマが磁場34内に捕捉されないように、磁場34とプラズマ空間とを分離しておかなければならない。プラズマが磁場34内に捕捉されると、ウェハに向かう帯電粒子束(flux)が大幅に増大する。磁場は、プラズマ中の帯電粒子からウェハを遮蔽する働きをするように、ウェハとプラズマの間に位置していなければならない。本発明の磁場34は、ウェハに向かう帯電粒子束が磁場のない状態よりも減少するように設計することが必要である。
磁場と電子の相互作用の特性は、ウェハ表面に接近する電子の旋回半径(gyroradius)に基づいている。磁場34中を移動する電子は、ローレンツ力によって円形の経路を描いて進むことになる。本発明では、磁場34は、磁場内のプラズマ電子の旋回半径より大きな厚さを有していなければならない。十分な厚さがあれば、大部分の電子がウェハ表面から逸らされることが保障される。磁場中の電子の旋回半径の計算は当技術分野で周知である。ただし、具体例として、プラズマ・エッチングに使用されるプラズマ内の大部分の電子は、20eV未満のエネルギーを有することに留意されたい。磁場34が約13.7ガウスの強度を有する場合には、20eVの電子は約1cmの旋回半径を有することになる。したがって、おおよそこの程度の強度および厚さを有する磁場34を使用すれば、磁気ミラー効果をもたらすことができる。ただし、磁場34はZ方向の不均一性が非常に高く、したがって電子がウェハ表面に接近する、またはウェハ表面から離れるときに、旋回半径が劇的に変化することを理解されたい。
中性(気相)化学種は、磁場34によって遮断されないことに留意されたい。したがって、一般に、磁場34が変化しても中世粒子束は変化しないままである。ただし、磁場によってプラズマの化学的性質またはプラズマのその他の特性が変化した場合には、中性化学種束が変化することもある。中性粒子束は、本発明の用途によって、望ましいことも望ましくないこともある。中性束の効果は用途に固有のものであり、ガスの化学的性質によって決まる。これについて、以下で、本発明の特定の用途ごとに説明する。
本発明には数多くの用途があるが、特に重要な2つの用途は、(1)エッチングの異方性/等方性および化学的選択性の現場(in-situ)制御を実現すること、ならびに(2)
チャンバ・シーズニング中の原位置ウェハ保護を実現することである。
現況技術では、多くの場合、等方性エッチングを行うのに、ウェハ24をプラズマ・エッチング・システムから取り出して、等方性エッチングを行うために特に設計したツール内に配置する必要がある。例えば、等方性エッチングは、ウェット化学エッチングにより、または離れて位置するプラズマ中で発生させた中性化学種にウェハをさらすダウンストリーム(downstream)化学エッチング(CDE)ツールにより、実施することができる。これらの等方性エッチング技術は、ウェハの取扱いを増やす必要があるので、製造スループットが低下する傾向がある。
帯電粒子は、物理的過程(例えば衝突やスパッタリング)によってウェハから材料を除去することができるので、帯電粒子を用いたプラズマ・エッチングは、異方性であり、化学的に非選択的であることが非常に多い。このことは、材料の選択性があること、またはエッチングが等方性であることが望ましいいくつかのプロセス・ステップで望ましくない可能性がある。
本発明の1つの重要な用途では、磁場34は、通常は異方性となるエッチング・プロセスの等方性を高めること、および化学的選択性を高めることを可能にする。具体的には、磁場は、ウェハ24を帯電粒子から遮蔽するが、中性化学種はウェハ24に衝突することができる。中性化学種束は、プラズマの変動が小さいことにより、比較的磁場34の影響を受けない。プラズマから生じた中性化学種は、一般に化学的過程によってエッチングを行うので、磁場34を印加したときには、エッチングの等方性および材料選択性は高くなる。
磁場の強度を調節して、異方性と等方性のバランス、および材料選択性と材料非選択性のバランスを、エッチング・プロセス中に調整する、または変化させることができる。あるいは、磁場の切替えを行って、エッチング・プロセスを高異方性と高等方性の間で切り替えることもできる。エッチング異方性および材料選択性を時間変化させると、複数種類のエッチングを行うために複数のエッチング・ツールの間でウェハを移動させる必要がなくなるので、従来にない側壁の形状を実現することができ、製品スループットを向上させることができる。一般に、実質的な等方性を実現するには、磁場は、少なくとも約50%の電子を反射しなければならない。
磁場が強すぎると、プラズマが圧縮され、ウェハから離れすぎた位置に押し出されて、中性化学種の解離の増大など、プラズマの化学的性質に望ましくない変化を生じることもあることに留意されたい。このため、プラズマ・エッチング・ツールは、プラズマに悪影響を及ぼすほど磁場を強くしなくても望ましい等方性レベルが得られるように設計しなければならない。
磁場34がプラズマ・エッチングの等方性の増大をもたらすためには、プラズマに用いる混合ガスが特定の特性を有していなければならない。例えば、プラズマの化学的性質は、プラズマ内の中性化学種が除去対象のウェハ材料に対して化学的に作用するように、選択しなければならない。このような反応性混合ガスに共通する特徴は、強い帯電粒子束と組み合わせたときに、かなりのエッチング異方性を有することである。したがって、本発明は、これまでは異方性エッチングしか行うことができなかったような場合でも等方性エッチングを可能にする技術を提供する。これにより、マイクロマスキング(micromasking)およびそれに類する欠陥を除去することが可能になる。
本発明の等方性エッチング技術の別の利点は、従来の等方性エッチングにおける望ましくない効果が回避されることである。例えば、等方性エッチング化学作用(chemistry)
は、横方向と縦方向のエッチングを同じ速度で行う。異方性エッチング・ステップと等方性エッチング・ステップとを切り替えることにより、等方性エッチング中の横方向成分を低下させる側壁パッシベーション層を堆積させることができる。
本発明の等方性エッチング方法では、中性化学種束が磁場の影響を受けないことが好ましい。例えば、中性化学種束は、異方性エッチングと等方性エッチングの間の調整を行うために磁場を変化させても、約10%以内の一定性を保たなければならない。中性化学種束を一定に保つと、プラズマ・エッチング・プロセスの制御性および予測性が向上する傾向がある。磁場が気相状態のプラズマを大きく変動させないように意図されているので、中性化学種束は、ほぼ磁場の影響を受けない。したがって、反応性中性物質の生成はほぼ一定のままとなり、ウェハに向かう反応性中性物質束もほぼ一定のままとなる。
また、エッチング・プロセスの異方性および化学的選択性を制御するときには、磁場は均一でなければならないことにも留意されたい。エッチング特性が不均一であると、欠陥のある製品となる可能性がある。例えば、磁場強度は、約5〜10%以内の均一性を有することができる。
帯電粒子が存在しない状態で等方性を高めたプラズマの化学的作用は、通常は、気相からの低いポリマー堆積を有する。本発明の等方性/異方性制御の態様で用いることができるプラズマの化学物質の例としては、Cl2+HBr、N2+O2+CO+CO2、NF3、HCl、BCl3がある。
上述のように、チャンバ壁面に堆積する望ましくない材料膜を除去するために、定期的にチャンバのシーズニングを行う必要がある。このような望ましくない膜は、プラズマ・エッチング・プロセスを変化させ、欠陥のある製品を生じる可能性がある。シーズニング中には、損傷を避けるために通常はチャンバからウェハを取り出さなければならないので、シーズニングは、製造スループット面での犠牲が大きい。同様に、シーズニングは、損傷を受けやすい静電チャック材料に損傷を与えることによってプロセス・コストを増大させる可能性もある。
シーズニングに用いられるプラズマの化学的性質は、通常は、チャンバ壁面から膜を除去するための帯電粒子に依拠している。また、チャンバ・シーズニングで用いられる電力のレベルは、通常は、プラズマ・エッチングで用いられる電力レベルより高い。したがって、通常は、チャンバ・シーズニング中の方が、帯電粒子のエネルギーが高く、より強い磁場がウェハを遮蔽するために必要となる。
本発明では、ほぼすべての帯電粒子がウェハから遮蔽されるように強い磁場を用いてシーズニングを実施する。本発明のシーズニング方法では、帯電粒子を遮断するために磁場の均一性は必要ないので、磁場を均一にする必要はないシーズニング中には、磁場は、できる限り多くの帯電粒子からウェハを遮蔽しなければならない。約90または95%の電子が、シーズニング中に磁場によって反射されることが好ましい。磁場が弱すぎると、ウェハが損傷する可能性がある。通常、シーズニング中に帯電粒子からウェハを遮蔽するためには、磁場は約20〜1000ガウスの強度を有していればよい。
本発明によるシーズニング方法では、チャンバ壁面に向かう電荷束が磁場の印加の影響を比較的受けないことが望ましい。例えば、磁場が印加されたときのチャンバ壁面に向かう電荷束の変化は、約10%未満であるものとする。
本発明のシーズニング方法を用いると、シーズニング中にウェハをプラズマ・エッチング・チャンバ内に残しておくことができ、これにより時間のかかるウェハ取扱いの必要性を低下させることができる。その結果として、製造スループットを向上させ、ウェハの製造コストを削減することができる。
本発明の現場シーズニングの態様と組み合わせて用いることができる、チャンバ・シーズニングに通常用いられるプラズマの化学物質としては、O2、CO、C2F6、CF4、NF3およびSF6などがある。中性物質は、現場シーズニング中も依然としてウェハをある程度エッチングするが、帯電粒子の照射がない状態では、エッチング程度は大幅に低下することになる。
本発明の範囲を逸脱することなく、様々な形で上記実施形態を修正することができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその法的均等物によって決定されるものとする。
本発明の横断面図である。 ウェハの周りの円形磁場を示す、図1の実施形態の平面図である。 プラズマ電子の軌道を示す、動作中に時計回りの磁場を有する実施形態の断 面図である。 プラズマ電子の軌道を示す、動作中に反時計回りの磁場を有する実施形態の 断面図である。 直線磁場を有する実施形態の平面図である。 直線磁場を有する実施形態の断面図である。

Claims (5)

  1. プラズマ中の帯電粒子からウェハを遮蔽する方法であって、
    a)前記ウェハの上方でプラズマを発生させるステップと、
    b)前記ウェハとプラズマの間で直線状の磁場を発生させるステップとを含み、
    前記磁場が前記ウェハと平行であり、前記磁場がプラズマからウェハに向かって移動する電子を反射するように、前記磁場の強度がウェハ上方の距離とともに減少し、
    ウェハに向かって移動するプラズマから生じた電子の50%超が、前記磁場によってウェハから遠ざかるように反射され
    前記プラズマの化学物質が、ウェハを帯電粒子から遮蔽することによりエッチング・プロセスの等方性が向上するように選択される、方法。
  2. 前記プラズマの化学物質が、Cl2+HBr、N2+O2+CO+CO2、NF3、HCl、或いは、BCl3である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記磁場が、ウェハに向かってZ方向に移動する10eV以下のエネルギーを有する電子を反射する、請求項1に記載の方法
  4. 前記磁場が、ウェハに向かってZ方向に移動する4eV以下のエネルギーを有する電
    子を反射する、請求項1に記載の方法
  5. 前記磁場が、ウェハに向かってZ方向に移動する2eV以下のエネルギーを有する電子を反射する、請求項に記載の方法。
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