JP3827758B2 - 薄膜作製方法及び薄膜作製装置 - Google Patents

薄膜作製方法及び薄膜作製装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
減圧状態で、スパッタリング現象を利用して薄膜作製を行う分野において、特にイオンによる被成膜面のスパッタダメージと初期スパッタでのダメージを減少させる薄膜作製方法およびその薄膜作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリング現象を利用する薄膜作製方法としては、ターゲットに直流電圧を印加するDCスパッタリング法、ターゲットに交流電圧を印加するRFスパッタリング法があり、また、主に不活性ガスによるスパッタ以外に、他のガスも添加しながらスパッタリングを行い、ターゲット材料とその添加ガスとの反応を利用する反応性スパッタリングや、ターゲットのスパッタ効率を向上させるために磁場によってスパッタをするイオンをエロージョン領域に閉じ込めてスパッタを行うマグネトロンスパッタリングなどがある。無論、それぞれを組み合わせたスパッタ方法、たとえばRFマグネトロン反応スパッタリング法などもある。
【0003】
スパッタリング現象を利用した薄膜作製方法は、半導体分野で特によく利用されている。半導体分野の中でも、結晶シリコンを利用した半導体分野以外にも、最近では絶縁性表面に薄膜半導体を形成することで完成する薄膜トランジスタ、いわゆるTFTの分野や、液晶ディスプレイの透明電極を形成する分野など、幅広い分野で利用されている。
【0004】
スパッタリング現象を利用した成膜方法(以下スパッタ法という)では、ターゲットに電界によって加速させたアルゴンイオンなどを衝突させ、それによって、ターゲットから材料の分子原子が飛び出し、ターゲットに対向して離間している基板の表面にその原子分子が到達し、そこで膜を形成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
スパッタリングによって飛び出したターゲット材料の原子や分子は、アルゴンなどをイオン化するためのプラズマ空間を通過した後に基板へ到達する。例えば、アルゴンの平均自由行程は、絶対温度293Kで、圧力1Paのときに約6.8mmである。スパッタ時の圧力は大体0.1Pa程度であるので、平均自由行程は温度がある程度高いとしても10cm以下である。また、アルゴン以外であっても平均自由行程は大きくは変わらない。そのために、ターゲットから飛び出した原子や分子も、プラズマ空間を通過するときにその何割かは、イオン化されてしまう。
イオン化されたターゲット材料から飛び出した原子や分子と、アルゴンイオンの何割かは、被膜形成面に達する。そのイオンによるダメージが、特に半導体や薄膜半導体を形成するうえで、大きな問題を引き起こす。
【0006】
半導体分野では、絶縁膜上に金属配線を行い、その上にさらに絶縁膜を形成してその絶縁膜を平坦化して、さらに金属配線を行う多層配線技術が行われている。その金属配線用の金属膜の成膜にスパッタ法が用いられている。
金属配線の下には、絶縁膜があり、被膜形成面まで達したイオン化されたターゲット材料から飛び出した原子や分子と、アルゴンイオンとはその電荷を絶縁膜上で急激に放電して、いわゆる静電破壊に似た現象を引き起こす。
【0007】
また、薄膜半導体装置を形成する場合には、基板自体が絶縁性が高いために、結晶半導体の場合よりも問題は深刻である。薄膜半導体を利用した薄膜半導体装置のうちでも、結晶半導体のMOSトランジスタに似ている薄膜トランジスタいわゆるTFTの中でも、トップゲート型のトランジスタの場合には、チャネルを形成する薄膜半導体層、ゲート絶縁膜を形成する絶縁層をそれぞれ形成したのちに、最後にゲート電極としての金属層を形成する。その最後の金属層を形成するにはスパッタ法を用いることが多い。
そのために、被膜形成面まで達したイオン化されたターゲット材料から飛び出した原子や分子と、アルゴンイオンはゲート絶縁膜の静電破壊にとどまらず、基板自体が絶縁体であるがゆえに、基板上のあらゆるところでのイオンダメージを引き起こしやすい。
【0008】
被膜形成面まで達したイオン化されたターゲット材料から飛び出した原子や分子と、アルゴンイオンのダメージの他に、イオン化していない中性のターゲット材料から飛び出した原子や分子の中でも問題になるものがある。
スパッタ収量の計算によると、例えばアルゴンイオン1個を300eVでアルミニウムのターゲットに衝突させた場合、1.24アルミニウム原子が飛び出すことになる。スパッタによる成膜速度を上昇させて生産性を向上させようとすると、このスパッタ収量をできるだけ大きくする必要がある。
【0009】
スパッタ収量を大きくするためには、ターゲットに印加する電力を大きくする必要がある。ターゲットに印加する電圧を高くすると、ターゲットをスパッタするアルゴンイオンの加速は大きくなり、必然的に大きなエネルギーでターゲットをスパッタするために、それによって飛び出すターゲット材料の原子や分子も大きなエネルギーをもって飛び出し、イオン化されないとしても大きなエネルギーをもったまま被膜形成面に衝突する。
【0010】
イオンが被膜形成面に衝突した場合には、そのイオンの持つ電荷によるイオンダメージが強いが、中性で大きなエネルギーをもったターゲット材料から飛び出した原子や分子は、被膜形成面の下の膜中にある深さで侵入してしてしまう。
それによって、例えば、トップゲート型のTFTのゲート電極材料をスパッタ法によって形成する場合などは、その電極材料がゲート絶縁膜中に侵入してしまうことすら発生する。
TFTを液晶に利用する場合などは、画素を制御するためのスイッチとしてのTFTなどは100万個程度あるが、ゲート絶縁膜中に金属材料がバラバラに侵入してしまうと、しきい値がずれ、信頼性にも大きな悪影響をおよぼしてしまう。ましてや、TFTを利用してドライバー回路やアンプなどを形成する場合は、しきい値がずれることは致命的である。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を解消して、半導体分野において、スパッタ法によって成膜を行う場合に、その被膜形成面ならびにその下側の膜の状況、あるいは、基板の材質によって、スパッタ法で発生するスパッタガスのイオンや、ターゲット材料から飛び出した原子や分子のイオン化したものによるイオンダメージを減少すること、さらに、イオン化されてはいないが大きなエネルギーを持って、被膜形成面に到達する中性のターゲット材料から飛び出した原子や分子による衝突ダメージを減少することにある。
即ち、イオンによるダメージと、高エネルギーの中性原子分子によるダメージとを減少することが可能な薄膜作製方法と、それを実現するための薄膜作製装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成の一つは、
スパッタ法によって、基板に薄膜を作製する方法において、
ターゲットに対向している前記基板には薄膜を作製する面の裏側方向に、反射磁界発生装置を備え、
該反射磁界発生装置により、前記薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界と同じ向きの閉じられたループ磁界を前記薄膜を作製する面とほぼ平行な面で発生させながら、薄膜を作製することを特徴とする薄膜作製方法である。
【0013】
本発明の他の構成は、
スパッタ法によって、基板に薄膜を作製する方法において、
ターゲットに対向している前記基板には薄膜を作製する面の裏側方向に、反射磁界発生装置を備え、
該反射磁界発生装置により、前記薄膜を作製する面に到達するイオンを減少させるような閉じられたループ磁界を前記薄膜を作製する面とほぼ平行な面で発生させながら、薄膜を作製することを特徴とする薄膜作製方法である。
【0014】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製方法において、前記反射磁界発生装置には、永久磁石のN極とS極が交互にループ状にほぼ同一平面に並んで固定され、前記ループ状にほぼ沿うような磁界のみが発生するように、磁気シールドを前記ループ状に沿わない磁界を遮断するように設けてあることを特徴とする薄膜作製方法である。
【0015】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製方法において、 永久磁石として、希土類コバルト、Alnico5、タングステン鋼、炭素鋼、KS鋼、OP磁石、Ferroxdure2、のいずれかを用いることを特徴とする薄膜作製方法である。
【0016】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製方法において、永久磁石として、U字磁石あるいは棒磁石を用いることを特徴とする薄膜作製方法である。
【0017】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製方法において、前記磁気シールドの高さが前記永久磁石の高さより高いことを特徴とする薄膜作製方法である。
【0018】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製方法において、 前記反射磁界発生装置において、コイルをほぼ閉じられたループを形成するように巻き、前記コイルに電流を流すことにより、前記ループ状にほぼ沿うような磁界を発生させることを特徴とする薄膜作製方法である。
【0019】
本発明の他の構成としては、
上記薄膜作製方法において、前記反射磁界発生装置において、基板の薄膜を作製する面とほぼ垂直な方向に電流を流すことにより、閉じられたループ磁界を前記基板を作製する面とほぼ平行に発生させることを特徴とする薄膜作製方法。
【0020】
本発明の他の構成としては、
上記薄膜作製方法において、反射磁界発生装置において、基板の薄膜を作製する面とほぼ平行な1組の平面電極の間で直流放電をさせることにより、閉じられたループ磁界を前記基板を作製する面とほぼ平行に発生させることを特徴とした薄膜作製方法である。
【0021】
本発明の他の構成は、
スパッタ法によって、基板に薄膜を成膜する方法において、
成膜の初期とその後とを比較して、初期の段階のスパッタ収量のほうが小さくなるように成膜することを特徴とする薄膜作製方法。
【0022】
本発明の他の構成は、
トップゲート型薄膜トランジスタの作製工程において、
ゲート絶縁膜上にゲート電極をスパッタ法によって成膜する場合に、成膜の初期とその後とを比較して、初期の段階でのスパッタ収量のほうが小さくなるように成膜することを特徴とする薄膜作製方法。
【0023】
本発明の他の構成は、
前記薄膜作製方法において、カソード投入電力を一定にた状態で、成膜の初期とその後とを比較して、初期の段階のカソード電圧のほうが小さくなるように、スパッタ収量の制御を行うことを特徴とする薄膜作製方法。
【0024】
本発明の他の構成は、
前記薄膜作製方法において、カソード投入電力を、成膜の初期がその後と比較して、初期の段階のほうが小さくなるように、スパッタ収量の制御を行うことを特徴とする薄膜作製方法。
【0025】
本発明の他の構成は、
前記薄膜作製方法において、スパッタ収量が小さくなるように成膜する初期の段階は、成膜された薄膜の膜厚が100〜1000Åの範囲であることを特徴とする薄膜作製方法。
【0026】
本発明の他の構成は、
薄膜作製用スパッタ装置において、被膜成膜用基板を所定の場所に設置した状態で、該基板からみてターゲットと反対側に反射磁界発生装置を備えていることを特徴とする薄膜作製装置である。
【0027】
本発明の他の構成は、
薄膜作製用スパッタ装置において、被膜成膜用基板を所定の場所に設置した状態で、該基板からみてターゲットと反対側にヒータを備え、該ヒータからみて前記ターゲットと反対側に反射磁界発生装置を備えていることを特徴とした薄膜作製装置である。
【0028】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、ヒータと反射磁界発生装置の間に、前記ヒータからの熱を低減させるための熱遮蔽装置を前記ヒータと反射磁界発生装置の間に備えてあることを特徴とする薄膜作製装置である。
【0029】
本発明の他の構成は、
前記薄膜作製装置において、前記被膜成膜用基板を移動する移動手段を備え、前記反射磁界発生装置は前記被膜成膜用基板と連動して、移動されることを特徴とする薄膜作製装置。
【0030】
本発明の他の構成は、
前記薄膜作製装置において、前記移動手段は減圧側と大気圧側にて磁気シールによって接続され、前記反射磁界発生装置と前記磁気シールの間に磁気シールドを設けてあることを特徴とする薄膜作製装置。
【0031】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、反射磁界発生装置において、永久磁石のN極とS極が交互にループ状にほぼ同一平面に並んで固定されており、前記ループ状にほぼ沿うような磁界のみが発生するように磁気シールドを前記ループ状に沿わない磁界を遮断するように設けてあることを特徴とする薄膜作製装置である。
【0032】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、永久磁石として、
希土類コバルト、Alnico5、タングステン鋼、炭素鋼、KS鋼、OP磁石、Ferroxdure2、
のいずれかを用いることを特徴とする薄膜作製装置である。
【0033】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、永久磁石として、U字磁石あるいは棒磁石を用いることを特徴とする薄膜作製装置である。
【0034】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、磁気シールドの高さが永久磁石の高さより高いことを特徴とする薄膜作製装置である。
【0035】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、反射磁界発生装置において、コイルをほぼ閉じられたループを形成するように巻き、前記コイルに電流を流すことによって前記ループ状にほぼ沿うような磁界を発生させることを特徴とした薄膜作製装置である。
【0036】
本発明の他の構成としては、
上記薄膜作製装置において、反射磁界発生装置において、基板の薄膜を作製する面とほぼ垂直な方向に電流を流すことで閉じられたループ磁界を、前記基板を作製する面とほぼ平行に発生させることを特徴とする薄膜作製装置である。
【0037】
本発明の他の構成は、
上記薄膜作製装置において、反射磁界発生装置において、基板の薄膜を作製する面とほぼ平行な1組の平面電極の間で直流放電をさせることで閉じられたループ磁界を、前記基板を作製する面とほぼ平行に発生させることを特徴とした薄膜作製装置である。
【0038】
【作用】
スパッタの際に、正イオンまたは負イオンが基板に衝突する場合、例えば正イオンが基板に衝突する場合に、その進行方向に対して時計方向の回転での磁界が発生する(いわゆる電磁気学でいう右ネジの法則)。その様子を、図1(A)に示す。基板101に進行している正イオン102は、進行方向103に対して、右ネジが進む場合の回転方向(基板に向かって時計方向)に移動電荷による磁界(ここではイオン磁界104と呼ぶ)ができる。正イオン102はイオン磁界104を発生させながら進行方向103に進み、基板101に衝突して、イオンダメージを与える。
なお、負イオンの場合は、イオン磁界104の向きが逆になり、左ネジが進む場合の回転方向になる。
【0039】
そこで、本発明は、イオンが基板に衝突することを防止する、あるいは衝突するイオンの数を削減しようとするものである。本発明の概略の原理を図1(B)に示す。基板111に進行している正イオン112は、基板111向かって時計回りの方向にイオン磁界114を発生させながら進行する。その時に、基板の被形成面に沿ってイオン磁界114と同じ向きの反射磁界115があると、正イオン112は基板111の近傍にて磁界によって、基板111から遠ざかる向きに力を受けて、進行方向を反対方向113に変えてしまう。このため、正イオン112が基板111に達することがなくなる。或いは、基板111に到達する正イオン112の数を減じることができる。従って、反射磁界115を被形成面に向かって時計回りの方向に常に発生させておくことで、正のイオン112によるダメージを減少させることできる。正イオン112が、負イオンであれば、磁界の向きは全て逆になる。
【0040】
被形成面に衝突してくるイオンに対して、例えば正イオンが作る誘導磁場が、進行方向に対して時計回りの方向の閉じられたループ磁界を発生させていることから、同じ時計回りの閉じられたループ磁界を発生させることによって、正イオンの被形成面への衝突を回避するものである。半導体分野では、基板はSiやGaAなどであり、薄膜半導体分野では石英やソーダガラス、ホウケイ酸ガラスなどであり、いずれも磁性体であるので、反射磁界としての閉じられたループ磁界は、被形成面の反対側に発生させることが可能である。負イオンに対しても同様である。
【0041】
図2に正イオンのダメージを減少させるための反射磁界の様子をもう少し分かりやすく示してある。図2(A)は、スパッタ法による成膜装置の中の、ターゲット202と被膜形成面側204をターゲット202に向けて配置してある基板201と、基板201の被膜形成面側204と反対側に反射磁界領域203がある断面図である。
【0042】
この基板201を被膜形成面204側から見た平面図のうち、基板として、ウエハ211を配置したものが図2(B)であり、基板として、矩形のガラス基板221を配置したものが図2(C)である。
反射磁界領域203において、図2(B)に示すように、被膜形成面側204からみると、ウエハ211に対して時計の針の進む向きと同じ、いわゆる時計方向に、閉じられた円周状の磁界213が発生されている。同様に、図2(C)に示すように、閉じられた円周状の磁界223がガラス基板211を被膜形成面側204からみて時計方向に発生されている。なお、図2(B)、図2(C)において、矢印の向きが磁界213、223の方向を示している。
反射磁界領域203では、円周状の磁界213、223の様な形でなくとも、正イオンがつくり出す時計方向の磁界と同じ向きの磁界であれば原理的に同等であり、例えば図2(D)には、被膜形成面側204から、見たときにガラス基板231を配置してある平面図であるが、反射磁界としては閉じられたループ状で角状の磁界233でもよく、角状の磁界223の中の矢印が磁界の向きを示している。
【0043】
つまり、正イオンが基板の被膜形成面に向かって動くときに発生する閉じられたループ磁界と同じ向きの反射磁界を被膜形成面近傍にて発生させて、正イオンをその磁界によって弾くようにすることで、被膜形成面での正イオンダメージを減少させることができる。負イオンによるダメージであれば、全て磁界の向きのみが逆になるだけで同様である。
【0044】
閉じられたループ磁界の発生のさせ方としては、図3に永久磁石を用いた場合を示す。図3は、被膜形成面側から見た場合の図になっているため、反射磁界としての閉じられたループ磁界は、時計方向になるように発生させなくてはならない。
【0045】
図3(A)は、正イオンによるダメージを低減させるための例を示し、永久磁石を4個用いた場合の例である。4つのU字磁石301a〜301dはそれぞれセンター300を中心にして90度の回転角度をなして対称的に配置されている。また、U字磁石301a〜301dはそれぞれセンター300みたときに右側にN極、左側にS極がくるように配置されている。
更に、U字磁石301a〜301dのN極とS極の間には、それらのN極とS極の先端よりもセンター300の方向に突出するように、それぞれ磁気シールド302a〜302dが配置されいる。
【0046】
U字磁石301aをセンター300から見た図を図3(B)に示す。U字磁石301aの高さXより、磁気シールド302aの高さYの方を大きくしている。これは、U字磁石301aのN極とS極の間での磁界をできるだけ遮断したいためである。あるいは、図3(C)に示すように、磁気シールド302AのようにU字磁石301aのN極とS極の上部、下部も覆うようにすると、より理想的である。
【0047】
図3(A)に示すように、U字磁石301a〜301dにおいて、それぞれの磁石のN極とS極の間での磁力線はほんとんどなく、U字磁石301aのS極とU字磁石301bのN極の間で、磁力線304ができ、磁界の向きはU字磁石301bのN極からU字磁石301aのS極に向かって発生する。同様にU字磁石301cのN極からU字磁石301bのS極に向かって発生し、U字磁石301dのN極からU字磁石301cのS極に向かって発生し、U字磁石301aのN極からU字磁石301dのS極に向かって発生する。
【0048】
すると、図3(A)のセンター300の回りに磁力線303が発生する。この磁力線303は時計回りで閉じているために、反射磁界としていわゆる閉じられたループ磁界として作用する。図3(A)で示したセンター300の上に基板を置いて、スパッタ法によって成膜した場合に、基板に衝突する正イオンを減少させることが可能であり、被膜形成面の正イオンのダメージをも低減できる。
【0049】
U字磁石301a〜301dとしては、強い磁界が必要な場合は、SmCoなどの希土類コバルト磁石や、8Al,14Ni,23Co,3Cuなどの成分からできるAlnico5や0.7C,0.3Cr,6W,0.3Mnなどの成分からできるタングステン鋼を用いるとよい。また、それ程大きな磁界が必要で無い場合は、0.9〜1C,1Mnなど成分からできる炭素鋼や、0.9C,35Co,3〜6Cr,4Wなどの成分からできるKS鋼や、Co0.75Fe2.25などのOP磁石や、BaFe1219などのFerroxdure2などを用いた永久磁石を用いると良い。
【0050】
或いは、U字磁石301a〜301dは永久磁石でなく、同様の電磁石でもよい。また4個を円周状に並べたが、別段円周状である必要はなく、最終的にセンター300の回りに閉じた時計方向回りに磁力線ができ、反射磁界をいわゆる閉じられたループ磁界としてなせばよい。負イオンによるダメージを低減させるためには、全て磁界の向きを逆にする。つまりN極とS極を反転させたものにすれば良い。
【0051】
図3に示したような、配置の仕方ではなく、もっと単純な永久磁石を用いて、反射磁界を発生させる手段を図4に示す。
図4(A)は、図3(A)に対応しているが、被膜形成面側から見た場合の正イオンダメージを低減させるための図になっているため、反射磁界としての閉じられたループ磁界は、時計方向になるように発生させなくてはならない。磁気シールド402a、402b、402cが円周状に壁をなしておりその中に、多数の永久磁石401が、1種類は磁気シールド402aと402bの間の領域403に配置され、他の種類としては、磁気シールド402bと402cの間の領域404に配置されている。この図では領域403、404の2つであるが、1つでも良くまた、3つ以上でも無論よい。
【0052】
それぞれの各永久磁石401は、センター400からその個別の永久磁石401をみたときに右側がN極、左側がS極になるように配置されている。すると永久磁石401は、磁気シールド402a、402b、402cで挟まれている中で主に、磁力線を発生させ磁気シールドを隔てた磁力線の発生をできるだけ抑えており、N極からS極へと丁度時計の針の進行方向と同じ向きの磁力線になる。
また、図4(A)の中の、X−X’断面を図4(B)に示し、Y−Y’断面を図4(C)に示している。図4(B)を見るとわかるように、領域403に永久磁石401があるときは、領域404には永久磁石401がない。逆に図4(C)を見ると、領域404に永久磁石401がある時は、領域403には永久磁石401はない。
【0053】
上記のように、永久磁石401の配置は、領域403と領域404で交互に配置するようにした方がよい。ただし、交互に配置しなくくとも、本発明の効果は十分にでる。また、図4(B)と図4(C)をみると明らかなように、永久磁石401の高さXよりも、磁気シールド402a、402b、402cの高さYの方が高くすることで、閉じられたループ磁界以外の磁界の発生を減少させている。領域403と404の中で、永久磁石401を介しながらそれぞれ閉じられたループ磁界を発生させている。また、負イオンのダメージを低減させるためには永久磁石401のN極とS極を逆にする。
【0054】
図5は、図4に示したものを、四角形状にてならべたものであり、四角い基板などに対応しやすい。また、図6に示すようにコイル601をドーナッツ状にして、電流602を流すと閉じられたループ磁界603を発生させることができる。このコイルの場合は、磁界の大きさを自在に変化させることができるために利点が多い。図6は、正イオンのダメージを低減させるようにしてあるが、負イオンのダメージを低減させるためには、電池604のプラスとマイナスを換えることで対応できる。図には示していないが、コイル601の内側円周状と外側円周状に磁気シールドを設けた方がよいが、コイル状の電流を流した場合は、ほぼループに沿うような磁界しかできないために、なくとも十分である。
【0055】
また、いままでのものは静磁場、静磁界を発生させていたが、図7に示すように鉄心700にコイル701a、701b、702a、702b、703a、703b、を巻付け、コイル701a、701bを交流電源A704に接続し、コイル702a、702bを交流電源B705に接続し、コイル703a、703bを交流電源C706に接続する。交流電源A〜C704〜706は、それぞれ位相だけが異なる電源になっている。それぞれの位相差は丁度120゜になっている。それによって、閉じられたループ磁界が発生する。
【0056】
磁石を使って反射磁界としての閉じられたループ磁界を発生させる以外に、図8(A)、図8(B)に示すような方法もある。この図は負イオンのダメージを低減させる図を示している。図8(A)は、基板801の被膜形成面側802の反対側に、反射磁界を発生させるようにしたものの断面図であり、下電極803と上電極804とは多数の導電線805で接続され、下電極803は直流電源806のプラス側に接続され、上電極804は抵抗807を通して接地されている。直流電源806の電圧を変化させるか、抵抗807の抵抗値を変化させることで、多数の導電線805を流れる電流値を制御する。多数の導電線805の1本1本には矢印の方向に電流がながれるために、導電線805のまわりには、電流がながれる向きに右ネジが進む方向に、反射磁界としての閉じられたループ磁界が発生する。
【0057】
基板801に向かってくる、負イオンがつくり出す閉じられたループ磁界と丁度同じ向きとなり、その負イオンの基板への衝突を減少させることが出来る。しかも、この場合は、多数の導電線805を流れる電流値を制御することで、反射磁界としての閉じられたループ磁界の強さを制御できるために、幅広い条件にまで対応可能である。正イオンに対しては、直流電源806のプラスとマイナスを逆にすればよい。
【0058】
図8(B)には、基板811の被膜形成面側812の反対側に、反射磁界を発生させるようにしたものの断面図であり、下電極813と上電極814の間で直流のプラズマ放電815が発生される。下電極813は直流電源816のプラス側に接続され、上電極814は抵抗817を通して接地されている。直流電源816の電圧を変化させるか、抵抗817の抵抗値を変化させることで、直流のプラズマ放電815によって発生するイオン電流を制御する。直流放電であるために、正のイオンは、下電極813から上電極814へ向かって移動するために、丁度、基板801に向かってくる負イオンと逆向きの方向になるため、下電極813から上電極814へ向かって移動する正イオンによって発生する反射磁界としての閉じられたループ磁界が発生する。
【0059】
直流プラズマ放電815によって流れる電流を、直流電源816の電圧を変化させるあるいは、抵抗817の抵抗値を変化させることで、反射磁界としての閉じられたループ磁界の強さを制御できる。
図8(A)、図8(B)のどちらの場合も、上電極804、814と下電極803、813の材質は非磁性体を用いなくてはならず、例えば、ステンレススチールの非磁性体である、SUS304やSUS316などや、アルミニウムやアルミニウム合金などがある。正イオンに対しては、直流電源816のプラスマイナスを逆転させればよい。
【0060】
図9は本発明を用いた場合の、DCマグネトロンスパッタ装置の、断面図である。反応室900の中に、基板901、ターゲット902が図のように配置されている。基板901は、プッシャー903によって、ホルダー904に押しつけられて固定されている。基板901の下側には、基板加熱用のヒータ905があり、プッシャー903はこのヒータ905の中にある。反応室900は、スパッタガス913が導入され、真空ポンプ906と制御弁907によって、所望の圧力に制御できる。
【0061】
ターゲット902には直流電源908のマイナス側に接続され、ターゲット902の裏側には、マグネトロンスパッタを行うためのマグネットシステム909と、ターゲット902を冷却するための冷却装置910とが設けられている。ターゲット902は、反応室900とはインシュレータ911によって電気的に絶縁されている。
【0062】
ヒータ905の下には、反射磁界発生装置912が設置してある。ターゲット902は、スパッタガス913が導入されて、スパッタ圧力になると、直流電源908によって負の電圧が印加され、マグネットシステム909によって、エロージョン領域に閉じ込められた正イオンにより、ターゲット902はスパッタリングされる。スパッタされて、ターゲット902から飛び出したターゲット材料の原子分子は、基板901の表面に達して堆積する。
【0063】
基板901上での成膜の均一性をとるために、基板901を自回転、スイング、遊星回転などの移動をさせながら成膜させてもよい。
エロージョン領域に閉じ込められているはずの正イオンの何割かは、マグネットシステム909の磁界では閉じ込めきれずに、基板901に向かって飛んでくる。そのとき基板901に右ネジが進行するときのネジの回転方向に磁界を発生しながら、正イオンが飛んでくる。このため、エロージョン領域から脱出した正イオンを基板901に達しないようにするために、逆向きの閉じられたループ磁界を反射磁界発生装置912によって発生させている。エロージョン領域に閉じ込められていて、基板901に向かってくるものが負イオンの場合は、左ネジが進行するときのネジの回転方向に磁界を発生させながら飛んでくる。
【0064】
反射磁界発生装置912を永久磁石を用いて作製する場合は、その永久磁石のキューリー温度を超えないような、熱輻射の遮蔽を反射磁界発生装置912かあるいはヒータ905に設けること必要である。
【0065】
スパッタによる被膜形成面がダメージを受けるのは、正イオンあるいは負イオンのみではなく、高エネルギーで基板に衝突してくる中性のターゲットからスパッタによって飛び出した原子分子によってもダメージを受ける。スパッタなどの成膜装置は、それを産業上にて利用するためには、生産性を向上させるために、膜質を悪化させない範囲での成膜速度の増加が要求される。
【0066】
スパッタリングガスのイオンによるターゲットのスパッタに対する指標1つのとして、スパッタ収量がある。例えば、1個のアルゴンイオンを600eVのエネルギーでAlのターゲットに衝突させた際に、1.24個のAl原子が飛び出す場合をスパッタ収量1.24atoms/ionとするものである。ちなみに、アルゴンイオンを600eVのエネルギーでSiのターゲットに衝突させた場合には、スパッタ収量は0.53atoms/ionとなる。
【0067】
スパッタを行う場合に、ターゲットに印加する電力は、カソード電圧とカソード電流の積で表されるが、同じ電力10W/cmを投入した場合でも、カソード電圧が500V、カソード電流が0.02A/cmの場合と、カソード電圧が400V、カソード電流が0.025A/cmの場合では、異なるスパッタ収量での成膜を行っていることになる。無論、カソード電圧が500Vの方がスパッタ収量が大きい。
【0068】
しかしながら、カソード電流が大きい方がターゲットをスパッタするイオンの数が多いことになるので、結果的に成膜速度に大きな差はない。まったく差が無いわけではなく、投入電力が同じであればスパッタ収量の大きい条件の方が成膜速度は若干大きくなる。
このため、本発明では、投入電力を変更せずに、成膜の初期の段階ではできるだけカソード電圧を下げて、カソード電流を上げるようにし、下地に中性原子分子の影響が現れない程度、具体的には100〜500Åの厚さに成膜した後に、カソード電圧を上昇させるようにする。
【0069】
スパッタによる高エネルギーの中性原子分子の影響が、非常に敏感な非形成面を持つ場合は、当初の100〜500Å程度は、カソードへの投入電力そのもものを小さくし、できるだけカソード電圧を下げ、カソード電流を上げるようにし、下地に中性原子分子の影響が現れないまで成膜する。その後に、投入電力を大きくして、カソード電圧を上昇させるればよい。このような方法をとることは、被膜形成面が敏感である面に成膜する場合に有効である。
【0070】
【実施例】
〔実施例1〕
本発明を用いたスパッタ成膜装置の実施例を、図9に示す。反応室900は、減圧可能であり、減圧は真空ポンプ906によって行う。真空ポンプ906としては、クライオポンプ、ターボ分子ポンプ、複合ターボ分子ポンプ、油拡散ポンプ、水銀拡散ポンプなどが使用でき、到達圧力として、10−3Pa以下までの到達真空度の能力が必要となる。特に、水の成分を嫌う、アルミニウムなどをスパッタによって成膜する場合は、水に対しての排気速度の大きなクライオポンプなどはクリーンで使いやすい。また、クライオポンプなどの溜め込み式のポンプでは連続使用をした場合に、ポンプの再生による装置の停止時間が多くなるため、ターボ分子ポンプあるいは複合ターボ分子ポンプなどが利便である。
【0071】
スパッタガス913が反応室900に接続されているが、反応性スパッタを行うような場合は、このスパッタガス913以外に、反応用のガスを別に導入する必要があり、しかも、その導入方法には、工夫が必要となる。本実施例では、反応性スパッタは行わないので、単純にスパッタリング用のガスを接続してある。スパッタガス913としては、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスのうち原子半径が大きいものが使われるが、ガスの価格等を考えた場合は、通常アルゴンガスが用いられる。本実施例でもアルゴンガスを用いている。
【0072】
反応室900の上方にインシュレータ911によって、ターゲット902は反応室900と電気的に分離され、かつ反応室900内の真空度を悪くしないように設置されている。ターゲット902の裏側には、マグネトロンスパッタリングを行うためのマグネットシステム909が配置してある。しかし、ターゲット902が磁性材料の場合は、マグネトロンスパッタを行うことができない。ターゲット902が、アルミニウムや、クロム、チタン、銀、ITOなどの非磁性体の場合のみ、マグネットシステム909を利用したマグネトロンスパッタを行うことができる。
【0073】
ターゲット902は直流電源908のマイナス極に接続されているため、カソード(陰極)とも呼ばれる。スパタッタガス913がイオン化されて、その正イオンがターゲット902に衝突してスパッタが行われる。ターゲット902は、大きいカソード電流が流れるために、加熱されるので、それを冷却するための冷却装置910がある。冷却装置910は通常は水冷による冷却方式を用いるが、マグネットシステム909をも同時に冷却する場合は、その冷却水の中の磁性体成分が付きマグネットシステム909の特性を変化させないように、フィルターによって冷却水中のパーティクルなどを除去して用いなくてはならない。
【0074】
ターゲット902の冷却も非常に重要であり、ターゲット902の温度に変化をきたすと、成膜された膜の特性をも変化させてしまう。従って、ターゲット902の温度を一定にするようにしなくてはならない。
そのためには、熱容量の大きな冷却源にターゲット902を接触させることが必要であり、本発明人の実験によると、1分間に6リットル以上の水温30℃以下である冷却水によってターゲット902を冷却する良好であった。
【0075】
ターゲット902自体を直接冷却出来ない場合は、銅などの熱伝導率の高い材料によりバッキングプレートを作製して、ターゲット902をバッキングプレートに貼り付けたものを用いて、冷却水によってバッキングプレートを冷却してもよい。
【0076】
基板901は、プッシャー903によって、ホルダー904に押しつけられる方式によって固定される。基板901を固定する方法もいくらでもあるが、プッシャー903を利用する装置は、枚葉式の装置の形態として最も使いやすいものであるので、本実施例でも用いた。
【0077】
基板901の下側にプッシャー903を内蔵する形でヒータ905が配置されている。ヒータ905はランプ加熱方式、抵抗加熱方式などがあるが、そのヒータ905の下側に、反射磁界発生装置912があるため、この反射磁界発生装置912の中に永久磁石を用いる場合は、ヒータ905の輻射熱によって該永久磁石のキューリー温度を超えないような工夫が必要となる。
【0078】
また、ヒータ905の構成材料に磁性体を用いた場合は、その材料が反射磁界発生装置912で発生した反射磁界に対して磁気シールドになり、その磁性体材料を用いた回りでの本発明の効果を落としてしまう可能性があるため、できるだけ磁性体材料を用いない構成をヒータ905に用いなくてはならない。本実施例では、Cr材料を主として用いた抵抗加熱の熱源でヒータ905を構成し、熱源と反射磁界発生装置912の間には、熱遮蔽を施した。熱遮蔽としては、その装置での加熱温度によって異なるが、基板901を200℃程度以下で加熱する場合は、非磁性体のステンレススチールなどを電界研磨をしたものを使用することで、熱遮蔽は十分行うことが出来る。また、300℃程度以上の場合は、非磁性体のステンレススチールや、アルミ等で水冷室を設けることで熱遮蔽することが出来る。無論双方を用いることで一層の熱遮蔽を行うことができる。
【0079】
図9は反射磁界発生装置912の断面を表している。基板901から反射磁界発生装置912を見たときの平面図としては、図4および図5に示すような永久磁石を用いたものを使用した。本実施例では、矩形基板対応の装置であるために、図5に示すような反射磁界発生装置912を使用したが、基板がウェハなどのように丸形の場合は図4に示すような装置の方がよい。
【0080】
なお、図5は、図9中のターゲットから反射磁界発生装置912を見たときの平面図であって、図5の永久磁石501を多数に磁気シールド502aと磁気シールド502bで挟まれた領域503と、磁気シールド502bと磁気シールド502cで挟まれた領域504に配置してある。配置の仕方は、センター500から各永久磁石501をみたたきに左側がS極、右側がN極となるように配置されている。これは本実施例では、アルゴンイオンなどの正イオンによる基板へのダメージを前提としているためである。負イオンによるダメージを前提とした場合は、N極とS極は逆になる。
【0081】
すると磁力線は、図5で時計の針の進行方向とは同じ反時計方向に向かって矢印505の向きになり、磁界もその方向を向く。永久磁石501としては強い磁界が必要な場合は、SmCoなどの希土類コバルト磁石や、8Al,14Ni,23Co,3Cuなどの成分からできるAlnico5や0.7C,0.3Cr,6W,0.3Mnなどの成分からできるタングステン鋼を用いるとよい。また、それ程大きな磁界が必要で無い場合は、0.9〜1C,1Mnなど成分からできる炭素鋼や、0.9C,35Co,3〜6Cr,4Wなどの成分からできるKS鋼や、Co0.75Fe2.25などのOP磁石や、BaFe1219などのFerroxdure2などを用いると良い。
【0082】
本実施例では、希士類コバルト磁石としてSmCoいわゆるサマコバを永久磁石501として用いた。領域503には、6個のサマコバを配置し、領域504には、14個のサマコバを配置した。磁気シールド502a,502b,502cとしては、ニッケル合金を用いた。サマコバの定着方法としては、硬めのシリコン樹脂等を用いて全体を封止する方法を用いた。
【0083】
図9の反射磁界発生装置912でサマコバの永久磁石を用いた装置で、基板901の直上の磁界を測定したところ、最大5000Oe(エルステッド)であった。磁界を弱くしたい場合は、使用する磁石の材質を変化させるか、反射磁界発生装置912と基板901の距離を離間することなどで調整すればよい。
【0084】
実際に本発明を用いた本装置によって成膜を行った。ターゲット902として、AlにScが0.18wt%が添加されたものを使用して、カソード電圧500V、カソード電流0.02A/cmにて成膜した。基板901の中心に1cmの電流ディテクターを装着して、反射磁界発生装置912が有る場合と無い場合で基板に正イオンが到達しているか否かを測定した。ディテクタは基板901より約1mm浮いているところでの測定にしたが、これは、金属をスパッタにて成膜するために、ディテクターの面積を変化させないためである。
【0085】
反射磁界発生装置912を装着しない場合は、10分間の成膜中でのディテクターに計測された電流値は、0.1〜0.5mAで、平均0.15mAであった。ディテクターの面積が1cmであるので、これは平均0.15mA/cmということと同じになる。
反射磁界発生装置912を装着した場合は、10分間の成膜中でのディテクターに計測された電流値は、0.02〜0.1mAで、平均0.05mAであった。本実施例では、正イオンの衝突数を約1/3に低減することができたことになる。ディテクターの電流値の絶対値は、ターゲット902と基板901の距離や、スパッタ圧力、カソード電圧、カソード電流などの諸条件でことなることは言うまでもない。
【0086】
〔実施例2〕
図11に、本実施例を用いた3ターゲット式スパッタ装置の例を示す。図11(A)は、装置の断面図であり、図11(B)は図11(A)を上方からみたときのそれぞれの位置関係をしめすための平面図であり、成膜室の内部を簡単に示したもので、真空室1100の中にはターゲットA1102a、ターゲットB1102b、ターゲットC1102cの3つのターゲットを備え、基板1101は、上方に設置されている。
【0087】
成膜面が下である、いわゆるフェースダウンになっている。基板1101は、基板止め1104によって固定されている。基板1101の上には、反射磁界発生装置1103があり、基板1101と反射磁界発生装置1103は、基板回転装置1105によって回転される。それによって、成膜の均一性を高めるようになっている。
【0088】
簡単のために図中には、カソード電源、真空ポンプ、スパッタガスなどは図示していないが、勿論備えている。基板加熱のためのヒータは、本実施例では、加熱成膜を行わないために備えていないが、基板加熱をする場合は備える必要があるが、反射磁界発生装置1103の中に永久磁石を用いる場合は、ヒータの輻射熱によって該永久磁石のキューリー温度を超えないような工夫が必要となる。
【0089】
また、基板回転装置1105は、高真空を保ちながら基板を回転させるためには、通常液体磁性材料による磁気シールを用いる場合が多いので、反射磁界発生装置1103と磁気シールとの間には、磁気シールドを設けなくては成らない場合もある。反射磁界発生装置1103と磁気シールの距離が十分離れている場合や、反射磁界発生装置1103の磁界の大きさが、磁気シールからみると無視できる程度であれば、そのような磁気シールドは必要ない。
【0090】
反射磁界発生装置1103をターゲット側からみた図を、図4(A)に示す。本実施例では、アルゴンイオンなどの正イオンによる基板へのダメージを前提としている。図4に示す反射磁界発生装置1103としては、永久磁石401を多数に磁気シールド402aと磁気シールド402bで挟まれた領域403と、磁気シールド402bと磁気シールド402cで挟まれた領域404に配置してある。配置の仕方は、センター400から各永久磁石401をみたたきに左側がS極、右側がN極となるように配置されている。仮に負イオンによるダメージを前提とする場合は、永久磁石401のN極とS極を逆にすることで対応できる。
【0091】
すると磁力線は、図4で時計の針の進行方向と同じ反時計方向に向かった矢印の向きになり、磁界もその方向を向く。永久磁石401としては強い磁界が必要な場合は、SmCoなどの希土類コバルト磁石や、8Al,14Ni,23Co,3Cuなどの成分からできるAlnico5や0.7C,0.3Cr,6W,0.3Mnなどの成分からできるタングステン鋼を用いるとよい。また、それ程大きな磁界が必要で無い場合は、0.9〜1C,1Mnなど成分からできる炭素鋼や、0.9C,35Co,3〜6Cr,4Wなどの成分からできるKS鋼や、Co0.75Fe2.25などのOP磁石や、BaFe1219などのFerroxdure2などを用いると良い。
【0092】
本実施例では、0.9C,35Co,5Cr,4Wの成分比率であるKS鋼を永久磁石401として用いた。領域403には、6個のサマコバを配置し、領域404にも、6個のサマコバを配置した。磁気シールド402a,402b,402cとしては、鉄を用いた。KS鋼の定着方法としては、アルミ金属の削りだしにKS鋼をはめ込む方法を用いて全体を封止する方法を用いた。
【0093】
図11の反射磁界発生装置1103に、KS鋼の永久磁石を用いた装置で、基板1101の直上での磁界を測定したところ、最大210 Oe(エルステッド)であった。磁界を変化させたい場合は、使用する磁石の材質を変化させるか、反射磁界発生装置1103と基板1101の距離を変えることなどで調整すればよい。
【0094】
実際に本発明を用いた本装置によって成膜を行った。ターゲット1102aとして、AlにScが0.18wt%が添加されたものを使用し、ターゲット1102bとして、Tiをしようし、ターゲット1102cとして、AlにSiが0.2wt%が添加されたものをしようして、ターゲット1102bにのみカソード電圧500V、カソード電流0.02A/cmにて成膜した。基板1101の中心に1cmの電流ディテクターを装着して、反射磁界発生装置1103が有る場合と無い場合で基板に正イオンが到達しているか否かを測定した。ディテクタは基板1101より約1mm浮いているところでの測定にしたが、これは、金属をスパッタにて成膜するために、ディテクターの面積を変化させないためである。
【0095】
反射磁界発生装置1103を装着しない場合は、10分間の成膜中でのディテクターに計測された電流値は、0.05〜0.13mAで、平均0.072mAであった。ディテクターの面積が1cmであるので、これは平均0.072mA/cmということと同じになる。
反射磁界発生装置1103を装着した場合は、10分間の成膜中でのディテクターに計測された電流値は、0.02〜0.05mAで、平均0.034mAであった。本実施例では、正イオンの衝突数を約1/2に低減することができたことになる。ディテクターの電流値の絶対値は、ターゲット1102bと基板1101の距離や、スパッタ圧力、カソード電圧、カソード電流などの諸条件でことなることは言うまでもない。
【0096】
反射磁界発生装置1103を装着しても、ディテクターに計測された電流が反射磁界発生装置1103が無い場合の1/2程度である理由としては、ターゲット1102bと基板1101の位置関係にも原因がある。ターゲット1102bの中心と基板の中心が同一垂線上にないために、反射磁界発生装置1103で発生した反射磁界成分は、正イオンの衝突する運動の垂直成分にしか働かないことにも起因している。しかしながら、このようにターゲット1102bの中心と基板の中心が同一垂線上にない場合でも本発明の効果が現れることが分かる。
【0097】
〔実施例3〕
図10に本発明を用いたスパッタ方法を用いて作製した多結晶シリコンTFTの断面工程を示す。
石英や、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラスなどの可視光にたいして透明な絶縁性の高い基板1001の上に、下地膜1002を成膜して、その上にアモルファスシリコンを成膜して、TFTの領域にパターニングしてアイランド1003が完成して図10(A)の状態を得る。
【0098】
基板1001としては、本実施例では石英基板を用いた。また、下地膜1002としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜などの絶縁膜を単層あるいは多層にて成膜するが、成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法、減圧熱CVD法などを用いて500〜3000Å、典型的には2000Åを成膜する。
【0099】
アイランド1003を形成するためのアモルファスシリコンの成膜方法としては、プラズマCVD法や減圧熱CVD法などを用いて100〜2000Å、典型的には700〜1200Åを成膜する。成膜されたアモルファスシリコンをフォトリソグラフィーの技術と、ドライまたはウェットエッチングによってアイランド1003の形にパターニングする。本実施例では、フッ酸:硝酸=1:400の容積比で混合したエッチャントによって、ウェットエッチングにてバターニングしたが、CFとOの混合ガスなどを用いたドライエッチングによってパターニングしてもよい。
【0100】
次に、アイランド1003をアモルファスシリコンから、多結晶シリコンに変えるために、加熱して固相成長させるが、その前に脱水素工程を行う。アモルファスシリコン中の水素を抜いておかないと、加熱したときに、アモルファスシリコン中から水素が急激に抜け出し、場合によっては穴が開くなどの現象をおこす。これを防止するために、350〜500℃、典型的には450℃にて3時間、窒素雰囲気の中で、脱水素工程を行う。
【0101】
その後、アイランド1003が形成された基板1001を、500〜850℃で4〜48時間で窒素中にて加熱することにより、アイランド1003はアモルファスシリコンから多結晶シリコンへ固相成長する。本実施例では、基板1001に石英を用いたために850℃ 4時間の固相成長をさせたが、基板1001が、例えばコーニング社の7059ガラスのようなホウケイ酸ガラスなどの場合は、600℃、12時間程度の固相成長をさせないと、基板1001の歪み点を超えてしまうために、それ以上の温度ではできない。
【0102】
また、本出願人による特開平6−232059、特開平6−244103、特開平6−244104に記載された発明を用いることで、600℃以下で固相成長させることが可能であり、歪み点が小さい基板1001を用いる場合などは、有効である。
【0103】
アイランド1003の上に、ゲート絶縁膜1004を成膜する。ゲート絶縁膜1004としては、プラズマCVD法、スパッタ法、熱拡散法などによって酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜などを単層あるいは多層に形成する。厚さ的には、200〜2000Å程度である。本実施例では、正珪酸四エチルと酸素を用いて電子サイクロトロン共鳴(いわゆるECR)を利用したプラズマCVDにて200〜2000Å、典型的には500〜1200Åを成膜して図10(B)になる。
【0104】
その上に、ゲート電極1007を形成するが、このゲート電極1007の材料としては、アルミニウム、クロム、チタン、タンタルなどの金属やドープドシリコンあるいはノンドープのシリコンをもちいてあとからイオン注入などでドープするものなどがある。成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法、減圧熱CVD法などを用いる。
【0105】
このゲート電極1007を形成するためのスパッタ法に本発明を用いた。スパッタ装置の中で、ターゲットから基板1001を見たときに、基板1001の裏側に反射磁界発生装置を取り付けて、ターゲットから基板1001に衝突してくる正イオンを弾くような磁界を、反射磁界発生装置にて発生させながらゲート電極1007の材料を成膜する。反射磁界発生装置から発生する磁界は、基板1001上にて、200〜5000 Oe(エルステッド)になるようにし、典型的には500〜2000 Oeで行った。比較のために、反射磁界発生装置を使用しないで、成膜したものも作製した。
【0106】
ターゲットとしては、Alに0.1〜2wt%のScを混合させたものを用いて、アルミニウム膜を5000〜12000Å、典型的には8000Åの厚さに成膜する。なお、Alに0.1〜2wt%のScを混合をしたのは、後の工程での、アルミのヒロック発生を防止するためである。Scの他にも、Yなどの3A族の金属や、Pd,Siなどを混合させてもよい。
【0107】
その後、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて所望の形にパターニングしてゲート電極1007を作製した。エッチングは、Cl,BCl,SiClの3元系のガスを混合したドライエッチングによって行った。
【0108】
その後、ゲート電極1007をマスクとして、燐を5×1015cm−2になるようにスルードープして、ソース・ドレイン1005を形成し、スルードープによってアモルファス化した部分を再結晶化するために400〜800℃にて加熱して図10(C)になる。スルードープは、質量分離をともなうイオン注入方式でも、質量分離をともなわないプラズマドープ方式でもどちらでもかまわない。
【0109】
そして、層間絶縁膜1008をCVD法にて成膜して、ゲート取り出し電極1009、ソース・ドレイン取り出し電極1010を形成する。ここで、ゲート取り出し電極1009、ソース・ドレイン取り出し電極1010は、スパッタ法による金属膜の作製を行うために、本発明を用いた。
【0110】
ゲート取り出し電極1009、ソース・ドレイン取り出し電極1010の材料として、クロム、アルミ、チタン、タンタルなどがあるが本実施例では、タンタルを成膜した。ターゲットから基板1001を見たときに、基板1001の裏側に反射磁界発生装置を取り付けて、ターゲットから基板1001に衝突してくる正イオンを弾くような磁界を、反射磁界発生装置にて発生させながらタンタルをスパッタ成膜した。反射磁界発生装置から発生する磁界は、基板1001上にて、200〜5000 Oe(エルステッド)になるようにし、典型的には500〜2000 Oeで行った。
比較のために、反射磁界発生装置を使用しないで成膜したものも作製した。
【0111】
本実施例では、TFTを640×480×3の921,600個の素子を作製した。反射磁界発生装置を用いないで成膜した場合のTFTの特性は、動作しなかったTFTが0.1%、Vthのバラツキが最大最小で0.5Vであった。それに対して、反射磁界発生装置を用いて成膜した場合のTFTの特性は、動作しなかったTFTが0.007%、Vthのバラツキが最大最小で0.2Vであった。特に、反射磁界発生装置を用いないで作製したTFTが動作しなかった原因は、殆どが短絡によるものであった。
【0112】
〔実施例4〕
図10に示した実施例4の中で、特にゲート電極1007の材料を成膜する際に、通常は、カソード電流0.02A/cmでカソード電圧500Vつまり10W/cmで行うが、正イオンを反射磁界発生装置にて弾く以外に、中性の高エネルギーの原子分子の影響を取り除くために本発明を用いた。
ゲート電極1007の材料、本実施例ではターゲットとして、Alに0.1〜2wt%のScを混合させたものを用いる。
【0113】
方法1として、電力制御でスパッタ収量を制御する。最初の100〜1000Åを成膜する際に、ターゲットへの投入電力を半分以下、本実施例では5W/cmで成膜することでスパッタ収量を小さくし、その後に10W/cmに戻して残りを成膜した。この場合、カソード電圧400Vで、カソード電流が0.013A/cmであった。スパッタ収量を小さくして成膜する範囲は、我々の実験では最低100Åは必要であり、100Å未満では殆ど本発明の効果がみられなかった。また条件によるが、どのような条件でもほぼ1000Å成膜したあとではスパッタ収量を大きくしても問題は少なかった。
【0114】
無論、カソード電圧、カソード電流、カソード印加電力は、その時の成膜条件等で異なるものであるが、ゲート電極1007を成膜するときのみ、成膜初期の電力を下げて成膜したものである。
【0115】
方法2としては、成膜初期の100〜1000Åの成膜時に、カソード電力は一定にして、カソード電圧を下げて、スパッタ収量を小さくした成膜をおこなう。本実施例ではカソード電力を10W/cmで一定にして、カソード電圧を450〜350に下げて、その分カソード電流を大きくして成膜した。カソード電圧300V以下ではスパッタ放電しなかったために、安全をみて450〜350Vのカソード電圧にしたが、放電がするのであればさらに低いカソード電圧にすることも可能である。スパッタ収量を小さくして成膜する範囲は、我々の実験では最低100Åは必要であり、100Å未満では殆ど本発明の効果がみられなかった。また条件によるがどのような条件でもほぼ1000Å成膜したあとではスパッタ収量を大きくしても問題は少なかった。
【0116】
本実施例では、実施例3とも比較できるようにTFTを640×480×3の921,600個の素子を作製した。実施例3での反射磁界発生装置を用いてゲート電極1007の成膜時に初期成膜も含めてカソード電圧500V、カソード電流0.02A/cmで成膜した場合のTFTの特性は、動作しなかったTFTが0.007%、Vthのバラツキが最大最小で0.2Vであった。
方法1によって成膜した場合のTFTの特性は、動作しなかったTFTが、0.008%、Vthのバラツキが最大最小で0.1Vであった。
方法2にによって成膜した場合のTFTの特性は、動作しなかったTFTが、0.007%、Vthのバラツキが最大最小で0.1Vであった。
【0117】
ゲート電極のように、特性に重要な役割をする材料をスパッタにて成膜する場合は、反射磁界発生装置を用いるとともに、成膜の初期の方法にて、スパッタ収量を小さくして、中性分子原子の衝突をも防止することは、大きな効果がある。特に、カソード電力を一定にして、カソード電圧を下げることでスパッタ収量を小さくすることは、成膜速度もあまり減少させることなく成膜できるために産業効率も高い。
【0118】
【発明の効果】
本発明を用いることで、スパッタ中のスパッタガスがイオン化した正イオンや、ターゲット材料がスパッタされて飛び出したスパッタ材料の中性原子や分子が正イオンあるいは負イオン化したもの、またはスパッタガス以外の反応用のガスがイオン化した正イオンあるいは負イオンが、被膜形成面に到達することを減少させて、正イオンによるダメージを低減できる。また、そのスパッタ方法を実現できる装置を提供している。
さらに、スパッタされて飛び出したスパッタ材料の中性の原子や分子のうちでも高エネルギーをもって被膜形成面に衝突して、被膜形成面にダメージを与える用な場合に、初期のスパッタ成膜中のスパッタ収量を小さくすることでそのダメージを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理的なことを示した図。
【図2】 本発明の模式図の断面と平面図。
【図3】 本発明の実施例。
【図4】 本発明の実施例。
【図5】 本発明の実施例。
【図6】 本発明の実施例。
【図7】 本発明の実施例。
【図8】 本発明の実施例。
【図9】 本発明を用いた装置の実施例。
【図10】本発明を用いて作製した薄膜半導体装置の工程の断面図。
【図11】本発明を用いた装置の実施例。
【符号の説明】
900 反応室
901 基板
902 ターゲット
903 プッシャー
904 ホルダー
905 ヒータ
906 真空ポンプ
907 制御弁
908 直流電源
909 マグネットシステム
910 冷却装置
911 インシュレータ
912 反射磁界発生装置
913 スパッタガス

Claims (15)

  1. スパッタ法によって基板に薄膜を作製する方法において、
    前記基板のターゲットに対向している面と反対面に平行な同一平面内に、複数の棒磁石を、互いのN極とS極とを交互とし、かつ当該複数の棒磁石のそれぞれの内部でS極からN極に向かう磁界の方向を、前記基板の薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界の方向と同じ向きとなるようにループ状に配置し、
    前記複数の棒磁石のそれぞれの周囲に生じる磁界により、前記磁界に侵入したイオンに前記基板と遠ざかる向きに力を加えながら、前記基板に薄膜を作製することを特徴とする薄膜作製方法。
  2. スパッタ法によって基板に薄膜を作製する方法において、
    前記基板のターゲットに対向している面と反対面に平行な同一平面内に、複数の棒磁石を、互いのN極とS極とを交互とし、かつ当該複数の棒磁石のそれぞれの内部でS極からN極に向かう磁界の方向を、前記基板の薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界の方向と同じ向きとなるようにループ状に配置し、
    前記複数の棒磁石のそれぞれの周囲に生じる磁界により、前記磁界に侵入したイオンに前記基板と遠ざかる向きに力を加えながら、
    前記薄膜の作製の初期とその後とを比較して、初期の段階のスパッタ収量のほうが小さくなるようにして、前記基板に薄膜を作製することを特徴とする薄膜作製方法。
  3. トップゲート型薄膜トランジスタの作製工程において、
    ゲート絶縁膜上にゲート電極となる薄膜をスパッタ法によって作製する場合に、前記基板のターゲットに対向している面と反対面に平行な同一平面内に、複数の棒磁石を、互いのN極とS極とを交互とし、かつ当該複数の棒磁石のそれぞれの内部でS極からN極に向かう磁界の方向を、前記基板の薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界の方向と同じ向きとなるようにループ状に配置し、
    前記複数の棒磁石のそれぞれの周囲に生じる磁界により、前記磁界に侵入したイオンに前記基板と遠ざかる向きに力を加えながら、
    前記薄膜の作製の初期とその後とを比較して、初期の段階のスパッタ収量のほうが小さくなるようにして、前記基板に前記ゲート電極となる薄膜を作製することを特徴とする薄膜作製方法。
  4. トップゲート型薄膜トランジスタの作製工程において、
    ゲート電極上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上にゲート、ソース、又はドレイン取り出し電極となる薄膜をスパッタ法によって作製する場合に、
    前記基板のターゲットに対向している面と反対面に平行な同一平面内に、複数の棒磁石を、互いのN極とS極とを交互とし、かつ当該複数の棒磁石のそれぞれの内部でS極からN極に向かう磁界の方向を、前記基板の薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界の方向と同じ向きとなるようにループ状に配置し、
    前記複数の棒磁石のそれぞれの周囲に生じる磁界により、前記磁界に侵入したイオンに前記基板と遠ざかる向きに力を加えながら、
    前記薄膜の作製の初期とその後とを比較して、初期の段階のスパッタ収量のほうが小さくなるようにして、前記基板に前記ゲート、ソース、又はドレインの取り出し電極となる薄膜を作製することを特徴とする薄膜作製方法。
  5. 請求項2乃至請求項4のいずれかにおいて、カソード電圧及びカソード電流を、薄膜を作製の初期とその後とを比較して、初期の段階のカソード電圧のほうが小さくなるようにし、初期の段階のカソード電流のほうが大きくなるようにして、カソード投入電力を一定にした状態で、スパッタ収量を制御することを特徴とする薄膜作製方法。
  6. 請求項2乃至請求項4のいずれかにおいて、カソード投入電力を、薄膜を作製の初期とその後とを比較して、初期の段階のカソード投入電力が小さくなるようにして、スパッタ収量を制御することを特徴とする薄膜作製方法。
  7. 請求項5又は請求項6において、前記スパッタ収量を段階的に制御する場合、前記スパッタ収量が小さくなるように薄膜を作製する初期の段階は、作製された薄膜の膜厚が10〜100nmの範囲であることを特徴とする薄膜作製方法。
  8. 薄膜作製用スパッタ装置において、
    基板を所定の場所に設置した状態で、前記基板ターゲットに対向している面と反対面に平行な同一平面内に、複数の棒磁石が、互いのN極とS極とが交互となり、かつ当該複数の棒磁石のそれぞれの内部でS極からN極に向かう磁界の方向を、前記基板の薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界の方向と同じ向きとなるようにループ状に配置された反射磁界発生装置を備えていることを特徴とする薄膜作製装置。
  9. 薄膜作製用スパッタ装置において
    板を所定の場所に設置した状態で、前記基板ターゲットに対向している面と反対面に平行な同一平面内に、複数の棒磁石が、互いのN極とS極とが交互ととなり、かつ当該複数の棒磁石のそれぞれの内部でS極からN極に向かう磁界の方向を、前記基板の薄膜を作製する面に向かってくるイオンのつくり出す磁界の方向と同じ向きなるようにループ状に配置された反射磁界発生装置を備え、
    かつ前記基板と前記反射磁界発生装置との間にヒータを備えていることを特徴とする薄膜作製装置。
  10. 請求項9において、前記ヒータと前記反射磁界発生装置の間に、前記ヒータからの熱を低減させるための熱遮蔽装置を備えたことを特徴とする薄膜作製装置。
  11. 請求項8乃至請求項10のいずれか一において、前記基板を移動する移動手段を備え、前記反射磁界発生装置は前記基板と連動して、移動されることを特徴とする薄膜作製装置。
  12. 請求項11において、前記移動手段は減圧側と大気圧側にて磁気シールによって接続され、前記反射磁界発生装置と前記磁気シールの間に磁気シールドを設けてあることを特徴とする薄膜作製装置。
  13. 請求項8乃至請求項11のいずれかにおいて、前複数の棒磁石の配置に沿うような磁界のみが発生するように、磁気シールドを前記複数の棒磁石の配置に沿わない磁界を遮断するように設けことを特徴とする薄膜作製装置。
  14. 請求項13において、前記磁石として、希土類コバルト、Alnico5、タングステン鋼、炭素鋼、KS鋼、OP磁石、Ferroxdure2、のいずれかを用いることを特徴とする薄膜作製装置。
  15. 請求項13又は請求項14において、前記磁気シールドの高さが前記磁石の高さより高いことを特徴とする薄膜作製装置。
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