JP5327163B2 - 圧縮自着火エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

ここに開示する技術は、圧縮自着火エンジンの制御装置に関する。
圧縮自着火エンジンの一つとしてのディーゼルエンジンでは、排ガス中のNOxや煤の低減、騒音乃至振動の低減、燃費やトルクの向上等を図るため、エンジン1サイクル中に、気筒内に複数回の燃料の噴射を行うことがある。例えば特許文献1には、トルク発生のためのメイン噴射、気筒を予熱するためにメイン噴射に先立ち行われるパイロット噴射、パイロット噴射とメイン噴射との間でメイン噴射による燃料の着火遅れを抑制するためのプレ噴射、メイン噴射後において排気ガス温度を上昇させるためのアフタ噴射、及び、アフタ噴射後に排気系に燃料を直接導入して触媒の昇温を図るポスト噴射の5つのタイミングで、燃料噴射を実行するディーゼルエンジンが記載されている。
また、例えば特許文献2には、メイン燃焼前の予備燃焼によって気筒内温度を高める上で、パイロット噴射の燃料噴射量をエンジンの負荷及び回転数に応じて変更する技術が記載されており、これにより、メイン噴射を行う時点での気筒内温度を燃料の自己着火可能な温度よりも確実に上回るようにして、メイン噴射によって噴射された燃料の失火を防止している。
特開2009−293383号公報 特開2005−240709号公報
ところで、気筒内に供給した燃料を圧縮自着火させるディーゼルエンジンでは、その幾何学的圧縮比を、例えば15以下といった、比較的低い圧縮比にすることによって、気筒内の燃焼を緩慢にし、NOxの生成を抑制することが検討されている。エンジンの低圧縮比化は機械抵抗損失を低減させるため、エンジンの熱効率を向上させる点でも有利である。本願発明者らは、低圧縮比のエンジンにおいて、部分負荷の運転領域では、主噴射よりも前のタイミングで少なくとも1回の前段噴射を実行して、拡散燃焼を主体とした主燃焼の開始前に前段燃焼を適切に生起させることが、主噴射の開始時点における気筒内の温度及び圧力を最適化して着火遅れ時間を比較的短くし、主燃焼の制御性を向上させることを見いだした。例えば、圧縮上死点よりも前のタイミングで前段噴射を行って圧縮上死点よりも前に前段燃焼のピークを発生させると共に、圧縮上死点付近において主噴射を行うようにすれば、主燃焼を圧縮上死点付近で安定して発生させることが可能になり、燃費向上やNVH(Noise Vibration Harshness)性能の向上に有利になり得る。
しかしながら、そのように前段燃焼及び主燃焼を含む燃焼パターンを実現しようとしても、例えばエンジン負荷の低下や、エンジンの未暖機、また、外気温が極めて低いこと(極冷間条件)や、大気圧が低いこと(高地条件)等の、気筒内に噴射した燃料の着火遅れ時間が長くなるような条件下では、前段噴射により噴射した燃料の着火遅れ時間が長くなって、前段燃焼が、例えば圧縮上死点よりも遅れて生起してしまうことがある。この場合は、圧縮上死点付近で主噴射を行うと、遅れて生起した前段燃焼に伴う熱発生率の上昇と主燃焼に伴う熱発生率の上昇とが重なってしまい、燃焼騒音が増大してしまうという不都合がある。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮自着火エンジンの制御装置において、燃焼騒音の増大を抑制し、NVH性能を高めることにある。
本願発明者らは、詳細は後述するが図4に例示するような、気筒内温度と気筒内圧力とをパラメータとする温度−圧力平面上で、燃料の着火遅れ時間が一定となる温度・圧力状態をつないだ等時間線を含むコンター図に基づいて、圧縮自着火エンジンの制御乃至制御特性のチューニングを行う点に着目した。
ここで、図4に示すようなコンター図は、気筒内の温度・圧力状態に対する、燃料の着火のし易さを示すものであり、同図において、右乃至上に行くほど着火遅れ時間が短くなり、左乃至下に行くほど着火遅れ時間が長くなる。また、等時間線は、等量比によっても位置を変え得る。図4に示すように、それぞれ所定の着火遅れ時間に対応する複数の等時間線によって、気筒内の状態を、例えば(1)〜(4)の各領域に分けたときに、気筒内の温度・圧力状態が、(3)や(4)の領域にあるときには、気筒内に噴射した燃料の着火遅れ時間が比較的短いため、圧縮上死点前の前段噴射によって噴射した燃料が圧縮上死点よりも前に着火及び燃焼し、前段燃焼のピークが圧縮上死点前に発生し得る。これによって、気筒内の温度・圧力がさらに高まり、圧縮上死点付近において実行される主噴射により噴射された燃料は短い着火遅れ時間で着火する。結果として、主燃焼が圧縮上死点付近で安定して発生し、燃費及びNVH性能の向上に有利になり得る。
これに対し、気筒内の温度・圧力状態が、図4のコンター図における(1)(2)の領域にあるときには、気筒内に噴射した燃料の着火遅れ時間が比較的長くなるため、圧縮上死点前の前段噴射によって噴射した燃料が圧縮上死点で着火、又はそれよりも後に着火して燃焼し得る。このため、前記と同様に、圧縮上死点付近で主噴射を実行して、主燃焼を圧縮上死点付近において発生させてしまうと、前段燃焼に伴う熱発生率の上昇と主燃焼に伴う熱発生率の上昇とが重なってしまい、燃焼騒音が増大してしまうのである。
尚、エンジンの圧縮比は高いほど、圧縮端温度及び圧縮端圧力を高めるため、気筒内の温度・圧力状態は、コンター図において相対的に右上に位置し、エンジンの圧縮比が低いほど、圧縮端温度、圧力が低くなるため、気筒内の温度・圧力状態は、コンター図における相対的に左下に位置する。従って、エンジンの低圧縮比化は、着火遅れ時間を長くすることに対応する。
本願発明者らは、気筒内の状態が着火遅れ時間が長くなるような状態になることに起因して前段燃焼のピークが圧縮上死点で、又はそれよりも遅れて発生するときには、前段燃焼の遅れに対応して主燃焼が遅れて発生するように、主噴射のタイミングを遅らせるようにした。
具体的にここに開示する技術は、圧縮自着火エンジンの制御装置を対象とし、このエンジンは、幾何学的圧縮比が15以下に設定されかつ、気筒内に供給した燃料を圧縮自着火させるエンジン本体と、前記気筒内に臨んで配設されかつ、当該気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁を通じた前記気筒内への前記燃料の噴射形態を制御する噴射制御手段と、を備える。
そうして、前記噴射制御手段は、前記エンジン本体が部分負荷の運転領域にあるときには、拡散燃焼を主体とした主燃焼を行うために圧縮上死点又はそれよりも前に燃料噴射を開始する主噴射と、前記圧縮上死点よりも前に前段燃焼のピークが発生するように、前記圧縮上死点よりも前のタイミングで少なくとも1回の燃料噴射を行う前段噴射と、を実行すると共に、前記噴射制御手段はさらに、前記気筒内の状態が着火遅れ時間が長くなる状態になることに起因して前記前段燃焼のピークが前記圧縮上死点で又はそれよりも遅れて発生するときには、前記主噴射の開始を前記圧縮上死点よりも所定期間だけ遅らせる主噴射リタード制御を実行する。ここで、エンジン本体の幾何学的圧縮比は、10以上15以下に設定してもよい。
この構成によると、エンジン本体が部分負荷の運転領域にあるときには、圧縮上死点よりも前のタイミングで実行する前段噴射により、圧縮上死点よりも前に前段燃焼のピークが発生し、それによって圧縮端温度及び圧縮端圧力が高まる。そうして、主噴射開始時点における気筒内の温度及び圧力を最適化した上で、主噴射を開始することにより、主燃焼の制御性が向上し得る。つまり、着火遅れ時間が短くなることにより、拡散燃焼を主体とした主燃焼を圧縮上死点付近で安定して発生させて、燃費及びNVH性能の向上に有利になり得る。
一方、気筒内の状態が着火遅れ時間が長くなる状態になることに起因して前段燃焼のピークが圧縮上死点で又はそれよりも遅れて発生するときには、主噴射リタード制御を実行し、主噴射の開始を圧縮上死点よりも所定期間だけ遅らせる。このことにより、前述したように主噴射の開始を圧縮上死点付近としたのでは、遅れて生起した前段燃焼と主燃焼とが重なってしまうところ、主噴射を遅らせる分だけ、主燃焼は、前段燃焼に対してずれて発生するため、燃焼騒音の増大を回避して、NVH性能が向上し得る。そうして、前段燃焼及び主燃焼を含む燃焼パターンを実現することは、燃費の点で有利になり得る。
前記噴射制御手段は、前記前段噴射として複数回の噴射を実行すると共に、その各噴射を、当該各噴射で噴射される燃料が前記気筒に嵌挿したピストン頂面のキャビティ内に至るようなタイミングで実行する、としてもよい。
着火遅れ時間を決定する要因は気筒内の温度及び圧力だけでなく、等量比もまた着火遅れ時間を決定する要因の一つであり、一般的に、等量比が高いほど着火遅れ時間は短くなり、等量比が低いほど着火遅れ時間は長くなる。例えば前段噴射の総噴射量を1回の燃料噴射で気筒内に全て供給してしまうと、燃料は一気に拡散して気筒内はオーバーリーンな状態となる。このことは、(局所)等量比を低くして、前段噴射に係る着火遅れを長くし得る。
これに対し前記の構成のように、前段噴射として複数回の噴射を実行することは、1回当たりの噴射量が少なくなるため燃料が一気に拡散しないと共に、先に噴射されかつ、拡散せずに周囲に漂っている燃料に対し、後から噴射した燃料が追いついて互いに集まるようになる。その結果、局所的に等量比が高い混合気が形成され得るようになり、前段噴射によって噴射された燃料の着火遅れ時間は短くなって、前段燃焼の制御性が高まり得る。
また、噴射される燃料の全てがピストン頂面のキャビティ内に至るようなタイミングで、前段噴射を実行することにより、噴射された燃料がキャビティ外へ拡散することを抑制し、等量比が高い混合気をキャビティ内に形成し得る。このことは、前段燃焼の制御性をより一層高め得る。
そのようにして前段噴射に係る着火遅れ時間を極力短くした上でさらに、前段燃焼のピークが、圧縮上死点で、又はそれよりも遅れて発生するときには、前記主噴射リタード制御の実行によって燃焼騒音の増大を抑制する。つまり、燃料がキャビティ内に至るようなタイミングで噴射を実行するという制約によって前段噴射のタイミングを進角させることができない一方で、前段燃焼のピークが圧縮上死点で又はそれよりも遅れて発生してしまうときに、前記主噴射リタード制御は特に有効である。
前記噴射制御手段は、前記主噴射リタード制御を、前記エンジン本体が未暖機でかつ、所定の低負荷領域にあるときに実行する、としてもよい。
エンジン本体が未暖機であることや、エンジン本体の負荷が低いことは、気筒内の壁面温度を低下させるため、燃料の着火遅れ時間が長くなり得る。
前記噴射制御手段はさらに、前記主噴射リタード制御を、外気温度が所定温度以下の極冷間条件、及び、大気圧が所定圧以下の高地条件の少なくとも一方が成立したときに実行する、としてもよい。
外気温度が所定温度以下の極冷間条件や大気圧が所定圧以下(標高が所定の標高以上)の高地条件もまた、着火遅れ時間を長くし、これらの条件の内の少なくとも一方と、前述したエンジン本体が未暖機であることや、エンジン本体の負荷が低いこととが組み合わさったときには、燃料の着火遅れ時間がさらに長くなり得る。このため、前記主噴射リタード制御の実行が、NVH性能の向上に有効になり得る。
以上説明したように、前記の圧縮自着火エンジンの制御装置によると、エンジン本体が部分負荷の運転領域にあるときには、前段噴射によって、圧縮上死点よりも前に前段燃焼のピークを発生させることにより、主噴射開始時点における気筒内の温度及び圧力が最適化され、拡散燃焼を主体とした主燃焼を圧縮上死点付近で安定して発生させて、燃費及びNVH性能の向上に有利になり得る。一方、気筒内の状態が着火遅れ時間が長くなる状態になることに起因して前段燃焼のピークが圧縮上死点で又はそれよりも遅れて発生するときには、主噴射の開始を圧縮上死点よりも所定期間だけ遅らせることにより、主燃焼と前段燃焼とをずらして発生させて、燃焼騒音の増大を回避し、NVH性能を向上し得る。
ディーゼルエンジンの構成を示す概略図である。 ディーゼルエンジンの制御に係るブロック図である。 (a)局所等量比を変化させたときの、局所温度に対する着火遅れ時間の関係の一例を示す図、(b)気筒内圧力を変化させたときの、局所温度に対する着火遅れ時間の関係の一例を示す図である。 気筒内温度と気筒内圧力とをパラメータとした温度−圧力平面上における、着火遅れ時間についてのコンター図の一例である。 図4のコンター図に対応する、エンジン負荷−回転数マップでのエンジンの運転領域を例示する図である。 ディーゼルエンジンの運転領域(3)における燃料噴射形態の一例と、それに伴う熱発生率の履歴の一例とを示す図である。 ディーゼルエンジンの運転領域(4)における燃料噴射形態の一例と、それに伴う熱発生率の履歴の一例とを示す図である。 ディーゼルエンジンの運転領域(2)における燃料噴射形態の一例と、それに伴う熱発生率の履歴の一例とを示す図である。 ディーゼルエンジンの運転領域(1)における燃料噴射形態の一例と、それに伴う熱発生率の履歴の一例とを示す図である。
以下、実施形態に係る、圧縮自着火エンジンの一例としてのディーゼルエンジンを図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1,2は、実施形態に係るエンジン(エンジン本体)1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されると共に、軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンであって、複数の気筒11a(1つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン13とを有している。このエンジン1の各気筒11a内には、ピストン14が往復動可能にそれぞれ嵌挿されていて、このピストン14の頂面にはリエントラント形燃焼室14aを区画するキャビティが形成されている。このピストン14は、コンロッド14bを介してクランクシャフト15と連結されている。
前記シリンダヘッド12には、各気筒11a毎に吸気ポート16及び排気ポート17が形成されているとともに、これら吸気ポート16及び排気ポート17の燃焼室14a側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。
これら吸排気弁21,22をそれぞれ駆動する動弁系において、排気弁側には、当該排気弁22の作動モードを通常モードと特殊モードとに切り替える油圧作動式の可変機構(図2参照。以下、VVM(Variable Valve Motion)と称する)が設けられている。このVVM71は、その構成の詳細な図示は省略するが、カム山を1つ有する第1カムとカム山を2つ有する第2カムとの、カムプロファイルの異なる2種類のカム、及び、その第1及び第2カムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に排気弁に伝達するロストモーション機構を含んで構成されており、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22は、排気行程中において一度だけ開弁される通常モードで作動するのに対し、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22が、排気行程中において開弁すると共に、吸気行程中においても開弁するような、いわゆる排気の二度開きを行う特殊モードで作動する。
VVM71の通常モードと特殊モードとの切り替えは、エンジン駆動の油圧ポンプ(図示省略)から供給される油圧によって行われ、特殊モードは、内部EGRに係る制御の際に利用され得る。尚、こうした通常モードと特殊モードとの切り替えを可能にする上で、排気弁22を電磁アクチュエータによって駆動する電磁駆動式の動弁系を採用してもよい。また、内部EGRの実行としては、排気の二度開きに限定されるものではなく、例えば吸気弁21を2回開く、吸気の二度開きによって内部EGR制御を行ってもよいし、排気行程乃至吸気行程において吸気弁21及び排気弁22の双方を閉じるネガティブオーバーラップ期間を設けて既燃ガスを残留させる内部EGR制御を行ってもよい。尚、VVM71による内部EGR制御は、主に燃料の着火性が低いエンジン1の冷間時に行われる。
前記シリンダヘッド12には、燃料を噴射するインジェクタ18と、エンジン1の冷間時に各気筒11a内の吸入空気を暖めて燃料の着火性を高めるためのグロープラグ19とが設けられている。前記インジェクタ18は、その燃料噴射口が燃焼室14aの天井面から該燃焼室14aに臨むように配設されていて、基本的には圧縮行程上死点付近で、燃焼室14aに燃料を直接噴射供給するようになっている。
前記エンジン1の一側面には、各気筒11aの吸気ポート16に連通するように吸気通路30が接続されている。一方、前記エンジン1の他側面には、各気筒11aの燃焼室14aからの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。これら吸気通路30及び排気通路40には、詳しくは後述するが、吸入空気の過給を行う大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62とが配設されている。
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。一方、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒11a毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒11aの吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、大型及び小型ターボ過給機61,62のコンプレッサ61a,62aと、該コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ35と、前記各気筒11aの燃焼室14aへの吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。このスロットル弁36は、基本的には全開状態とされるが、エンジン1の停止時には、ショックが生じないように全閉状態とされる。
前記排気通路40の上流側の部分は、各気筒11a毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。
この排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、上流側から順に、小型ターボ過給機62のタービン62b、大型ターボ過給機61のタービン61bと、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置41と、サイレンサ42とが配設されている。
この排気浄化装置41は、酸化触媒41aと、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、フィルタという)41bとを有しており、上流側から、この順に並んでいる。酸化触媒41a及びフィルタ41bは1つのケース内に収容されている。前記酸化触媒41aは、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持した酸化触媒を有していて、排気ガス中のCO及びHCが酸化されてCO及びHOが生成する反応を促すものである。また、前記フィルタ41bは、エンジン1の排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。尚、フィルタ41bに酸化触媒をコーティングしてもよい。
前記吸気通路30における前記サージタンク33とスロットル弁36との間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型コンプレッサ62aよりも下流側部分)と、前記排気通路40における前記排気マニホールドと小型ターボ過給機62の小型タービン62bとの間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりも上流側部分)とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するための排気ガス還流通路50によって接続されている。この排気ガス還流通路50は、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するための排気ガス還流弁51a及び排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52とが配設された主通路51と、EGRクーラ52をバイパスするためのクーラバイパス通路53と、を含んで構成されている。このクーラバイパス通路53には、クーラバイパス通路53を流通する排気ガスの流量を調整するためのクーラバイパス弁53aが配設されている。
大型ターボ過給機61は、吸気通路30に配設された大型コンプレッサ61aと、排気通路40に配設された大型タービン61bとを有している。大型コンプレッサ61aは、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ35との間に配設されている。一方、大型タービン61bは、排気通路40における排気マニホールドと酸化触媒41aとの間に配設されている。
小型ターボ過給機62は、吸気通路30に配設された小型コンプレッサ62aと、排気通路40に配設された小型タービン62bとを有している。小型コンプレッサ62aは、吸気通路30における大型コンプレッサ61aの下流側に配設されている。一方、小型タービン62bは、排気通路40における大型タービン61bの上流側に配設されている。
すなわち、吸気通路30においては、上流側から順に大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとが直列に配設され、排気通路40においては、上流側から順に小型タービン62bと大型タービン61bとが直列に配設されている。これら大型及び小型タービン61b,62bが排気ガス流により回転し、これら大型及び小型タービン61b,62bの回転により、該大型及び小型タービン61b,62bとそれぞれ連結された前記大型及び小型コンプレッサ61a,62aがそれぞれ作動する。
小型ターボ過給機62は、相対的に小型のものであり、大型ターボ過給機61は、相対的に大型のものである。すなわち、大型ターボ過給機61の大型タービン61bの方が小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりもイナーシャが大きい。
吸気通路30には、小型コンプレッサ62aをバイパスする小型吸気バイパス通路63が接続されている。この小型吸気バイパス通路63には、該小型吸気バイパス通路63へ流れる空気量を調整するための小型吸気バイパス弁63aが配設されている。この小型吸気バイパス弁63aは、無通電時には全閉状態(ノーマルクローズ)となるように構成されている。
一方、排気通路40には、小型タービン62bをバイパスする小型排気バイパス通路64と、大型タービン61bをバイパスする大型排気バイパス通路65とが接続されている。小型排気バイパス通路64には、該小型排気バイパス通路64へ流れる排気量を調整するためのレギュレートバルブ64aが配設され、大型排気バイパス通路65には、該大型排気バイパス通路65へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ65aが配設されている。レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aは共に、無通電時には全開状態(ノーマルオープン)となるように構成されている。
これら大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62は、それらが配設された吸気通路30及び排気通路40の部分も含めて、一体的にユニット化されて、過給機ユニット60を構成している。この過給機ユニット60がエンジン1に取り付けられている。
このように構成されたディーゼルエンジン1は、パワートレイン・コントロール・モジュール(以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。このPCM10が制御装置を構成する。PCM10には、図2に示すように、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW1、サージタンク33に取り付けられて、燃焼室14aに供給される空気の圧力を検出する過給圧センサSW2、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサSW3、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW4、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW5、及び、排気中の酸素濃度を検出するOセンサSW6の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じてインジェクタ18、グロープラグ19,動弁系のVVM71、各種の弁36、51a、53a、63a、64、65aのアクチュエータへ制御信号を出力する。
そうして、このエンジン1は、その幾何学的圧縮比を10以上15以下(例えば14)とした、比較的低圧縮比となるように構成されており、これによって排気エミッション性能の向上及び熱効率の向上を図るようにしている。
(エンジンの燃焼制御の概要)
前記PCM10によるエンジン1の基本的な制御は、主にアクセル開度に基づいて目標トルク(目標となる負荷)を決定し、これに対応する燃料の噴射量や噴射時期等をインジェクタ18の作動制御によって実現するものである。目標トルクは、アクセル開度が大きくなるほど、またエンジン回転数が高くなるほど、大きくなるように設定され、目標トルクとエンジン回転数とに基づいて燃料の噴射量が設定される。噴射量は、目標トルクが高くなるほど、また、エンジン回転数が高くなるほど大きくなるように設定される。また、スロットル弁36や排気ガス還流弁51aの開度の制御(外部EGR制御)や、VVM71の制御(内部EGR制御)によって、気筒11a内への排気の還流割合を制御する。
そうしてこのエンジン1においては、インジェクタ18の制御を通じた燃料噴射の制御特性のチューニングに際し、エンジン負荷−エンジン回転数のマップではなく、図4に例示するように、気筒内の温度及び圧力をパラメータとする温度−圧力平面上で燃料の着火遅れ時間が一定となる温度・圧力状態をつないだ等時間線を含むコンター図を利用している点が特徴である。以下、この点について図を参照しながら説明する。
図3は、化学反応シミュレーションソフトウエアを用いて、気筒内の圧縮着火(低温度自着火)現象を解析したシミュレーション結果の一例を示している。図3(a)は、所定の筒内圧力(例えば4MPa)において、混合気局所等量比φを低(φ=1.0)、中(φ=2.0)、高(φ=3.0)にそれぞれ変更した場合の、混合気局所温度に対する着火遅れ時間の関係を示している。図3(a)における局所温度範囲は、700〜1200Kに相当する。これによると、局所等量比が低いほど着火遅れ時間は長くなり、局所等量比が高いほど着火遅れ時間は短くなる。また基本的には、局所等量比が一定であれば、混合気局所温度が高いほど(図の左側ほど)着火遅れ時間は短くなり、混合気局所温度が低いほど(図の右側ほど)着火遅れ時間は長くなるものの、着火遅れ時間は、混合気局所温度の変化に対して一様には変化せずに、混合気局所温度を低温度側から高温度側へと変化させたときには、着火遅れ時間が、一旦長くなる温度帯が存在している。
また、図3(b)に示すように、所定の局所等量比(φ=1.0)において、筒内圧力Pを低(P=2MPa)、中(P=3MPa)、高(P=4MPa)にそれぞれ変更した場合の、混合気局所温度に対する着火遅れ時間の関係を示している。図3(b)における局所温度範囲も、700〜1200Kに相当する。これによると、筒内圧力が低いほど着火遅れ時間は長くなり、筒内圧力が高いほど着火遅れ時間は短くなる。また基本的には、筒内圧力が一定であれば、混合気局所温度が高いほど(図の左側ほど)着火遅れ時間は短くなり、混合気局所温度が低いほど(図の右側ほど)着火遅れ時間は長くなるものの、着火遅れ時間は、混合気局所温度の変化に対して一様には変化せずに、混合気局所温度を低温度側から高温度側へと変化させたときには、着火遅れ時間が、一旦長くなる温度帯が存在している。
このように着火遅れ時間が混合気局所温度の変化に対し一様に変化しない理由は、次のように考えられる。つまり低温度自着火では、発熱を伴う熱炎と、熱炎の前の冷炎と呼ばれる低温度炎とが発現すると共に、冷炎反応が活発になる温度域が存在している。つまり、冷炎反応が活発になる温度域では、冷炎反応が長く継続し、その後に熱炎反応が発現するため、熱炎反応が発現するまでの時間、換言すれば気筒内における着火遅れ時間が長くなってしまうのである。
こうした図3(a)(b)に例示するシミュレーション結果に基づき、縦軸を気筒内温度、横軸を気筒内圧力とした温度−圧力平面上で、着火遅れ時間が一定となる温度・圧力状態をつないだ等時間線を含むコンター図を作成することが可能であり、これを図4に例示する。このコンター図においては、等時間線は、S字を反転させた逆S字のような特性を有しており、着火遅れ時間が短くなるほど、それに対応する等時間線は右乃至上方に位置し、着火遅れ時間が長くなるほど、それに対応する等時間線は、左乃至下方に位置する。このため、L1〜L3の等時間線それぞれの着火遅れ時間は、L1<L2<L3の関係を有している。例えば符号L3の等時間線が着火遅れ時間τ=1.5msecに対応すると仮定した場合、気筒内の温度・圧力状態が、等時間線L3よりも右乃至上側の領域にあるときには着火遅れ時間が1.5msecよりも短くなり、逆に、気筒内の温度・圧力状態が、等時間線L3よりも左乃至下側の領域にあるときには着火遅れ時間が1.5msecよりも長くなることになる。尚、等時間線は、等量比が変化することによっても、その位置を変える。
こうしてこのコンター図においては、L1〜L3の等時間線によって、(1)(2)、(3)、(4)の3つの領域に分けている。つまり、エンジンの運転状態を、その気筒内の温度及び圧力状態に基づき、着火遅れ時間を基準として、3つの領域に分けている。
図5は、図4のコンター図に対応する、エンジン負荷−エンジン回転数のマップを示しており、このマップは、エンジン1の未暖機時のマップに対応する。つまり、以下に説明する燃料噴射制御は、エンジン1の未暖機時の制御であるが、それに限定されない。図5を参照すると、図4における(4)の領域は高負荷領域に、(3)の領域は、(4)の領域よりも負荷が低い中負荷領域に、(2)の領域は、(3)の領域よりも負荷が低い低負荷領域に、(1)の領域は、(2)の領域よりも負荷が低い極軽負荷領域にそれぞれ対応する。
図6は、このように設定された(1)〜(4)の4つの領域の内の、(3)の領域(つまり、部分負荷領域)における燃料噴射形態(上図)及びそれに伴う気筒11a内の熱発生率の履歴の一例(下図)を示している。(3)の領域では、圧縮行程中における圧縮上死点に比較的近いタイミングで、比較的短い時間間隔を空けて3回のプレ噴射(前段噴射)を実行すると共に、その後の圧縮上死点付近において主噴射を1回、実行する。つまり、合計4回の燃料噴射を実行する。3回のプレ噴射は、十分な熱発生率を有するプレ燃焼(前段燃焼に相当する)を、その熱発生率のピークが圧縮上死点前の所定の時期に発生するように、生起させる。換言すれば、主燃焼の開始前にプレ燃焼を生起させ、それにより主噴射を開始する時点での気筒11a内の温度及び圧力を高めておく。このことは主噴射により噴射された燃料の着火遅れ時間τmainを短くする。主噴射は、図例で示すように圧縮上死点前の所定のタイミング、又は、圧縮上死点で噴射を開始するが、着火遅れ時間τmainが短いことで、その主噴射に伴う主燃焼は圧縮上死点付近において開始するようになる。このことは、熱効率の向上、ひいては燃費の向上に有利になり得る。また、前記の燃焼は、その後の主燃焼の熱発生率の上昇を緩慢にさせる。このことは燃焼騒音を低減させて、NVH性能を高める上で有利になり得る。つまり、プレ噴射及びそれに伴うプレ燃焼は、主燃焼の制御性を高めて主燃焼を所望のタイミングで発生させ、それにより、燃費の向上及びNVH性能の向上を実現し得る。
ここで、プレ噴射を3回に分けて行うことは、プレ燃焼の制御性を向上させる上で有利である。すなわち、プレ噴射の総噴射量は、プレ燃焼により発生させたい熱量、つまり主噴射の開始時点において要求される筒内温度及び圧力とするために必要な熱量によって決定される。そうして決定した総噴射量を、仮に1回のプレ噴射によって気筒11a内に供給してしまうと、比較的大量の燃料を、長いパルスで継続して噴射することになるため、その燃料は気筒内で広く拡散してしまい、混合気の(局所)等量比は低くなってしまう。等量比の低下は、プレ燃焼の着火遅れ時間τpreを長くする。これに対し、必要な総噴射量を複数回に分けて噴射することは1回当たりの噴射量を少なくするから、燃料の拡散を抑制する。そのため、先の噴射噴射によって、拡散が抑制されて付近に漂っている局所リッチとなった混合気に、後から噴射した燃料が含まれるようになり、局所等量比の高い(例えば等量比が2〜3)の混合気を形成することが可能になる。このことはプレ燃焼の着火遅れ時間τpreを短くして、プレ燃焼の発生タイミングを精度よく制御することを可能にする。つまり、プレ燃焼を、上述のように、その熱発生率のピークを、圧縮上死点前の所定の時期に精度よく発生させることを可能にする。このことは、主燃焼を所望のタイミングで安定させて生じさせることにつながると共に、主燃焼の燃焼騒音を低減する上でも有利になる。
また、3回のプレ噴射は、その各回の噴射によって噴射された燃料の全てが、キャビティ内に至るタイミングで実行される。このことにより、キャビティ内に、局所等量比の高い混合気が形成されるため、プレ燃焼の着火遅れ時間τpreがさらに短くなり、プレ燃焼の制御性がさらに高まる。尚、複数回のプレ噴射によって等量比が高い混合気を作るためには、噴口が多いインジェクタを採用することが好ましい。噴口の数は、8個以上であることが好ましく、12個以上であることがさらに好ましい。
これに対し、図7に示す燃料噴射形態(上図)及びそれに伴う気筒11a内の熱発生率の履歴の一例(下図)は、(4)の領域における燃料噴射形態及び熱発生率の履歴の一例である。つまり、(3)の領域よりも負荷の高い領域に対応する(図5参照)。
(4)の領域では、負荷が高くなることに伴い、燃料の総噴射量が増えてプレ噴射で噴射する燃料噴射量が増えると共に、過給機61,62による過給量が増えて、図4にも示すように、着火遅れ時間はより短くなり得る。そこで、プレ噴射の回数を3回から2回に減らしても、プレ燃焼の熱発生率のピークを圧縮上死点前の所定の時期に発生させることが可能になる。その結果、(4)の領域においても主噴射は、圧縮上死点前の所定のタイミング、又は、圧縮上死点で噴射を開始させるが、着火遅れ時間τmainが短いことで、その主噴射に伴う主燃焼は圧縮上死点付近において開始するようになる。このことは、熱効率の向上、及び、NVH性能を高める上で有利になり得る。
尚、プレ噴射は、前述したように噴射した燃料がキャビティ内に至るようなタイミングで噴射してもよいが、(4)の領域においては空気利用率を高める観点から、噴射した燃料の一部がキャビティ外に至るような早いタイミングで、燃料噴射を行ってもよい。
図8は、(2)の領域における燃料噴射形態(上図)及び熱発生率の履歴の一例(下図)を示している。(2)の領域は、(3)の領域よりも低負荷の領域であり、この領域では、(3)の領域と同様に、噴射された燃料の全てがキャビティ内に至るタイミングで、3回のプレ噴射を実行する。但し、図4にも示すように、(2)の領域は、(3)の領域に比べて着火遅れ時間τpreが長くなるため、プレ燃焼のピークは圧縮上死点、又はそれよりも遅れてしまう。ここで、プレ噴射のタイミングを、前述の通り、噴射した燃料の全てがキャビティ内に至るタイミングとすることから、プレ噴射のタイミングを進角させることは困難であり、そのため、この(2)の領域において、プレ燃焼のピークを圧縮上死点よりも前にすることは困難である。
このように(2)の領域では、プレ燃焼のピークが圧縮上死点、又はそれよりも遅れてしまうことから、主噴射の開始タイミングを、(3)の領域でのタイミングと同様に、圧縮上死点又はそれよりも前のタイミングに設定してしまうと、プレ燃焼と主燃焼とが互いに重なって燃焼騒音が増大してしまう。そこで、(2)の領域では、主噴射の開始タイミングを圧縮上死点よりも所定期間だけ遅らせる。このことにより、前段燃焼が主燃焼と重ならないようにして燃焼騒音の増大を回避する一方で、(3)や(4)の領域と同様に、前段燃焼と主燃焼とを含む燃焼パターンを維持することによって、燃費の向上及びNVH性能の向上に有利になり得る。
図9は、(1)の領域における燃料噴射形態(上図)及び熱発生率の一例である。(1)の領域は、図4に示すコンター図においては(2)の領域と同じ領域であるが、図5に示すように(2)の領域に対しては、負荷が低い領域に相当する。(1)の領域においては、(2)の領域と比較して、負荷が低いことに起因して、燃料の総噴射量が少なくなり、燃料の着火遅れ時間がさらに長くなる。このため、プレ燃焼を生起させた後に、主噴射及び拡散燃焼を主体とする主燃焼を実行しようとしても、その主燃焼が圧縮上死点よりも大幅に遅れてしまうことで、拡散燃焼が行い得なくなる。そこで、(1)の領域においては、噴射した燃料と空気とを十分に混合した後に、これを圧縮上死点付近において着火及び燃焼させる予混合着火燃焼(PCI(Premixed Charge compression Ignition)燃焼、以下においては、単に予混合燃焼という)を利用する。具体的には、図9に示すように、圧縮行程中(圧縮上死点前)において、所定の時間間隔を空けて4回の燃料噴射を実行する。このことは、(3)や(2)の領域と比較して、プレ噴射の回数を増やしていると言うことができる。尚、4回の燃料噴射は、その各回の噴射によって噴射された燃料の全てが、キャビティ内に至るタイミングで実行すればよい。プレ噴射の回数を増やしていることと、(3)の領域における主噴射を省略する分だけプレ噴射での燃料噴射量が増えることとが相俟って、着火遅れ時間τは短くなり得る。その結果、噴射した燃料は、空気と十分に混合された状態で圧縮上死点付近において自着火により燃焼する。予混合燃焼の利用は、煤やNOxの発生を抑制し得る点で有利である。また、燃料噴射量が少なく、拡散燃焼を安定して行い得ない場合において、予混合燃焼の利用は、燃焼の安定化が図られ得る。
ここで、(1)の領域及び(2)の領域における燃料噴射形態の切り替えは、着火遅れ時間が相対的に短いことで、プレ燃焼のコントロールが可能であるときには、拡散燃焼モードとするために、図8に示す燃焼噴射形態を選択する一方、着火遅れ時間が相対的に長くプレ燃焼のコントロールができないときには、予混合燃焼モードとするために、図9に示す燃焼噴射形態を選択する、と言い換えることも可能である。また、図9に示すような予混合燃焼モードとしている状態でエンジン負荷が高まったときには、着火遅れ時間が短くなることに起因して、圧縮上死点付近で発生する燃焼が急激になり、熱発生率の立ち上がりが急峻になって燃焼騒音の点で不利になり得る。そのため、相対的に負荷の高い(2)の領域では、予混合燃焼モードではなく、拡散燃焼モードとすることが、NVH性能を向上させる上で好ましいことになる。
尚、図6〜9に示す燃料噴射量や熱発生率は、これらの図を相互に比較したときに、必ずしも、相対的な燃料噴射量の大小や熱発生率の大小を示してはいない。また、ここに示す噴射形態に対し、例えば噴射の回数やタイミング等を適宜の範囲で変更することが可能である。
尚、このような燃焼制御は、エンジン1が未暖機状態であるという条件に加えて、又は、その条件に代えて、気筒11a内の着火性が低下する外気温度が0℃以下の条件(極冷間条件)、及び/又は、標高1000m以上の条件(大気圧が所定圧以下の高地条件)のときに行うようにしてもよい。外気温度は外気温センサにより、標高は標高センサにより検出することが可能である。言い換えると、外気温度が0℃以下の条件(極冷間条件)、及び/又は、標高1000m以上の条件(大気圧が所定圧以下の高地条件)が成立しない限り、気筒内の温度・圧力状態が、図4に示すコンター図における(1)(2)の領域とはならない場合もあり得る。
また、例えばエンジン1の幾何学的圧縮比が低くなればなるほど、圧縮端温度及び圧縮端圧力は低くなり得るから、例えばエンジン1が暖機状態であっても、図4に示すコンター図において、(1)(2)の領域となり得る場合がある。つまり、エンジン1が未暖機状態であるという条件は必須の条件ではない。
尚、前記においてはディーゼルエンジン1の燃料噴射に係る制御特性のチューニングに、図4に示すコンター図を利用したが、例えば図4に示すコンター図をマップとしてPCM10に保存しておき、各種パラメータの検出を通じて気筒内の温度・圧力状態を推定し、それに応じて、燃料の噴射形態を切り替えるようなエンジン制御を行ってもよい。また、コンター図をマップとしてPCM10に保存するのではなく、着火遅れ時間に係るモデルをPCM10に保存しておき、各種パラメータの検出とモデルとに基づいて、気筒内の温度・圧力状態と、等時間線とをそれぞれ推定し、それらに応じて、燃料の噴射形態を切り替えるような制御を行ってもよい。
1 ディーゼルエンジン(エンジン本体)
10 PCM(噴射制御手段)
11a 気筒
14 ピストン
18 インジェクタ(燃料噴射弁)

Claims (4)

  1. 幾何学的圧縮比が15以下に設定されかつ、気筒内に供給した燃料を圧縮自着火させるエンジン本体と、
    前記気筒内に臨んで配設されかつ、当該気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁を通じた前記気筒内への前記燃料の噴射形態を制御する噴射制御手段と、を備え、
    前記噴射制御手段は、前記エンジン本体が部分負荷の運転領域にあるときには、拡散燃焼を主体とした主燃焼を行うために圧縮上死点又はそれよりも前に燃料噴射を開始する主噴射と、前記圧縮上死点よりも前に前段燃焼のピークが発生するように、前記圧縮上死点よりも前のタイミングで少なくとも1回の燃料噴射を行う前段噴射と、を実行すると共に、
    前記噴射制御手段はさらに、前記気筒内の状態が着火遅れ時間が長くなる状態になることに起因して前記前段燃焼のピークが前記圧縮上死点で又はそれよりも遅れて発生するときには、前記主噴射の開始を前記圧縮上死点よりも所定期間だけ遅らせる主噴射リタード制御を実行する圧縮自着火エンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載の圧縮自着火エンジンの制御装置において、
    前記噴射制御手段は、前記前段噴射として複数回の噴射を実行すると共に、その各噴射を、当該各噴射で噴射される燃料が前記気筒に嵌挿したピストン頂面のキャビティ内に至るようなタイミングで実行する圧縮自着火エンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の圧縮自着火エンジンの制御装置において、
    前記噴射制御手段は、前記主噴射リタード制御を、前記エンジン本体が未暖機でかつ、所定の低負荷領域にあるときに実行する圧縮自着火エンジンの制御装置。
  4. 請求項3に記載の圧縮自着火エンジンの制御装置において、
    前記噴射制御手段はさらに、前記主噴射リタード制御を、外気温度が所定温度以下の低温度条件、及び、大気圧が所定圧以下の高地条件の少なくとも一方が成立したときに実行する圧縮自着火エンジンの制御装置。
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