JP5326921B2 - 有機樹脂被覆鋼材 - Google Patents

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本発明は、腐食の厳しい環境、例えば海洋中における鋼構造物の防食技術に関する。
海洋環境における鋼構造物の防食法には電気防食が主に用いられるが、干満帯や飛沫帯では、腐食が最も激しいにもかかわらず電気防食(陰極防食)があまり有効でない。そこで、建設省鋼管杭協会では、干満帯、飛沫帯に対して、ポリエチレンやポリウレタンなどの重防食用被覆の併用を推奨している。
ところが、陰極防食は、被覆端面からの剥離(陰極剥離)を促進する。そのため、陰極防食を用いる場合、重防食用被覆鋼材には、有機樹脂被覆の耐陰極剥離性が要求される。今までは、クロメート化成処理を用いることにより、高い耐陰極剥離性を満足してきた。しかし、昨今の環境優先時代の要請で、クロム等の環境負荷元素を含まない化成処理を施した有機樹脂被覆鋼材では、十分な耐陰極剥離性が得られていない。
ところで、剥離には二つの様式がある。一つは、鋼材の腐食(アノード反応)の進行に伴って進展する自然剥離、もう一つは、陰極防食(カソード防食)されている鋼材の近傍で進展するカソード剥離である。これら二つの剥離は、電気化学的に正反対の環境で進行するため、一般に、耐水密着性を向上させるべく自然剥離を抑制すると、耐陰極剥離性が劣化し、逆に耐陰極剥離性を向上させると、耐水密着性が劣化するという相反的傾向が見られ、両方の性能を同時に高めることは困難であった。
特許文献1には、クロメート材に匹敵するノンクロメート樹脂被覆鋼材を提供するために、その化成処理皮膜の組成を、無水酸化物換算のモル比で、Al23/P25=0.2〜0.6、B23/P25=0.01〜0.1、MO/P25=0.01〜0.2(Mはアルカリ土類金属)、残部がP25、H2O、及び不可避の不純物とする技術思想が開示されている。この皮膜は、さらに、Fe、Zn、Ni、又はVから選ばれる一つ以上の元素を含み、無機酸化物プライマー層組成のモル比が、Fe、Zn、Ni、またはVから選ばれる一つ以上の元素の酸化物の合計/P2O5=0.005〜0.3を含んでもよく、あるいは、さらに、Ti、Si、又はZrから選ばれる一つ以上の元素の酸化物を含み、その組成比が、無機酸化物プライマー層全体に対して、Ti、Si、又はZrから選ばれる一つ以上の元素の酸化物の合計で、10〜50mass%を含んでもよい。
しかし、この化成処理皮膜は、クロメートに匹敵する耐水密着性と高温(60℃)耐陰極剥離性をうまく両立させているものの、常温(実際に使用される海洋温度域)の耐陰極剥離性はまだ十分ではなく、一般海域で用いるには不十分である。
耐陰極剥離性を向上させる他の発明として、陰極剥離の起因となる、酸素還元で生成するアルカリを抑制するために、酸素透過度の小さい樹脂被覆を積層した発明が特許文献2に開示されている。しかし、これも、クロメート処理材に匹敵する耐水密着性と耐常温陰極剥離性の両立の実現に至っていない。
特許公開2007−313885号公報 特許公開2005−132105号公報
有機樹脂被覆鋼材において、化成処理層に、環境負荷物質を使用せず、かつ、クロメートと同等以上レベルの耐水密着性と常温温度域における耐陰極剥離性を両立させることが課題である。
特許文献1に開示されている化成処理皮膜組成は、陶器・ホーロー並みの耐水性を実現するために、有機成分を完全に無くし、無機成分のみで構成されている。本発明者は、この皮膜組成中に、有機官能基を有するシランカップリング剤加水分解縮重合物を少量加えると、特許文献1のコンセプトを大きく破壊することなく、耐水密着性と、耐常温陰極剥離を両立させることができることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき、さらに検討した結果、以下のような本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は、耐常温陰極剥離性を向上させる一方、耐水密着性を劣化させる、シランカップリング剤加水分解縮合重合物を添加し、規定された組成範囲では両者とも同時に合格基準値を満たすことができる、というものである。
(1)鋼材表面に、P、Al、B、及び、アルカリ土類金属(M)の酸化物又は水酸化物の一種または二種以上を含み、かつ、その組成が、無水酸化物換算のモル比で、Al23/P25=0.2〜0.6、B23/P25=0.01〜0.1、MO/P25=0.01〜0.2から成る化成処理層、及び有機樹脂層が積層された有機樹脂被覆鋼材であって、当該化成処理層が、さらに、シラノール基(OH基)及びアミン基を有するシランカップリング剤加水分解縮重合物を、シリカ換算でSiO2/P25=0.01〜0.1含むことを特徴とする有機樹脂被覆鋼材。
(2)シランカップリング剤加水分解縮重合物を、シリカ換算でSiO2/P25=0.04〜0.08含むことを特徴とする上記(1)記載の有機樹脂被覆鋼材。
本発明により、常温の温度域で優れた耐陰極剥離性及び耐水密着性を両立させて、有機樹脂被覆鋼材を用いる鋼構造物(港湾施設等)の寿命を伸ばすことができる。
耐常温陰極剥離性と耐水性が両立する、シランカップリング剤の添加量の範囲を示す図である。
本発明は、特許文献1に開示された発明を改良したものである。特許文献1に開示されている化成処理皮膜は、陶器・ホーロー並みの耐水性を狙い、無機イオン物質のみで構成されているが、本発明者は、このコンセプトを大きく壊さない範囲で、特定の有機官能基を有する珪素化合物(シランカップリング剤)を若干添加し、耐水性をクロメート処理材よりも良好に維持しながら、耐常温陰極剥離性をクロメート処理材レベルまで向上させることに成功した。
本発明の説明をする前に、本明細書で使用する成分表記法について説明する。
本発明では、特許文献1と同様、無機酸化物プライマー(化成処理層)の組成比を、酸化物組成式を利用して規定した。酸化物組成式は、含水無機酸化物の場合、その組成と等しい酸化物と水の和で表すもので、セラミック・鉱物学の分野でよく用いられている。
さて、本発明では、特許文献1に記載されているものと異なり、有機官能基と結合した珪素化合物が存在するが、シランカップリング剤の加水分解縮重合物中のSi原子が全てSiO2であると仮定した時の、P25に対するモル比を用いて、シランカップリング剤の加水分解縮重合物の組成比を規定した。しかし実際は、シランカップリング剤が加水分解重合しても、純粋なSiO2(シリカ)にはならないので注意を要する。
また、本発明は、各組成物をP25に対するモル比で規定しているが、残部は、P25、水、不可避の不純物酸化物である。酸化物組成式の酸化物比率を用いた理由は、これで記述された範囲で、本発明の目的は達成されるからである。
鋼材は特に限定するものではないが、鋼管、鋼管矢板、鋼矢板、厚板等が例示できる。これら鋼材表面から錆、スケール、汚染物等を除去するため、サンドブラスト処理、グリッドブラスト処理、ショットブラスト処理等の下地処理を行ない、清浄な金属表面を露出させる。
化成処理層は、特許文献1のプライマー層に相当するが、クロメート(6価クロム)のような環境負荷物質を含まない。そのため、本発明の化成処理層を形成するための化成処理液の主成分は、重りん酸アルミニウム水溶液であり、それに、酸化ホウ素、アルカリ土類金属(M)酸化物、シランカップリング剤を添加・溶解する。従って、構成元素は、Al、P、B、M、O、H、となるが、OとHは酸化物イオン、あるいは水酸化物イオンとして存在し、他の陽イオンと不定比例化合物を構成する。すなわち、本発明の化成処理皮膜は、もともと整数比で示されるような元素比率を有さない化合物であり、酸化物表記を用いた理由の一つも、このためである。
Pはりん酸塩として化成処理層の主成分をなし、リンは皮膜中でH2PO4 -、HPO4 2-、リン酸イオン、あるいはこのn量体(メタ燐酸イオン、ポリリン酸イオン)として存在し、アルミイオン、ホウ素イオン、アルカリ土類金属イオンをつなげる役目をしている。
Alは耐陰極剥離性・耐水密着性を向上させる主役であるが、モル比でAl2O3/P2O5=0.2〜0.6と規定したのは、0.6を超えると、耐水密着性・造膜性が悪くなり、0.2より少ないと耐陰極剥離性は十分なほど向上しないからである。更に望ましくは、0.3〜0.4である。
Bは、皮膜の焼付け時の造膜性を向上させ、モル比でB2O3/P2O5=0.01〜0.1と規定した。規定値より少ないと造膜性が悪くなり、規定値よりも多く入れても効果は飽和し、向上しない。更に望ましくは0.05〜0.1である。
アルカリ土類金属(M)は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを指し、好ましくはMgとCa、さらに好ましくはMgが奨められる。これらは、無機イオン性皮膜を形成する際、皮膜を緻密にして造膜性を向上させ、下地密着力を高め、構造欠陥を減少させる効果を持つ。そこでMO/P2O5=0.01〜0.2と規定した。規定量より少ないと、前記効果が弱くなり、多いと密着性が低下し、また、皮膜がチョーキングを起こしたり、塗布液が急速にゲル化し、処理液の段階で製造が困難になる。更に望ましくは0.1〜0.2である。
化成処理層は、クロメート処理層の代替として鋼材と樹脂層の間に形成され、主に、両者の密着性等を高める。その諸特性は、クロメート処理層と比較し、いずれも同等以上レベルが要求されている。化成処理層の付着量は、公知の範囲でよいが、10〜40g/m2が薦められる。10g/m2未満では、ブラスト表面を均一に濡らすことができずにムラが発生し、40g/m2を超えると、密着性が低下する。
有機樹脂層は、鋼材から、水・酸素・電解質等の腐食因子を遮断し、腐食から保護するため、鋼材の防食性が著しく向上する。有機樹脂層は、通常は2〜3層構造とし、化成処理層側にプライマー層として1〜2層、大気側には膜厚を厚くした保護層から成るものが一般的で、有機樹脂層の厚さは全体で500μm〜5mmが薦められる。
有機樹脂プライマー層は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂あるいはこれらの変性物に硬化剤、無機顔料を添加したものを用いるとよい。
保護層は、主に防食を担い、電解質・水・酸素を遮断し、耐久性に優れた厚膜樹脂層であればよいが、ウレタン樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、エポキシ樹脂系が薦められ、プライマー層と同様に、これらの変性物に硬化剤、無機顔料を添加したものを用いるとよい。
ポリウレタン樹脂の保護層には、厚さ1mm〜10mm、好ましくは、3〜6mm塗布したものが、例示できる。ポリウレタン樹脂塗料は、ポリオールと充填無機顔料、着色顔料の混合物からなる主剤と、イソシアネート化合物からなる硬化剤を2液混合塗装する。ポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ひまし油誘導体、その他含水酸基化合物を用いる。イソシアネートとしてはメチレンジフェニルジイソシアネートなどの一般市販のイソシアネートを使用する。
ポリオレフィン樹脂の保護層は、厚さ1〜3mmのポリエチレン樹脂に、改質顔料としてカーボンを数%添加したものが例示できる。接着性や耐久性を向上させるために、酢酸ビニル変性、マレイン酸変成、酸化防止剤添加を行うことができる。
エポキシ樹脂層の保護層は、体質顔料を添加したエポキシ樹脂粉末を粉体塗装で1〜3mm被覆したものが例示できる。
シランカップリング剤加水分解縮重合物は、耐常温陰極剥離性を向上させるために、添加する。シランカップリング剤を添加しない場合、すなわち特許文献1記載の化成処理材を、クロメート処理材と比較すると、耐水密着性は大変に優れる一方、耐常温陰極剥離性は劣る。そこで、化成処理液にシランカップリング剤を添加すると、耐水密着性はある程度低下するものの、耐常温陰極剥離性が向上した。そこで、両特性ともクロメート処理材と同等以上レベルになる添加量の範囲を見出した。
一般的に、シランカップリング剤は表面改質剤であり、密着性や分散性を高めるために広く用いられてきた。しかし、本発明では、シランカップリング剤の添加により、耐水密着性はむしろ低下しており、表面改質・密着性向上という、公知の効能からは逸脱した活用方法で発明に至っている。
処理液に添加するシランカップリング剤としては、珪素原子にOR基(R:アルキル基)がn個(n=1〜3)と、アミン基(−NH−または−NH2)を有する一価有機官能基が(4−n)個とが、結合した物質であり、一般化学式では、R1 4-nSi(OR2n、と表わされるものが薦められる。ここで、R1はアミン基(―NH2、―NH―)を少なくとも1個以上有する1価の有機官能基であるが、一般には、コストの点、取り扱いの点から、Cが3〜6個のアルキル基に、アミノ基を1〜2個置換したものが推奨される。nは2か3である。R2はアルキル基であり、加水分解速度の点から、メチル基あるいはエチル基が望ましいが、限定するものではない。
化成処理液に添加されたシランカップリング剤は、OR2基が加水分解し、OH基となり、バインダーであるりん酸塩中のイオンに配向あるいは水素結合する一方、OH基同士で縮重合し、Si−O−Siという結合を有する加水分解縮重合物になる。本発明の化成処理液は酸性のため、シランカップリング剤加水分解縮重合物のシラノール基(OH基)やアミン基にプロトンが付加し、陽イオンの形として化成処理皮膜中に固定される。この陽イオンが、アルミイオンとともに、陰極剥離を誘起する外部からのカチオンの侵入を抑制すると考えられる。
シランカップリング剤加水分解縮重合物の存在量は、酸化物(SiO2)換算モル比で、0.01未満だと、常温陰極剥離性の改善が有為ではなく、0.1を超えると、常温陰極剥離性の効果はほぼ飽和する一方、耐水密着性がクロメートよりも劣化してしまう。
シランカップリング剤としてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシランを用いた場合の一例を図1に示す。黒丸印は試験材の常温陰極剥離試験の剥離距離、三角印は試験材の耐水性試験の剥離距離を示す。
一点鎖線は、通常使用されているクロメート処理材の耐水試験の剥離距離の値(7mm)を示す。常温陰極試験は、室温23℃の部屋において、6mmφの欠陥部の電位を3%塩化ナトリウム水溶液中で、-1500mV (vs. sat-KCl AgCl/Ag)に3週間保持する条件でおこなった。
耐水試験は空気を吹き込みながら、50℃3%塩化ナトリウム水溶液に1ヶ月浸漬するという条件で行った。
また、通常のクロメート処理材の常温陰極剥離試験と耐水試験を同様の条件で行い、これより優れた特性が得られる場合の条件を本願発明の範囲とした。
クロメート処理を施した材料はSS400という鋼材を使用した。
また、上記クロメート材の常温陰極剥離試験の剥離距離は6mmであった。
化成処理液へのシランカップリング剤の添加比を増加すると常温陰極剥離距離を低下させることができる。添加比が0.01を超えて含有させるとクロメート処理材の剥離距離即ち6mmより低下する。一方、耐水性は劣化してゆくが、添加比率0.1までは、クロメート処理材の耐水試験の剥離距離(点線)を超えなかった。
本発明の課題は、耐常温陰極剥離性と耐水密着性との両立であるため、シランカップリング剤の加水分解縮重合物の量、すなわち添加量を酸化物(SiO2)換算モル比で0.01〜0.1と規定した。更に望ましくは0.04〜0.08であり、この範囲で両者のバランスが最良となる。
シランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等が例示できるが、加水分解により水溶液に溶解し、ゲル化しないものであれば、限定するものではない。
鋼材には、厚さ4mmの普通鋼を用い、表面をグリッドブラストで3aブラスト処理した。
化成処理液は、酸化ホウ素1.5%含有の50mass%第一リン酸アルミニウム水溶液に、シランカップリング剤としてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(C2H5O)3SiC3H6NHC2H4NH2、あるいはN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CH3O)2Si(CH3)C3H6NHC2H4NH2あるいは3−アミノプロピルトリエトキシシラン(C2H5O)3SiC3H6NH2を所定量と、重リン酸アルミニウム50%水溶液に対して1.8%の酸化マグネシウムを添加・混合した。
シランカップリング剤を除いたバインダー皮膜の無機組成モル比率は、この実施例の場合は、Al23/P25=0.4、B23/P25=0.1、MgO/P25=0.2である。比較用にこの範囲外のバインダーを用いる場合は、さらに、水酸化アルミニウム、ホウ酸、酸化マグネシウムを添加して調整した。
処理液を鋼材に塗布後、約80℃の温風で乾燥し、PMT 200℃、保持時間0分で焼付した。
被覆樹脂にはポリウレタン(PU)及びポリエチレン(PE)を用いた。
ポリウレタン被覆材は、プライマーとして、ポリオールとイソシアネート硬化剤による2液混合硬化型のウレタン樹脂塗料を60μm膜厚となるようにスプレー塗布・硬化させ、その表面にカオリンクレー微粉末含有2液硬化ウレタンエラストマーをスプレー塗装で3mm厚さのポリウレタン樹脂層を形成した。
ポリエチレン被覆材は、まず、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに、体質顔料としてチタニアを30wt%混合し、硬化剤にイミダゾールを用いて、プライマー層を200℃で形成した(60μm)。プライマー層の上に、300μm無水マレイン酸変性ポリオレフィン接着剤層、2mmポリエチレン層を順次積層した。接着温度は200℃である。
比較材用に行うクロメート処理材は、シリカ含有の塗布型3価クロメートを500mg/m2塗布し、200℃で焼き付け、有機樹脂被覆を行った。同様に、無処理材は、化成処理皮膜を形成することなく、有機樹脂被覆した。
耐常温耐陰極剥離性試験は、サンプル中央に6mmφの素地に達する欠陥を形成し、サンプルの上に直径約7cmの円筒をのせて加圧固定し、3%塩化ナトリウム水溶液を約300ml入れて、欠陥を浸漬させる。これに白金電極(アノード)、参照電極をセットし、欠陥部に対し、-1500mV vs. sat-KCl AgCl/Agの電位を保ち、23℃の部屋で3週間静置後、サンプルを取り出してはつり、欠陥部外周からの平均剥離距離を求める。
耐水性試験(自然剥離速度の評価)は、まず、約7.5cm角のサンプルの一辺に沿って、1×7.5cmの被覆を剥いで鋼面を露出させる。裏面は塗装する。50℃3%塩化ナトリウム水溶液を槽に入れ、腐食を促進するために、下から空気泡を吹き込み、その泡がかかるようにサンプルを浸漬する。1ヶ月後、サンプルを取り出し、被覆をはつり、被覆を剥いだ端面からの平均剥離距離を求める。
実施例の結果を表1に示す。表中で剥離が35mmのものは、全面剥離を意味する。
耐水密着性試験は耐陰極剥離試験とは異なり、温度を50℃で促進した結果は、常温の耐水密着性試験の傾向と一致するので、この試験で常温耐水密着性を比較した。
Figure 0005326921

Claims (2)

  1. 鋼材表面に、P、Al、B、及び、アルカリ土類金属(M)の酸化物又は水酸化物の一種または二種以上を含み、かつ、その組成が、無水酸化物換算のモル比で、Al23/P25=0.2〜0.6、B23/P25=0.01〜0.1、MO/P25=0.01〜0.2から成る化成処理層、及び有機樹脂層が積層された有機樹脂被覆鋼材であって、当該化成処理層が、さらに、シラノール基(OH基)及びアミン基を有するシランカップリング剤加水分解縮重合物を、シリカ換算でSiO2/P25=0.01〜0.1含むことを特徴とする有機樹脂被覆鋼材。
  2. シランカップリング剤加水分解縮重合物を、シリカ換算でSiO2/P25=0.04〜0.08含むことを特徴とする請求項1記載の有機樹脂被覆鋼材。
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