JP5326403B2 - 高強度鋼板 - Google Patents
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Description
特許文献1および4では、Moを含有しているため、近年のMoの原材料価格の高騰に絡んで、著しいコスト増加を招く問題がある。
さらに、自動車産業のグローバル化が進み、自動車に使用される鋼板は、厳しい腐食環境下において使用されるようになり、鋼板に対してより高い塗装後耐食性が必要とされている。これに対して、Moの添加は化成結晶の生成または成長を阻害するため、鋼板の塗装後耐食性を低下させ、上記要求に対応することができない。すなわち、特許文献1および特許文献4に記載の鋼では、近年の自動車産業の要求を満たす塗装後耐食性が得られない。
さらに、特許文献5では、鋼組成のC含有量を非常に少なくし、かつオーステナイト安定化元素であるMnの含有量を少なくすることで、フェライト単相組織の製造を実現した技術が開示されている(参照:実施例の表2、鋼番AAからAE)。しかし、この場合は、固溶強化元素でもあるMnの含有量が減るので、固溶強化量が低下する。また、C含有量の減少により析出強化に効果のあるTiやNbなどの炭化物の析出量が減少し、析出強化量も減少する。その結果、固溶強化量および析出強化量を合わせても、フェライト単相組織鋼板の場合は、780MPa以上の強度が出せないということになる(参照:実施例の表6、試験番号1から5および実施例の表8、試験番号45)。
以上の理由から、特許文献5の技術においては、本発明が目的とする、組織が実質的にフェライト単相で引張強度が780MPa以上であり他の特性も有する鋼板は製造できない。
これより、特許文献6における780MPa以上の鋼板の設計思想は、特許文献5と同様に、主に、SiまたはMnによる固溶強化と、硬質な第二相を利用した変態組織強化を活用するものと考えられる。そのため、特許文献5と同様に、後述する本発明を製造するにあたり好適と考える温度範囲よりも低い仕上げ圧延温度(Ar3点+100℃以下)で、合計圧化率25%以上の圧延を行なう必要がある。例えば、特許文献6の実施例によれば、引張強度σBが780MPa以上の鋼板の仕上げ圧延温度は800℃から890℃であった。特許文献6における鋼板および製造方法では、特許文献5と同様に、歪誘起析出が生じて大きさ20nm以上の析出物の生成量が多くなり、結果として本発明が目的とする、組織が実質的にフェライト単相で引張強度が780MPa以上および他の特性も有する鋼板は製造できない。
i)高強度と塗装後耐食性に優れた鋼板を得るためには、析出物を微細化(大きさ20nm未満)し、微細な析出物(大きさ20nm未満)の割合を高め必要がある。そして、析出物を微細なまま維持するには析出物としてTi−Moを含むもの、または、Ti−Vを含むものが挙げられるが、塗装後耐食性を向上させる観点からはTiとVの複合析出が有用である。
ii)加工後の伸びフランジ性の向上にはVの固溶が重要であり、特性向上に最適なVの固溶量が存在する。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]mass%で、C:0.02%以上0.20%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.05%以上0.25%以下、V:0.05%以上0.25%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、実質的にフェライト単相組織であり、前記フェライト単相組織中には、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTiが200mass ppm以上1750mass ppm以下、Vが150 mass ppm以上1750 mass ppm以下であり、固溶Vが200 mass ppm以上1750 mass ppm未満である組織を有することを特徴とする高強度鋼板。
[2]前記[1]において、mass%で、さらに、Cr:0.01%以上0.5%以下、W:0.005%以上0.2%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼板。
[3]前記[1]または[2]において、引張強度TSが780MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、塩温水浸漬試験におけるテープ剥離試験後の片側最大剥離幅が3.0mm以下であることを特徴とする高強度鋼板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、伸張率10%での圧延後の伸びフランジ特性λ10が60%以上であることを特徴とする高強度鋼板。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%、ppmは、すべてmass%、mass ppmである。また、本発明における高強度鋼板とは、引張強度(以下、TSと称する場合もある)が780MPa以上の鋼板であり、熱延鋼板、さらには、これらの鋼板に例えばめっき処理等の表面処理を施した表面処理鋼板も対象とする。
さらに、本発明の目標とする特性は、伸張率10%で圧延後の伸びフランジ特性(λ10)≧60%、後述する塩温水浸漬試験(SDT)におけるテープ剥離試験後の片側最大剥離幅≦3.0mmである。
そして、例えば、本発明の高強度熱延鋼板を自動車の足回り部材やトラック用フレームなどに用いることにより、板厚減少が可能となり、自動車の環境負荷が低減され、衝撃特性が大きく向上することが期待される。
1)まず、本発明における鋼の化学成分(成分組成)の限定理由について説明する。
C:0.02%以上0.20%以下
Cは、TiやVと炭化物を形成しフェライト中に析出することで、鋼板の強度化に寄与する元素である。TSを780MPa以上とするためには、C量を0.02%以上とする必要がある。一方、C量が0.20%を超えると析出物の粗大化や第二相組織の形成により加工後の伸びフランジ特性が低下する。以上より、C量は0.02%以上0.20%以下、好ましくは、0.03%以上0.15%以下とする。
Siは固溶強化に寄与する元素であるが、0.3%を超えて添加すると粒界にセメンタイトが生成し、加工後の伸びフランジ特性が低下する。よって、Si量は0.3%以下とする。好ましくは、0.001%以上0.2%以下とする。
Mnは固溶強化に寄与する元素である。しかしながら、その量が0.5%に満たないと780MPa以上のTSが得られない。一方、Mn量が2.5%を越えて添加すると、溶接性を著しく低下させる。以上より、Mn量は0.5%以上2.5%以下、好ましくは0.6%以上2.0%以下である。
Pは旧オーステナイト粒界に偏析するため、低温靭性劣化と加工性低下を招く。そのため、P量は極力低減することが好ましく、0.06%以下とする。好ましくは、0.001%以上0.055%以下とする。
Sは旧オーステナイト粒界に偏析したりMnSとして多量に析出すると、低温靭性を低下させる。また、加工の有無に関わらず伸びフランジ性を著しく低下させる。そのため、S量は極力低減することが好ましく、0.01%以下とする。好ましくは、0.0001%以上、0.005%以下とする。
Alは、鋼の脱酸剤として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.001%以上含有させることが好ましい。しかし、0.1%を超えると介在物が多量に発生し、鋼板の疵の原因になる。よって、Al量は0.1%以下とする。好ましくは、0.01%以上0.04%以下である。
Tiは、フェライトを析出強化する上で非常に重要な元素であり、本発明の効果を得る上で、重要な要件となる。Ti量が0.05%未満では必要な強度を確保することが困難である。一方、0.25%を超えるとその効果は飽和し、コストアップとなるだけである。よって、Ti量は0.05%以上0.25%以下、好ましくは0.08%以上0.20%以下とする。
Vは、析出強化または固溶強化として強度の向上に寄与する元素であり、上記Tiと並んで、本発明の効果を得る上で、重要な要件となる。適量をTiとともに複合添加することで、粒径(以下、「大きさ」と称することもある)20nm未満の微細なTi−V炭化物として析出する傾向にあり、かつ、Moのように塗装後耐食性を低下させることはない。V量が0.05%未満では、上記添加効果が乏しい。一方、V量が0.25%超えでは、その効果は飽和し、コストアップとなるだけである。よって、V量は0.05%以上0.25%以下、好ましくは、0.06%以上0.20%以下とする。
Cr:0.01%以上0.5%以下、W:0.005%以上0.2%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下
Cr、WおよびZrは、Vと同様、析出物を形成してあるいは固溶状態でフェライトを強化する働きを有する。Cr量が0.01%未満、W量が0.005%未満、あるいはZr量が0.0005%未満では高強度化にほとんど寄与しない。一方、Cr量が0.5%超え、W量が0.2%超え、あるいはZr量が0.05%超えでは加工性が劣化する。したがって、Cr、W、Zrのいずれか1種または2種以上を添加する場合、その添加量はCr:0.01%以上0.5%以下、W:0.005%以上0.2%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下とする。好ましくは、Cr:0.03%以上0.3%以下、W:0.01%以上0.18%以下、Zr:0.001%以上0.04%以下である。
TSが780MPa以上で、かつ、加工後の伸びフランジ性の向上には、転位密度の低いフェライトが有効であり、かつ、単相組織とすることが有効である。特に、延性に富むフェライト単相組織とすることで、加工後の伸びフランジ性の向上効果が顕著となる。ただし、必ずしも完全にフェライト単相組織でなくてもよく、実質的にフェライト単相組織であれば上記効果は十分に得られる。ここで、実質的にフェライト単相組織とは、本発明の炭化物以外に、微量の他の相ないしは析出物を許容することであり、好ましくはフェライトの体積率が95%以上である。また、体積率が5%までの範囲であれば、セメンタイト、パーライト、ベイナイトの組織を含んでも、本発明の特性に影響ない。
なお、フェライトの体積率は、圧延方向に平行な板厚断面のミクロ組織を3%ナイタールで現出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1500倍で板厚1/4位置を観察し、例えば、住友金属テクノロジー株式会社製の画像処理ソフト「粒子解析II」を用いてフェライト面積率を測定することで求められる。
本発明の高強度鋼板において、Tiおよび/またはVを含む析出物は、主に炭化物としてフェライト中に析出している。これは、フェライトにおけるCの固溶限が小さく、過飽和のCがフェライト中に炭化物として析出しやすいためと考えられる。そして、このような析出物により軟質のフェライトが硬質化(高強度化)し、780MPa以上のTSが得られることになる。また、YSが高くなり、83%以上のYR(=YS/YR)が得られることになる。
さらに、検討した結果、塗装後耐食性については、析出物サイズが微細であることが重要であることが明らかとなった。従来のTi系(Ti単独添加)HSLA鋼においては、Tiの添加量が増すに伴い、析出物は粗大化し易い傾向にある。そのため、このような鋼板では強度低下に伴い塗装後耐食性も低下する傾向にあった。析出物の粗大化に伴う塗装後耐食性の低下の理由は明らかではないが、粗大な析出物は化成結晶の生成、または、成長を阻害するためと考えられる。
以上より、析出物の大きさは20nm未満とすることが好ましい。この20nm未満の微細な析出物は、TiとVを共に添加することにより達成される。Vは主にTiと複合炭化物を形成する。理由は明らかではないが、これらの析出物は、本発明範囲の巻取温度内の高温長時間下において、安定的に微細なままで存在することがわかった。
さらに大きさ20nm未満の析出物に含まれるTi量とV量の比が0.4≦(Ti/48)/(V/51)≦2.5であるとき、785MPa以上のTSが得られ、より好適な状態となることがわかった。理由は明らかではないが、TiとVの組成比が最適化されることによって、熱的な安定性が向上したためと考えられる。
なお、析出物及び/又は介在物をまとめて析出物等と称する場合がある。
試料を電解液中で所定量電解した後、試料片を電解液から取り出して分散性を有する溶液中に浸漬する。次いで、この溶液中に含まれる析出物を、孔径20nmのフィルタを用いてろ過する。この孔径20nmのフィルタをろ液と共に通過した析出物が大きさ20nm未満である。次いで、ろ過後のろ液に対して、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、ICP質量分析法、および原子吸光分析法等から適宜選択して分析し、大きさ20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量を求める。
本発明において、固溶Vは最も重要な要件である。加工後の伸びフランジ特性向上には、Vの固溶が重要である。固溶Vが200ppm未満ではその効果に乏しく、上記効果を得るためには固溶V量は200 ppm以上必要である。一方、固溶V量が1750ppm以上では、その効果が飽和するために、上限値とした。
以上より、固溶V量は200ppm以上1750ppm未満とする。なお、本発明鋼も強度の上昇に伴い、加工性が若干低下するが、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTi量が1750ppm以下、V量が1750ppm以下の範囲内では、固溶V量を200ppm以上とすることで、目標とする加工後の伸びフランジ特性が十分確保される。
なお、固溶V量が200ppm以上1750ppm未満については、例えば、以下の方法により確認することができる。
試料を非水溶媒系電解液中で所定量だけ電解した後、電解液を分析溶液とし、元素分析を行う。分析方法としては、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、ICP質量分析法、又は原子吸光分析法等が挙げられる。
本発明の高強度鋼板は、例えば、上記化学成分範囲に調整された鋼スラブを、1150℃以上1350℃以下に加熱したのち、仕上げ圧延温度を850℃以上1100℃以下として熱間圧延を行ない、その後、500℃から700℃で巻き取ることにより得られる。これらの好適条件について以下に詳細に説明する。
TiあるいはVなどの炭化物形成元素は、鋼スラブ中ではほとんどが析出物として存在している。熱間圧延後にフェライト組織中に目標どおりに析出させるためには熱間圧延前に炭化物として析出している析出物を一旦溶解させる必要がある。そのためには1150℃以上で加熱する必要がある。
1150℃未満では、析出強化や塗装後耐食性に寄与しない20nm以上の大きさの炭化物が残存するため、本発明の効果を得るために必要な大きさ20nm未満の微細な析出物の生成に関わるTi量およびV量が減少し、後述する巻取時に大きさ20nm未満の析出物の量が目標どおり得られない。さらに本発明の鋼板の製造方法では、スラブ加熱時と仕上げ圧延時にはTiやVを含む炭化物は溶解させたままで、仕上げ圧延後の巻取時にTiやVを含む微細な炭化物として析出させるのが、最も望ましい形態である。そのため、当該炭化物がほぼ完全に溶解する温度として、加熱温度は1170℃以上とするのがより好ましい。
一方、1350℃を超えて加熱すると、結晶粒径が粗大になりすぎて加工後の伸びフランジ特性、伸び特性ともに劣化する。さらに、この後にかかる熱処理条件を考慮すると、1300℃以下とすれば、結晶粒径の粗大化はほぼ完全に防ぐことができる。
よって、スラブ加熱温度は、1150℃以上1350℃以下が好ましい。より好ましくは1170℃以上1300℃以下である。
本発明における大きさ20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量を得るためには、仕上げ圧延温度の制御が重要となる。加工後の鋼スラブを、熱間圧延の終了温度である仕上げ圧延温度850℃〜1100℃で熱間圧延するのが好ましい。仕上げ圧延温度が850℃未満では、フェライト+オーステナイトの領域で圧延され、展伸したフェライト組織となるため、加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する場合がある。また、鋼スラブ加熱温度を1150℃以上で行い圧延前の炭化物として析出している析出物が一旦溶解されたとしても、仕上げ圧延温度が850℃未満の場合は、歪誘起析出により、TiやVを含んだ炭化物が析出してしまう。そのため、本発明の効果に必要な大きさ20nm未満の微細な析出物の生成にかかわるTi量およびV量が減少し、後述する巻取時にて大きさ20nm未満の析出物の量が目標どおり得られない。つまり、前述のスラブ加熱時に一旦溶解したTiやVを含む炭化物が、この仕上げ圧延においてもなるべく溶解した状態のまま、次の巻取工程に進むのが重要となる。そのため、炭化物が溶解した状態を保つには、仕上げ圧延温度は935℃以上とするのがより好ましい。
一方、仕上げ圧延温度が1100℃を超えると、フェライト粒が粗大化するため、780MPaのTSが得られない場合がある。フェライト粒の粗大化を防ぐには、990℃以下とするのがより好ましい。
よって、仕上げ圧延温度は850℃以上1100℃以下が好ましい。より好ましくは、935℃以上990℃以下である。
本発明における大きさ20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量を得るためには、巻取温度の制御が重要となる。前述したとおり、この巻取工程にて、析出サイトが多数形成され、この析出サイトから炭化物が析出し、かつ、当該炭化物の粒成長が大きさ20nm以上とならないように抑制されることが、最も望ましい製造形態だからである。組織を実質的にフェライト単相組織とし、本発明の特性を得るためには、巻取温度は500℃以上700℃以下が好ましい。
本発明では、巻取温度が500℃未満では、Tiおよび/またはVを含む炭化物の析出量が不十分となり、強度低下を招く場合がある。また、ベイナイト相が生成し、フェライト単相組織が得られない場合がある。
析出サイトが多数形成され、かつこの析出サイトから炭化物を生成させるには、温度はより高い方が好ましく、550℃以上であるのがより好ましい条件となる。
一方、巻取温度が700℃を超えると、析出した炭化物の粗大化が起こり、強度低下を招く場合がある。また、パーライト相が生成しやすくなり、加工後の伸びフランジ性の低下を招く場合がある。650℃以下とすれば、確実に析出した炭化物の粗大化が防げるのでより好ましい。
よって、巻取温度は500℃以上700℃以下が好ましく、より好ましくは、550℃以上650℃以下である。
上記により得られた熱延鋼板を適当な大きさに切断し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中で、約0.2gを電流密度20mA/cm2で定電流電解した。
電解後の、表面に析出物が付着している試料片を電解液から取り出して、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(500mg/l)(以下、SHMP水溶液と称す)中に浸漬し、超音波振動を付与して、析出物を試料片から剥離しSHMP水溶液中に抽出した。次いで、析出物を含むSHMP水溶液を、孔径20nmのフィルタを用いてろ過し、ろ過後のろ液に対してICP発光分光分析装置を用いて分析し、ろ液中のTiとVの絶対量を測定した。次いで、TiとVの絶対量を電解重量で除して、大きさ20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量を得た。なお、電解重量は、析出物剥離後の試料に対して重量を測定し、電解前の試料重量から差し引くことで求めた。
電解後の電解液を分析溶液とし、ICP質量分析法を用いてVおよび比較元素としてFeの液中濃度を測定した。得られた濃度を基に、Feに対するVの濃度比を算出し、さらに、試料中のFeの含有率を乗じることで、固溶状態にあるVの量を求めた。なお、試料中のFeの含有率は、Fe以外の組成値の合計を100%から減算することで求めることができる。
圧延方向を引張り方向としてJIS5号試験片を用いてJIS Z 2241に準拠した方法で引張り試験を行ない、TSを求めた。
伸張率10%で圧延後、鉄連規格JFST 1001に準じて穴広げ試験を行ない、λ10を求めた。
化成処理は、日本ペイント(株)製の脱脂剤;サーフクリーナーECO90、表面調整剤;サーフファイン5N−10、化成処理剤;サーフダインSD2800用い、それぞれの温度や濃度条件は標準条件より劣悪な条件で実施した。標準条件の1例として、脱脂工程は濃度16g/l、処理温度42〜44℃、処理時間120s、スプレー脱脂、表面調整工程は、全アルカリ度1.5〜2.5ポイント、遊離酸度0.7〜0.9ポイント、促進剤濃度2.8〜3.5ポイント、処理温度44℃、処理時間120sとした。劣悪条件としては、化成処理工程での処理温度を38℃に低下させた。その後、日本ペイント社製の電着塗装剤;V-50を使用して電着塗装を行った。化成処理皮膜の付着量は2〜2.5g/m2、電着塗装は膜厚25μmを狙いとした。
塗装後耐食性の評価は、塩温水浸漬試験(SDT)で行なった。化成処理、電着塗装を施した試料にカッターにてクロスカット疵を付与し、塩温水(5%NaCl:55℃)に10日間浸漬したのち、水洗、乾燥し、カット疵部についてテープ剥離を行い、カット疵部左右の最大剥離幅を測定した。片側最大剥離幅が3.0mm以下であれば、塗装後耐食性は良好といえる。
以上により得られた結果を表2に製造条件と併せて示す。
以上により得られた結果を表4に示す。
さらに、鋼板No.1(表2)に比べて、WやZrを添加した鋼板No26、27においては、TSがより向上していることがわかる。
Claims (4)
- mass%で、C:0.02%以上0.20%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.05%以上0.25%以下、V:0.05%以上0.25%以下を、さらに、W:0.005%以上0.2%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下のいずれか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、実質的にフェライト単相組織であり、前記フェライト単相組織中には、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTiが200mass ppm以上1750mass ppm以下、Vが150 mass ppm以上1750 mass ppm以下であり、固溶Vが200 mass ppm以上1750 mass ppm未満である組織を有することを特徴とする高強度鋼板。
- 引張強度TSが780MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
- 塩温水浸漬試験におけるテープ剥離試験後の片側最大剥離幅が3.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。
- 伸張率10%での圧延後の伸びフランジ特性λ10が60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼板。
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