以下、図面を参照しつつ、本発明に係る乗員姿勢制御装置の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明における乗員姿勢制御装置1の一構成例を示すブロック図である。
図1に示す乗員姿勢制御装置1を構成する各部位について説明する。乗員姿勢制御装置1では、車両の車体上に設置された車両用シート10のロール制御やピッチ制御として、車両用シート10の位置を車両の左右方向や前後方向に移動させるための制御を行うことができる。図1に示すように、乗員姿勢制御装置1は、シート駆動部20、状態検出部30、制御情報処理部40を備えて構成される。
シート駆動部20は、車両の車体と車両用シート10との間に介装され、車両用シート10のロール制御やピッチ制御を行う。例えば、シート駆動部20は、左右方向アクチュエータ21と、前後方向アクチュエータ22とを備えている。
左右方向アクチュエータ21は、制御情報処理部40からの制御信号により、車両の車体と車両用シート10との間の相対位置を、車両の左右方向へ移動させる制御力を発生することができる。前後方向アクチュエータ22は、制御情報処理部40からの制御信号により、車両の車体と車両用シート10との間の相対位置を、車両の前後方向へ移動させる制御力を発生することができる。
左右方向アクチュエータ21と前後方向アクチュエータ22はそれぞれ、所定のケース内で回転自在に支持されたロータと、ケース内周側に取り付けた筒状のステータとからなるモータを有する電磁アクチュエータとして構成されていればよい。また、左右方向アクチュエータ21と前後方向アクチュエータ22はそれぞれ、ギヤやスライダといった、所定のリンク機構を介して車両用シート10の所定位置に噛合、連結、連接などされていればよい。
状態検出部30は、車両用シート10の状態や、車両の走行中などにおける各種の運動状態、車両が有する操作機構における操作状態などを、検出するためのものである。例えば、状態検出部30は、乗員の姿勢制御を行う車両用シート10の状態を検出するシート状態検出部31と、車両の運動状態を検出する車両運動状態検出部32と、車両の運転者による操作状態を検出する車両操作状態検出部33とを備えている。車両運動状態検出部32や車両操作状態検出部33における構成の全部又は一部は、例えばVSC(Vehicle Stability Control)といった、車両の運動状態などを制御するシステムに適用されるものであってもよい。
図2は、この発明の実施の形態における状態検出部30の一構成例を示すブロック図である。状態検出部30による検出結果を示す情報や信号は、それらの全部又は一部が、例えばCAN(Controll Area Network)といった車載LAN(Local Area Network)などの車内ネットワーク(電気通信ネットワークあるいは光通信ネットワーク)を構成するネットワークバスを介して、制御情報処理部40へと伝送されればよい。あるいは、状態検出部30による検出結果を示す情報や信号の全部又は一部は、ネットワークバスとは異なる個別の電気配線などを介して、制御情報処理部40へと伝送されてもよい。
図2に示す構成例において、シート状態検出部31は、例えば、ロールストロークセンサ101、ピッチストロークセンサ102を含んでいる。
ロールストロークセンサ101は、車両の前後方向軸周りにおける車両用シート10の移動量(ロール角)に対応するシート状態として、車両の左右方向における車両用シート10の位置であるロールストロークStrを検出するためのセンサである。ロールストロークセンサ101からは、車両の左右方向における車両用シート10のロールストロークStrを示すロールストローク検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
ピッチストロークセンサ102は、車両の左右方向軸周りにおける車両用シート10の移動量(ピッチ角)に対応するシート状態として、車両の前後方向における車両用シート10の位置であるピッチストロークStpを検出するためのセンサである。ピッチストロークセンサ102からは、車両の前後方向における車両用シート10のピッチストロークStpを示すピッチストローク検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
図2に示す構成例において、車両運動状態検出部32は、例えば、車速センサ111、加速度センサ112、ヨーレートセンサ113、ロールレートセンサ114、ピッチレートセンサ115を含んでいる。
車速センサ111は、車両の走行速度Vを検出する。車速センサからは、走行速度Vの検出結果を示す車速検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
加速度センサ112は、その設置位置である車両の特定位置にて発生する、車両の左右方向への加速度(左右方向加速度)、及び、車両の前後方向への加速度(前後方向加速度)を検出する。一例として、加速度センサ112は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造されたピエゾ素子や可変容量素子といった、一定方向(基準軸方向)の加速度を検知する加速度検知素子を含んで構成されていればよい。そして、一対の加速度検知素子を、車両の前後方向軸に対して基準軸が所定角度(例えば45度)だけ左右に傾斜するように配置し、各検知素子の出力に基づいて、車両の左右方向加速度Gy及び前後方向加速度Gxを検出する。より具体的には、各検知素子の出力における車両の左右方向成分どうしを合成することにより、車両の左右方向加速度を検出することができる。また、各検知素子の出力における車両の前後方向成分どうしを合成することにより、車両の前後方向加速度を検出することができる。
また、車両が路面傾斜などによって傾いているときには、加速度センサ112によって検出される車両の左右方向加速度Gyと前後方向加速度Gxの少なくともいずれか一方に、重力加速度における車両の左右方向成分と前後方向成分の少なくともいずれか一方が含まれることになる。加速度センサ112からは、車両の傾きによって生じた重力加速度の成分も含めた車両の左右方向加速度Gy及び前後方向加速度Gxの検出結果を示す加速度検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。なお、加速度センサ112から制御情報処理部40に対しては、一対の加速度検知素子によって検知される2つの基準軸方向における加速度を示す加速度情報が提供され、制御情報処理部40にて所定の合成演算処理を実行することで、車両の傾きによって生じた重力加速度の成分も含めた車両の左右方向加速度Gy及び前後方向加速度Gxを特定するようにしてもよい。なお、加速度センサ112は、例えば図3に示すように、センサ出力値となる車両の左右方向加速度Gy及び前後方向加速度Gxのそれぞれが、一定の上限値と下限値の範囲内となる特性を有していればよい。
ヨーレートセンサ113は、車両の上下方向軸周りの回転運動における角速度であるヨーレートγを、検出するためのセンサである。一例として、ヨーレートセンサ113は、MEMS技術により製造された振動式やガス式の角速度検知素子を含んで構成されていればよい。ヨーレートセンサ113からは、ヨーレートγの検出結果を示すヨーレート検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
ロールレートセンサ114は、車両の前後方向軸周りの回転運動における角速度であるロールレートδを、検出するためのセンサである。一例として、ロールレートセンサ114は、ヨーレートセンサ113と同様の角速度検知素子を含んで構成されていればよい。他の一例として、ロールレートセンサ114は、車両が備える各車輪に対応して配置された車高センサによる車高検出値あるいは上下加速度センサによる上下方向加速度検出値に基づき、所定の演算を実行することでロールレートδを推定するものであってもよい。ロールレートセンサ114からは、ロールレートδの検出結果を示すロールレート検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
ピッチレートセンサ115は、車両の左右方向軸周りの回転運動における各速度であるピッチレートζを、検出するためのセンサである。一例として、ピッチレートセンサ115は、ヨーレートセンサ113などと同様の角速度検知素子を含んで構成されていればよい。他の一例として、ピッチレートセンサ115は、車両が備える各車輪に対応して配置された車高センサによる車高検出値あるいは上下加速度センサによる上下方向加速度検出値に基づき、ロールレートδを推定する場合とは異なる所定の演算を実行することでピッチレートζを推定するものであってもよい。ピッチレートセンサ115からは、ピッチレートζの検出結果を示すピッチレート検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
図2に示す構成例において、車両操作状態検出部33は、例えば、操舵角センサ121、ブレーキ圧センサ122を含んでいる。
操舵角センサ121は、ステアリングホイールの中立位置からの回転角である操舵角Maを、検出するためのセンサである。一例として、操舵角センサ121は、可変抵抗などを用いてステアリングの位置情報を提供するアナログセンサと、操舵角の増減に応じてデジタル位置信号を増減させる出力信号を提供するデジタルセンサとを含んで構成されていればよい。ここで、デジタルセンサは、ある方向(順方向)に操舵角が増加するに従って、デジタル位置信号を増加させる出力信号を提供する。また、順方向とは反対の方向(逆方向)に操舵角が増加するに従って、デジタル位置信号を減少させる出力信号を提供する。操舵角センサ121からは、操舵角Maの検出結果を示す操舵角検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
ブレーキ圧センサ122は、車両のブレーキ圧(MC圧[Master Cylinder pressure])Mcを、検出するためのセンサである。ブレーキ圧センサ122からは、ブレーキ圧Mcの検出結果を示すブレーキ圧検出情報が、制御情報処理部40に対して提供されればよい。
制御情報処理部40は、例えばECU(Electronic Control Unit)といった車載用のマイクロコンピュータなどを用いて構成され、シート駆動部20が備える左右方向アクチュエータ21や前後方向アクチュエータ22により車両用シート10の位置を移動させるための駆動制御を行う。例えば、制御情報処理部40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(例えば磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ、フラッシュメモリなど)を含んで構成され、CPUがROMやRAM、補助記憶装置などの記憶媒体に記憶されているコンピュータ読取可能なプログラムに従って、各種の処理を実行する。
制御情報処理部40は、論理的構成の一例として、状態情報処理部41、ロール制御情報処理部42、ピッチ制御情報処理部43を含んでいる。この構成は、例えば制御情報処理部40が備えるCPUによって、ROMやRAM、補助記憶装置などの記憶媒体から所定の動作プログラムや設定データなどが読み出され、所定の処理が実行されることにより実現できればよい。
状態情報処理部41は、状態検出部30から提供された各種の情報や信号に基づき所定の演算処理を実行することなどにより、車両の運動状態や操作状態、車両用シート10の状態などを含めた車両に関する各種の状態を特定可能にする。状態情報処理部41での処理によって得られた情報は、状態情報処理部41内で利用されたり、ロール制御情報処理部42やピッチ制御情報処理部43に提供されたりすればよい。
図4は、この発明の実施の形態における状態情報処理部41の一構成例を示すブロック図である。図4に示す構成例において、状態情報処理部41は、車速情報処理部201、加速度情報処理部202、ヨー状態情報処理部203、ロール状態情報処理部204、ピッチ状態情報処理部205、操舵角状態情報処理部206、ブレーキ圧状態情報処理部207を有している。
車速情報処理部201は、例えば所定のフィルタ演算を実行することにより、車速センサ111から提供された車速検出情報で示される走行速度Vに含まれるノイズ成分を除去した走行速度Vfを算出する。また、車速情報処理部201は、フィルタ演算により得られた走行速度Vfに対する時間微分演算を実行することにより、車両の傾きによって生じる重力加速度の成分を含まない車両の前後方向加速度Gxvを算出する。
ここで、走行速度Vfは、現実における車両の運動状態によって生じる状態量であり、車両が路面傾斜などによって傾いていることによる影響は受けない。したがって、走行速度Vfに対する時間微分演算を実行することにより得られる前後方向加速度Gxvには、車両の傾きによる重力加速度の成分が含まれないことになる。
加速度情報処理部202は、例えば所定のフィルタ演算を実行することにより、加速度センサ112から提供された加速度検出情報で示される車両の左右方向加速度Gy及び前後方向加速度Gxに含まれるノイズ成分を除去した左右方向加速度Gyf及び前後方向加速度Gxfを算出する。例えば、加速度情報処理部202は、加速度検出情報で示される車両の左右方向加速度Gy及び前後方向加速度Gxに対して、所定の係数を乗じることにより、車両の重心位置における左右方向加速度Gyc及び前後方向加速度Gxcを特定する。このとき用いられる係数は、実験やシミュレーションにより決定される定数又は変数であればよい。
こうして得られた重心位置における左右方向加速度Gyc及び前後方向加速度Gxcに基づき、加速度情報処理部202では、例えば下記のような(式1)及び(式2)に対応した演算処理を実行して、車両用シート10の位置における左右方向加速度Gys及び前後方向加速度Gxsを算出する。なお、(式1)及び(式2)における係数ksは、実験やシミュレーションにより決定される定数又は変数であればよい。また、(式1)及び(式2)では、図5に模式的に示すような、車両の重心位置から車両用シート10の設置位置までの距離Lsや、車両の重心点と車両用シート10の設置位置とを結ぶ線分が車両の左右方向軸に対して形成する角度θsを用いている。ここで、重心位置に車両用シート10が設置されている場合には、Ls=0となり、重心位置における左右方向加速度Gyc及び前後方向加速度Gxcが、そのまま車両用シート10の位置における左右方向加速度Gys及び前後方向加速度Gxsとなる。
そして、車両用シート10の位置における左右方向加速度Gysについては、高域遮断周波数が1Hz〜7Hzの範囲で可変となるローパスフィルタに対応したアダプティブフィルタ演算を実行することにより、路面の凹凸などによる外乱を除去した左右方向加速度Gyfを算出する。また、車両用シート10の位置における前後方向加速度Gxsについては、高域遮断周波数が2Hzで一定となるローパスフィルタに対応したアダプティブフィルタ演算を実行することにより、路面の凹凸などによる外乱を除去した前後方向加速度Gxfを算出する。なお、車両の左右方向加速度Gyについては、操舵角状態情報処理部206での処理によって得られる操舵中立点変位の時間微分値dMaf0や車速情報処理部201での処理によって得られる走行速度Vfに基づくアダプタフィルタ演算を実行して、外乱を除去した左右方向加速度Gyfを算出してもよい。また、車両の前後方向加速度Gxについては、車速情報処理部201での処理によって得られる車両の前後方向加速度Gxvやブレーキ圧状態情報処理部207での処理によって得られるブレーキ圧の時間微分値dMcfに基づくアダプティブフィルタ演算を実行して、外乱を除去した前後方向加速度Gxfを算出してもよい。
図4に示すヨー状態情報処理部203は、例えば所定のフィルタ演算を実行することにより、ヨーレートセンサ113から提供されるヨーレート検出情報で示されるヨーレートγに含まれるノイズ成分を除去したヨーレートγfを算出する。
ロール状態情報処理部204は、例えば所定のフィルタ演算を実行することにより、ロールレートセンサ114から提供されるロールレート検出情報で示されるロールレートδに含まれるノイズ成分を除去したロールレートδfを算出する。また、ロール状態情報処理部204は、フィルタ演算により得られたロールレートδfに対する時間積分演算を実行することにより、ロール角φrを算出してもよい。
ピッチ状態情報処理部205は、例えば所定のフィルタ演算を実行することにより、ピッチレートセンサ115から提供されるピッチレート検出情報で示されるピッチレートζに含まれるノイズ成分を除去したピッチレートζfを算出する。また、ピッチ状態情報処理部205は、フィルタ演算により得られたピッチレートζfに対する時間積分演算を実行することにより、ピッチ角φpを算出してもよい。
操舵角状態情報処理部206は、例えば所定のフィルタ演算を実行することにより、操舵角センサ121から提供される操舵角検出情報で示される操舵角Maに含まれるノイズ成分を除去した操舵角Mafを算出する。このとき、操舵角状態情報処理部206は、所定の中立点演算を実行することにより、路面の状態と車両の走行状態によって変化するステアリングの回転力のバランス点を、ステアリングの中立点Maf0として特定する。そして、操舵角状態情報処理部206は、中立点演算により得られたステアリングの中立点Maf0に対する時間微分演算を実行することにより、ステアリング中立点の時間微分値dMaf0を算出する。
ブレーキ圧状態情報処理部207は、例えば所定フィルタ演算を実行することにより、ブレーキ圧センサ122から提供されるブレーキ圧検出情報で示されるブレーキ圧Mcに含まれるノイズ成分を除去したブレーキ圧Mcfを算出する。また、ブレーキ圧状態情報処理部207は、フィルタ演算により得られたブレーキ圧Mcfに対する時間微分演算を実行することにより、ブレーキ圧の時間微分値dMcfを算出する。
図1に示す制御情報処理部40が備えるロール制御情報処理部42は、状態情報処理部41での処理によって得られた各種の状態量に基づき所定の演算処理を実行することなどにより、車両用シート10のロール制御を行うための制御量を特定可能にする。
図6は、この発明の実施の形態におけるロール制御情報処理部42の一構成例を示すブロック図である。図6に示す構成例において、ロール制御情報処理部42は、左右運動推定処理部211、ロール制御量演算処理部212、ロール駆動出力処理部213を有している。
左右運動推定処理部211は、加速度センサ112とは異なる各種センサによって検出された車両の運動状態や操作状態から、左右方向加速度における各種の成分を推定するための処理を実行する。例えば、左右運動推定処理部211には、フィードフォワード成分推定処理部251、シート位置成分推定処理部252、頭部位置成分推定処理部253が含まれている。
左右運動推定処理部211に含まれるフィードフォワード成分推定処理部251は、車速情報処理部201での処理によって得られた走行速度Vfや操舵角状態情報処理部206での処理によって得られた操舵角Mafに基づき、フィードフォワード制御用の成分として車両用シート10の位置における左右方向加速度を推定するための演算処理を実行する。例えば、フィードフォワード成分推定処理部251では、下記のような(式3)に対応した演算処理を実行して、フィードフォワード制御用に推定される左右方向加速度Gymを算出する。なお、(式3)で用いているヨーレートγmaは、車速情報処理部201での処理によって得られた走行速度Vfや操舵角状態情報処理部206での処理によって得られた操舵角Mafに基づき、車両を動的モデル化した場合におけるヨーレートであればよい。
左右運動推定処理部211に含まれるシート位置成分推定処理部252は、車速情報処理部201での処理によって得られた走行速度Vfやヨー状態情報処理部203での処理によって得られたヨーレートγfに基づき、フィードバック制御用の成分として車両用シート10の位置における左右方向加速度を推定するための演算処理を実行する。例えば、シート位置成分推定処理部252では、下記のような(式4)に対応した演算処理を実行して、フィードバック制御用に推定される車両用シート10の位置における左右方向加速度Gyyを算出する。
ここで、走行速度Vfやヨーレートγfは、現実における車両の運動状態によって生じる状態量であり、車両が路面傾斜などによって傾いていることによる影響は受けない。したがって、上記のような(式4)に対応した演算処理により得られる左右方向加速度Gyyには、車両の傾きによる重力加速度の成分が含まれないことになる。
左右運動推定処理部211に含まれる頭部位置成分推定処理部253は、ロール状態情報処理部204での処理によって得られたロールレートδfに基づき、フィードバック制御用の成分として乗員の頭部位置における左右方向加速度を推定するための演算処理を実行する。例えば、頭部位置成分推定処理部253では、下記のような(式5)に対応した演算処理を実行して、フィードバック制御用に推定される乗員の頭部位置における左右方向加速度Gyrを算出する。なお、(式5)では、ロールレートセンサ114やピッチレートセンサ115などのセンサ設置位置から乗員の頭部位置までの距離Lmや、このセンサ設置位置と乗員の頭部位置とを結ぶ線分が車両の左右方向軸に対して形成する角度θrを用いている。
ロール制御量演算処理部212は、車両の左右方向加速度として特定された車両の運動状態に基づき、シート駆動部20が備える左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行う際の制御量を特定するための処理を実行する。一例として、ロール制御量演算処理部212は、左右運動推定処理部211に含まれるフィードフォワード成分推定処理部251での処理によって得られた左右方向加速度Gym、状態情報処理部41が備える加速度情報処理部202での処理によって得られた左右方向加速度Gyf、シート位置成分推定処理部252での処理によって特定された左右方向加速度Gyy、左右運動推定処理部211に含まれる頭部位置成分推定処理部253での処理によって特定された左右方向加速度Gyr、及び、車両の左右方向傾斜角θyに基づき、下記のような(式6)に対応した演算処理を実行して、車両用シート10における左右方向への傾斜角度に相当するロール角の制御量算出値Creを得る。
Cre=Kr1・Gym+Kr21・Gyf+Kr22・Gyy+Kr3・Gyr+Kr4・θy
・・・(式6)
ここで、(式6)にて用いられる係数Kr1については、例えば図7に示すように、ロール制御の開始時点からの経過時間に応じて変化する特性を有するものに設定する。すなわち、ロール制御の開始時点から予め定められたタイミングT01までの期間では、係数Kr1を正の一定値Ar1に維持する。そして、タイミングT01に達してからタイミングT01よりも後に到来するタイミングT02までの期間では、係数Kr1を、定数Ar1から時間経過に比例して減少させ、タイミングT02にて「0」となるように設定する。タイミングT02以降の期間では、係数Kr1を「0」に維持する。これにより、ロール制御の開始時点からタイミングT02に達するまでの所定期間では、車速センサ111によって検出された走行速度Vや操舵角センサ121によって検出された操舵角Maに基づくフィードフォワード制御が行われることになる。他方、タイミングT02以降の期間では、フィードフォワード制御用の成分がロール角の制御量算出値Creに寄与しないことになり、フィードフォワード制御が行われなくなる。
また、(式6)にて用いられる係数Kr21や係数Kr22については、下記の(式7−1)〜(式7−3)で表されるような関係を有するものに設定する。
Kr1+Kr21+Kr22=Ar1 ・・・(式7−1)
Kr21=hr・(Ar1−Kr1) ・・・(式7−2)
Kr22=(1−hr)・(Ar1−Kr1) ・・・(式7−3)
ここで、(式7−2)及び(式7−3)にて用いられる配分値hrは、車両用シート10のロール制御において、車両の傾きによる重力加速度の成分を含めた左右方向加速度Gyfに基づく制御量と、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyyに基づく制御量との配分比率を示している。例えば図8に示すように、配分値hrは、車両の走行速度(例えば車速情報処理部201で得られた走行速度Vf)に応じて変化する特性を有するものに設定する。すなわち、車両の走行速度が「0」から予め定められた速度V01までの範囲内である場合には、配分値hrを一定値Hr0(0<Hr0≦1)に維持する。そして、車両の走行速度が速度V01から速度V02(V01<V02)までの範囲内である場合には、配分値hrを、定数Hr0から走行速度の上昇に比例して減少させ、予め定められた速度V02にて「0」となるように設定する。車両の走行速度が速度V02以上となる場合には、配分値hrを「0」に維持する。
こうして、車両用シート10のロール制御では、車速センサ111によって検出された車両の走行速度Vやヨーレートセンサ113によって検出されたヨーレートγに基づき、予め定められた重み付け特性の下で、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyyに応じたフィードバック制御が行われることになる。そして、この重み付け特性では、車両の走行速度が高速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyyに基づく制御量を増大させる一方で、車両の走行速度が低速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyfに基づく制御量を増大させる。これにより、車両用シート10が運転者用の運転席である場合に、ロール制御による運転姿勢への影響を少なくすることができる。なお、車両用シート10が同乗者用の助手席などである場合には、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyfに応じたフィードバック制御を行わないようにしてもよい。
さらに、上記の(式6)にて用いられる車両の左右方向傾斜角θyは、例えば状態情報処理部41のロール状態情報処理部204により算出されたロール角φrであればよい。あるいは、ロールレートセンサ114とは別個のロール角センサを状態検出部30に設け、そのロール角センサから提供されるロール角検出情報で示されるロール角に含まれるノイズ成分を除去してロール角φrを算出し、このロール角φrを車両の左右方向傾斜角θyとして用いてもよい。なお、車両の左右方向加速度Gy(車両の傾きによる重力加速度の成分を含む)は、車両の左右方向傾斜角θy、及び、車両の走行速度Vfやヨーレートγfに基づいて算出される左右方向加速度Gyy((式4)を参照)との間で、重力加速度1Gを用いた下記の(式7−10)及び(式7−11)で表されるような関係を有している。
Gy=1G・sinθy+Gyy ・・・(式7−10)
θy=sin-1((Gy−Gyy)/1G) ・・・(式7−11)
上記の(式6)にて用いられる係数Kr4は、係数Kr22との間で、例えば下記の(式7−12)で表されるような関係を有するものであればよい。
Kr4=Kr22/0.3 ・・・(式7−12)
上記の(式7−12)で表されるように、ロール角の制御量算出値Creは、車両の左右方向傾斜角θyに対する応答性が、車両の走行速度Vfやヨーレートγfに基づいて算出される左右方向加速度Gyyに対する応答性に比べて、高くなるように決定される。これにより、車両の乗り心地向上を図ることができる。そして、上記の(式6)で表されるように、ロール角の制御量算出値Creにおいて、車両の左右方向傾斜角θyに応じた成分と、車両の走行速度Vfやヨーレートγfに基づいて特定される左右方向加速度Gyyに応じた成分とを、独立したパラメータとして決定する。これにより、路面の傾斜角に応じたロール制御と、車両の加減速に応じたロール制御とを、独立(分離)して官能よく実施することができ、車両の乗り心地向上を図ることができる。
続いて、ロール制御量演算処理部212では、ロール角の制御量算出値Creに基づき、ロール角の制御量出力値Croを生成する。一例として、ロール角の制御量出力値Croは、図9(A)及び(B)に示すような特性を有するものに設定する。図9(A)は、車両用シート10が運転者用の運転席である場合におけるロール角の制御量出力値Croを例示している。図9(B)は、車両用シート10が同乗者用の助手席である場合におけるロール角の制御量出力値Croを例示している。
図9(A)及び(B)に示すように、ロール角の制御量算出値Creの絶対値が予め定められた一定値Cre0以下となる範囲には、ロール角の制御量出力値Croが「0」に維持される不感帯Brnが設けられている。これにより、路面の凹凸による外乱などで不要にロール制御が行われることを防止できる。
また、図9(A)に例示する車両用シート10が運転席である場合におけるロール角の制御量出力値Croでは、ロール角の制御量算出値Creに対する傾きar1が、図9(B)に例示する車両用シート10が助手席である場合におけるロール角の制御量算出値Creに対する傾きar2に比べて、小さくなるように設定されている。これにより、運転席では、車両用シート10のロール制御による運転姿勢への影響を少なくすることができる。
次に、ロール制御量演算処理部212では、ロール角の制御量出力値Croに基づき、下記のような(式8)に対応した演算処理を実行して、ロール角の比例微分制御(PD制御)における入力値Xrを得る。なお、(式8)における係数krpと係数krdはそれぞれ、実験やシミュレーションにより決定される定数又は変数であればよい。
さらに、ロール制御量演算処理部212では、(式8)により得られたロール角の比例微分制御における入力値Xrを、シート駆動部20が備える左右方向アクチュエータ21により車両用シート10を車両の左右方向へ移動させる際のストローク量指令算出値Dreに変換するための処理を実行する。一例として、ロール制御量演算処理部212は、ロール角の比例微分制御において入力値Xrとなる角度量[deg]をストローク量指令算出値Dreとなる距離[mm]に変換するための変換テーブルを、予めROM等に格納して用意しておく。そして、入力値Xrに基づいて変換テーブルを参照することにより、変換後のストローク量指令算出値Dreを特定できればよい。あるいは、入力値Xrを引数として、予め用意された変換用の関数演算を実行することにより、変換後のストローク量指令算出値Dreを特定できればよい。
こうして特定されたストローク量指令算出値Dreに基づき、ロール制御量演算処理部212では、下記のような(式9)で求められる中央値(メジアン[median])を、今回の制御出力タイミングにおけるストローク量指令出力値Dro[n]に決定する。なお、(式9)では、前回の制御出力タイミングにおけるストローク量指令出力値Dro[n-1]を用いている。
Dro[n]=MED(Dro[n-1]+τru,Dre,Dro[n-1]−τrd)
・・・(式9)
また、(式9)における項τruと項τrdについては、例えば図10に示すように、ストローク量指令算出値Dreと車両用シート10における実際のロールストロークStrとの差分の絶対値|Dre−Str|に応じて変化する特性を有するものに設定する。すなわち、|Dre−Str|の値が「0」(差分なし)から予め定められた差分値D01までの範囲内である場合には、項τruと項τrdの値を、一定の基準値Adrに維持する。なお、基準値Adrは、シート駆動部20が備える左右方向アクチュエータ21の動作仕様により定まる一定値であればよい。そして、|Dre−Str|の値が差分値D01から差分値D02(D01<D02)までの範囲内である場合には、項τruと項τrdの値を、|Dre−Str|の増大に比例して減少させ、予め定められた差分値D02にて0.2×Adrとなるように設定する。|Dre−Str|の値が差分値D02以上となる場合には、項τruと項τrdの値を、0.2×Adrに維持する。
こうした設定により、例えば図11に示すタイミングT11では、車両の運動状態や操作状態が急激に変化したことなどから、ストローク量指令算出値DreがDro[n-1]+τruを超えると、(式9)にてDro[n-1]+τruが今回の制御タイミングにおけるストローク量指令出力値Dro[n]となることで、ストローク量指令算出値Dreをそのままストローク量指令出力値Droとする場合に比べて、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率(勾配)が制限される。そして、このときストローク量指令算出値Dreと車両用シート10における実際のロールストロークStrとの差分の絶対値|Dre−Str|が大きければ、項τruの値が図9に示すような基準値Adrよりも小さな値に設定されることから、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率がさらに制限される。
また、例えば図11に示すタイミングT12では、車両の運動状態や操作状態が急激に変化したことなどから、ストローク量指令算出値DreがDro[n-1]−τrdを下回ると、(式9)にてDro[n-1]−τrdが今回の制御タイミングにおけるストローク量指令出力値Dro[n]となることで、ストローク量指令算出値Dreをそのままストローク量指令出力値Droとする場合に比べて、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率が制限される。そして、このときストローク量指令算出値Dreと車両用シート10における実際のロールストロークStrとの差分の絶対値|Dre−Str|が大きければ、項τrdの値が図9に示すような基準値Adrよりも小さな値に設定されることから、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率がさらに制限される。
このようにして、前回の制御タイミングでロール制御量演算処理部212から出力されたストローク量指令出力値Dro[n-1]と、今回の制御タイミングにて算出されたロール制御用のストローク量指令算出値Dreとから求められる時間変化率の正負(勾配の極性)が、実際のロールストロークStrにおける時間変化率の正負(勾配の極性)と同一で、前回の制御タイミングでロール制御量演算処理部212から出力されたストローク量指令出力値Dro[n-1]と、今回の制御タイミングにて算出されたロール制御用のストローク量指令算出値Dreとから求められる変化量(変化幅)の方が、実際のロールストロークStrにおける変化量(変化幅)よりも大きいときには、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率を一定範囲内に制限する。
これにより、例えば車両用シート10の応答が車両の運動状態よりも遅れたことなどにより、車両の左右方向における車両用シート10の目標位置と実際の位置(ロールストロークStr)との間に大きな差異が生じた場合に、その目標位置に到達するまで車両用シート10のロール制御が継続してしまうこと、あるいは、さらに目標位置が実際の位置から遠ざかりロール制御の継続時間が長くなってしまうことなどによる、違和感を解消できる。すなわち、現実における車両の運動状態に見合ったロール制御を行うことができる。
図6に示すロール駆動出力処理部213は、ロール制御量演算処理部212での処理によって決定されたストローク量指令出力値Droに基づき、シート駆動部20が備える左右方向アクチュエータ21の駆動制御を可能にするための処理を実行する。例えば、ロール駆動出力処理部213は、ストローク量指令出力値Droを距離[mm]に対応した電圧値[V]に変換した後、左右方向アクチュエータ21に対して提供する。
また、ロール駆動出力処理部213は、左右方向アクチュエータ21におけるゲインを定めるためのゲイン指令を生成し、左右方向アクチュエータ21に対して提供する。このとき、ロール駆動出力処理部213は、例えば固定ゲインや、ストローク量指令出力値Droに対応するゲイン(ストロークゲイン)、ストローク量指令出力値の時間微分値dDro/dtに対応するゲイン(ストローク速度ゲイン)、電流偏差(Dro−Str)/Iroに対応するゲイン(電流偏差ゲイン)などを、予めROM等に格納されて用意されたマッピングテーブルを参照することなどにより、決定できればよい。なお、ロール駆動出力処理部213が電流偏差ゲインを決定する際には、シート駆動部20が備える左右方向アクチュエータ21におけるドライバ電流値Iroが用いられる。
図1に示す制御情報処理部40が備えるピッチ制御情報処理部43は、状態情報処理部41での処理によって得られた各種の状態量に基づき所定の演算処理を実行することなどにより、車両用シート10のピッチ制御を行うための制御量を特定可能にする。
図12は、この発明の実施の形態におけるピッチ制御情報処理部43の一構成例を示すブロック図である。図12に示す構成において、ピッチ制御情報処理部43は、前後運動推定処理部221、ピッチ制御量演算処理部222、ピッチ駆動出力処理部223を有している。
前後運動推定処理部221は、加速度センサ112とは異なる各種のセンサによって検出された車両の運動状態や操作状態から、前後方向加速度における各種の成分を推定するための処理を実行する。例えば、前後運動推定処理部221には、フィードフォワード成分推定処理部261、頭部位置成分推定処理部262が含まれている。
前後運動推定処理部221に含まれるフィードフォワード成分推定処理部261は、ブレーキ圧状態情報処理部207での処理によって得られたブレーキ圧Mcfやブレーキ圧の時間微分値dMcfに基づき、フィードフォワード制御用の成分として車両用シート10の位置における前後方向加速度を推定するための処理を実行する。例えば、フィードフォワード成分推定部261では、予めROM等に格納されて用意されたマッピングテーブルを参照することにより、ブレーキ圧Mcf及びブレーキ圧の時間微分値dMcfに対応してフィードフォワード制御用に推定される前後方向加速度Gxbを算出する。
前後運動推定処理部221に含まれる頭部位置成分推定処理部262は、ピッチ状態情報処理部205での処理によって得られたピッチレートζfに基づき、フィードバック制御用の成分として乗員の頭部位置における前後方向加速度を推定するための演算処理を実行する。例えば、頭部位置成分推定処理部262では、下記のような(式10)に対応した演算処理を実行して、フィードバック制御用に推定される乗員の頭部位置における前後方向加速度Gxpを算出する。なお、(式10)では、ロールレートセンサ114やピッチレートセンサ115などのセンサ設置位置から乗員の頭部位置までの距離Lmや、このセンサ設置位置と乗員の頭部位置とを結ぶ線分が車両の前後方向軸に対して形成する角度θpを用いている。
ピッチ制御量演算処理部222は、車両の前後方向加速度として特定された車両の運動状態に基づき、シート駆動部20が備える前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行う際の制御量を特定するための処理を実行する。一例として、ピッチ制御量演算処理部222は、前後運動推定処理部221に含まれるフィードフォワード成分推定処理部261での処理によって得られた前後方向加速度Gxb、状態情報処理部41が備える加速度情報処理部202での処理によって得られた前後方向加速度Gxf、状態情報処理部41が備える車速情報処理部201での処理によって得られた前後方向加速度Gxv、前後運動推定処理部221に含まれる頭部位置成分推定処理部262での処理によって特定された前後方向加速度Gxp、及び、車両の前後方向傾斜角θxに基づき、下記のような(式11)に対応した演算処理を実行して、車両用シート10における前後方向への傾斜角度に相当するピッチ角の制御量算出値Cpeを得る。
Cpe=Kp1・Gxb+Kp21・Gxf+Kp22・Gxv+Kp3・Gxp+Kp4・θx
・・・(式11)
ここで、(式11)にて用いられる係数Kp1については、例えば図13に示すように、ピッチ制御の開始時点からの経過時間に応じて変化する特性を有するものに設定する。すなわち、ピッチ制御の開始時点から予め定められたタイミングT21までの期間では、係数Kp1を正の一定値Ap1に維持する。そして、タイミングT21に達してからタイミングT21よりも後に到来するタイミングT22までの期間では、係数Kp1を、定数Ap1から時間経過に比例して減少させ、タイミングT22にて「0」となるように設定する。タイミングT22以降の期間では、係数Kp1を「0」に維持する。これにより、ピッチ制御の開始時点からタイミングT22に達するまでの所定期間では、ブレーキ圧センサ122によって検出されたブレーキ圧Mcに基づくフィードフォワード制御が行われることになる。他方、タイミングT22以降の期間では、フィードフォワード制御用の成分がピッチ角の制御量算出値Cpeに寄与しないことになり、フィードフォワード制御が行われなくなる。
また、(式11)にて用いられる係数Kp21や係数Kp22については、下記の(式12−1)〜(式12−3)で表されるような関係を有するものに設定する。
Kp1+Kp21+Kp22=Ap1 ・・・(式12−1)
Kp21=hp・(Ap1−Kp1) ・・・(式12−2)
Kp22=(1−hp)・(Ap1−Kp1) ・・・(式12−3)
ここで、(式12−2)及び(式12−3)にて用いられる配分値hpは、車両用シート10のピッチ制御において、車両の傾きによる重力加速度の成分を含めた前後方向加速度Gxfに基づく制御量と、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない前後方向加速度Gxvに基づく制御量との配分比率を示している。例えば、図14に示すように、配分値hpは、車両の走行速度(例えば車速情報処理部201で得られた走行速度Vf)に応じて変化する特性を有するものに設定する。すなわち、車両の走行速度が「0」から予め定められた速度V21までの範囲内である場合には、配分値hpを一定値Hp0(0<Hp0≦1)に維持する。そして、車両の走行速度が速度V21から速度V22(V21<V22)までの範囲内である場合には、配分値hpを、定数Hp0から走行速度の上昇に比例して減少させ、予め定められた速度V22にて「0」となるように設定する。車両の走行速度が速度V22以上となる場合には、配分値hpを「0」に維持する。
こうして、車両用シート10のピッチ制御では、車速センサ111によって検出された車両の走行速度Vに基づき、予め定められた重み付け特性の下で、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない前後方向加速度Gxvに応じたフィードバック制御が行われることになる。そして、この重み付け特性では、車両の走行速度が高速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度を含まない前後方向加速度Gxvに基づく制御量を増大させる一方で、車両の走行速度が低速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度の成分を含む前後方向加速度Gxfに基づく制御量を増大させる。これにより、車両用シート10が運転者用の運転席である場合に、ピッチ制御による運転姿勢への影響を少なくすることができる。なお、車両用シート10が同乗者用の助手席などである場合には、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない前後方向加速度Gxvに応じたフィードバック制御を行わないようにしてもよい。
さらに、上記の(式11)にて用いられる車両の前後方向傾斜角θxは、例えば状態情報処理部41のピッチ状態情報処理部205により算出されたピッチ角φpであればよい。あるいは、ピッチレートセンサ115とは別個のピッチ角センサを状態検出部30に設け、そのピッチ角センサから提供されるピッチ角検出情報で示されるピッチ角に含まれるノイズ成分を除去してピッチ角φpを算出し、このピッチ角φpを車両の前後方向傾斜角θxとして用いてもよい。なお、車両の前後方向加速度Gx(車両の傾きによる重力加速度の成分を含む)は、車両の前後方向傾斜角θx、及び、車両の走行速度Vfに基づいて算出される前後方向加速度Gxvとの間で、重力加速度1Gを用いた下記の(式12−10)及び(式12−11)で表されるような関係を有している。
Gx=1G・sinθx+Gxv ・・・(式12−10)
θx=sin-1((Gx−Gxv)/1G) ・・・(式12−11)
上記の(式11)にて用いられる係数Kp4は、係数Kp22との間で、例えば下記の(式12−12)で表されるような関係を有するものであればよい。
Kp4=Kp22/0.3 ・・・(式12−12)
上記の(式12−12)で表されるように、ピッチ角の制御量算出値Cpeは、車両の前後方向傾斜角θxに対する応答性が、車両の走行速度Vfに基づいて算出される前後方向加速度Gxvに対する応答性に比べて、高くなるように決定される。これにより、車両の乗り心地向上を図ることができる。そして、上記の(式11)で表されるように、ピッチ角の制御量算出値Cpeにおいて、車両の前後方向傾斜角θxに応じた成分と、車両の走行速度Vfに基づいて特定される前後方向加速度Gxvに応じた成分とを、独立したパラメータとして決定する。これにより、路面の傾斜角に応じたピッチ制御と、車両の加減速に応じたピッチ制御とを、独立(分離)して官能よく実施することができ、車両の乗り心地向上を図ることができる。
続いて、ピッチ制御量演算処理部222では、ピッチ角の制御量算出値Cpeに基づき、ピッチ角の制御量出力値Cpoを生成する。一例として、ピッチ角の制御量出力値Cpoは、図15(A)及び(B)に示すような特性を有するものに設定する。図15(A)は、車両用シート10が運転者用の運転席である場合におけるピッチ角の制御量出力値Cpoを例示している。図15(B)は、車両用シート10が同乗者用の助手席である場合におけるピッチ角の制御量出力値Cpoを例示している。
図15(A)及び(B)に示すように、ピッチ角の制御量算出値Cpeの絶対値が予め定められた一定値Cpe0以下となる範囲には、ピッチ角の制御量出力値Cpoが「0」に維持される不感帯Bpnが設けられている。これにより、路面の凹凸による外乱などで不要にピッチ制御が行われることを防止できる。
また、図15(A)に例示する車両用シート10が運転席である場合におけるピッチ角の制御量出力値Cpoでは、ピッチ角の制御量算出値Cpeに対する傾きap1が、図15(B)に例示する車両用シート10が助手席である場合におけるピッチ角の制御量算出値Creに対する傾きap2に比べて、小さくなるように設定されている。さらに、図15(A)に例示する車両用シート10が運転席である場合におけるピッチ角の制御量出力値Cpoでは、ピッチ角の制御量算出値Cpeに対する傾きap1が、図9(A)に例示するロール角の制御量出力値Croにおけるロール角の制御量算出値Croに対する傾きar1に比べて、小さくなるように設定されている。これにより、運転席では、車両用シート10のピッチ制御による運転姿勢への影響を少なくすることができる。なお、車両用シート10が助手席である場合でも、図15(B)に例示するピッチ角の制御量出力値Cpoでは、ピッチ角の制御量算出値Cpeに対する傾きap2が、図9(B)に例示するロール角の制御量出力値Croにおけるロール角の制御量算出値Croに対する傾きar2に比べて、小さくなるように設定されてもよい。
次に、ピッチ制御量演算処理部222では、ピッチ角の制御量出力値Cpoに基づき、下記のような(式13)に対応した演算処理を実行して、ピッチ角の比例微分制御(PD制御)における入力値Xpを得る。なお、(式13)における係数kppと係数kpdはそれぞれ、実験やシミュレーションにより決定される定数又は変数であればよい。
さらに、ピッチ制御量演算処理部222では、(式13)により得られたピッチ角の比例微分制御における入力値Xpを、シート駆動部20が備える前後方向アクチュエータ22により車両用シート10を車両の前後方向へ移動させる際のストローク量指令算出値Dpeに変換するための処理を実行する。一例として、ピッチ制御量演算処理部222は、ピッチ角の比例微分制御において入力値Xpとなる角度量[deg]をストローク量指令算出値Dpeとなる距離[mm]に変換するための変換テーブルを、予めROM等に格納して用意しておく。そして、入力値Xpに基づいて変換テーブルを参照することにより、変換後のストローク量指令算出値Dpeを特定できればよい。あるいは、入力値Xpを引数として、予め用意された変換用の関数演算を実行することにより、変換後のストローク量指令算出値Dpeを特定できればよい。
こうして特定されたストローク量指令算出値Dpeに基づき、ピッチ制御量演算処理部222では、下記のような(式14)で求められる中央値を、今回の制御出力タイミングにおけるストローク量指令出力値Dpo[n]に決定する。なお、(式14)では、前回の制御出力タイミングにおけるストローク量指令出力値Dpo[n-1]を用いている。
Dpo[n]=MED(Dpo[n-1]−τpu,Dpe,Dpo[n-1]+τpd)
・・・(式14)
また、(式14)における項τpuと項τpdについては、例えば図16に示すように、ストローク量指令算出値Dpeと車両用シート10における実際のピッチストロークStpとの差分の絶対値|Dpe−Stp|に応じて変化する特性を有するものに設定する。すなわち、|Dpe−Stp|の値が「0」(差分なし)から予め定められた差分D21までの範囲内である場合には、項τpuと項τpdの値を、一定の基準値Adpに維持する。なお、基準値Adpは、シート駆動部20が備える前後方向アクチュエータ22の動作仕様により定まる一定値であればよい。そして、|Dpe−Stp|の値が差分値D21から差分値D22(D21<D22)までの範囲内である場合には、項τpuと項τpdの値を、|Dpe−Stp|の増大に比例して減少させ、予め定められた差分値D22にて0.2×Adpとなるように設定する。|Dpe−Stp|の値が差分値D22以上となる場合には、項τpuと項τpdの値を、0.2×Adpに維持する。
こうした設定により、例えば図17に示すタイミングT31では、車両の運動状態や操作状態が急激に変化したことなどから、ストローク量指令算出値DpeがDpo[n-1]+τpuを超えると、(式14)にてDpo[n-1]+τpuが今回の制御タイミングにおけるストローク量指令出力値Dpo[n]となることで、ストローク量指令算出値Dpeをそのままストローク量指令出力値Dpoとする場合に比べて、ストローク量指令出力値Dpoにおける時間変化率(勾配)が制限される。そして、このときストローク量指令算出値Dpeと車両用シート10における実際のピッチストロークStpとの差分の絶対値|Dpe−Stp|が大きければ、項τpuの値が図16に示すような基準値Adpよりも小さな値に設定されることから、ストローク量指令出力値Dpoにおける時間変化率がさらに制限される。
また、例えば図17に示すタイミングT32では、車両の運動状態や操作状態が急激に変化したことなどから、ストローク量指令算出値DpeがDpo[n-1]−τpdを下回ると、(式14)にてDpo[n-1]−τpdが今回の制御タイミングにおけるストローク量指令出力値Dpo[n]となることで、ストローク量指令算出値Dreをそのままストローク量指令出力値Droとする場合に比べて、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率が制限される。そして、このときストローク量指令算出値Dpeと車両用シート10における実際のピッチストロークStpとの差分の絶対値|Dpe−Stp|が大きければ、項τpdの値が図16に示すような基準値Adpよりも小さな値に設定されることから、ストローク量指令出力値Dpoにおける時間変化率がさらに制限される。
このようにして、前回の制御タイミングでピッチ制御量演算処理部222から出力されたストローク量指令出力値Dpo[n-1]と、今回の制御タイミングにて算出されたピッチ制御用のストローク量指令算出値Dpeとから求められる時間変化率の正負(勾配の極性)が、実際のピッチストロークStpにおける時間変化率の正負(勾配の極性)と同一で、前回の制御タイミングでピッチ制御量演算処理部222から出力されたストローク量指令出力値Dpo[n-1]と、今回の制御タイミングにて算出されたピッチ制御用のストローク量指令算出値Dpeとから求められる変化量(変化幅)の方が、実際のピッチストロークStpにおける変化量(変化幅)よりも大きいときには、ストローク量指令出力値Droにおける時間変化率を一定範囲内に制限する。
これにより、例えば車両用シート10の応答が車両の運動状態よりも遅れたことなどにより、車両の前後方向における車両用シート10の目標位置と実際の位置(ピッチストロークStp)との間に大きな差異が生じた場合に、その目標位置に到達するまで車両用シート10のピッチ制御が継続してしまうこと、あるいは、さらに目標位置が実際の位置から遠ざかりピッチ制御の継続時間が長くなってしまうことなどによる、違和感を解消できる。すなわち、現実における車両の運動状態に見合ったピッチ制御を行うことができる。
図12に示すピッチ駆動出力処理部223は、ピッチ制御量演算処理部222での処理によって決定されたストローク量指令出力値Dpoに基づき、シート駆動部20が備える前後方向アクチュエータ22の駆動制御を可能にするための処理を実行する。例えば、ピッチ駆動出力処理部223は、ストローク量指令出力値Dpoを距離[mm]に対応した電圧値[V]に変換した後、前後方向アクチュエータ22に対して提供する。
また、ピッチ駆動出力処理部223は、前後方向アクチュエータ22におけるゲインを定めるためのゲイン指令を生成し、前後方向アクチュエータ22に対して提供する。このとき、ピッチ駆動出力処理部223は、例えば固定ゲインや、ストローク量指令出力値Dpoに対応するゲイン(ストロークゲイン)、ストローク量指令出力値の時間微分値dDpo/dtに対応するゲイン(ストローク速度ゲイン)、電流偏差(Dpo−Stp)/Ipoに対応するゲイン(電流偏差ゲイン)などを、予めROM等に格納されて用意されたマッピングテーブルを参照することなどにより、決定できればよい。なお、ピッチ駆動出力処理部223が電流偏差ゲインを決定する際には、シート駆動部20が備える前後方向アクチュエータ22におけるドライバ電流値Ipoが用いられる。
以上のような乗員姿勢制御装置1によれば、車両用シート10のロール制御において、車両の走行速度Vfやヨーレートγfに基づいて特定される左右方向加速度Gyyに対応した制御量成分(例えばKr22・Gyyなど)と、車両の左右方向傾斜角θyに対応した制御量成分(例えばKr4・θyなど)とを、独立したパラメータとして決定し、左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行うことができる。また、車両用シート10のピッチ制御において、車両の走行速度Vfに基づいて特定される前後方向加速度Gxvに対応した制御量成分(例えばKp22・Gxvなど)と、車両の前後方向傾斜角θxに対応した制御量成分(例えばKp4・θxなど)とを、独立したパラメータとして決定し、前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行うことができる。これにより、路面の傾斜角に対応した乗員の姿勢制御と、車両の加減速に応じた乗員の姿勢制御とを、独立して官能よく実施することができ、車両の乗り心地向上を図ることができる。
そして、車両用シート10のロール制御においては、車両の左右方向傾斜角θyに対する応答性が、車両の走行速度Vfやヨーレートγfに基づいて特定される左右方向加速度Gyyに対する応答性に比べて高くなるように、左右方向アクチュエータ21の駆動制御量成分を決定する。また、車両用シート10のピッチ制御においては、車両の前後方向傾斜角θxに対する応答性が、車両の走行速度Vfに基づいて特定される前後方向加速度Gxvに対する応答性に比べて高くなるように、前後方向アクチュエータ22の駆動制御量成分を決定する。これにより、車両の乗り心地向上を図ることができる。
車両用シート10のロール制御において、車両の傾きによる重力加速度の成分を含めた左右方向加速度Gyfに対応した制御量成分(例えばKr21・Gyfなど)を決定して、左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行うことができる。また、車両用シート10のピッチ制御において、車両の傾きによる重力加速度の成分を含めた前後方向加速度Gxfに対応した制御量成分(例えばKp21・Gxfなど)を決定して、前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行うことができる。これにより、車両の傾きによる重力加速度にも対応した乗員の姿勢制御が可能となり、車両の乗り心地向上や運転姿勢の安定化を図ることができる。
車両用シート10のロール制御においては、車両におけるロールレートδfに基づき、フィードバック制御用の成分として乗員の頭部位置における左右方向加速度Gyrを算出し、この左右方向加速度Gyrに対応した制御量成分(例えばKr3・Gyrなど)を決定して、左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行うことができる。また、車両用シート10のピッチ制御においては、車両におけるピッチレートζfに基づき、フィードバック制御用の成分として乗員の頭部位置における前後方向加速度Gxpを算出し、この前後方向加速度Gxpに対応した制御量成分(例えばKp3・Gxpなど)を決定して、前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行うことができる。これにより、乗員の頭部位置にて発生する加速度にも対応した乗員の姿勢制御が可能となり、車両の乗り心地向上や運転姿勢の安定化を図ることができる。
車両用シート10のロール制御において、ロール角の制御量算出値Creに基づいてロール角の制御量出力値Croを決定する際には、ロール角の制御量算出値Creに対して所定幅Brnの不感帯を有するロール角の制御量出力値Croを決定して、左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行うことができる。また、車両用シート10のピッチ制御において、ピッチ角の制御量算出値Cpeに基づいてピッチ角の制御量出力値Cpoを決定する際には、ピッチ角の制御量算出値Cpeに対して所定幅Bpnの不感帯を有するピッチ角の制御量出力値Cpoを決定して、前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行うことができる。これにより、路面の凹凸に起因する外乱などで不要に乗員の姿勢制御が行われることを防止して、車両の乗り心地向上や運転姿勢の安定化を図ることができる。
車両用シート10のロール制御においては、車両におけるヨーレートγfや走行速度Vfに基づき、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyyを算出し、この左右方向加速度Gyyに対応した制御量成分(例えばKr22・Gyyなど)を決定して、左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行うことができる。また、車両用シート10のピッチ制御においては、車両の走行速度Vfから求められる車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない前後方向加速度Gxvを算出し、この前後方向加速度Gxvに対応した制御量成分(例えばKp22・Gxvなど)を決定して、前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行うことができる。
そして、車両用シート10のロール制御では、車両の走行速度が高速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyyに基づく制御量を増大させる一方で、車両の走行速度が低速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度の成分を含まない左右方向加速度Gyfに基づく制御量を増大させる。また、車両用シート10のピッチ制御では、車両の走行速度が高速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度を含まない前後方向加速度Gxvに基づく制御量を増大させる一方で、車両の走行速度が低速となるに従って、車両の傾きによる重力加速度の成分を含む前後方向加速度Gxfに基づく制御量を増大させる。これにより、車両用シート10が運転者用の運転席である場合に、ロール制御による運転姿勢への影響を少なくすることができる。
加えて、車両用シート10が運転席である場合におけるロール角の制御量出力値Croでは、ロール角の制御量算出値Creに対する傾きar1が、助手席である場合におけるロール角の制御量算出値Creに対する傾きar2に比べて、小さくなるように設定されている。また、車両用シート10が運転席である場合におけるピッチ角の制御量出力値Cpoでは、ピッチ角の制御量算出値Cpeに対する傾きap1が、助手席である場合におけるピッチ角の制御量算出値Creに対する傾きap2に比べて、小さくなるように設定されている。さらに、車両用シート10が運転席である場合におけるピッチ角の制御量出力値Cpoでは、ピッチ角の制御量算出値Cpeに対する傾きap1が、ロール角の制御量出力値Croにおけるロール角の制御量算出値Croに対する傾きar1に比べて、小さくなるように設定されている。これにより、運転席では、乗員の姿勢制御による運転姿勢への影響を少なくして、過剰な姿勢制御による運転姿勢の不安定化を防止することができる。
車両用シート10のロール制御では、車両の走行速度Vfや操舵角Mafに基づき、フィードフォワード制御用の左右方向加速度Gymを算出し、この左右方向加速度Gymに対応した制御量成分(例えばKr1・Gymなど)を決定して、左右方向アクチュエータ21の駆動制御を行うことができる。また、車両用シート10のピッチ制御では、ブレーキ圧Mcfやブレーキ圧の時間微分値dMcfに基づき、フィードフォワード制御用の前後方向加速度Gxbを算出し、この前後方向加速度Gxbに対応した制御量成分(例えばKp1・Gxbなど)を決定して、前後方向アクチュエータ22の駆動制御を行うことができる。これにより、左右方向アクチュエータ21や前後方向アクチュエータ22の応答速度を高めて、車両の運動状態に適合した乗員の姿勢制御を可能にし、車両の乗り心地向上や運転姿勢の安定化を図ることができる。
車両用シート10のロール制御では、ロール制御用のストローク量指令算出値Dreから求められる時間変化率の正負(勾配の極性)が、実際のロールストロークStrにおける時間変化率の正負(勾配の極性)と同一で、ロール制御用のストローク量指令算出値Dreから求められる変化幅の方が、実際のロールストロークStrにおける変化幅よりも大きいときには、ストローク量指令算出値Dreよりも時間変化率を制限したストローク量指令出力値Droを決定する。また、車両用シート10のピッチ制御では、ピッチ制御用のストローク量指令算出値Dpeから求められる時間変化率の正負(勾配の極性)が、実際のピッチストロークStpにおける時間変化率の正負(勾配の極性)と同一で、ピッチ制御用のストローク量指令算出値Dpeから求められる変化幅の方が、実際のロールストロークStpにおける変化幅よりも大きいときには、ストローク量指令算出値Dpeよりも時間変化率を制限したストローク量指令出力値Dpoを決定する。これにより、車両用シート10の応答動作が車両の運動状態よりも遅れた場合における乗員の姿勢制御による違和感を解消して、現実における車両の運動状態に適合した姿勢制御を行うことができる。
その他、前記のハードウェア構成や論理構成は一例であり、任意に変更及び修正が可能である。制御情報処理部40の構成は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、図1、図4、図6、図12のブロック図に示すような論理構成を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えばICメモリ、磁気記録ディスク、磁気記録カード、光学式記録ディスク、光学式記録カード、光磁気記録ディスク、光磁気記録カードなど)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、制御情報処理部40の機能を実現するようにしてもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで制御情報処理部40を構成してもよい。
また、制御情報処理部40の機能をOS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記憶媒体や記憶装置に格納してもよい。
さらに、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前述のコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前述のコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、制御処理部40の機能を実現してもよい。