JP5324979B2 - 疲労強度に優れた粉末鍛造品、粉末鍛造用混合粉末、および破断分割型コンロッド - Google Patents

疲労強度に優れた粉末鍛造品、粉末鍛造用混合粉末、および破断分割型コンロッド Download PDF

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本発明は、混合粉末を予備成形した後に焼結して形成された焼結プリフォームを高温下で鍛造してなる疲労強度に優れた粉末鍛造品と、その粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末、およびその粉末鍛造品を用いて製造された破断分割型コンロッドに関するものである。
従来から、混合粉末を予備成形した後に焼結して形成された焼結プリフォームを、高温下で鍛造してなる粉末鍛造品は、コンロッド、ベアリングレースをはじめとする様々な機械部品等に広く用いられている。これらの機械部品には、粉末鍛造品としての鍛造後の被削性や疲労強度を考慮して、純鉄粉系の粉末を用いて鍛造したものでは、合金元素として、Cを0.45〜0.65質量%、Cuを1.5〜2質量%程度添加したものが主流となっている。
しかしながら、上記した成分組成の粉末鍛造品では、確かに、被削性や疲労強度を向上させることはできるものの、例えば、疲労強度として回転曲げ疲れ限度(以下、単に疲れ限度と説明することもある。)を350N/mm、高くても380N/mmとするのが限界であり、それ以上の疲労強度とすることは不可能であった。
更に高い疲労強度を確保するためには、CやCuの含有量を増加させるだけでは不可能であるため、C、Cu以外の合金元素を添加することが必要となる。そこで、合金元素として、Ni、Mo、Mn、Cr等を添加したものが、特許文献1、特許文献2として提案されている。しかしながら、これらの元素を添加した混合粉末を用いて作製した焼結プリフォームを高温下で鍛造すると、マルテンサイト、ベイナイト等の非常に硬い組織が出現するため、高い疲労強度を確保できる反面、切削工具寿命の低下、寸法精度の低下を引き起こすことになる。また、これらの合金元素は高価な元素であって、コストアップにつながるという問題もある。
また、鍛造後の成分組成が、質量%で、C:0.2〜0.4%、Cu:3〜5%、Mn:0.5%以下(0を含まない)、残部鉄および不可避的不純物よりなり、かつ、フェライト率が40〜90%であることを特徴とする被削性および疲労強度に優れた粉末鍛造部材が特許文献3として提案されている。しかしながら、特許文献3で得られる粉末鍛造部材の疲労強度はおよそ370N/mmであり、更なる高疲労強度材が望まれている。
特開昭59−126753号公報 特開2002−20847号公報 特開2008−13818号公報
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、高価な元素を添加しなくても、十分な被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:400N/mm以上の優れた疲労特性を得ることができる粉末鍛造品と、その粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末、およびその粉末鍛造品を用いて製造される破断分割型コンロッドを提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、混合粉末を予備成形した後に焼結して形成された焼結プリフォームを高温下で鍛造してなる粉末鍛造品であって、真密度比が97%以上であると共に、成分組成が、質量%で、C:0〜0.45%、Cu:0.5〜4%、P:0.1〜0.7%で、残部が鉄および不可避的不純物であり、且つ、C、Cu、Pの含有量が、「[Cu]+22[C]+28[P]>14」という条件を満たすことを特徴とする疲労強度に優れた粉末鍛造品である。但し、前式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
請求項2記載の発明は、混合粉末を予備成形した後に焼結して形成された焼結プリフォームを高温下で鍛造してなる粉末鍛造品であって、真密度比が97%以上であると共に、成分組成が、質量%で、C:0.10〜0.40%、Cu:1.5〜4%、P:0.25〜0.45%で、残部が鉄および不可避的不純物であり、且つ、C、Cu、Pの含有量が、「[Cu]+22[C]+28[P]>16」という条件を満たすことを特徴とする疲労強度に優れた粉末鍛造品である。但し、前式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
請求項3記載の発明は、硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤が添加されていることを特徴とする請求項1または2記載の疲労強度に優れた粉末鍛造品である。
請求項4記載の発明は、請求項1記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.08〜0.68%、Cu:0.5〜4%、P:0.1〜0.7%で、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末である。
請求項5記載の発明は、請求項2記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.18〜0.63%、Cu:1.5〜4%、P:0.25〜0.45%で、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末である。
請求項6記載の発明は、請求項3記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.08〜0.68%、Cu:0.5〜4%、P:0.1〜0.7%を含み、更に、硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤を含み、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末である。
請求項7記載の発明は、請求項3記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.18〜0.63%、Cu:0.5〜4%、P:0.25〜0.45%を含み、更に、硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤を含み、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末である。
請求項8記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の粉末鍛造品を用いて製造されたことを特徴とする破断分割型コンロッドである。
本発明の請求項1記載の疲労強度に優れた粉末鍛造品によると、真密度比を97%以上とし、添加するC、Cu、Pの配合量を調整することで、Ni、Mo、Cr等の高価な元素を添加しなくても、十分な被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:400N/mm以上の優れた疲労特性を得ることができる。
本発明の請求項2記載の疲労強度に優れた粉末鍛造品によると、真密度比を99%以上とし、添加するC、Cu、Pの配合量を調整することで、Ni、Mo、Cr等の高価な元素を添加しなくても、更に十分な被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:420N/mm以上の優れた疲労特性を得ることができる。
本発明の請求項3記載の疲労強度に優れた粉末鍛造品によると、被削性改善剤を添加することで、粉末鍛造品の被削性を更に向上させることができ、機械加工時における工具磨耗を抑制できる。
本発明の請求項4記載の粉末鍛造用混合粉末によると、その混合粉末を粉末鍛造品用の原料として用いることで、被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:400N/mm以上の疲労強度に優れた粉末鍛造品を鍛造することができる。
本発明の請求項5記載の粉末鍛造用混合粉末によると、その混合粉末を粉末鍛造品用の原料として用いることで、被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:420N/mm以上の疲労強度に優れた粉末鍛造品を鍛造することができる。
本発明の請求項6記載の粉末鍛造用混合粉末によると、その混合粉末を粉末鍛造品用の原料として用いることで、被削性を向上、靭性を確保したうえで、疲れ限度:400N/mm以上の疲労強度に優れた粉末鍛造品を鍛造することができる。
本発明の請求項7記載の粉末鍛造用混合粉末によると、その混合粉末を粉末鍛造品用の原料として用いることで、被削性を向上、靭性を確保したうえで、疲れ限度:420N/mm以上の疲労強度に優れた粉末鍛造品を鍛造することができる。
本発明の請求項8記載の破断分割型コンロッドによると、機械加工時における工具磨耗が低減されて部品コストの上昇を抑制することができる。また、被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:400N/mm以上、或いは疲れ限度:420N/mm以上の疲労強度に優れたコンロッドとすることができ、更には、破断分割後の組み付け時における自己整合性に優れたものとなる。
パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の炭化物含有組織が、フェライトを環状に取り囲む本発明の粉末鍛造品の組織の一例を示す顕微鏡写真である。 パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の炭化物含有組織が、フェライトを環状に取り囲む本発明の粉末鍛造品の組織の一例を示す断面図である。 フェライト組織とパーライト組織がランダムに配置された従来の粉末鍛造品の組織の一例を示す顕微鏡写真である。 フェライト組織とパーライト組織がランダムに配置された従来の粉末鍛造品の組織の一例を示す断面図である。 破断分割型コンロッドの形状および寸法を例示するもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳細に説明する。まず、本発明に係る粉末鍛造品の構成のうち、その粉末鍛造品中の化学成分の含有量の範囲限定理由について、元素毎に詳細に説明する。尚、以下の明細書中の説明で%と示す含有量(添加量)は、全て、質量%のことを示す。
C:0〜0.45%
Cは、粉末鍛造品を用いて製造されるコンロッド等の疲労強度を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、Cの含有量が過剰であると、セメンタイトで構成されるパーライトが増加して靭性が低下してしまう。また、冷却速度が速くなると、硬い組織であるマルテンサイトが出現してしまう。Cの含有量が0.45%を超えると、マルテンサイトが出現することで硬さが増しすぎて加工が困難となる。また、破断分割型コンロッド等に用いる場合、靭性が低下して破断分割面がフラットになり自己整合性が確保できなくなる。従って、Cの含有量の上限は0.45%とする。また、疲労強度は、Cu、Pの添加でも確保することができるので、その下限は0%とする。尚、Cの含有量の下限は0.10%、上限は0.40%であることがより好ましい。
Cu:0.5〜4%
Cuは、焼結、鍛造のための加熱時に地鉄組織のフェライト中に固溶して固溶強化の作用をなす有効な元素である。疲労強度を確保するためには最低でも0.5%は含有させることが必要である。一方、Cuを4%を超えて含有させると、焼結工程で拡散不十分となり、液体Cuが残ることで鍛造割れが発生するため、Cuの含有量の上限は4%とする。尚、より好ましいCuの含有量の下限は1.5%である。
P:0.1〜0.7%
Pも、Cuと同様にフェライト固溶強化の作用をなす有効な元素であり、C、Cuと共に鍛造材の強度を担う重要な元素である。Pの含有量が0.1%未満であれば強度が十分に上がらず、また、炭化物含有組織がフェライトを環状に取り囲むようにして、強度を上げながら破断分割に必要な靭性を確保することができなくなる。一方、Pの含有量が0.7%を超えると、強度は上がるものの硬さが増し、靭性が低下して破断分割面がフラットになり自己整合性が確保できなくなる。尚、より好ましいPの含有量の下限は0.25%、上限は0.45%である。
粉末鍛造品中の化学成分の含有量の範囲限定理由では、C、Cu、Pの夫々の好ましい含有量の範囲を記載したが、C:0.10〜0.40%、Cu:1.5〜4%、P:0.25〜0.45%の好ましい範囲とすることで、回転曲げ疲れ限度:420N/mm以上、シャルピー吸収エネルギー:5.5J/cm以上、ロックウェル硬さ(HRB):95以下と、より優れた特性(バランス)を有する粉末鍛造品とすることができる。
本発明に係る粉末鍛造品中の化学成分の含有量の範囲限定理由は以上の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物である。含有する不可避的不純物としては、S、Si、O、N等を挙げることができる。
また、C、Cu、Pの含有量が個々に以上に、説明した範囲であっても、これら元素の合計の含有量が少ない場合は、疲労強度が十分に高くならないため、C、Cu、Pの合計の含有量を、[Cu]+22[C]+28[P]>14という条件式を満たす含有量とする必要がある。また、C、Cu、Pの含有量を夫々の好ましい含有量の範囲とした場合、[Cu]+22[C]+28[P]>16という条件式を満たす含有量とすることで、更に優れた特性とすることができる。
本発明に係る粉末鍛造品中の化学成分の含有量は以上の範囲とする必要があるが、粉末鍛造品の真密度比を97%以上にしなければ、疲労強度は高くはならない。また、被削性、靭性も併せて低下する傾向がある。尚、真密度比とは、理論密度(真密度)に対する相対密度(実際の密度)の割合(%)のことをいう。また、C、Cu、Pの含有量を夫々の好ましい含有量の範囲とした場合、真密度比を99%以上とすることで、更に優れた特性とすることができる。
また、この粉末鍛造品の予備成形時の粉末鍛造用混合粉末に、硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤を添加することで、粉末鍛造品の被削性を改善することができる。被削性改善剤のうち、硫化物としてはMnSを、酸化物としてはBを、窒化物としてはBNを、酸硫化物としてはMoSOを例示することができる。この被削性改善剤の合計添加量が、0.05%未満では被削性改善効果が十分ではなく、逆に0.6%を超えると、鉄材の占有面積が低下することと、疲労亀裂の起点となる非金属が増加することにより疲労強度が大きく低下する傾向を示す。従って、この被削性改善剤の合計添加量は、0.05〜0.6%の範囲とすることが好ましい。
以上に説明した条件の粉末鍛造品は、Cを含有しない場合と、Cを含有する場合で、その組織が異なる。Cを含有しない場合は、フェライト単体の組織となり、被削性、靭性、疲労特性が優れた粉末鍛造品とすることができる。一方、Cを含有する場合は、図1および図2に示すように、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の炭化物含有組織が、フェライトを環状に取り囲む組織となるが、略円形のフェライト組織で靭性を確保し、その周囲を取り囲む環状の炭化物含有組織で強度を確保することができるで、図3および図4に示すような、従来のフェライト組織とパーライト組織がランダムに配置されたC、Cu系では、達成することができなかった高疲労強度と高被削性を確保することが可能となった。
次に、本発明に係る粉末鍛造用混合粉末の、化学成分の含有量の範囲限定理由について説明する。
粉末鍛造用混合粉末を予備成形した後に、焼結して形成された焼結プリフォームを高温下で鍛造して粉末鍛造品を製造すると、化学成分の成分変化が起こる。その原料の粉末鍛造用混合粉末中の、化学成分の成分変化は、C、Cu、Pのうち、Cについてのみ起こり、Cu、Pの含有量は、粉末鍛造品と粉末鍛造用混合粉末で同一である。従って、粉末鍛造用混合粉末中のCuの含有量は0.5〜4%、Pの含有量は0.1〜0.7%である。
Cについては、粉末鍛造用混合粉末を用いて粉末鍛造品を鍛造する際に、粉末鍛造用混合粉末に含まれる不可避的不純物の酸素(O)が、粉末鍛造用混合粉末中のC、すなわちGr(グラファイト=黒鉛粉)と反応し、COガスとして消費されるため、粉末鍛造用混合粉末には、粉末鍛造品のCの含有量と比較して多めのGrを添加しておく必要がある。一般的に鉄粉に不可避的に含有される酸素量は、0.1〜0.3%であり、追加するGr量は0.08〜0.23%である。従って、粉末鍛造用混合粉末には、0.08〜0.68%のGrを添加する必要がある。尚、請求項2記載のより優れた特性の粉末鍛造品を鍛造する場合は、粉末鍛造用混合粉末には、0.18〜0.63%のGrを添加する必要がある。
粉末鍛造用混合粉末と粉末鍛造品のCの含有量が異なる理由を、より詳しく説明すると以下の2つの理由がある。
1つ目の理由は、原料として用いる純鉄粉、銅粉、Fe−P合金粉が不可避的に含有する酸素と、配合したGrが、焼結の工程において、例えば、「FeO+C→Fe+CO↑」というようにしてガス化して失われるためである。従って、配合した粉末鍛造用混合粉末の酸素量(潤滑剤を除いたメタル由来分)から、CO反応によって失われるC量を予め計算し、相当するC量分のGrを余分に配合することで、所望の粉末鍛造品の成分とすることができる。理想的な状態で酸素がCO反応によって失われるとした仮定した場合、Cの原子量は12、Oの原子量は16であるから、粉末鍛造用混合粉末中の酸素量×12/16が余分に配合しておくべきGr量となる。
2つ目の理由は、焼結の工程において、焼結雰囲気が酸化性雰囲気であった場合に、脱炭を起こして失われることがあるからである。この場合、焼結工程における脱炭量は、その焼結条件により左右されるため、一義的に決めることは困難である。しかしながら、試し焼きによって、焼結工程での脱炭量を測定し、脱炭量に相当するGrを余分に配合することは当業者が通常行っていることである。また、焼結雰囲気を不活性または還元性雰囲気に制御し、焼結工程での脱炭を防止・抑制することも当業者が通常行っている。
これらを勘案して、粉末鍛造用混合粉末のCの含有量を、0.08〜0.68%、或いは0.18〜0.63%とした。
次に、この粉末鍛造用混合粉末を用いて粉末鍛造品を鍛造する方法について説明する。
まず、純鉄粉に、純鉄粉中の酸素含有量と焼結雰囲気ガスの種類に応じて、焼結時に減少するCの含有量変化を予測して焼結後のCの含有量が0〜0.45%となるように、粉末鍛造用混合粉末中のCの含有量が0.08〜0.68%(或いは0.18〜0.63%)の範囲となるGr(グラファイト=黒鉛粉)と、Cuの含有量が0.5〜4%の範囲となる銅粉と、Pの含有量が0.1〜0.7の範囲となるFe−P合金粉を混合したうえで、必要に応じて被削性改善剤を混合する。更に適量の潤滑剤を添加して粉末鍛造用混合粉末とする。
この粉末鍛造用混合粉末を加圧成形機にて予備成形して成形プリフォームとする。更に、この成形プリフォームを高温下で焼結して焼結プリフォームとする。
次いで、この焼結プリフォームを冷却することなく、直ちに高温化で所定の鍛造圧力にて鍛造することにより、粉末鍛造品とすることができる。この際、鍛造圧力は、高くするほど粉末鍛造品の密度が高くなり強度が向上するので好ましいが、この粉末鍛造品から、例えば、図5に示すような形状および寸法の破断分割型コンロッドを作製する場合、面圧6.0ton/cm以上で鍛造することで、真密度比を97%以上(或いは99%以上)とすることができる。
尚、上記した製造方法は、焼結後にその温度を利用して直ちに鍛造する製造方法であるが、焼結後に一旦冷却し、再度加熱して鍛造するようにしても良い。
そして、この粉末鍛造品を用いて製造された破断分割型コンロッドは、機械加工時における工具磨耗が低減されて部品コストの上昇が抑制されると共に、疲労強度に優れ、更には、破断分割後の組み付け時における自己整合性に優れたものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
純鉄粉に、Gr(グラファイト=黒鉛粉)を0〜0.7質量%の範囲で、銅粉を0〜5質量%の範囲で、P(Fe−P合金粉)を0〜0.8質量%の範囲で、夫々混合し、更に潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.75質量%加え、30分間、V型混合機で混合し粉末鍛造用混合粉末とした。次に、この粉末鍛造用混合粉末を面圧6ton/cmで予備成形して成形プリフォーム(φ90×45mmH)とした。この成形プリフォームを、600℃で10分脱蝋後、窒素雰囲気中、1120℃、20分の条件下で焼結して焼結プリフォームとした。この焼結プリフォームを、窒素雰囲気中で、1050℃、30分加熱し、鍛造圧:3〜10ton/cmで鍛造後、自然放冷して粉末鍛造品を得た。この粉末鍛造品を試験体とし、次の各種試験を実施した。
これら試験体より、小野式回転曲げ疲労試験片(JIS Z 224 1号)、シャルピー衝撃試験片(JIS Z 2202 Uノッチ2mm)、引張試験片(JIS Z 2201 14A号)を作製して、小野式回転曲げ疲労試験、シャルピー衝撃試験、ロックウェル硬さ試験を実施した。
小野式回転曲げ疲労試験では、回転曲げ疲れ限度を求めた。回転曲げ疲れ限度については、試験結果が400N/mm以上のものを合格とした。また、シャルピー衝撃試験により衝撃値を求めた。このシャルピー衝撃試験では、シャルピー吸収エネルギーを測定して衝撃値とした。このシャルピー吸収エネルギーが5J/cm以上であれば、破断分割での自己整合性に優れると判断することができ、このシャルピー吸収エネルギーが5J/cm以上のものを合格とした。また、ロックウェル硬さ試験では、ロックウェル硬さ(HRB)を求めた。求められたロックウェル硬さ(HRB)が100未満のものを合格とした。
尚、回転曲げ疲れ限度:420N/mm以上、シャルピー吸収エネルギー:5.5J/cm以上、ロックウェル硬さ(HRB):95以下の試験結果が得られたものは、合格品の中でもより特性のバランスが優れるものとして評価した。
Figure 0005324979
Figure 0005324979
No.1〜3は、合金元素として、Cを0.45〜0.65質量%、Cuを1.5〜2質量%の範囲で添加した従来から主流の粉末鍛造品の事例である。これら従来例では、確かに、衝撃値、ロックウェル硬さは、合格判定基準を満足しており、靭性や被削性は優れているが、回転曲げ疲れ限度は400N/mmより低く、疲労強度は特に優れているとはいえない。
一方、No.6〜10、12〜14、17〜23、25〜35は、合金元素であるC、Cu、Pの含有量、真密度比、条件式が、全て本発明の請求項1記載の要件を満足する発明例である。これら発明例では、回転曲げ疲れ限度、衝撃値、ロックウェル硬さの全てで、合格判定基準を満足しており、十分な被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:400N/mm以上の優れた疲労特性を備えた粉末鍛造品であるということができる。
また、No.6〜9、13、28〜31は、合金元素であるC、Cu、Pの含有量、真密度比、条件式が、全て本発明の請求項2記載の要件を満足する発明例である。これら発明例では、回転曲げ疲れ限度が420N/mm以上、シャルピー吸収エネルギーが5.5J/cm以上、ロックウェル硬さ(HRB)が95以下で、合格品の中でもより特性のバランスが優れおり、更に十分な被削性、靭性を確保したうえで、疲れ限度:420N/mm以上の優れた疲労特性を備えた粉末鍛造品であるということができる。
これに対し、No.4、5は、合金元素の合計含有量が、[Cu]+22[C]+28[P]>14という条件を満たさず、少なすぎる比較例、No.11、16は、Cの含有量が多すぎる比較例、No.15は、Cuの含有量が多すぎる比較例、No.24は、Pの含有量が多すぎる比較例、No.36は、真密度比が低すぎる比較例である。これら比較例は、本発明の何れかの要件を満足していないため、回転曲げ疲れ限度、衝撃値、ロックウェル硬さの何れかで、合格判定基準を満足することができなかった。
次に、粉末鍛造用混合粉末に被削性改善剤を添加して粉末鍛造品を鍛造することによって、粉末鍛造品の被削性が改善できることを確認した。被削性改善剤のうち、硫化物としてはMnSを、酸化物としてはBを、窒化物としてはBNを、酸硫化物としてはMoSOを、夫々0.3質量%、No.27の粉末鍛造品を鍛造する際の粉末鍛造用混合粉末の混合時に添加することで、その効果を確認した。表3にその試験結果を示す。
Figure 0005324979
被削性改善効果は、ドリル(φ5:SKH51)を用い、周速度:40m/minにて試験体に穴を明け、切れなくなるまでの穴明け距離をドリル寿命として評価した。ドリル寿命は、No.1の従来例で2300mm、No.27の被削性改善剤を添加しない発明例で2290mmであるのに対し、被削性改善剤を添加したNo.37〜40では、2610〜2650mmであり、被削性改善剤を添加することで、15%程度はドリル寿命が延びており、被削性が改善されていることが確認できた。

Claims (8)

  1. 混合粉末を予備成形した後に焼結して形成された焼結プリフォームを高温下で鍛造してなる粉末鍛造品であって、
    真密度比が97%以上であると共に、
    成分組成が、質量%で、C:0〜0.45%、Cu:0.5〜4%、P:0.1〜0.7%で、残部が鉄および不可避的不純物であり、
    且つ、C、Cu、Pの含有量が、下式で示す条件を満たし、フェライト単体の組織、または、炭化物含有組織がフェライトを環状に取り囲む組織であることを特徴とする疲労強度に優れた粉末鍛造品。
    [Cu]+22[C]+28[P]>14
    但し、上式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 混合粉末を予備成形した後に焼結して形成された焼結プリフォームを高温下で鍛造してなる粉末鍛造品であって、
    真密度比が97%以上であると共に、
    成分組成が、質量%で、C:0.10〜0.40%、Cu:1.5〜4%、P:0.25〜0.45%で、残部が鉄および不可避的不純物であり、
    且つ、C、Cu、Pの含有量が、下式で示す条件を満たし、フェライト単体の組織、または、炭化物含有組織がフェライトを環状に取り囲む組織であることを特徴とする疲労強度に優れた粉末鍛造品。
    [Cu]+22[C]+28[P]>16
    但し、上式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
  3. 硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤が添加されていることを特徴とする請求項1または2記載の疲労強度に優れた粉末鍛造品。
  4. 請求項1記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、
    潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.08〜0.68%、Cu:0.5〜4%、P:0.1〜0.7%で、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末。
  5. 請求項2記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、
    潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.18〜0.63%、Cu:1.5〜4%、P:0.25〜0.45%で、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末。
  6. 請求項3記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、
    潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.08〜0.68%、Cu:0.5〜4%、P:0.1〜0.7%を含み、更に、硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤を含み、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末。
  7. 請求項3記載の粉末鍛造品の原料として用いられる混合粉末であって、
    潤滑剤を除いた部分の成分組成が、質量%で、C:0.18〜0.63%、Cu:0.5〜4%、P:0.25〜0.45%を含み、更に、硫化物、酸化物、窒化物、および酸硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の被削性改善剤を含み、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする粉末鍛造用混合粉末。
  8. 請求項1乃至3の何れかに記載の粉末鍛造品を用いて製造されたことを特徴とする破断分割型コンロッド。
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