JP6384687B2 - 鉄基焼結摺動部材の製造方法 - Google Patents

鉄基焼結摺動部材の製造方法 Download PDF

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本発明は、例えば、内燃機関のバルブガイドやバルブシート、ロータリーコンプレッサのベーンやローラ、ターボチャージャーの摺動部品、および車両、工作機械、産業機械等の駆動部位や摺動部位のように摺動面に高い面圧が作用するような摺動部品等に用いて好適な摺動部材に関し、特に、Feを主成分とする原料粉末を圧粉成形して得られた圧粉体を焼結した鉄基焼結摺動部材に関する。
粉末冶金法で製造された焼結部材は、ニアネットシェイプに成形することができ、かつ、大量生産に向くことから各種機械部品に適用されている。また、通常の溶製材料では得られない特殊な金属組織を容易に得ることができるため、上記のような各種摺動部品にも適用されている。すなわち、粉末冶金法で製造された焼結部材においては、原料粉末に黒鉛や硫化マンガン等の固体潤滑剤の粉末を添加し、固体潤滑剤が残留する条件で焼結することにより、固体潤滑剤を金属組織中に分散させることができるため、各種摺動部品に適用されている(特許文献1〜3等)。
特開平04−157140号公報 特開2006−052468号公報 特開2009−155696号公報
従来より、焼結摺動部材では、黒鉛や硫化マンガン等の固体潤滑剤を粉末の形態で付与し、焼結時に固溶させずに残留させている。このため、金属組織中において固体潤滑剤は気孔中および粉末粒界に偏在している。このような固体潤滑剤は、気孔中および粉末粒界において基地と結合していないため、摺動時に基地から脱落し易い。
また、固体潤滑剤として黒鉛を用いる場合は、黒鉛を焼結時に基地中に固溶させず、焼結後に遊離した黒鉛として残留させる必要がある。そのためには、焼結温度を一般の鉄基焼結合金の場合よりも低くしなければならない。このため、原料粉末どうしの拡散による粒子間結合が弱くなり基地強度が低くなり易い。
一方、硫化マンガン等の固体潤滑剤は、焼結時に基地中に容易に固溶しないため、一般の鉄基焼結合金の場合と同等の焼結温度で焼結することが可能である。しかしながら、粉末の形態で添加された固体潤滑剤は原料粉末間に存在する。このため、原料粉末どうしの拡散を阻害し、固体潤滑剤を添加しない場合に比して、基地強度が低くなる。そして、基地強度の低下により、鉄基焼結部材の強度が低下するとともに、摺動時の基地の耐久性が低下して摩耗が進行し易くなる。
このような状況の下、本発明は、固体潤滑剤が気孔中および粉末粒界のみではなく、粉末粒内にも均一に分散されるとともに、基地に強固に固着され、摺動特性に優れるとともに、機械的強度に優れた鉄基焼結摺動部材を提供することを目的とする。
本発明の鉄基焼結摺動部材の製造方法は、鉄粉末に、原料粉末に対して3〜10質量%の銅粉末もしくは銅合金粉末と、硫化鉄粉末、硫化銅粉末、二硫化モリブデン粉末、および硫化ニッケル粉末のうちの少なくとも1種の金属硫化物粉末を、原料粉末のS量が0.2〜3.24質量%となるよう添加して混合した原料粉末を用い、押型内で圧粉成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中、1090〜1300℃で焼結することによりフェライト相もしくは銅相が分散するフェライト相の基地を得ることを特徴とする。
上記の鉄基焼結摺動部材の製造方法においては、前記鉄粉末に替えてNiおよびMoの少なくとも1種を含有する鉄合金粉末を用いるとともに、原料粉末のNiおよびMo量が10質量%以下であること、前記原料粉末に、さらにニッケル粉末を添加するとともに、原料粉末のNi量が10質量%以下であることを好ましい態様とする。そして、前記原料粉末に、さらに黒鉛粉末0.2〜2質量%を添加すること、前記原料粉末に、さらに黒鉛粉末0.2〜3質量%と、硼酸、硼酸化物、硼素の窒化物、硼素のハロゲン化物、硼素の硫化物および硼素の水素化物の粉末のうちの1種以上0.1〜3.0質量%と、を添加することを好ましい態様とする。
本発明により製造される鉄基焼結摺動部材は、鉄基地中から硫化鉄を主体とする金属硫化物粒子が析出して鉄基地中に分散するため、基地に強固に固着されており、摺動特性に優れるとともに機械的強さに優れる。
本発明の鉄基焼結摺動部材の金属組織の一例を示す図面代用写真(鏡面研磨)である。 本発明の鉄基焼結摺動部材の金属組織の一例を示す図面代用写真(3%−ナイタール腐食)である。
以下、本発明により製造される鉄基焼結摺動部材の金属組織および好ましい数値限定の根拠を作用とともに説明する。本発明により製造される鉄基焼結摺動部材は、主成分をFeとする。ここで、主成分とは、焼結摺動部材中の過半を占める成分の意味であり、本発明においては全体組成におけるFe量が50質量%以上、好ましくは60質量%以上である。金属組織は、Feを主体とする硫化物粒子が分散する鉄基地(鉄合金基地)と気孔とからなる。鉄基地は、鉄粉末および/または鉄合金粉末により形成される。気孔は、粉末冶金法に起因して生じるものであり、原料粉末を圧粉成形した際の粉末間の空隙が、原料粉末の結合により形成された鉄基地中に残留したものである。
一般に、鉄粉末は、製法に起因してMnを0.02〜1.2質量%程度含有し、このため鉄基地は、不可避不純物として微量のMnを含有する。したがって、鉄粉末にSを与えることによって、固体潤滑剤として硫化マンガン等の硫化物粒子を基地中に析出させることができる。ここで、硫化マンガンは基地中に微細に析出するため、被削性改善には効果があるが、微細過ぎるため摺動特性の改善効果が小さい。このため、本発明においては、基地に微量に含有されるMnと反応する分のS量だけでなく、さらにSを付与し、このSを主成分であるFeと結合させて硫化鉄を形成する。
通常、硫化物の形成し易さは、Sに対する電気陰性度の差が大きいものほど高い。電気陰性度の値(ポーリングによる電気陰性度)はS:2.58であり、Mn:1.55、Cr:1.66、Fe:1.83、Cu:1.90、Ni:1.91、Mo:2.16であるから、硫化物は、Mn>Cr>Fe>Cu>Ni>Moの順で形成し易い。このため、鉄粉末に含有される全てのMnと結合してMnSを生成できるS量を超える量のSを添加すると、微量のMnとの反応以外に、主成分であるFeとの反応が起こり、硫化マンガンだけでなく、硫化鉄も析出する。したがって、基地中に析出する硫化物は、主成分であるFeにより生成する硫化鉄が主となり、一部が不可避不純物であるMnにより生成する硫化マンガンとなる。
硫化鉄は、固体潤滑剤として摺動特性向上に好適な大きさの硫化物粒子であり、基地の主成分であるFeと結合させて形成するため、粉末粒内を含む基地中に均一に析出分散させることができる。
上記のように、本発明においては、基地に含有されるMnと結合させるS量と、さらに、Sを与えて、基地の主成分であるFeと結合させて硫化物を析出させる。この硫化物粒子による摺動特性改善の効果を得るため、基地中に析出分散する硫化物粒子の量が0.8体積%必要となる。一方、硫化物粒子の分散量が増加すると、摺動特性が向上するが、鉄基地中に硫化物が分散することで鉄基地の量が減少するため、機械的強さは低下する。このため、硫化物粒子の量が15体積%を超えると、基地に対する硫化物の量が過多となって鉄基焼結摺動部材の機械的強さが著しく低下する。このことから、基地中の硫化物粒子の量は、基地に対して0.8〜15体積%とする。
ここで、Cuは室温ではFeと比較すると硫化物を形成し難いが、高温下ではFeよりも標準生成自由エネルギーが小さく、硫化物を形成し易い。また、Cuはα-Fe中への固溶限が小さく、化合物を生成しないため、高温下でγ-Fe中に固溶したCuは冷却過程でα-Fe中にCu単体で析出する特性を持っている。そのため、焼結中の冷却過程で一度固溶したCuはFe基地中から均一に析出する。このとき、Cuと硫化物はこの基地中から析出したCuを核として金属硫化物(硫化銅、硫化鉄および鉄と銅の複合硫化物)を形成するとともに、その周囲に硫化物粒子(硫化鉄)の析出を促進する作用を有する。また、Cuは鉄基地中に拡散してこれを強化するとともに、鉄基地中にCを含有する場合に、鉄基地の焼入れ性を向上させてパーライト組織を微細化し、これにより鉄基地をさらに強化する。本発明においては、これらのCuの作用を積極的に利用するため、必須元素とする。
なお、Cuは硫化物の生成を促進させることから、Cu量に比してS量が多い場合には鉄基地中に硫化銅もしくは鉄と銅の複合硫化物等の形態で析出するが、Cu量に比してS量が少ない場合には鉄基地中に銅相として析出して分散する。
Sは、常温では化合力が鈍いが、高温では非常に反応性に富み、金属だけでなくH、O、C等の非金属元素とも化合する。ところで、焼結部材の製造においては、一般に、原料粉末に成形潤滑剤が添加され、焼結工程の昇温過程において成形潤滑剤を揮発させて取り除く、いわゆる脱ろう工程が行われる。ここで、Sを硫黄粉末の形態で付与すると、成形潤滑剤が分解して生成される成分(主にH、O、C)と化合して離脱するため、上記の硫化鉄形成に必要なSを安定して与えることが難しい。このため、Sは、硫化鉄粉末およびFeより電気陰性度の低い金属の硫化物粉末、すなわち硫化銅粉末、硫化ニッケル粉末、二硫化モリブデン粉末等の金属硫化物粉末の形態で付与することが好ましい。Sをこれらの金属硫化物粉末の形態で付与する場合、脱ろう工程が行われる温度域(200〜400℃程度)では金属硫化物の形態で存在するため、成形潤滑剤が分解して生成される成分と化合せず、Sの離脱が生じないことから、上記の硫化鉄形成に必要なSを安定して与えることができる。
金属硫化物として硫化鉄粉末を用いる場合、焼結工程の昇温過程において988℃を超えるとFe−Sの共晶液相を発生し、液相焼結となって粉末粒子間のネックの成長を促進する。また、この共晶液相からSが鉄基地中に均一に拡散するので、硫化物粒子を基地中から均一に析出分散させることができる。
金属硫化物として硫化銅粉末を用いた場合は、硫化銅粉末の分解により生じたCuはCu液相を発生して鉄粉末に濡れて覆い、鉄粉末中に拡散する。
金属硫化物粉末として硫化ニッケル粉末や、二硫化モリブデン粉末を用いた場合は、金属硫化物粉末の分解により生じた金属成分(Ni、Mo)のほとんどが鉄基地に拡散して固溶され、鉄基地の強化に寄与する。また、Cと併用した場合に、鉄基地の焼入れ性の改善に寄与し、パーライト組織を微細にして強度を高めたり、焼結時の通常の冷却速度で強度の高いベイナイトやマルテンサイトを得ることができる。なおごく一部に未分解の硫化ニッケルや、二硫化モリブデンが残留したり、硫化ニッケルや、二硫化モリブデンとして析出する場合もあるが、この場合においても、添加した硫化ニッケル粉末や、二硫化モリブデン粉末のほとんどが分解して鉄硫化物の生成に寄与するとともに、硫化ニッケルや、二硫化モリブデンも潤滑性を有するため何ら問題とはならない。
上記の硫化物粒子は、基地中のMnやFeとSを結合させて析出させるため、基地中から析出して均一に分散する。したがって、硫化物は基地に強固に固着しており、脱落し難くなる。また、硫化物は鉄基地から析出して生成するため、焼結時における原料粉末どうしの拡散を阻害しないこと、およびFe−S液相およびCu液相により焼結が促進されことから、原料粉末どうしの拡散が良好に行われ、鉄基地の強度が向上して、鉄基地の耐摩耗性が向上する。
なお、基地中に析出する硫化物は、相手部材との摺動において固体潤滑作用を発揮するため、微細なものより、所定の大きさであることが好ましい。本発明者等の検討によれば、最大粒径が10μmを下回る硫化物粒子では、固体潤滑作用を十分に得ることができないことが判明している。この観点から、最大粒径が10μm以上の硫化物粒子の面積が、硫化物粒子全体の面積の30%以上を占めることが十分な固体潤滑作用を得る上で好ましい。
なお、Cuは上記のように硫化銅粉末の形態で付与してもよいが、銅粉末もしくは銅合金粉末の形態で付与してもよい。すなわち、金属硫化物粉末として硫化鉄粉末、硫化ニッケル粉末および二硫化モリブデン粉末を用いる場合に、Cuを銅粉末もしくは銅合金粉末の形態で付与してもよく、硫化銅粉末を用いる場合に、追加して銅粉末もしくは銅合金粉末を用いてもよい。Cuは、上述のとおり、硫化物粒子の析出を促進する効果があるとともに、鉄基地中に銅相が析出して分散する場合、軟質な銅相が、相手部材とのなじみ性を向上させる作用を有する。しかしながら、多量に添加すると、析出する銅相の量が過多となり、鉄基焼結部材の強度低下が著しくなる。このためCu量は全体組成において10質量%以下とする。
また、NiやMoを金属硫化物粉末の形態のみではなく、単味粉末(ニッケル粉末およびモリブデン粉末)または他の成分との合金粉末(Fe−Mo合金粉末、Fe−Ni合金粉末、Fe−Ni−Mo合金粉末、Cu−Ni合金粉末、およびCu−Mo合金粉末等)の形態で添加することができる。すなわち、金属硫化物粉末として硫化鉄粉末および硫化銅粉末を用いる場合に、NiおよびMoのうちの少なくとも1種を単味粉末または他の成分との合金粉末の形態で付与してもよく、硫化ニッケル粉末および二硫化モリブデン粉末を用いる場合に、追加して単味粉末または他の成分との合金粉末を用いてもよい。NiやMoは、上記のように、鉄基地に固溶して鉄基地の強化に寄与するとともに、Cと併用した場合に、鉄基地の焼入れ性の改善に寄与し、パーライトを微細にして強度を高めたり、焼結時の通常の冷却速度で強度の高いベイナイトやマルテンサイトを得ることができる。ただし、これらの材料は高価であるとともに、単味粉末で添加する場合、成分量が過多となると鉄基地中に未拡散の部分が残留して硫化物の析出していない部分が生じることとなる。このためNi、Moは全体組成において、それぞれ10質量%以下とすることが好ましい。
一般に、鉄基焼結合金は、鉄基地の強化のため、Cを鉄基地に固溶させて鋼として使用するが、本発明の鉄基焼結摺動部材においても同様にCを追加することができる。Cは、合金粉末の形態で付与すると合金粉末の硬さが高くなって原料粉末の圧縮性が低下するため、黒鉛粉末の形態で付与する。Cの添加量は0.2質量%を下回ると強度が低いフェライトの割合が過多となって、添加効果が乏しくなる。一方、添加量が過多となると、脆いセメンタイトがネットワーク状に析出するようになる。このため、本発明においては、Cを0.2〜2.0質量%含有するとともに、Cの全量が基地中に固溶もしくは金属炭化物として析出していることが好ましい。
なお、Cを基地に固溶させず気孔中に黒鉛の状態で残留させると、この黒鉛が固体潤滑剤として機能し、摩擦係数の低減、摩耗の抑制等の効果が得られ、摺動特性を向上させることができる。このため、本発明においては、Cを0.2〜3.0質量%含有するとともに、Cの一部あるいは全部が気孔中に黒鉛として分散していることが好ましい。この場合、Cを黒鉛粉末の形態で添加する。Cの添加量が0.2質量%を下回ると、分散する黒鉛の量が乏しくなり、摺動特性向上の効果が不十分となる。一方、気孔中に残留する黒鉛は、添加した黒鉛粉末の形状が維持されるため、黒鉛によって気孔の球状化が阻まれ、強度が低下し易い。このため、Cの添加量の上限を3.0質量%とする。
Cを気孔中に黒鉛の状態で残留させるには、原料粉末に、黒鉛粉末0.2〜3.0質量%と、硼酸、硼酸化物、硼素の窒化物、硼素のハロゲン化物、硼素の硫化物および硼素の水素化物の粉末のうちの1種以上0.1〜2.0質量%を添加して与えておくことで得ることができる。これらの硼素含有粉末は、融点が低く、500℃程度で酸化硼素の液相を発生する。このため、焼結工程において黒鉛粉末および硼素含有粉末を含有する圧粉体を昇温する過程で、硼素含有粉末が溶融し、発生した酸化硼素液相によって黒鉛粉末表面が濡れて覆われる。このため、さらに昇温した際の800℃程度から始まるFe基地中への黒鉛粉末のCの拡散が防止され、黒鉛粉末を気孔中に残留させて分散させることができる。硼素含有粉末は、この黒鉛粉末を被覆するに足る量であることが好ましく、過剰に添加しても酸化硼素が基地中に残留して強度の低下を招くため、その添加量は0.1〜2.0質量%とすると良い。
鉄基地の金属組織は、Cを与えない場合フェライト組織となる。また、Cを与える場合において、Cを気孔中に黒鉛の状態で残留させたとき、鉄基地の金属組織はフェライトとなる。そして、Cの一部および全部を鉄基地に拡散させたとき、鉄基地の金属組織はフェライトとパーライトの混合組織もしくはパーライトとなる。Cとともに、Cu、Ni、Moのうちの少なくとも1種を用いたとき、鉄基地の金属組織はフェライトとパーライトの混合組織、フェライトとベイナイトの混合組織、フェライトとパーライトとベイナイトの混合組織、パーライトとベイナイトの混合組織、パーライト、ベイナイトのいずれかの金属組織となる。さらに、S量に比してCu量が多い場合に、上記の鉄基地の金属組織中に銅相が分散した金属組織となる。
図1および図2は、本発明の鉄基焼結摺動部材の金属組織の一例であり、鉄粉末に3質量%の硫化鉄粉末と6質量%の銅粉末と1質量%の黒鉛粉末を添加した原料粉末を用いて成形、焼結した、S:1.09質量%、Cu:6質量%、C:1質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鉄基焼結摺動部材の金属組織である。図1は100倍で撮影した鏡面写真、図2は同じ試料の200倍で撮影した金属組織写真(3%−ナイタール腐食)である。図1より、鉄基地は白色の部分であり、硫化物粒子は灰色の部分である。気孔は黒色の部分である。図1より硫化物粒子(灰色)は鉄基地(白色)中に析出して分散しており、基地への固着性が良好であることが伺える。なお、気孔(黒色)は比較的丸みを帯びた形状となっているが、これはFe−S液相およびCu液相の発生によるものと考えられる。また、図2より、鉄基地は微細なパーライトとフェライトの混合組織となっており、硫化物粒子がこの混合組織中に析出して分散していることがわかる。なお、本試料において、硫化物の量は気孔を除く基地に対して4.5体積%程度であり、全硫化物粒子の量に対する最大粒径が10μm以上の硫化物粒子の量は、45%程度である。
原料粉末は、従来から行われているように、製品の外周形状を造形する型孔を有する金型と、金型の型孔と摺動自在に嵌合し、製品の下端面を造形する下パンチと、場合によっては製品の内周形状若しくは肉抜き部を造形するコアロッドと、から形成されるキャビティに充填され、製品の上端面を造形する上パンチと、該下パンチとにより原料粉末を圧縮成形した後、金型の型孔から抜き出す方法(押型法)により成形体に成形される。
得られた成形体は、焼結炉で加熱されて焼結が行われる。このときの加熱保持温度、すなわち焼結温度は、焼結の進行および硫化物の形成に重要な影響を与える。ここで、Cuの融点が1084.5℃であることから、Cu液相を充分に発生させるため焼結温度を1090℃以上とする。一方、焼結温度が1300℃より高くなると、液相発生量が過多となり型くずれが生じ易くなる。なお、焼結雰囲気は非酸化性の雰囲気であればよいが、上述のようにSはH、Oと反応しやすいため、露点が低い雰囲気を用いることが好ましい。
[第1実施例]
Mnを0.03質量%含有する鉄粉末に、硫化鉄粉末(S量:36.47質量%)および銅粉末を用意し、硫化鉄粉末の配合比(割合)を表1に示す割合として添加し、混合して原料粉末を得た。そして、原料粉末を成形圧力600MPaで成形し、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリング形状の圧粉体を作製した。次いで、非酸化性ガス雰囲気中、1150℃で焼結して試料番号01〜15の焼結部材を作製した。これらの試料の全体組成を表1に併せて示す。
金属組織中の硫化物の体積%は、金属組織断面の硫化物の面積率に等しい。このため、実施例においては、金属硫化物の体積%の評価にあたり、金属組織断面の硫化物の面積%を評価して行った。すなわち、得られた試料を切断し、断面を鏡面研磨して断面観察を行い、画像分析ソフトウエア(三谷商事株式会社製WinROOF)を用いて、気孔を除く基地部分の面積と硫化物の面積を測定して基地に占める全硫化物の面積%を求めるとともに、最大粒径が10μm以上である硫化物の面積を測定して全硫化物の面積に対する割合を求めた。なお、各硫化物粒子の最大粒径は、各粒子の面積を求め、この面積と等しい円の直径に換算する円相当径で計測した。また、硫化物粒子が結合している場合、結合した硫化物を1個の硫化物としてこの硫化物の面積より円相当径を求めた。これらの結果を表2に示す。
また、リング形状の焼結部材について、JIS規格に規定されたSCM435Hの調質材を相手材として用いて、リングオンディスク摩擦摩耗試験機によって、周速400rpm、5kgf/cmの荷重の下で無潤滑で摺動試験を行い、摩擦係数を測定した。さらに、機械的強さとして、リング形状の焼結部材について圧環試験を行い圧環強さを測定した。これらの結果についても表2に示す。
なお、以下の評価に当たっては、摩擦係数0.7以下および圧環強さ350MPa以上となる試料を合格として判定を行った。
表1および表2からわかるように、硫化鉄粉末の添加量の増加に従って全体組成中のS量が増加し、硫化物の析出量が増加している。また、最大粒径が10μm以上の硫化物は、S量の増加に従ってその割合が増加している。このような硫化物の析出により、全体組成中のS量が増加するに従い摩擦係数が低下している。硫化鉄粉末の添加により焼結時に液相が発生して焼結が促進されることから圧環強さは増加する。しかしながら、基地中に析出する硫化物の量が増加すると基地の強度が低下するため、S量が多い領域では硫化物の析出量が多く強度が低下するため、圧環強さが低下している。
ここで、全体組成中のS量が0.2質量%に満たない試料番号02の試料では、S量が乏しいため硫化物の析出量が0.8面積%を下回り、摩擦係数の改善効果が乏しい。これに対して、全体組成中のS量が0.2質量%の試料番号03の試料では、硫化物の析出量が0.8面積%、最大粒径が10μm以上の硫化物が占める割合が30面積%となり、摩擦係数が0.7以下に改善されている。一方、全体組成中のS量が3.24質量%を越えると圧環強さの低下が著しくなり、圧環強さが350MPaを下回る。以上により、全体組成中のS量は0.2〜3.24質量%の範囲で良好な摩擦係数と強度が得られることが確認された。
[第2実施例]
Mnを0.8質量%含有する鉄粉末に、硫化鉄粉末(S量:36.47質量%)および銅粉末を用意し、硫化鉄粉末の配合比(割合)を表3に示す割合として添加し、混合して原料粉末を得た。そして、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号16〜30の焼結部材を作製した。これらの試料の全体組成を表3に併せて示す。これらの試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表4に示す。
第2実施例は、第1実施例で用いた鉄粉末(Mn量:0.03質量%)と異なるMn量の鉄粉末を用いた場合の例であるが、第1実施例と同じ傾向を示している。すなわち、表3および表4より、硫化鉄粉末の添加量の増加に従って全体組成中のS量が増加し、硫化物の析出量が増加している。また、最大粒径が10μm以上の硫化物は、S量の増加に従ってその割合が増加している。このような硫化物の析出により、全体組成中のS量が増加するに従って摩擦係数が低下している。硫化鉄粉末の添加により焼結時に液相が発生して焼結が促進されることから圧環強さは増加するが、基地中に析出する硫化物の量が増加すると基地の強度が低下するため、S量が多い領域では、硫化物の析出量が多くなって強度が低下し、圧環強さが低下している。
また、第1実施例と同様に、全体組成中のS量が0.2質量%に満たない試料番号17の試料では、S量が乏しいため硫化物の析出量が0.8面積%を下回り、摩擦係数の改善効果が乏しい。これに対して、全体組成中のS量が0.2質量%の試料番号18の試料では、硫化物の析出量が0.8面積%であり、最大粒径が10μm以上の硫化物が占める割合が30%となり、摩擦係数が0.7以下に改善されている。一方、全体組成中のS量が3.24質量%を越えると圧環強さの低下が著しくなり、圧環強さが350MPaを下回る。以上により、全体組成中のS量は0.2〜3.24質量%の範囲で良好な摩擦係数と強度が得られることが確認された。
[第3実施例]
Mnを0.03質量%含有する鉄粉末に、硫化鉄粉末(S量:36.47質量%)および銅粉末を用意し、銅粉末の配合比(割合)を表5に示す割合として添加し、混合して原料粉末を得た。そして、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号31〜40の焼結部材を作製した。これらの試料の全体組成を表5に併せて示す。これらの試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表6に示す。なお、表5および表6には第1実施例の試料番号06の試料の結果を併せて示す。
表5および表6より、銅粉末の添加量を変化させて全体組成中のCu量を変化させると、Cu量の増加に従って硫化物粒子の析出が促進され、硫化物の量が増加するとともに、最大粒径が10μmを超える硫化物粒子の量が増加しており、このため摩擦係数が低下している。圧環強さは、Cu量が増加するに従って液相発生量が増加して緻密化すること、および基地強化の作用により、Cu量が7質量%までは増加する。しかしながら、Cu量が7質量%を超えると基地中に分散する遊離銅相の量が多くなり、圧環強さは減少している。そして、Cu量が10質量%を超えると、この圧環強さの減少が著しくなって、圧環強さが350MPaを下回る。以上のように、Cuの添加により硫化物粒子の析出が促進されて摩擦係数を低減することができることが確認された。ただし、Cu量が10質量%を超えると強度の低下が著しくなるため、Cuを添加する場合、上限を10質量%とすべきことが確認された。
[第4実施例]
Mnを0.03質量%含有する鉄粉末に、硫化銅鉄粉末(S量:33.54質量%)および銅粉末を用意し、硫化銅粉末の配合比(割合)を表7に示す割合として添加し、混合して原料粉末を得た。そして、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号41〜54の焼結部材を作製した。これらの試料の全体組成を表7に併せて示す。これらの試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表8に示す。
第4実施例は、硫化鉄粉末に替えて硫化銅粉末によりSを付与した場合の例であるが、第1実施例と同じ傾向を示している。すなわち、表7および表8より、硫化銅粉末の添加量の増加に従って全体組成中のS量が増加し、硫化物の析出量が増加している。また、最大粒径が10μm以上の硫化物は、S量の増加に従ってその割合が増加している。このような硫化物の析出により、全体組成中のS量が増加するに従って摩擦係数が低下している。硫化銅粉末の添加により焼結時に液相が発生して焼結が促進されることから圧環強さは増加するが、基地中に析出する硫化物の量が増加すると基地の強度が低下するため、S量が多い領域では硫化物の析出量が多くなって強度が低下し、圧環強さが低下している。
また、第1実施例と同様に、全体組成中のS量が0.2質量%に満たない試料番号42の試料では、S量が乏しいため硫化物の析出量が0.8面積%を下回り、摩擦係数の改善効果が乏しい。これに対して、全体組成中のS量が3.24質量%の試料番号18の試料では、硫化物の析出量が15面積%、最大粒径が10μm以上の硫化物が占める割合が60%となり、摩擦係数が0.6以下に改善されている。一方、全体組成中のS量が3.24質量%を超えると、基地に占める硫化物の量が15面積%を超える結果、圧環強さの低下が著しく350MPaを下回った。
硫化鉄粉末に替えて硫化銅粉末によりSを付与した場合、硫化銅粉末が分解して生じたCuは、硫化物粒子の析出を促進する作用があり、硫化鉄粉末によりSを供給する場合(第1実施例)よりも析出量が多く、摩擦係数が小さくなっている。また、このCuが液相発生による緻密化(焼結の促進)および基地の強化に作用することから、圧環強さについても、硫化鉄粉末によりSを供給する場合(第1実施例)よりも高い値となっている。
[第5実施例]
Mnを0.03質量%含有する鉄粉末に、硫化鉄粉末(S量:36.47質量%)、銅粉末および黒鉛粉末を用意し、硫化鉄粉末の配合比(割合)を表9に示す割合として添加し、混合して原料粉末を得た。そして、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号55〜64の焼結部材を作製した。これらの試料の全体組成を表9に併せて示す。これらの試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表10に示す。なお、表9および表10には第1実施例の試料番号06の試料の結果を併せて示す。
第5実施例は、鉄基焼結摺動部材にCを与えるとともに、Cの全量を鉄基地に固溶して与える場合の例である。第1実施例の試料番号06の試料はCを含有せず、鉄基地の金属組織は強度の低いフェライト組織である。ここで、黒鉛粉末を添加してCを付与すると、鉄基地の金属組織中にフェライト相より硬く強度の高いパーライト相がフェライト組織中に分散して、圧環強さが増加するとともに、摩擦係数が低下する。そして、C量が増加するにしたがいパーライト相の量が増加してフェライト相が減少していき、C量が1質量%程度で鉄基地の金属組織が全面パーライト組織となる。このため、C量が1質量%までは、C量の増加に従い圧環強さが増加するとともに、摩擦係数が低下する。一方、C量が1質量%を超えるとパーライト組織中に高くかつ脆いセメンタイトが析出するようになり、圧環強さが低下するとともに、摩擦係数が増加する。そしてC量が2質量%を超えると、パーライト組織中に析出するセメンタイトの量が過大となり圧環強さが著しく低下して、圧環強さが350MPaを下回る値となっている。
以上のように、Cを添加して鉄基地に固溶させることにより強度を向上できること、ただしC量が2質量%を超えると強度の低下とともに摩擦係数が増加することから上限を2質量%以下にすることが好ましいことが確認された。
[第6実施例]
第1実施例の試料番号06の試料において、表11に示すように、硫化鉄粉末(S量:36.47質量%)に替えて二硫化モリブデン粉末(S量:40.06質量%)を用いて同量(3質量%)添加した原料粉末を作製し、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号65の焼結部材を作製した。この試料の全体組成を表11に併せて示す。この試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表12に示す。なお、表11および表12には第1実施例の試料番号06の試料の結果を併せて示す。
表11および表12からわかるように、二硫化モリブデンのS量は、硫化鉄のS量に比して多いことから、二硫化モリブデン粉末を硫化鉄粉末と同量添加した場合、全体組成中のS量が増加し、硫化物の量が増加するとともに、最大粒径が10μm以上の硫化物が増加している。このため、摩擦係数が低減している。また、二硫化モリブデン粉末が分解して生じるMoが鉄基地に拡散して固溶し、鉄基地の強化に作用した結果、圧環強さの向上が認められる。以上のように、硫化鉄粉末に替えて二硫化モリブデン粉末を用いた場合、硫化鉄粉末の場合と同等以上の摩擦係数低減の効果があることが確認された。また、鉄基地にMoを固溶させることで鉄基地の強度を向上して圧環強さを増加させることが確認された。
[第7実施例]
表13に示すように、第1実施例の試料番号06の試料に対してニッケル粉末2質量%を追加して添加した原料粉末を作製し、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号66の焼結部材を作製した。この試料の全体組成を表13に併せて示す。この試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表14に示す。なお、表13および表14には第1実施例の試料番号06の試料の結果を併せて示す。
表13および表14からわかるように、原料粉末にニッケル粉末を添加して全体組成中にNiを与えた場合、鉄基地がNiにより強化されて圧環強さが増加している。なお、Niは硫化物の量および最大粒径が10μm以上の硫化物の量に影響を与えず、摩擦係数はNiを添加しない試料番号06と同等である。以上のように、鉄基地にNiを固溶させることで鉄基地の強度を向上して圧環強さを増加させることが確認された。
[第8実施例]
表15に示すように、第5実施例の試料番号59の試料(黒鉛粉末:1質量%)に対して酸化硼素粉末0.5質量%を追加して添加した原料粉末を作製し、第1実施例と同様にして、成形、焼結を行い試料番号67の焼結部材を作製した。この試料の全体組成を表15に併せて示す。この試料について、第1実施例と同様にして、全硫化物の面積および最大粒径が10μm以上である硫化物の面積が全硫化物の面積に占める割合を測定するとともに、摩擦係数および圧環強さの測定を行った。これらの結果を表16に示す。なお、表15および表16には第1実施例の試料番号59の試料の結果を併せて示す。
試料番号59の試料では、第5実施例で記載したとおり、黒鉛粉末の形態で付与されたCが鉄基地に拡散してパーライト組織となっており、鉄基地が強化されている。一方、原料粉末に酸化硼素粉末を添加した試料番号67の試料は、酸化硼素により黒鉛粉末の形態で付与されたCの鉄基地への拡散が抑制され、添加された黒鉛粉末が黒鉛相として気孔中に残留して分散おり、鉄基地はフェライトとなっている。なお、硫化物の生成状態は、酸化硼素の有無によらず変わらない。このため、酸化硼素を添加した試料番号67の試料では、Cによる鉄基地の強化作用がないため圧環強さは低下するものの、固体潤滑剤として機能する黒鉛相が分散することにより摩擦係数は低減されている。以上のように、Cを黒鉛相として気孔中に分散させることで、さらなる摩擦係数の低減を図ることができることが確認された。
本発明の鉄基焼結摺動部材は、鉄基地中から硫化鉄を主体とする金属硫化物粒子が析出して鉄基地中に分散するため、基地に強固に固着されており、摺動特性に優れるとともに機械的強さに優れることから、各種摺動部品に適用可能である。

Claims (5)

  1. 鉄粉末に、原料粉末に対して3〜10質量%の銅粉末もしくは銅合金粉末と、硫化鉄粉末、硫化銅粉末、二硫化モリブデン粉末、および硫化ニッケル粉末のうちの少なくとも1種の金属硫化物粉末を、原料粉末のS量が0.2〜3.24質量%となるよう添加して混合した原料粉末を用い、押型内で圧粉成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中、1090〜1300℃で焼結することによりフェライト相もしくは銅相が分散するフェライト相の基地を得ることを特徴とする鉄基焼結摺動部材の製造方法。
  2. 前記鉄粉末に替えてNiおよびMoの少なくとも1種を含有する鉄合金粉末を用い、原料粉末中のNiおよびMoがそれぞれ10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の鉄基焼結摺動部材の製造方法。
  3. 前記原料粉末に、さらにニッケル粉末を添加するとともに、原料粉末中のNi量が10質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄基焼結摺動部材の製造方法。
  4. 鉄粉末に、原料粉末に対して3〜10質量%の銅粉末もしくは銅合金粉末と、黒鉛粉末0.2〜2質量%と、硫化鉄粉末、硫化銅粉末、二硫化モリブデン粉末、および硫化ニッケル粉末のうちの少なくとも1種の金属硫化物粉末を、原料粉末のS量が0.2〜3.24質量%となるよう添加して混合した原料粉末を用い、押型内で圧粉成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中、1090〜1300℃で焼結することにより、前記Cが与えられるとともに、フェライト、パーライトおよびベイナイトのいずれかひとつ、またはこれらの混合組織、もしくは前記フェライト、パーライトおよびベイナイトのいずれかひとつ、またはこれらの混合組織中に銅相が分散する組織から構成され、円相当径で最大粒径が10μm以上の硫化物粒子の面積が、硫化物粒子全体の面積の30%以上を占める基地を得ることを特徴とする鉄基焼結摺動部材の製造方法。
  5. 鉄粉末に、原料粉末に対して3〜10質量%の銅粉末もしくは銅合金粉末と、黒鉛粉末0.2〜2質量%と、硼酸、硼酸化物、硼素の窒化物、硼素のハロゲン化物、硼素の硫化物および硼素の水素化物の粉末のうちの1種以上を0.1〜3.0質量%と、硫化鉄粉末、硫化銅粉末、二硫化モリブデン粉末、および硫化ニッケル粉末のうちの少なくとも1種の金属硫化物粉末を、原料粉末のS量が0.2〜3.24質量%となるよう添加して混合した原料粉末を用い、押型内で圧粉成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中、1090〜1300℃で焼結することにより、前記Cの一部または全部が気孔中に黒鉛として分散しており、フェライト、パーライトおよびベイナイトのいずれかひとつ、またはこれらの混合組織、もしくは前記フェライト、パーライトおよびベイナイトのいずれかひとつ、またはこれらの混合組織中に銅相が分散する組織から構成される基地を得ることを特徴とする鉄基焼結摺動部材の製造方法。
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