以下に、本発明にかかるヘッドレスト装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるヘッドレスト装置を適用したシートの要部透視斜視図、図2は、図1の平面図、図3は、図2におけるA−A線断面図である。ここで例示するシート10は、四輪自動車の室内において前方右側に配設されるもので、図1に示すように、シートバック11およびヘッドレスト装置20を有して構成してある。
シートバック11は、シート10において人が着座するシートクッション(図示せず)の車両後方側となる端部から上方に延在するものである。このシートバック11は、図示せぬシートバックフレームを介してシートクッション(図示せず)に支持させてあり、該シートバックフレームを被覆材11aで覆うことにより構成してある。
ヘッドレスト装置20は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hを保護するためのもので、シートバック11の上方に設けてある。このヘッドレスト装置20は、ヘッドレストステー21を介してシートバック11に支持させたもので、図1に示すように、第1保護部材30、および一対の第2保護部材40,40を備えて構成してある。以下の説明において、図1において左側となる一方の第2保護部材40を「右側頭部保護部材41」、図1において右側となる他方の第2保護部材40を「左側頭部保護部材42」と称する。
ヘッドレストステー21は、棒状部材を折り曲げて構成したもので、図1に示すように、第1支持部21a、第2支持部21bおよび第3支持部21cを有している。第1支持部21aは、左右方向に沿って略水平に延在する部分である。第2支持部21bおよび第3支持部21cは、第1支持部21aの両端部から下方に向けてそれぞれ延在する部分であり、その先端部がシートバック11の上部にそれぞれ埋設してある。また、ヘッドレストステー21には、図1に示すように、取付ブラケット22が固定してある。取付ブラケット22は、略T字状を成すもので、基部22aおよび取付部22bを有している。基部22aは、第2支持部21bから第3支持部21cに亘って設けられる部分である。取付部22bは、基部22aにおいて左右方向の中央部に位置する上端部から上方に向けて延在する部分である。
第1保護部材30は、ヘッドレストステー21の第1支持部21aに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この第1保護部材30は、図1に示すように、後頭部保護部31および連係端部32を有している。後頭部保護部31は、第1支持部21aから上方に向けて延在する部分である。連係端部32は、第1支持部21aから下方に向けて延在する部分であり、その先端部が取付ブラケット22の取付部22bよりも上方に配置されるように構成してある。この連係端部32は、第1連係部33および第2連係部34を有している。第1連係部33は、連係端部32において取付ブラケット22の取付部22bよりも車両右側となる端部から下方に向けて延在する部分であり、その先端部が基部22aよりも上方に配置されるように構成してある。この第1連係部33は、一対の連結凸部(第1連結部)33a,33aを有している。一対の連結凸部33a,33aは、第1連係部33において車両右側となる端部からそれぞれ突出する部分であり、上下方向に互いに間隔を確保して配置してある。第2連係部34は、連係端部32において取付ブラケット22の取付部22bよりも車両左側となる端部から下方に向けて延在する部分であり、その先端部が基部22aよりも上方に配置されるように構成してある。この第2連係部34は、一対の連結凸部(第2連結部)34a,34aを有している。一対の連結凸部34a,34aは、第2連係部34において車両左側となる端部からそれぞれ突出する部分であり、上下方向に互いに間隔を確保して配置してある。
また、第1保護部材30は、図2および図3に示すように、一対の作用端部35,35を有している。一対の作用端部35,35は、第1支持部21aから車両後方に向けてそれぞれ延在する部分であり、左右方向に互いに重ね合わせる態様で、かつ左右方向に互いに間隔を確保して配置してある。この一対の作用端部35,35は、それぞれ作用孔35aを有している。作用孔35aは、一対の作用端部35,35の延在方向に沿ってそれぞれ形成したスリット状の開口であり、左右方向に互いに重ね合わせる態様で配置してある。
右側頭部保護部材41は、ヘッドレストステー21の第2支持部21bに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この右側頭部保護部材41は、図1に示すように、連結端部(右連結端部)43および側頭部保護部44を有している。連結端部43は、第2支持部21bから車両左側に向けて延在する部分であり、第1保護部材30における一対の連結凸部33a,33aの相互間に配置してある。側頭部保護部44は、第2支持部21bから車両右側に向けて延在する部分であり、収容孔44aを有している。収容孔44aは、側頭部保護部44の延在方向に沿って形成したスリット状の開口であり、その内部にヘッドレストステー21の第2支持部21bが移動可能に挿通させてある。側頭部保護部44の上下方向の長さは、シート10に着座する人の側頭部から顎部に亘る長さとなるように構成してある。
第1保護部材30と右側頭部保護部材41との間には、図1に示すように、第1連係軸(連係手段)51が設けてある。第1連係軸51は、上下方向に貫通する態様で、一対の連結凸部33a,33aと連結端部43とに亘って配設してある。この第1連係軸51によって、右側頭部保護部材41が、第1連係軸51の軸心回りに回転可能となり、かつ第1保護部材30と連結されることになる。
左側頭部保護部材42は、ヘッドレストステー21の第3支持部21cに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この左側頭部保護部材42は、図1に示すように、連結端部(左連結端部)45および側頭部保護部46を有している。連結端部45は、第3支持部21cから車両右側に向けて延在する部分であり、第1保護部材30における一対の連結凸部34a,34aの相互間に配置してある。側頭部保護部46は、第3支持部21cから車両左側に向けて延在する部分であり、収容孔46aを有している。収容孔46aは、側頭部保護部46の延在方向に沿って形成したスリット状の開口であり、その内部にヘッドレストステー21の第3支持部21cが移動可能に挿通させてある。側頭部保護部46の上下方向の長さは、シート10に着座する人の側頭部から顎部に亘る長さとなるように構成してある。
第1保護部材30と左側頭部保護部材42との間には、図1に示すように、第2連係軸(連係手段)52が設けてある。第2連係軸52は、上下方向に貫通する態様で、一対の連結凸部34a,34aと連結端部45とに亘って配設してある。この第2連係軸52によって、左側頭部保護部材42が、第2連係軸52の軸心回りに回転可能となり、かつ第1保護部材30と連結されることになる。
さらに、ヘッドレスト装置20は、図1および図3に示すように、アクチュエータ60を備えている。アクチュエータ60は、取付ブラケット22の取付部22bの上部に取付ホルダ23によって固定することにより、第1保護部材30の一対の作用端部35,35の下方に配置してある。このアクチュエータ60は、図3に示すように、圧力保持容器61、ピストンロッド62およびガス発生器63を備えて構成してある。
圧力保持容器61は、円筒状を成すもので、取付ホルダ23によって上下方向に沿って配設してある。ピストンロッド62は、ロッド部62aの先端部を圧力保持容器61の一端部から突出させた状態で、該圧力保持容器61に摺動可能に保持させたものである。ロッド部62aは、その先端部が第1保護部材30の一対の作用端部35,35の相互間に配置してあり、各作用孔35aに左右方向に連通する連結ピン64によって、一対の作用端部35,35と連結してある。一方、ロッド部62aは、その他端部にピストン部62bを一体的に有している。また、この圧力保持容器61とピストンロッド62との間には、図3に示すように、ロック機構65が設けてある。ロック機構65は、ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して奥方(下方)に移動することのみを阻止し、かつ該圧力保持容器61に対するピストンロッド62の位置を保持するためのものである。
ガス発生器63は、圧力保持容器61の他端部に固定したものである。このガス発生器63は、図には明示していないが、本体63aの内部に、ガス発生剤と点火器とを有しており、該点火器を駆動した場合に、ガス発生剤を燃焼させてガスを発生するものである。また、本体63aには、圧力保持容器61の内部と連通する流通口(図示せず)が形成してある。また、これら圧力保持容器61、ピストンロッド62、およびガス発生器63との間には、図3に示すように、密閉空間Sが形成してある。密閉空間Sには、ピストンロッド62のピストン部62bにシール部材66を装着する一方、ガス発生器63を密閉性が確保されるように圧力保持容器61に装着することにより、密閉性が確保されている。
ここで、ガス発生器63は、シート10を適用した車両の制御部Cから駆動信号を受信した場合に駆動することになる。具体的には、ガス発生器63は、駆動信号を受信した場合に点火器(図示せず)を駆動してガスを発生させることになる。制御部Cは、後突センサBSおよび側突センサSSの検出結果に基づいて、予め決められた駆動信号をガス発生器63に送信するもので、車両の制御系の一要素を構成している。後突センサBSは、車両に後面衝突が発生した場合にこれを検出するもので、車両本体に設けてある。ここで、後面衝突とは、車両の後面に対して他の車両などが垂直に衝突することを含むのはもちろんであるが、車両の後面に対して他の車両などが右斜め後方、もしくは左斜め後方から衝突することも含んでいる。側突センサSSは、車両に側面衝突が発生した場合にこれを検出するもので、車両本体に設けてある。ここで、側面衝突とは、車両の側面に対して他の車両などが垂直に衝突することを含むのはもちろんであるが、車両の側面に対して他の車両などが斜め前方、もしくは斜め後方から衝突することも含んでいる。
図1に示すように、ヘッドレスト装置20は、第1保護部材30、右側頭部保護部材41、左側頭部保護部材42、およびアクチュエータ60を被覆材20aで覆うことにより構成してある。さらに、被覆材20aは、取付ブラケット22と、該取付ブラケット22が固定される部分のヘッドレストステー21までも覆っている。この被覆材20aは、例えば、上述した構成を覆う伸縮性に富んだ緩衝材と、この緩衝材で覆ったものを被覆する伸縮性に富んだ表皮材とで構成してある。なお、図2および図3中の符号20bは、被覆材20aに形成したスリット状の切込み部である。
上記のように構成したヘッドレスト装置20では、図1および図3に示すように、通常時においては、第1保護部材30の後頭部保護部31がヘッドレストステー21の第1支持部21aの上方に配置されている(第1待機位置)。この状態では、一対の作用端部35,35が、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結され、かつ圧力保持容器61に対するピストンロッド62の位置がロック機構65によって保持されているため、第1保護部材30が上述した位置に保持されることになる。このとき、第1保護部材30は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。
また、図1および図2に示すように、通常時においては、右側頭部保護部材41の側頭部保護部44がヘッドレストステー21の第2支持部21bの車両右側に配置されている(第2右待機位置)。この状態では、連結端部43が、第1保護部材30の一対の連結凸部33a,33aに第1連係軸51によって連結されているため、右側頭部保護部材41が上述した位置に保持されることになる。このとき、右側頭部保護部材41は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、右側頭部保護部材41が着座者の視界を妨げることがない。また、図1および図3に示すように、通常時においては、左側頭部保護部材42の側頭部保護部46がヘッドレストステー21の第3支持部21cの車両左側に配置されている(第2左待機位置)。この状態では、連結端部45が、第1保護部材30の一対の連結凸部34a,34aに第2連係軸52によって連結されているため、左側頭部保護部材42が上述した位置に保持されることになる。このとき、左側頭部保護部材42は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、左側頭部保護部材42が着座者の視界を妨げることがない。
一方、例えば、シート10を適用した車両に後面衝突が発生した場合には、これが後突センサBSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。ガス発生器63が発生したガスは、本体63aの流通口(図示せず)を通じて圧力保持容器61の密閉空間Sの圧力を高め、ピストンロッド62のピストン部62bを押圧することになる。この結果、ピストンロッド62の圧力保持容器61に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して図5に示す状態まで増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して上方に移動すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された一対の作用端部35,35が、上方に向けて移動することになる。一対の作用端部35,35が上方に向けて移動すると、第1保護部材30が、被覆材20aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図3において反時計回りに回転することになり、図4および図5に示すように、後頭部保護部31が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。この状態においては、第1保護部材30の後頭部保護部31が、図1に示す状態に対して着座者の頭部Hの後頭部側に突出する態様で配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護し、該着座者にむち打ちなどが生じることを抑制することができる。
また、上述したように第1保護部材30が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図3において反時計回りに回転すると、一対の連結凸部33a,33a、および一対の連結凸部34a,34aが、車両後方側に移動することになる。一対の連結凸部33a,33aが車両後方側に移動すると、第1連係軸51によって連結された連結端部43が、車両後方側に移動することになる。連結端部43が車両後方側に移動すると、右側頭部保護部材41が、被覆材20aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第2支持部21bの軸心回りに図2において反時計回りに回転し、かつ収容孔44aに沿って車両後方側に移動することになり、図4に示すように、側頭部保護部44が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。また、一対の連結凸部34a,34aが車両後方側に移動すると、第2連係軸52によって連結された連結端部45が、車両後方側に移動することになる。連結端部45が車両後方側に移動すると、左側頭部保護部材42が、被覆材20aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第3支持部21cの軸心回りに図2において時計回りに回転し、かつ収容孔46aに沿って車両後方側に移動することになり、図4に示すように、側頭部保護部46が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。
また、例えば、シート10を適用した車両に側面衝突が発生した場合には、これが側突センサSSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。ガス発生器63が発生したガスは、本体63aの流通口(図示せず)を通じて圧力保持容器61の密閉空間Sの圧力を高め、ピストンロッド62のピストン部62bを押圧することになる。この結果、ピストンロッド62の圧力保持容器61に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して図5に示す状態まで増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して上方に移動すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された一対の作用端部35,35が、上方に向けて移動することになる。一対の作用端部35,35が上方に向けて移動すると、第1保護部材30が、被覆材20aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図3において反時計回りに回転することになり、図4および図5に示すように、後頭部保護部31が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。
また、上述したように第1保護部材30が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図3において反時計回りに回転すると、一対の連結凸部33a,33a、および一対の連結凸部34a,34aが、車両後方側に移動することになる。一対の連結凸部33a,33aが車両後方側に移動すると、第1連係軸51によって連結された連結端部43が、車両後方側に移動することになる。連結端部43が車両後方側に移動すると、右側頭部保護部材41が、被覆材20aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第2支持部21bの軸心回りに図2において反時計回りに回転し、かつ収容孔44aに沿って車両後方側に移動することになり、図4に示すように、側頭部保護部44が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。この状態においては、右側頭部保護部材41の側頭部保護部44が、図1に示す状態に対して着座者の頭部側面右側に配置されるため、着座者の頭部が車両右側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護し、例えば、頭部が右サイドドアに衝突する事態を防止することができる。また、一対の連結凸部34a,34aが車両後方側に移動すると、第2連係軸52によって連結された連結端部45が、車両後方側に移動することになる。連結端部45が車両後方側に移動すると、左側頭部保護部材42が、被覆材20aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第3支持部21cの軸心回りに図2において時計回りに回転し、かつ収容孔46aに沿って車両後方側に移動することになり、図4に示すように、側頭部保護部46が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。この状態においては、左側頭部保護部材42の側頭部保護部46が、図1に示す状態に対して着座者の頭部側面左側に配置されるため、着座者の頭部が車両左側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護することができる。
上記のように構成したヘッドレスト装置20によれば、シート10に人が着座した場合にその着座者の側頭部よりも後方に配置される第2待機位置と、この第2待機位置から前方に移動して着座者の頭部側面両側に配置される第2保護位置とに回転可能となるようにヘッドレストステー21に支持させた右側頭部保護部材41および左側頭部保護部材42を備えている。そして、右側頭部保護部材41および左側頭部保護部材42は、車両に側面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ60の駆動によって第2保護位置に配置されるため、着座者の頭部が左右方向に移動することを抑制できるようになる。さらに、右側頭部保護部材41および左側頭部保護部材42は、回転可能となるようにヘッドレストステー21に支持させてあるため、該ヘッドレストステー21の近傍となる部位に力を作用させれば、従来のようにピニオンを直接エネルギー吸収プレートのラック歯と噛合させる場合と比較して、着座者の頭部側面側に迅速に右側頭部保護部材41、および左側頭部保護部材42を移動させることが可能となる。しかも、シート10に人が着座した場合にその着座者の後頭部よりも後方に配置される第1待機位置と、この第1待機位置から着座者の後頭部側に突出する態様で配置される第1保護位置とに移動可能となるようにヘッドレストステー21に支持させた第1保護部材30を備えている。そして、第1保護部材30は、車両に後面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ60の駆動によって第1保護位置に配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。
また、上記のように構成したヘッドレスト装置20によれば、第1保護部材30が第1保護位置に移動した場合に、右側頭部保護部材41および左側頭部保護部材42が第2保護位置に移動するように第1保護部材30と、右側頭部保護部材41および左側頭部保護部材42とを連係する第1連係軸51および第2連係軸52を備えている。したがって、第1保護部材30と、右側頭部保護部材41および左側頭部保護部材42とをそれぞれ移動させるためのアクチュエータ60を別個に有する必要がなく、別個にアクチュエータ60を有する場合と比較して、構成部品点数の増加や、コストの増大を抑制することが可能となる。
なお、本実施の形態1では、第1保護部材30が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに回転した場合に、右側頭部保護部材41の連結端部43、および左側頭部保護部材42の連結端部45に捩れが生じるため、これらの部位に変形が容易な材料を採用する、もしくは変形が容易な形状とすることが望ましい。右側頭部保護部材41の連結端部43、および左側頭部保護部材42の連結端部45に採用する材料としては、板厚の薄い鉄板などがある。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2であるヘッドレスト装置を適用したシートの要部透視斜視図、図7は、図6の平面図、図8は、図6に示したヘッドレスト装置においてアクチュエータを駆動させた状態を示す平面図である。この実施の形態2におけるヘッドレスト装置120は、上述した実施の形態1に対して、第1連係軸および第2連係軸を備えない点、第1保護部材が一対の連結凸部に替えて係合凸部を有する点、および第2保護部材の構成が異なっている。以下、この差異について詳細に説明する。なお、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの説明を省略する。
ヘッドレスト装置120は、実施の形態1と同様に、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hを保護するためのもので、シートバック11の上方に設けてある。このヘッドレスト装置120は、ヘッドレストステー21を介してシートバック11に支持させたもので、図6に示すように、第1保護部材130、および一対の第2保護部材140,140を備えて構成してある。以下の説明において、図6において左側となる一方の第2保護部材140を「右側頭部保護部材141」、図6において右側となる他方の第2保護部材140を「左側頭部保護部材142」と称する。
第1保護部材130は、ヘッドレストステー21の第1支持部21aに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この第1保護部材130は、図6に示すように、後頭部保護部131および連係端部132を有している。後頭部保護部131は、第1支持部21aから上方に向けて延在する部分である。連係端部132は、第1支持部21aから下方に向けて延在する部分であり、その先端部が取付ブラケット22の取付部22bよりも上方に配置されるように構成してある。この連係端部132は、第1連係部133および第2連係部134を有している。第1連係部133は、連係端部132において取付ブラケット22の取付部22bよりも車両右側となる端部から下方に向けて延在する部分であり、その先端部が基部22aよりも上方に配置されるように構成してある。この第1連係部133は、係合凸部(第1係合部)133aを有している。係合凸部133aは、第1連係部133において車両右側となる端部からそれぞれ突出する部分である。第2連係部134は、連係端部132において取付ブラケット22の取付部22bよりも車両左側となる端部から下方に向けて延在する部分であり、その先端部が基部22aよりも上方に配置されるように構成してある。この第2連係部134は、係合凸部(第2係合部)134aを有している。係合凸部134aは、第2連係部134において車両左側となる端部からそれぞれ突出する部分である。
また、第1保護部材130は、図7に示すように、一対の作用端部135,135を有している。一対の作用端部135,135は、第1支持部21aから車両後方に向けてそれぞれ延在する部分であり、左右方向に互いに重ね合わせる態様で、かつ左右方向に互いに間隔を確保して配置してある。この一対の作用端部135,135は、それぞれ作用孔(図示せず)を有している。作用孔(図示せず)は、一対の作用端部135,135の延在方向に沿ってそれぞれ形成したスリット状の開口であり、左右方向に互いに重ね合わせる態様で配置してある。また、一対の作用端部135,135の下方には、アクチュエータ60が配置してある。このアクチュエータ60は、実施の形態1と同様に構成したもので、取付ブラケット22の取付部22bの上部に取付ホルダ23によって固定してある。そして、一対の作用端部135,135の相互間には、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部が配置してあり、各作用孔(図示せず)に左右方向に連通する連結ピン64によって、一対の作用端部135,135とピストンロッド62とが連結されている。
右側頭部保護部材141は、ヘッドレストステー21の第2支持部21bに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この右側頭部保護部材141は、図6に示すように、係合端部(右係合端部)143および側頭部保護部144を有している。係合端部143は、第2支持部21bから車両左側に向かうにつれて漸次車両後方側に傾斜延在する部分であり、第1保護部材130における係合凸部133aの車両後方側に当接させてある。側頭部保護部144は、第2支持部21bから車両右側に向けて延在する部分である。側頭部保護部144の上下方向の長さは、シート10に着座する人の側頭部から顎部に亘る長さとなるように構成してある。
左側頭部保護部材142は、ヘッドレストステー21の第3支持部21cに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この左側頭部保護部材142は、図6に示すように、係合端部(左係合端部)145および側頭部保護部146を有している。係合端部145は、第3支持部21cから車両右側に向かうにつれて漸次車両後方側に傾斜延在する部分であり、第1保護部材130における係合凸部134aの車両後方側に当接させてある。側頭部保護部146は、第3支持部21cから車両左側に向けて延在する部分である。側頭部保護部146の上下方向の長さは、シート10に着座する人の側頭部から顎部に亘る長さとなるように構成してある。
図6に示すように、ヘッドレスト装置120は、第1保護部材130、右側頭部保護部材141、左側頭部保護部材142、およびアクチュエータ60を被覆材120aで覆うことにより構成してある。さらに、被覆材120aは、取付ブラケット22と、該取付ブラケット22が固定される部分のヘッドレストステー21までも覆っている。この被覆材120aは、例えば、上述した構成を覆う伸縮性に富んだ緩衝材と、この緩衝材で覆ったものを被覆する伸縮性に富んだ表皮材とで構成してある。なお、図6中の符号120bは、被覆材120aに形成したスリット状の切込み部である。
上記のように構成したヘッドレスト装置120では、図6に示すように、通常時においては、第1保護部材130の後頭部保護部131がヘッドレストステー21の第1支持部21aの上方に配置されている(第1待機位置)。この状態では、一対の作用端部135,135が、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結され、かつ圧力保持容器61に対するピストンロッド62の位置がロック機構65によって保持されているため、第1保護部材130が上述した位置に保持されることになる。このとき、第1保護部材130は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。
また、図6および図7に示すように、通常時においては、右側頭部保護部材141の側頭部保護部144がヘッドレストステー21の第2支持部21bの車両右側に配置されている(第2右待機位置)。この状態では、係合端部143が、第1保護部材130における係合凸部133aの車両後方側に当接している。このとき、右側頭部保護部材141は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、右側頭部保護部材141が着座者の視界を妨げることがない。また、図6および図7に示すように、通常時においては、左側頭部保護部材142の側頭部保護部146がヘッドレストステー21の第3支持部21cの車両左側に配置されている(第2左待機位置)。この状態では、係合端部145が、第1保護部材130における係合凸部134aの車両後方側に当接している。このとき、左側頭部保護部材142は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、左側頭部保護部材142が着座者の視界を妨げることがない。
一方、例えば、シート10を適用した車両に後面衝突が発生した場合には、これが後突センサBSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。この結果、ガス発生器63が発生したガスの圧力によって、ピストンロッド62の圧力保持容器61に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して上方に移動すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された一対の作用端部135,135が、上方に向けて移動することになる。一対の作用端部135,135が上方に向けて移動すると、第1保護部材130が、被覆材120aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに車両左側から見て反時計回りに回転することになり、図8に示すように、後頭部保護部131が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。この状態においては、第1保護部材130の後頭部保護部131が、図6に示す状態に対して着座者の頭部Hの後頭部側に突出する態様で配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護し、該着座者にむち打ちなどが生じることを抑制することができる。
また、上述したように第1保護部材130が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに車両左側から見て反時計回りに回転すると、係合凸部133a、および係合凸部134aが、車両後方側に移動することになる。係合凸部133aが車両後方側に移動すると、該係合凸部133aの車両後方側に当接させた係合端部143が、車両後方側に押圧されて移動することになる。係合端部143が車両後方側に移動すると、右側頭部保護部材141が、被覆材120aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第2支持部21bの軸心回りに図7において反時計回りに回転することになり、図8に示すように、側頭部保護部144が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。また、係合凸部134aが車両後方側に移動すると、該係合凸部134aの車両後方側に当接させた係合端部145が、車両後方側に押圧されて移動することになる。係合端部145が車両後方側に移動すると、左側頭部保護部材142が、被覆材120aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第3支持部21cの軸心回りに図7において時計回りに回転することになり、図8に示すように、側頭部保護部146が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。
また、例えば、シート10を適用した車両に側面衝突が発生した場合には、これが側突センサSSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。この結果、ガス発生器63が発生したガスの圧力によって、ピストンロッド62の圧力保持容器61に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して上方に移動すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された一対の作用端部135,135が、上方に向けて移動することになる。一対の作用端部135,135が上方に向けて移動すると、第1保護部材130が、被覆材120aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに車両左側から見て反時計回りに回転することになり、図8に示すように、後頭部保護部131が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。
また、上述したように第1保護部材130が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに車両左側から見て反時計回りに回転すると、係合凸部133a、および係合凸部134aが、車両後方側に移動することになる。係合凸部133aが車両後方側に移動すると、該係合凸部133aの車両後方側に当接させた係合端部143が、車両後方側に押圧されて移動することになる。係合端部143が車両後方側に移動すると、右側頭部保護部材141が、被覆材120aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第2支持部21bの軸心回りに図7において反時計回りに回転することになり、図8に示すように、側頭部保護部144が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。この状態においては、右側頭部保護部材141の側頭部保護部144が、図6に示す状態に対して着座者の頭部側面右側に配置されるため、着座者の頭部が車両右側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護し、例えば、頭部が右サイドドアに衝突する事態を防止することができる。また、係合凸部134aが車両後方側に移動すると、該係合凸部134aの車両後方側に当接させた係合端部145が、車両後方側に押圧されて移動することになる。係合端部145が車両後方側に移動すると、左側頭部保護部材142が、被覆材120aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第3支持部21cの軸心回りに図7において時計回りに回転することになり、図8に示すように、側頭部保護部146が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。この状態においては、左側頭部保護部材142の側頭部保護部146が、図6に示す状態に対して着座者の頭部側面左側に配置されるため、着座者の頭部が車両左側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護することができる。
上記のように構成したヘッドレスト装置120によれば、シート10に人が着座した場合にその着座者の側頭部よりも後方に配置される第2待機位置と、この第2待機位置から前方に移動して着座者の頭部側面両側に配置される第2保護位置とに回転可能となるようにヘッドレストステー21に支持させた右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142を備えている。そして、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142は、車両に側面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ60の駆動によって第2保護位置に配置されるため、着座者の頭部が左右方向に移動することを抑制できるようになる。さらに、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142は、回転可能となるようにヘッドレストステー21に支持させてあるため、該ヘッドレストステー21の近傍となる部位に力を作用させれば、従来のようにピニオンを直接エネルギー吸収プレートのラック歯と噛合させる場合と比較して、着座者の頭部側面側に迅速に右側頭部保護部材141、および左側頭部保護部材142を移動させることが可能となる。しかも、シート10に人が着座した場合にその着座者の後頭部よりも後方に配置される第1待機位置と、この第1待機位置から着座者の後頭部側に突出する態様で配置される第1保護位置とに移動可能となるようにヘッドレストステー21に支持させた第1保護部材130を備えている。そして、第1保護部材130は、車両に後面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ60の駆動によって第1保護位置に配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。
また、上記のように構成したヘッドレスト装置120によれば、第1保護部材130が第1保護位置に移動した場合に、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142が第2保護位置に移動するように第1保護部材130と、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142とを連係してある。具体的には、第1保護部材130の係合凸部133aと、右側頭部保護部材141の係合端部143とを当接係合させ、かつ第1保護部材130の係合凸部134aと、左側頭部保護部材142の係合端部145とを当接係合させることにより、第1保護部材130と、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142とを連係してある。したがって、第1保護部材130と、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142とをそれぞれ移動させるためのアクチュエータ60を別個に有する必要がなく、別個にアクチュエータ60を有する場合と比較して、構成部品点数の増加や、コストの増大を抑制することが可能となる。さらに、実施の形態1と比較して、第1連係軸および第2連係軸を備える必要がなく、構成部品点数の増加を抑制することが可能となる。
図9は、図6に示したヘッドレスト装置の変形例を示す要部断面図、図10は、図9に示したヘッドレスト装置においてアクチュエータを駆動させた状態を示す要部断面図である。この変形例に示したヘッドレスト装置220は、上述した実施の形態2と同様に、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hを保護するためのもので、第1保持部材が作用孔に替わり案内孔を有する点、圧力保持容器が回転軸の軸心回りに回転可能に配設してある点、および圧力保持容器を略L字状に構成した点が異なっている。なお、変形例において上述した実施の形態2と同様の構成に関しては同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
第1保護部材230は、ヘッドレストステー21の第1支持部21aに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この第1保護部材230は、図9に示すように、後頭部保護部231および連係端部232を有している。後頭部保護部231は、第1支持部21aから上方に向けて延在する部分である。連係端部232は、第1支持部21aから下方に向けて延在する部分であり、その先端部が取付ブラケット22の取付部22bよりも上方に配置されるように構成してある。この連係端部232は、案内孔232aを有している。案内孔232aは、連係端部232の延在方向に沿って形成したスリット状の開口であり、その内部にヘッドレストステー21の第1支持部21aが移動可能に挿通させてある。
また、第1保護部材230は、図9に示すように、作用端部235を有している。作用端部235は、連係端部232に車両方向側となる端部から車両方向側に向けて延在する部分である。また、作用端部235の下方には、アクチュエータ260が配置してある。このアクチュエータ260は、取付ブラケット22の取付部22bにおいて車両後方側に向けて突出する態様で設けられる突出部材24に、左右方向に略水平に延在する回転軸225を介して回転可能に配設してある。そして、作用端部235には、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部が、連結ピン64によって連結されている。
アクチュエータ260の圧力保持容器261は、略L字を成す円筒部材であり、収容部261aおよび固定部261bを有している。収容部261aは、図9において回転軸225から上方に向かうにつれて漸次車両後方側に傾斜延在する部分である。固定部261bは、図9において収容部261aの下端部から車両後方側に向かうにつれて漸次下方に傾斜延在する部分である。また、これら圧力保持容器261、ピストンロッド62、およびガス発生器63との間には、図9に示すように、密閉空間Sが形成してある。密閉空間Sには、ピストンロッド62のピストン部62bにシール部材66を装着する一方、ガス発生器63を密閉性が確保されるように圧力保持容器261に装着することにより、密閉性が確保されている。
図には明示していないが、ヘッドレスト装置220は、第1保護部材230、右側頭部保護部材141、左側頭部保護部材142、およびアクチュエータ260を被覆材220aで覆うことにより構成してある。この被覆材220aは、例えば、上述した構成を覆う伸縮性に富んだ緩衝材と、この緩衝材で覆ったものを被覆する伸縮性に富んだ表皮材とで構成してある。なお、図9中の符号220bは、被覆材220aに形成したスリット状の切込み部である。
上記のように構成した変形例のヘッドレスト装置220では、図9に示すように、通常時においては、第1保護部材230の後頭部保護部231がヘッドレストステー21の第1支持部21aの上方に配置されている(第1待機位置)。この状態では、作用端部235が、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結され、かつ圧力保持容器261に対するピストンロッド62の位置がロック機構65によって保持されているため、第1保護部材230が上述した位置に保持されることになる。このとき、第1保護部材230は、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。
また、この変形例においても、図には明示していないが、通常時においては、実施の形態2と同様に右側頭部保護部材141の側頭部保護部144がヘッドレストステー21の第2支持部21bの車両右側に配置されており(第2右待機位置)、該右側頭部保護部材141が、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、右側頭部保護部材141が着座者の視界を妨げることがない。また、図には明示していないが、通常時においては、実施の形態2と同様に左側頭部保護部材142の側頭部保護部146がヘッドレストステー21の第3支持部21cの車両左側に配置されており(第2左待機位置)、該左側頭部保護部材142が、シート10に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、左側頭部保護部材142が着座者の視界を妨げることがない。
一方、例えば、シート10を適用した車両に後面衝突が発生した場合には、これが後突センサBSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。この結果、ガス発生器63が発生したガスの圧力によって、ピストンロッド62の圧力保持容器261に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器261に対して上方に移動すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された作用端部235が、上方に向けて移動することになる。作用端部235が上方に向けて移動すると、第1保護部材230が、被覆材220aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図9において反時計回りに回転し、かつ案内孔232aに沿って上方にスライド移動することになる。上述した動作の間、圧力保持容器261が、適宜回転軸225の軸心回りに図9において反時計回りに回転することになる。この結果、第1保護部材230は、図10に示すように、後頭部保護部231が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。この状態においては、第1保護部材230の後頭部保護部231が、図9に示す状態に対して着座者の頭部Hの後頭部側に突出する態様で配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。さらに、この状態においては、第1保護部材230が、図9に示す状態に対して上方に配置されるため、着座者の後頭部の上側を押さえることが可能となる。したがって、着座者の頭部を保護し、該着座者にむち打ちなどが生じることを抑制することができる。
また、この変形例においても、図には明示していないが、上述したように第1保護部材230が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図9において反時計回りに回転すると、右側頭部保護部材141が、実施の形態2と同様に被覆材220aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第2支持部21bの軸心回りに回転することになり、側頭部保護部144が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。また、左側頭部保護部材142が、実施の形態2と同様に被覆材220aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第3支持部21cの軸心回りに回転することになり、側頭部保護部146が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。
また、例えば、シート10を適用した車両に側面衝突が発生した場合には、これが側突センサSSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。この結果、ガス発生器63が発生したガスの圧力によって、ピストンロッド62の圧力保持容器261に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器261に対して上方に移動すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された作用端部235が、上方に向けて移動することになる。作用端部235が上方に向けて移動すると、第1保護部材230が、被覆材220aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図9において反時計回りに回転し、かつ案内孔232aに沿って上方にスライド移動することになる。上述した動作の間、圧力保持容器261が、適宜回転軸225の軸心回りに図9において反時計回りに回転することになる。この結果、第1保護部材230は、図10に示すように、後頭部保護部231が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。
また、この変形例においても、図には明示していないが、上述したように第1保護部材230が、ヘッドレストステー21の第1支持部21aの軸心回りに図9において反時計回りに回転すると、右側頭部保護部材141が、実施の形態2と同様に被覆材220aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第2支持部21bの軸心回りに回転することになり、側頭部保護部144が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。この状態においては、右側頭部保護部材141の側頭部保護部144が、通常時に対して着座者の頭部側面右側に配置されるため、着座者の頭部が車両右側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護し、例えば、頭部が右サイドドアに衝突する事態を防止することができる。また、左側頭部保護部材142が、実施の形態2と同様に被覆材220aを適宜変形させながらヘッドレストステー21の第3支持部21cの軸心回りに回転することになり、側頭部保護部146が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。この状態においては、左側頭部保護部材142の側頭部保護部146が、通常時に対して着座者の頭部側面左側に配置されるため、着座者の頭部が車両左側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護することができる。
この変形例においても実施の形態2と同様に、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142は、車両に側面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ260の駆動によって第2保護位置に配置されるため、着座者の頭部が左右方向に移動することを抑制できるようになる。さらに、右側頭部保護部材141および左側頭部保護部材142は、回転可能となるようにヘッドレストステー21に支持させてあるため、該ヘッドレストステー21の近傍となる部位に力を作用させれば、従来のようにピニオンを直接エネルギー吸収プレートのラック歯と噛合させる場合と比較して、着座者の頭部側面側に迅速に右側頭部保護部材141、および左側頭部保護部材142を移動させることが可能となる。しかも、第1保護部材230は、車両に後面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ260の駆動によって第1保護位置に配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3であるヘッドレスト装置を適用したシートの要部透視斜視図、図12は、図11の平面図、図13は、図12におけるC−C線断面図である。ここで例示するシート310は、実施の形態1と同様に、四輪自動車の室内において前方右側に配設されるもので、図11に示すように、シートバック311およびヘッドレスト装置320を有して構成してある。なお、実施の形態3において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの説明を省略する。
シートバック311は、シート310において人が着座するシートクッション(図示せず)の車両後方側となる端部から上方に延在するものである。このシートバック311は、シートバックフレーム312を介してシートクッション(図示せず)に支持させてあり、該シートバックフレーム312を被覆材311aで覆うことにより構成してある。シートバックフレーム312は、棒状部材を折り曲げて構成したもので、図11に示すように、装着部312a、右支持部312bおよび左支持部312cを有している。装着部312aは、シートバック311の上部において左右方向に沿って略水平に延在する部分であり、左右方向の中央部にステーホルダ324が装着してある。ステーホルダ324は、上下方向に連通する装着孔324aを有している。右支持部312bおよび左支持部312cは、装着部312aの両端部から下方に向けてそれぞれ延在する部分である。
ヘッドレスト装置320は、シート310に人が着座した場合にその着座者の頭部Hを保護するためのもので、シートバック311の上方に設けてある。このヘッドレスト装置320は、ヘッドレストステー321を介してシートバック311に支持させたもので、図11に示すように、アクチュエータ60、第1保護部材330、右側頭部保護部材(第2保護部材)341、および左側頭部保護部材(第2保護部材)342を備えて構成してある。
ヘッドレストステー321は、棒状部材を折り曲げて構成したもので、図11に示すように、第1支持部321aおよび第2支持部321bを有している。第1支持部321aは、上下方向に沿って延在する部分であり、その下端部に有した係止部321cをステーホルダ324の装着孔324aに挿通することにより、シートバックフレーム312に固定してある。第2支持部321bは、第1支持部321aの上端部から車両前方に向かうにつれて漸次上方に傾斜延在する部分である。
第1保護部材330は、ヘッドレストステー321の第2支持部321bにアクチュエータ60を介して支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この第1保護部材330は、その部材本体330aを第1支持部321aよりも上方で、かつ第2支持部321bよりも車両前方となる位置に配置してあり、図12に示すように、一対の作用端部335,335を有している。一対の作用端部335,335は、部材本体330aにおいて車両後方側となる端面からそれぞれ突出する部分であり、左右方向に互いに重ね合わせる態様で、かつ左右方向に互いに間隔を確保して配置してある。この一対の作用端部335,335は、それぞれ作用孔(図示せず)を有している。作用孔(図示せず)は、一対の作用端部335,335にそれぞれ形成した開口であり、左右方向に互いに重ね合わせる態様で配置してある。
アクチュエータ60は、実施の形態1と同様に構成したもので、ヘッドレストステー321の第2支持部321bの上方に取付ホルダ323によって固定してある。そして、一対の作用端部335,335の相互間には、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部が配置してあり、各作用孔(図示せず)に左右方向に連通する連結ピン64によって、一対の作用端部335,335とピストンロッド62とが連結されている。これにより、第1保護部材330が、アクチュエータ60を介してヘッドレストステー321に支持されることなり、かつ該ヘッドレストステー321に対して車両前方側に移動可能となる。
右側頭部保護部材341は、ヘッドレストステー321の第1支持部321bに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この右側頭部保護部材341は、図11に示すように、連係端部343および側頭部保護部344を有している。連係端部343は、図12において第1支持部321aの車両右側に配置される部分であり、左右方向に沿って延在してある。この連係端部343は、その先端部が第1保護部材330よりも車両右側に配置されるように構成してある。側頭部保護部344は、連係端部343において車両右側となる端部から車両前方に向かうにつれて漸次車両右側に傾斜延在する部分である。側頭部保護部344の上下方向の長さは、シート310に着座する人の側頭部から顎部に亘る長さとなるように構成してある。
第1保護部材330と右側頭部保護部材341との間には、図11および図13に示すように、第1連係リンク(連係手段)353が設けてある。第1連係リンク353は、その基部353aの上端部が、第1保護部材330において車両右側となる端部に連結してある。一方、第1連係リンク353は、その基部353aの下端部に第1アーム部353bおよび第2アーム部353cを有している。第1アーム部353bは、基部353aの下端部から下方に向けて延在する部分である。第2アーム部353cは、基部353aの下端部から車両後方に向けて延在した後、下方に向けて延在した部分である。この第1アーム部353bおよび第2アーム部353cは、相互間に把持溝部353dを形成しており、この把持溝部353dに、連係端部343において左右方向の中間部を配置してある。
左側頭部保護部材342は、ヘッドレストステー321の第1支持部321aに回転可能となるように支持させたもので、例えば、合成樹脂材料を成形することによって構成してある。この左側頭部保護部材342は、図11に示すように、連係端部345および側頭部保護部346を有している。連係端部345は、図12において第1支持部321aの車両左側に配置される部分であり、左右方向に沿って延在してある。この連係端部345は、その先端部が第1保護部材330よりも車両左側に配置されるように構成してある。側頭部保護部346は、連係端部345において車両左側となる端部から車両前方に向かうにつれて漸次車両左側に傾斜延在する部分である。側頭部保護部346の上下方向の長さは、シート310に着座する人の側頭部から顎部に亘る長さとなるように構成してある。
第1保護部材330と左側頭部保護部材342との間には、図11および図13に示すように、第2連係リンク(連係手段)354が設けてある。第2連係リンク354は、その基部354aの上端部が、第1保護部材330において車両左側となる端部に連結してある。一方、第2連係リンク354は、その基部354aの下端部に第1アーム部354bおよび第2アーム部354cを有している。第1アーム部354bは、基部354aの下端部から下方に向けて延在する部分である。第2アーム部354cは、基部354aの下端部から車両後方に向けて延在した後、下方に向けて延在した部分である。この第1アーム部354bおよび第2アーム部354cは、相互間に把持溝部354dを形成しており、この把持溝部354dに、連係端部345において左右方向の中間部を配置してある。
図11に示すように、ヘッドレスト装置320は、第1保護部材330、右側頭部保護部材341、左側頭部保護部材342、およびアクチュエータ60を被覆材320aで覆うことにより構成してある。この被覆材320aは、例えば、上述した構成を覆う伸縮性に富んだ緩衝材と、この緩衝材で覆ったものを被覆する伸縮性に富んだ表皮材とで構成してある。
上記のように構成したヘッドレスト装置320では、図11および図12に示すように、通常時においては、第1保護部材330がヘッドレストステー321の第2支持部321aの近傍に配置されている(第1待機位置)。この状態では、一対の作用端部335,335が、ピストンロッド62のロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結され、かつ圧力保持容器61に対するピストンロッド62の位置がロック機構65によって保持されているため、第1保護部材330が上述した位置に保持されることになる。このとき、第1保護部材330は、シート310に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。
また、図11および図12に示すように、通常時においては、右側頭部保護部材341の連係端部343がヘッドレストステー321の第1支持部321aの車両右側に配置されている(第2右待機位置)。この状態では、連係端部343が、第1連係リンク353の把持溝部353dに配置されている。このとき、右側頭部保護部材341は、シート310に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、右側頭部保護部材341が着座者の視界を妨げることがない。また、図11および図12に示すように、通常時においては、左側頭部保護部材342の連係端部345がヘッドレストステー321の第1支持部321aの車両左側に配置されている(第2左待機位置)。この状態では、連係端部345が、第2連係リンク354の把持溝部354dに配置されている。このとき、左側頭部保護部材342は、シート310に人が着座した場合にその着座者の頭部Hよりも車両後方に配置されることになる。これにより、通常時においては、左側頭部保護部材342が着座者の視界を妨げることがない。
一方、例えば、シート310を適用した車両に後面衝突が発生した場合には、これが後突センサBSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。この結果、ガス発生器63が発生したガスの圧力によって、ピストンロッド62の圧力保持容器61に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して突出すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された一対の作用端部335,335が、ヘッドレストステー321の第2支持部321bの延在方向に沿って移動することになる。一対の作用端部335,335が第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、第1保護部材330が、被覆材320aを適宜変形させながら第2支持部321bから離れるように図13中の矢印の方向に移動することになり、図13中の二点鎖線で示すように、第1保護部材330が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。この状態においては、第1保護部材330が、図13の実線で示す状態に対して着座者の頭部Hの後頭部側に突出する態様で配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。さらに、この状態においては、第1保護部材330が、図13の実線で示す状態に対して上方に配置されるため、着座者の後頭部の上側を押さえることが可能となる。したがって、着座者の頭部を保護し、該着座者にむち打ちなどが生じることを抑制することができる。
また、上述したように第1保護部材330が、ヘッドレストステー321の第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、第1連係リンク353、および第2連係リンク354が、第2支持部321bの延在方向に沿って移動することになる。第1連係リンク353が第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、把持溝部353dに配置した連係端部343が、第2アーム部353cに押圧されて車両前方側に移動することになる。連係端部343が車両前方側に移動すると、右側頭部保護部材341が、被覆材320aを適宜変形させながらヘッドレストステー321の第1支持部321aの軸心回りに図12において反時計回りに回転することになり、図12中の二点鎖線で示すように、側頭部保護部344が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。また、第2連係リンク354が第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、把持溝部354dに配置した連係端部345が、第2アーム部354cに押圧されて車両前方側に移動することになる。連係端部345が車両前方側に移動すると、左側頭部保護部材342が、被覆材320aを適宜変形させながらヘッドレストステー321の第1支持部321aの軸心回りに図12において時計回りに回転することになり、図12の二点鎖線で示すように、側頭部保護部346が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。
また、例えば、シート310を適用した車両に側面衝突が発生した場合には、これが側突センサSSに検出され、車両の制御部Cから予め決められた駆動信号がガス発生器63に送信されることになる。駆動信号を受信したガス発生器63は、点火器を駆動してガス発生剤を燃焼させることにより、ガスを発生させることになる。この結果、ガス発生器63が発生したガスの圧力によって、ピストンロッド62の圧力保持容器61に対する突出量が、ロック機構65の保持力に抗して増大することになる。
ピストンロッド62が圧力保持容器61に対して突出すると、ロッド部62aの先端部に連結ピン64によって連結された一対の作用端部335,335が、ヘッドレストステー321の第2支持部321bの延在方向に沿って移動することになる。一対の作用端部335,335が第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、第1保護部材330が、被覆材320aを適宜変形させながら第2支持部321bから離れるように図13中の矢印の方向に移動することになり、図13中の二点鎖線で示すように、第1保護部材330が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第1保護位置)。
また、上述したように第1保護部材330が、ヘッドレストステー321の第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、第1連係リンク353、および第2連係リンク354が、第2支持部321bの延在方向に沿って移動することになる。第1連係リンク353が第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、把持溝部353dに配置した連係端部343が、第2アーム部353cに押圧されて車両前方側に移動することになる。連係端部343が車両前方側に移動すると、右側頭部保護部材341が、被覆材320aを適宜変形させながらヘッドレストステー321の第1支持部321aの軸心回りに図12において反時計回りに回転することになり、図12中の二点鎖線で示すように、側頭部保護部344が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2右保護位置)。この状態においては、右側頭部保護部材341の側頭部保護部344が、図12の実線で示す状態に対して着座者の頭部側面右側に配置されるため、着座者の頭部が車両右側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護し、例えば、頭部が右サイドドアに衝突する事態を防止することができる。また、第2連係リンク354が第2支持部321bの延在方向に沿って移動すると、把持溝部354dに配置した連係端部345が、第2アーム部354cに押圧されて車両前方側に移動することになる。連係端部345が車両前方側に移動すると、左側頭部保護部材342が、被覆材320aを適宜変形させながらヘッドレストステー321の第1支持部321aの軸心回りに図12において時計回りに回転することになり、図12の二点鎖線で示すように、側頭部保護部346が車両前方に向けて突出する態様で配置されることになる(第2左保護位置)。この状態においては、左側頭部保護部材342の側頭部保護部346が、図12の実線で示す状態に対して着座者の頭部側面左側に配置されるため、着座者の頭部が車両左側に移動することを抑制できるようになる。したがって、着座者の頭部を保護することができる。
上記のように構成したヘッドレスト装置320によれば、シート310に人が着座した場合にその着座者の側頭部よりも後方に配置される第2待機位置と、この第2待機位置から前方に移動して着座者の頭部側面両側に配置される第2保護位置とに回転可能となるようにヘッドレストステー321に支持させた右側頭部保護部材341および左側頭部保護部材342を備えている。そして、右側頭部保護部材341および左側頭部保護部材342は、車両に側面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ60の駆動によって第2保護位置に配置されるため、着座者の頭部が左右方向に移動することを抑制できるようになる。さらに、右側頭部保護部材341および左側頭部保護部材342は、回転可能となるようにヘッドレストステー321に支持させてあるため、該ヘッドレストステー321の近傍となる部位に力を作用させれば、従来のようにピニオンを直接エネルギー吸収プレートのラック歯と噛合させる場合と比較して、着座者の頭部側面側に迅速に右側頭部保護部材341、および左側頭部保護部材342を移動させることが可能となる。しかも、シート310に人が着座した場合にその着座者の後頭部よりも後方に配置される第1待機位置と、この第1待機位置から着座者の後頭部側に突出する態様で配置される第1保護位置とに移動可能となるようにヘッドレストステー321に支持させた第1保護部材330を備えている。そして、第1保護部材330は、車両に後面衝突が発生した場合に、これに応じてアクチュエータ60の駆動によって第1保護位置に配置されるため、着座者の頭部が車両後方に移動することを抑制できるようになる。
また、上記のように構成したヘッドレスト装置320によれば、第1保護部材330が第1保護位置に移動した場合に、右側頭部保護部材341および左側頭部保護部材342が第2保護位置に移動するように第1保護部材330と、右側頭部保護部材341および左側頭部保護部材342とを連係する第1連係リンク353および第2連係リンク354を備えている。したがって、第1保護部材330と、右側頭部保護部材341および左側頭部保護部材342とをそれぞれ移動させるためのアクチュエータ60を別個に有する必要がなく、別個にアクチュエータ60を有する場合と比較して、構成部品点数の増加や、コストの増大を抑制することが可能となる。
また、上記のように構成したヘッドレスト装置320によれば、右側頭部保護部材341の回転軸と、右側頭部保護部材341の回転軸とをヘッドレストステー321の第1支持部321aで共用しているため、実施の形態1および実施の形態2と比較して、ヘッドレストステー321の小型化や軽量化を図ることが可能となる。
なお、上述した実施の形態1、2、3では、右側頭部保護部材および左側頭部保護部材とを備えているため、着座者の頭部が左右方向に移動することを抑制できるようになるが、本発明は必ずしも右側頭部保護部材および左側頭部保護部材の両方を備える必要はない。すなわち、右側頭部保護部材および左側頭部保護部材の少なくともどちらか一方を備えれば良く、車両ボディ(サイドドア)に近接する側に移動する保護部材を備えれば良い。上述した実施の形態1、2、3では、四輪自動車の室内において前方右側に配設されるシートを例示したため、右側頭部保護部材のみ備えれば良い。
また、上述した実施の形態1、2、3では、シートを適用した車両に後面衝突または側面衝突が発生した場合に、アクチュエータを駆動しているが、シートを適用した車両に後面衝突または側面衝突の発生が予測された場合に、アクチュエータを駆動してもよい。例えば、衝突方向、衝突速度、および衝突位置などを判定するために必要な情報を検出するプリクラッシュセンサを車両本体に設ける。そして、車両の制御部が、プリクラッシュセンサの検出結果に基づいて、後面衝突または側面衝突が発生するか否かを判定し、これらが発生すると判定された場合に、予め決められた駆動信号をガス発生器に送信すれば、衝突が発生する前段階でアクチュエータを駆動させることが可能となる。これにより、より確実に第1保護部材および第2保護部材を移動することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態1、2、3では、圧力保持容器、ピストンロッド、およびガス発生器から成るアクチュエータを例示しているが、必ずしもアクチュエータはこれに限らない。例えば、モータ、ピニオン、およびラックから成るアクチュエータであっても良い。モータの出力軸にピニオンを固着し、該ピニオンをラックに係合させることにより、モータが回転した場合に、ラックが直動するようにアクチュエータを構成する。そして、このラックの直動によって第1保護部材および第2保護部材を移動させるようにヘッドレスト装置を構成すればよい。