JP5322025B2 - 透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法および透過型電子顕微鏡用試料の作製方法 - Google Patents
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Description
表面にアモルファス層が形成されている試料の表面に電子線を照射し、試料を透過して得られた電子回折図形の輝度に基づいて、前記アモルファス層の厚さを評価することを特徴とする透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法である。
アモルファス層の厚さが未知である試料の電子回折図形内の回折スポットを結ぶ直線における輝度のラインプロファイルの内、最も高い輝度をY2とし、最も低い輝度をY1としたときの輝度の比率(Y1/Y2)を、アモルファス層の厚さが既知である他の試料を用いて同様に得られた輝度の比率(Y1/Y2)と比較することにより、前記アモルファス層の厚さを評価することを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法である。
異なる既知の厚さのアモルファス層が形成されている複数の試料を対象にして、それぞれの試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定する電子回折図形測定ステップと、
前記それぞれの試料の電子回折図形内の回折スポットを結ぶ直線における輝度のラインプロファイルの内、最も高い輝度をY2とし、最も低い輝度をY1としたときの輝度の比率(Y1/Y2)を求める輝度の比率算出ステップと、
前記それぞれの試料について、前記輝度の比率算出ステップにて算出された輝度の比率(Y1/Y2)と、前記既知の厚さをプロットして基準資料を作成する基準資料作成ステップと、
アモルファス層の厚さが未知の試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定し、測定した電子回折図形から当該試料における輝度の比率(Y1/Y2)を求め、求められた輝度の比率(Y1/Y2)を前記基準資料と照合して、当該試料のアモルファス層の厚さを推定するアモルファス層推定ステップと
を有していることを特徴とする透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法である。
異なる既知の厚さのアモルファス層が形成されている複数の試料を対象にして、それぞれの試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定する電子回折図形測定ステップと、
前記それぞれの試料の電子回折図形内の回折スポットを結ぶ直線における輝度のラインプロファイルの内、最も高い輝度をY2とし、最も低い輝度をY1としたときの輝度の比率(Y1/Y2)を求める輝度の比率算出ステップと、
前記それぞれの試料について、前記輝度の比率算出ステップにて算出された輝度の比率(Y1/Y2)と、前記既知の厚さをプロットして基準資料を作成する基準資料作成ステップと、
アモルファス層の厚さが未知の試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定し、測定した電子回折図形から当該試料における輝度の比率(Y1/Y2)を求め、この輝度の比率(Y1/Y2)を前記基準資料と照合して、当該試料のアモルファス層の厚さを推定するアモルファス層推定ステップとを備え、
前記アモルファス層の厚さが所定の値以下となるまで、前記アモルファス層の厚さが未知の試料の表面に形成された前記アモルファス層を低減、除去する処理を繰り返すことを特徴とする透過型電子顕微鏡用試料の作製方法である。
本検証実験は、InPウエハから切り出されたTEM用試料を対象として、輝度のラインプロファイルから求められる輝度に基づいてアモルファス層の厚さを測定(推定)できることを検証するものである。以下図1〜図3を参照しつつ説明する。
イ.標準試料1の作製
最初に標準試料の作製について説明する。図1の(1)は標準試料の作製に際してFIB装置によりInPウエハから薄片を切り出す様子を模式的に示す図である。図1(1)においてFIBは集束イオンビーム、100はInPウエハ、110は切り出し途中のInPウエハの結晶部、111は切り出し時に表面に形成されるアモルファス層である。
標準試料1と同じ試料の表面に、さらにより低加速電圧でFIB照射による仕上げ加工を施し標準試料2とした。具体的には、仕上げ加工条件:加速電圧10kV、ビーム電流0.03nAで仕上げ加工を施した。
標準試料2と同じ試料に、さらにアルゴンイオンミリング装置(GATAN PIPS MODEL691)を使用して、Ar+照射による加工を施し標準試料3とした。具体的には、加工条件:加速電圧1.0kV、ビーム電流ねらい値10μA(実測値8.3〜11.4μA)、照射時間は5分で加工を施した。
標準試料3と同じ試料に、さらにアルゴンイオンミリング装置(GATAN PIPS MODEL691)を使用して、Ar+照射による加工を施し標準試料4とした。具体的には、加工条件:加速電圧1.0kV、ビーム電流ねらい値10μA(実測値8.3〜11.4μA)、照射時間10分で加工を施した。
イ.電子回折図形の撮影
図1(3)は電子回折図形の撮影の様子を模式的に示す図である。図1(3)に示すようにTEM用試料210に電子線(e)を照射し、TEM用試料210の後方に生成させた電子回折図形400を撮影する。具体的には作製した標準試料1〜4について、TEM(HITACHI H−9000)を使用して、イメージングプレートで[011]方向の電子回折図形を撮影した。なお、電子回折図形の撮影条件は、加速電圧300kV、視野倍率×10,000、制限視野絞りNo.1、露光時間1.0秒、カメラ長さ1.0mである。
撮影した標準試料1〜4の電子回折図形を、それぞれ図2の(1)〜(4)に示す。なお、各図の白抜きの直線は後記する回折スポットを結ぶ直線を示す。
イ.輝度のプロファイルの取得
次に、標準試料1〜4のそれぞれについて、電子回折図形の2つの回折スポットを結ぶ直線上における各位置の輝度を示すグラフ(輝度のラインプロファイル)を作成した。作成した輝度のラインプロファイルを図3に示す。図3において、縦軸は輝度であり、横軸は図2に記載した水平方向に並んだ回折2つの回折スポットを結ぶ直線上における位置(単位:1/nm)を示す。なお、図3において、符号(1)〜(4)を付与した線がそれぞれ標準試料1〜4の輝度のラインプロファイルを示す。
次に求めた輝度のラインプロファイルを標準化する。具体的には、各標準試料について、Y1とY2の比率(Y1/Y2)を求める。
イ.標準試料のアモルファス層の厚さの実測
標準試料1〜4について、各試料の実際のアモルファス層の厚さを、各々の断面試料を作製し、TEM観察により実測した。
標準試料1〜4のY1/Y2およびアモルファス層の厚さの実測結果を表1に示す。
標準試料について、縦軸にアモルファス層の測定値をとり、横軸に輝度の比率Y1/Y2をとってプロットし検量線を作成した。図4に作成した検量線を示す。
次に、前記検量線を用いてアモルファス層の厚さを推定できるか否か検証実験を行った。
イ.検証用試料の作製
以下に記載の検証用試料a、検証用試料bの2個の検証用試料を用意した。
検証用試料a:前記標準試料3においてAr+照射の照射時間を3分にした以外は標準試料3と同じ方法で作製した。
検証用試料b:前記標準試料3においてAr+照射の照射時間を10分にした以外は標準試料3と同じ方法で作製した。
a.検証用試料の輝度の比率Y1/Y2の算定とアモルファス層の厚さの推定
検証用試料について、標準試料と同じ方法で輝度のラインプロファイルを作成し、輝度の比率Y1/Y2を算定した。算定したY1/Y2に基づいて前記検量線を用いて検証用試料のアモルファス層の厚さを推定した。得られた推定値を表2に示す。
検証用試料について、アモルファス層の厚さを標準試料と同様に断面のTEM観察により実測した。実測値を表2に示す。
また、以上の結果から本発明に係るアモルファス層の厚さの測定によれば、試料を破壊することなく、アモルファス層の厚さを測定できることが分かった。
前記した本発明に係るアモルファス層の厚さ測定方法によれば、試料を破壊することなくアモルファス層の厚さを測定できるため、例えば以下に記載する方法によりアモルファス層を低減するための適切な条件を設定して効率良く充分にアモルファス層が低減されたTEM用試料を作製することができる。
事前に前記Y1/Y2を用いてアモルファス層の厚さを測定し、照射方法を決定する。例えば、アモルファス層の厚さが大きい場合には、標準試料2を作製したときのように、アモルファス層の低減効果の大きい低加速電圧のFIB照射により加工を行う。但し、前記Y1/Y2を用いて測定されたアモルファス層の厚さに基づいてTEM用試料を傷つけないようにアモルファス層を充分に低減するには短い目の時間でFIB照射を行う。
粗加工後に再度前記Y1/Y2を用いてアモルファス層の厚さを測定し、例えばAr+ビームを照射するときの照射条件を設定する。照射条件を設定する方法としては、例えば予めAr+ビームを照射するときの照射条件と照射によるアモルファス層の厚さの低減効果との関係を把握しておき、試料について測定されたアモルファス層の厚さに応じて加工に適切な条件を設定する方法が挙げられる。アモルファス層の厚さと照射によるアモルファス層の厚さの低減効果との関係は、例えば前記標準試料3、4及び検証用試料a、bとから、標準試料2に対して1kVのAr+ビームを照射すれば、当初9.8nmのアモルファス層が、3分で7.9nmになり、5分で7.7nmになり、10分で6.0nmになり、15分で5.2nm等である。
110 切り出されたInPウエハの結晶部
111、211 アモルファス層
210 TEM用試料
300 保持台
400 電子回折図形
Claims (4)
- 表面にアモルファス層が形成されている試料の表面に電子線を照射し、試料を透過して得られた電子回折図形の輝度に基づいて、前記アモルファス層の厚さを評価することを特徴とする透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法。
- アモルファス層の厚さが未知である試料の電子回折図形内の回折スポットを結ぶ直線における輝度のラインプロファイルの内、最も高い輝度をY2とし、最も低い輝度をY1としたときの輝度の比率(Y1/Y2)を、アモルファス層の厚さが既知である他の試料を用いて同様に得られた輝度の比率(Y1/Y2)と比較することにより、前記アモルファス層の厚さを評価することを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法。
- 異なる既知の厚さのアモルファス層が形成されている複数の試料を対象にして、それぞれの試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定する電子回折図形測定ステップと、
前記それぞれの試料の電子回折図形内の回折スポットを結ぶ直線における輝度のラインプロファイルの内、最も高い輝度をY2とし、最も低い輝度をY1としたときの輝度の比率(Y1/Y2)を求める輝度の比率算出ステップと、
前記それぞれの試料について、前記輝度の比率算出ステップにて算出された輝度の比率(Y1/Y2)と、前記既知の厚さをプロットして基準資料を作成する基準資料作成ステップと、
アモルファス層の厚さが未知の試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定し、測定した電子回折図形から当該試料における輝度の比率(Y1/Y2)を求め、求められた輝度の比率(Y1/Y2)を前記基準資料と照合して、当該試料のアモルファス層の厚さを推定するアモルファス層推定ステップと
を有していることを特徴とする透過型電子顕微鏡用試料のアモルファス層の厚さ評価方法。 - 異なる既知の厚さのアモルファス層が形成されている複数の試料を対象にして、それぞれの試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定する電子回折図形測定ステップと、
前記それぞれの試料の電子回折図形内の回折スポットを結ぶ直線における輝度のラインプロファイルの内、最も高い輝度をY2とし、最も低い輝度をY1としたときの輝度の比率(Y1/Y2)を求める輝度の比率算出ステップと、
前記それぞれの試料について、前記輝度の比率算出ステップにて算出された輝度の比率(Y1/Y2)と、前記既知の厚さをプロットして基準資料を作成する基準資料作成ステップと、
アモルファス層の厚さが未知の試料の表面に電子線を照射し、試料を透過した電子線による電子回折図形を測定し、測定した電子回折図形から当該試料における輝度の比率(Y1/Y2)を求め、この輝度の比率(Y1/Y2)を前記基準資料と照合して、当該試料のアモルファス層の厚さを推定するアモルファス層推定ステップとを備え、
前記アモルファス層の厚さが所定の値以下となるまで、前記アモルファス層の厚さが未知の試料の表面に形成された前記アモルファス層を低減、除去する処理を繰り返すことを特徴とする透過型電子顕微鏡用試料の作製方法。
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