JP5319579B2 - 位相差電子顕微鏡および位相板 - Google Patents

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Description

本発明は、透過電子顕微鏡に関するものであり、特に位相板を具備した位相差電子顕微鏡および位相板に関するものである。
透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)は数10kV以上の高電圧で加速した電子を観察対象物質に照射し、透過させ、電磁レンズを用いて拡大・結像させることによって高い倍率の観察像を得る装置である。この透過電子顕微鏡像によって像コントラストが生成するメカニズムには、位相コントラストと呼ばれるものがある。これは、観察試料を透過し散乱された電子の波と、散乱を受けなかった電子の波の相互の干渉により生成されるものである。したがって、像コントラストを高めるためには、電子波の位相差を適切に制御する必要がある。通常の電子顕微鏡では、対物レンズの収差や焦点ずれ量を調整することによって位相差を制御している。ところが、生物試料など比較的大きな内部構造(約10nm)をもつ観察試料の場合、対物レンズの焦点ずれ量の調整だけでは、必要な位相差を得ることができず、十分な像コントラストで観察像を得ることができなかった。
この問題を解決するために、光学顕微鏡の分野で用いられてきた位相板技術を、電子顕微鏡のために実現する技術開発がなされてきた。電子顕微鏡用の位相板は、対物レンズとは独立に電子波の位相を変化させる光学素子であり、対物レンズの後焦点面、もしくはその近傍に設置される。観察試料によって散乱されなかった電子波は、電子顕微鏡の光軸に沿って走行し、後焦点面近傍では、φ1μm以下の大きさに収束される。一方、散乱された電子波は後焦点面近傍では光軸から離れた位置を通過する。そのため、後焦点面近傍に配置された位相板によって、散乱波と非散乱波の位相をそれぞれ異なる量だけ変化させることができれば、両電子波間に位相差を生成することが可能となる。たとえば、正の像コントラストを最大化するために必要な位相差は位相角でπ/2ラジアンである。一般に弱位相物体近似されるような非常に薄く、軽元素から構成される物体を観察する場合、電子波の散乱は約π/2ラジアンの位相のずれを付加するので、位相板によって生成されなければならない位相差量は約π/2ラジアンとなる。この約π/2ラジアンの位相差を生成するための位相板の構造の例は、非特許文献1、非特許文献2などに開示されている。これらは、静電ポテンシャル中を走行する電子波が位相変化を起こすことを利用したものである。
上記位相板の基本構造を実現し、制御性などを付加した技術として、特許文献1では、電位を与えた電極を絶縁膜を介して導電体で挟み、非散乱波の通過する近傍のみ電極を露出させた構造の微小なリング状静電レンズ、もしくは細線を位相板として機能させる技術が示されている。開示された技術では露出した電極近傍に形成される静電ポテンシャルが電子波の位相を変化させ、電子波間の位相差を生み出している。特許文献2では微細な孔のあいた非晶質の炭素薄膜を位相板として用いるための技術開示がなされている。この技術では、非晶質薄膜内部の内部ポテンシャルを電子波の位相変化を起こす起源として利用している。さらに、静電ポテンシャルを利用しない技術として、特許文献3、および特許文献4等では、磁性体を用いることによって、電磁場のベクトルポテンシャルを起源とした位相変化を利用した位相板の技術が開示されている。
特開平9−237603号公報 特開2001―273866号公報 特開昭60−7048号公報 特開2008−91312号公報 特開2009−506485号公報 US Patent Application No.20080035854
Zeitschrift fur Naturforschung 2a, 615−633 (1947). Philosophical Transactions of the Royal Sociaty of London B.261, 95−104 (1971).
しかしながら、上記の従来技術、特に静電ポテンシャルを利用した位相板技術には、さまざまな問題点があることが指摘されている。
第1の問題点は、非特許文献1や特許文献1に例示されたリング状電極を用いた位相板の場合、図8の(a)に概略を示すように、その1μmから数μm径の孔を非散乱電子波が通過することになるが、その周囲を取り囲む数μm径のリング電極が電子波を遮蔽するため、観察試料に含まれる特定の情報が欠損してしまうという問題である。この問題を低減するため、リング電極の大きさを極力小さくする努力がなされているが、リング電極が絶縁膜を含む少なくとも5層以上の多層構造で構成され、さらに電圧を供給するための配線構造を作りこむことが必要なため構造が複雑であり微細化はそれほど進んでいない。また、たとえば特許文献5に示されているように微細リング製作は極めて複雑な工程となる。
また、第2の問題点は、特許文献1や特許文献5に例示された電位を与えた電極を絶縁膜を介して導電体で覆った構成の位相板の場合、その形状が図8の(b)に示す細線状であっても、リング状であっても、非散乱電子波が通過する光軸の極近傍に絶縁膜が露出して近接するため、絶縁膜の帯電が観察像のドリフトを引き起こし、さらには帯電電荷の電位分布によって不要な位相差を作り出すという問題である。絶縁膜が電子波の経路から見える位置にあると帯電の影響は顕著である。この問題を回避するため、絶縁膜を用いない位相板の構造として特許文献6の技術開示がある。この開示された技術では、MEMS技術を用いた高度なプロセス技術により、電位を与えた電極を絶縁膜を介することなく導電体で覆った微細な電極構造を実現している。しかしながら、第1の課題である情報欠落の問題は回避されない。
さらに、第3の問題点は、1μm程度の微細な孔のあいた、図8の(c)に示す炭素薄膜を用いる位相板の場合、散乱電子波が炭素薄膜中を通過するため、この薄膜による電子線の吸収によって結像に寄与する電子数が減少し、像のS/Nが低下してしまうという問題である。電子を加速する電圧を300kV以上にし、電子のエネルギーを高めることによって、吸収量を少なくすることはできるが、位相板の利用できる加速電圧を狭めてしまうことになる。
したがって、位相差を作り出す物理的な起源に静電ポテンシャルを利用した位相板の構造には、試料情報の欠損を回避する構造であること、帯電による像ドリフトの影響を低減すること、薄膜通過が引き起こす電子線量の減少による像S/Nの低下を避けること、が必要であり、これを実現することが本発明の課題である。なお、これらの問題点を改善するために、電磁レンズの構成など光学要素を大幅に変更・追加することは、商用利用を考慮すると、望ましい方法とは必ずしも言えない。
上記の課題を鑑み、本発明の目的は、試料情報の欠損を回避し、帯電による像ドリフトの影響を軽減する位相板を具備した位相差電子顕微鏡および位相板を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明においては、位相板を備える位相差電子顕微鏡であって、位相板は、細線電極を絶縁体を介して導電体膜で被覆し、細線電極の一部を露出させ、位相板の細線電極の露出部分は、電子線が照射される位相板の面の反対側の面に形成された構造を有する位相差電子顕微鏡および位相板を提供する。
すなわち本発明では、上記の目的を達成するため、電極を絶縁膜を介して導電体で被覆した直線状の細線、あるいはV字状に折れ曲った細線に対し、電子線が直接照射されない側の面の一部のみ細線電極を露出させた位相板を位相差電子顕微鏡の対物レンズ後焦点面近傍に配置した構成とする。
本発明により、試料情報の欠損を回避し、帯電による像ドリフトの影響を軽減する位相板を具備した位相差電子顕微鏡を提供することができる。
第1の実施例に係わる位相差電子顕微鏡に搭載する位相板の一実施形態を示す図である。 第1の実施例に係わる位相差電子顕微鏡に搭載する位相板を備えた対物アパーチャプレートの構成を示す図である。 第1の実施例に係わる位相差電子顕微鏡の、光学系、位相板の位置、電子光線を示す図である。 第1の実施例の位相板他の変形例を示す図である。 第2の実施例に係わる位相差電子顕微鏡に搭載する位相板の一形態を示す図である。 第3の実施例にかかわる位相差電子顕微鏡に搭載するV字状細線を用いた位相板の一形態を示す図である。 各実施例において、位相板を可換とする構造の一実施例を示す図である。 従来技術による位相板の例を示す図である。
以下、本発明の各種の実施形態を図面に従い説明するが、最初に直線状の細線を有した位相板を例にして、本発明の原理を説明する。
まず、従来技術であるリング位相板を用いた場合の観察試料に含まれる情報の欠損について説明する。透過電子顕微鏡で試料を観察する時、照射した電子線は試料内の静電ポテンシャルによってその一部が散乱される。その散乱される角度は、試料内静電ポテンシャルを電子線の進行方向に積分した投影ポテンシャルの空間周波数成分に比例することが知られている。試料内の構造の大きさをdとするとその空間周波数は1/dであって、電子線の散乱角度は±λ/dとなる。このように、特定の空間周波数成分の構造に対し、電子線は中心軸に対称な特定の角度に散乱する。さらに、対物レンズの後焦点面での散乱電子線の中心軸からの距離rは、対物レンズの焦点距離をfとすると、
Figure 0005319579
の関係であらわすことができる。
たとえば、試料内にある10nmの構造情報は、加速電圧100kV(波長0.0037nm)、焦点距離2.7mmの場合、後焦点面上で光軸からの距離1μmの位置にあることになる。また、10nmより大きな構造情報は、1μmより光軸に近い側に位置する。ここで、図8の(a)のようなリング位相板51を後焦点面に置き、その中心軸を光軸7と一致させた場合を考えると、リング位相板51によって、ある一定の角度より小さい角度で散乱した電子線が遮蔽されるので、観察試料に含まれる特定の大きさ以上の構造情報は伝達できず、欠損してしまうことになる。つまり、原理的にリング位相板51は、試料情報の欠損が避けられない。
これを解決する1手段として、細線位相板がある。これは、非特許文献2および特許文献1等に示されているように、細線の一部に、点状とみなせるほど小さな電荷もしくは電位を与え、そこから広がる電位分布を位相変化の起源として利用するものである。図8の(b)に電位を与える場合の構成例の概略図を示す。このような位相板は、光軸7に対し中心対称的に細線が配置されるわけではないので、+λ/dの角度に散乱された電子線が遮蔽されても、−λ/dの角度に散乱された電子線は通過し、試料情報の完全な欠損は起こらない。つまり、解決すべき課題であった試料情報の欠損の問題は、細線位相板をベースとすることで解決することができる。
なお、細線位相板によって位相差が生じるメカニズムは以下のとおりである。まず、細線位相板の電位発生部分はそこから広がる電位の広がりに比較して小さいので、細線位相板によって作られる電位分布を、電位Vを与えられた微小な球(半径R)が作る電位分布にほぼ等しいとモデル化できる。電位はほぼ球対称に広く広がることになるため、電子線の散乱波、および非散乱波ともに位相変化を受けることになる。その位相差ΔΦ(単位ラジアン)は、非散乱電子線が微小球に対して衝突パラメータrで走行する場合、
Figure 0005319579
のようにあらわされる。
ここで、Uは加速電圧、λは電子波の波長、eは素電荷、mは電子の質量、cは光速、fは対物レンズの焦点距離、dは試料内の構造の大きさである。数2による位相差ΔΦが位相角π/2となれば位相板として機能することになるが、調整可能なパラメータはV、Rそしてrである。
ところで、図8の(b)に示した従来技術による細線位相板51は、電位の大きさを調整するため、電極を絶縁膜を介した導体で覆い、その一部を完全に露出させることによって構成されている。このような構造は、露出した電極近傍を通過する電子線から直接絶縁膜が見える構造となってしまう。後焦点面での電子線は1μm以下に集束されているもののなだらかに広がっており、この広がった電子線が絶縁膜を照射することによって、絶縁膜の帯電を誘発することになる。この帯電がシールドされることなしに直接電子線に影響を及ぼすため、像のドリフトなど深刻な影響をもたらすことが懸念される。
これを避けるためには、図1に示したように、絶縁膜が直接電子線によって照射されないように、電極を露出する部分を、電子線照射面と反対側の面に限ればよい。これによって、絶縁膜の帯電を極力避けることができ、仮に何らかの原因で帯電したとしてもその量はわずかである。微量な帯電は、電極に印加する電位の調整によって、容易に補償することができる。
一方、電極の露出部分を一部分に限定したことによって、空間に広がる電位強度は小さくなり、その分布も球対称からずれる。強度の低下した分は、電極に与える電位の大きさを大きくすることによって補うことが可能である。位相変化量は、電子の走行する経路に沿った電位の積分値によって決まる。すなわち、電位の中心から距離r離れて位置を通って走行する電子の受ける位相変化量ΔΦ(r)は、
Figure 0005319579
とあらわせる。
ここで、ΔΦは位相差(単位ラジアン)、λは電子波の波長、Uは加速電圧、eは素電荷、mは電子の質量、cは光速、zは光軸に沿った座標、V(z)は座標zでの電位の値である。すなわち、与える電位量を変えることによって位相差は調整でき強度低下分を補うことができる。一方、電位分布が球対称からずれることはも実質的に問題とならない。すなわち、位相差電子顕微鏡においては試料内構造dに対する位相差が、数2によってπ/2となれば、像のコントラストが高められるので、球対称でない分布であってもパラメータrによって位相差を調整することができ、位相差π/2が実現できるためである。 つまり、上記説明した思想で構成された細線位相板によって、従来技術の課題が解決できる。
以上説明したように、本発明においては、電極を絶縁膜を介して導電体で被覆した細線の一部のみ電極を露出した細線において、その露出部分を電子線が照射される側と反対側の一面に限った細線位相板を、透過電子顕微鏡対物レンズの後焦点面近傍に配置し、電圧を導入するための機能を備えることによって、試料情報の欠損を回避し、帯電による像ドリフトの影響を軽減する位相板を具備した位相差電子顕微鏡を提供することができる。
図1は、第1の実施例に係わる位相差電子顕微鏡に搭載する直線状の細線を有する位相板の概略図である。同図の(a)はその平面図、同図の(b)はその断面(A−A)を示す図、(c)はその断面(B−B)を示す図、(d)はその断面(C−C)を示す図である。
φ50μmの穴2に、中央付近の幅が約1.0μmの直線状の細線が張られている構造である。細線の中央付近は、断面(A−A)が示すように、一面のみ電極が露出している。電子線は光軸7を上から下へ走行し、電極が露出している面を直接照射することがないようにしている。断面(B−B)は細線の中央から外れた位置の断面で、電極4、絶縁膜5とも導電体膜6で覆われている。導電体膜6は接地されるように固定する。断面(C−C)は、細線の長さ方向の断面である。露出している部分の長さは約0.5μmである。
次に、図2を参照して、図1に示す本実施例の位相板の作成方法を述べる。位相板は電子顕微鏡の対物化可動絞り機構に付属するアパーチャプレートと呼ばれる板に取り付ける。まず、300μm厚のMo製の板(5mm×31mm)に2.5mm×10.5mmの方形の穴をあけ、さらにねじ固定のためにφ2.5mmの丸い穴をあけ、これをアパーチャプレート14とする。ここに、絶縁膜13としてポリイミド膜(7.5μm厚)をエポキシ系接着剤によって張り付ける。次に、電極12となる導電体としてAu膜(約0.1μm)を抵抗加熱式真空蒸着装置により堆積する。ここでAu膜は、電極とするため、2mm幅程度の細いライン上に形成する。さらに、導電体膜17(Au約0.1μm)をアパーチャプレートの裏面から蒸着する。
次に、集束イオンビーム装置によって、図1に示した形状を、細線位相板構造加工位置において加工し、穴2と細線1を形成する。この時、細線1の幅は中央付近が0.5μm以下となるようにする。中央より離れた部分は、0.5μmより太い幅となってもよい。その後、電極12の上面と側面を覆うように、真空蒸着装置によって絶縁膜11として酸化ケイ素の膜を約0.2μm積層する。このとき、アパーチャプレートのねじ固定穴16の付近には絶縁膜11が堆積されないようにマスクをしておくことが必要である。また、電極12を完全に覆うため、真空蒸着装置の試料台は回転と傾斜を行いながら、蒸着を行うのがよい。引き続き、電極12を覆うように導電体膜10としてAu膜約0.1μm厚をアパーチャプレートの上面と側面に積層し、さらに裏面にも積層する。上面・側面のAu蒸着の際、このAu膜が電極と短絡しないよう、蒸着範囲を制限する必要がある。
以上までの工程で細線部分は、電極12が絶縁膜11と絶縁膜13を介して導電体10と導電体17で完全に覆われた状態である。電極12はねじ固定穴16付近で露出している。位相板として機能させるためには、細線の中央付近で電極を露出させる必要があるが、これは集束イオンビーム装置を使って行う。アパーチャプレートの上面側から細線の中央付近に穴掘り加工を行い、電極が露出したところで加工を止める。以上でアパーチャプレート上に位相板が形成される。なお、電極への電圧の印加はねじ固定穴16付近に露出したAu電極12から行う。
なお、電極12、絶縁膜11、導電体膜14、絶縁膜13の材質は例示した材料に限られるものではなく、複数の膜によって構成されていてもよい。たとえば、電極12はTiN、Pt、Cuなどでもよく、絶縁膜11は、アルミナ、酸化マグネシウムなどでもよい。導電体膜14は、TiNとAuあるいはAlとAuの積層膜などでもよく、絶縁膜13はアルミ箔の上に酸化ケイ素膜を蒸着したものでもよい。また、成膜を行うために用いる装置は、抵抗加熱式の真空蒸着装置に限るわけではなく、電子ビーム加熱式蒸着、CVD、スパッタなどを用いても何ら問題はない。
このアパーチャプレートを電圧導入機構を取り付けた対物可動絞り機構に取り付け、後で説明する電子顕微鏡の対物レンズ後焦点面の近傍に設置すると位相差電子顕微鏡が構成される。ちなみに、位相板に+2Vおよび−3Vの電圧を印加した時、観察像のコントラストは増加するものの、コントラストが反転する現象がみられた。これは電位の正負によって、発生する位相差の符号が逆転し、電子波が強めあうように干渉した状況と打ち消すように干渉した状況が起こったためと考えることができる。このことは、本実施の形態の電子顕微鏡は、散乱電子波と非散乱電子波の位相差が制御できており、位相差電子顕微鏡として機能していることを示している。なお、本位相差電子顕微鏡で像観察を行っている最中に、帯電起因と推定される像のドリフトは観測されなかった。
図3に本実施例に係わる位相差電子顕微鏡の、光学系、位相板の位置、電子光線を示した。同図において、21は電子源、22は照射系レンズ、23は対物レンズ、24は拡大レンズ、25は試料面、26は対物レンズ後焦点面、27は中間像面、28は像面、29は電子線を示しており、本実施例の位相板3は対物レンズの後焦点面に設置される。
図4の(a)には、本実施例の位相板の電極4を露出させる加工形状の変形例を示した。図1の場合と比べ、さらに十分に絶縁体5が導電体膜6で覆われ、帯電の懸念をより小さくすることができる。
図5は、第2の実施例に係わる位相差電子顕微鏡に搭載するV字状の細線1を有する位相板3の概略図である。同図の(a)はその平面図、同図の(b)はそのV字先端付近の拡大図、(c)はその断面(A−A)を示す図である。
本実施例では、φ50μmの穴2に、V字状の細線の幅が約1.0μm、V字の角度が90度の細線1が形成されている構造である。V字の先端付近は、φ50μmの穴の略中央付近に位置し、電子線の光軸がV字の先端より少し先方となるように位置調整して用いる。電極露出加工部分(電位の発生部分)はV字先端付近に加工し、約0.5μm×0.5μmの方形の孔を掘って形成する。V字先端付近の細線の断面図を断面(A−A)に示す。露出している部分の長さは約0.7μmとなる。
電子線は光軸7を上から下へ走行し、電極が露出している面を直接照射することはない。このV字状の細線1を有する位相板3の作成方法は、実施例1で説明した直線状の細線1を有する位相板3の場合と本質的に同様である。異なる部分は、図2における電極12を形成した後に、集束イオンビーム装置によって細線を加工する工程において、V字状に加工することのみである。このとき、V字状の細線の細線幅は、約0.5μmとなるように加工を行う。
V字状の細線を有する位相板を構成する材料、およびその成膜装置は、直線状の細線を有する位相板の場合とまったく同じである。たとえば、電極4にはAu、絶縁膜5には、ポリイミド膜、および酸化シリコン、導電体膜6にはAuを用いる。その他、実施例1で例示した材料を用いても全く問題ない。
なお、V字状の先端付近において、電極を露出させる構造は、図4の(b)のように先端を斜めに削った構造でもよい。このようにすると、電位の発生部分を光軸7により近付けることができ、電子波の位相変化量をより大きくすることができる。電子線は光軸7を上から下に向けて走行することになるが、この構造でも、直接絶縁膜を照射することはない。
V字状の細線を有する位相板であっても、略点状とみなせる狭い領域から電位が広がるため、数2で示した位相差が得られる。これを、透過電子顕微鏡の対物可動絞り機構に装着し、電圧導入を行うことによって、位相差電子顕微鏡が実現できる。この位相差電子顕微鏡も、リング状位相板ではないため試料内の特定の空間周波数情報が遮蔽されることはなく、かつ絶縁膜が電子線によって直接照射されることがないので帯電の懸念が小さいので、本発明の目的を達成した位相差電子顕微鏡となる。
ここでV字状の細線を有する位相板と直線状の細線を有する位相板との違いについて説明する。課題を解決する手段で説明したように、観察試料に含まれる大きさdの構造情報は、±λ/dの角度に散乱された電子線が持っている(λは電子線の波長)。細線位相板はその正負両散乱電子線をともに遮蔽することがないため、空間周波数情報の欠損が起こらないのであった。しかし、一部の電子線は遮蔽されるため、対応する一部の空間周波数情報のS/Nは低下する。直線状の細線の場合、ほぼどの方位角でも細線による遮蔽があるが、V字状細線の場合は、方位角によってまったく細線による遮蔽が起こらない方位がある。すなわち、S/Nの低下を起こさない方位が得られるというメリットがある。
V字の角度には0度より大きく180度以下の任意の値を選ぶことができる。0度は片持ちの板であり、自立する強度を得ることが難しく望ましくない。180度は直線状の細線と同じである。発明者による計算機シミュレーションの検討によると、V字の角度を45度と90度にした場合、得られる位相差電子顕微鏡像に顕著な差は見られなかった。
以上説明した実施例2による位相差電子顕微鏡に具備されるV字状の細線を有する位相板にはいくつかの変形が考えられる。それらを、第3の実施例として説明する。たとえば、図6の(a)に示すように、V字を同一の位相板に2つ形成し、それぞれの頂点が向かい合った形状の位相板であってもよい。この場合、光軸に対する電位分布の非対称性が緩和されるというメリットがある。つまり、光軸に対して回転対称な位置に2つあるいは複数の電位発生箇所を形成すると、電位分布は光軸に対して回転対称になるので、電位分布の非対称性は解消される。また、図6の(b)に示すように、異なる頂角のV字を複数備えていてもよい。さらに、図6の(c)に示すように、V字の先端を切り離し、さらに細線を加え、光軸に対し3回対称の細線構造とし、細線の中程で相互に支持しあう構造としてもよい。相互支持のための細線は光軸中心からの距離が一定である必要はなく、むしろ電子線の部分的遮蔽を特定の空間周波数に限定しないため相互支持の細線ごとにその距離が変わっていても良い。各細線の先端は、図4の(b)のように電極を露出させてもよい。
以上、本発明の実施の形態を実施例1、実施例2、実施例3により図を用いて説明したが、位相板をアパーチャプレート上に形成する構造は、固定されたものに限らず、可換できる構造であってもよい。図1、図5、図6に示した位相板3はその孔の大きさが0.1mm程度と小さいため、φ3mmの単孔グリッド上に容易に形成することができる。さらに、図7に示すように、この形成された位相板41を2枚の導電性プレート18で挟み込むことによって、位相板41を可換とすることができる。位相板41に電位を供給するための電極42は、単孔グリッドの一方の面の外縁の一部に形成する。挟み込む2枚のアパーチャプレート18は絶縁プレート19によって互いに絶縁され、電極42に接する側のアパーチャプレート18から電圧を供給する。位相板41をアパーチャプレートから可換にすることは、汚れた位相板の交換や種類の異なる位相板の交換が迅速に行えるというメリットがある。
本発明は、透過電子顕微鏡、特に位相板を具備した位相差電子顕微鏡およびその位相板として有用である。
1…細線
2…孔
3…位相板
4…電極
5…絶縁膜
6…導電体膜
7…光軸
10…導電体膜
11…絶縁膜
12…電極膜
13…絶縁膜
14…アパーチャプレート
15…穴
16…固定穴
17…導電体膜
18…導電性プレート
19…絶縁プレート
21…電子源
22…照射系レンズ
23…対物レンズ
24…拡大レンズ
25…試料面
26…対物レンズ後焦点面
27…中間像面
28…像面
29…電子線
41…単孔グリッド上の位相板
42…電極
51…リング位相板
52…細線位相板
53…絶縁膜
54…電極
55…薄膜位相板。

Claims (11)

  1. 位相板を備える位相差電子顕微鏡であって、
    前記位相板は、細線電極を絶縁体を介して導電体膜で被覆し、前記細線電極の一部を露出させた構造を有し、
    前記位相板の前記細線電極の露出部分は、電子線が照射される前記位相板の面の反対側の面に形成される、
    ことを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  2. 請求項1に記載の位相差電子顕微鏡であって、
    前記位相板は、前記細線電極を複数備えていることを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  3. 請求項1に記載の位相差電子顕微鏡であって、
    前記細線電極は、前記電子線の光軸側に突出するV字状の形状を有するV字状電極であることを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  4. 請求項3に記載の位相差電子顕微鏡であって、
    前記位相板は、前記V字状電極を複数備えていることを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  5. 請求項4に記載の位相差電子顕微鏡であって、
    複数の前記V字状電極の頂角が前記光軸を挟んで互いに向かい合って配置されることを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  6. 請求項1に記載の位相差電子顕微鏡であって、
    前記位相板が前記位相差電子顕微鏡のアパーチャプレート上に形成されることを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  7. 請求項6に記載の位相差電子顕微鏡であって、
    前記アパーチャプレートは絶縁プレートを介した複数の導電性プレートからなり、前記位相板は前記アパーチャプレートに対し可換であることを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  8. 位相差電子顕微鏡用の位相板であって、
    細線電極と、絶縁膜を介して前記細線電極を被覆する導電体膜を備え、
    前記細線電極の電子線が照射される面の反対側の面に露出部分が形成されることを特徴とする位相板。
  9. 請求項8に記載の位相板であって、
    前記細線電極は、直線状の細線電極であることを特徴とする位相板。
  10. 請求項8に記載の位相板であって、
    前記細線電極は、前記電子線の光軸側に突出するV字状の形状を有する細線電極であることを特徴とする位相板。
  11. 請求項8に記載の位相板であって、
    前記細線電極を複数備えていることを特徴とする位相板。
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