JP5318607B2 - 実車燃費試験方法 - Google Patents
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Description
走行距離Lは、車両の走行速度Vから算出される。また、燃料消費量Dは燃料通路に設けられた流量計で計測した燃料の流量に基づいて算出される。燃費P(km/L)は、走行距離L (km)と燃料消費量D(L)とから、式P=L/Dを用いて算出される(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、実車燃費試験は、通常、屋外のテストコースで行われるため、風の影響を排除できず、データのバラツキが著しかった。
そこで、風の影響を極力抑えるため、無風に近い環境で実車試験を実施する必要があるが、実際には、試験に好適な環境のみを選択して試験することは困難である。
その理由としては、実車試験がテストコースなどの広大な敷地内で実施されるため、場所によって風の状況が異なる場合が珍しくないためである。すなわち、一箇所に設置された風向風速計のデータを用いて算出した燃費を補正することは、必ずしも正しい補正であるとはいえないからである。
また、本願発明は、前記関数近似が直線近似であることを特徴とする。
例えば、風速をx軸、燃費をy軸、近似関数をy=f(x)として、近似関数のy切片であるy0=f(0)を求めれば、このy0が無風状態での燃費となる。また、風速がxkのときの燃費ykは、yk=f(xk)により求められる。
また、前記関数近似を直線近似とすることで、簡単な計算で近似関数を求めることができるだけなく、タイヤ種毎による違いを比較する際にも、直線の傾きとy切片だけを比較すればよいので、タイヤ種毎の風速と燃費との関係を容易に把握することができる。
走行速度計11は車体に設置されて、車体速度を検出する。
流量計12は燃料タンクとエンジンとの間の燃料供給通路に設置されて、燃料通路を流れる燃料の流量を直接検出する。なお、ディーゼルエンジンの場合には、燃料の一部が燃料戻り通路に戻るので、2個の流量計を用い、供給側の流量から戻り側の流量を差し引いた値を用いる。ガソリンエンジンの場合には、上記のように、供給側だけでよい。
風向風速計13は車体の進行方向前側に設置されて、走行中の車両の受ける風の方向と風速とを検出する。
なお、記憶手段14〜実車燃費測定手段19の各手段は、実車燃費試験装置10の演算部10Cを構成するもので、車体側に設けられる。
走行速度計11、流量計12、風向風速計13でそれぞれ検出された車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速のデータは記憶手段14に記憶される。
なお、実車試験では、一定コースをN回走行するとした場合、Vx(n),D(n),VW(n),θ(n)は、それぞれn回目(n=1〜N)の走行時における平均値を意味する。
前後方向風速算出手段16は、記憶手段14から平均車両速度Vx(n)と平均風速VW(n)と平均風向きθ(n)とを読み出し、以下の式(1)を用いて車両の移動に依らない車両前後方向の風速である車両前後方向風速Wx(n)を算出し、これを記憶手段14に記憶する。
Wx(n)=VW(n)・cosθ(n)−Vx(n) ……(1)
風向風速計13は車両とともに移動しているので、図2(a),(b)に示すように、検出された風の方向(ベクトルVWの方向)と風速(ベクトルVWの大きさ)は実際の風の方向と風速とは異なる。例えば、無風でかつ車両が直線走行している場合でも、平均風速はVW=−Vx(θ=0)となる。なお、Wyは車両幅方向の風速である。
燃費算出手段17は、記憶手段14から平均車両速度Vx(n)と平均燃料流量D(n)とを読み出し、以下の式(2)を用いて、燃費P(n)を算出しこれを記憶手段14に記憶する。
P(n)=Vx(n)/D(n) ……(2)
なお、平均車両速度Vxの次元は[km/h]、平均燃料流量Dの次元は[L/h]、燃費Pの次元は[km/L]である。
本例では、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係を、最小二乗法を用いて直線近似した。
空気抵抗は速度の二乗の項を含むので、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係は直線にはならないが、図3(b)に示すように、車両前後方向風速Wxの分布が狭い場合には、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係は以下の式(3)のように直線近似できる。
P=a・Wx+b……(3)
ここで、a,bは、車種やタイヤ種などにより決まる定数である。
車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係が直線関係から大きく外れるような強風時には、実車試験は行わないので、直線近似しても問題ない。
実車燃費測定手段19は、上記式(3)を用いて、予め設定された車両前後方向風速Wxにおける燃費Pを求める。例えば、無風時であればWx=0であるから、無風時の燃費P(0)は、車両前後方向風速Wxを横軸(x軸)、燃費Pを縦軸(y軸)としたときのy切片の値(b)となる。また、車両前後方向風速がw(m/h)時における燃費P(km/L)は、P=a・w+bにより求められる。
まず、実車燃費試験装置10を搭載した車両を、一定のコースを繰り返し走行させ、一定コース走行毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、これらのデータを順次記憶する。
そして、一定コース走行毎の車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速のデータを用いて、平均車両速度と平均燃料流量と平均風速と平均風向きとを算出する。
次に、平均車両速度と平均風速と平均風向きとから車両前後方向の風速を、平均車両速度と平均燃料流量とから燃費を、それぞれ算出する。
そして、所定回数の走行が終了した段階で、一定コース走行毎に求められた車両前後方向風速のデータと燃費のデータを用いて、車両前後方向風速と燃費との関係を関数近似する。
このように、車両前後方向風速と燃費との関係を関数近似することにより、任意の風速における燃費を求めることができるので、風速の基準を予め設定しておけば、基準風速における燃費を容易に求めることができる。
また、関数近似を直線近似とすれば、タイヤ種毎による違いを比較する際にも、直線の傾きとy切片だけを比較すればよいので、タイヤ種毎の風速と燃費との関係を容易に把握することができる。
本発明による燃費(補正燃費)は、近似関数において、風速w=−2.5m(追い風)のときの燃費とした。また、補正なしの燃費(非補正燃費)は、(平均車両速度)/(燃料流量)により求めた。
試験に用いた車両は乗用車(バン)と小型トラックの2種類である。また、計測器は車種により異なる。詳細は以下の通りである。
乗用車;トヨタカルディナ
流量計 ;小野測器社製 ;FP-2000,DF-211A
風向風速計 ;VAISALA社製 ;WMT50
車速計 ;小野測器社製 ;LC-3110
小型トラック;いすゞエルフ
流量計 ;AVL社製 ;KMA MOBILE
風向風速計 ;VAISALA社製 ;WS425
車速計 ;RACELOGIC社製;V−BOXIII
タイヤ種としてはS,A,Bの3種類を用いた。また、走行回数は、各タイヤ種についてそれぞれ15回とした。
また、燃費計測に先立ち、タイヤ及び車両の暖機運転として、時速90kmにて60分の走行を行い、その直後に計測を開始した。
車両燃費試験の結果を図3及び以下の表1に示す。なお、図3(a)は風補正をしないときの燃費の分布を示すグラフで、図3(b)は風速毎の燃費を示すグラフである。
なお、試験結果は、タイヤ種Sを100とした指数で表した。
計測した燃費が燃料期待値に近いほど計測精度が高い。
表1から明らかなように、従来の方法で求めた非補正燃費の値は燃料期待値を大きく上回っているのに対し、本願発明の方法で求めた補正燃費の値は燃料期待値にほぼ近い値を示していることから、風補正をすることにより、燃費の計測精度を大幅に向上させることができることが確認された。
14 記憶手段、15 平均値算出手段、16 車両前後方向風速算出手段、
17 燃費算出手段、18 近似関数作成手段、19 実車燃費測定手段。
Claims (3)
- 車両を、一定のコースを複数回繰り返し走行させて、車両の燃料消費率を測定する実車燃費試験方法であって、
一定コースを1回走行する毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、一定コース走行毎の平均車両速度と平均燃料流量と平均風速と平均風向きとを算出するステップと、
前記算出された平均車両速度と平均風速と平均風向きとから車両前後方向の風速を算出するステップと、
前記算出された平均車両速度と平均燃料流量とから燃料消費率を求めるステップと、
一定コース走行毎に求められた風速のデータと燃料消費率のデータとから、風速と燃料消費率との関係を関数近似するステップと、
前記関数近似された風速と燃料消費率との関係から、前記車両の予め設定された風速における燃料消費率を求めるステップとを備えたことを特徴とする実車燃費試験方法。 - 前記車両前後方向の風速と燃料消費率の関係を、車両に装着するタイヤのタイヤ種を変更して求め、前記車両の予め設定された風速における燃料消費率をタイヤ種毎に求めることを特徴とする請求項1に記載の実車燃費試験方法。
- 前記関数近似が直線近似であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の実車燃費試験方法。
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