JP2010185847A - 実車燃費試験方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両を一定のコース内で繰り返し走行させて車両の燃費を計測する実車燃費試験方法において、風の影響を補正した燃料消費率を求める。
【解決手段】試験車両に、走行速度計11と流量計12とに加えて、車体近傍の風向きと風速とを測定する風向風速計13を搭載し、一定コース走行毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、車両速度Vxと燃料流量Dと風速Vwと風向きθとを算出した後、これらの平均値を用いて、車両前後方向風速Wx(n)と燃費P(n)とを一定コース走行毎(n=1〜N)に求め、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係を関数近似し、この関数を用いて車両前後方向風速がwxのときの燃費Pを求めるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両を一定のコース内で繰り返し走行させ、そのときの走行距離と燃料消費量とから車両の燃費を計測する実車燃費試験方法に関するものである。
実車燃費試験は、車両を、一定のコースを繰り返し走行させ、そのときの走行距離Lと燃料消費量Dとを測定して、車両の燃料消費率(以下、燃費という)Pを測定するものである。
走行距離Lは、車両の走行速度Vから算出される。また、燃料消費量Dは燃料通路に設けられた流量計で計測した燃料の流量に基づいて算出される。燃費P(km/L)は、走行距離L (km)と燃料消費量D(L)とから、式P=L/Dを用いて算出される(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−45180号公報
ところで、燃費は乗用車の場合、タイヤの転がり抵抗を30%減少させた場合、実車の燃費はその1/5、すなわち6%程度向上することが経験的に知られている。また、小型トラックの場合には、1/4〜1/6といわれている。そのため、タイヤの影響をみるための燃費試験は、高い精度が要求される。
しかしながら、実車燃費試験は、通常、屋外のテストコースで行われるため、風の影響を排除できず、データのバラツキが著しかった。
そこで、風の影響を極力抑えるため、無風に近い環境で実車試験を実施する必要があるが、実際には、試験に好適な環境のみを選択して試験することは困難である。
従来は、テストコース付近に風向風速計を設置し、試験当日の風の状況を監視することは行われてはいたが、風のデータが実験値に反映されることはなく、風の状況が試験に影響がないレベルか否かを判定するための参考データとして使用されるに過ぎなかった。
その理由としては、実車試験がテストコースなどの広大な敷地内で実施されるため、場所によって風の状況が異なる場合が珍しくないためである。すなわち、一箇所に設置された風向風速計のデータを用いて算出した燃費を補正することは、必ずしも正しい補正であるとはいえないからである。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、車両を一定のコース内で繰り返し走行させて車両の燃費を計測する実車燃費試験方法において、風の影響を補正した燃料消費率を求めることを目的とする。
本願発明は、車両を、一定のコースを複数回繰り返し走行させて、車両の燃料消費率を測定する実車燃費試験方法であって、一定コースを1回走行する毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、一定コース走行毎の平均車両速度と平均燃料流量と平均風速と平均風向きとを算出するステップと、前記算出された平均車両速度と平均風速と平均風向きとから車両前後方向の風速を算出するステップと、前記算出された平均車両速度と平均燃料流量とから燃料消費率を求めるステップと、一定コース走行毎に求められた風速のデータと燃料消費率のデータとから、風速と燃料消費率との関係を関数近似するステップと、前記関数近似された風速と燃料消費率との関係から、前記車両の予め設定された風速における燃料消費率を求めるステップとを備えたことを特徴とする。
また、本願発明は、前記車両前後方向の風速と燃料消費率の関係を、車両に装着するタイヤのタイヤ種を変更して求め、前記車両の予め設定された風速における燃料消費率をタイヤ種毎に求めることを特徴とする。
また、本願発明は、前記関数近似が直線近似であることを特徴とする。
本発明によれば、車両を、一定のコースを繰り返し走行させるとともに、車両前後方向の風速と燃費とを一定コース走行毎に求め、風速と燃費との関係を関数近似することにより、風速と燃費との関係を正確に把握することができる。この近似関数を用いることにより、車両の予め設定された風速における燃料消費率を精度良く求めることができるので、正確な実車燃費試験を行うことができる。
例えば、風速をx軸、燃費をy軸、近似関数をy=f(x)として、近似関数のy切片であるy0=f(0)を求めれば、このy0が無風状態での燃費となる。また、風速がxkのときの燃費ykは、yk=f(xk)により求められる。
また、前記車両前後方向の風速と燃料消費率の関係を、車両に装着するタイヤのタイヤ種を変更して求めるようにしたので、タイヤ種の燃費に及ぼす影響を精度よく把握することができる。したがって、転がり抵抗などのタイヤ特性向上のための設計指針を、タイヤ種毎に得ることができる。
また、前記関数近似を直線近似とすることで、簡単な計算で近似関数を求めることができるだけなく、タイヤ種毎による違いを比較する際にも、直線の傾きとy切片だけを比較すればよいので、タイヤ種毎の風速と燃費との関係を容易に把握することができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
本実施の形態に係る実車燃費試験装置の構成を示すブロック図である。 風向風速計で検出した風の方向と風速と車両前後方向風速との関係を説明するための図である。 車両前後方向風速と燃費との関係を直線近似したグラフの一例を示す図である。
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施の形態に係る実車燃費試験装置10の構成を示すブロック図で、11は走行速度計、12は流量計、13は風向風速計、14は記憶手段、15は平均値算出手段、16は前後方向風速算出手段、17は燃費算出手段、18は近似関数作成手段、19は実車燃費測定手段である。
走行速度計11は車体に設置されて、車体速度を検出する。
流量計12は燃料タンクとエンジンとの間の燃料供給通路に設置されて、燃料通路を流れる燃料の流量を直接検出する。なお、ディーゼルエンジンの場合には、燃料の一部が燃料戻り通路に戻るので、2個の流量計を用い、供給側の流量から戻り側の流量を差し引いた値を用いる。ガソリンエンジンの場合には、上記のように、供給側だけでよい。
風向風速計13は車体の進行方向前側に設置されて、走行中の車両の受ける風の方向と風速とを検出する。
なお、記憶手段14〜実車燃費測定手段19の各手段は、実車燃費試験装置10の演算部10Cを構成するもので、車体側に設けられる。
走行速度計11、流量計12、風向風速計13でそれぞれ検出された車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速のデータは記憶手段14に記憶される。
平均値算出手段15は、記憶手段14から、車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速の、車両が一定コースを一回走行した分のデータをそれぞれ読み出して平均値を計算し、平均車両速度Vx(n)と平均燃料流量D(n)と平均風速VW(n)と平均風向きθ(n)とを算出し、これを記憶手段14に記憶する。
なお、実車試験では、一定コースをN回走行するとした場合、Vx(n),D(n),VW(n),θ(n)は、それぞれn回目(n=1〜N)の走行時における平均値を意味する。
前後方向風速算出手段16は、記憶手段14から平均車両速度Vx(n)と平均風速VW(n)と平均風向きθ(n)とを読み出し、以下の式(1)を用いて車両の移動に依らない車両前後方向の風速である車両前後方向風速Wx(n)を算出し、これを記憶手段14に記憶する。
x(n)=VW(n)・cosθ(n)−Vx(n) ……(1)
風向風速計13は車両とともに移動しているので、図2(a),(b)に示すように、検出された風の方向(ベクトルVWの方向)と風速(ベクトルVWの大きさ)は実際の風の方向と風速とは異なる。例えば、無風でかつ車両が直線走行している場合でも、平均風速はVW=−Vx(θ=0)となる。なお、Wyは車両幅方向の風速である。
燃費算出手段17は、記憶手段14から平均車両速度Vx(n)と平均燃料流量D(n)とを読み出し、以下の式(2)を用いて、燃費P(n)を算出しこれを記憶手段14に記憶する。
P(n)=Vx(n)/D(n) ……(2)
なお、平均車両速度Vxの次元は[km/h]、平均燃料流量Dの次元は[L/h]、燃費Pの次元は[km/L]である。
近似関数作成手段18は、記憶手段14に記憶された車両前後方向風速WxのN個のデータ(Wx(1)〜Wx(N))と燃費PのN個のデータP(1) 〜Wx(N)とを読み出して、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係を関数近似する。
本例では、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係を、最小二乗法を用いて直線近似した。
空気抵抗は速度の二乗の項を含むので、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係は直線にはならないが、図3(b)に示すように、車両前後方向風速Wxの分布が狭い場合には、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係は以下の式(3)のように直線近似できる。
P=a・Wx+b……(3)
ここで、a,bは、車種やタイヤ種などにより決まる定数である。
車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係が直線関係から大きく外れるような強風時には、実車試験は行わないので、直線近似しても問題ない。
実車燃費測定手段19は、上記式(3)を用いて、予め設定された車両前後方向風速Wxにおける燃費Pを求める。例えば、無風時であればWx=0であるから、無風時の燃費P(0)は、車両前後方向風速Wxを横軸(x軸)、燃費Pを縦軸(y軸)としたときのy切片の値(b)となる。また、車両前後方向風速がw(m/h)時における燃費P(km/L)は、P=a・w+bにより求められる。
次に、実車燃費試験装置10を用いた実車燃費試験方法について説明する。
まず、実車燃費試験装置10を搭載した車両を、一定のコースを繰り返し走行させ、一定コース走行毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、これらのデータを順次記憶する。
そして、一定コース走行毎の車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速のデータを用いて、平均車両速度と平均燃料流量と平均風速と平均風向きとを算出する。
次に、平均車両速度と平均風速と平均風向きとから車両前後方向の風速を、平均車両速度と平均燃料流量とから燃費を、それぞれ算出する。
そして、所定回数の走行が終了した段階で、一定コース走行毎に求められた車両前後方向風速のデータと燃費のデータを用いて、車両前後方向風速と燃費との関係を関数近似する。
このように、車両前後方向風速と燃費との関係を関数近似することにより、任意の風速における燃費を求めることができるので、風速の基準を予め設定しておけば、基準風速における燃費を容易に求めることができる。
このように、本実施の形態によれば、実車燃費試験において、試験車両に、走行速度計11と流量計12とに加えて、車体近傍の風向きと風速とを測定する風向風速計13を搭載し、一定コース走行毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、車両速度Vxと燃料流量Dと風速Vwと風向きθとを算出した後、これらの平均値を用いて、車両前後方向風速Wx(n)と燃費P(n)とを一定コース走行毎(n=1〜N)に求め、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係を関数近似したので、車両前後方向風速Wxと燃費Pとの関係を正確に把握することができる。したがって、この近似関数を用いることにより、任意の風速における燃費を求めることができる。
また、関数近似を直線近似とすれば、タイヤ種毎による違いを比較する際にも、直線の傾きとy切片だけを比較すればよいので、タイヤ種毎の風速と燃費との関係を容易に把握することができる。
また、燃費はタイヤ種にも依存するので、前記車両前後方向の風速と燃料消費率の関係を、車両に装着するタイヤのタイヤ種を変更して求めておけば、タイヤ種の燃費に及ぼす影響を精度よく把握することができるので、転がり抵抗などのタイヤ特性向上のための設計指針を、タイヤ種毎に得ることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
本発明の実車燃費試験装置を車両に搭載し、500mの直線路を一定速度で繰り返し走行して、車両速度、燃料流量、風向き、風速のデータをそれぞれ採取し、これを記憶装置に記憶した。各データは、1秒間の平均値を1Hzにて収録し、計測後、1回毎の平均を求め、上記データに基づいて燃費を計算した。
本発明による燃費(補正燃費)は、近似関数において、風速w=−2.5m(追い風)のときの燃費とした。また、補正なしの燃費(非補正燃費)は、(平均車両速度)/(燃料流量)により求めた。
試験に用いた車両は乗用車(バン)と小型トラックの2種類である。また、計測器は車種により異なる。詳細は以下の通りである。
乗用車;トヨタカルディナ
流量計 ;小野測器社製 ;FP-2000,DF-211A
風向風速計 ;VAISALA社製 ;WMT50
車速計 ;小野測器社製 ;LC-3110
小型トラック;いすゞエルフ
流量計 ;AVL社製 ;KMA MOBILE
風向風速計 ;VAISALA社製 ;WS425
車速計 ;RACELOGIC社製;V−BOXIII
タイヤ種としてはS,A,Bの3種類を用いた。また、走行回数は、各タイヤ種についてそれぞれ15回とした。
また、燃費計測に先立ち、タイヤ及び車両の暖機運転として、時速90kmにて60分の走行を行い、その直後に計測を開始した。
車両燃費試験の結果を図3及び以下の表1に示す。なお、図3(a)は風補正をしないときの燃費の分布を示すグラフで、図3(b)は風速毎の燃費を示すグラフである。
なお、試験結果は、タイヤ種Sを100とした指数で表した。
Figure 2010185847
ここで、「燃料期待値」は、車両重量、転がり抵抗、空気抵抗等により導き出される値で、外部の公的試験機関(例えば、日本自動車研究所)で燃料試験を行いタイヤの燃費に対する影響が判明している値である。
計測した燃費が燃料期待値に近いほど計測精度が高い。
表1から明らかなように、従来の方法で求めた非補正燃費の値は燃料期待値を大きく上回っているのに対し、本願発明の方法で求めた補正燃費の値は燃料期待値にほぼ近い値を示していることから、風補正をすることにより、燃費の計測精度を大幅に向上させることができることが確認された。
このように、本発明によれば、風の影響を補正した燃料消費率を求めることができるので、正確な実車燃費試験を行うことができる。
10 実車燃費試験装置、11 走行速度計、12 流量計、13 風向風速計、
14 記憶手段、15 平均値算出手段、16 車両前後方向風速算出手段、
17 燃費算出手段、18 近似関数作成手段、19 実車燃費測定手段。

Claims (3)

  1. 車両を、一定のコースを複数回繰り返し走行させて、車両の燃料消費率を測定する実車燃費試験方法であって、
    一定コースを1回走行する毎に車両速度、燃料流量、風向き、及び、風速を測定して、一定コース走行毎の平均車両速度と平均燃料流量と平均風速と平均風向きとを算出するステップと、
    前記算出された平均車両速度と平均風速と平均風向きとから車両前後方向の風速を算出するステップと、
    前記算出された平均車両速度と平均燃料流量とから燃料消費率を求めるステップと、
    一定コース走行毎に求められた風速のデータと燃料消費率のデータとから、風速と燃料消費率との関係を関数近似するステップと、
    前記関数近似された風速と燃料消費率との関係から、前記車両の予め設定された風速における燃料消費率を求めるステップとを備えたことを特徴とする実車燃費試験方法。
  2. 前記車両前後方向の風速と燃料消費率の関係を、車両に装着するタイヤのタイヤ種を変更して求め、前記車両の予め設定された風速における燃料消費率をタイヤ種毎に求めることを特徴とする請求項1に記載の実車燃費試験方法。
  3. 前記関数近似が直線近似であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の実車燃費試験方法。
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