以下、本発明に係るケーブル引張装置について、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るケーブル引張装置は、電柱に支持されているケーブルに対して切断や張替え等の作業を行うときに用いられる。
かかるケーブル引張装置は、図1に示す如く、一方向に引張力を作用させる引張手段8と、それぞれが引張手段8の引張力を作用させる方向の両端部のそれぞれに連結される一対のケーブル挟持具1,1とを備えている。
引張手段8は、棒状に形成された引張手段本体80と、それぞれが引張手段本体80の長手方向の両端部のそれぞれに連結された一対の挟持具用連結部81,81とを備えている。また、本実施形態に係る引張手段8は、ケーブルに掛止可能な一対の掛止体82,82を備えている。
引張手段本体80は、長手方向において伸縮可能に構成されている。そのため、引張手段本体80は、長手方向で縮むとき(一対の挟持具用連結部81,81同士が接近するとき)に所定の収縮力(引張力)を作用させるように構成されている。
なお、図1に示す如く、引張手段本体80は、棒状の第一本体部80aと、一方向に長手をなす筒状に形成され、第一本体部80aの長手方向における一端部側が挿入される第二本体部80bとを備えている。第一本体部80aと第二本体部80bとは、互いの長手方向に沿って相対的にスライド可能に構成されている。
引張手段本体80の第二本体部80bには、第一本体部80aと第二本体部80bとを互いの長手方向に沿って相対的にスライドさせる操作部800が設けられている。これにより、引張手段本体80は、操作部800を操作することで長手方向において伸縮する。
これに伴い、引張手段本体80は、長手方向で最も縮んだ状態を示す第一マークM1と、長手方向で最も伸びた状態を示す第二マークM2とが長手方向に間隔をあけて第一本体部80aに付されている。そのため、引張手段本体80は、第一マークM1及び第二マークM2と第一本体部80bの長手方向における一端部との相対位置を確認することで長手方向で最も縮んだ状態と長手方向で最も伸びた状態とを把握することができるように構成されている。
一対の挟持具用連結部81,81のそれぞれは、ケーブル挟持具1を連結可能に構成されている。本実施形態に係る一対の挟持具用連結部81,81のそれぞれには、ケーブル挟持具1,1を連結する連結軸S1を挿通可能な連結孔810が設けられている。
一対の掛止体82,82のそれぞれは、引張手段本体80の長手方向で互いに間隔をあけた位置で引張手段本体80に取り付けられている。
上記構成の引張手段8は、引張手段本体80が長手方向で伸縮されることで、一対のケーブル挟持具1,1同士を接離させる。そして、引張手段8は、引張手段本体80が長手方向で縮むときに、一対の挟持具用連結部81,81のそれぞれに連結した一方のケーブル挟持具1(以下、第一ケーブル挟持具という)と他方のケーブル挟持具1(以下、第二ケーブル挟持具という)とに必要な引張力の作用させて該第一ケーブル挟持部1と第二ケーブル挟持部とを接近させるように構成されている。
第一ケーブル挟持具1は、図2(a)及び図2(b)に示す如く、上顎部20を有する上顎部材2と、上顎部20に対向して配置される下顎部30を有する下顎部材3と、第一端部及び該第一端部とは反対側の第二端部を有し、互いに平行な姿勢で配置され、第一端部が下顎部材3に枢結され、長手方向における途中位置が上顎部材2に枢結される一対の(二つの)リンク部材4,4と、一対のリンク部材4,4のうちの少なくとも一つのリンク部材4,4の第一端部又は第二端部の何れか他方に直接又は間接的に設けられ、引張手段8を連結可能な連結部51と、下顎部30が上顎部20とともにケーブルを挟持可能になる挟持可能位置に下顎部材3を位置決め可能な下顎位置決手段6とを備えている。本実施形態に係る第一ケーブル挟持具1は、連結部51を備えた操作レバー5であって、一対のリンク部材4,4のそれぞれの第二端部に枢結される操作レバー5を備えている。
上顎部材2は、上顎部20と下顎部30とが対向する方向(以下、第一方向という)と直交する方向(以下、第二方向という)で上顎部20と並ぶように該上顎部20に連結されたベースプレート21を有する。上顎部20及びベースプレート21は、互いに一体的に形成されている。上顎部20は、第一方向におけるベースプレート21の一端部に沿って設けられている。これにより、上顎部材2は、側面視において逆L字状をなしている。そして、上顎部20の下顎部30と対向する面には、第一方向及び第二方向のそれぞれと直交する方向(以下、第三方向とする)に沿って延びる上側溝200が形成されている。(図2(b)参照)。
ベースプレート21は、第一方向に長手をなしている。ベースプレート21には、図3(a)、及び図3(b)に示す如く、第三方向に並ぶ一対の貫通孔(以下、第一貫通孔という)210,210が所定の間隔をあけて設けられている。一対の第一貫通孔210,210のそれぞれは、第二方向でベースプレート21を貫通している。また、本実施形態に係るベースプレート21には、後述する干渉部材61と係合可能な凹部211が形成されている。
図2(a)、及び図2(b)に戻り、下顎部材3は、ベースプレート21と第二方向で並んで配置される。下顎部材3は、下顎部30の上顎部20と対向する側とは反対側で下顎部30に連続して設けられる枢結部31をさらに備える。下顎部30の上顎部20と対向する面には、第三方向に沿って延びる下側溝部300が形成されている(図2(b)参照)。
枢結部31は、板状に形成された一対の板部310,310を備えている(図2(b)参照)。一対の板部310,310のそれぞれは、第二方向で互いに間隔をあけて配置されている。一対の板部310,310は、下顎部30の上顎部20と対向する側とは反対側で該下顎部30と連続して設けられる。
また、一対の板部310,310のそれぞれには、第三方向で間隔をあけて並ぶ一対の貫通孔(以下、第二貫通孔という)311,311が設けられている(図2(b)参照)。また一方の板部310に設けられた一対の第二貫通孔311,311のそれぞれと、他方の板部310に設けられた一対の第二貫通孔311,311のそれぞれとは、第二方向で同心となるように配置されている。さらに、一対の板部310,310のそれぞれにおいて、第三方向における一対の第二貫通孔311,311の間隔は、第三方向における一対の第一貫通孔210,210の間隔と同一に設定されている。
一対のリンク部材4,4のそれぞれは、一方向に長手をなし、長手方向における第一端部及び該第一端部とは反対側の第二端部とを有する。本実施形態において、一対のリンク部材4,4のそれぞれは、一方向に長手をなす板状に形成されている。一対のリンク部材4,4のそれぞれは、図2(b)に示す如く、第一端部に貫通孔(以下、第三貫通孔という)40aが設けられている。一対のリンク部材4,4のそれぞれは、第一端部と第二端部との間の途中位置に貫通孔(以下、第四貫通孔という)40bが設けられている。さらに、一対のリンク部材4,4のそれぞれは、第二端部にも貫通孔(以下、第五貫通孔という)40cが設けられている。
本実施形態に係る一対のリンク部材4,4のそれぞれは、第一端部が下顎部材3の一対の板部310,310のそれぞれの間に差し込まれる。この状態で、一対のリンク部材4,4のそれぞれは、第二貫通孔311と、第三貫通孔40aとに軸(以下、枢結軸という)S2が挿通されて下顎部材3に枢結される。すなわち、リンク部材4及び一対の板部310,310に跨るように、枢結軸S2が第二貫通孔311と第三貫通孔40aとに挿通されている。
また、一対のリンク部材4,4のそれぞれは、図3(a)、図3(b)に示す如く、円筒状のスペーサー41を介してベースプレート21上に配置されている。この状態で、ベースプレート21の第一貫通孔210と、スペーサー41と、リンク部材4の第四貫通孔40bとに挿通したボルトBにナットNを螺合させることで、一対のリンク部材4,4のそれぞれが上顎部材2のベースプレート21に枢結される。
図2(a)、図2(b)に戻り、操作レバー5は、一対のリンク部材4,4のそれぞれに枢結される板状の操作レバー本体50と、該操作レバー本体50に一体的に形成され、引張手段本体80の挟持具用連結部81に連結可能に構成される連結部51とを有する。
操作レバー本体50は、一方向に長手をなして形成され、第一端部と第二端部とを有する。また、操作レバー本体50には、第三方向で間隔をあけて並ぶ一対の貫通孔(以下、第六貫通孔という)500,500が設けられている。一対の第六貫通孔500,500の間隔は、一対の第一貫通孔210,210の間隔と同一に設定されている。本実施形態において、操作レバー本体50の第六貫通孔500,500と、対応するリンク部材4,4の第五貫通孔40cとに、ボルトが挿通され、該ボルトBにナットNが螺合されることで、操作レバー本体50が一対のリンク部材4,4のそれぞれの第二端部に枢結されている。
連結部51は、引張手段8を連結するための連結軸S1を挿通する連結孔510が設けられている。すなわち、引張手段8の連結孔810と連結部51の連結孔510とに連結軸S1を挿通させることで、第一ケーブル挟持具1の連結部51と、引張手段8の連結部81とが連結されている(図1参照)。
下顎位置決手段6は、下顎部材3が挟持可能位置にある状態で、該下顎部材3又はリンク部材4に干渉する状態と、下顎部材3又はリンク部材4に対する干渉を解除した状態とに切り替え可能に構成される干渉部材61を備えている。干渉部材61は、下顎部材3又はリンク部材4に干渉することで挟持可能位置にある下顎部材3の動きを規制するように構成される。
本実施形態に係る干渉部材61は、ピン状に形成される。より具体的に説明すると、下顎位置決手段6は、図3(a)、及び図3(b)に示す如く、ピン状の干渉部材61と、ベースプレート21から第二方向に延出する一対のボルト(枢軸)B,Bのそれぞれに跨って配置されるとともに、該一対のボルトB,Bのそれぞれに固定され、前記干渉部材61が挿通される取付部材60を備えている。
本実施形態に係る下顎位置決手段6は、干渉部材61を所定の位置で(下顎部材3又はリンク部材4に干渉する位置で)ロック可能に構成されるロック手段62を備えている。さらに、下顎位置決手段6は、ピン状の干渉部材61が自己の軸心を中心として回転することを防止する回転防止手段63を備えている(図2(b)参照)。
干渉部材61は、第二方向でスライド移動することで、リンク部材4に干渉する状態と、リンク部材4に対する干渉が解除される状態とに切替可能に構成されている。具体的に説明すると、干渉部材61は、一方向に長手をなすピン状に形成され、長手方向における第一端部及び該第一端部とは反対側の第二端部とを有するピン部610と、円板状に形成され、該ピン部610の第一端部に連結されるハンドル部611とを備えている。
ピン部610の外径は、後述の干渉部材用通孔601の直径及びケーシング60bの内径よりも僅かに小さく設定されている。また、ピン部610は、第二端部が先細りに形成されている。これにより、ピン部610は、ベースプレート21に接近する方向に移動することで、第二端部がベースプレート21の凹部211に嵌合するように構成されている。
取付部材60は、一対のリンク部材4,4のそれぞれの第四貫通孔40bに挿通されているボルト(枢軸)B,Bのそれぞれに跨って配置され、該ボルトB,Bのそれぞれに固定される取付プレート60aと、該取付プレート60a上に設けられるケーシング60bとを備えている。
取付プレート60aには、第二方向で並ぶ一対の貫通孔(以下、第七貫通孔という)600,600と、干渉部材61を挿通可能な干渉部材用通孔601とが設けられている。一対の第七貫通孔600,600の間隔は、一対の第一貫通孔210,210の間隔と同一に設定されている。
本実施形態に係る取付プレート60aの一対の第七貫通孔600,600のそれぞれには、一対の第一貫通孔210,210のそれぞれと、一対のリンク部材4,4のそれぞれの第四貫通孔40bに挿通されたボルトB,Bのそれぞれが挿通されている。そして、該ボルトB,BのそれぞれにナットNを螺合させることで取付プレート60aがリンク部材4,4上に固定されている。これにより、本実施形態に係る取付プレート60aは、一対のリンク部材4,4のそれぞれが回転しても、該一対のリンク部材4,4のそれぞれに連動して移動しないように構成されている。
ケーシング60bは、円筒状に形成されている。また、ケーシング60bは、内径が干渉部材用通孔601の直径と略同等に設定されている。そして、ケーシング60bは、第二方向において干渉部材用通孔601と同心となるように取付プレート60a上に配置される。前記干渉部材61のピン部610が、先細りにした第二端部をベースプレート21側に向けてケーシング60Bの孔と、干渉部材用挿通孔601とに挿通されている。
ハンドル部611は、直径がピン部610の直径よりも大きくなるように形成されている。また、ハンドル部611は、中央部にピン部610が連結される。
ロック手段62は、ピン部610の外周部に形成された突起部620と、ケーシング60bの内周面に形成された凹部621とで構成されている。突起部620は、ピン部610に内装されたボール部材620bの一部が該ピン部610の外周面から突出することで形成される。
具体的に説明すると、前記ピン部610には、横穴620aが形成されている。該横穴620aには、ボール部材620bと、ボール部材620bをピン部610の径方向外方に向けて付勢する付勢手段620cとが収容されている。これにより、ピン部610の外周からボール部材620bの一部が突出して、突起部620を構成している。なお、ボール部材620bは、横穴620aの一方の開口から露出しており、これに伴って、横穴620aの他方の開口が閉塞された状態になっている。
回転防止手段63は、図2(b)に示す如く、第二方向に沿ってピン部610に形成されたガイド溝63aと、ケーシング60bの内周面から径方向内方に向かって突出し、ガイド溝に嵌合可能な嵌合突起63bとで構成される。本実施形態に係る嵌合突起63bは、ケーシング60bに挿通されたボルトBで構成される。すなわち、ケーシング60bに挿通されたボルトBにおける、ケーシング60bの内周面から径方向内方に向かって突出した部分が嵌合突起63bとなる。
これにより、回転防止手段63は、干渉部材61が取付部材60に挿通されたときに、ケーシング60bの嵌合突起63bがピン部610のガイド溝63aに嵌る。これにより、干渉部材61は、自己の軸方向を中心として回転することなく、第二方向でスライド移動できるように構成されている。
本実施形態に係る第二ケーブル挟持具1は、第二ケーブル挟持具1の基本的な構成が第一ケーブル挟持具1と共通する。そのため、基本的な構成の説明については、第一ケーブル挟持具1の説明を代用し、第一ケーブル挟持具1と相違する構成についてのみ説明を行うこととする。
第二ケーブル挟持具1の操作レバー5は、図4(a)に示す如く、操作レバー本体50に連続的に設けられた解除用操作部52を備えている。解除用操作部52は、第三方向において連結部51と相反する位置に設けられている。また、解除用操作部52には、引掛孔520が設けられている。
第二ケーブル挟持具1は、図4(a)、及び図4(b)に示す如く、上顎部20と下顎部30との間に配置されたケーブルの第二方向における脱落を防止する脱落防止部材7を備えている。脱落防止部材7は、上顎部材2又は下顎部材3の何れか一方に取り付けられる。本実施形態に係る脱落防止部材7は、上顎部材2に取り付けられている。脱落防止部材7は、第二方向における片側又は両側で上顎部20と下顎部30との間に介在した状態と、該上顎部20と下顎部30との間から退避した状態とに切替可能に構成されている。
具体的に説明すると、脱落防止部材7は、略矩形状のプレート本体70と、該プレート本体70の一方側の面に第二方向に沿って起立するように設けられた操作棒71とを備える。本実施形態に係るプレート本体70は、四つの角部のうちの一つの角部が上顎部20に固定されている。
また、プレート本体70は、第一端部及び第一端部とは反対側の第二端部とを有し、上顎部20に固定されている部分を中心とする円弧状に形成されたガイド溝700が形成されている。プレート本体70のガイド溝700には、上顎部20に螺合されたボルトBが挿通されている。これにより、プレート本体70は、ボルトBがガイド溝700の第一端部に当接した状態で第二方向における片側又は両側で上顎部20と下顎部30との間に介在し、ボルトBがガイド溝700の第二端部に当接した状態で上顎部20と下顎部30との間から退避した状態になるように構成される。
本実施形態に係るケーブル引張装置は、以上の通りである。続いて、ケーブル引張装置を用いてケーブルを撓ませる作業について添付図面を参照しつつ説明を行うこととする。なお、本実施形態においては、引張手段本体80の一対の挟持具用連結部81,81のそれぞれに一対のケーブル挟持具1,1のそれぞれが既に連結された状態のケーブル引張装置を用いることを前提に以降の説明を行う。
本実施形態に係るケーブル引張装置を用いてケーブルCを撓ませるにあたり、図5(a)に示す如く、ケーブルCに該ケーブル引張装置が取り付けられる。具体的に説明すると、まず、引張手段本体80を移動させることによって、第二ケーブル挟持具1の上顎部20と第二ケーブル挟持具1の下顎部30との間にケーブルCが配置される。
そして、バインド打器で脱落防止部材7の操作棒71が操作され、脱落防止部材7が第二方向におけるケーブルCの片側又は両側で上顎部20と下顎部30との間に介在した状態にされる。このようにすることで、上顎部20と下顎部30との間に配置されたケーブルCは、該脱落防止部材7によって第二方向での移動が規制された状態になる。すなわち、上顎部20と下顎部30との間に配置されたケーブルCが第二方向において脱落することが防止される。このような状態で引張手段本体80を離すと、第二ケーブル挟持具1の上顎部20がケーブルCに引っ掛かる。これにより、ケーブル引張装置は、ケーブルCから吊り下げられた状態になる。
そして、操作レバー5の引掛孔520にバインド打器が引っ掛けられ、該バインド打器が下方に引っ張られると操作レバー5が下方に移動する。これにより、第二ケーブル挟持具1は、下顎部材3及び一対のリンク部材4,4のそれぞれが操作レバー5に連動して移動し、図6(a)、及び図6(b)に示す如く、上顎部20と下顎部30とがケーブルCを挟持した状態になる。
さらに、ホットスティックによって干渉部材61のハンドル部611がベースプレート21に向けて押し込まれてピン部610がベースプレート21側にスライド移動すると、該ピン部610の先端部がベースプレート21の凹部211に係合する(図3(b)参照)。これにより、干渉部材61のピン部610は、ベースプレート21と取付部材60とに支持された状態になり、定位置又は略定位置に固定される。
このようにすることで、第二ケーブル挟持具1は、干渉部材61(ピン部610)が一方のリンク部材4と干渉できる状態になり、一対のリンク部材4,4のそれぞれの移動が規制される。これに伴い、第二ケーブル挟持具1は、下顎部材3についても移動が規制される。これにより、第二ケーブル挟持具1は、下顎部材3が挟持可能位置で位置決めされ、下顎部30が上顎部20とともにケーブルCを適正に挟持する。
このような状態において、第二ケーブル挟持具1の干渉部材61は、ピン部610の突起部620がケーシング60bの凹部621に嵌合するため、第一方向及び第三方向における移動が規制された状態になる。そのため、第二ケーブル挟持具1の干渉部材61は、リンク部材4と干渉した状態から解除された状態に不用意に切り替わることが防止される。
このようにした後に、引張装置8の操作部800にホットスティックが取り付けられる。そして、作業者によって該ホットスティックが移動させられることで、引張手段8の一対の掛止体82,82のそれぞれがケーブルCに引っ掛けられる。さらに、作業者によって該ホットスティックが移動させられることで、上顎部材2の上顎部20と下顎部材3の下顎部30との間にケーブルCが配置されるように第一ケーブル挟持具1が移動する。
そして、引張装置8の操作部800からホットスティックが取り外される。このようにすると、第一ケーブル挟持具1は、引張装置8の重みが作用することで操作レバーが下方に移動する。これに伴い、下顎部20が上顎部30に接近し、上顎部20と下顎部30とがケーブルCを挟持する。このような状態にした後に、第二ケーブル挟持具1と同様に、ホットスティックによって干渉部材61のハンドル部611がベースプレート21に向けて押し込まれると、ピン部610の先端部がベースプレート21の凹部211に係合する。これにより、第一ケーブル挟持部1は、干渉部材61がリンク部材4と干渉した状態から解除された状態に不用意に切り替わることが防止される。
以上のようにして、ケーブル引張装置は、図5(a)に示す如く、ケーブルCに取り付けられる。そして、ホットスティックによって引張手段8の操作部800が操作され、引張手段本体80が長手方向で縮まると、第一ケーブル挟持具1と第二ケーブル挟持具1とが互いに引き寄せられる。これにより、ケーブル引張装置は、図5(b)に示す如く、張力の作用するケーブルCを撓ませることができる。
ケーブルCに対する作業が完了した後に、ケーブル引張装置をケーブルCから取り外すにあたっては、まず、ホットスティックによって第一ケーブル挟持部1のハンドル部611が引き出され、ピン部610の先端部とベースプレート21の凹部211との係合状態が解除される。
このようにした後に、引張手段8の操作部800にホットスティックを取り付けて、該ホットスティックによって操作部800が操作されると、引張手段本体80が長手方向に伸びる。これにより、第一ケーブル挟持具1と第二ケーブル挟持具1とが互いに離間し、ケーブルCが撓んだ状態から真っすぐ伸びた状態に戻る。
そして、作業者によって引張手段8の操作部800に取り付けられたホットスティックを上方に移動させられると、引張手段8の重みが第一ケーブル挟持具1に作用しなくなる。これにより、上顎部材2の上顎部20と下顎部材3の下顎部30とのケーブルCに対する挟持が解除され、第一ケーブル挟持具1がケーブルCから取り外される。
さらに、作業者によってホットスティックを移動させられることで、引張手段8の一対の掛止体82,82のそれぞれがケーブルCから取り外される。これにより、ケーブル引張装置は、再び、ケーブルCから吊り下げられた状態になる。
そして、ホットスティックによって第二ケーブル挟持部1のハンドル部611が引き出されることで、ピン部610の先端部とベースプレート21の凹部211との係合状態が解除される。このようにした後に、第二ケーブル挟持具1における操作レバー5の引掛孔520にバインド打器が引っ掛けられ、該バインド打器が第三方向に沿って引っ張られると、上顎部材2の上顎部20と下顎部材3の下顎部30とによるケーブルCへの挟持が解除される。そして、絶縁ヤットコによって、第二ケーブル挟持具1がケーブルCから取り外される。
以上のように、本実施形態に係るケーブル挟持具1によれば、干渉部材61をベースプレート21側に移動させるだけで、下顎部材3の位置決め作業を行うことができるため、手間をかけることなく(下顎部材3の位置調整を繰り返し行うことなく)、下顎部材を上顎部20とともに下顎部30がケーブルCを適正に挟持することができる位置で位置決めすることができるという優れた効果を奏し得る。また、本発明に係るケーブル引張装置においても、上記のケーブル挟持具を備えることでケーブルを確実に挟持することができるため、ケーブルを確実に撓ませることができるという優れた効果を奏し得る。
また、本実施形態に係るケーブル挟持具1によれば、干渉部材61をベースプレート21に移動させたときに、該干渉部材61の第二端部がベースプレート21の凹部211に係合するため、干渉部材61のピン部610にリンク部材4が干渉しても該干渉部材61が不用意に動くことがなく、リンク部材4を確実に規制できる。
そして、本実施形態に係るケーブル挟持具1によれば、上顎部20と下顎部30との間にケーブルCを配置した状態で脱落防止部材7を該上顎部材20と下顎部材30との間に介在させることで、上顎部20と下顎部30との間に配置したケーブルCが脱落することを防止することができる。
尚、本発明のケーブル挟持具、及び該ケーブル挟持具を備えるケーブル引張装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態において、下顎位置決手段6は、取付部材60と、干渉部材61とを備えるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図8に示す如く、下顎部材3の第二方向における一端面から起立するようにして該下顎部材3に設けられる掛止棒73と、脱落防止部材7のプレート本体70の第二方向における一端部に連続して設けられ、該掛止棒73と係合可能に構成される延設部72とを備えるようにしてもよい。このようにすれば、下顎位置決め手段は、脱落防止部材7を回転させて掛止棒73に延設部72を係合させることで、下顎部材3を挟持可能位置で位置決めすることができる。
また、上記実施形態において、下顎位置決手段6は、取付部材60と、干渉部材61とを備えるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図9に示す如く、上顎部20のベースプレート21が設けられている側とは反対側で上顎部20に設けられる第一位置決部材910と、下顎部30のベースプレート21と対向する側とは反対側で下顎部30に設けられている側とは反対側に設けられる第二位置決部材911と、該第一位置決部材910、及び第二位置決部材911とに挿通される挿通ピン912とを備えたものであってもよい。
かかる構成によれば、下顎部材3が挟持可能位置にある状態で第一位置決部材910と第二位置決部材911とに挿通ピン912を挿通させることで、ケーブルCを適正に挟持できる状態で下顎部材3と上顎部材2との相対位置を決めることができる。
また、上記実施形態において、下顎位置決手段6は、取付部材60と、干渉部材61とを備えるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図10に示す如く、上顎部材2の第二方向における一端部側に設けられ、第一方向でスライド移動可能に構成されるスライドプレート920と、下顎部材3の第二方向における一端面から起立するようにして該下顎部材3に設けられる掛止棒921とを備えるようにしてもよい。この場合、スライドプレート920を移動させるための棒状のハンドル71を設けることが好ましい。
このようにする場合、スライドプレート920には、第一方向における下顎部材3側の端部に掛止棒921を係合可能な切欠部923が形成される必要がある。また、スライドプレート920に第三方向における中央部に第一方向に沿って延びるスリット922を設け、該スリット922に挿通させたボルトを上顎部材2に螺合させることで、スライドプレート920を一方向にスライド可能に固定することができる。
かかる構成によれば、下顎部材3が挟持可能位置にある状態でスライドプレート920をスライドさせて掛止棒921に切欠部923を係合させることで、ケーブルCを適正に挟持できる状態で下顎部材3と上顎部材2との相対位置を決めることができる。また、この場合、ケーブルCの第二方向の脱落も防止することができる。
また、上記実施形態において、下顎位置決手段6は、取付部材60と、干渉部材61とを備えるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図11に示す如く、上顎部材2の第三方向における一端部に設けられ、第一方向で移動可能に構成されるスライドプレート930を備えるようにしてもよい。このようにする場合、スライドプレート930には、第三方向における下顎部材3側の一端部にケーブルCをかわすことのできる切欠部を形成する必要がある。この場合、スライドプレート920を移動させるための棒状のハンドル72を設けることが好ましい。
かかる構成によれば、下顎部材3が挟持可能位置にある状態でスライドプレート930をスライドさせて該スライドプレート930の下端部を下顎部材3と係合させることで、ケーブルCを適正に挟持できる状態で下顎部材3と上顎部材2との相対位置を決めることができる。また、この場合、ケーブルCの両側にスライドプレート930(切欠部の両側が)が存在するため、ケーブルCの第二方向の脱落も防止することができる。
また、上記実施形態において、一対のケーブル挟持具1,1のそれぞれは、二つのリンク部材4,4を備えていたが、これに限定されるものではなく、例えば、三つ以上のリンク部材4,4…を備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態において、第二ケーブル挟持具1の操作レバー5のみが解除用操作部52を備えていたが、これに限定されるものではなく、例えば、第一ケーブル挟持具1の操作レバー5が解除用操作部52を備えてもよい。
また、上記実施形態において、第二ケーブル挟持具1のみが脱落防止部材7を備えていたが、これに限定されるものではなく、例えば、第一ケーブル挟持具1が脱落防止部材7を備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態において、特に言及しなかったが、上側溝200や下側溝300の内面に滑り止めの突起を設けてもよい。