実施の形態1.
先ず、本実施の形態の概要を説明する。空気調和機(室内機)は、温度検出対象範囲を走査しながら温度を検出する赤外線センサを備え、赤外線センサにより熱源検知を行って人や発熱機器の存在を検知する。赤外線センサから算出される床面エリアを、例えば15のエリアに区分することにより、赤外線センサ3から求められる人の位置を15のエリア区画へ座標点を置き換え、高分解能による高精度な人位置情報にのっとった気流制御を実現する。
また、空気調和機(室内機)は、静電ミストを生成する静電霧化装置を備える。この静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流を直接人体の位置エリアに吹きつけるのではなく、例えば人体検知位置エリアの両側に吹き分けることで直接気流を人体に当てることによる肌水分が落ちる(下がる)ことをさけ、且つ帯電されたで静電ミストが人体に両サイドから寄ってくること(電位差のある人体へ寄りやすく)で効率よく肌水分量を上げる効果を持つことを特徴とする。
また、空気調和機(室内機)は、本体内部に制御装置が搭載されている。制御装置(制御部)は、入力部、CPU、メモリ、出力部から構成され、さらにCPU内部には人体検出判断部、目標エリア決定部、エリア風向制御部が内蔵されている。制御装置は、赤外線センサ(人体検知センサ)の情報を基に、空気調和機(室内機)から吹き出す静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流の吹き分けを行うことを特徴とする。
また、赤外線センサからの窓位置情報をもとに、人体検知のないときつまり室内に人がいない場合には、窓位置にあるカーテン等に直接静電ミストを吹きつける気流制御を行うことで、カーテン等の効率のよい除菌を行うことができることを特徴とする。
通常室内機は部屋の高所の壁に据付られるが、室内機が据付られる壁における左右の位置は、様々である。壁の左右方向の略中央に据付られる場合もあるし、室内機から見て右側又は左側の壁に接近して据付られる場合もある。以下、この明細書では、部屋の左右方向とは、室内機(赤外線センサ3)から見た左右方向と定義する。
図1乃至図83は実施の形態1を示す図で、図1、図2は空気調和機100の斜視図、図3は空気調和機100の縦断面図、図4は赤外線センサ3と受光素子の各配光視野角を示す図、図5は赤外線センサ3を収納する筐体5の斜視図、図6は赤外線センサ3付近の斜視図((a)は赤外線センサ3が右端端部へ可動した状態、(b)は赤外線センサ3が中央部へ可動した状態、(c)は赤外線センサ3が左端端部へ可動した状態)、図7は赤外線センサ3の縦断面における縦配光視野角を示す図、図8は主婦12が幼児13を抱いている部屋の熱画像データを示す図、図9はは空気調和機100の能力帯により規定された冷房運転時の畳目安ならびに広さ(面積)を示す図、図10は図9記載の能力毎の広さ(面積)の最大面積を用いることで、能力毎における床面の広さ(面積)を規定した図、図11は能力2.2kwにおける縦横の部屋形状制限値を示す図、図12は空気調和機100の能力帯にから求まる縦横距離条件を示す図、図13は能力2.2kw時の中央据付時条件を示す図、図14は能力2.2kw時の左コーナー据付時(使用者から見て)の場合を示す図、図15は空気調和機100の能力2.2kw時に、リモコンの据付位置ボタンが中央に設定された際の熱画像データ上の床面と壁面との位置関係を示す図、図16は温度ムラによる部屋形状の算出フローを示す図、図17は図15の熱画像データ上にて壁面と床面との境界となる上下の画素間を示す図、図18は図17にて設定した境界線60の位置に対し、下方向に1画素そして上方向に2画素の合計3画素間において上下画素間の生じている温度を検知する図、図19は画素検知領域内において、温度ムラ境界を検知する温度ムラ境界検知部53により閾値を超えた画素、または、傾きの最大値を超えた画素を黒色にてマーキングしている図、図20は温度ムラによる境界線を検知した結果を示す図、図21は熱画像データ上において、境界線の下部に引かれた各素子の座標点(X,Y)を床面座標変換部55が床面座標点として変換し、床面18に投影した図、図22は能力2.2KW、リモコン中央据付条件時における初期設定条件での正面壁19位置付近の温度差を検知する対象画素の領域を示す図、図23は床面18に各熱画像データの境界線素子座標を投影した図21において、図22に示した正面壁19位置付近を検知する各素子の散布素子座標点の平均を求め正面壁19と床面18との壁面位置を求めた図、図24は人体検知位置履歴による部屋形状の算出フローを示す図、図25は直前の背景画像と人体の存在する熱画像データとの差分を行い、閾値A並びに閾値Bをもって人体の検知を判断する結果を示す図、図26は熱画像データ差分から求めた人体検知位置を床面座標変換部55にて座標変換を行った人位置座標(X,Y)点として、X軸、Y軸毎にカウント積算した様子を示す図、図27は人体位置履歴による部屋形状の判定結果を示す図、図28はL字型部屋形状のリビングにおける人体検知位置履歴の結果を示す図、図29は横方向X座標における、床面領域(X座標)に蓄積されたカウント数を示す図、図30は図29にて求めた床面領域(X座標)を領域A・B・Cと均等3分割を行い、蓄積された最大の蓄積数値がどこの領域に存在するかを求め、同時に各領域毎の最大値と最小値を求る図、図31は領域C内に蓄積データの最大蓄積数が存在する場合、最大蓄積数に対して90%以上のカウント数が領域内にγ本(0.3m毎に分解される領域の中の数)以上あることをもって判断する手段を示す図、図32は領域A内に蓄積データの最大蓄積数が存在する場合、最大蓄積数に対して90%以上のカウント数が領域内にγ本(0.3m毎に分解される領域の中の数)以上あることをもって判断する手段を示す図、図33はL字型部屋形状であると判断された場合、最大の蓄積数に対し50%以上の個所を求める図、図34は図33にて求めたL字型部屋形状の床面と壁面との境界点と閾値A以上におけるX座標、Y座標の床面領域から求めたL字型部屋形状の床面領域形状を示す図、図35は三つの情報を統合するフローを示す図、図36は能力2.8kw、リモコン据付位置条件中央にて温度ムラ検知による部屋形状の結果を示す図、図37は左壁面16までの距離が左壁最大の距離を超えている状態である場合は、左壁最大の位置まで縮小させた結果を示す図、図38は修正後の図37の部屋形状面積が面積最大値19m2以上に大きな場合は、正面壁19の距離を最大面積19m2になるまで下げて調整した結果を示す図、図39は左壁面までの距離が左壁最小に満たない場合に左壁最小の領域まで拡大することにより調整した結果を示す図、図40は修正後の部屋形状面積を算出することにより適正面積内にあるか否を判断する例を示す図、図41は各壁面間距離である、正面壁19までの距離Y座標Y_front、右壁面17のX座標X_right、左壁面16のX座標X_lightを求めた結果を示す図、図42は統合条件にて求められた正面壁19、左右壁(左壁面16、右壁面17)間のそれぞれの距離から求められた床面境界線上の各座標点を熱画像データに逆投影させた図、図43それぞれの各壁領域を太線で囲った図、図44は床面18の手前側領域に対して左右方向5分割の領域(A1、A2、A3、A4、A5)に分けた図、図45は床面の奥側領域に対して前後3分割の領域(B1、B2、B3)に分けた図、図46は計算式にて求めた輻射温度の一例を示す図、図47はカーテンの開閉状態を検知する動作のフローチャート図、図48は暖房運転時の右壁面の窓のカーテンが開いている状態のときの熱画像データを示す図、図49は静電霧化装置300の概略構成図、図50は静電霧化装置300の側面図、図51は水供給手段の冷却部108の概略構成図、図52は水印加電極102の概略構成図、図53は水印加電極102の変形例の概略構成図、図54は変形例1の静電霧化装置400の側面図、図55は変形例2の静電霧化装置500の側面図、図56は変形例2の静電霧化装置500に用いる水印加電極102の上面図、図57は変形例3の静電霧化装置600の側面図、図58は変形例4の静電霧化装置700の側面図、図59は変形例5の静電霧化装置800の側面図、図60は水印加電極102に用いる発泡金属の説明用拡大概念図、図61は発泡金属と比較例との吸水量を比較した図、図62は発泡金属と比較例との電気抵抗率を比較した図、図63は発泡金属と比較例との静電霧化量を比較した図、図64は発泡金属の素材の違いによるオゾン発生量を比較した図、図65は静電霧化装置300〜800のいずれかを備えた空気調和機200の縦断面図、図66は空気調和機の断面図、図67は空気調和機の風向制御に関わる駆動部分の構造を示す風向制御駆動部構造図、図68は空気調和機の左右風向制御板の図示を省略した正面図、図69は空気調和機の上下風向制御板の図示を省略した正面図、図70は空気調和機本体が壁上部に取り付けられた部屋を示す図で、室内空間が15のエリア区画に分割された状態で空気調和機が認識していることを示す図、図71は空気調和機の制御装置215を構成するマイクロコンピュータを示すブロック図、図72は空気調和機が室内空間を15のエリア区画に分割された状態で認識していることを真上から見た状態を示す図、図73は空気調和機の認識している15の二次元状のエリア区画から成るエリア区画群において、エリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときに空気調和機が認識している状態を示す図、図74は空気調和機のエリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときに左右風向制御用ステッピングモーターを駆動させる際の設定値を決める奥行き方向一次元データの作成状況を示す図、図75は空気調和機の左右風向制御板の動作を決定する左右風向設定表を示す図、図76は空気調和機の認識している15の二次元状のエリア区画から成るエリア区画群を左右方向に3つの領域に分割した状態を示す図、図77は空気調和機のエリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときに上下風向制御用ステッピングモーターを駆動させる際の設定値を決める左右方向一次元データの作成状況を示す図、図78は空気調和機の上下風向制御板(左)206aと上下風向制御板(右)206bの動作を決めるための上下風向制御板(左)−(右)動作決定表を示す図、図79は空気調和機の上下風向制御板の動作を決定する上下風向設定表を示す図、図80は空気調和機のエリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときの風向動作を示す斜視図、図81は空気調和機のエリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときの左右風向制御板の図示を省略した正面図、図82は空気調和機のエリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときの上下風向制御板の図示を省略した正面図、図83は空気調和機の空気調和機本体が壁上部に取り付けられた部屋を示す図で、エリア区画A2とエリア区画E2の2つのエリア区画に人体が検出されたときの空気調和機の風向動作状態を示す図である。
図1乃至図3により、空気調和機100(室内機)の全体構成を説明する。図1、図2共に、空気調和機100の外観斜視図であるが、見る角度が異なる点と、図1は上下フラップ43(上下風向制御板、左右に2個)が閉じているのに対して、図2は上下フラップ43が開き奥の左右フラップ44(左右風向制御板、多数)が見えている点とが異なる。
図1〜図3に示すように、空気調和機100(室内機)は、略箱状の室内機筺体40(本体と定義する)の上面に部屋の空気を吸い込む吸込口41が形成されている。
また、前面の下部に調和空気を吹き出す吹出口42が形成されていて、吹出口42には吹き出し風の風向を制御する上下フラップ43と、左右フラップ44とが設けられる。上下フラップ43は吹き出し風の上下風向を制御し、左右フラップ44は吹き出し風の左右風向を制御する。
室内機筺体40の前面の下部で、吹出口42の上に、赤外線センサ3が設けられている。赤外線センサ3は、俯角約24.5度の角度で下向きに取り付けられている。
俯角とは、赤外線センサ3の中心軸と水平線とがなす角度である。別の言い方をすると、赤外線センサ3は、水平線に対して約24.5度の角度で下向きに取り付けられている。
図3に示すように、空気調和機100(室内機)は、内部に送風機45を備え、該送風機45を囲むように熱交換器46が配置されている。
送風機45には、径が比較的小さく横に長いファンをもつクロスファローファンを用いる。クロスフローファンは、プロペラファンのように発生した風が渦巻き状にならず、ファンの長さの幅の静かな層流となる。静圧が低く大きな風量を得ることができる。
クロスファローファンは、別名、ラインフローファン(登録商標)、タンジェンシャルファン、横流ファン、または、貫流ファンともいう。羽根車の一方の半径方向から吸い込み、90°(直角)程度の半径方向から送風するもので、吹き出し口の長さを長くすることが容易なので、壁掛け型空気調和機の室内機ファン、カーテンウオール部のスリット型吹き出し口等に用いられる。
熱交換器46は、室外機(図示せず)に搭載された圧縮機等と接続されて冷凍サイクルを形成している。冷房運転時は蒸発器として、暖房運転時は凝縮器として動作する。
熱交換器46は、側面視の断面形状が略逆V字形状である。熱交換器46は、前面上部熱交換器46a、前面下部熱交換器46b、背面熱交換器46cで構成される。
また、熱交換器46は、伝熱管とフィンとで構成されるクロスフィンチューブ型熱交換器である。
吸込口41から送風機45により室内空気が吸い込まれ、熱交換器46で冷凍サイクルの冷媒と熱交換を行い調和空気を生成し、送風機45を通過して吹出口42から調和空気が室内へ吹き出される。
吹出口42では、上下フラップ43と左右フラップ44とにより、上下方向及び左右方向の風向が制御される。図3では、上下フラップ43は閉じている。
図4に示すように、赤外線センサ3は、金属缶1内部に8個の受光素子(図示せず)を縦方向に一列に配列している。金属缶1の上面には、8個の受光素子に赤外線を通すためのレンズ製の窓(図示せず)が設けられている。各受光素子の配光視野角2は、縦方向7度、横方向8度である。尚、各受光素子の配光視野角2が、縦方向7度、横方向8度のものを示したが、縦方向7度、横方向8度に限定されるものではない。各受光素子の配光視野角2に応じて、受光素子の数は変化する。例えば、1個の受光素子の縦配光視野角と受光素子の数との積が一定になるようにすればよい。
赤外線センサ3付近を裏側(空気調和機100の内部から)から見た図5に示すように、赤外線センサ3は、筐体5内に収納されている。そして、筐体5の上方に赤外線センサ3を駆動するステッピングモーター6が設けられる。筐体5と一体の取付部7が空気調和機100の前面下部に固定されることにより、赤外線センサ3が空気調和機100に取り付けられる。赤外線センサ3が空気調和機100に取り付けられた状態では、ステッピングモーター6と筐体5は垂直である。そして、筐体5の内部で赤外線センサ3が、俯角約24.5度の角度で下向きに取り付けられている。
赤外線センサ3は、ステッピングモーター6により左右方向に所定角度範囲を回転駆動する(このような回転駆動をここでは、可動する、と表現する)。例えば、図6に示すように、右端端部(a)から中央部(b)を経由して左端端部(c)まで可動する(塗りつぶしなしの矢印で示す)。
左端端部(c)に来ると逆方向に反転して、左端端部(c)から中央部(b)を経由して右端端部(a)まで可動する(塗りつぶしの矢印で示す)。この動作を繰り返す。
赤外線センサ3は、部屋の温度検出対象範囲を左右に走査しながら温度検出対象の温度を検出する。尚、ここでの左右は、空気調和機100側から見た場合の左右である。
ここで、赤外線センサ3による部屋の壁や床の熱画像データの取得方法について述べる。尚、赤外線センサ3等の制御は、所定の動作がプログラムされたマイクロコンピュータによって行われる。所定の動作がプログラムされたマイクロコンピュータを制御部と定義する。以下の説明では、一々夫々の制御を制御部(所定の動作がプログラムされたマイクロコンピュータ)が行うという記載は省略する。
部屋の壁や床の熱画像データを取得する場合、赤外線センサ3をステッピングモーター6により左右方向に可動し、ステッピングモーター6の可動角度(赤外線センサ3の回転駆動角度)1.6度毎に各位置で赤外線センサ3を所定時間(0.1〜0.2秒)停止させる。
赤外線センサ3を停止した後、所定時間(0.1〜0.2秒より短い時間)待ち、赤外線センサ3の8個の受光素子の検出結果(熱画像データ)を取り込む。
赤外線センサ3の検出結果を取り込み終了後、再びステッピングモーター6を駆動(可動角度1.6度)した後停止し、同様の動作により赤外線センサ3の8個の受光素子の検出結果(熱画像データ)を取り込む。
上記の動作を繰り返し行い、左右方向に94箇所の赤外線センサ3の検出結果をもとに検知エリア内の熱画像データを演算する。
ステッピングモーター6の可動角度1.6度毎に94箇所で赤外線センサ3を停止させて熱画像データを取り込むので、赤外線センサ3の左右方向の可動範囲(左右方向に回転駆動する角度範囲)は、約150.4度である。
図7は空気調和機100を部屋の床面から1800mmの高さに据付けた状態で、8個の受光素子が縦に一列に配列された赤外線センサ3の縦断面における縦配光視野角を示す。
図7に示す角度7°は、1個の受光素子の縦配光視野角である。
また、図7の角度37.5°は、赤外線センサ3の縦視野領域に入らない領域の空気調和機100が取り付けられた壁からの角度を示す。赤外線センサ3の俯角が0°であれば、この角度は、90°−4(水平より下の受光素子の数)×7°(1個の受光素子の縦配光視野角)=62°になる。本実施の形態の赤外線センサ3は、俯角が24.5°であるから、62°−24.5°=37.5°になる。
図8は8畳相当の部屋で主婦12が幼児13を抱いている一生活シーンを赤外線センサ3を左右方向に可動させながら得られた検出結果をもとに熱画像データとして演算した結果を示す。
図8は季節が冬で、且つ天候が曇りの日に取得した熱画像データである。従って、窓14の温度は、10〜15℃と低い。主婦12と幼児13の温度が最も高い。特に、主婦12と幼児13の上半身の温度は、26〜30℃である。このように、赤外線センサ3を左右方向に可動させることにより、例えば、部屋の各部の温度情報を取得することができる。
次に、空気調和機の能力帯と、空調運転時に生じる床面と壁面との温度差(温度ムラ)情報と、人体検知位置の履歴とから総合判断して部屋形状を決定する部屋形状検知手段(空間認識検知)について述べる。
赤外線センサ3にて取得する熱画像データにより、空調している空調エリア内の床面広さを求め、熱画像上の空調エリア内における壁面位置を求める。
熱画像上で床面、壁面(壁面とは、空気調和機100から見た正面壁、並びに左右の壁面)の領域が解ることから、個々の壁面平均温度を求めることが可能となり、熱画像上にて検出された人体に対する壁面温度を考慮した精度のよい体感温度を求めることが可能となる。
熱画像データ上で床面広さを求める手段は、下記に示す三つの情報を統合することで、精度のよい床面広さの検知並びに部屋形状を検知可能とする。
(1)空気調和機100の能力帯並びにリモコンの据付位置ボタン設定から求める形状制限値および初期設定値の部屋形状;
(2)空気調和機100の運転中に生じる床と壁の温度ムラから求まる部屋形状;
(3)人体検知位置履歴から求まる部屋形状。
リモコンの据付位置ボタンは、リモコンの所定の位置(通常は使用しない箇所、例えば、電池収納部)に設けられ、空気調和機の据付時に据付業者が設定する場合が多い。人から見て空気調和機が部屋の右、中央、左のどこに据え付けられたかにより、リモコンの据付位置ボタンはそれに合わせて設定される。
空気調和機100は、空調する部屋の広さを基準に対応する能力帯に分けられている。図9は空気調和機100の能力帯により規定された冷房運転時の畳目安ならびに広さ(面積[m2])を示した図である。例えば、空気調和機100の能力2.2kwの場合は、冷房運転時における空調広さの畳目安は6〜9畳となる。6畳から9畳の広さ(面積)は、10〜15m2である。
図10は、図9記載の能力毎の広さ(面積)の最大面積を用いることで、能力毎における床面の広さ(面積)を規定した図である。能力2.2kwの場合、図9の広さ(面積)の最大面積は15m2となる。15m2の平方根を求めることで縦横比率を1:1とした場合の縦横の距離は各3.9mとなる。最大面積15m2を固定し、縦横比率を1:2〜2:1の範囲で可変させた場合の縦横の距離で、縦横の最大距離と最小距離を設定する。能力2.2kwの場合、縦の最大距離は5.5m、縦の最小距離は2.7mである。また、横の最大距離は5.5m、横の最小距離は2.7mである。
図11に、能力2.2kwにおける縦横の部屋形状制限値の図を示す。能力毎の最大面積15m2の平方根より縦横比率1:1の場合の縦横の各距離は3.9mとなる。最大面積15m2を固定し、縦横比率を1:2〜2:1の範囲で可変させた場合の縦横の距離で、縦横の最大距離を設定する。縦横比率1:2の場合は、縦2.7m:横5.5mとなる。同様に縦横比率2:1の場合は、縦5.5m:横2.7mとなる。
図12に空気調和機100の能力帯から求まる縦横距離条件を示す。図12の初期値の値は、能力毎における対応面積の中間面積の平方根から求めている。例えば能力2.2kwの適応面積は10〜15m2となり、中間面積は12m2となる。12m2の平方根より初期値3.5mを求めている。以下能力帯毎における初期値の縦横距離の算出は同様な考え方から求めている。同時に最小値(m)、最大値(m)は図10の算出の通りである。
従って、空気調和機100の能力毎により求まる部屋形状の初期値は、図12の初期値[m]を縦横の距離とする。但し、リモコンからの据付位置条件(部屋の右、中央、左)により空気調和機100の設置位置の原点を可変することとする。
図13に、能力2.2kw時の中央据付時条件を示す。図13に示すように、初期値の横距離中間地点を空気調和機100の原点とする。空気調和機100の原点は、縦横3.5mの部屋の中央部(横から1.8m)の位置関係となる。
図14に、能力2.2kw時の左コーナー据付時(使用者から見て)の場合を示す。コーナー据付時の場合は、左右に近いほうの壁までの距離を空気調和機100の原点から(横幅の中心点)0.6mの距離とする。
従って、(1)空気調和機100の能力帯並びにリモコンの据付位置ボタン設定から求める形状制限値および初期設定値の部屋形状は、上記記載の条件にて空気調和機100の能力帯から設定された床面広さに、リモコンの据付位置条件をもって空気調和機100の据付位置を決めることで、赤外線センサ3から取得される熱画像データ上に床面と壁面との境界線を求めることを可能としている。
図15に、空気調和機100の能力2.2kw時に、リモコンの据付位置ボタンが中央に設定された際の熱画像データ上の床面と壁面との位置関係を示す。赤外線センサ3側から見て左壁面16、正面壁19、右壁面17、そして床面18が熱画像データ上に示されている様子がうかがえる。初期設定時における能力2.2kwの床面形状寸法は図13に示す通りである。以下、左壁面16、正面壁19、右壁面17をまとめて壁面と呼ぶ。
次に、(2)空気調和機100の運転中に生じる床と壁の温度ムラから求まる部屋形状の算出手段について説明する。図16に、温度ムラによる部屋形状の算出フローを示す。上記記述の赤外線センサ3を駆動する赤外線センサ駆動部51から、赤外線画像取得部52にて熱画像データとして生成された縦8*横94の熱画像上において、基準壁位置算出部54にて、熱画像データ上における温度ムラ検知を行う範囲を制約することを特徴とする。
以下、図15における、空気調和機の能力2.2KW時でリモコン据付条件が中央時条件にて基準壁位置算出部54の機能説明を行う。
図17は、図15の熱画像データ上に壁面と床面18との境界となる上下の画素間の境界線60を示している。境界線60より上の画素が壁面温度を検知する配光画素となり、境界線60より下側の画素が床面温度を検知する配光画素となる。
そして、図18において、図17にて設定した境界線60の位置に対し、下方向に1画素そして上方向に2画素の合計3画素間において、上下画素間の生じている温度を検知することを特徴とする。
全熱画像データすべての画素間にて温度差を探すのではなく、壁面と床面との境界線60上を中心に温度差を検知して壁面と床面との境界線60上に生じる温度を検知することを特徴とする。
全画素検知による余分なソフト演算処理の低減(演算処理時間の短縮と負荷低減)と誤検知処理(ノイズデバンス処理)を併せ持つことを特徴とする。
次に上記記載の画素間領域に対する、温度ムラによる境界を検知する温度ムラ境界検知部53は、
(a)床面温度と壁面温度の熱画像データから得られる絶対値による判断手段、(b)検知領域内における上下画素間における温度差の奥行き方向における傾き(1次微分)の最大値による判断手段、(c)検知領域内における上下画素間における温度差の奥行き方向における傾きの傾き(2次微分)の最大値による判断手段のいずれか一つの手段により境界線60を検知可能とすることを特徴とする。
図19は、上記画素検知領域内において、温度ムラ境界を検知する温度ムラ境界検知部53により閾値を超えた画素、または、傾きの最大値を超えた画素を黒色にてマーキングしている。また、上記の温度ムラ境界を検知する閾値または最大値を超えない個所については、マーキングを実施してはいないことを特徴とする。
図20は、温度ムラによる境界線を検知した結果を示す。画素間の境界線を線引きする条件は、温度ムラ境界検知部53において、閾値または最大値を超えた黒マーキングされた画素の下部、そして検知領域のおける上下画素間において閾値または、最大値を超えていない列においては、図17にて基準壁位置算出部54にて初期設定を行った画素間の基準位置にて線引きすることを条件とする。
そして、熱画像データ上において、境界線の下部に引かれた各素子の座標点(X,Y)を、床面座標変換部55が床面座標点として変換し、床面18に投影したものが図21となる。94列分の境界線60の下部に引かれた素子座標が投影される結果となることが理解できる。
図22は、能力2.2kw、リモコン中央据付条件時における初期設定条件での正面壁19位置付近の温度差を検知する対象画素の領域を示す。
先に、床面18に各熱画像データの境界線素子座標を投影した図21において、図22に示した正面壁19位置付近を検知する各素子の散布素子座標点の平均を求め正面壁19と床面18との壁面位置を求めたものが図23となる。
正面壁境界線線引き手段と同様な考え方で、右壁面17並びに左壁面16に対応する各素子の散布素子座標点の平均で境界線を引くこととする。そして左右の左壁面境界線20、右壁面境界線21と正面壁境界線22とを結んだ領域が床面領域となる。
また、より温度ムラ検知による精度のよい床壁境界線を線引きする手段として、図22にて正面境界線を求める領域の素子座標Yの平均値と標準偏差σを求めることで、σ値が閾値以下になる素子対象のみで平均値を再計算する手段もある。
同様に左右壁面境界線算出においても、各素子座標Xの平均値と標準偏差σを用いることは可能である。
また、左右壁面境界線を算出する他の一つの手段は、正面壁境界線算出により求まったY座標、つまり空気調和機100据付け側の壁面からの距離に対して、Y座標間距離の中間領域1/3〜2/3に分布された各素子のX座標の平均を用いて左右壁面間の境界線を求めることも可能である。いずれの場合においても問題がない。
上記手段による正面左右壁位置算出部56にて求めることができた空気調和機100の据付位置を原点とした正面壁19までの距離Yと、左壁面16までの距離X_leftと、右壁面17までの距離X_rightとを検知履歴蓄積部57にて各距離総和として積算すると共に距離検出カウンタとして回数を積算していき、検知距離の総和とカウント数との割り算をもって平均化された距離を求めることとする。左右壁についても同様な手段にて求めるものとする。
尚、検知履歴蓄積部57にてカウントする検知回数が閾値回数より多くなっている場合に限り、温度ムラによる部屋形状の判定結果を有効とする。
次に、(3)人体検知位置履歴から求まる部屋形状の算出について説明する。図24に人体検知位置履歴による部屋形状の算出フローを示す。人体検出部61は、赤外線センサ3を駆動する赤外線センサ駆動部51の出力から赤外線画像取得部52にて熱画像データとして生成された縦8*横94の熱画像データを、直前の熱画像データとの差分を取ることで人体の位置を判断することを特徴としている。
人体の有無ならびに人体の位置を検出する人体検出部61は、熱画像データの差分を取る際に、人体の比較的表面温度の高い頭部付近を差分検知可能とする閾値Aと、やや表面温度の低い足元部分の差分検知可能とする閾値Bを個々に持つことを特徴としている。
図25は、直前の背景画像と人体の存在する熱画像データとの差分を行い、閾値A並びに閾値Bをもって人体の検知を判断している。閾値Aを超える熱画像データの差分領域を人体頭部付近と判断し、閾値Aにて求めた領域に隣接する閾値Bを超える熱画像差分領域を求める。その際、閾値Bにて求まる差分領域は、閾値Aにて求められた差分領域に隣接していることを前提とする。つまり、閾値Bを超えたのみの差分領域は人体とは判断しない。熱画像データ間の差分閾値の関係は、閾値A>閾値Bとなることを示す。
この手段により求めた人体の領域は、人体の頭部から足元までの領域を検知することを可能とし、人体の足元個所を示す差分領域最下端部の中央部分の熱画像座標X、Yを持って人体位置座標(X,Y)とする。
熱画像データの差分により求められた人体の足元位置座標(X,Y)を左記の温度ムラ検知時に説明した図21のように床面座標点として変換する床面座標変換部55を介して、人体位置履歴蓄積部62は人体位置履歴を蓄積していくことを特徴とする。
図26は熱画像データ差分から求めた人体検知位置を床面座標変換部55にて座標変換を行った人位置座標(X,Y)点として、X軸、Y軸毎にカウント積算した様子を示す。人体位置履歴蓄積部62において、図26に示すように、横方向X座標並びに奥行きY座標の最小分解は0.3m毎とする領域を確保し、軸毎に0.3m間隔にて確保された領域に人位置検知毎に発生する位置座標(X,Y)を、当てはめカウントしていくものとする。
この人体位置履歴蓄積部62からの人体検知位置履歴情報により、部屋形状である床面18、壁面(左壁面16、右壁面17、正面壁19)を壁位置判断部58にて求める。
図27は人体位置履歴による部屋形状の判定結果を示す。横方向X座標並びに奥行きY座標に蓄積された最大の蓄積数値に対して10%以上の領域の範囲をもって床面領域と判断することを特徴とする。
次に、人体検知位置履歴の蓄積データから部屋形状が長方形(正方形)なのか、L字型形状であるのかを推定し、L字型部屋形状の床面18と壁面(左壁面16、右壁面17、正面壁19)付近の温度ムラを検知することで精度のよい部屋形状を算出する例を説明する。
図28は、L字型部屋形状のリビングにおける人体検知位置履歴の結果を示す。横方向X座標並びに奥行きY座標の最小分解は0.3m毎とする領域を確保され、軸毎に0.3m間隔にて確保された領域に人体検知毎に発生する位置座標(X,Y)を当てはめカウントしていくものである。
当然、人体はL字の部屋形状内を移動することから、左右方向の床面領域(X座標)並びに奥行方向の床面領域(Y座標)に蓄積されるカウント数は、各X,Y座標毎の奥行き領域(面積)に比例する形になる。
人体検知位置履歴の蓄積データから部屋形状が長方形(正方形)なのか、L字型形状であるのか判断する手段を説明する。
図29は、横方向X座標における、床面領域(X座標)に蓄積されたカウント数を示している。閾値Aは蓄積された最大の蓄積数値に対して10%以上をもって床面X方向の距離(幅)と判断することを特徴としている。
そして、図30に示すように、図29にて求めた床面領域(X座標)を領域A・B・Cと均等3分割を行い、蓄積された最大の蓄積数値がどこの領域に存在するかを求め、同時に各領域毎の最大値と最小値を求ることを特徴としている。
蓄積された最大の蓄積数値が領域C(または領域A)に存在し、領域C内における最大値と最小値との差がΔα以内であることと、領域Cの最大蓄積数値と領域A内における最大蓄積数との差がΔβ以上のとき、L字型部屋形状であると判断する。
各領域毎の最大値と最小値との差Δαを求めることは、人体検知位置履歴の蓄積データから部屋形状を推定するためのノイズデバンス処理の一つである。図31に示すように、領域C内に蓄積データの最大蓄積数が存在する場合、最大蓄積数に対して90%以上のカウント数が領域内にγ本(0.3m毎に分解される領域の中の数)以上あることをもって判断する手段もある。領域Cにて上記演算処理を実施後、領域Aにても同様な演算を行うことでL字型部屋形状であることを判断する(図32参照)。
上記によりL字型部屋形状であると判断された場合は、図33に示すように、最大の蓄積数に対し50%以上の個所を求める。本説明は横方向のX座標をもって説明しているが、奥行き方向のY座標における蓄積データにおいても同様である。
横方向のX座標並びに、奥行き方向のY座標の床面領域における最大の蓄積数に対する50%以上の閾値Bを境とする座標点をL字型部屋形状の床と壁面との境界点であると判断することを特徴とする。
図34は、図33にて求めたL字型部屋形状の床面と壁面との境界点と閾値A以上におけるX座標、Y座標の床面領域から求めたL字型部屋形状の床面領域形状を示す。
上記で求めたL字型形状の床面形状結果を温度ムラ部屋形状アルゴリズムにおける基準壁位置算出部54にフィードバックし、熱画像データ上における温度ムラ検知を行う範囲を再計算させることを特徴とする。
次に部屋形状を求める三つの情報を統合する方法について説明する。但し、L字型形状の床面形状結果を温度ムラ部屋形状アルゴリズムにおける基準壁位置算出部54にフィードバックし、熱画像データ上における温度ムラ検知を行う範囲を再計算させる処理は、ここでは除く。
図35に三つの情報を統合するフローを示す。(2)空気調和機100運転中に生じる床面18と壁面との温度ムラから求まる部屋形状は、温度ムラ境界検知部53により検知履歴蓄積部57にてカウントする検知回数が閾値回数より多くなっている場合に限り、温度ムラ有効性判定部64にて、温度ムラによる部屋形状の判定結果を有効とする。
同様に、(3)人体検知位置履歴から求まる部屋形状による人体位置履歴蓄積部62から求まる部屋形状も、人体位置履歴蓄積部62が人体位置履歴を蓄積する人体検知位置履歴回数が閾値回数より多くなっている場合に限り、人体位置有効性判定部63にて、人体検知位置履歴による部屋形状の判定結果を有効とする前提条件のもとで、壁位置判断部58にて下記の条件により判断を行う。
イ.(2)と(3)共に無効の場合は、(1)による空気調和機100の能力帯並びにリモコンの据付位置ボタン設定から求める初期設定値の部屋形状とする。
ロ.(2)が有効で(3)が無効の場合は、(2)による出力結果を部屋形状とする。ただし(2)の部屋形状が(1)の図12にて決まる辺の長さに収まらない場合、または面積に収まらない場合は、その範囲に伸縮させることとする。ただし、面積により伸縮させる場合は、正面壁19までの距離をもって修正させることとする。
具体的な修正方法について説明を行う。能力2.8kw、リモコン据付位置条件中央にて温度ムラ検知による部屋形状の結果を図36に示す。図12より、空気調和機100の能力2.8kw時における縦横の辺の長さの最小値は3.1m、最大値は6.2mとなる。そのためリモコン中央据付条件から、右側の壁面までの距離X_right並びに左側の壁面までの距離X_leftの制限距離は、図12の半分となるように決める。そのため、図中に示した右壁最小/左壁最小の距離は1.5m、右壁最大/左壁最大の距離は3.1mとなる。図36に示した温度ムラによる部屋形状のように、左壁面16までの距離が左壁最大の距離を超えている状態である場合は、図37に示すように左壁最大の位置まで矢印の方向に縮小させることとする。
同様に、図36に示すように右壁までの距離が右壁最小と右壁最大の間に位置する場合は、そのままの位置関係を維持することとする。図37のように左壁最大に縮小した後、部屋形状の面積を求め、図12に示す能力2.8kw時の面積範囲13〜19m2の適正範囲内になっているか確認する。
仮に修正後の図37の部屋形状面積が面積最大値19m2以上に大きな場合は、図38に示すように、正面壁19の距離を最大面積19m2になるまで矢印の方向に下げることで調整することとする。
図39に示すケースも同様に、左壁面16までの距離が左壁最小に満たない場合は、左壁最小の領域まで矢印の方向に拡大することとなる。
その後、図40に示すように、修正後の部屋形状面積を算出することにより適正面積内にあるか否を判断することとする。
ハ.(2)が無効で(3)が有効の場合も、(3)による出力結果を部屋形状とする。上記(2)が有効で(3)が無効の場合のロと同様に、(1)で決まる辺の長さ、面積の制限に適合するように修正を行うこととする。
ニ.(2)、(3)ともに有効の場合は、(2)の温度ムラによる部屋形状を基準として、それより(3)の人体検知位置履歴による部屋形状の方が、壁までの距離が狭い面があった場合は、最大0.5mの幅で(2)の温度ムラによる部屋形状の出力(面積)を狭める方向に修正する。
逆に、(3)の方が広い場合は修正を行わないこととする。そして、修正後の部屋形状に関しても(1)で決まる辺の長さ、面積の制限に適合するように修正を加える(合わせる)。
上記の統合条件より、図41に示すように各壁面間距離である、正面壁19(図15)までの距離Y座標Y_front、右壁面17(図15)のX座標X_right、左壁面16(図15)のX座標X_leftを求めることができる。
次に床壁輻射温度の算出について説明する。上記の統合条件にて求められた正面壁19、左右壁(左壁面16、右壁面17)間のそれぞれの距離から求められた床面境界線上の各座標点を、熱画像データに逆投影させたものを図42に示す。
図42の熱画像データ上にて、床面18の領域、正面壁19、左壁面16、右壁面17の領域が区切られる様子が理解できる。
まず壁面温度の算出に関しては、熱画像データ上にて求められた各壁領域の熱画像データから求まる温度データの平均を壁温度とする。
図43に示すように、各壁領域を太線で囲った領域がそれぞれの各壁領域となる。
次に床面18の温度領域について説明する。熱画像データ上の床面領域を、例えば、左右方向に5分割、奥行き方向に3分割の合計15分割の領域に細分する。尚、分割する領域の数は、これに限定されるものではなく、任意でよい。
図44に示す例は、床面18の手前側領域に対して左右方向5分割の領域(A1、A2、A3、A4、A5)に分けたものである。
同様に図45にて、床面の奥側領域に対して前後3分割の領域(B1、B2、B3)に分けたものである。いずれも領域毎に前後左右の床面領域が重なり合っていることを特徴としている。従って、熱画像データ上には、正面壁19、左壁面16、右壁面17の温度並びに15分割された床面温度の温度データが生成されることとなる。分割された各床面領域の温度は、夫々の平均温度とする。この熱画像データ上に領域分けされた各温度情報をもとに、熱画像データが撮像する居住エリア内における各人体の輻射温度を求めることを特徴とする。
以下に示す計算式にて各人体毎の床面並びに壁面からの輻射温度を求める。
ここで、
T_calc:輻射温度
Tf.ave:人体が検知された場所の床面温度
T_left:左壁面温度
T_front:正面壁温度
T_right:右壁面温度
Xf:人体検知位置のX座標
Yf:人体検知位置のY座標
X_left:左側壁面間距離
Y_front:正面壁面間距離
X_right:右側壁面間距離
α、β、γ:補正係数
人体が検知された場所における、床面温度と、各壁面の壁面温度と、各壁面間距離の影響を考慮した輻射温度の算出を行うことが可能となっている。
図46に上記計算式にて求めた輻射温度の一例を示す。熱画像データ上にて被験者A並びに被験者Bが熱画像データ上にて撮像する居住空間内にて検知された条件にて、輻射温度を試算している。正面壁温度T_front:23℃、T_left:15℃、T_right:23℃、被験者Aの床面温度Tf.ave=20℃、被験者Bの床面温度Tf.ave=23℃、輻射温度演算式上の補正係数はすべて1にて計算した結果、被験者Aの輻射温度Tcalc=18℃、被験者Bの輻射温度Tcalc=23℃と求めることができる。
従来床面18のみの温度にて輻射温度を計算していたが、部屋形状を認識することで求められる壁面温度からの輻射温度を考慮することが可能となり、人体が体全体にて体感する輻射温度を求めることが可能となった。
次に、上述の部屋形状を認識することで求められる壁面温度を利用して、カーテンの開閉状態を検知する例について説明する。空調中の部屋において、カーテンを開けた状態より閉めた状態の方が空調効率が良い場合が多いため、カーテンを開いていることを検知した場合は、空気調和機100の利用者にカーテンを閉めるように促すことができるようにするためである。
図47のフローチャートにより、カーテンの開閉状態を検知するフローについて説明する。
尚、以下に示す制御は、所定の動作がプログラムされたマイクロコンピュータによって行われる。ここでも、所定の動作がプログラムされたマイクロコンピュータを制御部と定義する。以下の説明では、一々夫々の制御を制御部(所定の動作がプログラムされたマイクロコンピュータ)が行うという記載は省略する。
熱画像取得部301は、赤外線センサ3を温度検出対象範囲を左右に走査して温度検出対象の温度を検出するにより熱画像を取得する。
既に述べたように、部屋の壁や床の熱画像データを取得する場合、赤外線センサ3をステッピングモーター6により左右方向に可動し、ステッピングモーター6の可動角度(赤外線センサ3の回転駆動角度)1.6度毎に各位置で赤外線センサ3を所定時間(0.1〜0.2秒)停止させる。赤外線センサ3を停止した後、所定時間(0.1〜0.2秒より短い時間)待ち、赤外線センサ3の8個の受光素子の検出結果(熱画像データ)を取り込む。赤外線センサ3の検出結果を取り込み終了後、再びステッピングモーター6を駆動(可動角度1.6度)した後停止し、同様の動作により赤外線センサ3の8個の受光素子の検出結果(熱画像データ)を取り込む。上記の動作を繰り返し行い、左右方向に94箇所の赤外線センサ3の検出結果をもとに検知エリア内の熱画像データを演算する。
床壁検知部302は、前述の制御部が、赤外線センサ3を走査して部屋の熱画像データを取得し、熱画像データ上で、以下に示す三つの情報を統合することで、空調している空調エリア内の床面広さを求め、熱画像データ上の空調エリア内における壁領域(壁面位置)を検知する。
(1)空気調和機100の能力帯並びにリモコンの据付位置ボタン設定から求める形状制限値および初期設定値の部屋形状;
(2)空気調和機100の運転中に生じる床と壁の温度ムラから求まる部屋形状;
(3)人体検知位置履歴から求まる部屋形状。
熱画像取得部301で取得した熱画像から、前述の処理で生成した背景熱画像(図43)に対して、以下で説明する温度条件判定部(室温判定部303、外気温判定部304)の処理を適用することにより、現在の温度条件が窓状態の検知が必要な状態かどうかを判定する。
窓状態の検知が必要な状態とは、例えば暖房運転時であれば、室温に対し外気温度が一定温度(例えば5℃)より低く、窓が冷えており、カーテンを開けた状態では暖房効率が悪い状態を示す。
逆に冷房時であれば、室温に対し外気温度が一定温度(例えば5℃)より高く、窓が温まっており、カーテンを開けた状態では冷房効率が悪い状態を示す。
温度条件判定部の室温判定部303は、室温を検知する手段である。室温は、以下に示す方法で概算することができる。
(1)背景熱画像の画像全体の平均温度;
(2)背景熱画像の床領域の平均温度;
(3)空気調和機100の室内機筺体40(本体)の吸込口41に搭載された室温サーミスタ温度計(図示せず)の値。
外気温判定部304は、外気温度を検知する手段である。外気温度は、以下に示す方法で概算することができる。
(1)空気調和機100の室外機(図示せず)に搭載の外気温サーミスタ温度計(図示せず)の値;
(2)または、以下の方法で代用しても窓状態の検知が必要な状態かどうかの判定には支障がない。
a.(暖房時)背景熱画像の壁領域中で最も低い温度の領域;
b.(冷房時)背景熱画像の壁領域中で最も高い温度の領域。
室温判定部303、外気温判定部304で検知した室温と外気温度の差が一定値(例えば5℃)以上であれば、以下の窓状態検知部へ処理を進める。
窓状態検知部では、背景熱画像中の顕著な温度差(所定の温度差、例えば5℃、)がある領域を窓領域31(図48)として検知し、その窓領域31の時間変化を監視することと同時にカーテンを閉める動作を検知可能とする。
例えば、暖房時の室内温度分布を赤外線センサ3で撮影したとき、図48に示すような熱画像が得られる。熱画像の中の右壁面の低温部分を窓領域31として検知する。図48では、色の濃さで温度の高低を表している。色の濃い方が、温度が低い。
壁領域内温度差判定部305で、背景熱画像において壁領域内の温度差が一定値(例えば5℃)以上あるかどうかを判定する。壁領域内の温度差は、暖房時、冷房時、部屋の広さ、空調開始後の経過時間等により変化するが、空調時には床温度もしくは室温といった基準温度に対し壁温度は差がある場合が多く、単純に基準温度からの差の閾値処理だけで窓領域31の有無を判定することは難しい。
そこで、壁領域内温度差判定部305では、同じ壁内の温度に顕著な差があれば、窓領域31が存在するという考えに基づき壁領域内の温度差の有無を判定する。
壁領域内温度差判定部305で、壁領域内に顕著な温度差がないとなった場合は窓領域31なしと判定し、以降の処理は行わない。
壁領域内外気温度領域抽出部306で、背景熱画像において壁領域内で外気温度に近い領域を抽出する。つまり冷房時には壁領域内で温度の高い領域を、暖房時には壁領域内で温度が低い領域を抽出する。
背景熱画像において壁領域内で外気温度に近い領域の抽出方法としては、壁領域内の平均温度に対して一定温度(例えば5℃)以上温度の高い(低い)領域を抽出する方法がある。
ただし、壁領域内外気温度領域抽出部306では、微小な領域を誤検出として削除する。例えば、窓の最低サイズを幅80cm×高さ80cmとする。床壁検知部302で検知した床壁の位置と、赤外線センサ3の設置角度とから熱画像上の各位置に窓があった場合の熱画像上の窓のサイズが計算できる。計算で算出した熱画像上の窓のサイズが、窓の最低サイズ以下の広さの領域の場合には、微小な領域として削除する。
窓領域抽出部307で、壁領域内外気温度領域抽出部306で抽出した領域の中で窓領域31である可能性の高い領域を抽出する。
窓領域抽出部307は、壁領域内外気温度領域抽出部306において、一定時間(例えば10分)以上窓領域31として抽出され続けた領域を窓領域31として検知する。
窓領域内温度判部308で、窓領域抽出部307で窓領域31として検知した領域内の温度変化を監視し、窓として判定された領域の温度が壁平均温度付近まで変化したかどうかを判定し、変化があれば窓領域31がなくなったと判定する。
カーテン閉め動作判定部309で、窓領域抽出部307で検知した窓領域31の全部が、窓領域内温度判部308において窓領域31ではないと判定されればカーテンが閉められたと判定する。
また、窓領域抽出部307で窓領域31が検知されている状態で、壁領域内温度差判定部305において、窓領域31なしと判定された場合もカーテンが閉められたと判定する。
以上のように、熱画像取得部301が赤外線センサ3を温度検出対象範囲を左右に走査して温度検出対象の温度を検出することにより熱画像を獲得し、床壁検知部302が熱画像データ上の空調エリア内における壁領域を獲得し、温度条件判定部により現在の温度条件が窓状態の検知が必要な状態かどうかを判定し、検知が必要な状態であれば、窓状態検知部が背景熱画像中の顕著な温度差がある領域を窓領域31として検知し、その窓領域31の時間変化を監視することと同時にカーテンが閉められた動作を検知可能とする。
そのように構成することにより、空調に余計な消費電力が必要な状態である外気温の影響を受けた窓の露出を検出し、空気調和機100の利用者に、カーテン等を閉める動作を促すことを可能とする。
空気調和機100の利用者が、カーテン等を閉めることにより、空気調和機100の消費電力を低減することができる。
次に、静電霧化現象によりナノメータサイズのミスト(微粒子水)を発生させる静電霧化装置について説明する。
図49乃至図52により、静電霧化装置300の構成を説明する。本実施の形態の静電霧化装置300は、図49に示すように、ナノメータ(10−9m)サイズの静電ミスト101を発生するために、水印加電極102と対向電極103とを備えている。
水印加電極102は、ともに板状の胴部128と先端霧化部129から成り、胴部128に供給された水を先端霧化部129に移動(搬送)する。先端霧化部129の先端(突端)が、対向電極103に向くように配置される。水印加電極102は材料に多孔質体が用いられるが、ここでは特に三次元網目状構造を有する金属多孔質体である発泡金属を用いている。これについては詳細を後述する。
水印加電極102と対向電極103との間には、高電圧電源部104から供給される約4〜6kVの高電圧が印加される。ここでは、対向電極103がグランド極となって電位0Vであり、水印加電極102に、−4〜−6kVのマイナスの直流電圧が印加される。
水印加電極102の胴部128の形状は略矩形であり、その胴部128の上方には、所定の距離L1(図50参照)の隙間を空けて水供給手段の一部であるペルチェユニット106の冷却面に接する冷却部108の複数の冷却フィン108bが略水平方向に積層された状態で位置している。胴部128は、冷却フィン108bの積層方向に長辺方向幅(長手方向の幅)を伸ばして形成されている。すなわち、略矩形の胴部128の長辺方向(長手方向)が冷却部108の冷却フィン108bの積層方向に略一致している。
水印加電極102は、冷却フィン108bの下方に所定の距離L1の隙間を空けて位置し、冷却フィン108bの積層方向に長手方向(長辺方向)の幅を伸ばす平板状の胴部128を有している。そして、胴部128の短辺方向が冷却フィン108bの突出方向に略一致している。胴部128は、長辺方向の幅が短辺方向の幅の3倍以上ある細長い形状である。そして板状の水印加電極102は、その板厚が胴部128の短辺方向幅よりも小さいものである。
なお、胴部128の形状は略矩形と説明しているが、長辺と短辺のなす角度が直角である完全なる長方形に限定されるものではなく、短辺の長辺に対する角度が鋭角や鈍角である、すなわち、互いが平行な二辺の長辺に対して短辺が直角に接続しない平行四辺形や台形であってもよく、胴部128の形状の略矩形には、長方形だけでなく、このような平行四辺形や台形も含まれるものである。
さらに水印加電極102は、図49示すように胴部128の長辺方向(長手方向)側面の途中に、その側面から突出するように先端霧化部129が形成されている。先端霧化部129は胴部128に連続する同じ厚さの板状突起で、その形状は上面視で三角形状である。三角形状の先端霧化部129は、底辺の面が胴部128の長辺方向側面につながり、頂点である先端129a(突端)が、対向電極103に向いている。この先端129aが対向電極103との放電部となる。なお、図49乃至図52においては、先端霧化部129である突起が1つの場合を示したが、突起が複数であってもよい。
また、先端霧化部129である突起の形状は、図53に示すように、胴部128につながる四角形状部分と、その四角形状部分に底辺の面がつながる三角形状部分とから成る、所謂、ホームベース形状であってもよく、その三角形状部分の頂点である先端129a(突端)を対向電極103に向けるようにしてもよい。
水印加電極102の先端霧化部129は、上面視で図49のような三角形状であっても、図53のホームベース形状であっても、胴部128と同様に、板状で厚さを有し、胴部128と一体的に形成されており、対向電極103に向かう先端129aにも厚みがあり先端129aは線状に尖っている。先端129aは線状に尖っているので、その上端と下端に2つの角部が形成されている。
先端霧化部129は、平板状の胴部128の長辺方向(長手方向)となる冷却フィン108bの積層方向に伸びる側面途中に胴部128と連続的に形成され、胴部128の長辺方向側面から対向電極103に向かって突出する板状突起であって、その形状は先端129aに向かうほど突起幅が細くなる形状で、先端129aは線状に尖った状態、もしくは線状に尖った状態に近しいくらいまで細い状態となっている。
対向電極103は、導電性のある金属もしくは樹脂にて板状に成形されたもので、略中央に開口を有している。この開口が水印加電極102の先端霧化部129と対向するように、対向電極103は、先端霧化部129の先端129aと一定の距離を隔てて位置している。
次に水印加電極102よりも上方に位置する水供給手段について説明する。図49に示す静電霧化装置300は、ペルチェユニット106と、そのペルチェユニット106の放熱面に接する放熱部107と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部108で構成される水供給手段を有する。そしてこの水供給手段で生成した水を水印加電極102の胴部128上面に重力により滴下させて供給する。
放熱部107も冷却部108もそれぞれペルチェユニット106と接するベース板とそのベース板の反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数のフィンを有する。放熱部107と冷却部108の複数のフィンは、各々のフィンが通過する空気流と略平行となるように通過する空気流と略直交する方向に積層される。ここでは、空気流が概ね重力方向であるため、放熱部107と冷却部108のそれぞれのフィンは、重力方向とほぼ直交する方向となる略水平方向に積層される。なお、冷却部108を効率よく冷却するために、放熱部107の方が冷却部108よりもフィンの表面積が大きく構成されている。
図51は冷却部108の概略構成図であるが、冷却部108は、ペルチェユニット106と接するベース板108aとそのベース板108aの反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数の冷却フィン108bを有している。複数の冷却フィン108bは上記のとおり略水平方向に積層される。図51に示すL2は、冷却フィン108bのその積層方向の幅であり、積層方向の一方の端に位置する冷却フィン108bの外側面から他方の端に位置する冷却フィン108bの外側面までの距離である。両端の冷却フィン108bを含み幅L2の範囲内に位置する複数の冷却フィン108bは、すべて空気中に露出されている。
また、図51に示すL4は、冷却フィン108bの突出高さであり、ベース板108a上の基端から突端までの距離、すなわちベース板108aの反ペルチェユニット側の面から冷却フィン108b突端までの距離である。ここにおいて、複数の冷却フィン108bの下端面は全面が、水印加電極102の胴部128上面と所定の距離L1を空けて対向するように露出している。
もし、冷却部108を固定する保持枠などによって上記する冷却フィン108bの下端面の基端近傍が部分的に覆われるようであれば、距離L4は、その覆われた距離の分だけマイナスしたものとする。このような場合では、距離L4は、冷却フィン108bの下端面の突出方向の露出長さとなる。
ペルチェユニット106内部には、複数のP型N型半導体接合が設けられており、低電圧電源部105から1〜5V程度の直流電圧がペルチェユニット106に印加されると、一方向に電流が流れ、ペルチェ効果によって放熱面の熱量が増え、冷却面では吸熱がなされる。これにより、放熱部107は暖められ、冷却部108は冷却される。
ペルチェユニット106によって、冷却部108の温度が通過する空気の露点以下まで冷やされると、冷却部108の冷却フィン108bの表面にはその空気中の水分が結露した結露水110が生成される。生成された結露水110は、重力により冷却フィン108bの下端に向けて冷却フィン108bの表面を伝って落下し、下端まで伝った後で冷却フィン108bから重力により下方へ滴下される。通過する空気の流れは、重力方向とほぼ同じであるため、結露水110は、冷却フィン108bの上部側の表面に生成されやすく、下流に進むにしたがって空気中の水分がなくなっていくため、結露し難くなる。冷却フィン108bの下端面ではほとんど結露しない。
放熱部107および冷却部108は、アルミニウムを材料として形成されている。アルミニウム製のフィンの一般的な水との接触角は50〜70度であるが、ここでは、少なくとも冷却フィン108bに、接触角が90度以上になるように撥水化処理を施すか、もしくは接触角が30度以下になるように親水処理を施して、生成された結露水110が冷却フィン108bの表面上を重力方向に移動しやすくし、生成された結露水110を素早く冷却フィン108bから滴下するようにしている。
なお、水の接触角とは、固体表面上に水滴を乗せ、平衡になったときの水滴表面と固体表面のなす角度であり、水滴が冷却フィン108b表面に接触している接触点において、水滴が形成する接線と冷却フィン108b表面とがなす角度のことである。
ここで冷却部108の重力方向下方には、この冷却フィン108bの下端とは図2に示すように所定長さL1の空間を介して水印加電極102が配置されている。冷却部108と水印加電極102は、互いが直接的に接触する部分を有していない。冷却フィン108bの下端から滴下された結露水110は、水印加電極102の胴部128上面に落下する。すなわち、水印加電極102の略矩形の胴部128が、冷却フィン108bの積層方向に長辺方向を伸ばし、かつ冷却フィン108bの真下(直下)に距離L1の空間を隔てて配置されているのである。
胴部128の上面に重力落下した結露水110は、金属多孔質体の水印加電極102内部に吸水され、内部の互いが三次元的につながる空隙内を表面拡散により移動する。結露水110は、このような表面拡散現象により、水印加電極102の内部にて胴部128から先端霧化部129へと搬送される。
水印加電極102の先端霧化部129の先端129a近傍まで水(結露水110)が搬送されると、グランド極である対向電極103に対して水印加電極102には、−4〜−6kVのマイナス高電圧が印加されているので、先端129a近傍の水にその高電圧がかかり、水印加電極102と同電位、すなわちマイナスの高電圧に帯電している。そのため、帯電している水は、静電界中のクーロン力の作用によって、先端129aから局所的に水印加電極102の外部へ引っ張られテーラーコーンと呼ばれる盛り上がりを形成する。このときテーラーコーンを形成している水は、水印加電極102に付いているので、引き続き帯電している。そして、作用するクーロン力が水の表面張力を超えることで、テーラーコーンを形成していた水が飛び出し、はじけるように分裂(この分裂はレイリー分裂と呼ばれている)を繰り返し、ナノメータサイズの帯電した静電ミスト101が生成される。静電ミスト101は対向電極103に向かって移動し、対向電極103の開口から外部へと放出される。
ここで、帯電した水を先端霧化部129の先端129aから飛び出せるためには、電界の集中が必要である。この水印加電極102は、先端霧化部129が板状で形成されていて、放電部である先端129aが線状に尖っているので、少なくとも先端129aの上端と下端の2ヶ所の角部に電界を集中させることができる。
このため、先端近傍を錘状(角錐や円錐)に形成して放電部となる先端を針状に尖らしたものでは、その針状尖端の1ヶ所でしか水のテーラーコーンが形成されないのに対して、線状に尖る先端129aでは、少なくとも上端と下端の角部2ヶ所で水のテーラーコーンを形成することができ、放電部を針状尖端とするものに比べて、静電ミスト101を効率よく多量に発生させることができる。なお、先端129aは線状に尖っているので、上端や下端の角部ほどではないが電界は集中するので、上下の角部の間であっても、水のテーラーコーンが形成されることもあり、静電ミスト101が効率よく多量に生成される。
電界を集中しやすくするために、先端霧化部129は、対向電極103に向かう上面視で三角形状の頂点部分の角度α(図52に示す)を鋭角に形成するのがよく、望ましくは60°以下がよい。上面視で三角形状の先端霧化部129の胴部128から最も離れた頂点部分の角度が角度αである。また、水印加電極102の製造工程や配送工程において、先端霧化部129が細長く突出していると、破損する恐れがあるので、破損を回避するために、先端霧化部129の突出高さL6(図52に示す)は、胴部128の短辺方向幅と同等以下とするのが好ましく、頂点部分の角度αも15°以上がよい。
このように生成された静電ミスト101は、単にミストや微粒子水と呼ばれたり、帯電していることから、帯電ミストや帯電微粒子水と呼ばれたりすることがある。また、大きさがナノメータサイズであることから、ナノミストと呼ばれることもある。いずれであっても、水に高電圧をかけ、レイリー分裂により微細化させ生成する帯電したナノメータサイズのミスト(微粒子水)であり、ここでは、このようにして生成されたミストのことを静電ミスト101と呼ぶこととする。また、このように静電ミスト101を生成することを静電霧化と呼び、霧化するとは水をミスト化することである。そして、霧化量とは、静電ミスト101の生成量(発生量)のことである。
図52は水印加電極102の概略構成図であるが、この図で示すL3は、上方に位置する冷却フィン108bと対向して露出される胴部128上面の長辺方向(長手方向)の幅で、冷却フィン108bの積層方向と同方向の幅である。
例えば、胴部128の長辺方向の一端に高電圧電源部104との接続端子が装着され、その接続端子により、もしくはその接続端子を保護するために設置された別体のカバーにより、胴部128のその一端部分の上面が、冷却フィン108bに向かって露出されていない場合には、その一端部分は上記の幅L3には含まれない。幅L3は単に胴部128の長辺方向の長さではなく、上方に位置する冷却フィン108bと対向して露出される胴部128上面の長辺方向の幅であり、上方に露出をしていない部分は、幅L3には含めない。
また図52に示すL5は、L3と直交する方向の幅であり、冷却フィン108bと対向して露出されている胴部128上面の短辺方向の幅で、冷却フィン108bの突出方向と同方向の幅である。
ここで、この水印加電極102は、胴部128の幅L3が、上記した冷却フィン108bの積層方向幅L2と同等もしくは幅L2よりも大きくなるように形成されている。すなわち、幅L3≧幅L2となっている。また、胴部128の幅L5が、上記した冷却フィン108bの突出高さL4と同等もしくはL4よりも大きくなるように形成されている。すなわち、幅L5≧L4としている。
さらに、水印加電極102の胴部128に冷却フィン108b全体を重力方向に投影したときに、積層方向幅L2が胴部128の長辺方向幅L3と略一致するか、もしくは幅L3内に収まるように、また、高さL4が胴部128の短辺方向幅L5と略一致するか、もしくは幅L5内に収まるように、水印加電極102の胴部128は、冷却フィン108bに対して配置されている。
上方に位置する複数の冷却フィン108bと、その下方に隙間L1を介して冷却部108とは非接触に位置する水印加電極102の胴部128とは、このような位置関係にあるので、重力により複数の冷却フィン108bの下端から積層方向に幅広く滴下される結露水110を、胴部128の上面が水受け取り面となって、無駄なく確実に受け取ることができ、それらを先端霧化部129に搬送できるので、安定して多くの量の静電ミスト101を発生させることができる。
特に、冷却部108にて多くの結露水110を得るために、空気流と略直交する水平方向に冷却フィン108bを積層させ、水印加電極102の胴部128を平板状として、その積層方向に長辺方向の幅を伸ばすように形成していることにより、冷却フィン108bで効率よく結露した結露水110を胴部128の上面で無駄なく確実に受け取るので、静電ミスト101の発生が安定して継続される。
また、先端霧化部129を胴部128の長辺方向側面の途中に形成しているので、短辺方向側面に設けるのに比べて、胴部128で受け取った結露水110を素早く先端霧化部129に搬送できる。このため、結露水110が水印加電極102へ至るまでの経路が、重力による胴部128への直接的な滴下であることと相まって、この静電霧化装置300の運転開始から短時間で静電ミスト101を発生させることができる。各冷却フィン108bから同量の結露水110が滴下されるものとして、先端霧化部129が1つだけの場合には、胴部128の長辺方向側面にあって、冷却フィン108bの積層方向幅L2の中央に相当する位置に配置させるのが、水の搬送の安定度から最も好ましい。
なお、水印加電極102は、その周囲に冷却フィン108bから滴下供給された結露水110を溜めないように構成されている。水印加電極102を固定する保持枠は水が溜まることがないように容器とはしないで、例えば、水印加電極102の下面(冷却部108と対向する上面の反対側の面)を含む周囲には下方への開口を設け、水印加電極102の保持枠からは不要な水は開口を通して排水させ、水印加電極102の周囲に水を溜めさせない。
水印加電極102の周りに水を溜めない理由は、以下のとおりである。
(1)水印加電極102の上に水が溜まってくると、上に溜まった水の介在により水印加電極102(特に胴部128)と冷却部108(特に冷却フィン108b)との距離が短くなり、高電位である水印加電極102から冷却部108へ放電現象が発生する恐れがある。水印加電極102と冷却部108との間で放電現象が発生すると、水印加電極102と対向電極103との間での放電が不安定となり、正確な静電ミスト101の発生が阻害される。また、信頼性の点からも好ましくない。
(2)水印加電極102は多孔質体で構成されるが、水印加電極102内の水分量が多いと、テーラーコーンを形成した水の表面張力に対してクーロン力が勝てずに、水が先端霧化部129の先端129aから離れにくくなり、すなわち、先端129aからなかなか飛び出さないことになって、静電ミスト101の発生が阻害される。水印加電極102は、内部の空隙(気孔)を水で飽和させない方が静電ミスト101の発生効率がよい。
(3)ペルチェユニット106が水に浸かると、信頼性の点で不具合が生じる。ペルチェユニット106は、P型N型半導体が直列接続された構成であり、P型N型半導体のいずれかが水の侵入により故障すると使用不能となる。
これらの理由から、水印加電極102の周囲には、水を溜めない構成が必要なのである。
なお、対向電極103は、水印加電極102との電位差を一定に保つために設置しているが、対向電極103を設置しないで気中との放電(気中の浮遊電位との放電)で静電ミスト101を発生させるようにしてもよい。また、この静電霧化装置300を搭載する機器のあらかじめ電位が0V近辺にある部材(例えば、空気調和機の室内機に搭載するとして、室内機内部に設置される室内熱交換器)を対向電極103の代替として用いて、水印加電極102との電位差を保つようにして静電ミスト101を生成するようにしてもよい。
この静電霧化装置300では、放熱部107および冷却部108に重力方向、すなわち上方から下方への空気流が通過するが、冷却部108における吸熱量低下を防止して効率よく冷却フィン108bの温度を下げるために、冷却部108への通風量(通過する空気流の量)は、放熱部107に比べて少なくしている。その実現手段としては、放熱部107はその上流側を開放状態にして放熱部107を通過する空気流に通風抵抗を与えないが、冷却部108側では、上流側に囲いやリブなどを設けて流入口の開口を制限して通風量を下げる。このように通風量を下げて冷却部108を通過する空気流の流速を0.1m/s程度の微風状態まで小さくし、空気流が冷却熱を奪って流出してしまうことを避けている。この結果、冷却フィン108bを効率よく冷却できる。
そして流速はたいへん小さいが、冷却部108には空気流が存在するので、水分を含んだ新しい空気が入れ替わるように流入することになり、冷却部108周囲の空気が乾燥してしまうことがなく、効率よく冷却された冷却フィン108bの表面には、結露水110が安定して生成される。
水印加電極102は金属多孔質体から成るものなので、胴部128の上面のどこに結露水110が滴下されても、受け取った水を先端霧化部129に搬送する性質を持っている。
すなわち、水印加電極102自身が、水受け取り部であり、水搬送手段であり、かつ霧化部(静電ミスト101の発生部)である、というように、3つの機能を備えているのである。このため、素早く水を先端霧化部129に集めて、効率よく正確に安定して静電霧化させることができる、という効果を有するのである。
この静電霧化装置300では、図50に示すように、水印加電極102の胴部128が、ペルチェユニット106の冷却面に接する冷却部108の重力方向下方に、冷却部108とは直接に接することのない離れた位置で、所定の距離L1の隙間を空けて設置される。
ここで所定の隙間L1は、水印加電極102と冷却部108とが電気的につながらない距離が必要となる。高電位にある胴部128から冷却部108への放電を起こさないために、胴部128の冷却フィン108bに対向して露出される上面には、先端霧化部129のような電界を集中させてしまう突起を設けずに平坦状に形成する。そして、胴部128と冷却部108間の空間の絶縁破壊を回避するために、距離L1は最低でも3mm必要となる。
さらに、結露水110を冷却フィン108bから胴部128へと滴下するようにしているため、冷却フィン108bの下端から落下する直前の水滴の長さが、冷却フィン108bと胴部128との絶縁距離を実質的に短くしてしまうことなるので、その分も考慮すると、距離L1は、少なくとも5mmは必要であり、冷却フィン108bの下端から5mm以上の隙間L1を空けて胴部128を設置するのがよい。
これに加えて、水印加電極102や冷却部108をそれぞれ保持する周囲の部材への沿面放電なども考慮放電に対する信頼性を満足する隙間L1を適宜設定すればよい。
この静電霧化装置300では、冷却フィン108bと、冷却フィン108bに面して露出している胴部128の上面との間には、空間以外に、冷却フィン108bから滴下する水を集める集水部材や滴下する水を胴部128に案内するガイド部材、また、滴下する水を胴部128に至る前に一時的に溜めておく保水部材などを介在させず、直接的に重力により結露水110を胴部128上面に滴下する。冷却フィン108bから胴部128への水の移動を妨げる要素は何もない。これにより、冷却部108にて生成された結露水110を、短時間で素早く確実に水印加電極102へと供給することができる。
そして、水印加電極102と冷却部108とが非接触であることにより、ペルチェユニット106に高電圧がかかって、ペルチェユニット106が壊れてしまう心配がない。このように、高電圧が印加される部位が水印加電極102に限定される。
また、水印加電極102の材料として金属多孔質体(詳細は後述する)を用いることで、胴部128の一部に水が供給されれば、内部の空隙を表面拡散により進み、先端霧化部129まで素早く搬送することができ、運転開始から静電ミスト101の発生までの時間を短くできる。
次に、実施の形態1のいくつかの変形例について説明する。図54は、変形例1の静電霧化装置400を示す。図49の静電霧化装置300においては、水印加電極102の先端霧化部129が、胴部128の長辺方向側面上に冷却フィン108bの突出方向と同方向に突出していたが、この静電霧化装置400では、その面とは反対側の長辺方向側面上に、冷却フィン108bの突出方向とは反対方向、すなわち放熱部107のフィン突出方向に突出するように設けている。対向電極103もその時の先端霧化部129に対向するように放熱部107側に設けられる。このような配置にすると、冷却部108に比べて流量が大きい放熱部107を通過する空気流にのせて対向電極103の開口から放出された静電ミスト101を広く拡散させることができる効果が追加される。
ただし、変形例1のような場合では、通過する流量の大なる空気流によって、水のテーラーコーン形成やレイリー分裂が阻害され、正確で安定した静電ミスト101の発生が損なわれる懸念があるため、先端霧化部129と対向電極103、およびその両者間の空間の上流側(ただし放熱部107よりは下流側)には、図54に示すように庇130を設置して空気流を遮り、静電ミスト101の生成部分に空気流が通過することを抑制した方がよい。
次に図55と図56により、変形例2の静電霧化装置500について説明する。変形例2の静電霧化装置500は、先端霧化部129の胴部128に対する位置が、図49に示した静電霧化装置300のように先端霧化部129の突起位置が胴部128の長辺方向側面上ではなく、胴部128の端部(短辺方向側面上)に設けられる。
この場合も静電霧化装置300と同様に、胴部128を結露水110が滴下される複数の冷却フィン108bの積層方向に一致する方向に長辺方向を伸ばして設置する。図56はこの静電霧化装置500に用いられる水印加電極102の上面図であり、この図に示す寸法L3とL5は、静電霧化装置300における水印加電極102のL3とL5(図52参照)と同じ寸法を表しており、冷却フィン108bの寸法L2、L4(図51参照)との位置関係も静電霧化装置300と同様である。これにより、複数の冷却フィン108bから滴下する結露水110を直接胴部128上面で無駄なく確実に受け取ることができる。
先端霧化部129である突起は冷却フィン108bの積層方向に突出するため、突出した先端霧化部129の前方に対向電極103を設ける。変形例2の静電霧化装置500も、水印加電極102自身が、水受け取り部であり、水搬送手段であり、かつ霧化部(静電ミスト101発生部)である、というように、3つの機能を備えており、効率的に水を先端霧化部129に集めて、効率よく安定して静電霧化させることができるとともに、長辺方向の途中に突起が存在しないため、水印加電極102の配送作業が容易となって配送作業の信頼性が増す効果が得られる。
図57は変形例3の静電霧化装置600の側面図である。図49の静電霧化装置300との差異は、水印加電極102(先端霧化部129および胴部128)の設置角度である。静電霧化装置300では、水印加電極102は、水平に設置され、冷却部108も、冷却フィン108bの積層方向および突出高さ方向ともに水平となっており、冷却フィン108bの下端面と水印加電極102の上面は、冷却フィン108bの積層方向にも突出高さ方向にも平行であった。
しかし、図57に示す変形例3の静電霧化装置600では、冷却部108は静電霧化装置300と同じく水平のままであるが、水印加電極102を、胴部128から先端霧化部129(胴部128の長辺方向側面に突設)に向かって重力方向に角度θ1(図57参照)だけ傾斜させて設置している。角度θ1の大きさは、5〜30°程度である。
このように水印加電極102を設置した静電霧化装置600では、胴部128から先端霧化部129への水の搬送に、内部空隙の表面拡散による移動だけでなく、重力を利用できることになり、例えば、冷却部108で生成される結露水110が少ない場合でも、胴部128で受け取った結露水110を素早く先端霧化部129へ搬送できる効果を有する。
次に、図58は変形例4の静電霧化装置700の側面図である。図57の静電霧化装置600とは、水印加電極102(先端霧化部129および胴部128)の傾斜方向が逆となっている点が異なる。図58に示す変形例4の静電霧化装置700では、冷却部108は静電霧化装置300同様に水平のままであるが、水印加電極102を、胴部128から先端霧化部129(胴部128の長辺方向側面に突設)に向かって反重力方向に角度θ2(図58参照)だけ傾斜させて設置している。角度θ2の大きさは、5〜30°程度である。
このように水印加電極102を設置した静電霧化装置700では、例えば冷却部108に供給される空気の湿度が高く、結露水110が過剰に胴部128へ滴下される場合に、余剰水分を先端霧化部129の突出方向と反対方向へと排水させることができる。この静電霧化装置700では、余剰水分を先端霧化部129とは反対側から排水することにより、余剰水分が先端霧化部129の先端129aへ流れ込まないので、余剰水分により静電ミスト101の発生が阻害されることがなく、正確に安定して静電ミスト101を発生させることができる。
なお、胴部128から先端霧化部129に向かって反重力方向に傾斜させて設置しても、水印加電極102は金属多孔質体から成るので、内部が水で飽和していなければ、内部の空隙(気孔)を表面拡散により、重力に逆らって水を先端霧化部129に搬送することができる。
次に、図59は変形例5の静電霧化装置800の側面図である。図49の静電霧化装置300との差異は、冷却部108の設置角度である。図59に示す変形例5の静電霧化装置800では、冷却部108を、ペルチェユニット106側であるベース板108a(冷却フィン108bの基端)から冷却フィン108bの突端に向かって重力方向に角度θ3(図59参照)だけ傾斜させて設置している。角度θ3の大きさは、10〜30°程度である。
このように冷却部108を設置した静電霧化装置800では、冷却フィン108bの表面に結露した水は、重力により冷却フィン108bの突端側へと導かれながら、下端へと伝っていくことになる。このため、冷却フィン108bの下端から滴下される水の滴下位置を、冷却フィン108bの突端側の狭い範囲に限定することができる。
図49の静電霧化装置300では、冷却フィン108bの突出高さL4の範囲がすべて滴下位置であったが、この静電霧化装置800においては、結露水110の滴下位置の範囲をL4よりも狭くすることができる。このため、水印加電極102の胴部128の短辺方向幅をL4よりも小さくすることが可能となる。すなわち、静電霧化装置300に比べて胴部128の短辺方向幅を小さくすることができる。冷却フィン108bと対向して露出されている胴部128上面の短辺方向の幅L5(図52参照)を、この静電霧化装置800は、静電霧化装置300よりも小さくできるのである。
これにより、先端霧化部129への胴部128短辺方向の搬送距離が短くなるので、この静電霧化装置800は、胴部128で受け取った結露水110の先端霧化部129への搬送を、図49の静電霧化装置300よりもさらに素早く行うことができるようになり、運転開始から静電ミスト101が発生するまでの時間をより短縮することができる、という効果が得られる。
また、水印加電極102の体積を減少させることができ、省資源化、低コスト化も図ることができる。なお、図59に示す静電霧化装置800の水印加電極102の設置角度は、図49の静電霧化装置300と同じく水平のままであるが、図57の変形例3や図58の変形例4のように傾斜させてもよく、そのように傾斜させれば、変形例3や変形例4の効果を合わせて奏することができる。
なお、先に述べたが、水印加電極102内の水分量が多いと、テーラーコーンを形成した水の表面張力に対してクーロン力が勝てずに、水が先端霧化部129の先端129aから離れにくくなり、すなわち、先端129aからなかなか飛び出さないことになって、静電ミスト101の発生が阻害されることがあるので、水印加電極102は、内部の空隙(気孔)を水で飽和させない方が静電ミスト101の発生効率がよい。そのため、ペルチェユニット106への通電を制御して、水印加電極102が水で飽和しないように、結露水110の生成量をコントロールするのがよい。
これまでは、複数の変形例を含め、静電霧化装置の構造、特に水印加電極102の形状や設置構成について説明してきたが、ここからは、水印加電極102の構造について詳細に説明する。ここまで説明してきたこの実施の形態における静電霧化装置300〜700のすべてにおいて、水印加電極102はその材料として金属多孔質体である発泡金属を用いて形成されている。
従来の静電霧化装置では、水の搬送と放電を兼ねる多孔質体材料として、チタニア、ムライト、シリカ、アルミナなどのセラミックが使用されていた(例えば特許文献1)。セラミックは毛細管現象で水の搬送ができ、また加工性がよい、高電圧からの耐摩耗性にも優れるなどの利点を有している。
しかしながら、セラミックは、内部の気孔率(気孔の含有割合)が10〜50%程度、気孔の孔径(呼び孔径)が0.1〜1.0μm、大きくても3.0μmと、多孔質体ではあるが、内部は比較的目が詰まった材料であり、先端の放電部まで霧化する水を毛細管現象で搬送するのに時間がかかり、運転開始からミスト発生までに時間がかかる、また、不純物により気孔が目詰まりしたり、水がブリッジしたりして、長期間に渡って、吸水性や搬送性能を高く維持できない、という欠点があった。さらに、セラミックは体積抵抗率(電気抵抗率)が高いため、霧化させる水に、セラミックに印加した高電圧が十分に作用せず、霧化が起こりにくく、充分な量のミストが得られないという課題もあった。
また、放電側の電極として、多孔質材料でなく金属棒を使用する場合では、金属棒は内部に気孔が存在しないため、放電部となる先端まで水を搬送することができない。そのため、金属棒そのものを冷却して先端表面に直接結露水を生成させる場合もあるが、金属棒の先端表面で結露する水だけでは、水分量が少なく、充分な量のミストが得られないという課題があった。
そこで、本実施の形態では、充分な吸水性能、搬送性能を持ちながら、低い電気抵抗率(体積低効率)、高い電気伝導性を有して、霧化する水に効率よく電気を伝えて帯電させることができる材料として、金属多孔質体である発泡金属を、水印加電極102の材料として用いるに至った。
ここで発泡金属とは、三次元網目状構造を持つ金属多孔質体と定義する。三次元網目状構造は、スポンジに代表される樹脂発泡体として知られており、これと同じ構造である。金属多孔質体としては、焼結金属がよく知られているが、発泡金属が焼結金属と相違する点は、三次元網目構造により、気孔率が高いこととその気孔の孔径が大きいことである。
発泡金属は、スラリーと呼ばれる金属を含有する液体の混合物中に、発泡剤を投入してこれを発泡させた状態で、非常に高い温度で焼結して作られる。これにより、各種金属や合金を素材とした発泡体を作ることができる。このように製作した発泡金属は、連続気孔構造を有する。これまでは、主にフィルター、触媒担持体、燃料電池用ガス拡散層などに使用されていたが、今回、静電霧化装置の電極材料として優れた特性を有することを見出した。
発泡金属の最も顕著な特徴は、高い気孔率にある。気孔率とは、空隙率ともいい、気孔の含有割合を示すもので、発泡金属内部にどれだけ吸水できるかを調べることで評価できる。この評価方法は、液体中の物体が排除した液体の重さに等しい浮力を受けるというアルキメデスの原理に従っている。
本実施の形態の水印加電極102に使用する発泡金属では、三次元網目状構造により、その気孔率を60〜98%と非常に高く設定することが可能である。したがって、発泡金属内部に、すなわち水印加電極102がたくさん吸水することができる。しかし、あまり気孔率が大きすぎると、吸水力を大きくできても、吸水した水が漏れ出す恐れがあるので、水印加電極102としては、気孔率を60〜90%に設定するのがよい。
一方、多孔質体として従来から用いられてきたチタニアやムライトなどのセラミックでは、気孔率は10〜50%程度、多くは35%前後であることが多い。また、発泡金属ではない一般的な焼結金属の場合も気孔率は高いものでも50%程度であり、発泡金属の気孔率は明らかに高いものである。
また、発泡金属の他の大きな特徴として、気孔径が大きいことが挙げられる。発泡金属の説明のための拡大概念図である図60は、平面(二次元)状で示しているため、各々の気孔が独立しているように見えるが、実際の発泡金属は、三次元的に気孔が連続している連続気孔構造体である。図60に示すように、本実施の形態の静電霧化装置300〜800にて水印加電極102として用いられる発泡金属は、焼き固まった金属部122と空隙部となる気孔121で構成される。ここで、気孔121の直径を孔径と定義する。孔径は、電子顕微鏡で撮影される画像により、その大きさを判断することができる。また、水銀圧入式ポロシメータやガス吸着測定装置を使って、孔径だけでなく、気孔の分布状態を測定することも可能である。
水印加電極102の発泡金属の孔径は10〜1000μmが妥当であるが、孔径が50〜600μmの発泡金属が、吸水性や目詰まり防止の観点から好適であり、さらに剛性や生産性(加工性)を考慮すると150〜300μmが最適である。
セラミックのように孔径が10μm未満であると、孔径が細かくなり過ぎて(小さ過ぎて)目詰まりする危険性が高いし、吸水量も小さい。また、気孔121の大きさを安定して小さく揃えることは発泡金属の製造上、困難なものである。逆に、孔径が1000μmを超えると、連続する気孔121を通して吸水した水が漏れ出しやすくなり、水を胴部128から先端霧化部129へと搬送しがたくなる。
ここで、水印加電極102に使用している発泡金属と、従来から放電側の電極に使用されていたセラミック多孔質体との吸水量の比較を行う。図61にその結果を図示する。オーステナイト系ステンレスのSUS316を素材とした発泡金属である実施例1では、吸水量が約0.5g/cm3であり、チタンを素材とした発泡金属である実施例2では、約0.4g/cm3である。一方、セラミック材では、比較例1のムライト、比較例2のチタニアともに、約0.2g/cm3であり、発泡金属が、セラミックの2倍の吸水性能を有していることがわかる。
高い気孔率と大きい孔径を内部に持つ発泡金属は、図61に示すようにセラミックに比べて高い吸水性能を有する。吸水性能が高い(言い方を変えれば吸水量が多い)ということは、内部を水が移動できる量および移動速度も大きいことを意味する、すなわち搬送性能も高いことになる。そのため、発泡金属から成る水印加電極102は、セラミックで形成する場合よりも先端霧化部129に素早く水を移動でき、かつ吸水量が多いことで、静電霧化装置300〜800の運転開始から静電霧化が始まるまでの時間が短くできるとともに、胴部128から先端霧化部129への水の搬送が一時的に途絶えて、静電霧化が途切れてしまうような事態を防止して、正確に安定して静電ミスト101を発生させることができる。
また、発泡金属は内部の三次元的に連続した気孔121を主として表面拡散により水が移動するので、水印加電極102の設置方向は、重力方向とは無関係に先端霧化部129を天井方向に向けたり、水平に向けたりして使用できる。そして、連続気孔構造であり、その気孔121の孔径が大きいので、長期に渡って目詰まりすることなく、安定して水を先端霧化部129へと搬送できる。
続いて、図62に発泡金属と他の多孔質体との電気抵抗率を比較した結果を、図63に発泡金属から成るこの実施の形態の水印加電極102と、この水印加電極102と同一形状でセラミックにて形成した水印加電極との静電霧化量を比較した結果を示す。ここで、静電霧化量とは、ミスト発生量であり、上記の水印加電極を用いて静電霧化装置が単位時間当たりに生成した(水印加電極から飛び出した)静電ミスト101の重量を示すもので、規定容積箱内部の湿度上昇度から試算することができる。なお、図63において、高電圧電源部104の供給電圧は同一としている。
静電霧化装置300〜800では、水印加電極102の先端霧化部129の水に高電圧が作用し、高電圧の印加により作られるクーロン力が、水の表面張力を上回ることで、先端129aから帯電している水が飛び出し、次々と破砕(レイリー分裂)して静電ミスト101として対向電極103の開口から気中に放出される。従って、水印加電極102に存在する水に効率よく電気をかけることが重要である。すなわち、高電圧電源部104から供給された高電位を、ロスをいかに少なくして水印加電極102に存在する水(冷却フィン108bから滴下された結露水110)に伝えて水を帯電させられるかが重要であり、そのためには、水印加電極102自身が有する電気抵抗が小さいほどその抵抗で消費されるロスを小さくでき、電気伝導性が高まって効率よく水を帯電できる。そして、水印加電極102の電気抵抗は、その材料によって特定されることが多い。
発泡金属の電気抵抗率は、発泡体であるとは言えあくまで金属であって導体であるので、素材がステンレス鋼であるSUS316の実施例1でも、チタンの実施例2であっても、1×10−7Ω・m程度と電気抵抗が非常に小さく、電気を良く通す、すなわち電流によるロスを小さくして効率よく水に電気を流して帯電させることができる。一方で、セラミック材の電気抵抗率は、比較例1に示すムライトで1×1014Ω・m、比較例2に示すチタニアで1×1012Ω・mと電気抵抗は大きく、セラミック材は、導体とは言えず、半導体から絶縁体の間である。比較例3の樹脂発泡体であるスポンジと同程度の高い電気抵抗率を示す。
このように、発泡金属を材料として水印加電極102を形成することで、セラミックを材料とするものよりも効率よく水を帯電させることができる。すなわち、高電圧電源部104が供給する高電圧が同じ大きさであれば、発泡金属を材料として形成されているこの実施の形態における水印加電極102を用いた方が、セラミックを材料とする場合よりも、水に電流が伝わりやすく、効率よく水を帯電することができる。発泡金属を材料として水印加電極102を形成することで、電気抵抗が小さくなるので、静電霧化で消費される電力を、セラミックを材料とするものよりも小さくすることができ、省エネルギー化に貢献できる。
また図63により、水印加電極を同一形状にして、高電圧電源部104の供給電圧を同一とした場合の静電霧化量を比較すると、発泡金属を材料として形成した水印加電極102の静電霧化量は、発泡金属の素材がSUS316の実施例1、チタンの実施例2ともに、水印加電極102の1本あたり約0.15cc/hrであった。一方、セラミック材では、それが比較例1に示すムライトで0.06cc/hrで、比較例2に示すチタニアで0.08cc/hrであり、発泡金属の実施例よりも少なかった。
同じセラミックであっても、チタニアの方がムライトよりも静電霧化量が多いが、図62から、チタニアの電気抵抗率が、ムライトよりも2桁低いことがわかる。図62、図63において、セラミック同士、すなわち比較例1と比較例2を比べることでもわかるが、水印加電極が電気を通しやすい(電気抵抗率が小さい)方が水に効率よく電気をかけられ帯電でき、先端霧化部129の先端129aに形成された水のテーラーコーンがクーロン力によって飛び出しやすくなって、静電霧化量が増加するといえる。これらの結果から、導体であり電気抵抗率が低い発泡金属を静電霧化装置300〜500の水印加電極102に用いた場合、従来のセラミック材に比べて、霧化する水に高電圧を効率よく印加でき(帯電させることができ)、高電圧電源部104の供給電圧が同じ大きさであれば、静電霧化量(静電ミスト101の発生量)を増やすことができる。
なお、発泡金属の水印加電極102は、厚みが0.5mm〜5.0mm程度の大きなシート状発泡金属体を作成し、それから所望の形状(連続する胴部128と先端霧化部129)に切り出して製作する。シート状発泡金属体を板厚方向に複数枚積み重ねて、複数枚を同時に切り出すことで大量生産が可能である。切り出しは、ワイヤーカット、レーザーカットにより行われる。その他トムソン刃やプレスによる打ち抜き、機械切削による削り出し、手切断、曲げ加工など各種の加工方法を用いて、所望の形状に加工することができる。この水印加電極102では利用することはないが、発泡金属は、溶接やロウ付による接合も可能である。
次に、図64に発泡金属の素材(材質)の違いによるオゾン発生量の比較結果を示す。静電ミスト101が生成される際には、対向電極103に向かって放電が起こるため、この放電に伴って副生成物としてオゾンが生成される。オゾンは、適量であればその殺菌作用を利用することにより有益であるが、生成量が過多となると、その青臭い臭気から人間にとっては異臭と感じられたり、酸化作用や腐食作用を人間や周囲の物質に及ぼしたりすることもある。従って、静電ミスト101を放出するための静電霧化装置300〜800においては、放電に伴う副生成物であるオゾンの発生量をできるだけ抑えたい。
そこで発泡金属により形成された水印加電極102におけるオゾンの発生量を実験により調査した。実験内容は、水印加電極102に所定の同じ大きさの高電圧を付与した場合に、42L(リットル)箱(42L槽)内部のオゾン濃度の定常値を調査するものである。
図64において、比較例4に示す発泡金属は、オーステナイト系ステンレスとして一般的によく知られているSUS304(ニッケル含有量8〜10.5%、クロム含有量18〜20%)であるが、この場合のオゾン発生量として、42L槽内部のオゾン濃度が1.2ppmとなった。一方、同じオーストナイト系ステンレスであるが、ニッケル含有量が10〜15%、クロム含有量が15〜20%で、かつモリブデンが1〜4%含有されたSUS316を用いた実施例1の場合では、42L槽のオゾン濃度は、モリブデンが含有されていない比較例1のSUS304に比べ約60%の0.7ppmとなった。
同じオーステナイト系ステンレスであっても、モリブデンが含有されているか否かにより、オゾン発生量が異なり、モリブデンを含有している方が、オゾン発生量が少ないことがわかった。そのため、ステンレスを素材とする発泡金属により水印加電極102を形成する場合では、モリブデンが1〜4%含有されたオーステナイト系ステンレスを素材とするのがよい。実施例1のSUS316以外でも、SUS316L、SUS317がモリブデンを含有しており、オゾン発生量をSUS304に比べて少なくできる。
図64において実施例2で示すチタンが素材の発泡金属で形成されたものが、オゾン発生量が最も少なく、42L槽のオゾン濃度が0.03ppmで、比較例4(SUS304)の1/40、実施例1(SUS316)の1/23と、大幅にオゾン発生量を抑制できることがわかった。また、実施例3で示すニッケルを素材とした発泡金属を用いた場合では42L槽内部のオゾン濃度は0.3ppmとなり、実施例2(チタン)ほどのオゾン発生の抑制効果は得られないが、実施例1(SUS316)よりもオゾン発生の抑制効果が大きい。
このようなオゾン発生抑制効果は、発泡金属の素材が還元作用を及ぼすことで、生成されたオゾンが分解されるためと考えられる。すなわち、水印加電極102の材料として、還元作用のある金属を素材とすることで、オゾン発生量を抑制できる。そして、図64の実施例においては、チタンがオゾンの還元作用が最も強く働くものと考察される。オーステナイト系ステンレスにおいては、モリブデンがオゾンを還元する作用を及ぼすと考えられる。また、水印加電極102の材料として発泡金属を使用することにより、水を効率よく帯電させられるので、オゾンそのものの生成が少ないということも考えられる。
また、静電ミスト101の生成に伴う放電によって、ヒドロキシルラジカルやスーパーオキサイドといったラジカル(活性種)が生成されることもあるが、このようなラジカルは、化学的に反応性が極めて高く、活性であるが故に非常に不安定な物質であり、酸素や窒素など空気中の分子とすぐに反応するので、空気中で極めて短寿命であり、生成されてもほぼ瞬時に消滅してしまうため、たとえラジカルが生成されたとしても、静電ミスト101とともに放出されることはないし、静電ミスト101がラジカルを含むこともない。
以上の結果から、水印加電極102として最も好ましい材料は、チタンを素材とした発泡金属であると言える。また、SUS316、チタン、ニッケルを素材として用いた発泡金属では、高電圧を印加することによる電気腐食や電気摩耗も防ぐことができ、長期に渡って水印加電極102の形状、特に先端霧化部129の尖り形状を保持することができる。そのため、静電霧化を長期に渡って安定して実施することができる、という効果も得られる。この効果においても、特にチタンを素材とするものが材料の特性から顕著である。
これまで、発泡金属は、高い気孔率と大きい孔径の三次元網目構造を有するので、高い吸水性と搬送性(水の移動速度が速い性質)を持つことを説明してきた。また、このような性質を利用して、本実施の形態に示す静電霧化装置の水印加電極102の材料として発泡金属が好適であることを説明してきた。ここで更に、発泡金属を酸化処理することにより、内部の気孔121表面の親水性が向上し、水印加電極102の吸水性と搬送性が高まることを見出した。酸化処理は、発泡金属を酸素雰囲気に曝すことでなし得る。
酸化処理による親水性向上は、素材がチタンである場合に特に顕著である。チタンを酸化処理すると、表面層は酸化チタンに近い性質となる。酸化チタンは紫外線などのエネルギーを受けると周りにある水と反応して最表面に水酸基(OH基)を作るため、水と非常になじみやすい性質(高い親水性)を有するようになる。このため、水が表面拡散で移動する際に、水が止まることなく広がって進むので、発泡金属の内部で水を効率よく素早く移動させることができる。素材がチタンの発泡金属では、酸化処理を行ったものが、酸化処理を行っていないものに比べて水の移動速度が5倍程度速くなるという結果が得られている。
素材がチタン以外のニッケルなど他の金属材料を素材とする発泡金属の場合でも、酸化処理の際に表面に親和性を有する層を作るので、水へのなじみ性(親水性)が向上する。ただし、素材がチタンである発泡金属を酸化処理した場合の親水性の向上効果が顕著であり、水の移動速度が速くなって、水印加電極102における吸水性と搬送性の向上効果が高い。酸素雰囲気に曝す酸化処理では、発泡金属で形成された水印加電極102の外表面のみではなく、高い気孔率と大きな孔径を備えた連続気孔構造により、連続気孔を通過して内部の気孔121に面する表面にも酸化処理がなされ、気孔121に臨む内表面も含めた金属部122のすべての表面に対して親水性が向上し、水の移動速度を高めることができる。このため、静電霧化装置300〜800の運転開始から静電ミスト101の放出までの時間を短くできる。
以上のように、本実施の形態に係る静電霧化装置の水印加電極102は、三次元網目構造を有する発泡金属を材料に用いて形成されていることを特徴の一つとしている。このため、吸水量が多く、水の移動速度が速いので、静電霧化装置の運転開始から霧化が始まる(静電ミスト101が放出される)までの時間が早い。そして、発泡金属は、電気抵抗率が低くて電気伝導性に優れているため、霧化する水に効率よく電気をかけられ帯電でき、霧化量が増加する、という効果を有する。
また、電気腐食や電気摩耗を防止でき、長期に渡って水印加電極102の形状、特に先端霧化部129の尖り形状を保持することができる。そのため、静電霧化を長期に渡って安定して実施することができる、という効果を有する。
また、高い気孔率のために多量の水を吸水することができるとともに、孔径が大きいために、長期に渡って目詰まりすることなく長期に渡って安定した高い吸水性と搬送性を維持でき、静電霧化を長期に渡って安定して実施できる、という効果を有する。
また、発泡金属の素材に、還元作用のある金属である、チタンやニッケル、モリブデンを数%含有するオースナイト系ステンレスのいずれかを用いることで、静電ミスト101の生成に伴う放電によってオゾンが生成されるが、その発生量を抑制できる、という効果を有する。この効果は、特にチタンを素材とした発泡金属で水印加電極102を形成した場合に顕著である。
また、発泡金属の表面を、焼結後に酸化処理したものを材料として水印加電極102を形成すれば、内部表面の親水性が高まり、水の移動速度が更に向上する、という効果を有する。
なお、ここまで説明してきた三次元網目構造を有する発泡金属は、その高い吸水性と搬送性から、本実施の形態で示す静電霧化装置300〜800の水印加電極102に限らず、他の形態の静電霧化装置であっても、放電部までの水搬送を兼ねる電極に用いれば、本実施の形態の水印加電極102と同様な効果を得ることができる。例えば特許文献1の静電霧化装置では、水溜め部の水をセラミック多孔質体からなる直立した搬送体に毛細管現象でその上端まで搬送させ、針状に尖る上端に水のテーラーコーンを形成させてミストを生成するが、この搬送体(水印加電極102に相当するものである)を、セラミックではなく、ここまで説明した発泡金属で形成すれば、水の搬送速度が著しく上昇し、セラミックで形成する場合よりも運転開始から静電霧化までの時間が短縮できるし、また、放電部となる針状に尖った上端が、電気腐食や電気摩耗することを防止でき、長期に渡って尖り形状を維持でき、セラミックで形成する場合よりも静電霧化を長期に渡って安定して実施できるようになる。
これより、本実施の形態の静電霧化装置300〜800のいずれかを、空気調和機200の内部に搭載した場合について説明する。図65は静電霧化装置300〜800のいずれかを備えた空気調和機200の断面図である。空気調和機200は、一般的な壁掛け型のものである。
空気調和機200は、室内空気を吸い込む吸い込み口141と、調和空気を室内へ吹き出す吹き出し口142と、室内空気から調和空気を生成する逆V字型の熱交換器151(前面上部熱交換器151a、前面下部熱交換器151b、背面熱交換器151cからなる)と、熱交換器151で結露した水を受けるドレンパン140(二箇所)と、送風ファン143とを備えている。空気調和機200本体の上方に位置する吸い込み口141から送風ファン143の回転によって流入した室内空気は、熱交換器151を通過する際に冷凍サイクルの冷媒と熱交換されて温度湿度が調節されて、送風ファン143を通過して、下方に位置する吹き出し口142から調和空気となって室内に吹き出される。
吹き出し口142には、吹き出される調和空気の風向を変更できる左右風向板144と上下風向板145が設置されていて、吹き出し流の吹き出し方向が調整されている。吹き出し流の左右方向の風向を変更可能な左右風向板144が、吹き出し流の上下方向の風向を変更可能な上下風向板145の上流側に位置している。また、ドレンパン140で回収した熱交換器151の結露水は、図示しないドレンホースを通って、屋外に排出される。
ここで、この空気調和機200では、静電霧化装置300〜800のいずれかを、前面下部熱交換器151bの風上側(上流側)、もしくは背面熱交換器151cの風上側(上流側)のいずれかであって、ドレンパン140の上方に設置している。ドレンパン140の上方に静電霧化装置300〜800のいずれかを設置すれば、冷却部108の結露水110が多量であって余剰水分が生じた場合であっても、ドレンパン140がそのような余剰水分を受け取って、熱交換器151の結露水といっしょに屋外へ排出するので、設置した静電霧化装置(300〜800のいずれか)の余剰水分が室内へ漏れ出す恐れがない。
空気調和機200に、静電霧化装置300〜800のいずれかを設置することにより、静電霧化装置から放出された多量の静電ミスト101を、吸い込み口141から吸い込まれた室内空気といっしょに熱交換器151を通過させ、吹き出し口142から調和空気ととともに、室内へ放出させることができる。
なお、熱交換器151の風上側に静電霧化装置300〜800のいずれかを設置するにあたって、いずれの場合であっても、冷却フィン108bや放熱部107のフィンの積層方向が空気調和機200本体の左右方向となるように配置するのがよい。これにより吸い込み口141からの吸い込み空気流が、フィンに沿って流れるようになって放熱部107の放熱が促進される。そして、放熱部107が熱交換器151と向き合うように配置した方が、放熱部107を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量が多くなり、放熱がより促進されてよい。
また、放熱部107を熱交換器151と向き合わせて配置する場合、静電霧化装置300、静電霧化装置500(変形例3)、静電霧化装置700(変形例4)、静電霧化装置800のいずれかであれば、図54に示す静電霧化装置400(変形例1)と同様に、先端霧化部129を胴部128の放熱部107側の長辺方向側面上に、冷却フィン108bの突出方向とは反対方向に突出するように設ければ、放熱部107を通過する流量の多い空気流にのせて静電ミスト101を吹き出し口142まで早く導くことができる。なお、この場合静電ミスト101の生成部分の上方には、図54に示すように庇130を設置して、静電ミスト101の生成部分への空気流の通過を抑制した方がよい。
そして、水印加電極102を還元性のある金属、特にチタンを素材とする発泡金属で形成することにより、放電に伴うオゾンの発生量が抑制されるので、吹き出し口142から調和空気とともにオゾンが吹き出され、ユーザが異臭と感じたり、保湿効果を要求するユーザの人体に酸化作用を及ぼしたりすることがない。また、上記したように、放電に伴ってラジカル(活性種)が生成されたとしても、短寿命であって消滅してしまうので、吹き出し口142からラジカルが吹き出されることはなく、吹き出される静電ミスト101にラジカルが含まれることもないので、保湿効果を要求するユーザの人体にラジカルが酸化作用を及ぼすことはない。帯電してはいるが、ナノメータサイズの純粋な水が、ユーザの肌に浸透するので、肌に悪影響を与えることなく、保湿効果を高められる。
なお、静電霧化装置300〜800において、水印加電極102の材料として三次元網目構造を有する発泡金属を用いてきたが、例えば、水を毛細管現象で搬送するセラミックや非発泡の一般的な焼結金属、樹脂発泡体など他の多孔質体を用いて水印加電極102を形成しても、発泡金属を用いることによる種々の効果は得られないが、上記した水印加電極102(胴部128と先端霧化部129)の形状や構成、冷却部108(水供給手段)と水印加電極102との位置関係、水印加電極102の設置角度や冷却部108の設置角度による、冷却部108で生成された水を無駄なく素早く先端霧化部129へ導き、安定して多くの量の静電ミスト101を発生させることができる、という効果は得ることができる。
次に、人体検知後の吹き分け気流制御の方法について説明する。
図66により、空気調和機900の構成を説明する。図に示すように、空気調和機900は、空気調和機本体201の内部に空気を吸込み吹出す室内送風機202、吸込み空気に含まれている粉塵等を取り除くプレフィルター208、第1の室内熱交換器205a、第2の室内熱交換器205b、第3の室内熱交換器205c、第4の室内熱交換器205d、を収納しており、空気調和機本体201の空気吸込み口には吸込み口203が設けられ、空気調和機本体201の吹出し口204には上下風向制御板206及び左右風向制御板207が備え付けられている。室内送風機202は室内ファンモーター(図示しない)により回転駆動され、これにより室内空気が吸込み口203から空気調和機本体内に取り込まれ、プレフィルター208により除塵された空気が室内熱交換器205a〜205dを通過する際に熱交換される。その後吸込まれた空気は室内送風機202を通過し、吹出し口204に配置された左右風向制御板207及び上下風向制御板206により上下左右方向に整流され空気調和機本体201から室内空間へ吹出される。
また、図67に示すように上下風向制御板206及び左右風向制御板207は、各々左右に分割されており独立して動作することができる。
上下風向制御板206は、上下風向制御板(左)206a及び上下風向制御板(右)206bから構成されており、上下風向制御板(左)206aは上下風向制御板(左)リンク棒209aにより上下風向(左)制御用ステッピングモーター210aと連結され、上下風向(左)制御用ステッピングモーター210aが回転駆動することで上下風向制御板(左)206aの角度が変化し、これにより空気調和機本体201から吹出される左側半分の気流の上下風向角度を調節して整流することができる。
同様に上下風向制御板(右)206bは、上下風向制御板(右)リンク棒209bにより上下風向(右)制御用ステッピングモーター210bと連結され、上下風向(右)制御用ステッピングモーター210bが回転駆動することで上下風向制御板(右)206bの角度が変化し、これにより空気調和機本体201から吹出される右側半分の気流の上下風向角度を調節して整流することができる。
左右風向制御板207は、左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bから構成されており、左右風向制御板(左)207aは複数枚から構成されるが左右風向制御板(左)リンク棒211aにより連結され全て同じ動作を行う。左右風向制御板(左)リンク棒211aの先には左右風向(左)制御用ステッピングモーター212aが連結され、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212aが回転駆動することで左右風向制御板(左)207aの角度が変化し、これにより空気調和機本体201から吹出される左側半分の気流の左右風向角度を調節して整流することができる。
同様に左右風向制御板(右)207bも複数枚から構成されるが、左右風向制御板(右)リンク棒211bにより連結され全て同じ動作を行う。左右風向制御板(右)リンク棒211bの先には左右風向(右)制御用ステッピングモーター212bが連結され、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212bが回転駆動することで左右風向制御板(右)207bの角度が変化し、これにより空気調和機本体201から吹出される右側半分の気流の左右風向角度を調節して整流することができる。
また図68、図69は空気調和機本体201が停止している状態を示す図であるが、図68は上下風向制御板(左)206a及び上下風向制御板(右)206bの動作状態を分かりやすくするために左右風向制御板の図示を省略してあり、図69は左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bの動作状態を分かりやすくするために上下風向制御板の図示を省略してある。
図70は空気調和機本体201が空調する部屋を示しており、部屋の空間を奥行き方向3×左右方向5の15のエリア区画に分割した状態として空気調和機本体201が認識している状態を示している。
この15のエリア区画に分割した状態は、上記にて記載している赤外線センサ3からの情報を持って空間認識判定を行った結果の床面エリアを15のエリア区画に区分けしたことを特徴とする。
図70において、空気調和機本体201に最も近い手前の行(以下、第1行)はA1、B1、C1、D1、E1の5つのエリア区画から構成され、空気調和機本体201から最も離れて位置する行(以下、第3行)はA3、B3、C3、D3、E3の5つのエリア区画からなる。第1行と第3行の間に位置する第2行はA2,B2、C2、D2,E2の5つのエリア区画からなる。A,B、C、D、Eはこの部屋の空間における列方向を示しており、例えば第A列というのはA1、A2、A3の3つのエリア区画から構成されることを意味する。
空気調和機本体201を基準にすると、第A列は空気調和機本体201に対し最も左に位置する列、第C列は空気調和機本体201の正面に位置する列、第E列は空気調和機100に対し最も右に位置する列、第B列は第A列と第C列の中間に位置する列、第D列は第C列と第E列の中間に位置する列ということになる。尚、ここでの左右は、部屋から空気調和機本体201を見る場合の左右である。
空調対象エリアのエリア区画分割総数を人体検知から算出した床面エリアを15区分しているが、この分割数は本願発明が特に限定するものではなくその数については任意である。原理的にはエリア区画総数を多くすればするほど空気調和機から吹出される気流をよりきめ細かく高精度に制御することが可能となるので快適性がより向上することとなる。
ここで、本実施の形態1の空気調和機900の空気調和機本体201内部に搭載されている制御装置215(制御部)内に内蔵されたマイクロコンピュータ(以下、マイコン)の回路構成について図71を用いて説明する。図71において、制御装置215は入力部216、CPU217、メモリ218、出力部219から構成され、さらにCPU217内部には人体検出判断部220、目標エリア決定部221、エリア風向制御部222が内蔵されている。入力部216は人体検知センサ214からの入力信号を受ける入力回路であり、ここでは人体検知センサ214以外の入力は省略しているが、当然のことながらこれに限定するものではなく、リモコン信号、室温検出センサ等の入力があってもよい。CPU217はメモリ218に記憶されている内容を参照して各種の演算処理や風向判断等の様々な決定が行われる部分であり、入力部216を通して入力された人体検知信号はまずCPU217内の人体検出判断部220に入力される。ここでメモリ218は使用者が入力した空気調和機の運転の設定状態、また各種のプログラム、風向設定表等の動作定数等が記憶されている部分である。人体検出判断部220では入力された人体検知信号に基いて図70にて説明した15のエリア区画群のどのエリア区画に人体が検出されたかを判断する。
目標エリア決定部221では、人体検出判断部220にて判断された人体を検出したエリア区画の結果を受けて、図70にて説明した15のエリア区画群のどのエリア区画に向けて吹出し空気流を向けるかを決定する。
エリア風向制御部222では、目標エリア決定部221にて決定された目標エリア区画に向けて空気調和機本体201からの吹出し気流を整流するために、上下風向(左)制御用ステッピングモーター210a、上下風向(右)制御用ステッピングモーター210b、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212bの各ステッピングモーターをどのように制御するかを決定し、出力部219へその結果を引き渡す。
出力部219には上下風向(左)制御用ステッピングモーター210a、上下風向(右)制御用ステッピングモーター210b、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212bが接続されており、各ステッピングモーターはエリア風向制御部222により決定された動作内容に基いて動作する。
各ステッピングモーターには各々上下風向制御板(左)206a、上下風向制御板(右)206b、左右風向制御板(左)207a、左右風向制御板(右)207bが連結されており、各ステッピングモーターの動作回転量に応じて各々の風向制御板の角度が変更され、最終的に空気調和機本体201から目標とするエリア区画に向けて整流された気流が吹出される。
図71は本実施の形態を説明するにあたって必要最小限の要素についてのみ記載しているが、これに限定するものではなく空気調和機900の動作として必要な他の要素が搭載されていても本願発明の趣旨を何ら損なうものではない。
次に本実施の形態1の空気調和機900の動作について図72乃至図83を用いて説明する。
以上のように構成された空気調和機900において、図70に示す空気調和機900の認識する室内空調空間の15のエリア区画群を平面的に図示すると図72のような状況になる。
ここで、例えば人体検出位置がA2とE2の2つのエリア区画であると人体検出部20が判断すると、目標エリア決定部221の判断結果は図73に示すように、A2とE2のエリア区画に“1”、それ以外の残りの13のエリア区画には“0”という値が設定されることとなる。
すなわち目標エリア決定部221は、目標とするエリア区画には値“1”を設定し、目標としないエリア区画には値“0”を設定し、全てのエリア区画各々について“0”か“1”の2値のうちのどちらかの値のみを設定するように動作することで判断結果を出力する。
次にエリア風向制御部222では、目標エリア決定部221で決定された目標エリア区画に向けて空気調和機本体201からの吹出し気流を整流するための上下風向制御板206、左右風向制御板207の設定角度、及び各風向制御板(上下風向制御板206、左右風向制御板207)を決定した設定角度にするために必要な各ステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量を決定する。
まず、左右風向制御板207の設定角度を決定する方法を説明する。エリア風向制御部222では左右風向制御板207の設定角度を決定するために、図73の目標とするエリア区画の設定状態を基に、図74に示す演算処理を行い左右風向制御板207の動作を決定するためのデータを算出する。
このデータの算出方法は各エリア区画群の中で奥行き方向に、各エリア区画の論理和を各列毎に算出することでなされる。ここで論理和とは、0か1の2値のうちどちらかの値のみをとる複数の数値群の中で、その数値群全てが0であれば0の結果を返し、その数値群の中の少なくともいずれか一つでも1であれば1の結果を返す演算処理を行う関数のことである。
例えば、第A列を構成する3つのエリア区画A1、A2、A3に着目すると、A1=0、A2=1、A3=0の値となっている。従って第A列を構成する3つのエリア区画の値の論理和の演算結果はA2が1の値であるから1という結果になる。
同様に第B列を構成する3つのエリア区画B1、B2、B3の値の論理和の演算結果は3つのエリア区画の値が全て0であるから0となる。
以下第C列、第D列、第E列について同様の演算処理を行うと、最終的に図74の破線囲い内に示す結果となる。この破線囲い内のデータ値群を、図73に示すような2次元状に展開しているデータ群を図74に示すように奥行き方向に演算処理して一次元のデータ状態にすることから、奥行き方向一次元データ223と定義する。
次にエリア風向制御部222は、メモリ218に記憶格納されている図75に示す左右風向設定表を参照して、算出した奥行き方向一次元データ223の結果と合致するものを、この表の中から抽出して左右風向制御板207の最終的な設定角度を決定する。
図75の左右風向設定表は、奥行き方向一次元データ223の各列毎の値に応じて、左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bの設定角度が規定されている一覧表であり、メモリ218に記憶格納されているものである。
例えば、図74に示すように奥行き方向一次元データ223は第A列から第E列の順に、1、0、0、0、1という結果になっているので、図75の左右風向設定表では番号18番の行に記載されている内容に合致する。
番号18番では、左右風向制御板(左)207aの設定角度は左向き、左右風向制御板(右)207bの設定角度は右向きとなっており、メモリ218に予め記憶格納されている各設定角度に必要なステッピングモーターの回転駆動量に基いて、各々の結果に応じたステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量を決定しこの結果を出力部219へ引き渡す。
出力部219では、エリア風向制御部222から引き渡された各々の左右風向制御用ステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量に基き、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a及び左右風向(右)ステッピングモーター12bを回転駆動する。この結果左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bが、目標とするエリア区画に向けて気流を整流することとなる設定角度に設定される。
次に上下風向制御板206の設定角度を決定する方法を説明する。エリア風向制御部222は、上下風向制御板206の設定角度を決定するために、図72に示す15の各エリア区画群の配置状態を、まず図76に示すように、左領域、中央領域、右領域に分類する。
すなわち左領域は、第A列と第B列の6つのエリア区画A1、A2、A3、B1、B2、B3から構成され、中央領域は第C列の3つのエリア区画C1、C2、C3から構成され、右領域は第D列と第E列の6つのエリア区画D1、D2、D3、E1、E2、E3から構成されている。
次にエリア風向制御部222は、各領域毎に左右方向に各エリア区画の論理和を各行毎に算出する。すなわち目標エリア決定部221によりA2とE2のエリア区画が目標エリアと決定されているので、図77に示すように左領域では第1行の2つのエリア区画A1とB1はともに値が“0”であるから、その論理和の演算結果は0となる。
同様に第2行の2つのエリア区画A2とB2は、A2=1、B2=0でありA2が“1”であるからその論理和の演算結果は1となる。
第3行の2つのエリア区画A3とB3はともに“0”であるから、その論理和の演算結果は0となり、結果左領域の演算処理結果は、第1行から第3行の順に0、1、0すなわち図77の左側の破線囲い内の結果になる。この囲い内のデータ値群を、左領域内で各エリア区画のデータを各行毎に左右方向に演算処理して一次元のデータ状態にすることから、左右方向一次元データ(左領域)224と定義する。
同様にして右領域については、図77の右側の破線囲い内に示すような左右方向一次元データ(右領域)225が演算結果として得られる。
中央領域については、列が第C列の一つしかないので、第C列の3つのエリア区画C1、C2、C3のデータがそのまま左右方向一次元データ(中央領域)ということになる。
続いてエリア風向制御部222は、左領域、中央領域、右領域の3つの領域について、各々の領域内のすべてのエリア区画について論理和をとる演算処理を行い、各々の領域に目標とすべきエリア区画が存在するかどうかを判別する。
例えば、図77に示すように、左領域内にはエリア区画A2が1であるから左領域は1、同様に中央領域は目標とするエリア区画が存在しないので0、右領域は1というように判別する。
エリア風向制御部222は、この判別結果に合致するものをメモリ218に記憶格納されている図78に示す上下風向制御板(左)−(右)動作決定表の中から抽出して各々の上下風向制御板206(上下風向制御板(左)206a、上下風向制御板(右)206b)の動作を決定する。
図78は目標とするエリア区画が左領域、中央領域、右領域の各領域の中に存在しているかどうかを分類し、その分類毎に上下風向制御板(左)206a及び上下風向制御板(右)206bの動作を決定する上下風向制御板(左)−(右)動作決定表である。
この表中で右領域を狙うとは、右領域の左右方向一次元データ(左右方向一次元データ(右領域)225)を使用するという意味であり、同様に左領域を狙うとは、左領域の左右方向一次元データ(左右方向一次元データ(左領域)224)を使用し、中央領域を狙うとは中央領域の左右方向一次元データを使用するという意味である。
また左+中央領域を狙うとは、左領域の左右方向一次元データ(左右方向一次元データ(左領域)224)と中央領域の左右方向一次元データを行方向に論理和演算処理を行った結果得られる左右方向一次元データを使用するという意味である。
同様に右+中央領域を狙うとは、右領域の左右方向一次元データ(左右方向一次元データ(右領域)225)と中央領域の左右方向一次元データを行方向に論理和演算処理を行った結果得られる左右方向一次元データを使用するという意味である。
いま、左領域=1、中央領域=0、右領域=1の結果であるので、図78の表の番号6番の行に記載されている内容がこれに合致する。番号6番では、上下風向制御板(左)206aは左領域を狙う、上下風向制御板(右)206bは右領域を狙うと指定されている。従って、上下風向制御板(左)206aは左領域の左右方向一次元データ(左領域)224を使用し、上下風向制御板(右)206bは右領域の左右方向一次元データ(右領域)225を使用する。
次にエリア風向制御部222は、各々の上下風向制御板(上下風向制御板(左)206a、上下風向制御板(右)206b)が使用する左右方向一次元データ(左右方向一次元データ(左領域)224、左右方向一次元データ(右領域)225)と合致するものを、メモリ218に記憶格納されている図79に示す上下風向設定表から抽出し、各々の上下風向制御板(左)206a、上下風向制御板(右)206bの最終的な設定角度を決定する。
図79の上下風向設定表は左右方向一次元データの各行毎の値に応じて、上下風向制御板206の設定角度が規定されている一覧表であり、上下風向制御板(左)206a、上下風向制御板(右)206bの両方の上下風向制御板206について適用される表である。
表中の上下風向1番から上下風向5番とは、ここでは上下風向1番は水平方向に吹出す設定角度であり、上下風向5番は最も下吹き角度となる設定角度であり、上下風向2番から上下風向3番はその番号順に上下風向1番と上下風向5番の間に設定される設定角度として記載している。
いま、上下風向制御板(左)206aは、左領域の左右風向一次元データ(左領域)224を使用し、左右方向一次元データ(左領域)224は第1行から第3行の順で0、1、0となっているから、図79の表中の番号3番に合致する。
番号3番には、上下風向制御板206の設定角度は上下風向3番と指定されているので、上下風向制御板(左)206aは最終的にこの上下風向3番の設定角度に設定される。
同様にして上下風向制御板(右)206bは、右領域の左右方向一次元データ(右領域)225を使用し、その値は0、1、0であるから図79の表中の番号3番に指定されている上下風向3番の設定角度に設定される。
設定角度が決定されるとエリア風向制御部222は、メモリ218に予め記憶格納されている各設定角度に必要なステッピングモーター(上下風向(左)制御用ステッピングモーター210a、上下風向(右)ステッピングモーター10b)の回転駆動量に基いて、各々の結果に応じたステッピングモーター(上下風向(左)制御用ステッピングモーター210a、上下風向(右)ステッピングモーター10b)の回転駆動量を決定しこの結果を出力部219へ引き渡す。
出力部219では、エリア風向制御部222から引き渡された各々の上下風向制御用ステッピングモーター(上下風向(左)制御用ステッピングモーター210a、上下風向(右)ステッピングモーター10b)の回転駆動量に基き、上下風向(左)制御用ステッピングモーター210a及び上下風向(右)ステッピングモーター10bを回転駆動する。
この結果上下風向制御板(左)206a及び上下風向制御板(右)206bが目標とするエリア区画に向けて気流を整流することとなる設定角度に設定される。
因みに、図76乃至図78に示すように二次元状に展開している複数のエリア区画を左領域、中央領域、右領域の複数の領域に分類し、図78に示す判断処理によって最終的な上下風向制御板(左)206a及び上下風向制御板(右)206bの設定角度を決定するようにしているのは、上下風向制御板206が複数存在しているため、例えば目標エリア区画が1ヶ所の場合には全上下風向制御板206にてそのエリア区画を狙うように動作させ、あるいは異なる2ヶ所が目標エリア区画となった場合には各々の上下風向制御板206によって吹き分けを行うというような動作ができるようにするためである。
以上のような処理を経て最終的に上下風向制御板(左)206aおよび上下風向制御板(右)206bと、左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bとの全ての風向制御板の設定角度が決定される。
この風向動作状態を斜視図で示したものが図80であり、左右風向制御板207の図示を省略したものが図81であり、上下風向制御板206の図示を省略したものが図82である。
これら3つの図(図80〜図82)に図示されているように、上下風向制御板(左)206aおよび上下風向制御板(右)206bはともに水平吹きと下吹きの中間に位置するような角度に設定され、左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bは各々空気調和機本体201の中心から外側へ向って位置する設定角度に設定され、結果空気調和機本体201から吹出される気流は図示した矢印のようにやや下方向外側へ向って吹出すこととなる。
図83はこれを室内空間において図示したもので、人体位置が検出された、すなわち目標とするA2とE2の2つのエリア区画に向けて吹出し気流が整流されていることが分かる。
従って、既に述べたように赤外線センサ3から算出される床面エリアを15のエリアに区分することにより、赤外線センサ3から求められる人の位置を15のエリア区画へ座標点を置き換え、高分解能による高精度な人位置情報にのっとった気流制御を実現することができる。
本実施の形態においては、静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流を直接人体の位置エリアに吹きつけるのではなく、例えば人体検知位置エリアの両側に吹き分けることで直接気流を人体に当てることによる肌水分が落ちる(下がる)ことをさけ、且つ帯電されたで静電ミストが人体に両サイドから寄ってくること(電位差のある人体へ寄りやすく)で効率よく肌水分量を上げる効果を持つことを特徴とする。
例えば、人体検出位置がC2(図72)のエリア区画であると人体検出部20が判断すると、目標エリア決定部221の判断結果は、C2の両側のエリア区画B2とD2に“1”、それ以外の残りの13のエリア区画には“0”という値が設定される。
この場合、奥行き方向一次元データ223は第A列から第E列の順に、0、1、0、1、0という結果になっているので、図75の左右風向設定表では番号11番の行に記載されている内容に合致する。
番号11番では、左右風向制御板(左)207aの設定角度は左中向き、左右風向制御板(右)207bの設定角度は右中向きとなっており、メモリ218に予め記憶格納されている各設定角度に必要なステッピングモーターの回転駆動量に基いて、各々の結果に応じたステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量を決定しこの結果を出力部219へ引き渡す。
出力部219では、エリア風向制御部222から引き渡された各々の左右風向制御用ステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量に基き、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a及び左右風向(右)ステッピングモーター12bを回転駆動する。この結果左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bが、目標とするエリア区画(B2、D2)に向けて気流を整流することとなる設定角度に設定される。
このように、静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流を直接人体の位置エリア(エリア区画C2)に吹きつけるのではなく、人体検知位置エリア(エリア区画C2)の両側エリア区画(B2、D2)に吹き分けることができる。
尚、人体検出位置がC2(図72)のエリア区画であると人体検出部20が判断すると、目標エリア決定部221の判断結果は、C2の両端のエリア区画A2とE2に“1”、それ以外の残りの13のエリア区画には“0”という値が設定されるようにしてもよい。
この場合は、奥行き方向一次元データ223は第A列から第E列の順に、1、0、0、0、1という結果になっているので、図75の左右風向設定表では番号18番の行に記載されている内容に合致する。
番号18番では、左右風向制御板(左)207aの設定角度は左向き、左右風向制御板(右)207bの設定角度は右向きとなっており、メモリ218に予め記憶格納されている各設定角度に必要なステッピングモーターの回転駆動量に基いて、各々の結果に応じたステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量を決定しこの結果を出力部219へ引き渡す。
出力部219では、エリア風向制御部222から引き渡された各々の左右風向制御用ステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量に基き、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a及び左右風向(右)ステッピングモーター12bを回転駆動する。この結果左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bが、目標とするエリア区画(A2、E2)に向けて気流を整流することとなる設定角度に設定される。
このように、静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流を直接人体の位置エリア(エリア区画C2)に吹きつけるのではなく、人体検知位置エリア(エリア区画C2)の両端のエリア区画(A2、E2)に吹き分けることでも、人体検知位置エリア(エリア区画C2)の両側エリア区画(B2、D2)に吹き分ける場合と略同様の効果を奏することができる。
また、人体検出位置がA2(図72)のエリア区画であると人体検出部20が判断すると、目標エリア決定部221の判断結果は、A2の右隣のエリア区画B2に“1”、それ以外の残りの14のエリア区画には“0”という値が設定される。
この場合は、奥行き方向一次元データ223は第A列から第E列の順に、0、1、0、0、0という結果になっているので、図75の左右風向設定表では番号9番の行に記載されている内容に合致する。
番号9番では、左右風向制御板(左)207aの設定角度は左中向き、左右風向制御板(右)207bの設定角度は左中向きとなっており、メモリ218に予め記憶格納されている各設定角度に必要なステッピングモーターの回転駆動量に基いて、各々の結果に応じたステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量を決定しこの結果を出力部219へ引き渡す。
出力部219では、エリア風向制御部222から引き渡された各々の左右風向制御用ステッピングモーター(左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a、左右風向(右)制御用ステッピングモーター212b)の回転駆動量に基き、左右風向(左)制御用ステッピングモーター212a及び左右風向(右)ステッピングモーター12bを回転駆動する。この結果左右風向制御板(左)207a及び左右風向制御板(右)207bが、目標とするエリア区画(B2)に向けて気流を整流することとなる設定角度に設定される。
この場合でも、静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流を直接人体の位置エリアに吹きつけるのではなく、人体検知位置エリアの片側に吹きつけることで直接気流を人体に当てることによる肌水分が落ちる(下がる)ことをさけ、且つ帯電されたで静電ミストが人体に片方のサイドから寄ってくること(電位差のある人体へ寄りやすく)で効率よく肌水分量を上げる効果を持つ。
このように、静電霧化装置から生成された静電ミストをのせた気流を直接人体の位置エリアに吹きつけるのではなく、人体検知位置エリアの両側に吹き分ける、又は人体検知位置エリアの片側に吹きつけることで、暖房運転時のユーザの肌保湿効果が高まる(肌の水分量が増加する)。また、肌の水分量が増加することで、ユーザの体感温度は高まる。また、その分、暖房時の設定室温を下げることができ、その分空気調和機の消費電力量が低下し、省エネルギー化に貢献(寄与)する。
暖房運転時に使用者の顔や首など露出している部分の肌の水分量が25%増加すると、室内湿度が約20%RH増加したことに相当する。そして、室内湿度の約20%RHの増加は、人の体感温度が約1deg上昇することに相当する。暖房運転時に設定温度を1deg下げれば、空気調和機50の消費電力量を約10%削減することができる。
また、赤外線センサ3からの窓位置情報(図48)をもとに、人体検知のないときつまり室内に人がいない場合には、窓位置にあるカーテン等に直接静電ミストを吹きつける気流制御を行うことで、カーテン等の効率のよい除菌を行うことができる。