<偏光フィルム>
偏光フィルムとして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに一軸延伸及び二色性色素による染色処理を施して、その二色性色素を吸着配向させたものが好ましく用いられる。偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは99〜100モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと他の単量体との共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜5000である。
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えばアルデヒド類で変性されたものであるポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用しうる。偏光フィルム製造の開始材料としては、厚みが通常20〜100μm、好ましくは30〜80μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムの未延伸フィルムを用いるのがよい。工業的には、フィルムの幅は1500〜4000mmが実用的である。この未延伸フィルムを、膨潤処理、染色処理、ホウ酸処理及び水洗処理の順に処理し、ホウ酸処理までの工程で一軸延伸を施し、最後に乾燥して得られる偏光フィルムの厚みは、通常5〜50μmである。
偏光フィルムの作製方法としては、大きく分けて2つの製造方法がある。第1の方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、空気又は不活性ガス中で一軸延伸後、膨潤処理工程、染色処理工程、ホウ酸処理工程及び水洗処理工程の順に溶液処理し、最後に乾燥を行う方法である。第2の方法は、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水溶液で膨潤処理工程、染色処理工程、ホウ酸処理工程及び水洗処理工程の順に溶液処理し、ホウ酸処理工程及び/又はその前の工程で湿式にて一軸延伸を行い、最後に乾燥を行う方法である。
いずれの方法においても、一軸延伸は、1つの工程で行ってもよいし、2つ以上の工程で行ってもよいが、2つ以上の工程で行うことが好ましい。延伸方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、フィルムを搬送する2つのニップロール間に周速差をつけて延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報などに記載の熱ロール延伸法、テンター延伸法がある。また、基本的に工程の順序は、上述のとおりであるが、処理浴の数や、処理条件などに制約はない。また、上記第1及び第2の方法に記載されていない工程を別の目的で付加してもよい。かかる工程の例としては、ホウ酸処理後の、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液による浸漬処理(ヨウ化物処理)や、ホウ酸を含まない塩化亜鉛などを含有する亜鉛水溶液による浸漬処理(亜鉛処理)が挙げられる。
膨潤処理工程は、フィルム表面の異物除去、フィルム中の可塑剤除去、次工程での易染色性の付与、フィルムの可塑化などの目的で行われる。処理条件は、これらの目的が達成できる範囲で、かつ基材フィルムの極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定される。予め気体中で延伸したフィルムを膨潤させる場合には、通常20〜70℃、好ましくは30〜60℃の水溶液にフィルムを浸漬して行われる。フィルムの浸漬時間は、通常30〜300秒間、好ましくは60〜240秒間である。はじめから未延伸の原反フィルムを膨潤させる場合には、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃の水溶液にフィルムを浸漬して行われる。フィルムの浸漬時間は、通常30〜300秒間、好ましくは60〜240秒間である。
膨潤処理工程では、フィルムが幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るなどの問題が生じ易いため、拡幅ロール(エキスパンダーロール)、スパイラルロール、クラウンロール、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップなどの公知の拡幅装置でフィルムのシワを取りつつフィルムを搬送することが好ましい。浴中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)を併用したりすることも有用である。本工程では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば処理槽前後の搬送ロールの速度をコントロールする手段を講ずることが好ましい。また、使用する膨潤処理浴は、純水の他、ホウ酸(特開平10−153709号公報に記載)、塩化物(特開平06−281816号公報に記載)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類などを0.01〜0.1重量%の範囲で添加した水溶液も使用可能である。
二色性色素による染色処理工程は、フィルムに二色性色素を吸着、配向させるなどの目的で行われる。処理条件は、これらの目的が達成できる範囲で、かつ基材フィルムの極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、通常10〜45℃、好ましくは20〜35℃の温度条件下、重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=0.003〜0.2/0.1〜10/100の濃度の水溶液を用いて、通常30〜600秒間、好ましくは60〜300秒間浸漬処理を行う。ヨウ化カリウムに代えて、他のヨウ化物、例えばヨウ化亜鉛を用いてもよい。また、他のヨウ化物をヨウ化カリウムと併用してもよい。さらに、ヨウ化物以外の化合物、例えばホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルトを共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合、ヨウ素を含む点で下記のホウ酸処理と区別される。水100重量部に対し、ヨウ素を0.003重量部以上含んでいるものであれば染色槽とみなすことができる。
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、通常20〜80℃、好ましくは30〜70℃の温度条件下、重量比で二色性染料/水=0.001〜0.1/100の濃度の水溶液を用いて、通常30〜600秒、好ましくは60〜300秒浸漬処理を行う。使用する二色性染料の水溶液は、染色助剤などを含有していてもよく、例えば、硫酸ナトリウムなどの無機塩、界面活性剤を含有していてもよい。二色性染料は単独でもよいし、2種類以上の二色性染料を併用することもできる。
上述したように、染色槽でフィルムを延伸させてもよい。延伸は染色槽の前後のニップロールに周速差を持たせるなどの方法で行われる。また、膨潤処理工程と同様に、拡幅ロール(エキスパンダーロール)、スパイラルロール、クラウンロール、クロスガイダー、ベンドバーなどを、染色浴中及び/又は浴出入口に設置することもできる。
ホウ酸処理は、水100重量部に対してホウ酸を通常1〜10重量部含有する水溶液に、二色性色素で染色したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより行われる。二色性色素がヨウ素の場合、ヨウ化物を1〜30重量部含有させることが好ましい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛などが挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウムを共存させてもよい。
ホウ酸処理は、架橋による耐水化や色相調整(青味がかるのを防止するなど)などのために実施される。架橋による耐水化のためにホウ酸処理が行われる場合には、必要に応じて、ホウ酸以外に、又はホウ酸と共に、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどの架橋剤も使用することができる。なお、耐水化のためのホウ酸処理を、耐水化処理、架橋処理、固定化処理などの名称で呼称する場合もある。また、色相調整のためのホウ酸処理を、補色処理、再染色処理などの名称で呼称する場合もある。
このホウ酸処理は、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、処理浴の温度を適宜変更して行われる。耐水化のためのホウ酸処理、色相調整のためのホウ酸処理は特に区別されるものではないが、下記の条件で実施することができる。原反フィルムを膨潤処理、染色処理、ホウ酸処理する場合であって、ホウ酸処理が架橋による耐水化を目的としている場合には、水100重量部に対してホウ酸を通常3〜10重量部、ヨウ化物を通常1〜20重量部含有するホウ酸処理浴を使用し、通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃の温度で行われる。浸漬時間は、通常90〜300秒である。なお、予め延伸したフィルムに染色処理、ホウ酸処理を行う場合、ホウ酸処理浴の温度は、通常50〜85℃、好ましくは55〜80℃である。
耐水化のためのホウ酸処理の後、色相調整のためのホウ酸処理を行うようにしてもよい。例えば二色性染料がヨウ素の場合、この目的のためには、水100重量部に対してホウ酸を通常1〜5重量部、ヨウ化物を通常3〜30重量部含有するホウ酸処理浴を使用し、通常10〜45℃の温度で行われる。浸漬時間は、通常3〜300秒、好ましくは10〜240秒である。続く色相調整のためのホウ酸処理は、耐水化のためのホウ酸処理と比較して、通常、低いホウ酸濃度、高いヨウ化物濃度、低い温度で行われる。
これらのホウ酸処理は複数の工程からなっていてもよく、通常2〜5の工程で行われることが多い。この場合、使用する各ホウ酸処理槽の水溶液組成、温度は上述した範囲内で、同じであっても異なっていてもよい。上記耐水化のためのホウ酸処理、色相調整のためのホウ酸処理をそれぞれ複数の工程で行ってもよい。
なお、ホウ酸処理工程においても、染色処理工程と同様にフィルムの延伸を行ってもよい。最終的な積算延伸倍率は、通常4〜7倍、好ましくは4.5〜6.5倍である。ここでいう積算延伸倍率は、原反フィルムの長さ方向基準長さが、全ての延伸処理終了後のフィルムにおいてどれだけの長さになったかを意味し、例えば、原反フィルムにおいて1mであった部分が全ての延伸処理終了後のフィルムにおいて5mとなっていれば、そのときの積算延伸倍率は5倍となる。
ホウ酸処理の後、水洗処理が行われる。水洗処理は、耐水化及び/又は色相調整のためにホウ酸処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬、水をシャワーとして噴霧、又は浸漬と噴霧とを併用することによって行われる。水洗処理における水の温度は、通常2〜40℃であり、浸漬時間は、通常2〜120秒である。
ここで、延伸処理後のそれぞれの工程において、フィルムの張力がそれぞれ実質的に一定になるように張力制御を行ってもよい。具体的には、染色処理工程で延伸を終了した場合、以後のホウ酸処理工程及び水洗処理工程で張力制御を行う。染色処理工程の前工程で延伸が終了している場合には、染色処理工程及びホウ酸処理工程を含む以後の工程で張力制御を行う。ホウ酸処理工程が複数のホウ酸処理工程からなる場合には、最初又は最初から2段目までのホウ酸処理工程で前記フィルムを延伸し、延伸処理を行ったホウ酸処理工程の次のホウ酸処理工程から水洗工程までのそれぞれの工程において張力制御を行うか、最初から3段目までのホウ酸処理工程で前記フィルムを延伸し、延伸処理を行ったホウ酸処理工程の次のホウ酸処理工程から水洗工程までのそれぞれの工程において張力制御を行うことが好ましいが、工業的には、最初または最初から2段目までのホウ酸処理工程で前記フィルムを延伸し、延伸工程を行ったホウ酸処理工程の次のホウ酸処理工程から水洗工程までのそれぞれの工程において張力制御を行うことがより好ましい。なお、ホウ酸処理後に、上述したヨウ化物処理または亜鉛処理を行う場合には、これらの工程においても張力制御を行うことができる。
膨潤処理から水洗処理までのそれぞれの工程における張力は同じであってもよく、異なっていてもよい。張力制御におけるフィルムへの張力は、特に限定されるものではなく、単位幅当たり、通常150〜2000N/m、好ましくは600〜1500N/mの範囲内で適宜設定される。張力があまり小さいと、フィルムにシワなどができ易くなる。一方、張力があまり大きいと、フィルムの破断やベアリングの磨耗による低寿命化などの問題が生じる。また、この単位幅当たりの張力は、その工程の入口付近のフィルム幅と張力検出器の張力値から算出する。なお、張力制御を行った場合に、不可避的に若干延伸・収縮される場合があるが、これは通常、延伸処理に含めない。
偏光フィルム作製工程の最後には、乾燥処理が行われる。乾燥処理は、張力を少しずつ変えて多くの段数で行う方が好ましいが、設備上の制約などから、通常2〜3段で行われる。2段で行われる場合、前段における張力は600〜1500N/mの範囲から、後段における張力は300〜1200N/mの範囲から設定されることが好ましい。張力が大きくなりすぎると、フィルムの破断が多くなり、小さくなりすぎるとシワの発生が多くなり好ましくない。また、前段の乾燥温度を30〜90℃の範囲から、後段の乾燥温度を50〜100℃の範囲から設定することが好ましい。温度が高くなりすぎると、フィルムの破断が多くなり、また光学特性が低下し、温度が低くなりすぎるとスジが多くなり好ましくない。乾燥処理時間は、例えば60〜600秒とすることができ、各段における乾燥時間は同一でも異なっていてもよい。時間が長すぎると、生産性の面で好ましくなく、時間が短すぎると乾燥が不十分になり好ましくない。
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色処理およびホウ酸処理が施されて、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、通常5〜40μmである。また、この偏光フィルムの水分率は、好ましくは3〜14重量%、より好ましくは3〜10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%である。偏光フィルムの水分率があまり低いと、偏光フィルムが脆くなり、延伸方向に沿って裂け易くなってハンドリングが困難になり易く、また、偏光フィルムの水分率があまり高いと、偏光フィルムが乾熱環境下にて収縮し易くなる虞がある。なお、偏光フィルムの水分率は、105℃乾熱下で1時間保持した前後の重量変化から算出することができる。上述した好適な範囲内の水分率を有する偏光フィルムは、例えば偏光フィルムの乾燥温度及び乾燥時間を制御することで得ることができる。
<保護フィルム>
前記偏光フィルムの一方の面に、接着剤層を介して、保護フィルムが積層され、偏光板とされる。保護フィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において従来より広く用いられてきているフィルムを挙げることができる。
シクロオレフィン系樹脂としては、適宜の市販品、例えば、Topas(Ticona社製)、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(三井化学(株)製)を好適に用いることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、エスシーナ(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノアフィルム((株)オプテス製)などの予め製膜されたシクロオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を用いてもよい。
シクロオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、シクロオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、又はその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、通常1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
シクロオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光フィルムと接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、例えば、フジタックTD80(富士フィルム(株)製)、フジタックTD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタックTD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタックTD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を好適に用いることができる。
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、用途に応じて、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理などの表面処理が施されてもよい。また、視野角特性を改良するため液晶層などを形成させてもよい。また、位相差を付与するためセルロース系樹脂フィルムを延伸させてもよい。また、この酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
上述したような保護フィルムは、ロール状態にあると、フィルム同士が接着してブロッキングを生じ易い傾向にあるので、ロール端部に凹凸加工を施したり、端部にリボンを挿入したり、プロテクトフィルムを貼合したりして、ロール巻きとされる。
保護フィルムの厚みは薄いものが好ましいが、薄すぎると、強度が低下し、加工性に劣るものとなる。一方、厚すぎると、透明性が低下したり、積層後に必要な養生時間が長くなったりするなどの問題が生じる。したがって、保護フィルムの厚みは、80μm以下が好ましく、より好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmである。また、市場からはパネル、モジュールを含めた薄型化への要求があるため、偏光板に関しても薄さが求められていることから、偏光フィルムと保護フィルムの合計厚みが100μm以下であることが好ましく、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
<偏光フィルムと保護フィルムの貼合>
偏光フィルムと保護フィルムとは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤層を介して貼合される。
偏光フィルムとの接着面をケン化処理などで親水化処理した酢酸セルロース系フィルムを保護フィルムとして用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が接着剤として好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーの他、酢酸ビニルと他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μm以下となり、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
水系接着剤を用いて偏光フィルムと保護フィルムとを貼合する方法は特に限定されるものではなく、例えば、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの表面に接着剤を均一に塗布し、塗布面にもう一方のフィルムを重ねてロールなどにより貼合し、乾燥する方法が挙げられる。通常、接着剤は、その調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15〜30℃である。
水系接着剤を使用する場合は、偏光フィルムと保護フィルムとを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するため、積層フィルム(偏光板)を乾燥させる。乾燥は、適切な温度に保持された乾燥炉を連続的に通過させることにより行われる。このような乾燥は、特に限定されないが、例えば、乾燥炉内を連続して通過させながら、乾燥後の偏光板をロール状に巻き取っていくことにより行うことができる。
乾燥炉の温度は、30℃〜60℃であるのがよい。偏光フィルムの片面にのみ保護フィルムが積層されている場合、乾燥温度があまり高いと、偏光フィルムの収縮に起因する彎曲が生じ易くなり、乾燥温度があまり低いと、偏光フィルムと保護フィルムの間で剥離し易くなる。乾燥温度はより好ましくは40〜60℃である。
乾燥炉における積層フィルムの滞留時間は、例えば10〜1000秒とすることができ、特に生産性の観点からは、好ましくは60〜750秒、より好ましくは150〜600秒である。
乾燥後はさらに、室温又はそれよりやや高い温度、例えば20〜45℃で12〜600時間程度、養生してもよい。養生のときの温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
また、偏光フィルムと保護フィルムを貼合する際の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、例えば光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物を挙げることができる。
偏光子と保護フィルムを光硬化接着剤にて貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法により、偏光子及び/又は保護フィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。次に、ニップロールなどにより挟んで貼り合わせることにより接着される。また、偏光子と保護フィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロールなどで加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴムなどを用いることが可能である。さらに、偏光子と保護フィルムの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、これらロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
なお、乾燥又は硬化前における、上記ニップロールなどを用いて貼り合わされた後の接着剤層の厚さは、5μm以下であることが好ましく、また0.01μm以上であることが好ましい。
偏光子及び/又は保護フィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
硬化は接合後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。光硬化性接着剤への光照射強度は、該光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2であることが好ましい。該照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光フィルムの劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤ごとに制御されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、また通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光フィルムの偏光度、透過率および色相、保護フィルムの透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行なうことが好ましい。
偏光フィルムと保護フィルムとを貼合する際には、水系接着剤、UV着剤のいずれを用いる場合においても、保護フィルムが貼合されている面の反対側の偏光子表面をキズなどから保護するために、当該偏光フィルム表面に剥離可能なプロテクトフィルムを貼合してもよい。このプロテクトフィルムは、偏光板の偏光フィルム面に粘着剤層を形成する場合など、必要に応じて剥離する。
プロテクトフィルムと偏光子との間の剥離力は、好ましくは0.01〜5N/25mmであり、より好ましくは0.01〜2N/25mm、さらに好ましくは0.01〜0.5N/25mmである。剥離力があまり小さいと、偏光フィルムとプロテクトフィルムとの密着力が小さいため、プロテクトフィルムが部分的な剥がれが生じることがある。また、剥離力があまり大きいと、偏光フィルムからプロテクトフィルムを剥離するのが困難となるため好ましくない。
プロテクトフィルムの材質としては、ハンドリングが容易であり、ある程度の透明性が確保される、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などを好ましく用いることができ、これらの一種又は2種以上を単層又は多層状に成形したフィルムを保護フィルムとして用いることができる。
このようなプロテクトフィルムとしては、市販品の具体例を挙げれば、ポリエチレン樹脂フィルム表面に粘着剤層が形成されている「サニテクト」(商品名、(株)サンエー化研より販売)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム表面に粘着剤層が形成されている「E−マスク」(商品名、日東電工(株)製)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム表面に粘着剤層が形成されている「マスタック」(商品名、藤森工業(株)製)が挙げられる。
中でも、それ単独で偏光フィルムに対して粘着性を有する自己粘着性のプロテクトフィルムは、プロテクトフィルム表面の粘着剤層を保護する必要性が無いことから簡便であり、より好適に使用することができる。上記偏光フィルムに対して好適な剥離力を示す自己粘着性樹脂フィルムの市販品としては、例えば、東レ(株)製のポリエチレン樹脂からなる「トレテック」(商品名)を挙げることができる。なお、保護フィルムはフィッシュアイなどの欠陥が少ない方が好ましい。欠陥があると、偏光フィルムに形状が転写され、偏光フィルムの欠陥となる場合がある。
<粘着剤層>
このようにして得られた偏光板は、その偏光フィルム側の面に粘着剤層が積層される。本発明では、この偏光板と粘着剤層との積層を、粘着剤層の一方の面に剥離フィルムが積層されてなる剥離フィルム付き粘着剤を用い、その粘着剤層側の面が偏光板の偏光フィルム側の面と対向するように積層することにより行う。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。アクリル系樹脂は、公知のものから選択することができる。例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸アルキルを1種用いた単独重合体や、これらの(メタ)アクリル酸アルキルを2種以上用いた共重合体、さらには(メタ)アクリル酸アルキルを1種又は2種以上と他のモノマーを1種又は2種以上用いた共重合体が好適に用いられる。また、(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシ基、水酸基、アミド基、アミン基、エポキシ基などを有する極性モノマーが好ましく用いられる。
粘着剤には、架橋剤を含有させるのがよい。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボン酸金属塩を形成するもの、アミノ基を含む化合物であって、アミド結合を形成するもの、エポキシ基を含む化合物やヒドロキシル基を含む化合物であって、エステル結合を形成するもの、イソシアネート基を含む化合物であって、アミド結合を形成するもの、カルボキシル基を含む化合物であって、アミド結合やエステル結合を形成するものが例示される。特にイソシアネート基を含む化合物が有機系架橋剤として広く使用されている。
粘着剤は、エネルギー線硬化型であってもよいし、熱硬化型であってもよい。エネルギー線硬化型(エネルギー線硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型)粘着剤とは、エネルギー線硬化性を有しており、エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルムなどの被着体に密着し、エネルギー線により硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤である。エネルギー線硬化型粘粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型粘着剤は、一般にはアクリル系樹脂と、エネルギー線重合性化合物とを主成分としてなる。さらに、必要に応じて光開始剤、架橋剤、光増感剤を配合することもできる。
粘着剤層の厚みは1〜40μmであることが好ましいが、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲で、薄く塗るのが望ましく、良好な加工性を保ち、かつ偏光子の寸法変化を押さえるうえでは、より好ましくは3〜25μmである。粘着剤層が薄すぎると粘着性が低下し、厚すぎると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じ易くなる。
また、粘着剤層を構成する粘着剤は、23℃において、0.15〜10MPaの貯蔵弾性率を有するものが好ましい。通常の光学フィルム用途に用いられている粘着剤は、その貯蔵弾性率が高々0.1MPa程度であり、それに比べ高い値となる粘着剤が、偏光フィルム面には好適に用いられる。粘着剤の貯蔵弾性率を上述した範囲内とすることにより、高温環境下において発生する偏光フィルムの収縮に伴う寸法変化を小さく抑えることができ、良好な耐久性が得られる。
剥離フィルム付き粘着剤は、例えば、一方の面にシリコーン系などの離型処理が施されている剥離フィルムの当該離型処理面に、前記のベースポリマーをはじめとする粘着剤の各成分を含む溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成することにより、作製することができる。また、剥離フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの透明樹脂フィルムが好ましく用いられる。なお、剥離フィルム付き粘着剤の粘着剤層側の面及び/又は偏光板の偏光フィルム側の面には、必要に応じて密着処理、例えばコロナ処理を施してもよい。
<粘着剤層の含水率調整>
そして、本発明では、偏光板と剥離フィルム付き粘着剤とを積層する際、粘着剤層の含水率が、当該粘着剤層の23℃、相対湿度55%における飽和含水率に対する比の値で表して、1.0以上、好ましくは1.5以上であるようにする。このように粘着剤層の水分率が所定値以上の状態にある剥離フィルム付き粘着剤を、偏光板の偏光フィルム側の面に積層することにより、カールの発生が抑制された粘着剤付き偏光板を生産性良く製造することができる。なお、粘着剤層の含水率の前記比の値は、通常5以下、好ましくは3以下である。
粘着剤層の含水率を前記所定値以上として、剥離フィルム付き粘着剤を偏光板に積層する方法としては、例えば、粘着剤層の両側を剥離フィルムで保護してなる両面剥離フィルム付きシート状粘着剤のロールを、ロールごと23〜45℃、相対湿度55〜95%の槽内に3時間以上保持し、粘着剤層の含水率が前記所定値以上になるように調湿した後、当該両面剥離フィルム付きシート状粘着剤の片方の剥離フィルムを剥しながら、粘着剤層を偏光板にロール トゥ ロールで貼り合わせる方法や、シート状に切り出した両面剥離フィルム付きシート状粘着剤の片方の剥離フィルムを剥がして、同じくシート状の偏光板と枚葉で貼り合わせる方法が挙げられる。
また、偏光板のロールと剥離フィルム付き粘着剤を貼り合わせる工程で、粘着剤層を調湿しながら、偏光板に貼り合わせてもよい。例えば、貼り合わせ前に、粘着剤層に水を噴霧する、又は粘着剤層を水に浸漬してから、偏光板に積層すればよい。粘着剤層を水に浸漬する方法としては、粘着層の両側を剥離フィルムで保護してなる両面剥離フィルム付きシート状粘着剤のロールを、ロールごと水槽に浸漬してもよいし、ロールから当該両面剥離フィルム付きシート状粘着剤を巻き出しながら、水槽の中に通過させてもよい。この時、剥離フィルムは粘着剤層の両側についていてもよいし、水槽を通過させる前に片方を剥離していてもよい。後者の方が、水分調整が容易であるため好ましい。
水の噴霧又は水への浸漬処理は、剥離フィルム上に粘着剤層を形成し、連続して粘着剤層にこれらの処理を行った後、偏光板に貼り合わせてもよいし、粘着層の両側を剥離フィルムで保護してなる両面剥離フィルム付きシート状粘着剤のロールから当該両面剥離フィルム付きシート状粘着剤を巻き出しつつ、片方の剥離フィルムを剥しながら、露出した粘着剤層にこれらの処理を行った後、偏光板に貼り合わせてもよい。また、両面剥離フィルム付きシート状粘着剤をシート状に切り出し、片方の剥離フィルムを剥がし、粘着剤層にこれらの処理を行った後、偏光板に張り合わせてもよい。
粘着剤層に水を噴霧する、又は粘着剤層を水に浸漬する工程の後、粘着剤層の含水率を好ましい範囲に調節する目的で、ドライヤーなどの乾燥工程が設けられていてもよい。
上述の含水率調整方法は、例示したように、ロール トゥ ロールで、連続的に行ってもよいし、各々の部材を所定の大きさに切り出した後、枚葉で行ってもよいが、生産性、コストの面から、連続的に実施する方が望ましい。
<他の光学層>
こうして得られる本発明の粘着剤付き偏光板は、その保護フィルム側に他の光学層が積層されていてもよい。他の光学層の例としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルムが挙げられる。ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、例えばDBEF(3M社製、日本では住友スリーエム(株)から入手できる)、APF(3M社製、日本では住友スリーエム(株)から入手できる)が挙げられる。
上述の光学層は、通常、粘着剤層を介して粘着剤付き偏光板の保護フィルム側に積層される。このためには、当該粘着剤層を、予め粘着剤付き偏光板の保護フィルム上に形成した後、光学層を貼り合せてもよいし、光学層側に粘着剤層を形成した後、当該粘着層にて、粘着剤付き偏光板の保護フィルム表面に光学層を貼り合せてもよい。
また、保護フィルム表面に、直接、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの光学層を形成することもできる。保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法はとくに限定されず、公知の方法を用いることができる。
なお、これらの光学層は、偏光板と剥離フィルム付き粘着剤とを積層する前に、偏光板の保護フィルム側に積層しておいてもよいし、偏光板と剥離フィルム付き粘着剤とを積層した後、得られた粘着剤付き偏光板の保護フィルム側に積層してもよい。
本発明の粘着剤付き偏光板は、液晶セルなどの部材に貼合する際に、剥離フィルムを剥がして使用されるが、露出した粘着剤層に他の光学層を積層してもよい。この光学層の例としては、基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、WVフィルム(富士フィルム(株)製)、NHフィルム(新日本石油(株)製)、NRフィルム(新日本石油(株)製)などが挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、アートンフィルム(JSR(株)製)、エスシーナ(積水化学工業(株)製)、ゼオノアフィルム((株)オプテス製)などが挙げられる。
これらの光学層の表面には、通常、液晶セルなどの部材と貼合するための粘着剤層が設けられ、さらに当該粘着剤層の粘着面を保護するための剥離フィルムが積層される。
保護フィルム表面又は光学層表面に形成される粘着剤としては、特に限定されず、目的に応じて、先に例示した粘着剤を含む公知の粘着剤から適当なものを選択することができる。例えば上述した貯蔵弾性率の高いものの他、それより低い貯蔵弾性率を示すもの、例えば、通常の光学フィルムに用いられる0.1MPa程度又はそれ以下の貯蔵弾性率を示す粘着剤も、特に制限なく使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。
(粘着剤層の含水率の測定)
剥離フィルムの一方の面に粘着剤層が形成されてなる剥離フィルム付きシート状粘着剤の粘着剤層側の面に、さらに剥離フィルムを貼合し、両面剥離フィルム付きシート状粘着剤を作製した。当該両面剥離フィルム付きシート状粘着剤を90mm×90mmに切り出し、所定の調湿条件で保持した後の重量をA(g)とする。次いで同じサンプルを85℃のオーブンで6時間乾燥した後の重量をB(g)とする。さらに当該両面剥離フィルム付きシート状粘着剤の両面の剥離フィルムを剥がし、その剥離フィルムの合計重量C(g)を測定した後、当該剥離フィルムだけを、再度所定の調湿条件に保持した後の重量D(g)を測定した。上記のように得られたA〜Dの重量より、下記式で調湿後の粘着剤層の含水率を求めた。
粘着剤層の含水率(%)=[{(A−D)−(B−C)}/(B−C)]×100
A:調湿後の両面剥離フィルム付きシート状粘着剤の総重量
B:乾燥後の両面剥離フィルム付きシート状粘着剤の総重量
C:乾燥後の剥離フィルムの総重量
D:調湿後の剥離フィルムの総重量
(粘着剤の貯蔵弾性率の測定)
粘着剤から8mmφ×1mm厚の円柱状の試験片を作製し、DYNAMIC ANALYZER RDA II(REOMETRIC社製)を用いて、1Hzの周波数で測定した。
(粘着剤付き偏光板の逆カール量の測定)
粘着剤付き偏光板から、吸収軸に対して45°の角度で90mm×90mmの正方形の測定サンプルを切り出し、剥離フィルムを剥がした後、23℃±2℃,50%±5%にて管理された環境下で、平面台の上に、保護フィルム側を下方、粘着剤層側を上方に向けて置いた。正方形の透過軸方向の対角線上に位置する角2箇所と平面台との距離を測定し、その平均値を逆カール量とした。
(剥離フィルム付きシート状粘着剤(A)の作製)
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にイソシアネート系架橋剤及び光散乱性を持たせるための微粒子を添加してなるアクリル系粘着剤(A)の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが15μmとなるように塗工してなる剥離フィルム付きシート状粘着剤。当該粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は3.97MPaであり、当該剥離フィルム付きシート状粘着剤の粘着剤層の23℃、相対湿度55%で3時間保持することにより測定した飽和含水率は4.3%であった。
(剥離フィルム付きシート状粘着剤(B)の作製)
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にイソシアネート系架橋剤及び光散乱性を持たせるための微粒子を添加してなるアクリル系粘着剤(B)の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工してなる剥離フィルム付きシート状粘着剤。当該粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は3.97MPaであり、当該剥離フィルム付きシート状粘着剤の粘着剤層の23℃、相対湿度55%で3時間保持することにより測定した飽和含水率は3.5%であった。
(剥離フィルム付きシート状粘着剤(C)の作製)
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にイソシアネート系架橋剤及び光散乱性を持たせるための微粒子を添加してなるアクリル系粘着剤(C)の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが15μmとなるように塗工してなる剥離フィルム付きシート状粘着剤。当該粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は0.85MPaであり、当該剥離フィルム付きシート状粘着剤の粘着剤層の23℃、相対湿度55%で3時間保持することにより測定した飽和含水率は7.2%であった。
(剥離フィルム付きシート状粘着剤(D)の作製)
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にイソシアネート系架橋剤及び光散乱性を持たせるための微粒子を添加してなるアクリル系粘着剤(D)の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが5μmとなるように塗工してなる剥離フィルム付きシート状粘着剤。当該粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は0.50MPaであり、当該剥離フィルム付きシート状粘着剤の粘着剤層の23℃、相対湿度55%で3時間保持することにより測定した飽和含水率は8.1%であった。
実施例1〜8、比較例1〜4
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が810.5/7.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、95℃で152秒乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されてなる偏光フィルムを得た。
別途、100部の水に、ポリビニルアルコール樹脂〔(株)クラレ製の“クラレポバール117H”〕3部、〔日本合成化学工業(株)製の“ゴーセファイマーZ−200”〕3部、塩化亜鉛〔ナカライテスク(株)より販売〕0.18部、グリオキサール〔ナカライテスク(株)より販売〕1.4部を溶解させて、ポリビニルアルコール系接着剤を調製した。
先に得られた偏光フィルムの片面に、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースからなる厚さ40μmのフィルム(コニカミノルタオプト(株)製の“KC4UY”)を上記接着剤を介して、ニップロールにより貼合した。得られた偏光板の逆カール量を測定すると10mmであった。
表1に示す剥離フィルム付きシート状粘着剤を、表1に示す温度及び相対湿度のオーブン中で3時間調湿し、ただちに、先に得られた偏光板の偏光フィルム側の面に貼り合わせ、粘着剤付き偏光板を得た。調湿後の粘着剤層の含水率と、その飽和含水率に対する比の値を表1に示した。また、得られた粘着剤付き偏光板の逆カール量を測定し、結果を表1に示した。