JP5315114B2 - プロピレン系重合体の製造方法及びその方法により製造されるプロピレン系重合体 - Google Patents

プロピレン系重合体の製造方法及びその方法により製造されるプロピレン系重合体 Download PDF

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Description

本発明は、プロピレン系重合体の製造方法、及びその方法により製造されるプロピレン系重合体に関し、さらに詳しくは、気相重合プロセスにおいて、物性や製造上の問題となる副生物が少なく、微粉を発生させないプロピレン系重合体の製造方法、及びその方法により製造される広分子量分布化されかつ成形性に優れたプロピレン系重合体に関する。
ポリプロピレンを製造する方法としては、液相重合プロセスと気相重合プロセスが知られている。
液相重合プロセスは、大別すると、バルク重合法とスラリー重合法に分類される。バルク重合法では、攪拌機構付の槽型反応器や、反応液を軸流ポンプ等で循環するループ型反応器を用い、液化させたモノマー中でポリプロピレンを製造する。スラリー重合法は、バルク重合法と同様な反応器を用い、プロピレン重合用触媒に対して不活性な炭化水素系溶媒中にモノマーを溶解させて重合することによりポリプロピレンを得る方法である。
一方、気相重合法は、流動層や攪拌機を備えた槽型反応器を用い、固体触媒成分を実質的に液体の存在しない条件下で重合を行い、顆粒状の製品を抜き出す方法である。
気相重合法は、ポリマー粒子と同伴して抜き出される気固混合物を脱圧するのみで製品粉体が得られるため、残留溶媒の少ない良質なポリマーが得られる。また液体存在下で重合を行うスラリー重合法やバルク重合法よりも、プロセスが簡易化でき、またエネルギー的にも有利である。
一般的に、チーグラー・ナッタ触媒を用いてプロピレンの重合あるいはプロピレン−エチレンの共重合を行うと、分子量分布や組成分布が広い重合体が得られる。プロピレン単独重合の場合には低規則性・低分子量成分を多く含み広い分子量分布を有する重合体が得られ、プロピレン−エチレン共重合の場合には低結晶性成分を多く含み組成分布の広い重合体が得られる。該成分は物性低下や製造上の問題を引き起こしまた、該成分量が高くなると臭気や外観(ベタツキ等)の問題が発生し品質に悪影響を及ぼす。
また、チーグラー・ナッタ触媒は後述するメタロセン触媒と異なり、連鎖移動剤である水素との反応性が低いために低分子量成分の重合工程では大量の水素を供給することが必要となり、また重合活性も低下する。さらに一部には規則性の低い(融点の低い)ポリマーを作る活性点が存在するため、低分子量かつ低規則性ポリマーがべたつき成分となる。これらの理由からべたつき等の原因となる成分を付随させずに高MFRのポリマー成分(MFRで100dg/min以上、重量平均分子量Mwで12万以下)を多量に含むポリマーを工業的に生産するには難点が多かった。
近年、これらの欠点が少ないメタロセン触媒が開発されている。メタロセン触媒は連鎖移動剤である水素との反応性がよく、活性を低下させることが無く高MFRポリマーを重合することが可能である。また従来のチーグラー・ナッタ系触媒に較べて活性点が均一であるため、均一なポリマーが製造できる利点があり、べたつき成分の少ない良好なプロピレン系重合体を与えることが知られている。その一方で分子量分布が狭いポリマーを与えるため、従来の分子量分布の広いチーグラー・ナッタ系触媒のポリマーで使用している成形機を用いた場合成形性の面では劣る場合がある。
最近、この分子量分布を広げる目的で多段重合技術が検討されている。たとえばメタロセン触媒を用いたスラリー重合において水素/プロピレン比を段階的に変える方法が挙げられる(特許文献1)。
しかしながら、スラリー重合やバルク重合などの溶媒を使用するプロセスにおいては、低分子量成分が溶媒に溶出し、溶媒回収系等での付着によるトラブルが起こりやすくなる。また高MFRのポリマー成分(MFRで100dg/min以上、重量平均分子量Mwで12万以下)を多量に含むポリマーはポリマー粒子の強度が弱かったりするため攪拌や重合成長反応などにより粒子が壊れて微粉が発生するという問題もあった。さらにメタロセン触媒は従来のチーグラー・ナッタ系触媒とは異なり、高MFRポリマーの重合活性が非常に高いため、モノマー濃度を調節出来ないバルク重合プロセスでは、高MFRポリマー成分の割合が高くなりすぎるため分子量分布を広げることは難しかった。
特許第4119607号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、気相重合プロセスにおいて、物性や製造上の問題となる副生物が少なく、微粉を発生させないプロピレン系重合体の製造方法、及びその方法により製造される広分子量分布化されかつ成形性に優れたプロピレン系重合体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、担体に担持されたメタロセン触媒の存在下に、気相重合法により2段工程でプロピレン系重合体を製造するに当たり、第1及び第2工程の2つの重合工程を特定の条件で実施することにより、物性や製造上の問題となる副生物の発生が抑制でき、分子量分布が広いプロピレン系重合体を製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、担体に担持されたメタロセン触媒の存在下に、気相重合法により2段工程でプロピレン系重合体を製造する方法において、
第1工程でプロピレン系重合体成分(A)を製造したのち、引き続き、第2工程でプロピレン系重合体成分(B)を製造するに当たり、
第1工程および第2工程の重合条件を下記(i)〜(iii)の条件を満たすようにすることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
(i)第1工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が300molppm以下である
(ii)第2工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が1000molppm以上である
(iii)全体の重合量に対する第2工程の重合体の割合W(B)が10重量%以上90重量%以下である
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、第1工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が100molppm以下であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、第2工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が5000molppm以上であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、プロピレン系重合体成分(A)のMFRが10dg/分以下であること特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、プロピレン系重合体成分(A)のMFRが1dg/分以下であること特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、プロピレン系重合体成分(B)の重量平均分子量(Mw(B))が12万以下であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、プロピレン系重合体成分(B)の重量平均分子量(Mw(B))が1万以上であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、メタロセン触媒がイオン交換性層状珪酸塩に担持されたものであることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかに記載の発明の方法で製造したプロピレン系重合体であって、
重量平均分子量と数平均分子量との比[Mw/Mn(T)]が4以上でかつDSCで測定した融点Tm(T)が155℃以上であることを特徴とするプロピレン系重合体が提供される。
本発明によれば、べたつき成分、ブリードアウト成分を含有せず、かつ分子量分布が広いプロピレン系重合体を微粉の発生無く得ることができる。
図1は、GPCにおけるクロマトグラムのベースラインと区間の説明の図である。
本発明の製造方法は、担体に担持されたメタロセン触媒の存在下に、気相重合法により、プロピレン系重合体成分(A)を第1工程で、次いでプロピレン系重合体成分(B)を第2工程で逐次重合させることによってプロピレン系重合体を製造するに際し、第1工程および第2工程の重合条件を下記(i)〜(iii)の条件を満たすようにすることを特徴とする。
(i)第1工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が300molppm以下である
(ii)第2工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が1000molppm以上である
(iii)全体の重合量に対する第2工程の重合体の割合W(B)が10重量%以上90重量%以下である
以下、プロピレン系重合体の製造方法、プロピレン系重合体の特徴について、詳細に説明する。
本発明の製造方法は、第1工程で低MFRの結晶性プロピレン系重合体成分(A)(以下、「成分(A)」ともいう。)を、第2工程で高MFRの結晶性プロピレン系重合体成分(B)(以下、「成分(B)」ともいう。)を、逐次重合(通常は多段重合、中でも二段重合)することによって、プロピレン系重合体(以下、「本重合体」ともいう。)を製造する方法である。
さらに詳しくは、実質的に溶媒の不存在下にて第1工程において低MFRポリマー(高分子量ポリマー)をまず重合させてから、その後で高MFRポリマーを重合させる製造方法である。本発明者らは、これにより、微粉の発生を抑制し、かつべたつき成分の少ない良好なプロピレン系重合体を良好な性状で安定的に得ることが可能であることを見いだした。
微粉が発生する原因について現時点では必ずしも明確ではないが、本発明者らは次のように考えている。担持触媒においては生成するポリマーはいわゆるレプリカ効果(Polypropylene Handbook, Edward P. Moore, Jr.著 Hanser Publishers, Munich,P86)によって担体である固体表面で重合が始まりそれを中心にポリマー同士が粒子を形成して、重合中はそのポリマー粒子が成長していく。このポリマー粒子を通常重合パウダーと呼ぶが、これが破壊して微粉が発生するメカニズムには主に2つの原因があると考えられる。
第一は重合中の攪拌によって重合パウダー粒子が摩耗、破砕されることで微粉が発生するメカニズムである。これを防止するためには、担体の粒子形状を摩耗に強い形状にしたり、担体の粒子強度を強くしたり、また担体上の活性点の数を増やしてパウダー中でのポリマーの接触点数を増やしたりすることが必要と考えられる。特に低分子量体からなる重合パウダーは、それ自身が脆化しやすいため攪拌による力学的ストレスに弱く、微粉が発生しやすい。本発明者らは、これらの手法とは別のアプローチとして高分子量のポリマー自身を補強材として作用させる手法を見いだした。具体的にはパウダー粒子の強度が特に弱い重合の初期(すなわち第1工程)は低水素濃度で重合を行い高分子量体をまず生成させ、その後の工程、すなわち第2工程で高水素濃度でそれよりも低分子量成分を生成させる手法である。これにより特別な触媒改良、担体改良せずに微粉発生防止が可能となった。
微粉発生メカニズムの第2は高い重合速度に由来する、パウダー粒子の急速かつ不均一な成長によって、担体と相似形でパウダー粒子が成長せず粒子自身が細かく割れてしまう現象である。この原因は、重合速度が非常に速い場合、モノマーの拡散速度が重合に追いつかなくなる等の原因で粒子内の活性点すべてが均一な速度で重合しないため、パウダー粒子にひずみが生じ、粒子がでこぼこになったり、さらには自分の重合に伴い破砕すると考えられる。本発明者らはこの点についても考察を行い、モノマー濃度が高く重合速度が速すぎるバルク法を避け気相重合を選択し、これに加えて重合活性が高くなる高水素濃度での重合工程を第2工程とすることで、高分子量体で補強された粒子にしてから高活性重合を実施し、微粉の発生を低減できることを見出した。
本発明の重合体は低分子量成分と高分子量成分が均一に混ざった重合体であるが、バルク法やスラリー法などの溶媒を使用するプロセスにおいては、低分子量成分が溶媒に溶出し、溶媒回収系等での付着によるトラブルが起こりやすくなることからも、気相法の選択に至った。
また、本発明の重合体は、逐次製造される重合体の混合物であるため、各重合体を別々の反応器で、各重合体を共存させずに重合してから後で機械的に混合した組成物に較べて、圧倒的に均質な広い分子量分布の重合体組成物である。その理由は通常機械的に2つの重合体成分を混合する場合、両者を溶融させて機械的に混練するが、本発明のように高MFR成分と低MFR成分を溶融混練しても、両者の溶融時の粘度が大きく異なるため、混練のシェアが両者に均等にかからず良好な混練が出来ないためである。
本発明において、第1工程で重合されるプロピレン系重合体成分(A)は結晶性ポリプロピレンである。結晶性とは、立体規則性が高く比較的コモノマー含量が少ないことでラメラを形成することができることを意味する。すなわち、プロピレン系重合体成分(A)は、結晶性のものであって、耐熱性を発揮させ、べたつきやブリードアウトを抑制する。一方、プロピレン系重合体成分(B)もまた結晶性ポリプロピレンである。成分(B)は本発明の重合体を溶融させた場合の溶融粘度を低下させるとともに、冷却結晶化過程においては重合体の結晶化度を向上させ、重合体の剛性を向上させる作用を持つ。
本発明の重合プロセスの構成について、詳述する。
1.第1工程:プロピレン系重合体成分(A)の重合工程
第1工程の重合は、担体に担持されたメタロセン触媒の存在下で、プロピレン系重合体成分(A)を重合する工程である。成分(A)は主にプロピレン単独重合体を指すが、プロピレンと少量の炭素数2から20の他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ここで、他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を例示できる。この場合α−オレフィンモノマーを少量共存させてもよい。α−オレフィンモノマーとプロピレンモノマーのモル比は、通常10/90(=10mol%)程度であり、好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは2mol%以下、特に好ましくは1mol%以下、非常に好ましくは0.5mol%である。これらの値は、ガスクロマトグラフで測定される。
(1−1)重合方法
第1工程の重合方法は、気相重合法である。その理由は2つあり、第1は、液体を使用するバルク重合法では、モノマー濃度が高くなり高活性となりすぎるため、モノマー拡散が触媒粒子内部では重合に追いつかず、粒子内部での各活性点における重合速度にばらつきが生じ、粒子の表面形状が凹凸になり、たとえ第1工程では粒子が保てても、第2工程での攪拌には耐えないためである。また第2の理由は本発明の目的である広い分子量分布の重合体を得るためには、成分(A)の含量が高くなりすぎることは好ましくなく、この点からも高活性すぎるバルク重合法は適切とはいえない。またスラリー法は溶媒に可溶な低分子量成分を重合する第2工程に残存溶媒が持ち込まれるため好ましくない。
好ましい気相重合様式は、媒質を使わずにガス状の単量体中で重合を行なう方法、たとえば、生成ポリマー粒子をモノマー気流で流動させて、流動床を形成させる方式或いは生成ポリマー粒子を撹拌機により反応槽において撹拌する方式である。また反応熱の除去方法としてはガスを循環させその途中に熱交換器を設置してガスを冷却する方法、液体プロピレンやイソブタン等の凝縮性ガスの液化物を反応器に添加しその蒸発熱により反応器を冷却する方法、両者を併用する方法等が例示される。
第1工程の重合温度は、通常0〜150℃であり、その下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃であり、その上限は、好ましくは100℃、より好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃である。下限未満の温度では、重合活性が低下し、反応熱の除熱効率が悪化するという問題が生じるし、また、上限を超える温度では、生成するポリマーが軟化してべたついたり融着したりするという問題が生じる。この上限温度は、プロピレン系重合体成分(A)の示差走査型熱量計(DSC)による融点Tm(A)にも関係し、特にTm(A)が−40℃の温度以下、中でもTm(A)が−50℃の温度以下であるのが好ましい。また重合反応器内の露点以上の温度で重合することが必要である。露点は、ガス組成と温度で決まり、計算で算出することが出来る。露点以下の温度で重合するとパウダー性状が悪化するという問題が生じる。
第1工程の重合圧力は、一般に、0kg/cmGより大きく、2,000kg/cmG以下であり、好ましくは60kg/cmG以下である。圧力の下限は、好ましくは5kg/cmG、より好ましくは10kg/cmG、特に好ましくは15kg/cmGである。好ましい下限以下であると、重合活性が低下し、あるいは分子量が低下するなどの問題が生じる。
第1工程の気相重合は、プロピレンと水素を導入して、気相状態を維持できる温度、圧力条件下で行われる。
また、重合系内に窒素、プロパン、イソブタンなどの不活性ガスを共存させることもできるが、大量に存在させると、モノマー分圧が低下して、低活性となるため好ましくない。これら不活性ガスの割合は、20モル%以下、好ましくは10モル%以下とするのがよい。ただし、イソブタン等のように液体として重合槽に導入し、系内では気化して気体として存在する方法であれば、系内の冷却を補助できるため、共存させることは好ましい。
第1工程の重合時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
生成ポリマーの分子量調節剤として、補助的に水素を用いることができる。第1工程の反応系中の水素とプロピレンの量比は、経時的に一定である必要はなく、両者を一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。
(1−2)水素とプロピレンのモル比
本発明における第1工程の重合反応器内の水素/プロピレン比は、300molppm以下であることが必要である。好ましくは200molppm以下、さらに好ましくは100molppm以下、特に好ましくは70molppm以下である。この下限を上回ると活性が高くなりすぎたり、ポリマーの分子量が下がってパウダー割れや微粉発生が起きたり、重合体の分子量分布が広くならなくなったりする。これらの値はガスクロマトグラフで測定する。
2.第2工程:プロピレン系重合体成分(B)の重合工程
第2工程の重合は、第1工程の重合で得られる触媒含有のプロピレン系重合体成分(A)の存在下で、プロピレン系重合体成分(B)を重合する工程である。成分(B)は主にプロピレン単独重合体を指すが、プロピレンと少量の炭素数2から20の他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ここで、他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を例示できる。この場合α−オレフィンモノマーを少量共存させてもよい。α−オレフィンモノマーとプロピレンモノマーのモル比は、通常10/90(=10mol%)程度であり、好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは2mol%以下、特に好ましくは1mol%以下、非常に好ましくは0.5mol%である。これらの値は、ガスクロマトグラフで測定される。
(2−1)重合方法
第2工程の重合方法は、気相重合法である。その理由は、気相プロセス以外の重合プロセスでは、重合系内に存在する液体(溶媒もしくは液体プロピレン)に、低分子量成分や低結晶性成分が溶解しやすくなり、ポリマー粒子間のべたつきを生じやすくなるとともに、液体や溶媒の回収系、精製系において付着物や閉塞物を形成させ、運転安定性を阻害するからである。好ましい気相重合様式は、媒質を使わずにガス状の単量体中で重合を行なう方法、たとえば、生成ポリマー粒子をモノマー気流で流動させて、流動床を形成させる方式或いは生成ポリマー粒子を撹拌機により反応槽において撹拌する方式である。また反応熱の除去方法としてはガスを循環させその途中に熱交換器を設置してガスを冷却する方法、液体プロピレンやイソブタン等の凝縮性ガスの液化物を反応器に添加しその蒸発熱により反応器を冷却する方法、両者を併用する方法等が例示される。
第2工程の重合温度は、通常0〜150℃であり、その下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃であり、その上限は、好ましくは100℃、より好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃である。下限未満の温度では、重合活性が低下し、反応熱の除熱効率が悪化するという問題が生じるし、また、上限を超える温度では、生成するポリマーが軟化してべたついたり融着したりするという問題が生じる。この上限温度は、プロピレン系重合体成分(B)の示差走査型熱量計(DSC)による融点Tm(B)にも関係し、特にTm(B)が−40℃の温度以下、中でもTm(B)が−50℃の温度以下であるのが好ましい。また重合反応器内の露点以上の温度で重合することが必要である。露点は、ガス組成と温度で決まり、計算で算出することが出来る。露点以下の温度で重合するとパウダー性状が悪化するという問題が生じる。
第2工程の重合圧力は、一般に、0kg/cmGより大きく、2,000kg/cmG以下であり、好ましくは60kg/cmG以下である。圧力の下限は、好ましくは5kg/cmG、より好ましくは10kg/cmG、特に好ましくは15kg/cmGである。好ましい下限以下であると、重合活性が低下し、あるいは分子量が低下しすぎるなどの問題が生じる。
また、重合系内に窒素、プロパン、イソブタンなどの不活性ガスを共存させることもできるが、大量に存在させると、モノマー分圧が低下して、低活性となるため好ましくない。これら不活性ガスの割合は、20モル%以下、好ましくは10モル%以下とするのがよい。ただし、イソブタン等のように液体として重合槽に導入し、系内では気化して気体として存在する方法であれば、系内の冷却を補助できるため、共存させることは好ましい。
第2工程の気相重合は、プロピレンと水素を導入して、気相状態を維持できる温度、圧力条件下で行われる。
第2工程の重合時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
生成ポリマーの分子量調節剤として、補助的に水素を用いることができる。第2工程の反応系中の水素とプロピレンの量比は、経時的に一定である必要はなく、両者を一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。
(2−2)水素とプロピレンのモル比
本発明における第2工程の重合反応器内の水素/プロピレン比は、1000molppm以上であることが必要である。好ましくは2000molppm以上、さらに好ましくは3000molppm以上、特に好ましくは5000molppm以上、きわめて好ましくは7000molppm以上である。この下限を下回ると活性が低くなりすぎたり、ポリマーの分子量が上がって重合体の分子量分布が狭くなったりする。これらの値は、ガスクロマトグラフで測定される。
なお第1工程第2工程ともに水素とプロピレンのモル比は必ずしも常時一定である必要はない。連続重合法の場合はそのポリマーを重合した触媒の平均滞留時間の平均値を採用する。バッチ重合法の場合は重合開始から重合終了までの間の平均値を採用する。特にバッチ重合法においては水素を初期にだけ一括で反応器に導入することがあり、この場合水素の消費に従って経時的に減少したり、また逆に重合反応に伴い発生する水素の蓄積で経時的に上がっていく場合があるが、このような場合は重合開始時の水素とプロピレンのモル比と、重合終了時の水素とプロピレンのモル比との平均値を採用する。
3.多段重合
本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、第1工程で低MFRの結晶性プロピレン系重合体成分(A)を、第2工程で高MFRの結晶性プロピレン系重合体成分(B)を、逐次重合する製造方法である。通常は二段重合が好ましいが、第1工程を多段階で行ったり、第2工程を多段階で行ったりすることも可能である。このように2段以上の多段重合を行うことで触媒粒子の滞留時間分布が狭くなり、ショートパス粒子が減少するため触媒活性やポリマーの均一性という観点で好ましい。複数の反応器を直列に繋いで各工程を数段階に分けて実施する方法、一つの反応器を用いて各工程を複数回のバッチで実施する方法のいずれも可能である。本発明における第2工程の重合反応とは、上記条件の第1工程を少なくとも1つ実施後に行う重合反応を指し、例えば、重合体成分(A)の重合を多工程で行った後に行う重合体成分(B)の重合も含まれる。反応系中の各モノマーおよび水素の量比は経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。
反応の様式としては直列につないだ複数の反応器の最上流の反応器に触媒を連続的に供給しポリマーを連続的に抜き出しつつ後段の重合槽に移送する連続重合の様式がある。なおここで述べる連続的という意味は間欠的である場合も含む。また、別の例としては、一つの重合槽に触媒を最初に一括で供給して第一段の重合を行った後でモノマーをパージし、当該重合槽内に存在する触媒を失活させることなく、第二段目の重合をおこなう方法も例示できる。いずれにおいても、前の工程、前の重合から持ち込むモノマー、水素などが次の工程に与える影響を少なくするため、工程を移す前にモノマー等のパージ量を増やしたり、窒素などの不活性ガスで希釈もしくは置換することも可能であり、むしろそうするのが好ましい。
本発明においては、キラー化合物をいずれかの重合反応器に供給してもよい。好ましくは、第2工程を行う反応器に供給する。第2工程を複数の反応器で実施する場合は、最上流の反応器に供給するのが好ましい。
キラー化合物とは、重合触媒の活性(特に第2工程の活性)を低下、失活させる化合物である。キラー化合物は、正常な触媒粒子よりも、小さいショートパス粒子を選択的に捕捉し失活させる。これにより、成分(B)の含量割合[W(B)](重合体全量に対する成分(B)の量[W(B)](wt%))が過剰である粒子の生成を抑制する。W(B)が過剰である粒子が存在すると、微粉発生やべたつきが生じる可能性が考えられる。また、反応器内のポリマー粒子の表面に多くのキラー化合物が作用することから、表面の活性点だけが選択的に失活し、表面のべたつき成分の量が減少し粒子間のべたつき、反応器壁への付着も抑制される。さらに、キラー化合物の添加は、第2工程の重合活性の制御の手段としても、用いられる。これにより、重合体全量に対する成分(B)の量[W(B)](wt%)が制御可能となる。
キラー化合物として、通常は、酸素、エタノール、アセトン等の酸化剤やルイス塩基性化合物が使用される。また、メタロセン触媒を使用する場合は、アルミニウム化合物(スカベンジャー)と反応、相互作用する活性水素を持たず、一方、メタロセン触媒のシングルサイト活性点へは相互作用する極性基を持っている化合物であってもよい。このような化合物としては、ハロゲン化アルキルやエーテル、ビニルエーテル類が挙げられる。
4.全体の重合量に対する第2工程の重合体の割合
本発明の重合体は、全体の重合量に対する第2工程の重合体の割合[W(B)]が10重量%以上90重量%以下である。好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは30〜70wt%、さらに好ましくは40〜60重量%である。好ましい範囲の上限を超えると分子量分布が狭くなり成形性が低下したり、脆化が起こったりする。一方好ましい範囲の下限を超えると、結晶化度が低下したり、分子量分布が狭くなり成形性が低下したり、全体のMFRが下がりすぎて成形性が悪化したりする。
W(B)の分析法は、第2工程終了後の重合体全体のGPC曲線をピーク分割した図と、第1工程終了時に成分(A)を一部抜き出して測定した成分(A)のGPC曲線とを比較することで、その面積比から分析出来る。また、第1工程、第2工程の反応量を、ポリマーの増加量、モノマーの消費量、発熱量、パウダー粒径、反応器の重量増、などから求めて、これらから全体の反応量に対する第2工程の比としてW(B)を求めることも出来る。また、反応器を直列に繋いだ連続重合の場合は、第1、第2工程における時間あたりの生産量から計算できる。
W(B)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と、成分(B)を製造する第2工程の製造量の比を変化させることにより、制御することができる。例えば、W(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。逆も又同様である。
5.プロピレン系重合体成分(A)
第1工程で重合するプロピレン系重合体成分(A)は、高分子量かつ結晶性であり、成型時の配向結晶に寄与し剛性を向上させ、さらに脆化を防止する成分である。
成分(A)は主にプロピレン単独重合体を指すが、プロピレンと少量の炭素数2から20の他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。成分(A)のコモノマー含有量は、特に制限はないが、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.2重量%である。
上記範囲の上限を超した場合には、プロピレン系重合体の剛性と耐熱性が低下する。成分(A)のコモノマー含有量は、プロトン完全デカップリング法による13C−NMRスペクトルから求めることができる。
成分(A)のMFRに特に制限は無いが、好ましくは10dg/分以下、さらに好ましくは5dg/分、特に好ましくは2dg/分、きわめて好ましくは1dg/分、非常に好ましくは0.85dg/分である。MFRの上限を超えると重合体の脆化が起こる。
プロピレン系重合体成分(A)の結晶性の尺度である示差走査型熱量計(DSC)による融解ピーク温度Tm(A)については、特に制限は無いが、好ましくは120〜165℃の範囲にあることが必要である。
この融解ピーク温度Tm(A)の下限温度は、好ましくは145℃、より好ましくは155℃、さらに好ましくは155℃、特に好ましくは159℃である。
Tm(A)は、第1工程終了後に、少量サンプリングしたプロピレン系重合体成分(A)に対し、常法で、示差走査型熱量計(DSC)により得られる融解ピーク温度として測定される。Tm(A)が低くなりすぎると、剛性、耐熱性が悪化し、結晶化も遅くなって、射出成形では成形サイクルが長くなり、また、シートやフィルム成形ではロールへ取られやすくなるなどの問題を生じる。
6.プロピレン系重合体成分(B)
第2工程で重合するプロピレン系重合体成分(B)は、低分子量かつ結晶性であって、本重合体の結晶化度の向上に寄与する成分である。
成分(B)は主にプロピレン単独重合体を指すが、プロピレンと少量の炭素数2から20の他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。成分(B)のコモノマー含有量は、特に制限はないが、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.2重量%である。
上記範囲の上限を超した場合には、プロピレン系重合体の剛性と耐熱性が低下する。成分(B)のコモノマー含有量は、プロトン完全デカップリング法による13C−NMRスペクトルから求めることができる。
成分(B)の重量平均分子量Mw(B)には特に制限は無いが、12万以下であることが好ましい。より好ましくは11万以下、さらに好ましくは10万以下である。上限以上の重量平均分子量では、結晶化度が低下したり、分子量分布が狭くなり成形性が低下したり、全体のMFRが下がりすぎて成形性が悪化したりする。Mw(B)の下限は特に無いが好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、さらに好ましくは5万以上、である。下限以下であると融点が低下したりポリマーが脆化したりする問題がある。
Mw(B)の算出は、第2工程終了後の重合体全体のGPC曲線をピーク分割した図と、第1工程終了時に成分(A)を一部抜き出して測定した成分(A)のGPC曲線とを比較することで計算できる。また、第1工程、第2工程の反応量を、ポリマーの増加量、モノマーの消費量、発熱量、パウダー粒径、反応器の重量増、などから求めて、これらから全体の反応量に対する第2工程の比としてW(B)を求め、これと成分(A)の重量平均分子量[Mw(A)]、ならびに重合体全体の重量平均分子量[Mw(T)]、からも容易に算出できる。
7.プロピレン系重合体全体(T)
本発明の方法で製造したプロピレン系重合体(T)は、重量平均分子量と数平均分子量との比[Mw/Mn(T)]が4以上でかつDSCで測定した融点Tm(T)が155℃以上であることが好ましい。
[Mw/Mn(T)]は、4以上であることが好ましい。より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、非常に好ましくは8以上である。4より少ないと、配向結晶による高剛性化と結晶化度向上による高剛性化の両方の効果を得ることが困難になり好ましくない。
また、プロピレン系重合体(T)のDSCで測定した融点Tm(T)は、155℃以上であることが好ましい。より好ましくは157℃以上、さらに好ましくは159℃以上である。155℃より低いと、剛性や耐熱性が低下するため好ましくない。
プロピレン系重合体(T)のMFR(試験条件:230℃、2.16kg荷重)[MFR(T)]は、1dg/分以上100dg/分以下であるのが望ましい。下限のMFRを下回ると、製品の溶融時の粘度が高すぎて、成形性が悪化するので好ましくない。また、上限のMFRを上回ると、溶融時の溶融張力が低下して、成形性が悪化するため、好ましくない。この範囲の好ましい下限は、2dg/分、より好ましい下限は3dg/分である。この範囲の好ましい上限は、50dg/分、より好ましい上限は30dg/分である。
8.担持メタロセン触媒
本発明で使用される触媒は、活性点前駆体であるメタロセン錯体を担体に担持したメタロセン触媒である。担持しない場合は粒子性状が悪化して重合系内の付着、閉塞が起こり好ましくない。第2工程で使用される触媒は、通常第1工程と同じものであるが、第1工程終了後に担体に担持されたメタロセン触媒を加えても良い。好ましくは第1工程から担体に担持されたメタロセン触媒を使用しそれをそのまま使用する。
旧来のチーグラー・ナッタ系触媒では、触媒反応の活性点の種類が複数あるため、生成したプロピレン系重合体中に、低結晶・低分子量成分を多く生成することで、製品のべたつきやブリードアウトが強く見られ、ブリードアウトや外観不良などの問題が発生しやすいという欠点を有していた。さらに旧来のチーグラー・ナッタ系触媒では重合中に起こる活性の減衰が大きく、連続多段重合によって分子量分布を広げようとした場合一部の粒子は第2工程でほとんど重合せず、第1工程で製造した高分子量体の塊が出来てしまい、これが製品中のブツ等になって性能を落とすという問題がある。また活性点が複数ありそれぞれの反応性が異なるため、キラー技術によってショートパス粒子の重合を抑制する場合に、得られるポリマーがキラー種や量で変わるという問題もあった。
一方、メタロセン触媒などのシングルサイト触媒は、チーグラー系触媒に比して、生成重合体の分子量分布が狭く、べたつきやブリードアウトが抑制される点においては、チーグラー系触媒より優れた触媒である。また活性減衰が従来のチーグラー・ナッタ触媒よりも小さく、活性減衰が原因の高分子量のブツが出来にくいという利点もある。
以下本発明の製造方法で用いるメタロセン触媒について詳しく説明する。
(8−1)触媒成分
担持メタロセン触媒は、一般に、(W)共役五員環配位子を有する周期律表(短周期型)第4〜6族の遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを活性化させる(X)助触媒、及び必要に応じて使用される(Y)有機アルミニウム化合物、(Z)担体から構成される。
(W)メタロセン錯体
本発明において用いられるメタロセン錯体としては、代表的なものとして共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物のメタロセン錯体が挙げられ、これらのうち、下記一般式(1)で表される架橋メタロセン錯体であることが好ましい。中でもアズレン系、特にハフニウムを含むものが好ましい。
通常、ハフニウムを含む錯体を使用すると、分子量が向上する。
Figure 0005315114
式(1)中、Mは、ZrまたはHfである。FおよびGは、補助配位子であり、成分(X)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものである。EおよびE’は、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基である。Qは、EとE’を架橋する基である。EおよびE’は、さらに副環上に置換基を有していてもよい。
EおよびE’としては、インデニル基またはアズレニル基、特にアズレニル基が好ましい。
Qは、二つの共役五員環などの配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を表し、具体的にはアルキレン基、シリレン基或いはゲルミレン基であるのが好ましい。
Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる遷移金属の金属原子、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどである。特にジルコニウムまたはハフニウムが好ましい。もっとも好ましいのはハフニウムである。
FおよびGは、補助配位子であり、成分(X)の助触媒と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りFおよびGは、配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、或いはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが例示できる。これらのうち好ましいものは炭素数1〜10の炭化水素基、或いはハロゲン原子である。
メタロセン錯体の具体的化合物として、以下のものを例示することができる。
置換基が環を構成しているシクロペンタジエニル配位子を2個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体において、アズレン系のものとしては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(2−アントラセニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(9−フェナンスリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4―(3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、などが挙げられる。
アズレン系であって他の共役多員環配位子が異なるものとしては、ジメチルシリレン[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}][1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリドなどが挙げられる。
インデニル配位子を2個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体としては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}]ハフニウムジクロリド、などが挙げられる。
これら具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、またはその逆に置き換えた化合物も、好適なものとして例示される。ハフニウムをジルコニウムに置き換えた化合物も、使用できる。
(X)助触媒(活性化剤成分)
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させ得る化合物であり、具体的には、下記(X−1)〜(X−4)のものが挙げられる。
(X−1)アルミニウムオキシ化合物
(X−2)成分(W)と反応して、成分(W)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
(X−3)固体酸
(X−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(X)は、pKaが−8.2以下の酸点を持ち、その量がそれを中和するために成分(X)1g当たり、2,6−ジメチルピリジンを0.001ミリモル以上要するものであることが好ましく、さらに好ましくは0.01ミリモル以上のものである。
pKaが−8.2以下の酸点の量は、特開2002−53609号公報に記載の方法で測定しても良いが、精密に測定する場合は、特願2007−325541号の実施例に記載のように指示薬の着色を可視紫外スペクトルで定量しながら機器的に定量する方法が好ましい。
ここで、酸とは、物質の分類のカテゴリーの一つであり、ブレンステッド酸又はルイス酸である物質を指すと定義する。また、酸点とはその物質が酸としての性質を示す構成単位であると定義し、その量は、滴定法などの分析手段により、単位重量あたりの中和に要する2,6−ジメチルピリジン量のモル量で把握される。pKaが−8.2以下の酸点は、「強酸点」と呼ばれる。
本発明で用いる成分(X)は、強い酸点を特定量以上含有することによって重合活性が格段に向上する。
(X−1)のアルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは、周知であり、そのような化合物としては、具体的には次の一般式(2)〜(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005315114
上記の(2)〜(4)の各一般式中、Rは、水素原子または炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、中でも炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
上記一般式のうち、(2)及び(3)で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
上記一般式(4)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式:RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
一般式中、R及びRは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
(X−2)の化合物は、成分(W)と反応して、成分(W)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物などが挙げられる。また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。或いは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムなどの金属ハロゲン化物などが例示される。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(W)と反応して、成分(W)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。
(X−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、モリブデン酸、ニオブ酸、チタン酸、タングステン酸やこれらの複合酸、ヘテロポリ酸などが挙げられる。
(X−4)のイオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
珪酸塩は、各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族;バーミキュライトなどのバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族;パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族;Mg緑泥石などの緑泥石族、セピオライト、パリゴルスカイトなど
珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であるのが好ましく、スメクタイト族であることがより好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。珪酸塩については、天然品または工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すのが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。好ましくは酸処理である。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。なおこれらの化学処理の程度によってはイオン交換性が小さくなっている場合があるが、化学処理前の原料がイオン交換性層状珪酸塩であれば、特に問題ない。
(Y)有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒系に、必要に応じて使用される有機アルミニウム化合物としては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には以下の一般式(5)
AlR3−i (5)
(式(5)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0≦i≦3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0≦i<3とする。)
で示される化合物が使用される。
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、またはジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム、さらにはジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
これらのうち、特にトリアルキルアルミニウム、中でもトリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムが好ましい。
(Z)担体
メタロセン触媒系において用いられる担体としては、各種公知の無機或いは有機の微粒子状固体を挙げることができる。
無機固体の例示としては、多孔質酸化物が挙げられ、必要に応じて100〜1,000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど、またはこれらの混合物、たとえばSiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−V、SiO−Cr、SiO−TiO−MgOなどが挙げられる。これらのうち、SiOまたはAlを主成分とするものが好ましい。
また、上記(X)助触媒のうち固体のものであれば、担体兼助触媒として使用することが可能であり、かつ好ましい。担体兼助触媒の具体例としては、(X−3)固体酸や(X−4)イオン交換性層状珪酸塩などが挙げられる。ブロック共重合体の粒子性状を向上させるためには、各種公知の造粒を行うのが好ましい。
有機の微粒子状固体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体或いはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体の固体を例示することができる。
担体の平均粒径は、通常5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。
また、担体の比表面積は、通常50〜1,000m/g、好ましくは100〜500m/gであり、担体の細孔容積は、通常0.1〜2.5cm/g、好ましくは0.2〜0.5cm/gである。
また、担体兼助触媒として使用する助触媒(X)についても上記と同じ範囲の平均粒径及び比表面積のものが好ましい。
(8−2)触媒成分の接触
成分[W]と成分[X](助触媒)と成分[Z](担体)の接触において、接触順番に制限は無いが、例えば、下記のような方法がある。
(i)成分[W]と成分[X]を接触させた後に、成分[Z]を接触させる。
(ii)成分[W]と成分[Z]を接触させた後に、成分[X]を接触させる。
(iii)成分[Z]と成分[X]を接触させた後に、成分[W]を接触させる(なお、イオン交換性層状珪酸塩などの固体助触媒を担体兼助触媒として使用する場合、成分[Z]と成分[X]は、もともと接触担持されていることになるため、この接触順番となる)。
(iv)成分[W]と成分[X]と成分[Z]を、同時に接触させる。
この中で好ましいのは(iii)の順番である。
また、必要に応じて、成分[Y](有機アルミニウム化合物)を使用する場合についても、上記のいずれの段階で成分[Y]を接触させてもよい。好ましくは、成分[Z]と成分[X]を接触させた後に、成分[Y]を接触させ、その後成分[W]を接触させる方法である。
成分(W)と成分(Y)を接触させる(その場合成分(X)が存在していてもよい)温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃である。この温度範囲より低い場合は、反応が遅くなるし、また、高い場合は、成分(W)の分解反応が進行する。
また、成分(W)と成分(Y)を接触させる(その場合成分(X)が存在していてもよい)場合には、有機溶媒を溶媒として存在させるのが好ましい。この場合の成分(W)の有機溶媒中での濃度は、高い方が良く、好ましくは3mM以上,より好ましくは4mM以上、特に好ましくは6mM以上である。
上記の触媒成分のうち成分(W)と成分(X)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
成分(X)がアルミニウムオキシ化合物の場合は、Al/遷移金属のモル比は、通常10以上100,000以下、さらに100以上20,000以下、特に100以上10,000以下の範囲が適する。一方、成分(X)としてイオン性化合物或いはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比は、0.1〜1,000、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜10の範囲である。
(8−3)予備重合
本発明に用いられる触媒は、粒子性の改良のために、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すのが好ましい。
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用するのが好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であるのが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が助触媒成分(X)1重量部に対し、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.1〜50重量部である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
予備重合温度は、特に制限されないが、通常0℃〜100℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃、である。この範囲を下回ると反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、上回ると予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
予備重合時には、有機溶媒等の液体中で予備重合を実施することもでき、むしろそうするのが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度は、特に制限されないが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
9.プロピレン系重合体に配合することのできる成分
本発明のプロピレン系重合体においては、必要に応じ、付加的成分(任意成分)を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することもできる。配合の方法としては重合触媒に添加する方法、重合パウダーに添加する方法等が挙げられる。
この付加的成分としては、従来ポリオレフィン樹脂用配合剤として通常用いられている添加剤、例えば核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
これら添加剤の配合量は、一般に最終的なプロピレン系重合体全体に対し0.0001〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%である。
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム)、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物(旭電化社製商品名NW21)等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等を挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等を挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)等を挙げることができる。
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学(株)製)等を挙げることができる。
ヒンダードアミン系の光安定剤の具体例としては、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等を挙げることができる。
滑剤の具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアロイド等の高級脂肪酸アミド、シリコンオイル、高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
帯電防止剤としては、高級脂肪酸グリセリンエステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミド脂肪酸モノエステル等を挙げることができる。
これらの付加的成分は、本重合体に、直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには、溶融混練後に直接添加、或いは、本発明の目的を損なわない範囲で適宜マスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤や中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後、製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で他の樹脂、或いは、その他の付加的成分を添加し使用することも可能である。
混合、溶融、混練は、従来公知のあらゆる方法を用いることができるが、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行うのが好ましい。
10.プロピレン系重合体の用途及び成形方法
(10−1)用途
本発明のプロピレン系重合体は、フィルム、シート、各種容器、各種成形品、各種被覆材などに好適である。
成形品としても、同様に使用温度範囲が広く、ブリードアウトによる経時の外観悪化がなく、好適に用いることができる。
(10−2)成形方法
これらの各種製品の成形方法としては、公知の成形法を制限なく用いることができる。
フィルムやシートの成形法の例としては、空冷インフレーション成形、水冷インフレーション成形、Tダイによる無延伸成形、一軸延伸成形、二軸延伸成形、カレンダー成形などを用いることができる。
また、フィルムやシートとして使用する場合に、多層構成中の層としての使用も可能である。
容器などの成形としては、熱板成形、圧空成形、真空成形、真空圧空成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、射出成形、インサート成形等を用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
1.測定方法
(1)W(B)、Mw(B)の算出:
本発明において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長 : 3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1のように行う。
W(B)は、重合体全量に対する成分(B)の量[W(B)](wt%)であり、第2工程終了後の重合体全体(T)のGPC曲線をピーク分割した図と、第1工程終了時に成分(A)を一部抜き出して測定した成分(A)のGPC曲線とを比較することで、その面積比から分析して求めた。具体的には重合体全体(T)のGPC曲線を、成分(A)のGPC曲線とのこりのGPC曲線にピーク分割し、残りの方のGPC曲線を成分(B)のGPC曲線とし、これから成分Bの重量平均分子量[Mw(B)]、成分Bの数平均分子量[Mn(B)]を算出した。
(2)MFR(メルトマスフローレート、dg/min)の測定:
JIS K7210A法 条件Mに従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃
荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.00mm
抜出したプロピレン重合体成分(A)、最終的に得られたプロピレン系重合体(T)について、上記条件でMFRの測定を行った。
(3)融解ピーク温度Tm(A、T、℃)の測定:
Tm(A)及びTm(T)につき、プロピレン系重合体成分(A)または最終的に得られたプロピレン系重合体(T)を190℃でプレスして、シートを作成し、これを5mgとなるように秤量した。これをアルミパンにいれ、ふたをしてからDSC測定装置(セイコー電子工業製DSC−6200)にセットした。室温から200℃まで100℃/分の速度で昇温し、そのまま5分間保持し、230℃から40℃まで5℃/分の速度での降温によって結晶化温度を求めた。さらに融点と結晶融解熱は、40℃から200℃まで10℃/分の速度での昇温によって求めた。
(4)イオン交換性層状珪酸塩の粒径分布の測定:
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率1.0、形状係数1.0の条件で測定し、得られたメジアン径を平均粒径とした。
(5)重合反応器内の水素/プロピレン比(molppm)の測定:
第一工程及び第二工程それぞれにおいて、重合反応器内の水素/プロピレン比(molppm)は、各工程の開始時と終了時にガスクロマトグラフで測定した値の平均値として求めた。
(6)触媒活性(活性)(gPP/gCat)の測定:
触媒活性(活性)(gPP/gCat)は、得られたポリマーの重量を、重合槽に投入した触媒の重量(予備重合ポリマーを除いた重量)で除して求めた。
(7)微粉量(wt%)の測定:
微分の有無は、得られた重合体のパウダーを目視し、0.1mm以下の粒子が観察されるものを「有」、観察されないものを「無」とした。
また、最終的に得られたプロピレン系重合体(T)について、目開き210μmの篩を使用して震とう機で篩い分けを行い、篩下の量の重量比(wt%)を、微粉量として測定した。
(8)嵩密度(g/cc)の測定:
最終的に得られたプロピレン系重合体(T)についてJIS−K−6721に従って嵩密度(g/cc)を測定した。
2.実施例及び比較例
(実施例1)
(1)触媒合成
イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2260gを投入し、98%硫酸670gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(平均粒径18μm 水澤化学社製、ベンクレイSL)を400g添加後、撹拌した。その後、90℃で3.5時間反応させた。このスラリーを室温の純水2Lに注いだあとでヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過した。得られた固体を3Lの純水でスラリー化し、濾過するという操作をさらに3回繰り返した。
この固体を、5Lビーカー内において硫酸リチウム1水和物432gを純水1920mlに溶解させた水溶液に加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、3Lの純水で3回洗浄してケーキを回収し、これを120℃で終夜乾燥して化学処理モンモリロナイトを得た。この化学処理モンモリロナイトのAl/Si値は0.17(mol/mol)であった。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置で測定した平均粒径は18μmであった。
上記化学処理モンモリロナイトを容積1Lのフラスコに入れ、200℃で5時間減圧乾燥した。これを窒素雰囲気下(以後の操作はすべて乾燥窒素雰囲気下で実施し、使用する溶媒、モノマーも乾燥したものを使用した)で19.98gを秤量し、内容積1Lのフラスコに入れ、ヘプタン201ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液70ml(50.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、100ml量に調整されたスラリーを得た。
これに、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液3.4ml(2430μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、(r)ジクロロ[1,1’−シラフルオレニルビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム721mg(613μmol)にヘプタン(60ml)を加えたスラリーを加えて、40℃で60分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン340mlを追加して全量を500mlに調整し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を340ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液16.72ml(12.01mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を65.02g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、2.15であった。
(2)重合
第1工程:プロピレン重合体成分(A)の気相重合法による製造
内容積3Lの撹拌機付オートクレーブ内に種ポリマー(あらかじめ粒径850μm以下ならびに2000μm以上のものを篩い分けにて除去したTm163℃のプロピレン重合体)200gを入れ90℃で1時間窒素を流し攪拌しながら乾燥した。内温を40℃にした後、プロピレンを0.5MPa加圧した後で0.01MPaまでパージする操作を3回実施した。その後オートクレーブの入り口にT字管で窒素を流しながらトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/ml)2.86mlを加え、10分間90rpmで攪拌した。次に上記予備重合触媒(予備重合ポリマーを除いた固体触媒重量で30mg)を導入し、15分間かけて徐々にプロピレンを1.0MPaGまで加圧し徐々に60℃にした。次に回転数を200rpmまで上げて、90分かけてプロピレンを2.4MPaGまで加圧し内部温度を80℃にまで上げた。この時点を重合開始時間とし、その後内部温度を80℃に保ち、圧力を維持するためサーマル流量計を通じて元圧2.4MPaGに設定したプロピレンラインからプロピレン100gを供給した。重合時間は50分間であった。残モノマーのパージを行い、アルゴンを0.5MPaまで加圧後パージする操作を5回行い槽内をアルゴン置換した。撹拌を停止させ、アルゴンをフローさせながら、テフロン(登録商標)管を槽内に差し込み、ポリプロピレンを少量抜き出した。抜き出し量は11gであった。
第2工程:プロピレン重合体成分(B)の気相重合法による製造
重合槽の撹拌を再開後に水素を標準状態で600mL入れ15分かけてプロピレンで圧力1.7MPaGまで加圧し温度を75℃まで上げた。このときの反応器中の水素/プロピレンモル比は14000molppmであった。この時点を重合開始時間とし、その後内部温度を75℃に保ち、圧力を維持するためサーマル流量計を通じて元圧1.7MPaGに設定したプロピレンラインからプロピレンを累積量で100gとなるまで供給した。重合時間は50分間であった。重合終了直前の反応器中の水素/プロピレンモル比は6700molppmであった。回収したポリマーは75℃減圧下で60分間乾燥した。ポリマー中には微粉は全くなく、210μm以下の量は0であった。また嵩密度も0.442g/ccと良好であった。ポリマー物性は表1にまとめた。
(実施例2)
(1)触媒合成
触媒は、実施例1と同じものを使用した。
(2)重合
第1工程:プロピレン重合体成分(A)の気相重合法による製造
実施例1と同様に実施した。
第2工程:プロピレン重合体成分(B)の気相重合法による製造
水素の量を標準状態で150mL、重合温度を80℃、重合圧力を2.5MPaGとした以外は実施例1(2)の第2工程と同様に実施した。重合時間は54分であった。
(比較例1)
(1)触媒合成
触媒は、実施例1と同じものを使用した。
(2)重合
第1工程:プロピレン重合体成分(A)の気相重合法による製造
触媒導入直後に水素を標準状態の体積で200mL分導入し、重合圧力を1.7MPaG、重合温度を75℃にした以外は実施例1の第1工程と同様に実施した。重合時間は111分であった。この時点ですでにパウダー中に微粉が存在しており第2工程は実施しなかった。
(比較例2)
(1)触媒合成
触媒は、実施例1と同じものを使用した。
(2)重合
第1工程:プロピレン重合体成分(A)の気相重合法による製造
水素を標準状態の体積で100mL分導入した以外は比較例1の第1工程と同様に実施した。重合時間は95分であった。この時点ですでにパウダー中に微粉が存在していた。
第2工程は実施しなかった。
(比較例3)
(1)触媒合成
触媒は、実施例1と同じものを使用した。
(2)重合
第1工程:プロピレン重合体成分(A)の気相重合法による製造
内容積3Lの撹拌機付オートクレーブ内に種ポリマー(あらかじめ粒径850μm以下ならびに2000μm以上のものを篩い分けにて除去したTm163℃のプロピレン重合体)200gを入れ90℃で1時間窒素を流し攪拌しながら乾燥した。内温を40℃にした後、プロピレンを0.5MPa加圧した後で0.01MPaまでパージする操作を3回実施した。その後オートクレーブの入り口にT字管で窒素を流しながらトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/ml)2.86mlを加え、10分間90rpmで攪拌した。次に上記予備重合触媒(予備重合ポリマーを除いた固体触媒重量で30mg)を導入し、水素を標準状態の体積で600mL入れた後、15分間かけて徐々にプロピレンを1.0MPaGまで加圧し徐々に60℃にした。次に回転数を200rpmまで上げて、60分かけてプロピレンを1.7MPaGまで加圧し内部温度を75℃にまで上げた。この時点を重合開始時間とし、その後内部温度を75℃に保ち、圧力を維持するためサーマル流量計を通じて元圧1.7MPaGに設定したプロピレンラインからプロピレン100gを供給した。重合時間は30分間であった。残モノマーのパージを行い、アルゴンを0.5MPaまで加圧後パージする操作を5回行い槽内をアルゴン置換した。撹拌を停止させ、アルゴンをフローさせながら、テフロン(登録商標)管を槽内に差し込み、ポリプロピレンを少量抜き出した。抜き出し量は5gであった。
第2工程:プロピレン重合体成分(B)の気相重合法による製造
重合槽の撹拌を再開後に(水素を入れず)15分かけてプロピレンで圧力2.5MPaGまで加圧し温度を80℃まで上げた。このときの反応器中の水素/プロピレンモル比は40ppmであった。この時点を重合開始時間とし、その後内部温度を80℃に保ち、圧力を維持するためサーマル流量計を通じて元圧2.5MPaGに設定したプロピレンラインからプロピレンを累積量で100gとなるまで供給した。重合時間は224分間であった。重合終了直前の反応器中の水素/プロピレンモル比は67ppmであった。回収したポリマーは75℃減圧下で60分間乾燥した。ポリマー中には微粉が存在し、210μm以下の量は4wt%であった。また嵩密度も0.383g/ccと低かった。ポリマー物性は表1にまとめた。
Figure 0005315114
3.評価
以上より明らかなように、本発明の製造方法の特定事項である「第1工程と第2工程の水素/プロピレン比」との要件を満たさない方法による比較例3で得られたものは、微粉が発生し、粒子性状も悪く嵩密度が低いのに比べて、本発明の製造方法によるものは、微粉の発生がなく粒子性状が良好であることが明らかになった。また、本発明の製造方法の特定事項である「2段工程で製造」及び「第1工程の水素/プロピレン比」の要件を満たさない方法による比較例1又は2で得られたものは、微粉が多いのに比べて、本発明の製造方法によるものは、微粉が無いことが明らかになった。
したがって、本発明の製造方法及び該製造方法により製造されたプロピレン系重合体は微粉が無く粒子性状が良好であり、分子量分布が広いという点で、大きな技術的意義を持つことが明らかである。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法及び該製造方法により製造されたプロピレン系重合体によれば、物性や製造上の問題となる副生物が少なく、微粉を発生させないプロピレン系重合体の製造方法、及びその方法により製造される広分子量分布化されかつ成形性に優れたプロピレン系重合体であるので、べたつき等の原因となる成分を付随させずに高MFRのポリマー成分(MFRで100dg/min以上、重量平均分子量Mwで12万以下)を多量に含むポリマーを工業的に生産することを可能にし、産業上大いに有用である。

Claims (9)

  1. 担体に担持されたメタロセン触媒の存在下に、気相重合法により2段工程でプロピレン系重合体を製造する方法において、
    第1工程でプロピレン系重合体成分(A)を製造したのち、引き続き、第2工程でプロピレン系重合体成分(B)を製造するに当たり、
    第1工程および第2工程の重合条件を下記(i)〜(iii)の条件を満たすようにすることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
    (i)第1工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が300molppm以下である
    (ii)第2工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が1000molppm以上である
    (iii)全体の重合量に対する第2工程の重合体の割合W(B)が10重量%以上90重量%以下である
  2. 第1工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が100molppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  3. 第2工程における重合反応器内の水素/プロピレン比が5000molppm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  4. プロピレン系重合体成分(A)のMFRが10dg/分以下であること特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  5. プロピレン系重合体成分(A)のMFRが1dg/分以下であること特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  6. プロピレン系重合体成分(B)の重量平均分子量(Mw(B))が12万以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  7. プロピレン系重合体成分(B)の重量平均分子量(Mw(B))が1万以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  8. メタロセン触媒がイオン交換性層状珪酸塩に担持されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法で製造したプロピレン系重合体であって、
    重量平均分子量と数平均分子量との比[Mw/Mn(T)]が4以上でかつDSCで測定した融点Tm(T)が155℃以上であることを特徴とするプロピレン系重合体。
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