以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のHST走行システムが適用されるホイールローダの外観を示す図である。図1において、ホイールローダ100は相互に回動自在にピン結合された車体前部101と車体後部102とを備え、車体前部101と車体後部102とで車体を構成している。車体前部101にはブーム104aとバケット104bとからなるフロント作業装置104が設けられ、車体後部102には運転室(キャビン)106が設けられ、運転室106にはフロント操作装置104を操作するための操作レバー装置107、車体の向きを変えるためのハンドル108、エンジン回転数を制御するアクセルペダル50、後述する前後進切換スイッチ51及び速度段変速スイッチ52(図3及び図4参照)等の操作手段が設けられている。また、車体前部101及び車体後部102にはそれぞれ前輪111及び後輪112が取り付けられている。
図2は、本発明の一実施の形態に係わるホイールローダ100のHST走行システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2において、ホイールローダ100のHST走行システムは、エンジン10と、このエンジン10により駆動される走行装置15とを備え、走行装置15は、閉回路油圧駆動装置11及びクラッチ装置12を備えた油圧動力伝達装置(以下HSTという)13と、プロペラシャフト14と、上記の前輪111及び後輪112を有し、エンジン10の動力がHST13に伝えられ、更にHST13からプロペラシャフト14を介して前輪111及び後輪112へと伝えられる。
図3はHST13の詳細を示す図である。
図3において、HST13は閉回路油圧駆動装置11とクラッチ装置12を備えている。閉回路油圧駆動装置11は、エンジン10により駆動される両傾転型の可変容量型油圧ポンプ20と、この油圧ポンプ20に1対の主管路21a,22a及び21b,22bを介して閉回路接続された可変容量型の第1油圧モータ23、油圧ポンプ10に1対の主管路21a,22a及び21c,22cを介して閉回路接続されかつ第1油圧モータ23に並列に接続された可変容量型の第2油圧モータ24とを有している。第1及び第2油圧モータ23,24は、それぞれ、その傾転制御手段として、傾転制御アクチュエータ25,26及び電磁比例弁27,28を備え、電磁比例弁27,28を制御することにより傾転制御アクチュエータ25,26が制御され、第1及び第2油圧モータ23,24の傾転量(容量)が制御される。
クラッチ装置12は、第1油圧モータ23の出力軸に第1クラッチ30を介して連結された第1歯車31と、第2油圧モータ24に連結された第2歯車32と、第1及び第2歯車31,32にかみ合う第3歯車33と、第3歯車33の出力軸に連結された第4歯車34と、第4歯車34の出力軸に第2クラッチ35を介して接続された第5歯車36と、第4歯車34にかみ合う第6歯車37と、第6歯車37に第3クラッチ38を介して接続された第7歯車39と、第5歯車36と第7歯車39とかみ合う第8歯車40とを有し、第8歯車40の出力軸がプロペラシャフト14に連結されている。
第1クラッチ30は第1油圧モータ23とプロペラシャフト14との接続を切り替えるモータクラッチであり、第2クラッチ35は前進クラッチであり、第3クラッチ38は後進クラッチである。第1〜第3クラッチ30,35,38に対して、それぞれ、電磁切換弁42,43,44が設けられ、電磁切換弁42,43,44のON/OFFにより第1〜第3クラッチ30,35,38の接続が切り替えられる。
図2に戻り、ホイールローダ100のHST走行システムは、上記エンジン10と閉回路油圧駆動装置11とクラッチ装置12の操作手段としてアクセルペダル50、前後進切換スイッチ51、速度段変速スイッチ52を備え、かつエンジン10と閉回路油圧駆動装置11とクラッチ装置12の制御手段として、エンジン回転センサ54、HST出力軸回転センサ55、HSTコントローラ56、エンジンコントローラ57を備えている。HSTコントローラ56とエンジンコントローラ57は通信ライン58を介して接続され、車体ネットワークを構成している。
HSTコントローラ56は、前後進切換スイッチ51及び速度段変速スイッチ52からの操作信号、エンジン回転センサ54及びHST出力軸回転センサ55からの検出信号を入力し、所定の演算処理を行い、電磁比例弁27,28及び電磁切換弁42,43,44に制御信号を出力する。エンジンコントローラ57は、アクセルペダル50の操作信号及びHSTコントローラ56から指令信号を入力し、所定の演算処理を行い、エンジン10に備えられる電子制御ガバナ10aを制御し、エンジン10の出力トルクと回転数を制御する。
図4は、HSTコントローラ56とエンジンコントローラ57の機能の詳細を示す図である。
HSTコントローラ56は、その演算処理機能として、エンジン回転演算部56a、HST出力軸回転演算部56b、車速演算部56c、前後進スイッチ判定部56d、速度段スイッチ判定部56e、センサ/スイッチエラー判定部56f、パラメータ記憶部56g、HST制御部56h、通信部56jを有している。
エンジンコントローラ57は、その演算処理機能として、エンジン制御部57a及び通信部57bを有している。
HSTコントローラ56において、エンジン回転演算部56aはエンジン回転センサ54からの検出信号を入力し、エンジン10の回転数(実回転数)を演算する。HST出力軸回転演算部56bはHST出力軸回転センサ55からの検出信号を入力し、HST出力軸の回転数を演算し、車速演算部56cはそのHST出力軸の回転数に基づいて車速(ホイールローダの走行速度)を演算する。前後進スイッチ判定部56dは前後進切換スイッチ51からの操作信号を入力し前後進切換スイッチ51の前後進を判定し、速度段スイッチ判定部56eは速度段変速スイッチ52からの操作信号を入力し速度段変速スイッチ52の速度段を判定する。エンジン回転演算部56a、車速演算部56c、前後進スイッチ判定部56d、速度段スイッチ判定部56eはその演算結果及び判定結果をセンサ/スイッチエラー判定部56f及びHST制御部56hに入力する。センサ/スイッチエラー判定部56fは、エンジン回転演算部56a、車速演算部56c、前後進スイッチ判定部56d、速度段スイッチ判定部56eからの演算結果及び判定結果に基づいて前後進切換スイッチ51、速度段変速スイッチ52、エンジン回転センサ54、HST出力軸回転センサ55のエラー判定を行い、その判定結果をHST制御部56hに入力する。パラメータ記憶部56gは後述する制限車速Scmax、第1制限回転数Ncmax1やエンジン10の定格最大回転数Nmax等の制御演算に用いるパラメータを記憶している。通信部56jはエンジンコントローラ57の通信部57bと通信ライン58を介して接続され、HST制御部56hからの情報をエンジンコントローラ57に送信したり、エンジンコントローラ57からの情報を受信してHST制御部56hに与える。
図5はHST制御部56hの処理概要を示す図である。HST制御部56hは走行制御部561と制限回転数演算部562の2部分から構成され、走行制御部561はモータ制御部561aと前後進制御部561bとを有している。
モータ制御部561aは、エンジン回転演算部56aと車速演算部56cの演算結果、速度段スイッチ判定部56eの判定結果、及びパラメータ記憶部56gに記憶した制限車速Scmaxを入力し、所定の演算処理を行い、電磁比例弁27,28及び電磁切換弁42に制御信号を出力する。前後進制御部561bは前後進スイッチ判定部56dの判定結果を入力し、その判定結果が前進である場合は、前進クラッチ用の電磁切換弁43に制御信号を出力し、その判定結果が後進である場合は、後進クラッチ用の電磁切換弁44に制御信号を出力する。制限回転数演算部562は、車速演算部56cの演算結果、速度段スイッチ判定部56eの判定結果及びパラメータ記憶部56gに記憶した制限車速Scmax及び第1制限回転数Ncmax1を入力し、所定の演算処理を行い、通信部56jに後述する制御用の制限回転数Ncmaxbを出力する。この制限回転数Ncmaxbは通信ライン58を介してエンジンコントローラ57に送信される。
図4に戻り、エンジンコントローラ57においてエンジン制御部57aは、アクセルペダル50の操作信号を入力し、エンジン10の目標回転数を演算し、その目標回転数と通信ライン58を介して通信部57bにより受信した制御用の制限回転数Ncmaxbとの小さい方の回転数を選択し、その回転数を指令信号として電子制御ガバナ10aに出力する。
図5に示したHST制御部56hにおけるモータ制御部561aの演算処理の詳細を図6〜図11を用いて説明する。
図6はモータ制御部561aの演算処理の全体を示すフローチャートである。図6において、モータ制御部561aは、まず、パラメータ記憶部56gから制限車速Scmaxを読み出し(ステップS2)、この制限車速Scmaxを図7に示した目標傾転特性に参照して対応する第2油圧モータ24の制限傾転量q2cminを算出し、その制限車速S2cmaxと制限傾転量q2cminをRAM等の記憶部に保存する(ステップS4)。制限車速は例えば32km/時である。
次いで、モータ制御部561aは、速度段変速スイッチ52が1速(速度段1)、2速(速度段2)、3速(速度段3)、4速(速度段4)のいずれを選択しているかを判定し(ステップS10〜S40)、1速を選択している場合は図8に示す1速変速制御処理を行い(ステップS10→S50)、2速を選択している場合は図9に示す2速変速制御処理を行い(ステップS20→S60)、3速を選択している場合は図10に示す3速変速制御処理を行い(ステップS30→S70)、4速を選択している場合は図11に示す4速変速制御処理を行い(ステップS40→S80)、1速〜4速のいずれも選択していないと判定された場合はエラー処理を行う(ステップS40→S90)。エラー処理では例えば強制的に2速変速制御処理を行う。
図7は、1速〜4速変速制御処理において、第1及び第2油圧モータ23,24の目標傾転量を演算しするのに用いる車速と目標傾転量との関係(以下、適宜目標傾転特性という)を示す図である。図7において、車速と目標傾転量との関係は次のように設定されている。
車速が所定の値S0以下のときは、第1及び第2油圧モータ23,24の目標傾転量q1,q2はともに最大傾転量q1max,q2maxで一定である。
車速が所定の値S0を超えると、車速が増加するにしたがって第1油圧モータ23の目標傾転量q1が徐々に減少する。このとき第2油圧モータ24の目標傾転量q2は依然と最大傾転量q2maxで一定である。車速が更に増加し、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1min(0)に達すると、その後の車速の増加に対して第1油圧モータ23の目標傾転量q1は最小傾転量q1minに保持され、第2油圧モータ24の目標傾転量q2は車速が増加するにしたがって最大傾転量q2maxから徐々に減少する。
1速変速制御処理では、図7中の矢印Aの範囲内で第1及び第2油圧モータ23,24の目標傾転量q1,q2を演算し、2速変速制御処理では、図7中の矢印Bの範囲内で第1及び第2油圧モータ23,24の目標傾転量q1,q2を演算し、3速変速制御処理では、図7中の矢印Cの範囲内で第1及び第2油圧モータ23,24の目標傾転量q1,q2を演算し、4速変速制御処理では、図7中の矢印Dの範囲内で第1及び第2油圧モータ23,24の目標傾転量q1,q2を演算する。
本実施の形態では、4速選択時の固有の車速範囲内に制限車速Scmaxが設定されている。走行システムの最大車速Smaxを例えば40Km/時とすると、制限車速Scmaxは例えば32Km/時である。
また、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1min(0)に達すると、第1クラッチ30の接続は開放され、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続は切り離される。
図8は1速変速制御処理の処理内容を示すフローチャートであり、図9は2速変速制御処理の処理内容を示すフローチャートであり、図10は3速変速制御処理の処理内容を示すフローチャートであり、図11は4速変速制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
<1速変速制御処理>
1速変速制御処理では、図8に示すように、まず、車速演算部56cで演算した車速を図7に示した目標傾転特性に参照して対応する第1油圧モータ23の目標傾転量q1を算出し(ステップS510)、その目標傾転量q1が1速変速制御の最小値として予め設定した中間傾転量q1midに達したかどうかを判定し(ステップS515)、中間傾転量q1midに達していなければ(q1<q1mid)、目標傾転量q1に対応する電磁比例弁27の制御電流値I1を算出し(ステップS520)、中間傾転量q1midに達していれば(q1=q1mid)、中間傾転量q1midに対応する電磁比例弁27の制御電流値I1を算出する(ステップS525)。次いで、電磁比例弁27に電流値I1の制御信号を出力するとともに、電磁比例弁28に、予め求めておいた第2油圧モータ24の最大傾転量q2maxに対応する電流値I2(Imax)の制御信号を出力する(ステップS530)。
<2速変速制御処理>
2速変速制御処理でも図9に示すように1速変速制御処理と同様の処理を行う。すなわち、車速演算部56cで演算した車速を図7に示した目標傾転特性に参照して対応する第1油圧モータ23の目標傾転量q1を算出し(ステップS610)、その目標傾転量q1が予め設定した第1油圧モータ23の最小傾転量q1minに達したかどうかを判定し(ステップS615)、最小傾転量q1minに達していなければ(q1<q1min)、目標傾転量q1に対応する電磁比例弁27の制御電流値I1を算出し(ステップS620)、最小傾転量q1minに達していれば(q1=q1min)、最小傾転量q1minに対応する電磁比例弁27の制御電流値I1を算出する(ステップS625)。次いで、電磁比例弁27に電流値I1の制御信号を出力するとともに、電磁比例弁28に、予め求めておいた第2油圧モータ24の最大傾転量q2maxに対応する電流値I2(Imax)の制御信号を出力する(ステップS630)。
<3速変速制御処理>
3速変速制御処理では、図10に示すように、まず、車速演算部56cで演算した車速を図7に示した目標傾転特性に参照して対応する第1油圧モータ23の目標傾転量q1を算出し(ステップS710)、その目標傾転量q1が予め設定した第1油圧モータ23の最小傾転量q1minに達したかどうかを判定し(ステップS715)、最小傾転量q1minに達していなければ、目標傾転量q1に対応する電磁比例弁27の制御電流値I1を算出し(ステップS720)、電磁比例弁27に電流値I1の制御信号を出力するとともに、電磁比例弁28に、予め求めておいた第2油圧モータ24の最大傾転量q2maxに対応する電流値I2(Imax)の制御信号を出力する(ステップS730)。
ステップS715で目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達していれば(q1=q1min)、車速演算部56cで演算した車速を図7に示した目標傾転特性に参照して対応する第2油圧モータ24の目標傾転量q2を算出し(ステップS750)、その目標傾転量q2が3速変速制御の最小値として予め設定した中間傾転量q2midに達したかどうかを判定し(ステップS755)、中間傾転量q2midに達していなければ(q2<q2mid)、目標傾転量q2に対応する電磁比例弁28の制御電流値I2を算出し(ステップS760)、中間傾転量q2midに達していれば(q2=q2mid)、中間傾転量q2midに対応する電磁比例弁28の制御電流値I2を算出する(ステップS765)。次いで、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続を切り離すため、第1クラッチ30の電磁切換弁42にクラッチOFFの制御信号を出力し(ステップS770)、電磁比例弁27に予め求めておいた第1油圧モータ23の最小傾転量q1minに対応する電流値I1(Imin)の制御信号を出力するとともに、電磁比例弁28に電流値I2の制御信号を出力する(ステップS780)。
<4速変速制御処理>
4速変速制御処理でも、図11に示すように、ステップS810からステップS850までは、図9に示した3速変速制御処理におけるステップS710からステップS750までと同様の処理を行う。ステップS850において車速演算部56cで演算した車速を図7に示した目標傾転特性に参照して対応する第2油圧モータ24の目標傾転量q2を算出した後、その目標傾転量q2が図6のステップS4で演算した第2油圧モータ24の制限傾転量q2cmin(<第2油圧モータ24の最小傾転量q2cmin)に達したかどうかを判定し(ステップS855)、制限傾転量q2cminに達していなければ(q2<q2cmin)、目標傾転量q2に対応する電磁比例弁28の制御電流値I2を算出し(ステップS860)、制限傾転量q2cminに達していれば(q2=q2cmin)、制限傾転量q2cminに対応する電磁比例弁28の制御電流値I2を算出する(ステップS865)。次いで、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続を切り離すため、第1クラッチ30の電磁切換弁42にクラッチOFFの制御信号を出力し(ステップS870)、電磁比例弁27に予め求めておいた第1油圧モータ23の最小傾転量q1minに対応する電流値I1(Imin)の制御信号を出力するとともに、電磁比例弁28に電流値I2の制御信号を出力する(ステップS880)。
ここで、制限傾転量q2cminは、エンジン10の回転数が後述する第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)にあるときに制限車速Scmaxが得られる傾転量である。
以上のようにHST制御部56hにおけるモータ制御部561aの演算処理により第1及び油圧モータ23,24の傾転量は次のように制御される。
1速変速制御処理では、第1油圧モータ23の目標傾転量q1は図7の矢印Aの範囲内で車速が増加するにしたがい最大傾転q1maxから中間傾転量q1midまで減少し、第2油圧モータ24の目標傾転量q2は最大傾転量q2maxに固定される。その結果、第2油圧モータ24の傾転量を最大傾転量q2maxに固定した状態で、第1油圧モータ23の傾転量は車速が増加するにしたがい中間傾転量q1midまで減少し、この第1油圧モータ23の傾転量の減少に応じて第1及び油圧モータ23,24の回転数は上昇し、車速が増加する。
2速変速制御処理では、第1油圧モータ23の目標傾転量q1は図7の矢印Bの範囲内で車速が増加するにしたがい最大傾転q1maxから中間傾転量q1minまで減少し、第2油圧モータ24の目標傾転量q2は最大傾転量q2maxに固定される。その結果、その結果、第2油圧モータ24の傾転量を最大傾転量q2maxに固定した状態で、第1油圧モータ23の傾転量は車速が増加するにしたがい最小傾転量q1minまで減少し、この第1油圧モータ23の傾転量の減少に応じて第1及び第2油圧モータ23,24の回転数は上昇し、車速が増加する。
3速変速制御処理では、車速が図7の速度段2の矢印Bの範囲内にあるときは、2速変速制御処理と同様の制御が行われる。第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達すると、第1クラッチ30の接続は開放され、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続は切り離されるとともに、第2油圧モータ24の目標傾転量q2は図7の速度段3の矢印Cの範囲内で車速が増加するにしたがい最大傾転量q2maxから中間傾転量q2midまで減少し、第1油圧モータ23の目標傾転量q1は最小傾転量q1minに固定される。その結果、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達するまでは、2速変速制御処理の場合と同様に第1油圧モータ23の傾転量は減少し、この第1油圧モータ23の傾転量の減少に応じて第1及び第2油圧モータ23,24の回転数は上昇し、車速が増加する。第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達した後は、第1油圧モータ23の傾転量を最小傾転量q1minに固定しかつ第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続が切り離された状態で、第2油圧モータ24の傾転量は車速が増加するにしたがい中間傾転量q2midまで減少する。これにより第2油圧モータ24の傾転量の減少に応じて第2油圧モータ24のみの回転数が上昇し、車速が更に増加する。このとき、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続は切り離されているため、第2油圧モータ24は第1油圧モータ23の抵抗を受けることなく、効率良く車速を増加させることができる。
4速変速制御処理でも、車速が図7の速度段2の矢印Bの範囲内にあるときは、2速変速制御処理と同様の制御が行われる。第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達すると、第1クラッチ30の接続は開放され、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続は切り離されるとともに、第2油圧モータ24の目標傾転量q2は図7の速度段3の矢印Dの範囲内で車速が増加するにしたがい最大傾転量q2maxから制限傾転量q2cminまで減少し、第1油圧モータ23の目標傾転量q1は最小傾転量q1minに固定される。その結果、この場合も、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達するまでは、2速変速制御処理の場合と同様に第1油圧モータ23の傾転量は減少し、この第1油圧モータ23の傾転量の減少に応じて第1及び第2油圧モータ23,24の回転数は上昇し、車速が増加する。第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達した後は、第1油圧モータ23の傾転量を最小傾転量q1minに固定しかつ第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続が切り離された状態で、第2油圧モータ24の傾転量は車速が増加するにしたがい減少する。ここで、4速車速範囲内に制限車速Scmaxが設定されていない場合は、第2油圧モータ24の傾転量は最小傾転量q2minまで減少する。しかし、本実施の形態では、4速車速範囲内に制限車速Scmaxが設定され、それに対応して制限傾転量q2cminが設定されているため、第2油圧モータ24の傾転量が制限傾転量q2cminまで減少すると、第2油圧モータ24の傾転量は制限傾転量q2cminに固定され、それ以上は減少しない。このように第2油圧モータ24の傾転量が減少する間、その第2油圧モータ24の傾転量の減少に応じて第2油圧モータ24のみの回転数が上昇し、車速が更に増加する。このとき、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続は切り離されているため、第2油圧モータ24は第1油圧モータ23の抵抗を受けることなく、効率良く車速を増加させることができる。
図12は、図5に示した制限回転数演算部562の処理内容を示す図である。
図12において、制限回転数演算部562は、制限車速取得部562a、車速偏差演算部562b、第1補正回転数演算部562c、第1制限回転数取得部562d、制限回転数補正部562e、最大回転数取得部562f、第1切換部562gの各機能を有している。
制限車速取得部562aは、パラメータ記憶部56gに記憶した制限車速Scmax(例えば32Km/時)を読み出し、車速偏差演算部56bは、その読み出した制限車速Scmaxから車速演算部56cで演算した車速(実車速)を減算し、車速偏差ΔSを演算する。
第1補正回転数演算部562cは、車速偏差ΔSをメモリに記憶してあるテーブルに参照して第1補正回転数ΔNaを演算する。メモリのテーブルには、例えば、車速偏差ΔSが予め設定した制限開始車速偏差(例えば10Km/時)以上であるときは、第1補正回転数ΔNaは最大値ΔNmax1(例えば200rpm)であり、車速偏差ΔSが制限開始車速偏差(10Km/時)より小さくなると、車速ΔSが小さくなるにしたがって第1補正回転数ΔNaが小さくなり、車速ΔSが0付近の所定の値よりも小さくなると、第1補正回転数ΔNaは0となるように、車速偏差ΔSと第1補正回転数ΔNaとの関係が設定されている。
第1制限回転数取得部562dは、パラメータ記憶部56gに記憶した第1制限回転数Ncmax1を読み出し、制限回転数補正部562eは、その第1制限回転数Ncmax1に第1補正回転数演算部562cで演算した第1補正回転数ΔNaを加算して補正制限回転数Ncmaxa(=Ncmax1+ΔNa)を算出する。エンジン10の定格最高回転数を2000rpmとした場合、第1制限回転数Ncmax1は例えば1800rpmである。ここで、第1補正回転数演算部562cに設定される補正回転数Naの最大値ΔNmax1(例えば200rpm)は、好ましくは、ΔNmax1を第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に加算した値がエンジン10の定格最大回転数Nmax(例えば2000rpm)に等しくなる値である。
最大回転数取得部562fは、パラメータ記憶部56gに記憶したエンジン10の定格最大回転数Nmax(例えば2000rpm)を読み出し、第1切換部562gは、速度段スイッチ判定部56eの判定結果が3速以下であれば、最大回転数取得部562fで読み込んだ定格最大回転数Nmaxを選択して制御制限回転数Ncmaxbとして出力し、速度段スイッチ判定部56eの判定結果が4速であれば、制限回転数演算部562fで演算した補正制限回転数Ncmaxaを選択して制御制限回転数Ncmaxbとして出力する。第1切換部562gより出力した制御制限回転数Ncmaxbは前述した如く通信ライン58を介してエンジンコントローラ57に送信される。
図13は、エンジンコントローラ57のエンジン制御部57aの処理内容を示す図である。
エンジン制御部57aは、基本目標回転数演算部571と目標回転数決定部572とを有している。
基本目標回転数演算部571は、アクセルペダル50の操作信号を入力し、その電圧(アクセルペダル電圧)をメモリに記憶してあるテーブルに参照してエンジン10の基本目標回転数Ntbを演算する。メモリのテーブルには、例えば、アクセルペダル電圧が0.5V以下では、基本目標回転数Ntbがローアイドル回転数(例えば800rpm)であり、アクセルペダル電圧が0.5Vを超えるとアクセルペダル電圧が増加するにしたがって基本目標回転数Ntbが増加し、アクセルペダル電圧が4.5V以上になると基本目標回転数Ntbが定格最高回転数(例えば2000rpm)となるように、アクセルペダル電圧と基本目標回転数Ntbとの関係が設定されている。
目標回転数決定部572は最小値選択部であり、HST制御部56hの制限回転数演算部562で演算された制御制限回転数Ncmaxbと基本目標回転数演算部571で演算された基本目標回転数Ntbとの小さい方を制御目標回転数Ntaとして選択し、この制御目標回転数Ntaを指令信号として電子ガナバ10aに出力する。
以上において、HST出力軸回転センサ55、HST出力軸回転演算部56b及び車速演算部56cは車速検出手段を構成し、速度段変速スイッチ52は速度段選択手段を構成する。
また、HST制御部56hの走行制御部561におけるモータ制御部561aは、前記車速検出手段により検出された実車速に応じて油圧モータ23,24の容量を制御し、かつ速度段選択手段(速度段変速スイッチ52)が最も高い速度段(4速)かその次に高い速度段(3速)のいずれかの所定の速度段を選択しているときに実車速が予め設定した制限車速Scmaxに達すると、第2油圧モータ24の最小容量を予め設定した制限容量(制限傾転量)q2cminに制限するモータ制御手段を構成し、HST制御部56hの走行制御部561における制限回転数演算部562とHSTエンジンコントローラ57は、速度段選択手段(速度段変速スイッチ52)が前記所定の速度段を選択しているときに実車速が制限車速Scmaxに近づくと、エンジン10の最高回転数を定格最高回転数よりも低い予め設定した第1制限回転数Ncmax1に制限するエンジン制御手段を構成する。
また、エンジン制御手段であるHST制御部56hの走行制御部561における制限回転数演算部562とHSTエンジンコントローラ57は、アクセルペダル50が第1制限回転数よりも高い目標回転数を指示しているとき、実車速が制限車速に近づくにしたがって目標回転数から第1制限回転数へと減少する制御目標回転数を演算し、この制御目標回転数を電子制御ガバナ10aに出力する。
エンジン制御手段の制限回転数演算部562は、実車速と制限車速との偏差を求め、この車速偏差が所定の値より小さくなると、車速偏差が小さくなるにしたがって定格最大回転数から第1制限回転数へと減少する制御制限回転数を演算する第1手段を構成し、HSTエンジンコントローラ57は、アクセルペダル50が指示する目標回転数が前記制御制限回転数より高いときに、制御制限回転数を制御目標回転数として出力する第2手段を構成する。
また、モータ制御手段であるHST制御部56hの走行制御部561におけるモータ制御部561aは、速度段選択手段が上記所定の速度段を選択しているとき、車速検出手段により検出された実車速が増加するにしたがって、第1油圧モータ23の容量が徐々に減少しかつ第2油圧モータ24を最大容量に固定し、第1油圧モータ23の容量が最小容量に達すると、第2油圧モータ24の容量が徐々に減少しかつ第1油圧モータ23を最小容量に固定するよう第1及び第2油圧モータ23,24の容量を制御するとともに、実車速が制限車速に達すると第2油圧モータ24の容量を前記制限容量(制限傾転量)q2cminを超えないように制御する。
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
<走行始動時>
オペレータが走行を意図して前後進切換スイッチ51を前進位置に操作し、アクセルペダル50をフルに踏み込むと、アクセルペダル50の操作信号がエンジンコントローラ57のエンジン制御部57aに入力され、図13のエンジン制御部57aの基本目標回転数演算部571においてローアイドル回転数(例えば800rpm)から定格最高回転数(例えば2000rpm)に変化する基本目標回転数Ntbが演算される。
一方、このとき、速度段変速スイッチ52が1〜3速のいずれかを選択している場合は、図12の制限回転数演算部562の第1切換部562gにおいて最大回転数取得部562fで読み込んだ定格最高回転数(例えば2000rpm)が選択され、この定格最高回転数が制御制限回転数Ncmaxbとしてとして図13の目標回転数決定部572に入力される。また、速度段変速スイッチ52が4速を選択している場合は、図12の制限回転数演算部562の第1切換部562gにおいて制限回転数補正部562eで演算された補正制限回転数Ncmaxaが選択されるが、走行始動時は車速偏差ΔSは大きいため、制限回転数補正部562eではNcmax1(例えば1800rpm)+ΔNmax1(例えば200rpm)の補正制限回転数Ncmaxaが演算され、このときも制御制限回転数Ncmaxbとしてとして定格最高回転数(例えば2000rpm)が図13の目標回転数決定部572に入力される。
その結果、図13の目標回転数決定部572では制御目標回転数Ntaとして基本目標回転数演算部571で演算された基本目標回転数Ntbが選択され、エンジン10の電子制御ガバナ10aにはアクセルペダル50の踏み込み量に応じて増大する制御目標回転数Ntaが入力され、エンジン10の回転数はアクセルペダル50の踏み込み量に応じてローアイドル回転数(例えば800rpm)から定格最高回転数(例えば2000rpm)まで増大する。
エンジン10の回転数が増大すると、図3に示す閉回路油圧駆動装置11の油圧ポンプ20の吐出流量が増大し、このポンプ吐出流量の増大に応じて第1及び第2油圧モータ23,24が回転し始め、その回転がプロペラシャフト14を介して前輪111及び後輪112に伝えられ、車体は走行を開始する。
走行始動時はHST13の第1及び第2油圧モータ23,24は共に最大傾転にあるため(図7参照)、低速大トルクでの走行が可能である。これによりホイールローダは加速性良く始動する。
また、車体の走行速度(車速)が増加すると、そのときの速度段変速スイッチ52の速度段に応じて図8〜図11にフローチャートで示した1速〜4速変速制御処理により第1油圧モータ23(1速及び2速変速制御処理)或いは第1及び第2油圧モータ23,24(3速及び4速変速制御処理)の傾転量が減少し、第1及び第2油圧モータ23,24はその傾転量の減少によって更に回転数が上昇し、車速が更に増加する。
このように走行始動時は、アクセルペダルをフルに踏み込むとエンジン回転数は第1制限回転数に制限されることなく定格最高回転数(例えば2000rpm)まで速やかに上昇するとともに、車速が増加するに従って第1及び第2油圧モータ23,24の傾転量は減少するので、良好な加速性能を得ることができる。
また、3速或いは4速選択時は、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達すると、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続が切り離されるため、第2油圧モータ24は第1油圧モータ23の抵抗を受けることなく回転数が上昇し、効率良く車速を増加させることができる。
更に、3速或いは4速選択時は、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達するまでは、第2油圧モータ24の傾転量を最大傾転量q2maxに固定した状態で第1油圧モータ23の傾転量を減少し、第1油圧モータ23の目標傾転量q1が最小傾転量q1minに達した後は、第1油圧モータ23の傾転量を最小傾転量q1minに固定した状態で、第2油圧モータ24の傾転量を減少させるというように、第1及び第2油圧モータ23,24の容量を連携して制御するため、効率的で滑らかな車速制御が可能となる。
<高速走行時>
4速選択時には、図11の4速変速制御処理により第2油圧モータ24の目標傾転量q2が演算され、車速が制限車速Scmaxに達し目標回転量q2が制限傾転量q2cminに達すると、目標傾転量q2はそれ以上減少せず、第2油圧モータ24の最小傾転量は制限傾転量q2cminに制限される。
一方、4速選択時には、図12の制限回転数演算部562の第1切換部562gにおいて補正制限回転数Ncmaxaが選択され、この補正制限回転数Ncmaxaが制御制限回転数Ncmaxbとしてとして図13の目標回転数決定部572に入力される。
ここで、4速選択時に車速が制限車速Scmaxに近づき、車速偏差ΔSが制限開始車速偏差(例えば10Km/時)より小さくなると、それにしたがって小さくなる第1補正回転数ΔNaが演算され、制限回転数補正部562eで演算される補正制限回転数Ncmaxa(Ncmax1(例えば1800rpm)+ΔNa(例えば0〜200rpm))も、車速ΔSが小さくなるにしたがって小さくなり、車速ΔSが0付近の所定の値以下になると第1補正回転数ΔNaは0となり、補正制限回転数Ncmaxaは第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に等しくなる。
その結果、アクセルペダル50をフルに踏み込んでいる場合は、図13の目標回転数決定部572では制御目標回転数Ntaとして制御制限回転数Ncmaxb(補正制限回転数Ncmaxa)が選択され、その制御制限回転数Ncmaxbがエンジン10の電子制御ガバナ10aに入力される。これによりエンジン10の回転数は制御制限回転数Ncmaxbの減少に応じて低下し、制御制限回転数Ncmaxbが第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)まで減少すると、エンジン10の回転数はその回転数に保持される。すなわち、車速が制限車速Scmaxに近づくにしたがってエンジン10の回転数は定格最高回転数(例えば2000rpm)から第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)へと徐々に低下し、車速が制限車速Scmaxに達すると、エンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限される。
以上のように第2油圧モータ24の最小傾転量が制限傾転量q2cminに制限され、エンジン10の最高回転数が第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限される結果、ホイールローダの最高走行車速を精度良く確実に制限車速Scmaxに制限することができる。
また、オペレータがアクセルペダル50をフルに踏み込んでも、車速が制限車速Scmaxに達するとエンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限されるため、最高走行速度の制限時のエンジン出力馬力のロスを抑え、燃費の向上が図れる。
<作業時>
作業時は、通常、1〜3速のいずれかの低めの速度段を選択して作業を行うことが多く、この場合は前述したように図12の制限回転数演算部562の第1切換部562gにおいて定格最高回転数(例えば2000rpm)が選択されるため、エンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限されることはない。また、4速を選択した場合でも、作業時の走行速度は遅く、実車速は制限車速から大きく離れていることが多いため、やはり、エンジン10の最高回転数が制限車速により制限されることはない。このためアクセルペダル50をフルに踏み込むとエンジン回転数は定格最高回転数まで上昇し、作業効率を低下させることがない。
以上のように本実施の形態によれば、作業時の作業効率や走行始動時の加速性能を低下させずに最高走行速度を制限することができ、かつ最高走行速度の制限時のエンジン出力馬力のロスを抑え、燃費の向上を図ることができる。
また、第1及び第2油圧モータ23,24の容量を連携して制御するため、効率的で滑らかな車速制御が行える。
本発明の第2の実施の形態を図14〜図16を用いて説明する。本実施の形態は、制限車速Scmaxを3速(速度段3)の車速範囲内に設定し、速度段変速スイッチ52が3速(速度段3)を選択している場合と4速(速度段4)を選択している場合とで、制限回転数を異ならせ、制限車速到達時のエンジン性能に差を持たせたものである。
図14は、本実施の形態において、第1及び第2油圧モータ23,24(図2及び図3参照)の目標傾転量を演算するのに用いる車速と目標傾転量との関係(目標傾転特性という)を示す図であり、その目標傾転特性は図7に示した第1の実施の形態のものと同じに設定されている。ただし、本実施の形態では、制限車速Scmaxは3速(速度段3)の車速範囲内に設定されている。制限車速Scmaxは例えば26Km/時である。
図15は、本実施の形態におけるHST制御部56hのモータ制御部561a(図5参照)の演算処理の全体を示すフローチャートである。ステップS2では、第1の実施の形態と同様、制限車速Scmaxをパラメータ記憶部56gから読み出すが、制限車速Scmaxは3速(速度段3)の車速範囲内の値(例えば26Km/時)であり、ステップS4では、その制限車速Scmaxを図14に示した目標傾転特性に参照して対応する第2油圧モータ24の制限傾転量q2cminを算出する。速度段変速スイッチ52が1速(速度段1)、2速(速度段2)、4速(速度段4)を選択しているときのステップS50,S60,S80の処理内容は図7及び図8に示した第1の実施の形態のものと同じであるが、3速(速度段3)を選択しているときのステップS70Aの処理内容が第1の実施の形態のものと異なる。
図16は、速度段変速スイッチ52が3速(速度段3)を選択しているときの処理内容を示すフローチャートであり、図中、図9に示した部分と同等の部分には同じ符号を付している。
図16のステップS70Aにおいて、ステップS710からステップS750までの処理内容は、図9に示した第1の実施の形態の3速変速制御処理におけるステップS710からステップS750までのものと同じである。ステップS750において車速演算部56cで演算した車速を図14に示した目標傾転特性に参照して対応する第2油圧モータ24の目標傾転量q2を算出した後、その目標傾転量q2が図6のステップS4で演算した第2油圧モータ24の制限傾転量q2cminに達したかどうかを判定し(ステップS790)、制限傾転量q2cminに達していなければ(q2<q2cmin)、目標傾転量q2に対応する電磁比例弁28の制御電流値I2を算出し(ステップS760)、制限傾転量q2cminに達していれば(q2=q2cmin)、制限傾転量q2cminに対応する電磁比例弁28の制御電流値I2を算出する(ステップS795)。次いで、第1油圧モータ23と第2油圧モータ24との接続を切り離すため、第1クラッチ30の電磁切換弁42にクラッチOFFの制御信号を出力し(ステップS770)、電磁比例弁27に予め求めておいた第1油圧モータ23の最小傾転量q1minに対応する電流値I1(Imin)の制御信号を出力するとともに、電磁比例弁28に電流値I2の制御信号を出力する(ステップS780)。
ここで、制限傾転量q2cminは、エンジン10の回転数が第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)及び第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)のいずれかにあるときに制限車速Scmaxが得られる傾転量である。
図17は、本実施の形態におけるHST制御部56hの制限回転数演算部562(図5参照)の演算処理の詳細を示す図である。図中、図12に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。
本実施の形態において、制限回転数演算部562は、制限車速取得部562a、車速偏差演算部562b、第1補正回転数演算部562c、第1制限回転数取得部562d、制限回転数補正部562e、最大回転数取得部562f、第1切換部562gに加えて、第2補正回転数演算部562j、第2切換部562k、第2制限回転数取得部562m、第3切換部562nの各機能を有している。
第2補正回転数演算部562jは、車速偏差ΔSをメモリに記憶してあるテーブルに参照して第2補正回転数ΔNbを演算する。メモリのテーブルには、例えば、車速偏差ΔSが予め設定した制限増加開始車速(例えば10Km/時)以上であるときは、第2補正回転数ΔNbは最大値ΔNmax2(例えば100rpm)であり、車速偏差ΔSが制限増加開始車速偏差(10Km/時)より小さくなると、車速ΔSが小さくなるにしたがって第2補正回転数ΔNbが小さくなり、車速ΔSが0付近の所定の値よりも小さくなると、第2補正回転数ΔNbは0となるように、車速偏差ΔSと第2補正回転数ΔNbとの関係が設定されている。第2補正回転数ΔNbの最大値ΔNmax2(例えば100rpm)は、好ましくは、第1補正回転数演算部562cにおける第1補正回転数Naの最大値ΔNmax1(例えば200rpm)より小さい値である。
第2切換部562kは、速度段スイッチ判定部56eの判定結果が3速以下であれば、第1補正回転数演算部562cで算出した第1補正回転数ΔNaを選択して補正回転数ΔNcとして出力し、速度段スイッチ判定部56eの判定結果が4速であれば、第2補正回転数演算部562jで算出した第2補正回転数ΔNbを選択して補正回転数ΔNcとして出力する。
第2制限回転数取得部562mは、パラメータ記憶部56gに記憶した第2制限回転数Ncmax2を読み出し、第3切換部562nは、速度段スイッチ判定部56eの判定結果が3速以下であれば、第1制限回転数取得部562dで読み込んだ第1制限回転数Ncmax1を選択して制限回転数Ncmaxcとして出力し、速度段スイッチ判定部56eの判定結果が4速であれば、第2補正回転数演算部562mで読み込んだ第2制限回転数Ncmax2を選択して制限回転数Ncmaxcとして出力する。制限回転数補正部562eは、その制限回転数Ncmaxcに第2切換部562kより出力される補正回転数ΔNc(=第1補正回転数ΔNa又は第2補正回転数ΔNb)を加算して補正制限回転数Ncmaxa(=Ncmaxc+ΔNc)を算出する。エンジン10の定格最高回転数を2000rpmとし、第1制限回転数Ncmax1は1800rpmとした場合、第2制限回転数Ncmax2は例えば1600rpmである。
ここで、第2補正回転数演算部562jに設定される第2補正回転数ΔNbの最大値ΔNmax2(例えば100rpm)は、好ましくは、ΔNmax2を第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)に加算した値がエンジン10の定格最大回転数Nmax(例えば2000rpm)よりも小さくなる値である。
制限回転数演算部562のそれ以降の処理内容は図12に示した第1の実施の形態と同じである。
また、本実施の形態におけるエンジンコントローラ57のエンジン制御部57aの処理内容も図13に示した第1の実施の形態のものと同じである。
以上のように本実施の形態のモータ制御手段は、制限車速Scmaxを最も高い速度段の次に高い速度段(3速)の車速範囲内に設定し、かつ速度段選択手段が最も高い速度段を選択しているときと、その次に高い速度段を選択しているときのそれぞれで、実車速が予め設定した制限車速Scmaxに達すると、第2油圧モータ24の最小容量を制限容量(制限傾転量)q2cminに制限し、エンジン制御手段は、速度段選択手段が最も高い速度段の次に高い速度段(3速)を選択しているときに実車速が制限車速に近づくと、エンジンの最高回転数を第1制限回転数Ncmax1に制限し、速度段選択手段が最も高い速度段(4速)を選択しているときにエンジン10の最高回転数を第1制限回転数よりも低い第2制限回転数Ncmax2に制限するものである。
以上のように構成した本実施の形態においては、速度段変速スイッチ52(図4参照)が3速を選択している場合は、図17の第1切換部562gにおいて制限回転数補正部562eで演算された補正制限回転数Ncmaxaが制御制限回転数Ncmaxbとして選択されるとともに、第2切換部562kにおいて第1補正回転数演算部562cで算出した第1補正回転数ΔNaが補正回転数ΔNcとして選択され、第3切換部562nにおいて第1制限回転数演算部562dで読み込んだ第1制限回転数Ncmax1が制限回転数Ncmaxcとして選択される。その結果、制限回転数補正部562eでは、Ncmax1(例えば1800rpm)+ΔNa(例えば0〜200rpm)の補正制限回転数Ncmaxaが演算され、この補正制限回転数Ncmaxaが制御制限回転数Ncmaxbとして図13の目標回転数決定部572に入力される。
これにより車速が制限車速Scmaxに近づき、車速偏差ΔSが制限開始車速偏差(例えば10Km/時)より小さくなると、それにしたがって補正制限回転数NcmaxaはNcmax1(例えば1800rpm)+ΔNmax1(例えば200rpm)からNcmax1(例えば1800rpm)へと小さくなり、第1の実施の形態で4速を選択した場合と同様に、車速が制限車速Scmaxに近づくにしたがってエンジン10の回転数は定格最高回転数(例えば2000rpm)から第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)へと徐々に低下し、車速が制限車速Scmaxに達すると、エンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限される。
このように第2油圧モータ24の最小傾転量が制限傾転量q2cminに制限されたときに、エンジン10の最高回転数が第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限される結果、制限傾転量q2cminをエンジン10の回転数が第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)にあるときに制限車速Scmaxが得られる値に設定した場合は、ホイールローダの最高走行車速を精度良く確実に制限車速Scmaxに制限することができる。
また、オペレータがアクセルペダル50をフルに踏み込んでも、車速が制限車速Scmaxに達するとエンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)に制限されるため、最高走行速度の制限時のエンジン出力馬力のロスを抑え、燃費の向上が図れる。
また、走行始動時や作業時において、走行速度が遅く、実車速は制限車速から大きく離れているときは、エンジン10の最高回転数が制限車速により制限されることはないため、アクセルペダル50をフルに踏み込むとエンジン回転数は定格最高回転数まで上昇し、第1の実施の形態と同様、加速性能及び作業効率を低下させることがない。
一方、速度段変速スイッチ52が4速を選択している場合は、図17の第1切換部562gにおいて制限回転数補正部562eで演算された補正制限回転数Ncmaxaが制御制限回転数Ncmaxbとして選択されるとともに、第2切換部562kにおいて第2補正回転数演算部562jで算出した第2補正回転数ΔNbが補正回転数ΔNcとして選択され、第3切換部562nにおいて第2制限回転数演算部562mで読み込んだ第2制限回転数Ncmax2が制限回転数Ncmaxcとして選択される。その結果、制限回転数補正部562eでは、Ncmax2(例えば1600rpm)+ΔNb(例えば0〜100rpm)の補正制限回転数Ncmaxaが演算され、この補正制限回転数Ncmaxaが制御制限回転数Ncmaxbとして図13の目標回転数決定部572に入力される。
これにより車速が遅く、制限車速Scmaxから制限増加開始車速偏差(10Km/時)以上離れているときは、エンジン10の最高回転数はNcmax2(例えば1600rpm)+ΔNmax2(例えば100rpm)の補正制限回転数Ncmaxaに制限されるとともに、車速が制限車速Scmaxに近づき、車速偏差ΔSが制限増加開始車速偏差(10Km/時)より小さくなると、それにしたがって補正制限回転数NcmaxaはNcmax2(例えば1600rpm)+ΔNmax2(例えば100rpm)からNcmax2(例えば1600rpm)へと小さくなり、車速が制限車速Scmaxに近づくにしたがってエンジン10の回転数はNcmax2(例えば1600rpm)+ΔNmax2(例えば100rpm)の補正制限回転数Ncmaxa(例えば1700rpm)から第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)へと徐々に低下し、車速が制限車速Scmaxに達すると、エンジン10の最高回転数は第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)に制限される。
このように第2油圧モータ24の最小傾転量が制限傾転量q2cminに制限されたときに、エンジン10の最高回転数が第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)に制限される結果、制限傾転量q2cminをエンジン10の回転数が第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)にあるときに制限車速Scmaxが得られる値に設定した場合は、ホイールローダの最高走行車速を制限車速Scmaxに制限することができる。
また、オペレータがアクセルペダル50をフルに踏み込んでも、車速が制限車速Scmaxに近づく前は、エンジン10の最高回転数はNcmax2(例えば1600rpm)+ΔNmax2(例えば100rpm)の補正制限回転数Ncmaxaに制限され、車速が制限車速Scmaxに達すると、エンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)よりも低い第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)に制限されるため、3速を選択したときよりも更に最高走行速度の制限時のエンジン出力馬力のロスを抑え、燃費の向上が図れる。
速度変速スイッチ52が3速及び4速以外(1速又は2速)を選択している場合は、最大回転数取得部562fで読み込んだ定格最大回転数Nmax(例えば2000rpm)が選択され、この定格最高回転数が制御制限回転数Ncmaxbとしてとして図13の目標回転数決定部572に入力される。
これにより走行始動時や作業時に1速又は2速の速度段を選択して作業を行う場合は、エンジン10の最高回転数は第1制限回転数Ncmax1(例えば1800rpm)又は第2制限回転数Ncmax2(例えば1600rpm)に制限されることはないため、アクセルペダル50をフルに踏み込むとエンジン回転数は定格最高回転数まで上昇し、作業効率を低下させることがない。
以上のように本実施の形態では、1速又は2速選択時には、第1の実施の形態において1速〜3速のいずれかを選択した場合と同じ効果が得られ、3速又は4速選択時には、第1の実施の形態において4速を選択した場合と実質的に同じ効果が得られる。また、4速選択時には、車速が制限車速Scmaxに近づく前もエンジン10の最高回転数は制限されるとともに、車速が制限車速Scmaxに達すると3速選択時よりもエンジン10の最高回転数は低く制限されるため、更に最高走行速度の制限時のエンジン出力馬力のロスを抑え、燃費の向上が図れる。
本発明の第3の実施の形態を図18及び図19を用いて説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態において、制限車速をコントローラの外部から設定可能とし、かつその制限車速に応じて制限回転数を変も可能としたものである。
図18は、本実施の形態に係わるHSTコントローラとエンジンコントローラの機能の詳細を示す、図4と同様な図である。図中、図4に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。
本実施の形態において、HSTコントローラ56Aは入力ポート56mを有し、この入力ポート56mに簡易パソコン等の外部設定装置61に接続されたケーブルの入力端子を接続することにより、外部設定装置61が接続可能である。
外部設定装置61はタッチパネル等の操作手段を操作することにより任意の制限車速を入力可能であり、外部設定装置61に入力された制限車速は入力端子56mを介してHST制御部56hに入力され、パラメータ記憶部56gに記憶される。
図19は、本実施の形態におけるHST制御部56hの制限回転数演算部562(図5参照)の処理内容の詳細を示す図である。図中、図12に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。
本実施の形態において、制限回転数演算部562は、図12に示した第1の実施の形態のものと同様、制限車速取得部562a、車速偏差演算部562b、第1補正回転数演算部562c、制限回転数補正部562e、最大回転数取得部562f、第1切換部562gを有するとともに、第1の実施の形態にあった第1制限回転数取得部562dに代えて第1制限回転数演算部562pを有している。
制限車速取得部562aは、上記のように外部設定装置61より入力され、パラメータ記憶部56gに記憶した制限車速Scmax(例えば32Km/時)を読み出し、第1制限回転数演算部562pは、その読み出した制限車速Scmaxをメモリに記憶してあるテーブルに参照して第1制限回転数Ncmax1を演算する。メモリのテーブルには、例えば、制限車速Scmaxが第1の所定値(例えば20Km/時)以下であるときは、第1制限回転数Ncmax1は第1の値(例えば1200rpm)であり、制限車速Scmaxが第1の所定値(例えば20Km/時)よりも大きくなると、制限車速Scmaxが増大するにしたがって第1制限回転数Ncmax1が増大し、制限車速Scmaxが第2の所定値(例えば40Km/時)以上になると、第1制限回転数Ncmax1はエンジン10の定格最大回転数(例えば2000rpm)となるように、制限車速Scmaxと第1制限回転数Ncmax1との関係が設定されている。
制限回転数演算部562のそれ以外の処理内容は図12に示した第1の実施の形態と同じである。
また、本実施の形態におけるエンジンコントローラ57のエンジン制御部57aの処理内容も図13に示した第1の実施の形態のものと同じである。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同じ効果が得られるとともに、現場や国によって制限車速が異なる場合でも、制限車速Scmaxを外部から最適の値に変更することができ、走行システムの汎用性を高めることができる。
また、制限車速Scmaxの増減に応じて制限回転数(第1制限回転数Ncmax1)が増減するので、制限車速に応じた最適の制限回転数を設定できる。
本発明の第4の実施の形態を図20を用いて説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態において、制限車速をコントローラの外部から設定可能とし、かつその制限車速に応じて制限回転数を変更可能としたものである。
本実施の形態においても、第3の実施の形態と同様、HSTコントローラ56Aは入力ポート56mを有し(図18参照)、この入力ポート56mに簡易パソコン等の外部設定装置61に接続されたケーブルの入力端子を接続することにより任意の制限車速が入力され、パラメータ記憶部56gに記憶されている。
図20は、本実施の形態におけるHST制御部56hの制限回転数演算部562(図5参照)の処理内容の詳細を示す図である。図中、図12及び図17に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。
本実施の形態において、制限回転数演算部562は、図17に示した第3の実施の形態のものと同様、制限車速取得部562a、車速偏差演算部562b、第1補正回転数演算部562c、制限回転数補正部562e、最大回転数取得部562f、第1切換部562g、第2補正回転数演算部562j、第2切換部562k、第3切換部562nを有するとともに、第1の実施の形態にあった第1制限回転数取得部562d及び第2制限回転数取得部562mに代えて、第1制限回転数演算部562p及び第2制限回転数演算部562qを有している。
第1制限回転数演算部562pの処理内容は図19に示した第3の実施の形態のものと同じである。
第2制限回転数演算部562qは、制限車速取得部562aにおいて読み出した制限車速Scmax(例えば26km/時)をメモリに記憶してあるテーブルに参照して第2制限回転数Ncmax2を演算する。メモリのテーブルには、例えば、制限車速Scmaxが第1の所定値(例えば20Km/時)以下であるときは、第2制限回転数Ncmax2は第1の値(例えば1200rpm)であり、制限車速Scmaxが第1の所定値(例えば20Km/時)よりも大きくなると、制限車速Scmaxが増大するにしたがって第2制限回転数Ncmax2が増大し、制限車速Scmaxが第2の所定値(例えば40Km/時)以上になると、第2制限回転数Ncmax2はエンジン10の定格最大回転数(例えば1800rpm)となるように、制限車速Scmaxと第2制限回転数Ncmax2との関係が設定されている。
制限回転数演算部562のそれ以外の処理内容は図12に示した第1の実施の形態と同じである。
また、本実施の形態におけるエンジンコントローラ57のエンジン制御部57aの処理内容も図13に示した第1の実施の形態のものと同じである。
本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同じ効果が得られるとともに、第3の実施の形態と同様、現場や国によって制限車速が異なる場合でも、制限車速Scmaxを外部から最適の値に変更することができ、走行システムの汎用性を高めることができる。
また、制限車速Scmaxの増減に応じて第1及び第2制限回転数のそれぞれが増減するので、第1及び第2制限回転数のいずれも制限車速に応じた最適の回転数に設定することができる。
以上において、本発明の幾つかの実施の形態を説明したが、それらは本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、HSTの閉回路油圧駆動装置が第1及び第2油圧モータ23,24の2つの油圧モータを有し、モータ制御手段によりその2つの油圧モータの容量を連携して制御するものとしたが、油圧モータは単一の油圧モータであってもよいし、2つの油圧モータを用いる場合であっても第1及び第2油圧モータ23,24の容量を同時に制御してもよい。
また、上記実施の形態では、走行システムがモータ制御手段とエンジン制御手段の両方を有するものとしたが、エンジン制御手段だけを有し、そのエンジン制御手段だけの制御(速度段選択手段が最も高い速度段かその次に高い速度段のいずれかの所定の速度段を選択しているときに実車速が予め設定した制限車速に近づくと、エンジンの最高回転数を定格最高回転数よりも低い予め設定した第1制限回転数に制限する)を行ってもよい。特に、上記実施の形態では、走行装置がHSTを有するものとしたが、走行装置がトルクコンバータとトランスミッションとからなる動力伝達装置を有するものである場合は、走行システムがエンジン制御手段だけを有し、速度段と車速に応じてエンジン回転数を制御すればよく、これによっても最高走行速度を制限することでき、本発明の課題(作業時の作業効率や走行始動時の加速性能を低下させずに最高走行速度を制限することができ、かつ最高走行速度の制限時のエンジン出力馬力のロスを抑え、燃費の向上を図れる)を解決することができる。