JP5310976B2 - 燃料電池の密封構造 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池において、膜電極複合体の高分子電解質膜とその両側に配置されたセパレータとの間を密封するための密封構造に関するものである。
燃料電池は、高分子電解質膜(イオン交換膜)の両面に一対の触媒電極層を設けた膜電極複合体(MEA)の厚さ方向両側を、セパレータで挟持した燃料電池セルを多数積層したスタックとなっている。そして、酸化ガス(酸素)が各セパレータの一方の面に形成された酸化ガス流路から一方の触媒電極層に供給され、燃料ガス(水素)が各セパレータの他方の面に形成された燃料ガス流路から他方の触媒電極層に供給され、水の電気分解の逆反応である電気化学反応、すなわち水素と酸素から水を生成する反応によって、電力を発生するものである。
この種の燃料電池においては、燃料ガスや酸化ガス、カソード面から排出される水や余剰の酸化ガス、冷媒などをシールする必要があり、そのためのガスケットが各燃料電池セルに設けられている。ガスケットは、ゴム状弾性材料からなるものであって、セパレータの表面に一体に設けられ、膜電極複合体の表面に密接されるものがよく知られている。
図13は、従来技術による燃料電池の密封構造を、分離状態で示す部分断面図で、この図13において、参照符号110は高分子電解質膜(プロトン膜)111と、その両側に積層状態に設けた触媒電極層112及びガス拡散層(GDL)113を備えた膜電極複合体(MEA)であり、この膜電極複合体110の両側にそれぞれセパレータ120が重ねられて、燃料電池セル100が構成される。
膜電極複合体110において、高分子電解質膜111の周縁は、触媒電極層112及びガス拡散層113の周縁から張り出しており、この張り出し部111aには、その両側のセパレータ120に一体的に設けられたガスケット130が密接されている。ガスケット130は、ゴム状弾性材料からなるものであって、所要の面圧を得るために、シール突条131を形成することが知られている。
ところが、膜電極複合体110における高分子電解質膜111は、薄肉で剛性に乏しいため、多数の燃料電池セル100を積層して締め付け、スタックとして組み立てた状態では、高分子電解質膜111(張り出し部111a)の両側のガスケット130,130に、例え僅かでも組み付け精度によるずれ(オフセット)があると、シール突条131による面圧極大部のずれδによって、所要の密封面圧を確保できなくなるばかりか、高分子電解質膜111が曲げモーメントを受けて変形したり、破損してしまうといった問題がある。
そこで、このようなオフセットによる高分子電解質膜111の曲げ変形や破損を防止する方法として、ガスケット130,130のうちの一方を、シール突条のないフラットシールとしたものが、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
特開2005−276820号公報
ところが、この場合、シール突条によるシール面は所要の面圧が確保できるものの、フラットシール側ではシール突条側に比較して面圧が低下し、所要のシール性が得られなくなってしまうといった問題がある。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、膜電極複合体の高分子電解質膜を両側からガスケットで挟み込む密封構造において、高分子電解質膜の曲げ変形や破損を防止すると共に、所要のシール面圧を確保することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る燃料電池の密封構造は、膜電極複合体の高分子電解質膜を、その厚さ方向一側に配置されたセパレータに一体的に設けたゴム状弾性材料からなる第一のガスケットと、厚さ方向他側に配置されたセパレータに一体的に設けたゴム状弾性材料からなる第二のガスケットで挟み込む密封構造において、前記第一のガスケットは、前記高分子電解質膜と密接されるシール突条を有し、前記第二のガスケットは、前記高分子電解質膜と密接される平坦なシール面を有し、肉厚を0.02〜0.1mmとしたものである。
上記構成によれば、第一のガスケットにおけるシール突条を高分子電解質膜に所要の圧縮状態で密接させることによる前記シール突条の圧縮反力は、高分子電解質膜を介して第二のガスケットに作用するが、この第二のガスケットの肉厚を0.02〜0.1mmとすることによって、圧縮変形が抑えられるので、高分子電解質膜に対する面圧の分散が抑えられると共に、高分子電解質膜の屈曲変形も抑えられる。
ここで、第二のガスケットの肉厚の上限を0.1mmと規定したのは、この種のガスケットには、通常、硬度がJIS A 30〜80のゴム状弾性材料が用いられるので、このような硬度の範囲では、第二のガスケットの肉厚が0.1mmを超えると、第一のガスケットのシール突条に対する圧縮量を大きくしても第二のガスケットの面圧が前記シール突条の面圧と同等以上にならないからである。また、第二のガスケットの肉厚の下限を0.02mmと規定したのは、厚さ0.02mm未満では、セパレータあるいは高分子電解質膜の表面粗さを埋めることができず、この表面粗さに起因する隙間漏れが発生してしまうからである。
請求項2の発明に係る燃料電池の密封構造は、請求項1に記載された第二のガスケットが、セパレータの表面に、ゴム溶液又は液状ゴムを、ドクターブレード法、スタンプ法、スクリーン印刷法、及びインクジェット塗布法から選択された方法により塗布して硬化させたものである。
請求項3の発明に係る燃料電池の密封構造は、請求項1に記載された第二のガスケットが、セパレータに形成されたガスケット装着溝に設けられ、この第二のガスケットのうち、第一のガスケットのシール突条と向かい合う部分から幅方向へずれた位置に、前記ガスケット装着溝の底面に形成された深溝による厚肉部を有するものである。
本発明に係る燃料電池の密封構造によれば、第一のガスケットのシール突条に高分子電解質膜を介して対向する第二のガスケットの肉厚を、0.02〜0.1mmとすることによって、高分子電解質膜に対する第二のガスケットの面圧の分散が抑えられ、したがって、所要のシール面圧を確保することができ、しかも高分子電解質膜の曲げ変形や破損を防止することができる。
本発明において、肉厚が0.02〜0.1mmの第二のガスケットは、ドクターブレード法、スタンプ法、スクリーン印刷法、又はインクジェット塗布法を用いることによって、セパレータの表面に容易に設けることができる。
本発明において、第二のガスケットを、セパレータに形成されたガスケット装着溝に設け、第一のガスケットのシール突条と向かい合う部分から幅方向へずれた位置に、ガスケット装着溝に形成した深溝による厚肉部を有する構成とすれば、その成形の際に、成形用ゴム溶液又は液状ゴムを前記深溝へ射出することによって、ガスケット装着溝内の材料の流れ(賦形)が良好に行われるので、射出成形法でも、セパレータに肉厚が0.02〜0.1mmの薄肉ガスケットを容易に一体成形することができる。
以下、本発明に係る燃料電池の密封構造の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明の第一の形態による燃料電池の密封構造を、分離状態で示す部分断面図である。
図1において、参照符号10は高分子電解質膜(プロトン膜)11と、その両側に積層状態に設けた触媒電極層12及びガス拡散層(GDL)13を備えた膜電極複合体(MEA)であり、この膜電極複合体10の両側にそれぞれセパレータ20A,20Bが重ねられて、燃料電池セル1が構成される。
膜電極複合体10において、高分子電解質膜11の周縁は、触媒電極層12及びガス拡散層13の周縁から張り出しており、この張り出し部11aが、一方のセパレータ20Aに一体的に設けられた第一のガスケット30と、他方のセパレータ20Bに一体的に設けられた第二のガスケット40の間に挟み込まれることによって、燃料ガス(水素)や酸化ガス、その電気化学反応により生成されて排出される水や余剰の酸化ガス、冷媒などが、それぞれの流路から漏れることのないように密封されている。
図2は、第一又は第二のガスケットを取り付けたセパレータの表面を示す図である。この図2において、参照符号20aは、燃料ガス又は酸化ガスを流す多数の流路溝が形成される発電部となる領域であり、20b〜20dは流路孔(マニホールド)である。そして第一のガスケット30及び第二のガスケット40は、発電部となる領域20a及び流路孔20bの開口部を取り囲むように設けられた部分と、他の流路孔20c,20dの開口部をそれぞれ取り囲むように設けられた部分からなる。
第一のガスケット30及び第二のガスケット40は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、パーフルオロゴム(FFKM)などから選択された、硬度がJIS A 30〜80、好ましくはJIS
A 40〜60のゴム状弾性材料からなるものである。
そしてこのうち、第一のガスケット30は、断面が山形のシール突条31を有するものであって、上述のゴム状弾性材料の液状ゴムを用い、通常の圧縮成形、LIM成形あるいはSIM成形によって成形してからセパレータ20Aの表面に貼り付けるか、あるいはセパレータ20Aの表面に一体成形することができる。
また、第二のガスケット40は、幅Wが高分子電解質膜11の張り出し部11aに対する第一のガスケット30のシール突条31の密接幅よりも大きく、また前記張り出し部11aと密接されるシール面41が平坦であって、好ましくは、肉厚tを0.02〜0.1mmとする。このような薄膜状の第二のガスケット40は、上述のゴム状弾性材料の液状ゴム又はゴム溶液を、ドクターブレード法、スタンプ法、スクリーン印刷法、及びインクジェット塗布法から選択された方法で、セパレータ20Bの表面に塗布して硬化させることによって成形することができる。
上記構成において、燃料電池セル1を多数積層し、不図示のボルト・ナットで締め付けて燃料電池スタックとして組み立てた状態では、膜電極複合体10における高分子電解質膜11の張り出し部11aが、第一のガスケット30のシール突条31と第二のガスケット40の平坦なシール面41との間に挟み込まれる。
ここで、第一のガスケット30のシール突条31は所要の圧縮状態にあり、高分子電解質膜11は薄肉(0.1mm程度)で剛性が低いため、シール突条31の圧縮による反力は、高分子電解質膜11の張り出し部11aを介して第二のガスケット40に厚さ方向への圧縮力として加わる。そして本発明によれば、第二のガスケット40は、その肉厚tを0.02〜0.1mmとすることによって圧縮変形が抑えられるので、前記張り出し部11aに対する面圧の分散が抑えられ、すなわちシール面41のうちシール突条31と向かい合う部分のピーク面圧は、前記張り出し部11aに対するシール突条31のピーク面圧として、所要の密封性を確保することができる。またこのため、張り出し部11aの屈曲変形も防止される。
しかも、多数の燃料電池セル1を積層して組み立てた状態において、セパレータ20A,20Bの寸法精度や組立精度の誤差などによって、高分子電解質膜11(張り出し部11a)の両側の第一のガスケット30と第二のガスケット40に互いに僅かなずれ(オフセット)を生じていても、張り出し部11aには、シール突条同士で挟み込んだ場合のような曲げモーメントを生じない。
次に図3は、上述した第一の形態による燃料電池の密封構造を、高分子電解質膜11の張り出し部11aを補強フィルム14で補強したものに適用した例を、分離状態で示す部分断面図である。すなわち、この例においては、高分子電解質膜11の張り出し部11aの両面に、その所要の剛性を確保するために合成樹脂等からなる補強フィルム14が貼り付けられており、したがって、高分子電解質膜11の張り出し部11aが、第一のガスケット30のシール突条31と第二のガスケット40の平坦なシール面41との間に、補強フィルム14,14を介して挟み込まれる。
次に図4は、本発明の第二の形態による燃料電池の密封構造を、分離状態で示す部分断面図である。
この形態において、第一の形態と異なるところは、セパレータ20A,20Bの、高分子電解質膜11の張り出し部11aとの対向部に隆起部21,22が段付き形成され、第一のガスケット30が、セパレータ20Aの隆起部21に形成されたガスケット装着溝23に設けられており、第二のガスケット40が、セパレータ20Bの隆起部22に形成されたガスケット装着溝24に設けられたことにある。
詳しくは、セパレータ20Aに形成された隆起部21の隆起高さは、膜電極複合体10における触媒電極層12とガス拡散層13の厚さの和と略同等であって、第一のガスケット30は、その基部32が、前記隆起部21に形成されたガスケット装着溝23の内面に一体的に接着(成形)され、この基部32から立ち上がるシール突条31は、隆起部21より高く突出している。
また、他方のセパレータ20Bに形成された隆起部22の隆起高さも、膜電極複合体10における触媒電極層12とガス拡散層13の厚さの和と略同等であって、第二のガスケット40は、肉厚が0.02〜0.1mmの薄膜状であって、前記隆起部22に形成されたガスケット装着溝24に一体的に接着(成形)され、その平坦なシール面41は、前記隆起部22と同一平面もしくはそれより僅かに高くなっている。すなわちガスケット装着溝24の深さは、第二のガスケット40の肉厚と同等もしくはそれ以下となっている。
上記の構成においても、燃料電池セル1を多数積層し、不図示のボルト・ナットで締め付けて燃料電池スタックとして組み立てた状態では、膜電極複合体10における高分子電解質膜11の張り出し部11aが、第一のガスケット30のシール突条31と第二のガスケット40の平坦なシール面41との間に挟み込まれる。
そして、第二のガスケット40は、その肉厚tを0.02〜0.1mmとすることによって圧縮変形が抑えられるので、シール面41のうちシール突条31と向かい合う部分のピーク面圧を、高分子電解質膜11の張り出し部11aに対するシール突条31のピーク面圧と略同等として、所要の密封性を確保することができる。またこのため、張り出し部11aの屈曲変形も防止され、第一のガスケット30と第二のガスケット40に互いに僅かなずれ(オフセット)があっても、張り出し部11aには、シール突条同士で挟み込んだ場合のような曲げモーメントを生じない。
なお、セパレータ20Bに隆起部22が形成されていないもの(先に説明した図1あるいは図3に示される第一の形態)においては、セパレータ20B側のガス拡散層13及び触媒電極層12の、スタック組立後の厚みと、第二のガスケット40の肉厚tが等しくないと、高分子電解質膜11の張り出し部11aと、ガス拡散層13及び触媒電極層12に挟まれた部分との間で、積層方向に高低差による曲げ応力を生じてしまう。これに対し、第二の形態のように、セパレータ20Bに隆起部22を設け、この隆起部22に形成したガスケット装着溝24に、第二のガスケット40を、シール面41が隆起部22と同一平面をなすように設けたものは、セパレータ20B側のガス拡散層13及び触媒電極層12と、第二のガスケット40の肉厚tが等しくなくても、隆起部22の隆起高さやガスケット装着溝24の深さを適切に設定することによって、高分子電解質膜11をフラットな状態で積層することができる。
また、この第二の形態では、第一及び第二のガスケット30,40が、セパレータ20A,20Bの隆起部21,22に形成したガスケット装着溝23,24に設けられているので、対向する隆起部21,22が高分子電解質膜11の張り出し部11aに接触するまで、積層した燃料電池セル1を締め付けることによって、各燃料電池セル1におけるセパレータ20A、膜電極複合体10、セパレータ20Bの間隙や第一のガスケット30のシール突条31に対する圧縮量等を容易に管理することができる。
次に図5は、上述した第二の形態による燃料電池の密封構造を、高分子電解質膜11の張り出し部11aを補強フィルム14で補強したものに適用した例を、分離状態で示す部分断面図である。すなわち、この例においては、高分子電解質膜11の張り出し部11aの両面に、その所要の剛性を確保するために合成樹脂等からなる補強フィルム14が貼り付けられており、したがって、高分子電解質膜11の張り出し部11aが、第一のガスケット30のシール突条31と第二のガスケット40の平坦なシール面41との間に、補強フィルム14,14を介して挟み込まれる。
次に図6は、本発明の第三の形態による燃料電池の密封構造において、第二のガスケットを取り付けたセパレータの表面を示す図、図7は、図6におけるVII−VII位置の断面を、分離状態で示す部分断面図である。
この形態も、上述した第二の形態と同様に、セパレータ20A,20Bの、高分子電解質膜11の張り出し部11aとの対向部に隆起部21,22が段付き形成され、第一のガスケット30が、セパレータ20Aの隆起部21に形成されたガスケット装着溝23に設けられており、第二のガスケット40が、セパレータ20Bの隆起部22に形成されたガスケット装着溝24に設けられている。そして、この第三の形態において、図4あるいは図5に示される第二の形態と異なるところは、第二のガスケット40が、肉厚tが0.02〜0.1mmの薄肉の本体部42と、この本体部42における第一のガスケット30のシール突条31と向かい合う部分から幅方向へずれた位置に、ガスケット装着溝24の底面に形成された深溝25による厚肉部43が、図6に示されるように、延長方向全長にわたって連続して形成されたことにある。
好ましくは、燃料電池セル1の積層・組立状態において、第一のガスケット30と第二のガスケット40に互いにある程度のオフセットがあっても、シール突条31が厚肉部43と対向することのないように、発生し得るオフセット量を見込んで、厚肉部43は、第二のガスケット40の一側縁部に沿って形成されている。
上述のように、厚肉部43は、第一のガスケット30のシール突条31と向かい合う部分から幅方向へずれた位置に形成されているので、燃料電池セル1の積層・組立状態では、シール突条31の圧縮反力が、高分子電解質膜11の張り出し部11aを介して第二のガスケット40における薄肉の本体部42に厚さ方向への圧縮力として加わるようになっている。このため、第一又は第二の形態と同様、張り出し部11aに対する面圧の分散が抑えられて、所要の密封性を確保することができ、張り出し部11aの屈曲変形も防止される。
この形態によれば、第二のガスケット40は、射出成形法によって成形することができる。これについて更に説明すると、図8は、射出成形法による第二のガスケットの成形過程を示す部分断面図で、図中の参照符号50はセパレータ20Bに接離される金型である。この金型50は、図示の型閉じ状態において、セパレータ20Bのガスケット装着溝24との間に画成される成形用キャビティ51に成形用ゴム溶液又は液状ゴム(以下、成形材料という)を射出する多数のランナ52が、成形用キャビティ51の延長方向に対する所定間隔で開設されている。また、ランナ52の成形用キャビティ51側の開口は、流路が絞られたゲート53となっており、このゲート53は、図示の型閉じ状態において、深溝25上に位置するように形成されている。
すなわち、セパレータ20Bに第二のガスケット40を一体に成形する際には、図8に示されるように型閉じすることによって、セパレータ20Bとの間に成形用キャビティ51を画成し、この成形用キャビティ51内へ、ゲート53を介して成形材料を射出する。
ここで、成形用キャビティ51に深溝25が存在しない場合を仮定すると、この場合、射出された成形材料は、0.02〜0.1mmの狭い成形用キャビティ51内を、その延長方向へ円滑に流れにくく、このため成形不良が起こりやすい。これに対し、図8に示される方法では、各ゲート53からの成形材料が深溝25へ向けて射出され、この深溝25において成形用キャビティ51の断面積が大きくなっているので、成形材料が成形用キャビティ51の延長方向へ円滑に流れて互いに合流し、更に延長方向全域で、深溝25から浅溝部分へ賦形される。このため、射出成形法でもセパレータ20Bに容易に一体成形することができる。
図9〜図13は、試験結果を示すものであって、このうち図9は、先に説明した図4に示される第一及び第二のガスケット30,40による密封構造について、第二のガスケット40の肉厚tを0.1mmとした場合の、高分子電解質膜11の張り出し部11aに対する面圧を第一のガスケット30のシール突条31の圧縮量との関係でFEM解析した結果を示す線図、図10は、同じく第二のガスケット40の肉厚tを0.3mmとした場合の線図、図11は、同じく肉厚tを0.5mmとした場合の線図、図12は、シール突条31の圧縮量を0.6mmとした場合の、第二のガスケット40の肉厚tと高分子電解質膜11の張り出し部11aに対する面圧の関係を示す線図である。
なお、この試験の条件としては、第一及び第二のガスケット30,40に、硬度JIS A 50のゴム状弾性材料からなるものを用い、第一及び第二のガスケット30,40で挟み込む高分子電解質膜11は、膜厚が0.1mm、弾性率が2GPa、ポアソン比0.35であり、解析温度を25℃とした。
この試験結果から明らかなように、第二のガスケット40の肉厚tを0.5mm、あるいは0.3mmとした場合は、第二のガスケット40のシール面圧が、第一のガスケット30のシール突条31のシール面圧より低いが、肉厚tを小さくするほど第二のガスケット40のシール面圧が上昇してシール突条31のシール面圧との差が小さくなり、肉厚tを0.1mmとした場合、図9に示されるように、圧縮量が0.5mm以上でシール突条31側のシール面圧と第二のガスケット40側のシール面圧がほぼ均衡している。したがって、第二のガスケット40の肉厚tを0.1mm以下とすれば良いことがわかる。
本発明の第一の形態による燃料電池の密封構造を、分離状態で示す部分断面図である。 本発明の第一の形態による燃料電池の密封構造において、第一又は第二のガスケットを取り付けたセパレータの表面を示す図である。 第一の形態による燃料電池の密封構造を、高分子電解質膜の張り出し部を補強フィルムで補強したものに適用した例を、分離状態で示す部分断面図である。 本発明の第二の形態による燃料電池の密封構造を、分離状態で示す部分断面図である。 第二の形態による燃料電池の密封構造を、高分子電解質膜の張り出し部を補強フィルムで補強したものに適用した例を、分離状態で示す部分断面図である。 本発明の第三の形態による燃料電池の密封構造において、第二のガスケットを取り付けたセパレータの表面を示す図である。 図6におけるVII−VII位置の断面を、分離状態で示す部分断面図である。 図7に示される第二のガスケットの成形過程を示す部分断面図である。 第二のガスケットの肉厚tを0.1mmとした場合の、高分子電解質膜に対する面圧をシール突条の圧縮量との関係でFEM解析した結果を示す線図である。 第二のガスケットの肉厚tを0.3mmとした場合の、高分子電解質膜に対する面圧をシール突条の圧縮量との関係でFEM解析した結果を示す線図である。 第二のガスケットの肉厚tを0.5mmとした場合の、高分子電解質膜に対する面圧をシール突条の圧縮量との関係でFEM解析した結果を示す線図である。 シール突条の圧縮量を0.6mmとした場合の、第二のガスケットの肉厚tと高分子電解質膜の張り出し部に対する面圧の関係を示す線図である。 従来技術による燃料電池の密封構造を、分離状態で示す部分断面図である。
符号の説明
1 燃料電池セル
10 膜電極複合体
11 高分子電解質膜
11a 張り出し部
12 触媒電極層
13 ガス拡散層
14 補強フィルム
20A,20B セパレータ
21,22 隆起部
23,24 ガスケット装着溝
25 深溝
30 第一のガスケット
31 シール突条
32 基部
40 第二のガスケット
41 シール面
42 本体部
43 厚肉部
50 金型
51 成形用キャビティ
52 ランナ
53 ゲート

Claims (3)

  1. 膜電極複合体(10)の高分子電解質膜(11)を、その厚さ方向一側に配置されたセパレータ(20A)に一体的に設けたゴム状弾性材料からなる第一のガスケット(30)と、厚さ方向他側に配置されたセパレータ(20B)に一体的に設けたゴム状弾性材料からなる第二のガスケット(40)で挟み込む密封構造において、前記第一のガスケット(30)は、前記高分子電解質膜(11)と密接されるシール突条(31)を有し、前記第二のガスケット(40)は、前記高分子電解質膜(11)と密接される平坦なシール面(41)を有し、肉厚(t)を0.02〜0.1mmとしたことを特徴とする燃料電池の密封構造。
  2. 第二のガスケット(40)が、セパレータ(20B)の表面に、ゴム溶液又は液状ゴムを、ドクターブレード法、スタンプ法、スクリーン印刷法、及びインクジェット塗布法から選択された方法により塗布して硬化させたものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の密封構造。
  3. 第二のガスケット(40)が、セパレータ(20B)に形成されたガスケット装着溝(24)に設けられ、この第二のガスケット(40)のうち、第一のガスケット(30)のシール突条(31)と向かい合う部分から幅方向へずれた位置に、前記ガスケット装着溝(24)の底面に形成された深溝(25)による厚肉部(43)を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の密封構造。
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