JP5310834B2 - 磁気記録媒体用ガラス基板および磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体用ガラス基板および磁気記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板および磁気記録媒体に関する。
磁気記録装置等に用いられる磁気記録媒体用基板としては、従来、アルミニウム合金基板が使用されてきたが、高記録密度化の要求に伴い、アルミニウム合金基板に比べて硬く、平坦性や平滑性に優れるガラス基板が主流となってきている。
近年、磁気記録媒体はさらに高記録密度化、高速回転化が進んできたことにより、磁気記録媒体の半径/トラック位置情報を記録しているサーボ情報を磁気ヘッドが見失い、読み取り/書き込みエラーが発生する現象が従来よりも多く発生するようになってきている。
このようなエラーの発生は、高記録密度化に伴う狭トラック幅化、高速回転化に伴うディスクフラッタリングの発生による機械的振動が原因であると考えられてきた。
このため、このようなエラーを抑制するため、例えば、磁気記録媒体用ガラス基板の材料として比弾性(比弾性とはヤング率をガラスの密度で割った量で、軽くて強い、軽くて変形しにくい、という特性をあらわす指針となる量である。以下、比ヤング率ともいう。)が高い材料を使用し、フラッタリングを抑制することが行われてきた。
また、特許文献1には、厚さ方向の対称性が所定の範囲内の磁気記録媒体用ガラス基板を選択することにより、ハードディスクとしたときに磁気記録媒体に記録されたサーボ情報のエラーを少なくする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が記載されている。
特開2010−277679号公報
上記のように磁気記録媒体のエラーの発生を抑制する方法が従来から検討されてきたが、エラーの発生を十分には抑制できておらず、依然として磁気記録媒体とした際にエラーが発生する問題があった。
そこで、本発明は上記従来技術が有する問題に鑑み、磁気記録媒体とした際にエラーの発生率の低い磁気記録媒体用ガラス基板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板において、前記磁気記録媒体用ガラス基板の対向する2箇所に設けられた弦と円弧によって囲まれ、前記弦と前記円弧との間の距離の最大値は前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の2.3%〜7.7%の長さである、直径方向の両端部を下面側から支持し、前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の35〜80%の長さの幅であり、該幅方向の中心線は前記磁気記録媒体用ガラス基板の中心を通り、前記弦と平行である前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央領域上面に、(磁気記録媒体用ガラス基板の主平面の面積)mm×2.28mN/mmにより計算される荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後5時間経過時の平坦度と、荷重を加える前の平坦度との差の絶対値を擬弾性変形量Aとした場合に、前記擬弾性変形量Aが3.5μm以下である磁気記録媒体用ガラス基板を提供する。
本発明は、磁気記録媒体に荷重が加わり変形した場合でも所定の時間内に元の形状に戻ることができる磁気記録媒体用ガラス基板を提供するものである。このため、出荷時にカセット内に梱包、固定され磁気記録媒体用ガラス基板が変形した場合でも、サーボ情報を書き込むまでの時間に元の形状に復元し、磁気記録媒体の適切な位置にサーボ情報を記録することができ、その後のエラー(読み取り/書き込みエラー)の発生を抑制することが可能になる。
本発明に係る第1の実施形態における擬弾性変形量の測定フローの説明図 本発明に係る第1の実施形態における擬弾性変形量測定の際の荷重付加方法の説明図
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施形態]
本実施形態では本発明の磁気記録媒体用ガラス基板について説明を行う。
本発明の発明者らは、磁気記録媒体用ガラス基板の材料として比弾性(比弾性とはガラスのヤング率をガラスの密度で割った量で、軽くて強い、軽くて変形しにくい、という特性をあらわす指針となる量である。以下、比ヤング率ともいう。)が高い材料を使用した場合であっても、磁気記録媒体に読み出しエラーが起きることの原因について検討を行った結果、搬送工程で磁気記録媒体が変形した場合に、変形が十分戻らないうちにサーボ情報を書き込むことが原因の一つであることを見出し、本発明を完成させた。
一般的に磁気記録媒体用ガラス基板はその表面に磁性層等を形成して磁気記録媒体とした後、他の磁気記録媒体と接触しないようにカセット中に収め、さらに、減圧された梱包容器内に収めてハードディスクドライブの製造工場へと出荷、搬送される。磁気記録媒体を搬送する際、磁気記録媒体は、カセット内に収められているものの、さらに減圧された梱包容器(包装)内に収められているため、荷重が加わり変形する場合がある。
そして、ハードディスクドライブの製造工場に搬送後、磁気記録媒体はカセットから取出されハードディスクドライブに組み立て、サーボ情報を書き込み、リード・ライトテストに供される。
上記のように搬送時に磁気記録媒体に荷重が加わり変形していた場合、カセットから取出すことにより荷重が取り除かれるため、これらの工程の間に磁気記録媒体は元の形状へと徐々に戻っていく。
通常、磁気記録媒体はカセット取出し後、5〜12時間程度後にサーボ情報が書き込まれる。しかしながら、この段階で磁気記録媒体の形状がまだ十分に復元していない場合、サーボ情報を書き込んだ後もその位置が変位することになる。このため、書き込んだサーボ情報の書き込み位置がずれて、エラーを生じる原因になる。
そして、磁気記録媒体に読み出しエラーが起きることの原因について検討を行った結果、磁気記録媒体は磁気記録媒体用ガラス基板表面に磁性層等を形成したものであるから、磁気記録媒体の形状が復元する速度は磁気記録媒体用ガラス基板の擬弾性変形量に依存していることが分かった。
本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板の擬弾性変形量Aを3.5μm以下とすることによって、磁気記録媒体用ガラス基板表面に磁性層等を形成した磁気記録媒体において読み出しエラーが発生することを確実に抑制しようとするものである。
ここでいう、擬弾性変形量Aとは、磁気記録媒体用ガラス基板の対向する両端部を下面側から支持し、磁気記録媒体用ガラス基板の中央部(中心を含む中央領域)上面に荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後5時間経過時の平坦度と、荷重を加える前の平坦度との差の絶対値である。
ここで、擬弾性変形量Aを測定する際に、磁気記録媒体用ガラス基板に荷重を48時間加えているのは磁気記録媒体を梱包、出荷してから、ハードディスクドライブ組立のため梱包を開封するまで一般的に要する時間に基づいている。さらに、後述する擬弾性変形量A〜Cの測定方法で擬弾性変形量を測定した場合、いずれのガラス基板を用いても荷重を加える時間が16時間程度で平坦度の変化が飽和してきていることが確認された。このため、平坦度の変化が飽和し、それ以上長く荷重をかけても平坦度の変化が起きない時間という観点からも48時間とした。
また、荷重を取り除いた後5時間後の平坦度を比較の対象としているのは、通常、磁気記録媒体の梱包を開封後、サーボ情報を書き込むまでの時間が5〜12時間程度であるためである。エラーを抑制するためには、この間にその後の変位が問題とならない程度にまで磁気記録媒体用ガラス基板が元の形状へと回復している必要がある。
擬弾性変形量Aの値としては、サーボ情報を記録した後に磁気記録媒体用ガラス基板が変位したとしても許容される値であればよく、擬弾性変形量Aの値は上記のように4.2μm以下である。擬弾性変形量Aとしては4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがさらに好ましく、3.0μm以下であることが特に好ましい。なお、擬弾性変形量Aの下限値は0μmとなる。これは、他の擬弾性変形量B、擬弾性変形量Cについても同様のことがいえる。
また、磁気記録媒体用ガラス基板直径方向の両端部を下面側から支持し、前記磁気記録用ガラス基板の中央部(中心を含む中央領域)上面に荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後5時間経過時の平坦度と、荷重を取り除いた後48時間経過時の平坦度との差の絶対値を擬弾性変形量Bとする。この場合に、前記擬弾性変形量Bが3.0μm以下の磁気記録媒体用ガラス基板であることが好ましい。
擬弾性変形量Bは、荷重を除去してから5時間経過時から48時間経過時の間の変形量を意味している。このため、その値が小さいほど、荷重を除去して5時間経過時にサーボ情報を書き込んでからの変位量が小さいことを意味している。
従って、擬弾性変形量Bが上記規定を満たすことによってサーボ情報を書き込んだ後の変位量が小さく、磁気記録媒体とした場合にエラーの発生をより抑制することが可能になる。
擬弾性変形量Bの値としては、サーボ情報を書き込んだ後、データの読み取り、書き込みを行う際に許容される変形量であればよいが、上記のように3.0μm以下であることが好ましい。擬弾性変形量Bとしては、2.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることが特に好ましい。
さらに、磁気記録媒体用ガラス基板の両端部を下面側から支持し、前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央部(中心を含む中央領域)上面に荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後、5時間経過時の平坦度である擬弾性変形量Cが5.5μm以下であることが好ましい。
擬弾性変形量Cは、その値が小さいほど荷重除去後5時間経過時における平坦度が小さいことを示している。係るパラメータを充足する磁気記録媒体用ガラス基板は、荷重を48時間加えているにもかかわらず、変形量が少ないことおよび/または荷重を除去してから5時間で平坦度が回復していることを示している。このため、荷重除去後5時間経過時にサーボ情報を書き込んだとしても、磁気記録媒体用ガラス基板のその後の変形量は小さく、エラーの発生を抑制することが可能になる。
ここまで説明した擬弾性変形量A〜Cの測定方法について図1、2を用いて説明する。
なお、以下の説明、図1において各時間での平坦度はF(xh)のように表わす。式中xは、荷重を取り除いた時点を基準(0h)とし、荷重を取り除いてからの経過時間を示している。また、荷重を取り除く前の時間はマイナスで表わされる。このため、例えば、F(−48h)とは、荷重を取り除く48時間前、すなわち荷重を加える前の磁気記録媒体用ガラス基板の平坦度を示している。
まず、擬弾性変形量測定フローについて、図1を用いて説明する。
測定は、図1に示すように、まず、荷重を加える前に、磁気記録媒体用ガラス基板の平坦度F(−48h)を測定する(図1中(1)の点)。その後、磁気記録媒体用ガラス基板に後述する方法により、48時間荷重を加える。これは、一般的なハードディスクドライブ組立工程において磁気記録媒体を梱包、出荷してから開封するまで48時間程度であるためである。また、上記のようにいずれのガラス基板においても荷重を加えてから16時間程度で平坦度の変化が飽和してくることが確認されている(ガラス基板が変形しきる)。このため、平坦度の変化が飽和し、それ以上長く荷重をかけても平坦度の変化が起きない時間という観点からも48時間としている。
48時間経過後荷重を取り除き(図1中(2)の点)、荷重を取り除いた後5時間経過したときに平坦度を再度測定して(図1中(3)の点)これをF(5h)とした。これは、一般的にハードディスクの組立工程において、梱包開封後5〜12時間程度してからサーボ情報の書き込みが行われているためである。
また、荷重を取り除いた後、48時間経過したときの平坦度を測定して(図1中(4)の点)これをF(48h)とした。これは、一般的なハードディスクドライブの組立工程において、梱包を開封後48時間程度経過した時点でリード・ライトテストを行うためである。
そして、擬弾性変形量Aは上記のように、荷重を加える前の平坦度F(−48h)と、荷重を取り除いた後5時間経過した時の平坦度との差の絶対値により算出され、以下の式で表わされる。
(擬弾性変形量A)=|F(5h)−F(−48h)|
擬弾性変形量Aの値が小さいほど、荷重を加えることによって生じた変形から元の磁気記録媒体用ガラス基板の形状(平坦度)に戻っていることを示している。
また、擬弾性変形量Bは上記のように荷重を取り除いた後5時間経過した時の平坦度と、48時間経過した時の平坦度の差の絶対値により算出され、以下の式で表わされる。
(擬弾性変形量B)=|F(5h)−F(48h)|
擬弾性変形量Cは、荷重を除去した後5時間経過した時の平坦度を表わしている。このため、以下の式で表わされる。
(擬弾性変形量C)=F(5h)
磁気記録媒体用ガラス基板の平坦度を測定する手段については特に限定されるものではなく、例えば位相測定干渉法(フェイズシフト法)により測定を行うことができる。
次に、擬弾性変形量を測定する際の、磁気記録媒体用ガラス基板に荷重を加える方法について以下に説明する。
磁気記録媒体用ガラス基板に荷重を加える際には、磁気記録媒体用ガラス基板の対向する直径方向の両端部を下面側から支持し、磁気記録媒体用ガラス基板の中心を含む中央部に磁気記録媒体用ガラス基板の上面から垂直下方に荷重を加えることにより行う。
具体的な例について、図2を用いて説明する。
図2は擬弾性変形量を測定するために、磁気記録媒体用ガラス基板に荷重を加えている構成例を示したものであり、図2(a)は横側面図、図2(b)は上面図をそれぞれ示したものである。
図2にあるように、磁気記録媒体用ガラス基板の両端部を支持するためV字ブロック11を用い、その上に磁気記録媒体用ガラス基板13、荷重(重石)15を配置してガラス基板に荷重を加える。
V字ブロック11はその中央部にV字状の切り込み部12を有している。そして、V字状の切り込み部12を覆うように磁気記録媒体用ガラス基板13を配置することにより磁気記録媒体用ガラス基板13の両端部14のみを下面側から支持することができるように構成されている。なお、磁気記録媒体用ガラス基板を支持する部材としては、V字ブロックに限定されるものではなく、磁気記録媒体用ガラス基板の両端部14を支持できるものであればよい。例えば四角柱形状のブロック2つを所定の間隔を空けて、磁気記録媒体用ガラス基板の両端部分14を支持できるように配置したものでもよい。
この場合、V字ブロックと接触し、磁気記録媒体用ガラス基板を支持する直径方向の両端2箇所に設けられた両端部(支持部)14は、それぞれ弦141、142と円弧によって囲まれている。そして、弦141と弦142はV字ブロックの切り込み部の端部であり、平行になっている。そして、弦と円弧の間の距離の最大値、すなわち、図2中のW1はそれぞれ、例えば磁気記録媒体用ガラス基板の直径の2.3%〜7.7%の長さとすることが好ましく、直径の3.0%〜4.6%とすることがより好ましい。これは、支持する部分の範囲が狭すぎると、荷重を加えた場合に磁気記録媒体用ガラス基板がずれ落ちて破損する恐れがあるためであり、広すぎると、荷重部分との間の距離が短くなり、平坦度の変化が出にくくなり、測定の分解能が低くなるためである。
荷重については、磁気記録媒体用ガラス基板の中心を含む中央部に荷重を加えることができればよく、特にその配置、荷重の大きさについて限定されるものではない。
例えば図2に示すように、磁気記録媒体用ガラス基板の中央部に直方体の荷重(重石)を配置することによって行うことができる。この場合、荷重は前記磁気記録媒体用ガラス基板を支持する両端部を構成する弦141、142と平行になるように配置することが好ましい。また、荷重は図2(b)に示すように、弦141、142と平行な中心線から一定の距離の幅(範囲)の磁気記録媒体用ガラス基板を全て覆うように配置することが好ましい。例えば荷重(重石)として、その幅すなわち、図2中のW2の長さが磁気記録媒体用ガラス基板の直径の35%〜80%である直方体を好ましく用いることができ、55%〜75%のものをより好ましく使用することができる。
これは、例えば荷重を加える範囲が狭すぎる場合、荷重が狭い範囲に集中する、荷重が不安定となり転倒する、などによって磁気記録媒体用ガラス基板を破損する恐れがあるためであり、荷重を加える範囲が広すぎる場合、支持している両端部との間の距離が狭くなり、平坦度の変化が出にくくなり、測定の分解能が低くなるためである。
荷重(重石)の縦方向の長さとしては、上記のように磁気記録媒体用のガラス基板の直径と同じ長さ、または、それ以上の長さであることが好ましい。
荷重の重さとしても特に限定されるものではなく、擬弾性による変形が十分に起こり、かつ磁気記録媒体用ガラス基板を破損しない範囲であれば良く、用いる磁気記録媒体用ガラス基板の面積や強度等に応じて選択することができる。
例えば、磁気記録媒体用ガラス基板の主平面の面積1mmあたり、0.233gf(2.28mN)の荷重になるように選択することができる。すなわち、(磁気記録媒体用ガラス基板の主平面の面積)mm×0.233gf/mm(2.28mN/mm)により計算される荷重を加えることができる。例えば、外径が65mm、内径(中央部の円孔の直径)が20mmの磁気記録媒体用ガラス基板(2.5インチの磁気記録媒体用ガラス基板)の場合、700gf(6.86N)の荷重を磁気記録媒体用ガラス基板の中央部上面に加えることになる。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は以下の工程1〜4を含む製造方法により、製造することができる。
(工程1)ガラス素基板から、中央部に円孔を有する円盤形状のガラス基板に加工した後、内周端面と外周端面を面取り加工する形状付与工程。
(工程2)ガラス基板の端面(内周端面及び外周端面)を研磨する端面研磨工程。
(工程3)前記ガラス基板の主平面を研磨する主平面研磨工程。
(工程4)前記ガラス基板を洗浄して乾燥する洗浄工程。
そして、上記各工程を含む製造方法により得られた磁気記録媒体用ガラス基板はその上に磁性層などの薄膜を形成する工程をさらに行うことによって、磁気記録媒体とすることができる。
ここで、(工程1)の形状付与工程は、フロート法、フュージョン法、プレス成形法、ダウンドロー法またはリドロー法で成形されたガラス素基板を、中央部に円孔を有する円盤形状のガラス基板に加工するものである。なお、用いるガラス素基板は、加工して得られた磁気記録媒体用ガラス基板が上記擬弾性変形量を充足するものであれば良く、特に限定されるものではない。例えば、アモルファスガラスや、結晶化ガラス、ガラス基板の表層に圧縮応力層(強化層)を有する強化ガラスでもよい。ガラス基板は比弾性(比ヤング率)が高いことが好ましく、例えば29GPa・cm/g以上であることが好ましく、30GPa・cm/g以上であることがより好ましい。
そして、(工程2)の端面研磨工程は、ガラス基板の端面(側面部と面取り部)を端面研磨するものである。
(工程3)の主平面研磨工程については、両面研磨装置を用い、ガラス基板の主平面に研磨液を供給しながらガラス基板の上下主平面を同時に研磨するものである。本発明のガラス基板の研磨は、1次研磨のみでもよく、1次研磨と2次研磨を実施してもよく、2次研磨の後に3次研磨を実施してもよい。
上記(工程3)の主平面研磨工程の前において、主平面のラップ(例えば、遊離砥粒ラップ、固定砥粒ラップなど)を実施してもよい。また、各工程間にガラス基板の洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。なお、主平面のラップとは広義の主平面の研磨である。
さらに、ガラス基板の表層に圧縮応力層(強化層)を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。
[第2の実施形態]
本実施の形態では、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体について説明する。
磁気記録媒体は、第1の実施形態で説明した磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層等を成膜することにより磁気記録媒体(磁気ディスク)とすることができる。
磁気記録媒体には水平磁気記録方式、垂直磁気記録方式があるが、ここでは垂直磁気記録方式を例に手順を以下に説明する。
磁気記録媒体は、少なくともその表面に磁性層、保護層、潤滑膜を備えている。そして、垂直磁気記録方式の場合、磁気ヘッドからの記録磁界を環流させる役割を果たす軟磁性材料からなる軟磁性下地層を配するのが一般的である。このため、ガラス基板表面から順に、例えば、軟磁性下地層、非磁性中間層、垂直記録用磁性層、保護層、潤滑膜のように積層されている。
各層について以下に説明する。
軟磁性下地層としては例えば、CoNiFe、FeCoB、CoCuFe、NiFe、FeAlSi、FeTaN、FeN、FeTaC、CoFeB、CoZrN等が使用できる。
そして、非磁性中間層は、Ru,Ru合金等から構成される。この非磁性中間層は垂直記録用磁性層のエピタキシャル成長を容易にするための機能、及び軟磁性下地層と記録用磁性層との間での磁気交換結合を断つ機能を有する。
垂直記録用磁性層は、磁化容易軸が基板面に対して垂直方向を向いた磁性膜であり、少なくともCo、Ptを含んでいる。そして、高い固有媒体ノイズの原因となる粒間交換結合を低減するため、良好に隔離された微粒子構造(グラニュラー構造)とするのが良い。具体的には、CoPt系合金などに酸化物(SiO、SiO、Cr、CoO、Ta、TiO等)や、Cr、B、Cu、Ta、Zrなどを添加したものを用いるのがよい。
ここまで説明した軟磁性下地層、非磁性中間層、垂直記録用磁性層はインラインスパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法などで連続的に製造することができる。
次いで、保護層は垂直記録用磁性層の腐食を防ぎ、かつ、磁気ヘッドが媒体に接触した場合でも媒体表面の損傷を防ぐために設けられたものであり、垂直記録用磁性層の上に設けられる。保護層としてはC、ZrO、SiOなどを含む材料を用いることができる。
その形成方法としては、例えばインラインスパッタ法、CVD法、スピンコート法などを用いることができる。
保護層の表面には磁気ヘッドと記録媒体(磁気ディスク)との摩擦を低減するために、潤滑層を形成する。潤滑層は、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。潤滑層についてはディップ法、スプレー法などで形成することができる。
以上、説明してきたように、第1の実施形態で説明してきた磁気記録媒体用ガラス基板上に磁性層等を形成して得られた磁気記録媒体は、サーボ情報を書き込んだ後も変位が少ないため、エラーの発生を抑制することが可能になる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、以下の実施例、比較例における、磁気記録媒体用ガラス基板の評価方法、及び、ガラス基板表面に磁性層などの薄膜を成膜した磁気記録媒体の評価方法について説明する。
(1)擬弾性変形量
擬弾性変形量A〜Cは、第1の実施形態に説明したように、まず、磁気記録媒体用ガラス基板に荷重を加える前の平坦度F(−48h)と、荷重を48時間加えた後これを取り除いてから5時間、48時間経過時の平坦度F(5h)、F(48h)をそれぞれ測定した。
各時間における平坦度の測定は、位相測定干渉法(フェイズシフト法)により行った。具体的には、干渉式平坦度測定機(Zygo社製、型式:Zygo GI Flat(MESA))を使用し、680nmの測定波長で測定した。
その後、測定した各平坦度から以下の式により擬弾性変形量A〜Cを算出した。
(擬弾性変形量A)=|F(5h)−F(−48h)|
(擬弾性変形量B)=|F(5h)−F(48h)|
(擬弾性変形量C)=F(5h)
ここで、磁気記録媒体用ガラス基板に荷重を加える際の条件について説明する。
まず、図2に示すように磁気記録媒体用ガラス基板の両端部分をV字ブロックにより支持した。
支持部分14は直径方向の両端に配置されており、2つの両端部(支持部)は弦141、142と(弦により切り取られた短い方の弧である)円弧によって囲まれており、2つの両端部は同一の形状になっている。そして、弦141、142と円弧の間の距離の最大値W1は磁気記録媒体用ガラス基板の直径の3.8%になるように配置した。
次に、V字ブロックによって支持された両端部分を構成する弦141、142と平行になるように、荷重15を磁気記録媒体用ガラス基板の主平面上に配置した。本実施例では、荷重のサイズとしては、その横幅、すなわち、図2中のW2が磁気記録媒体用ガラス基板の直径の67%である荷重を用いた。この場合、荷重の幅方向の中心線が磁気記録媒体用ガラス基板の中心を通るように配置する。
また、縦方向については、荷重の横幅の範囲全体に渡って磁気記録媒体用ガラス基板を完全に覆るよう、磁気記録媒体用ガラス基板の直径よりも長いものを用いた。
(2)リード・ライトテスト
得られた磁気記録媒体用ガラス基板について磁性層等を形成した後、以下に説明する手順によりリード・ライトテストを行った。
具体的には、磁気記録媒体用ガラス基板に磁性層等を形成した磁気記録媒体をハードディスクドライブ(HDD)に組み込み、下記の手順にてサーボ情報を書き込んだ。その後、下記実施例の手順により、トラック密度約254TPI(Track per inch)、線記録密度約1500BPI(Bit per inch)の条件にて磁気信号を記録し、その信号を読み出すときのエラー発生の有無を確認した。
本実施例では、比ヤング率が高いガラス基板数種類(表1に示す例1〜例9の磁気記録媒体用ガラス基板)について検討を行った。
Figure 0005310834
(磁気記録媒体用ガラス基板の製造)
各磁気記録媒体用ガラス基板は、表1の例1〜例9のガラス素基板を用いて、以下の手順により、直径65mm、板厚0.6mm、中央部に20mmの円孔を有するドーナツ形状に加工した。
まず、ガラス素基板から中央部に円孔を有する円盤形状ガラス基板に加工する。
この円盤形状ガラス基板の内周端面と外周端面を、面取り角度45°の磁気記録媒体用ガラス基板が得られるように面取り加工を行う(内周面取り工程、外周面取り工程)。
面取り加工後、アルミナ砥粒を用いてガラス基板上下主平面をラッピング加工し、砥粒を洗浄除去する。
次に、磁気記録媒体用ガラス基板の外周側面部と外周面取り部を、研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を含有する研磨液を用いて研磨し、外周側面と外周面取り部の加工変質層(傷など)を除去し、鏡面となるように外周端面を研磨加工する(外周端面研磨工程)。
外周端面研磨後、磁気記録媒体用ガラス基板の内周側面部と内周面取り部を研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を含有する研磨液用いて研磨し、内周側面部と内周面取り部の加工変質層(傷など)を除去し、鏡面となるように内周端面を研磨加工する(内周端面研磨工程)。内周端面研磨したガラス基板は、砥粒を洗浄除去する。
ガラス基板の端面を加工した後、ダイヤモンド砥粒を含有する固定粒工具と研削液を用いて、ガラス基板上下主平面をラッピング加工し、洗浄する。
次に、研磨具として硬質ウレタン製の研磨パッドと酸化セリウム砥粒を含有する研磨液を用いて、22B型両面研磨装置(スピードファム社製、製品名:DSM22B−6PV−4MH)により上下主平面を1次研磨し、酸化セリウムを洗浄除去した。
1次研磨後のガラス基板は、研磨具として軟質ウレタン製の研磨パッドと、上記の酸化セリウム砥粒よりも平均粒径が小さい酸化セリウム砥粒を含有する研磨液を用いて、22B型両面研磨装置により上下主平面を2次研磨し、酸化セリウムを洗浄除去した。
2次研磨後のガラス基板は、3次研磨(仕上げ研磨)を行う。3次研磨の研磨具として軟質ウレタン製研磨パッドとコロイダルシリカを含有する研磨液を用いて、両面研磨装置により上下主平面を研磨加工した。
仕上げ研磨(3次研磨)したガラス基板は、スクラブ洗浄、洗剤溶液に浸漬した状態での超音波洗浄、純水に浸漬した状態での超音波洗浄、を順次行い(精密洗浄)、イソプロピルアルコール蒸気にて乾燥した。
得られた各磁気記録媒体用ガラス基板について、擬弾性変形量A〜Cの測定を行ったので結果を表2に示す。
(磁気記録媒体の製造)
次に、上記例1〜例9の磁気記録媒体用ガラス基板各100枚に下地層、磁性層、保護層、潤滑層を順次設けて磁気記録媒体を製造した。
具体的な手順を説明すると、例1〜9それぞれの磁気記録媒体用ガラス基板の表面に、インライン型スパッタリング装置を用いて、軟磁性下地層としてNiFe層、非磁性中間層としてRu層、垂直磁気記録層としてCoCrPtSiOのグラニュラ構造層を、順次積層した。次に、CVD法にてダイヤモンドライクカーボン膜を保護層として形成した。その後、ディップ法によってパーフルオロポリエーテルを有する潤滑膜を形成し、磁気記録媒体とした。
これらをそれぞれシッピングカセット(エンテグリス社製)に収納し、400mmHgの真空度でAlラミネート袋に真空包装し、48時間放置した。
48時間後包装を開封し、磁気記録媒体を取り出してHDD装置に組み上げ、254kTPIに対応する条件でサーボ情報を書き込んだ。サーボ情報書き込みは、開封後5時間後に行った。サーボ情報書き込みから43時間後(開封後48時間後)に、HDDのリード・ライトテストを実施した。
リード・ライトテストの結果を表2に示す。
Figure 0005310834
これによると擬弾性変形緩和量Aが本発明の規定を充足する実施例の例1〜例においては、リード・ライトテストでのエラー発生率が最も大きいものでも%程度であり、比較例である例7〜例9と比較して半分程度に抑制できていることが確認できた。
エラーの発生率が高かった例8、9の磁気ディスクの欠点を解析したところ、外周部分にエラーが集中していることが確認された。その原因は以下のように考えられる。
シッピングカセット内に保持された磁気記録媒体は、真空包装による大気からの圧力で変形し、開包後はそれぞれの擬弾性特性に従って徐々に元の形状に戻る。しかしながら、擬弾性特性に劣る例8、9では、サーボ情報書き込み時に、まだ元の形状に戻りきっておらず、その後元の形状に戻るため、以後のリード・ライトテスト時にサーボ情報の位置ずれが発生したものと考えられる。
形状の変化は外周ほど顕著なため、外周部にエラーが集中したものと推認される。
比較例である例8は、本件等で用いた他のガラス基板と比較しても比弾性が高く、フラッタリングが抑えられるため、磁気記録媒体の実装評価においてエラーの発生が抑制されるはずだが、上記のようにエラーの発生率が高かった。これは、例8の磁気記録媒体用ガラス基板の疑弾性変形量が大きいことに起因していると考えられる。これらの結果から、磁気記録媒体のエラーの発生を充分に抑制するためには、従来考えられていたように磁気記録媒体用ガラス基板として比弾性が高いガラス基板を用いるだけでは不充分であり、磁気記録媒体用ガラス基板の疑弾性変形量が小さいものを用いる必要があることが分かる。
さらに、擬弾性変形量B、Cについても本発明の規定を充足する例1〜6については、特にエラーの発生率が多いものでも1%であり、エラーの発生を特に抑制できていることが確認できた。
以上の本実施例の結果から、擬弾性変形量が所定の範囲の磁気記録媒体用ガラス基板を選択することによって、エラー(読み取り/書き込みエラー)発生を抑制した磁気記録媒体とすることができることが分かる。
13 磁気記録媒体用ガラス基板
14 両端部
15 荷重

Claims (4)

  1. 磁気記録媒体用ガラス基板において、
    前記磁気記録媒体用ガラス基板の対向する2箇所に設けられた弦と円弧によって囲まれ、前記弦と前記円弧との間の距離の最大値は前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の2.3%〜7.7%の長さである、直径方向の両端部を下面側から支持し、前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の35〜80%の長さの幅であり、該幅方向の中心線は前記磁気記録媒体用ガラス基板の中心を通り、前記弦と平行である前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央領域上面に、(磁気記録媒体用ガラス基板の主平面の面積)mm×2.28mN/mmにより計算される荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後5時間経過時の平坦度と、
    荷重を加える前の平坦度との差の絶対値を擬弾性変形量Aとした場合に、
    前記擬弾性変形量Aが3.5μm以下である磁気記録媒体用ガラス基板。
  2. 磁気記録媒体用ガラス基板において、
    前記磁気記録媒体用ガラス基板の対向する2箇所に設けられた弦と円弧によって囲まれ、前記弦と前記円弧との間の距離の最大値は前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の2.3%〜7.7%の長さである、直径方向の両端部を下面側から支持し、前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の35〜80%の長さの幅であり、該幅方向の中心線は前記磁気記録媒体用ガラス基板の中心を通り、前記弦と平行である前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央領域上面に、(磁気記録媒体用ガラス基板の主平面の面積)mm×2.28mN/mmにより計算される荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後5時間経過時の平坦度と、
    荷重を取り除いた後48時間経過時の平坦度との差の絶対値を擬弾性変形量Bとした場合に、
    前記擬弾性変形量Bが3.0μm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  3. 磁気記録媒体用ガラス基板において、
    前記磁気記録媒体用ガラス基板の対向する2箇所に設けられた弦と円弧によって囲まれ、前記弦と前記円弧との間の距離の最大値は前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の2.3%〜7.7%の長さである、直径方向の両端部を下面側から支持し、前記磁気記録媒体用ガラス基板の直径の35〜80%の長さの幅であり、該幅方向の中心線は前記磁気記録媒体用ガラス基板の中心を通り、前記弦と平行である前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央領域上面に、(磁気記録媒体用ガラス基板の主平面の面積)mm×2.28mN/mmにより計算される荷重を48時間加えた後に荷重を取り除き、荷重を取り除いた後、5時間経過時の平坦度である擬弾性変形量Cが5.5μm以下である請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板を用いたことを特徴とする磁気記録媒体。
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