JP5310624B2 - 燃料圧力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料供給ポンプから供給されコモンレールで蓄圧された燃料を燃料噴射弁から内燃機関の各気筒に噴射する燃料噴射システムに適用され、コモンレール内の燃料圧力を制御する燃料圧力制御装置に関する。
従来、燃料供給ポンプから供給されコモンレールで蓄圧された燃料を燃料噴射弁から内燃機関の各気筒に噴射する燃料噴射システムにおいて、信号待ち等で車両が所定時間以上停止する場合に、燃料噴射弁からの燃料噴射を停止してアイドルストップを実行することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
アイドルストップを実行する場合には、運転者が走行再開の操作をしたときにアイドルストップから内燃機関を速やかに始動させることにより、運転者に不快感を与えないことが望まれる。そのためには、アイドルストップ状態から内燃機関を再始動するときのコモンレール圧を、再始動に必要な圧力よりも低下させないことが考えられる。
例えば、特許文献1では、燃料噴射弁からリークする燃料の排出側に切替弁を設け、通常運転時には燃料噴射弁からの燃料リークを許可し、アイドルストップ中には燃料噴射弁からの燃料リークを禁止するように切替弁を切り替えている。これにより、特許文献1では、アイドルストップ中にコモンレール圧が低下することを防止しようとしている。
特開2006−161716号公報
しかしながら、燃料噴射システムにおいては、燃料噴射弁以外の他の箇所から燃料がリークすることも考えられる。したがって、特許文献1のように、燃料噴射弁からリークする燃料の排出側に切替弁を設け、アイドルストップ中の燃料噴射弁からの燃料リークを防止したとしても、アイドルストップ中のコモンレール圧の低下を防止することは困難であり、アイドルストップから内燃機関を速やかに再始動できる圧力に保持できるとは限らない。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、アイドルストップから速やかに内燃機関を再始動する燃料圧力制御装置を提供することを目的とする。
請求項1から7に記載の発明によると、アイドルストップ中であり、かつ内燃機関の再始動条件が成立する前において、コモンレール圧が所定の低下判定圧よりも低下していると圧力判定手段が判定すると、圧力制御手段は、スタータを自動的に駆動して内燃機関を再始動させることなく燃料供給ポンプから燃料を圧送させる。
これにより、アイドルストップ中にコモンレール圧が低下判定圧より低下しても、燃料供給ポンプからコモンレールに燃料が供給され、コモンレール圧が上昇する。その結果、アイドルストップから内燃機関を再始動するときのコモンレール圧の低下を極力低減し、アイドルストップから内燃機関を速やかに再始動できる。
ところで、スタータの駆動を開始するときには、スタータの回転数を速やかに増加させるために、大きな初期電流を供給することが必要である。しかし、スタータを何回も駆動し、その度にスタータに初期電流を供給すると、電力消費量が増加する恐れがある。
そこで、請求項2に記載の発明によると、圧力制御手段は、コモンレール圧が低下判定圧以上に設定された所定の上昇判定圧を超えて上昇するまでスタータを連続して駆動する。
このように、コモンレール圧が上昇判定圧を超えるまでスタータを連続して駆動するので、スタータを1回だけ駆動し、初期電流を1回だけ供給するだけでよい。その結果、初期電流の供給よる電力消費の観点からは、電力消費を低減できる。
一方、スタータへの電力供給を停止しても、スタータおよびスタータにより駆動される燃料強ポンプは、慣性により回転を続ける。その結果、スタータへの電流供給を停止しても燃料供給ポンプが駆動され、燃料供給ポンプから燃料が圧送される。
そこで、請求項3に記載の発明によると、圧力制御手段は、コモンレール圧が低下判定圧以上に設定された所定の上昇判定圧を超えるまでスタータを複数回に分けて駆動する。
このように、コモンレール圧が上昇判定圧を超えて上昇するまでスタータを複数回に分けて駆動するので、スタータへの電流供給を停止した後もスタータおよび燃料供給ポンプが慣性で回転して燃料が圧送される状態が複数回生じる。その結果、スタータへの電流供給停止後の慣性による燃料供給ポンプからの圧送量という観点からは、同じ圧送量が必要な場合には、スタータを複数回に分けて駆動する方が、連続して1回だけ駆動するよりもスタータに電流を供給する時間が短くなり、電力消費量を低減できる。
請求項4に記載の発明によると、圧力制御手段は、スタータを駆動する所定時間前に、燃料供給ポンプへの燃料の吸入量を調量する調量弁を開弁し燃料供給ポンプへの燃料吸入を許可する。
これにより、調量弁に開弁遅れがあっても、スタータを駆動するときに調量弁を開弁状態にできるので、スタータを駆動すると速やかに燃料供給ポンプから燃料が圧送される。その結果、コモンレール圧が速やかに上昇しスタータに通電する時間が短くなるので、スタータ駆動により消費される電力量を低減できる。
請求項5に記載の発明によると、圧力制御手段は、スタータを駆動すると同時に、燃料供給ポンプの吐出側に設置され燃料供給ポンプからの燃料の吐出量を調量する調量弁を閉弁することにより燃料供給ポンプからの燃料吐出を許可する。
これにより、スタータを駆動すると、速やかに燃料供給ポンプから燃料が吐出され圧送される。その結果、コモンレール圧が速やかに上昇しスタータに通電する時間が短くなるので、スタータ駆動により消費される電力量を低減できる。
ところで、内燃機関の始動開始時にコモンレール圧が燃料噴射弁から燃料を噴射可能な始動圧以上であれば、アイドルストップから内燃機関を速やかに再始動できる。これに対し、コモンレール圧が始動圧よりも低下している場合には、アイドルストップから内燃機関を再始動するときに、コモンレール圧が始動圧に上昇するまで燃料噴射弁から燃料を噴射できないので、再始動が遅れる。
そこで、請求項6に記載の発明によると、圧力判定手段がアイドルストップ中にコモンレール圧と比較する低下判定圧を、内燃機関を始動するときの始動圧に設定している。
これにより、コモンレール圧が始動圧よりも低下すれば、スタータを駆動して燃料供給ポンプからコモンレールに燃料が供給されるので、コモンレール圧が上昇する。その結果、アイドルストップから内燃機関を再始動するときのコモンレール圧が始動圧よりも低下することを極力低減し、アイドルストップから内燃機関を速やかに再始動できる。
請求項7に記載の発明によると、圧力制御手段は、アイドルストップ条件が成立すると、コモンレール圧を上昇させ、内燃機関を始動するときに燃料噴射弁から燃料を噴射可能な始動圧よりも高い目標残圧にコモンレール圧を調圧する。
これにより、アイドルストップ中に燃料噴射システムから燃料がリークしてコモンレール圧が低下しても、アイドルストップ条件が成立したときにコモンレール圧を上昇させず、内燃機関が停止指令を受けたときの圧力のままにしておく場合に比べ、再始動時のコモンレール圧を高圧にできる。その結果、燃料噴射弁から速やかに燃料噴射を再開し、アイドルストップから内燃機関を速やかに再始動できる。
尚、本発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
本実施形態による燃料噴射システムを示すブロック図。 アイドルストップ中のコモンレール圧の変化を示すタイムチャート。 アイドルストップ中のコモンレール圧の変化を示す他のタイムチャート。 アイドルストップ中における圧力制御ルーチンを示すフローチャート。 (A)はスタータの連続駆動ルーチンを示すフローチャート、(B)はスタータの複数回駆動ルーチンを示すフローチャート。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に、本実施形態の燃料噴射システム10を示す。
(燃料噴射システム10)
蓄圧式の燃料噴射システム10は、燃料供給ポンプ16、コモンレール20、圧力センサ22、減圧弁30、燃料噴射弁40、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)50、電子駆動装置(EDU:Electronic Driving Unit)52、スタータ70等から構成されており、内燃機関として図示しない4気筒のディーゼルエンジン(以下、単にエンジンとも言う。)の各気筒に燃料を噴射する。尚、図の煩雑さを避けるため、図1においては、EDU52から1個の燃料噴射弁40への制御信号線、ならびにコモンレール20から1個の燃料噴射弁40への噴射配管202だけを示している。
燃料フィルタ14は、燃料タンク12から燃料供給ポンプ16が吸入する燃料中の異物を除去する。燃料供給ポンプ16は、燃料タンク12から燃料を吸入するフィードポンプを内蔵しており、吸入した燃料を加圧し供給配管200を通してコモンレール20に圧送する。
燃料供給ポンプ16は、カムシャフトのカムの回転にともないプランジャが往復移動することにより加圧室に吸入した燃料を加圧する公知のポンプである。燃料供給ポンプ16を駆動するカムシャフトは、エンジンの始動開始時には、電動モータを駆動源とするスタータ70により回転駆動され、エンジン始動後の定常運転中には、エンジンが発生するトルクにより駆動される。
燃料供給ポンプ16が吸入行程で吸入する燃料の吸入量は、ECU50が燃料供給ポンプ16の調量弁18に供給する電流値を制御することにより調量される。燃料供給ポンプ16は、調量弁18により吸入量を調量された燃料を吸入し、プランジャの上昇により吸入した燃料を加圧して吐出する。つまり、調量弁18が吸入量を調量することにより、燃料供給ポンプ16が吐出する吐出量が調量され、燃料供給ポンプ16からコモンレール20に圧送される圧送量が調量される。
尚、吸入調量の調量弁18に代えて、燃料供給ポンプ16の吐出側に燃料供給ポンプ16の吐出量を調量する調量弁を設置して圧送量を調量してもよい。吐出調量の調量弁は、開弁しているときは燃料供給ポンプ16の加圧室の燃料を低圧側に排出するので、燃料は加圧されない。一方、閉弁しているときは、吐出調量の調量弁は加圧室と低圧側との連通を遮断するので、プランジャの上昇により加圧室の燃料が加圧されて吐出される。したがって、吐出調量の調量弁では、閉弁タイミングにより吐出量が調量され、燃料供給ポンプ16からコモンレール20に圧送される圧送量が調量される。
コモンレール20は、燃料供給ポンプ16が圧送する燃料を蓄圧してエンジン運転状態に応じた所定の高圧に燃料圧力を保持し、噴射配管202を通して燃料噴射弁40に燃料を供給する。圧力センサ22は、コモンレール20の内部の燃料圧力(コモンレール圧)に応じた信号を出力する。
減圧弁30は、通電制御により開弁しコモンレール20の内部の燃料を低圧側のリターン配管204に排出する電磁弁である。
燃料噴射弁40は、4気筒のディーゼルエンジンの各気筒に搭載され、コモンレール20が蓄圧している燃料を気筒内に噴射する。燃料噴射弁40は、エンジンの運転状態に基づいて、1回の燃焼サイクルにおいてメイン噴射の前後にパイロット噴射およびポスト噴射を含む多段噴射を行う。
燃料噴射弁40は、ノズルニードルに閉弁方向に燃料圧力を加える背圧室の圧力を制御することにより燃料噴射量を制御する公知の電磁駆動式の噴射弁である。燃料噴射弁40の電磁駆動部は、ピエゾアクチュエータまたは電磁コイルで構成されている。
背圧制御弁42は、燃料噴射弁40の背圧室の圧力が所定圧を超えると開弁し、背圧室の燃料をリターン配管204に排出する。これにより、燃料噴射弁40の背圧室の圧力が所定圧を超えることを防止する。
ECU50は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ、入出力インタフェース等を中心とするマイクロコンピュータ(マイコン)から主に構成されている。
ECU50は、圧力センサ22、クランク角センサ60、カム角センサ62、アクセルペダルの開度(ACC)を検出するアクセルセンサ64等の各種センサの出力信号からエンジン運転状態を取得する。そして、ECU50は、各種センサから出力信号を取り込み、エンジン運転状態を制御する。
クランク角センサ60は、エンジンのクランクシャフトが所定角度回転する毎にパルス信号を出力する。ECU50は、単位時間当たりにクランク角センサ60が出力するパルス信号数からエンジン回転数を検出する。
カム角センサ62は、ディーゼルエンジンの4気筒の気筒位置を判別するセンサであり、例えば、カムシャフトが1回転する間に特定の気筒位置を判別するパルス信号を出力する。ECU50は、クランク角センサ60およびカム角センサ62が出力するパルス信号に基づき、エンジンのクランク角度位置を検出するとともに、気筒を判別する。
ECU50は、ROMまたはフラッシュメモリに記憶されている制御プログラムを実行することにより、燃料噴射システム10の各種制御を実行する。例えば、ECU50は、燃料供給ポンプ16の圧送量、および減圧弁30の開閉を制御して、圧力センサ22の出力信号から検出するコモンレール圧の実圧(以下、「実コモンレール圧」とも言う。)と、エンジン運転状態に基づいて設定するコモンレール圧の目標圧との差圧に基づいてコモンレール圧を目標圧に追随させるF/B制御を実行する。
また、ECU50は、燃料噴射弁40の噴射量、噴射時期、およびメイン噴射の前後にパイロット噴射、ポスト噴射等を実施する場合の多段噴射のパターンを制御する。ECU50は、燃料噴射弁40の噴射時期および噴射量を制御する噴射制御信号としてパルス信号をEDU52に出力する。
また、ECU50は、エンジンのスタートスイッチがオンになったり、後述するようにアイドルストップ中にコモンレール圧が低下判定圧よりも低下すると、スタータ70を駆動する。本実施形態では、アイドルストップからエンジンを再始動するときに燃料噴射弁40から燃料を噴射可能な燃料圧力(始動圧とも言う。)に低下判定圧を設定している。
尚、低下判定圧は、始動圧に限定されるものではなく、アイドルストップ中におけるコモンレール圧の目標圧である目標残圧よりも低い値であれば、要求性能等に応じて適宜設定される。
EDU52は、ECU50が出力する制御信号に基づいて減圧弁30、燃料噴射弁40に駆動電流または駆動電圧を供給するための駆動装置である。
(コモンレール圧制御)
本実施形態の燃料噴射システム10は、図2に示すように、エンジン運転状態がアイドル状態である等の所定のアイドルストップ条件が成立すると、燃料噴射弁40からの燃料噴射を停止しエンジンの回転を停止するアイドルストップを実行する。
そして、ECU50は、アイドルストップが開始されてからアイドルストップが解除され燃料噴射弁40からの燃料噴射が開始されるまでの間、エンジンを速やかに再始動するために、以下に説明するコモンレール圧制御を実行する。
(1)エンジン停止途中
ECU50は、アイドルストップ条件が成立するとアイドルストップ要求フラグをオンにし、アイドルストップ中におけるコモンレール圧の目標圧である目標残圧を始動圧よりも高く設定する。
そして、アイドルストップ要求フラグがオンになると、燃料供給ポンプ16に対する通常のF/B制御を停止し、調量弁18を閉弁し燃料供給ポンプ16の吸入量を一旦0にする停止制御を実行する。すなわち、燃料供給ポンプ16からの燃料圧送を停止し、圧送量を0にする。
また、アイドルストップ要求フラグがオンになると、ECU50は、減圧弁30に対する制御をクランク角度同期からタイマ割り込みによる時間同期に変更する。
そして、ECU50は、燃料噴射弁40からの燃料噴射を停止し、エンジン回転数が所定回転数に低下すると、調量弁18を開弁して燃料供給ポンプ16に燃料を吸入し、燃料供給ポンプ16からコモンレール20に燃料を圧送する。この場合、燃料供給ポンプ16の吸入量、つまり圧送量は調量弁18により固定値に設定される。
このように、エンジン停止途中において、燃料供給ポンプ16から燃料が圧送されることによりコモンレール圧は上昇する。この調量弁18による吸入量を固定した吸入制御中において、圧力センサ22により検出される実コモンレール圧が目標残圧を超えると、実コモンレール圧と目標残圧との差圧の大きさに基づいて減圧弁30が開弁される。このとき、前述したように時間同期のタイミングで減圧弁30が制御される。
この場合、時間同期のタイミングを間引いてECU50が減圧弁30を断続的に開閉駆動することにより、時間同期のタイミング毎に減圧弁30を開閉駆動する場合に比べ、減圧弁30の開閉による作動音を低減できる。また、減圧弁30に対する開閉駆動頻度が低下するので、減圧弁30の寿命が延びるという効果がある。
減圧弁30を1回開閉駆動するときに減圧弁30に通電される通電時間の長さは、実コモンレール圧と目標残圧との差圧ΔPcと、そのときのコモンレール圧(Pc)とにより決定される。例えば、差圧ΔPcが大きくなるほど、そして、コモンレール圧が低くなるほど、1回当たりの通電時間は増加する。尚、1回当たりの減圧弁30への最大通電時間は、減圧弁30の温度上昇量が所定値以上にならないように設定されることが望ましい。
そして、ECU50は、エンジン停止途中においては、目標残圧よりも実コモンレール圧が高くなるように減圧弁30を制御する。
(2)エンジン停止
図2に示すように、エンジンが停止すると、ECU50は、エンジン停止判定フラグをオフにする。エンジン停止判定フラグは、オンのときにエンジン運転中を表し、オフのときにエンジン停止中を表す。
エンジンが停止すると、燃料供給ポンプ16から燃料は圧送されなくなるので、コモンレール圧はそれ以上上昇しない。このとき、ECU50は調量弁18を閉弁する停止制御を実行し、燃料供給ポンプ16からの燃料リーク量を極力低減する。また、燃料噴射弁40がピエゾアクチュエータ駆動式の場合には、燃料噴射弁40からの燃料リーク量を殆ど0にできる。
そして、エンジンが停止すると、実コモンレール圧と目標残圧との差圧ΔPcに基づいてECU50が減圧弁30を制御してコモンレール圧を調圧することにより、コモンレール圧は所定範囲内で目標残圧に調圧される。これにより、減圧弁30による残圧制御が完了する。尚、アイドルストップ中のコモンレール圧の低下については後述する。
(3)エンジン再始動
(3−1)始動気筒判別前
ブレーキペダルの踏み込みが解除されることなどによりアイドルストップ条件が成立しなくなると、ECU50は、スタータ70を駆動するとともに、調量弁18を制御して、燃料供給ポンプ16の吸入量、つまり圧送量を再始動用の固定値に設定する。
尚、スタータ70を回転させてもエンジンの始動気筒の判別が終了するまでは、燃料噴射弁40から燃料は噴射されない。ECU50は、始動気筒の判別が終了し燃料噴射弁40が燃料を噴射するときに燃料が適正に燃焼してエンジンが始動できるように、コモンレール圧の目標圧を目標残圧から始動圧に低下させる。そして、燃料供給ポンプ16から燃料がコモンレール20に燃料が圧送される一方、ECU50は減圧弁30を開閉駆動してコモンレール圧を始動圧に調圧する。
エンジン再始動時にコモンレール圧が始動圧よりも高い場合には、始動気筒の判別が終了するまでの間、減圧弁30による前述したコモンレール圧の時間同期による調圧制御は、実コモンレール圧と目標圧である始動圧との差圧に基づいて継続して実行される。
ただし、エンジン再始動時にコモンレール圧が始動圧よりも低下している場合には、ECU50は、減圧弁30によるコモンレール圧の制御を実行しない。
(3−2)始動気筒判別後
クランクシャフトおよびカムシャフトの回転が進み、クランク角センサ60およびカム角センサ62の出力信号から始動気筒が判別されると、ECU50は、アイドルストップ要求フラグをオフにし、エンジン停止判定フラグをオンにし、燃料噴射弁40に始動気筒からの燃料噴射を指令する。そして、ECU50は、減圧弁30による時間同期に基づくアイドルストップ用のコモンレール圧の調圧制御を終了し、実コモンレール圧と目標圧との差圧に基づくF/B制御を実行する。
燃料噴射弁40から燃料が噴射されエンジン回転数が所定の回転数に達すると、ECU50は、コモンレール圧の目標圧を始動圧からアイドル圧に設定する。その後、エンジン回転数は上昇し、目標のアイドル回転数に達する。
(アイドルストップ中のコモンレール圧低下)
ECU50は、アイドルストップ条件が成立してエンジンが停止し、減圧弁30によるコモンレール圧の調圧制御によりコモンレール圧が所定範囲内で目標残圧に調圧されることにより残圧制御が完了すると、コモンレール圧が、スタータ70の駆動を実行してコモンレール圧を上昇させる必要のある始動圧よりも低下したか否かを判定する。
ECU50は、図2の点線300が示すようにコモンレール圧が始動圧以上であれば、エンジンを再始動するときに燃料噴射弁40から速やかに燃料噴射を開始し、エンジンを速やかに再始動できると判断する。
一方、ECU50は、実線310が示すようにコモンレール圧が始動圧よりも低下すると、エンジンを再始動するときに燃料噴射弁40から速やかに燃料噴射を開始できず、エンジンの再始動が遅れると判断する。
(スタータ駆動)
ECU50は、コモンレール圧が始動圧よりも低下すると、スタータ駆動判定フラグをオンにする。そして、スタータ70を駆動して燃料供給ポンプ16から燃料を圧送させ、コモンレール20に燃料を供給する。これにより、コモンレール圧が上昇する。そして、コモンレール圧が上昇判定圧を超えると、ECU50はスタータ70の駆動を停止し、スタータ駆動判定フラグをオフにする。
本実施形態では、上昇判定圧としてアイドルストップ中の目標残圧が設定される。尚、上昇判定圧としては、前述した低下判定としての始動圧以上であればよく、目標残圧に限らず、始動圧と目標残圧との範囲内で、要求性能等に応じて適宜設定される。
目標残圧よりも上昇したコモンレール圧が再び所定圧よりも低下すると、ECU50は再度スタータ70を駆動する。
(1)スタータ連続駆動
コモンレール圧を目標残圧よりも上昇させるためにスタータ70を駆動する場合、図2に示すように、コモンレール圧が目標残圧を超えるまでスタータ70を連続して駆動することが考えられる。
スタータ70を連続して駆動すると、スタータ70を1回だけ駆動し、スタータ70に初期電流を1回だけ供給するだけでよい。その結果、初期電流の供給による電力消費の観点からは、電力消費を低減できる。
(2)スタータ複数回駆動
また、コモンレール圧を目標残圧よりも上昇させるためにスタータ70を駆動する場合、図3に示すように、コモンレール圧が目標残圧を超えるまで、スタータ70を複数回に分けて駆動することが考えられる。
スタータ70への電力供給を停止しても、スタータ70およびスタータ70により駆動されるエンジン、燃料供給ポンプ16等の駆動対象は慣性により回転を続ける。その結果、スタータ70に電流を供給しなくても、スタータ70および燃料供給ポンプ16が駆動され、燃料供給ポンプ16から燃料が圧送される。
この場合、コモンレール圧が目標残圧を超えるまでスタータ70を複数回に分けて駆動することにより、スタータ70への電流供給を停止した後もスタータ70および燃料供給ポンプ16が慣性で回転して燃料が圧送される状態が複数回生じる。その結果、スタータ70への電流供給停止後の慣性による燃料供給ポンプ16からの圧送量という観点からは、同じ圧送量が必要な場合には、スタータ70を複数回に分けて駆動する方が、連続して1回だけ駆動するよりもスタータ70に電流を供給する時間が短くなり、電力消費量を低減できる。
(コモンレール圧制御ルーチン)
次に、アイドルストップ時にECU50が実行するコモンレール圧制御ルーチンについて図4および図5に基づいて説明する。図4のルーチンは、アイドルストップ条件が成立し、減圧弁30の制御が角度同期から時間同期に変更されている間、時間同期の割り込みタイミング毎に実行される。図5の(A)、(B)は、図4のS418において処理されるスタータ駆動制御の異なるルーチンを表している。図4および図5において「S」はステップを表している。
図4においてECU50は、まずアイドルストップ要求中であるか否かを判定する(S400)。アイドルストップ要求中であるか否かは、アイドルストップ要求フラグのオン、オフで判定する。アイドルストップ要求中ではない場合(S400:No)、ECU50はS422に処理を移行する。
アイドルストップ要求中の場合(S400:Yes)、ECU50は、エンジンが停止しているか否かを判定する(S402)。エンジンが停止しているか否かは、クランク角センサ60の出力信号から算出するエンジン回転数が0か否かで判定する。エンジンが停止していない場合(S402:No)、ECU50はS422に処理を移行する。
エンジンが停止している場合(S402:Yes)、ECU50は、コモンレール圧を目標残圧に調圧する残圧制御が完了したか否かを判定する(S404)。残圧制御が完了していない場合(S404:No)、ECU50はS422に処理を移行する。
残圧制御が完了している場合(S404:Yes)、ECU50は、圧力センサ22の出力信号から検出する実コモンレール圧が、アイドルストップ中にコモンレール圧を上昇させるためにスタータ駆動を実行するときの判定基準である低下判定圧よりも低いか否かを判定する(S406)。前述したように、本実施形態では低下判定圧として始動圧が設定される。
実コモンレール圧が低下判定圧より低い場合(S406:Yes)、ECU50はスタータ駆動判定フラグをオンにし(S408)、S412に処理を移行する。
実コモンレール圧が低下判定圧以上の場合(S406:No)、ECU50は、スタータ駆動判定フラグがオンであるか否かを判定する(S410)。
スタータ駆動判定フラグがオフであれば(S410:No)、アイドルストップ中にスタータ70を駆動してコモンレール圧を上昇中ではないと判断し、ECU50はS422に処理を移行する。スタータ駆動判定フラグがオンであれば(S410:Yes)、アイドルストップ中にスタータ70を駆動してコモンレール圧を上昇中であると判断し、ECU50はS412に処理を移行する。
スタータ駆動判定フラグは、前述したように、コモンレール圧が低下判定圧よりも低下し、スタータ70が駆動されることによりコモンレール圧が上昇判定圧を超えるまでの間オンに設定され、それ以外にはオフに設定される。前述したように、本実施形態では、上昇判定圧としてアイドルストップ中の目標残圧が設定される。
S412においてECU50は、スタータ70を駆動する前に調量弁18への通電をオンにし、S414において調量弁カウンタをインクリメントする。そして、インクリメントした調量弁カウンタの値が、調量弁18に通電したことにより調量弁18に対する開弁駆動が完了したことを判定するための駆動完了判定値よりも大きくなったか否かを判定する(S416)。調量弁カウンタの値が駆動完了判定値以下の場合(S416:No)、ECU50は本ルーチンを終了する。
調量弁カウンタの値が駆動完了判定値よりも大きい場合(S416:Yes)、調量弁18の開弁は完了し、燃料供給ポンプ16は燃料を吸入可能であると判断し、ECU50はスタータ70への通電をオンにしスタータ70を駆動する(S418)。
前述したように、スタータ70に対する駆動制御は、コモンレール圧が上昇判定圧を超えて上昇するまで、スタータ70を連続駆動するか、複数回に分けて駆動するかのいずれかの方式が採用される。S418のスタータ駆動制御における連続駆動と複数回駆動との制御内容については後述する。
S418の処理を終了後、ECU50は、スタータ70を駆動することにより実コモンレール圧が上昇し、スタータ駆動を完了するための上昇判定圧を超えたか否かを判定する(S420)。実コモンレール圧が上昇判定圧以下の場合(S420:No)、ECU50は本ルーチンを終了する。
実コモンレール圧が上昇判定圧を超えると(S420:Yes)、ECU50は、スタータ70への通電をオフし(S422)、調量弁18への通電をオフし(S424)、調量弁カウンタをクリアし(S426)、スタータ駆動判定フラグをオフにする(S428)。S428の処理を終了後、ECU50は本ルーチンを終了する。
(スタータ駆動制御ルーチン1)
図4のS418でスタータ70を駆動するときにスタータ70を連続駆動する場合のルーチンを図5の(A)に示す。
スタータ70を連続駆動する場合、ECU50は、S430においてスタータ70への通電をオンにし、スタータ70を駆動する。これにより、図4のS420の判定において、実コモンレール圧が上昇判定圧を超えるまで、スタータ70は連続して駆動される。
(スタータ駆動制御ルーチン2)
図4のS418でスタータ70を駆動するときにスタータ70を複数回に分けて駆動する場合のルーチンを図5の(B)に示す。
スタータ70を複数回に分けて駆動する場合、ECU50は、スタータ70への通電をオンするためのオンカウンタがオン判定値を超えたか否かを判定する。オンカウンタがオン判定値以下の場合(S440:No)、ECU50はオンカウンタをインクリメントし(S442)、本ルーチンを終了する。つまり、ECU50は、オンカウンタがオン判定値を超えるまで、スタータ70への通電を待機する。
オンカウンタがオン判定値を超えている場合(S440:Yes)、ECU50はスタータ70への通電をオンにし(S444)、スタータ70への通電をオフするためのオフカウンタがオフ判定値を超えたか否かを判定する(S446)。
オフカウンタがオフ判定値以下の場合(S446:No)、ECU50はオフカウンタをインクリメントし(S448)、本ルーチンを終了する。つまり、ECU50は、オフカウンタがオフ判定値を超えるまで、スタータ70への通電を継続する。
オフカウンタがオフ判定値を超えている場合(S446:Yes)、ECU50はスタータ70への通電をオフにし(S450)、オフカウンタおよびオンカウンタをクリアし(S452、S454)、本ルーチンを終了する。
これにより、図4のS420の判定において、実コモンレール圧が上昇判定圧を超えるまで、スタータ70は複数回に分かれて駆動される。
以上説明した上記実施形態では、燃料噴射システム10毎の燃料リーク量のばらつき、あるいは経年変化による燃料リーク量の増加等により、アイドルストップ中にコモンレール圧が所定圧よりも低下する場合において、スタータ70を駆動して燃料供給ポンプ16から燃料を圧送させ、コモンレール圧を上昇させる。
これにより、アイドルストップ中にコモンレール圧が低下しても、アイドルストップが解除されエンジンが再始動するときのコモンレール圧を上昇させることができる。したがって、燃料噴射弁40から速やかに燃料噴射を再開し、アイドルストップ状態からエンジンを速やかに再始動できる。
また、始動圧よりも高い目標残圧にコモンレール圧を制御してからコモンレール圧が低下しても、低下判定圧以上の状態が保持される場合には、再始動時に燃料噴射弁40から燃料を噴射できる始動圧にコモンレール圧を保持できる。その結果、燃料噴射弁40から速やかに燃料噴射を再開し、アイドルストップ状態からエンジンを速やかに再始動できる。
また、上記実施形態では、アイドルストップ条件が成立すると、コモンレール圧を上昇させ、始動圧よりも高い目標残圧にコモンレール圧を調圧する。
これにより、アイドルストップ中に燃料噴射システム10から燃料がリークしてコモンレール圧が低下しても、アイドルストップ条件が成立したときにコモンレール圧を上昇させず、エンジンが停止指令を受けたときの圧力のままにしておく場合に比べ、再始動時のコモンレール圧を高圧にできる。その結果、燃料噴射弁40から速やかに燃料噴射を再開し、アイドルストップからエンジンを速やかに再始動できる。
上記実施形態では、ECU50が本発明の燃料圧力制御装置に相当し、圧力判定手段および圧力制御手段として機能する。
また、図4のS406の処理が本発明の圧力判定手段が実行する機能に相当し、S412〜S428、ならびに図5のS430、およびS440〜S454の処理が本発明の圧力制御手段が実行する機能に相当する。
[他の実施形態]
上記実施形態では、アイドルストップ条件が成立すると、エンジンが停止するまでの間に調量弁18を制御して燃料供給ポンプ16から燃料を圧送することによりコモンレール圧を上昇させ、エンジンを再始動するときの始動圧よりも高い目標残圧に調圧した。
これに対し、アイドルストップ条件が成立しても燃料供給ポンプ16から燃料を圧送してコモンレール圧を上昇させず、アイドルストップ中にコモンレール圧が所定の低下判定圧よりも低下すると、スタータ70を駆動することにより燃料供給ポンプを駆動して燃料を圧送させることにより、コモンレール圧を上昇判定圧よりも上昇させてもよい。
また、アイドルストップ条件が成立したときに、減圧弁30を制御せず、調量弁18による燃料供給ポンプ16からの圧送量制御だけで、コモンレール圧を所定の目標残圧に制御してもよい。
上記実施形態では、圧力判定手段および圧力制御手段の機能を、制御プログラムにより機能が特定されるECU50により実現している。これに対し、上記複数の手段の機能の少なくとも一部を、回路構成自体で機能が特定されるハードウェアで実現してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
10:燃料噴射システム、16:燃料供給ポンプ、18:調量弁、20:コモンレール、22:圧力センサ、30:減圧弁、40:燃料噴射弁、50:ECU(燃料圧力制御装置、圧力判定手段、圧力制御手段)、70:スタータ

Claims (7)

  1. 燃料を蓄圧するコモンレールと、
    内燃機関を始動するスタータと、
    前記内燃機関の回転駆動力が伝達されて前記コモンレールに燃料を圧送する燃料供給ポンプと、
    前記コモンレールで蓄圧された燃料を内燃機関の各気筒に噴射する燃料噴射弁と、
    を備える燃料噴射システムに適用され、前記コモンレール内の燃料圧力であるコモンレール圧を制御する燃料圧力制御装置において、
    アイドルストップ条件が成立し、前記内燃機関のアイドルストップ中に前記コモンレール圧が所定の低下判定圧よりも低下したか否かを判定する圧力判定手段と、
    前記アイドルストップ中であり、かつ前記内燃機関の再始動条件が成立する前において、前記コモンレール圧が前記低下判定圧よりも低下していると前記圧力判定手段が判定すると、前記スタータを自動的に駆動して前記内燃機関を再始動させることなく前記燃料供給ポンプから燃料を圧送させる圧力制御手段と、
    を備えることを特徴とする燃料圧力制御装置。
  2. 前記圧力制御手段は、前記コモンレール圧が前記低下判定圧以上に設定された所定の上昇判定圧を超えるまで前記スタータを連続して駆動することを特徴とする請求項1に記載の燃料圧力制御装置。
  3. 前記圧力制御手段は、前記コモンレール圧が前記低下判定圧以上に設定された所定の上昇判定圧を超えるまで前記スタータを複数回に分けて駆動することを特徴とする請求項1に記載の燃料圧力制御装置。
  4. 前記燃料供給ポンプは、前記燃料供給ポンプへの燃料の吸入量を調量する調量弁を備え、
    前記圧力制御手段は、前記スタータを駆動する所定時間前に前記調量弁を開弁し前記燃料供給ポンプへの燃料吸入を許可する、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
  5. 前記燃料供給ポンプは、前記燃料供給ポンプの吐出側に設置され前記燃料供給ポンプからの燃料の吐出量を調量する調量弁を備え、
    前記圧力制御手段は、前記スタータを駆動すると同時に前記調量弁を閉弁することにより前記燃料供給ポンプからの燃料吐出を許可する、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
  6. 前記低下判定圧は、前記内燃機関を始動するときに前記燃料噴射弁から燃料を噴射可能な始動圧であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
  7. 前記圧力制御手段は、アイドルストップ条件が成立すると、前記コモンレール圧を上昇させ、前記内燃機関を始動するときに前記燃料噴射弁から燃料を噴射可能な始動圧よりも高い目標残圧に前記コモンレール圧を調圧することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
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