図1は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置を備えるパワーステアリングシステムの全体を示す概略図である。図2は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置を備えるパワーステアリングシステムの動作を示す概略図である。図3は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置におけるポンプユニット内のバイパス弁を示す概略図である。図4は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置におけるポンプユニット内の背圧弁を示す概略図である。
図1及び図2を参照するに、実施例1のパワーステアリング装置50は、車体幅方向に左右に併設された車輪1a,1bの操舵力アシストを行う装置である。実施例1のパワーステアリング装置50は、双方向ポンプ13と、パワーシリンダ12と、バイパス弁4と、背圧弁19aと、コントローラ16とを備える。双方向ポンプ13と、パワーシリンダ12と、バイパス弁4と、背圧弁19aとでポンプユニット10を構成する。
双方向ポンプ13は、モータ15(例えば電動モータ)によって駆動され、該モータ15の回転方向を切り替えることにより吐出方向を逆転することが可能な可逆式のポンプであり、パワーシリンダ12への油圧を制御する機能を有する。
パワーシリンダ12は、ピストン12cによって第1油圧室12aと第2油圧室12bが形成され、操舵時のアシスト力を発生する機能を有する。
バイパス油路4a,4b,4c,4dは、バイパス弁4の制御によってパワーシリンダ12の第1油圧室12a及び第2油圧室12bとそれぞれ連通される。
バイパス弁4は、バイパス油路4c、バイパス油路4d、第1油路14c、及び第2油路14dと、第1油路14a、第2油路14b、及びバイパス油路4a,4bの油路を連通制御するためにバイパス油路4a,4b及び4c,4dの途中に介装され、第1油圧室12a及び第2油圧室12bと双方向ポンプ13からの油圧信号に基づいて、フリーピストンで当該バイパス油路の開閉を行う機能を有する。
背圧弁19aは、リザーバタンク19へのバイパス油路4a,4b上に設置され、余剰分の油圧を開放する機能を有する。尚、リザーバタンク19に対する戻し弁19c,19dや可変オリフィス(図示せず)も適宜設けられる。
コントローラ16は、モータ15の駆動を制御する機能を有し、トルクセンサ21からの操舵トルクTq、操舵角センサ22からの操舵角度θh、車速センサ3からの車速値V、モータ回転角センサのモータ回転角θfから得られるモータ回転数ωのセンサ情報を入力し、ハンドル切り返し時に、双方向ポンプ13がポンプ連れ回り状態(作動油の流れによってポンプが回されている状態)であるか否かを判断し、ポンプ連れ回り状態と判断した場合に、パワーシリンダ12内の高圧側から低圧側に流れ込む作動油の流量が所定値になるようにモータ15の回転数を補正して安定化させる。より具体的には、図8を参照して後述するが、コントローラ16は、ハンドル切り返し時に、双方向ポンプ13がポンプ連れ回り状態であることを判断するポンプ連れ回り判断部163と、ポンプ連れ回り状態と判断した場合に、パワーシリンダ12における第1油圧室12a及び第2油圧室12bにて高圧側から低圧側に流れ込む作動油の流量を所定値になるように制御して安定化させ、双方向ポンプ13のポンプ回転数を制御するためのアシスト力指令値Taを計算し、計算したアシスト力指令値Taに対応する制御指令信号Tr(モータ15の回転方向及び回転数)をモータ13に供給する流量制御部164とを有する。
モータ15は、双方向ポンプ13を駆動させ、油圧をピストン12cで区切られた第1油圧室12aと第2油圧室12bを有するパワーシリンダ12に加えることによって、パワーステアリング装置50は、アシスト力を発生する。
図1〜図4を参照して、実施例1のパワーステアリング装置50を備えるパワーステアリングシステムの構成及び動作を詳細に説明する。
図1を参照するに、操舵部11は、操舵輪(ステアリングホイール)11a、シャフト部11b、及び、ラック部20aとピニオン部20bからなる操舵機構20を有している。操舵輪11aをドライバー(操作者)が回動操作することにより、操舵輪11aの動きがシャフト部11bを経てラック部20aに伝達され、ラック部20aに噛合するピニオン部20bをピニオン軸方向に移動させる。車輪1a,1bは、このピニオン部20bを介して操舵される。シャフト部11bには、操舵輪11aの操作に伴う操舵トルクTqを検出するトルクセンサ21と操舵角センサ22とが装着されており、トルクセンサ21は、検出した操舵トルクTqをコントローラ16に送出し、操舵角センサ22は、検出した操舵角度θhをコントローラ16に送出する。
車体幅方向に延設されたパワーシリンダ12内には、ラック部20bに連結したピストンロッド28が貫通している。このピストンロッド28には、ラック部20bに接続されてシリンダ軸方向に摺動すると共にシリンダ内を二つの圧力室(第1油圧室12aと第2油圧室12b)に区画するピストン12cが設けられている。従って、パワーシリンダ12内には、ピストン12cによって車体幅方向に左右の油圧室が形成され、パワーシリンダ12は、操舵輪11aに連結された操舵機構(ラック部20a及びピニオン部20b)の操舵力を油圧によって補助することができる。尚、車輪1aは、ラック部20bを介してピストンロッド28の端部に、車輪1bは、ピストンロッド28の端部に、それぞれリンク2a,2bを介して連接されている。
図2を参照するに、双方向ポンプ13は、モータ15によって駆動され、該モータ15の回転方向を切り替えることにより吐出方向を逆転することが可能な可逆式の双方向ポンプである。第1油路14aと第2油路14b(高圧力油と低圧力油が入れ替わって出力される2つの油路)を介して、パワーシリンダ12の二つの圧力室(第1圧力室12aと第2圧力室12b)の各々に対しポンプ圧力を供給する。この双方向ポンプ13は、リザーバタンク19に貯留された作動油を吸い上げることができるように、リザーバタンク19に連通している。
第1油路14aと第2油路14bは、パワーシリンダ12と双方向ポンプ13を接続する作動油の油路を形成しており、第1油路14aはパワーシリンダ12の一方の圧力室12aに、第2油路14bはパワーシリンダ12の他方の圧力室12bに、それぞれ連通している。
コントローラ16は、前述したように、トルクセンサ21からの操舵トルクTq、操舵角センサ22からの操舵角度θh、車速センサ3からの車速値V、モータ回転角センサから得られるモータ回転角θfのセンサ情報に基づきアシスト力指令値Taを計算し、アシスト力指令値Taに対応する制御指令信号Tr(モータ15の回転方向及び回転数)をモータ15に出力する。
バイパス油路4cは、第1油路14cから分岐してバルブ18及びバイアス弁4に連通し、バイパス油路4dは、第2油路14dから分岐してバルブ18及びバイアス弁4に連通しており、双方向ポンプ13から吐出される作動油の一部を、パワーシリンダ12以外に分岐させる通路を形成している。
バルブ18は、バイパス油路4cとバイパス油路4dの間に配置されており、第1油路14c側と第2油路14d側の間で摺動するフリーピストン(図示せず)を有している。
リザーバタンク19は、背圧弁19aによりバイパス弁4を介してバルブ18に連通しており、バルブ18から排出された作動油を貯留する。
このように、双方向ポンプ13を使った電動式のパワーステアリング装置50は、ステアリングホイール11aを転舵すると、その指令を受けた双方向ポンプ13が作動油を吐出し、それにより発生した圧力によってラック部20aの動きを補助する構造を有している。
例えば、図2における図示Aにおいて、ポンプ駆動時に、バルブ18が、第1通路14a,14cとバイパス油路14b,14dの間における連通を閉じて、例えば低圧側にあるバイパス油路4cの油圧をリザーバタンク19へと逃がすように動作している場合、双方向ポンプ13を図面上右回転に駆動させ、油圧の圧力23a,23bを生じさせ、パワーシリンダ12内の第1油圧室12aを低圧側に、第2油圧室12bを高圧側にしてピストン12cを移動させ、アシスト力25aを生じさせる。
図3(a)は、双方向ポンプ停止時のバイパス弁の動作を示す図であり、図3(b)は、双方向ポンプ駆動時のバイパス弁の動作を示す図である。バイパス弁4は、第1油路遮蔽部29a、第2油路遮蔽部29d、油路ピストン29c、及び、第1油路遮蔽部29a及び第2油路遮蔽部29dと油路ピストン29cとを連結する連結ロッド29bからなる弁機構29を有する。
図3(a)に示すように、弁機構29は、双方向ポンプ13が停止しているときには、バイパス油路4a,4cと第1油路14a,14cの油路を遮蔽するとともに、バイパス油路4b,4dと第2油路14b,14dの油路を遮蔽する。一方、バイパス弁4は、双方向ポンプ13が駆動しているときには、バイパス油路4a,4cと第1油路14a,14cの油路を確保するか、又はバイパス油路4b,4dと第2油路14b,14dの油路を確保する。尚、図3(b)では、第1油路14a,14cが低圧側で、第2油路14b,14dが高圧側となる場合の第1油路14a,14cの油路を確保し、低圧側の油圧をリザーバタンク19へと逃がす様子を示している。
図4(a)は、バイパス弁4を経由する第1油路14a,14cの油路の圧力が所定の設定圧以下である場合には、背圧弁19aがリザーバタンク19への油路を閉じる様子を示す図であり、図4(b)は、バイパス弁4を経由する第1油路14a,14cの油路の圧力が所定の設定圧を超える場合に、背圧弁19aがリザーバタンク19への油路を開放して、油圧をリザーバタンク19へと逃がす様子を示している。このようにして、背圧弁19aは、リザーバタンク19へとバイパス油路4a,4bにおける余剰分の油圧を開放する。
本発明による実施例1のパワーステアリング装置50におけるコントローラ16の制御を説明する前に、従来技術のパワーステアリング装置の改善すべき点について説明する。
図5は、従来技術のパワーステアリング装置における動作説明図である。図6は、従来技術のパワーステアリング装置における動作を示すタイミングチャートである。図5では、上述の図1〜図4に示すものと同様の構成要素には同一の参照番号を付している。
図5において、背圧弁19aと併設して可変オリフィス19bを図示しているが、これは、双方向ポンプ13における圧力を可変に調節するためのものであり、本実施例のパワーステアリング装置50にも設けることができる。従来技術におけるパワーステアリング装置のコントローラ16は、トルクセンサ21からの操舵トルクTq及びモータ15に設けられたモータ回転角センサから得られるモータ回転角θfなどのセンサ情報を入力し、モータ15の駆動を制御する。
従来技術におけるパワーステアリング装置では、ハンドルの保舵状態から切り返し状態に移行すると、モータ15の駆動電流を切り込み方向に増量補正するため、双方向ポンプ13は作動油の流れ(図示22a,22b,22c)に対してフリクション方向に働くため、ポンプ連れ回り時(パワーシリンダ12内の高圧側から低圧側に油が逆流する方向として図示する25b)の双方向ポンプ13の回転数(= モータ15の回転数)は低下する。
このポンプ連れ回り自体は、作動油の移動をスムーズにするために必要な動作であるが、ポンプ連れ回り時の双方向ポンプ13のポンプ回転数が所定の回転数以下で低下している状態では、ポンプの回転が不定となり、双方向ポンプ13の圧力変動が生じうる(図示23a,23b,23c,23d)。
このような現象は、前述したようにハンドル切り返し時の必要軸力が小さい場合(例えば、車速が高い場合)に発生しやすい。従って、必要軸力が小さい場合などでは、従来技術におけるパワーステアリング装置では、高圧側から低圧側へ流れ込む作動油の流量も減少するため、連れ回り時のモータ回転数がより低下することになり、切り返し時のハンドル操舵力の変動も発生しやすくなる。
これは、ハンドル切り返し時に、双方向ポンプ13の圧力変動が伝播することによるハンドル操舵力の変動として、ドライバーに違和感を生じさせ、或いは後述するように異音を発生しうる。
図6には、従来技術におけるパワーステアリング装置において、車速80km/s時のハンドルの切り戻し(旋回時ソーイング時)における横軸を時間に対する、左右の軸力の合計値と、作動油の圧力と、モータ15のトルク指令値と、モータ回転数と、操舵トルクTqの測定値を示している。状態F1は、ハンドル切り込み時の状態にあり、F2はハンドルの切り返し直後の状態にあり、F3は、双方向ポンプ13のポンプ連れ回りの状態にある。図6では、これらの状態F1,F2,F3を2回繰り返している。この双方向ポンプ13のポンプ連れ回りの状態F3によって切り込み方向の油圧を低下させることができ、ポンプ連れ回り自体は必要な状態である。しかしながら、この双方向ポンプ13のポンプ連れ回りの状態F3にて、モータ15の回転数が所定の回転数以下の場合、トルク変動が発生していることが分かる(図示F4,F5)。
そこで、本発明による実施例1のパワーステアリング装置50におけるコントローラ16は、ハンドル切り返し時に、双方向ポンプ13がポンプ連れ回り状態であることを判断し、ポンプ連れ回り状態と判断した場合に、パワーシリンダ12における第1油圧室12a及び第2油圧室12bにて高圧側から低圧側に流れ込む作動油の流量を所定値になるように制御する。
図7は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置における動作を示す図である。図7に示すように、例えば、「切り込み」、「切り返し」、「ポンプ連れ回り」、「切り返し」の順に、時間tに対して舵角が変化した場合に、ポンプ連れ回り時のトルク変動を抑制し、従来であれば変動しうる操舵トルクTqの変動(図示F9)を、本発明によれば抑制することができる(図示F6)。
このポンプ連れ回り時のトルク変動を抑制するために、実施例1のパワーステアリング装置におけるコントローラ16は、ポンプ連れ回り状態にあるか否かを判別し、異音防止のためにポンプ連れ回り時におけるモータ回転数が所定の回転数以下(閾値Th4)となるように制御するとともに(図示F7)、ポンプ連れ回り時におけるモータ回転数が操舵トルクTqの変動が発生しない所定値以上とになるように(閾値Th3以上となるように)、モータ回転数の増減を行う(図示F8)。尚、上記閾値Th4はパワーステアリング装置によって発生するアシストトルクが過大とならない範囲の値であって、Th3は上述に様に操舵トルクTqの変動が発生しない範囲の値であり、これらは予め実験等によって求められる値である。
即ち、従来技術で生じうるポンプ連れ回り時におけるモータ回転数の変動成分(図示F11)を、一定の回転数となるように補償制御を行う(図示F10)。尚、ポンプ連れ回り時における油圧の変動は、バルブ動作に連動しているため、ポンプ連れ回り時における油圧の変動を抑制すればバルブ動作に起因する変動も生じなくなる。
実施例1のパワーステアリング装置によれば、図5に示すような従来技術で生じうるポンプ連れ回り時の変動(図示23a,23b,23c,23d)は生じなくなり、滑らかなポンプ連れ回り現象を生じさせることができる。更に、実施例1のパワーステアリング装置は、ポンプ連れ回り時のトルク変動の抑制と、操舵トルクTqの変動の抑制を両立することができる。
以下、本発明による実施例1のパワーステアリング装置50におけるコントローラの制御を説明する。
図8は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置におけるコントローラを備えるコントローラユニットの制御ブロック図である。図9は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置におけるコントローラのハンドル切り返し判定部のフローチャートである。図10は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置におけるコントローラのポンプ連れ回り判定部のフローチャートである。図11は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置におけるコントローラの流量制御部のフローチャートである。図12は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置の動作を示す概略図である。図13は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置の動作を示す概略図である。図14は、本発明による実施例1のパワーステアリング装置の動作を示す概略図である。
実施例1のパワーステアリング装置50において、コントローラ16は、基本アシスト指令値演算部161と、ポンプ連れ回り判断部163と、流量制御部164とを備える。ポンプ連れ回り判断部163は、ハンドル切り返し判定部165と、連れ回り判定部166とを備える。
尚、車速センサ3は車速値Vを出力し、トルクセンサ21は操舵トルクTqを出力し、ハンドル舵角センサ6は操舵角度θhを出力し、モータ回転数センサ7は、モータ回転角度θhを出力する。また、モータ回転速度演算部8は、モータ回転角度θhからモータ回転速度ωを演算して出力する。
基本アシスト指令値演算部161は、車速値V、及び操舵トルクTqを入力し、車速値V及び操舵トルクTqで定まる、通常時と同様の指令値Taを演算して出力する。
ハンドル切り返し判定部165は、操舵トルクTq、操舵角度θh、及びモータ回転速度ωから、ハンドル切り返しフラグRの演算を行い、連れ回り判定部166に出力する。ハンドル切り返しフラグRの演算は、後述する図9に示すように、上記3信号(Tq,θh,ω)の変化の方向が一致して、なおかつその方向が反転した時にハンドルを切り返したと判定し、その旨をハンドル切り返しフラグRとして生成する。尚、ハンドル切り返し判定部165は、この演算に用いてハンドル切り返し時のモータ回転数ωR(以下、「ハンドル切り返しモータ回転数」と称する)も連れ回り判定部166に出力する。
連れ回り判定部166は、後述する図10に示すように、ハンドル切り返しフラグR、モータ回転速度ω、ハンドル切り返し時回転数ωRとから、ポンプ連れ回り状態であるか否かを判定し、ポンプ連れ回り状態である場合には、ポンプ連れ回り状態である旨を表すポンプ連れ回りフラグS(=ON)を流量制御部164に出力する。ポンプ連れ回り状態でない場合にはポンプ連れ回りフラグS(=OFF)として説明する。
流量制御部164は、ポンプ連れ回りフラグS、車速値V、操舵トルクTq、モータ回転速度ω、基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taを入力して、後述する図11に示すフローチャートに従い、ポンプ連れ回りフラグSのON/OFFをトリガーに、流量補正トルクTa’の演算を行う。ポンプ連れ回りフラグS=OFFの場合は、流量補正トルクTa’=0となる。S=ONの場合は、Ta’の大きさと向きの演算を行う。本実施例では今回演算するモータ回転速度ωの絶対値と目標回転数Xとの偏差をEとし、そのEに対して、偏差のゲインと車速に対するゲインを積算し算出しているが、従来からよく知られているPID制御を用いて回転数に対するフィードバック制御を行うことで更に制御を向上させることができる。
加算部9は、流量制御部164で算出された流量補正トルクTa’と、基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taを加算して、制御指令信号Trとしてモータ制御部15aに出力する。
モータ制御部15aは、制御指令信号Trをモータ15の駆動に必要な電流又は電圧信号に変換してモータ15を駆動する。
図9を参照して、ハンドル切り返し判定部165の動作を説明する。
ステップS1にて、前回演算した操舵トルクTq、操舵角度θh、及びモータ回転速度ω、ハンドル切り返しフラグRの値を記憶部(図示せず)から読み出すとともに、今回演算に用いる操舵トルクTq、操舵角度θh、モータ回転速度ωを入力する。ハンドル切り返しフラグRの値は、演算する度に記憶する。
ステップS2にて、前回値と今回値の操舵トルクTqを用いてその微分値が0以上であるか否かを判別し、トルク変化の方向(向き)を判別する。微分値が0以上であれば、トルク変化フラグTc=CWとし(ステップS5)、微分値が0未満であれば、トルク変化フラグTc=CCWとする(ステップS8)。
同様に、ステップS3にて、前回値と今回値の操舵角度θhを用いてその微分値が0以上であるか否かを判別し、操舵変化の方向(向き)を判別する。微分値が0以上であれば、舵角変化フラグθc=CWとし(ステップS6)、微分値が0未満であれば、舵角変化フラグθc=CCWとする(ステップS9)。
同様に、ステップS4にて、前回値と今回値のモータ回転速度ωを用いてその微分値が0以上であるか否かを判別し、モータ回転変化の方向(向き)を判別する。微分値が0以上であれば、モータ回転変化フラグωc=CWとし(ステップS7)、微分値が0未満であれば、モータ回転変化フラグωc=CCWとする(ステップS10)。
ステップS11にて、トルク変化フラグTc、舵角変化フラグθc、及びモータ回転変化フラグωcの値から、全ての方向(向き)が一致しているか否かを判別する。
トルク変化フラグTc、舵角変化フラグθc、及びモータ回転変化フラグωcの値の方向(向き)が一致している場合は、ステップS12に進み、ステップS12にて、一致する方向(向き)がCWであるかCCWであるかを判別して、CWであれば方向一致フラグC=CWとし(ステップS13)、CCWであれば方向一致フラグC=CCWとする(ステップS14)。この方向一致フラグCの値は、演算する度に記憶する。
ステップS15にて、方向一致フラグCの値が前回値と一致しているか否かを判別する。方向一致フラグCの値が前回値と一致している場合には、ハンドル切り返しフラグR=ONとし、このハンドル切り返しフラグR=ON時のモータ回転速度ωRを記憶する(ステップS16)。尚、ハンドル切り返しフラグR=ONは、ハンドルの切り返し状態にあることを表し、ハンドル切り返しフラグR=OFFは、ハンドルの切り返し状態にないことを表すものとする。
ステップS11にてトルク変化フラグTc、舵角変化フラグθc、及びモータ回転変化フラグωcの値から、全ての方向(向き)が一致していない場合や、或いはステップS15にて方向一致フラグCの値が前回値と一致していない場合には、ハンドル切り返しフラグR=OFFとする(ステップS17)。
ステップS1〜ステップS17までの処理は、繰り返し行われる。
このようにして、ハンドル切り返し判定部165は、操舵トルクTq、操舵角度θh、及びモータ回転速度ωから、ハンドル切り返しフラグRの演算を行い、ハンドル切り返しフラグR=ONの場合に、この演算に用いたハンドル切り返し時モータ回転数ωRも連れ回り判定部166に出力する。
図10を参照して、連れ回り判定部166の動作を説明する。
ステップS21にて、今回演算するモータ回転速度ω、今回演算されたハンドル切り返し時モータ回転数ωR、及び今回演算されたハンドル切り返しフラグR、及び前回演算したポンプ連れ回りフラグSの値を記憶部(図示せず)から読み出して入力する。ポンプ連れ回りフラグSの値は演算するたびに記憶する。
ステップS22にて、ハンドル切り返しフラグRがR=ONであるか否かを判定し、ハンドル切り返しフラグRがR=ONであればステップS23に進む。ステップS22にて、ハンドル切り返しフラグRがR=OFFであればステップS27に進む。
ステップS23にて、前回のポンプ連れ回りフラグSがS=ONであるか否かを判定し、前回のポンプ連れ回りフラグSがS=ONであればステップS26に進む。ステップS23にて、前回のポンプ連れ回りフラグSがS=OFFであればステップS24に進む。
ステップS24にて、今回演算するモータ回転速度ωと今回演算されたハンドル切り返し時モータ回転数ωRとが一致する場合には、ステップS25に進み、今回演算するモータ回転速度ωと今回演算されたハンドル切り返し時モータ回転数ωRとが一致しない場合には、ステップS27に進む。
ステップS25にて、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値が所定の回転数(例えば、100rpm)未満であるか否かを判別し、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値が所定の回転数未満であれば、ステップS26に進み、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値が所定の回転数以上であれば、ステップS27に進む。
ステップS26では、ポンプ連れ回りフラグSをS=ONとして設定し、ステップS27では、ポンプ連れ回りフラグSをS=OFFとして設定する。
ステップS21〜ステップS27までの処理は、ハンドル切り返しフラグRの演算が行われるたびに繰り返し行われる。
このようにして、連れ回り判定部166は、ハンドル切り返しフラグR、モータ回転速度ω、ハンドル切り返し時回転数ωRとから、ポンプ連れ回りフラグSを判定して流量制御部164に出力する。
図11を参照して、流量制御部164の動作を説明する。
ステップS31にて、ポンプ連れ回りフラグS、車速値V、操舵トルクTq、モータ回転速度ω、基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taを入力する。
ステップS32にて、ポンプ連れ回りフラグSがS=ONであるか否かを判定し、ポンプ連れ回りフラグSがS=ONであればステップS33に進む。ステップS32にて、ポンプ連れ回りフラグSがS=OFFであればステップS41に進む。
ステップS33にて、操舵トルクTqが0以上であるか否かを判定し、操舵トルクTqが0以上であればステップS34に進む。ステップS33にて、操舵トルクTqが0未満であればステップS35に進む。
ステップS34にて目標回転数Xを所定値(例えば−150rpm)に設定し、ステップS35にて目標回転数Xを所定値(例えば150rpm)に設定し、ステップS36に進む。
ステップS36にて、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値と目標回転数Xとの偏差をEとして算出する。
ステップS37にて、偏差Eの絶対値の所定のゲインと車速値Vに対する所定のゲインとを、基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taに対して乗算し、流量補正トルクTa’を算出する。
ステップS38にて、偏差Eが0より大きいか否かを判別し、偏差Eが0より大きい場合には、流量補正トルクTa’をTa’×(−1)として決定し(ステップS39)、偏差Eが0以下の場合には、流量補正トルクTa’をTa’×(+1)として決定する(ステップS40)。
ステップS41にて、流量補正トルクTa’をゼロ(Ta’=0)として決定する。
ステップS31〜ステップS41までの処理は、ポンプ連れ回りフラグSの演算が行われるたびに繰り返し行われる。
このようにして、流量制御部164は、ポンプ連れ回りフラグS、車速値V、操舵トルクTq、モータ回転速度ω、基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taを入力して、ポンプ連れ回りフラグSのON/OFFをトリガーに、流量補正トルクTa’の値を決定する。
本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、ハンドルの切り返し時における双方向ポンプの連れ回り状態を検出し、その時の流量を所定値以上に制御することにより、ポンプ連れ回り時にて、ポンプ回転数が低下しすぎることから生じるハンドルのトルク変動を抑制することができる。更に、本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、ポンプ連れ回り時にポンプ回転数が低下しすぎることから生じる異音の抑制を行うことができ、トルク変動の抑制と異音の抑制の両立を図ることができる。
即ち、図12を参照するに、ポンプ連れ回り判断部163は、ハンドルの切り込みから切り返し移行時に、操舵角度θhの方向が一定であり(図示F12)、操舵トルクTqから得られる微分値が減少方向にあり(図示F13)、操舵角度θhが切り変り(図示F12,F13)、 モータ回転数ωが所定値(Th1)以下に減少していた場合に(図示F14)、ポンプ連れ回り状態と判断する(図示F15)。
これにより、本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、ポンプ連れ回り状態を正確に判断可能となるため、ポンプ連れ回り時に発生する操舵力の変動をより積極的に抑制することができる。また、ポンプ連れ回り時の制御が不要な場合に、ポンプ連れ回り時の制御を動作してしまうことを防止することができる。更に、軸力が低い場合など、ポンプ連れ回り時の流量が低下しやすい場合においても、トルク変動を抑制することができる。
また、図13を参照するに、流量制御部164は、ポンプ連れ回り判断部166の判定結果としてポンプ連れ回り状態にあるときに、作動油の供給量が少ない(即ち、モータ15のモータ回転数ωが所定値以下)と判断した場合、モータ回転数ωが所定の一定値となるように、操舵トルクTqの方向と逆方向に前記モータの駆動電流を増量させる。尚、破線は従来技術における変動の様子を表し、実線は、本発明における動作を示す。
これにより、本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、高速走行時や、軽い車両など、必要軸力が低いときなど、ハンドル切り返し時に、作動油の供給流量が少ない場合に発生するポンプ圧力変動を抑制することができる。
また、図13を参照するに、流量制御部164は、或いは又、流量制御部164は、ポンプ連れ回り判断部163の判定結果としてポンプ連れ回り状態にある場合(ポンプ連れ回り判定がONの場合)、当該ハンドル11aの操舵トルクTqが所定値以下と判断し(図示F16)、パワーシリンダ12における高圧側のシリンダ圧が所定値以下である場合(図示F18)、作動油の供給量が少ない(即ち、モータ15のモータ回転数が所定値以下)と判断し、操舵トルクTqの方向と逆方向にモータ15の駆動電流を増量させ、低圧側への作動油の供給流量を増加させる(図示F17)。尚、パワーシリンダ4における高圧側及び低圧側のシリンダ圧の値は、パワーシリンダ4における各油圧室4a,4bに油圧センサを設けることで得られる。
これにより、本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、双方向ポンプ13のリーク等で、流量が正確にわからない場合でも、正確に制御を行うことができる。
また、図14を参照するに、流量制御部164は、上述の制御の加え、ポンプ連れ回り判断部163の判定結果としてポンプ連れ回り状態にある場合(ポンプ連れ回り判定がONの場合)に、さらに作動油の供給流量が所定値より多い(=モータ回転数がTh4以上)と判断した場合(図示F19)、操舵トルクTqの方向と同方向にモータ15の駆動電流を増量させ(所定の閾値Th4以下の一定値まで増量)、パワーシリンダ12における低圧側への作動油の供給流量を制限させることができる。尚、破線は従来技術における変動の様子を表し、実線は、本発明における動作を示す。従って、流量制御部164は、モータ回転数が所定の閾値Th3〜Th4の範囲内になるように制御するのが好適である。
これにより、本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、ハンドル据え切り時など、切り替えし時の作動油の供給流量が多い場合は、トルク変動が出ないレベルまで増量補正することで、背圧弁を通過するときに発生する異音を抑制しつつ、トルク変動も抑制することができる。
また、流量制御部164は、操舵トルクTqの方向が変化(又は操舵角度θhが切り替わる時)、もしくは操舵トルクTqの微分値の方向が変化した場合は、ポンプ連れ回りフラグSの値をOFFにして増量補正する流量制御を停止することもできる。
これにより、本実施例1のパワーステアリング装置50によれば、流量の制御が不要になる切り込み時などの通常操舵の領域で、不要な制御が働かないようにすることができる。
次に、本発明による実施例2のパワーステアリング装置50を説明する。
図15は、本発明による実施例2のパワーステアリング装置を備えるパワーステアリングシステムの全体を示す概略図である。図16は、本発明による実施例2のパワーステアリング装置におけるコントローラの流量制御部のフローチャートである。実施例1と同様な構成要素には同一の参照番号を付している。
実施例2のパワーステアリング装置50は、パワーシリンダ4における各油圧室4a,4bにおける油圧を検出するため、第1油圧センサ(油圧センサA)51と第2油圧センサ(油圧センサB)52とを更に備え、コントローラ16が第1油圧センサ51と第2油圧センサ52からの油圧値を得ることができる点で実施例1とは相違する。従って、この相違点に関する事項についてのみ説明する。
第1油圧センサ51と第2油圧センサ52とを用いてパワーシリンダ4における各油圧室4a,4bにおける油圧を検出する以外にも、各油圧の値が予測できる他の方法を用いて油圧を測定し推測するように構成することもできる。
本実施例におけるハンドル切り返し判定部165と、連れ回り判定部166は、基本的に実施例1と同様である。本実施例における流量制御部164は、ポンプ連れ回りフラグS、操舵トルクTq、モータ回転速度ω、車速値V、パワーシリンダ4の各油圧室4a,4bにおける圧力:Ps1,Ps2から、後述する図16に示すように流量制御トルクTa1’を算出する。本実施例では、パワーシリンダの第1油圧室及び第2油圧室の圧力の各値、もしくは操舵トルクTqが、所定値以下の場合、ポンプ連れ回り状態であると判定した時から所定の時間だけ、当該第1油圧室12a及び第2油圧室12bの圧力の各値又は当該操舵トルクTqに応じたゲインTa3’,Ta4’,Ta5’を算出する。最終的に、流量制御部164は、該ゲインTa3’,Ta4’,Ta5’を用いてゲインTa2’を算出し、当該ポンプ連れ回り状態における増量補正の補正値Ta1’にゲインTa2’を乗算してさらに補正する。
図16を参照して、実施例2のパワーステアリング装置50における流量制御部164の動作を説明する。
ステップS51にて、ポンプ連れ回りフラグS、車速値V、操舵トルクTq、モータ回転速度ω、パワーシリンダ4の各油圧室4a,4bにおける圧力:Ps1,Ps2、及び基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taを入力する。
ステップS52にて、ポンプ連れ回りフラグSがS=ONであるか否かを判定し、ポンプ連れ回りフラグSがS=ONであればステップS53に進む。ステップS52にて、ポンプ連れ回りフラグSがS=OFFであればステップS69に進む。
ステップS53にて、操舵トルクTqが0以上であるか否かを判定し、操舵トルクTqが0以上であればステップS56に進む。ステップS53にて、操舵トルクTqが0未満であればステップS57に進む。
ステップS56にて目標回転数Xを所定値(例えば−150rpm)に設定し、ステップS57にて目標回転数Xを所定値(例えば150rpm)に設定し、ステップS60に進む。
ステップS60にて、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値と目標回転数Xとの偏差をEとして算出する。
ステップS61にて、偏差Eの絶対値の所定のゲインと車速値Vに対する所定のゲインとを、基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taに対して乗算し、流量補正トルクTa1’を算出する。
一方、ステップS53と並行してステップS54にて、操舵トルクTqが所定値(例えば1.0Nm)未満であるか否かを判定し、操舵トルクTqが所定値未満であればステップS62に進み、操舵トルクTqが所定値以上であれば、ステップS58に進む。ステップS62では、操舵トルクTqに対する所定のゲインTa3’をTa3として決定し、ステップS62では、Ta3をゼロ(Ta3=0)として決定する。
さらに、ステップS53及びステップS54と並行してステップS55にて、パワーシリンダ4の各油圧室4a,4bにおける圧力:Ps1,Ps2がともに所定値(例えば0.7MPa)未満であるか否かを判定し、圧力:Ps1,Ps2がともに所定値未満であればステップS63に進み、圧力:Ps1,Ps2がともに所定値以上であれば、ステップS59に進む。ステップS63では、圧力:Ps1,Ps2に対する所定のゲインTa4’をTa4として決定し、ステップS59では、Ta4をゼロ(Ta4=0)として決定する。
Ta3及びTa4の決定に続いて、ステップS64では、ポンプ連れ回りフラグS=ONからの時刻Tを計時しており、このTの値に対する所定のゲインTa5’をTa5として決定する。
ステップS64では、所定のゲインTa2’を、Ta2’=(Ta3+Ta4)×Ta5×Taから求める。
ステップS66にて、偏差Eが0より大きいか否かを判別し、偏差Eが0より大きい場合には、流量補正トルクTa’を(Ta1’+Ta2’)×(−1)として決定し(ステップS67)、偏差Eが0以下の場合には、流量補正トルクTa’を(Ta1’+Ta2’)×(+1)として決定する(ステップS68)。
ステップS69にて、流量補正トルクTa’をゼロ(Ta’=0)として決定する。
ステップS51〜ステップS69までの処理は、ポンプ連れ回りフラグSの演算が行われるたびに繰り返し行われる。
このようにして、流量制御部164は、ポンプ連れ回りフラグS、車速値V、操舵トルクTq、モータ回転速度ω、パワーシリンダ4の各油圧室12a,12bにおける圧力:Ps1,Ps2、及び基本アシスト指令値演算部161から出力される指令値Taを入力して、ポンプ連れ回りフラグSのON/OFFをトリガーに、流量補正トルクTa’の値を決定する。
実施例2のパワーステアリング装置50によれば、ポンプ連れ回り状態の判定時にポンプ回転数をさらに増量補正し、操舵トルクTqの変動をより短い時間で抑えることが可能となる。
次に、本発明による実施例3のパワーステアリング装置50を説明する。
実施例3のパワーステアリング装置50は、実施例1と同様である。ハンドル切り返し判定部165と流量制御部164は、基本的に実施例1と同様である。本実施例における連れ回り判定部166は、図17に示すように、前回のポンプ連れ回り状態であると判定した際の操舵トルクTqSを記憶しておき、現時点の操舵トルクTqの方向と比較することで操舵トルクTqの方向が切り替わりであるか否かを判別し、操舵トルクTqの方向が切り替わりであると判断したときに、当該流量制御を停止する(ポンプ連れ回りフラグS=OFFにする)。
図17は、本発明による実施例2のパワーステアリング装置50におけるコントローラのポンプ連れ回り判定部のフローチャートである。
図17を参照して、実施例2のパワーステアリング装置50における連れ回り判定部166の動作を説明する。
ステップS71にて、今回演算するモータ回転速度ω、今回演算されたハンドル切り返し時モータ回転数ωR、及び今回演算されたハンドル切り返しフラグR、及び前回演算したポンプ連れ回りフラグSの値を記憶部(図示せず)から読み出して入力する。ポンプ連れ回りフラグSの値は演算するたびに記憶する。
ステップS72にて、ハンドル切り返しフラグRがR=ONであるか否かを判定し、ハンドル切り返しフラグRがR=ONであればステップS73に進む。ステップS72にて、ハンドル切り返しフラグRがR=OFFであればステップS79に進む。
ステップS73にて、前回のポンプ連れ回りフラグSがS=ONであるか否かを判定し、前回のポンプ連れ回りフラグSがS=ONであればステップS74に進む。ステップS73にて、前回のポンプ連れ回りフラグSがS=OFFであればステップS75に進む。
ステップS74にて、記憶してある連れ回り判定時の操舵トルクTqSと、今回演算するモータ回転速度ωの値(又は、今回演算する操舵トルクTqの方向)とが反転しているか否かを判定し、反転していればステップS79に進み、反転していなければステップS78に進む。
ステップS75にて、今回演算するモータ回転速度ωと今回演算されたハンドル切り返し時モータ回転数ωRとが同じ方向か否かを判定し、同じ方向であれば、ステップS76に進み、同じ方向でなければ、ステップS79に進む。
ステップS76にて、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値が所定の回転数(例えば、100rpm)未満であるか否かを判別し、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値が所定の回転数未満であれば、ステップS77に進み、今回演算するモータ回転速度ωの絶対値が所定の回転数以上であれば、ステップS79に進む。
ステップS77では、連れ回り判定時の操舵トルクTqSを記憶しておくとともに、ポンプ連れ回りフラグSをS=ONとして設定して、ステップS78では、ポンプ連れ回りフラグSをS=ON(ポンプ連れ回り状態にある)として設定し、ステップS78では、ポンプ連れ回りフラグSをS=OFF(ポンプ連れ回り状態にない)として設定する。
ステップS71〜ステップS79までの処理は、ハンドル切り返しフラグRの演算が行われるたびに繰り返し行われる。
このようにして、連れ回り判定部166は、ハンドル切り返しフラグR、モータ回転速度ω、ハンドル切り返し時回転数ωRとから、ポンプ連れ回りフラグSを判定して流量制御部164に出力するとともに、当該増量補正する流量制御の停止を可能にする。
また、実施例3のパワーステアリング装置50によれば、また操舵トルクTqの微分値の方向が切り替わった場合は、ハンドル切り返し判定部から出力されるハンドル切り返しフラグRがOFFになるため、この場合でも当該増量補正する流量制御を停止するように構成することができる。
上述の実施例については特定の実施例を代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び置換をすることができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。