以下、図面を参照して本発明に係る油圧駆動機械の制御装置の実施の形態について説明する。
最初に、油圧ショベルの制御装置を用いて、圧力補償手段を備えた油圧駆動機械の制御装置における圧力補償の度合いを減少させる補正について説明し、その後、本願発明の実施例について説明する。
図1は、油圧ショベルの制御装置の構成を示している。
同図に示すように、この装置は、図示せぬエンジンによって駆動され、制御部8から出力される駆動指令に応じて斜板傾転角が変化され、これによって吐出流量が変化される可変容量型の油圧ポンプ1と、2つの操作子としての操作レバー6,7にそれぞれ対応して設けられた2つの油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ2,3と、油圧ポンプ1と上記油圧シリンダ2,3との間の2つの圧油供給路31,32にそれぞれ設けられ、制御部8から出力される駆動指令S1,S2に応じて、その開口面積が変化され、その変化された開口面積に応じた流量の圧油を、それぞれ対応する油圧シリンダ2,3に供給する2つの操作弁としての流量制御弁4,5と、上記操作レバー6,7の操作量V1,V2を、後述するように補正する等の処理を行い、この補正された操作量に応じた駆動指令信号S1,S2を、それぞれ対応する流量制御弁4,5に対して出力し、それに応じて、それぞれ対応する油圧シリンダ2,3を駆動制御する制御部8とから構成されている。
上記操作レバー6は図示せぬ作業機であるブーム(油圧シリンダ2に接続されている)を駆動させるための電気レバーであり、オペレータが操作した量に比例した電気信号を出力する。同様に操作レバー7は、図示せぬ作業機であるアーム(油圧シリンダ3に接続されている)を駆動させるための電気レバーであり、オペレータが操作した量に比例した電気信号を出力するものである。
上記圧油供給路31,32に分岐される圧油供給路30上には、油圧ポンプ1の吐出圧力Ppを検出する圧力センサ9が配設されている。
また圧油供給路31のうち、油圧シリンダ2のボトム室に連通する供給路上、同シリンダ2のヘッド室に連通する供給路上には、それぞれブームの負荷圧力P1B,P1Hを検出する圧力センサ10a,10bが配設されている。
同様に、圧油供給路32のうち、油圧シリンダ3のボトム室に連通する供給路上、同シリンダ3のヘッド室に連通する供給路上には、それぞれアームの負荷圧P2B,P2Hを検出する圧力センサ11a,11bが配設されている。
これら各圧力センサの検出信号は、上記操作レバー6,7の操作量を示す電気信号とともに、制御部8に入力され、図2に示される処理が実行される。
図2は、制御部8で行なわれる演算処理を説明するブロック図である。なお、この図2では、説明の便宜のため演算処理が各演算器で行われるものとして説明しているが、もちろん全てソフトウェアで処理するようにしてもよい。
いま、図2の矢印に示すように、操作レバー6がブーム用油圧シリンダ2を伸長させる方向に操作されており、操作レバー7がアーム用油圧シリンダ3を縮退させる方向に操作されている場合を想定する。
制御部8の差圧検出手段8aには、操作レバー6,7の操作量V1,V2を示す信号、圧力センサ9,10a,10b,11a,11bの各圧力検出信号Pp,P1B,P1H,P2B,P2Hが入力される。
そして、操作レバー6の方向(伸長方向)に応じて、P1B,P1Hの中から、P1B(油圧シリンダ2に圧油が流入する側であるボトム室側)が選択されて、ブ−ム用流量制御弁4の前後差圧△P1=Pp−P1Bが演算される。一方、操作レバ−7の方向(縮退方向)に応じて、P2B,P2Hの中から、P2H(油圧シリンダ3に圧油が流入する側であるヘッド室側)が選択されて、ア−ム用流量制御弁5の前後差圧△P2=Pp−P2Hが演算される。
制御部8の第1の補正係数演算手段8bでは、上記差圧検出手段8aで検出、演算された検出差圧△P1、△P2が入力され、これらの内で最小の差圧△Pminが選択される。
さらに、この最小差圧ΔPminを用いて、ブ−ム用操作レバ−6の操作量V1を補正するための補正係数K1が、K1=√(△Pmin /△P1)と演算されるとともに、アーム用操作レバー7の操作量V2を補正するための補正係数K2が、K2=√(△Pmin /△P2)と演算される。
つぎに、第2の補正係数演算手段8cでは、上記第1の補正係数演算手段8bにおける最小差圧ΔPminの選択処理に連動して、最小差圧ΔPminとなっている駆動軸側のレバ−操作量を最小差圧側操作量Vminとして選択する処理が実行される。すなわち、上記第1の補正係数演算手段8bで最小差圧ΔPminがブ−ム側の差圧ΔP1である場合には、最小差圧側操作量Vminとして、ブ−ム用操作レバ−6の操作量V1が選択(Vmin=V1)され、また、最小差圧ΔPminがア−ム側の差圧ΔP2である場合には、最小差圧側操作量Vminとして、ア−ム用操作レバ−7の操作量V2が選択(Vmin=V2)されることになる。
第2の補正係数演算手段8cには、最小差圧側操作量Vminと補正係数K1、K2の下限値KLとの対応関係が、操作量Vminの値が小さくなるにつれて補正係数下限値KLが大きくなるような関係をもって、記憶テーブルとして記憶されている。そこで、現在の最小差圧側操作量Vminの大きさに対応する補正係数下限値KLがこの記憶テーブルから読み出される。なお、最小差圧側操作量Vminと補正係数下限値KLとの対応関係を記憶テーブルとして記憶しておく代わりに、最小差圧側操作量Vminから補正係数下限値KLを演算する演算式を用意しておき、演算により直接補正係数下限値KLを求めるようにしてもよい。
そこで、こうして求められた補正係数下限値KLと、ブ−ム側の操作量を補正する補正係数K1、ア−ム側の操作量を補正する補正係数K2との大小比較がそれぞれ行われ、大きな方が、新たに補正係数K1′,K2′として選択出力される。
操作量補正手段8dには、上記補正係数K1、K2をさらに補正した補正係数K1´、K2´が入力されるとともに、操作レバー6、7からの駆動指令値としての操作量V1、V2が入力される。
そこで、予め設定されている操作ストローク量(流量制御弁4のスプールストローク量)V1と、流量制御弁4のスプールの開口面積A1との関係に基づき、現在の操作量V1に対応する開口面積A1が求められる。同様にして、現在の操作量V2に対応する開口面積A2が求められる。ここで、上記スプールストローク−開口面積の関係は、スプールの形状から一義的に定まるものである。
こうして得られた開口面積A1、A2に対して、上記求められた補正係数K1´、K2´がそれぞれ乗じられ、補正開口面積A1’=K1´・A1、A2’=K2´・A2が求められる。
さらに、予め設定された、上記スプールストローク−開口面積の逆の関係より、上記補正開口面積A1’、A2’に対応するスプールストローク量S1、S2が求められ、このスプールストローク量S1、S2を示す信号が、ブーム用流量制御弁4のメインスプールを駆動する電磁比例パイロット弁12、アーム用流量制御弁5のメインスプールを駆動する電磁比例パイロット弁13の各ソレノイドに対して加えられる。この結果、これらパイロット弁12、13から、各入力電気信号に比例するパイロット圧が、流量制御弁4、5に対してそれぞれ加えられ、流量制御弁4、5の各メインスプールが、上記補正開口面積A1’A2’になるように駆動される。以上の内容を具体的な数値を挙げて説明する。
いま、オペレータがブーム上げとアームダンプの複合操作を行い、圧油の流入側であるブームボトム圧力P1Bが100kg/cm2、アームヘッド圧力P2Hが160kg/cm2、油圧ポンプ1の吐出圧Ppが180kg/cm2であったものとすると、差圧検出手段8aでは、ブーム用流量制御弁4の前後差圧は、△P1=Pp−P1B=180−100=80kg/cm2と演算され、アーム用流量制御弁5の前後差圧は、△P2=Pp−P2H=180−160=20kg/cm2と演算される。
つぎに、第1の補正係数演算手段8bでは、各差圧△P1,△P2のうちで最も小さい値を最小差圧△Pminとして選択するのであるから、最小差圧△Pmin=△P2=20kg/cm2となる。さらに、ブーム側補正係数K1=√(△Pmin/△P1)=√(20/80)=0.5アーム側補正係数K2=√(△Pmin/△P2)=√(20/20)=1.0と演算される。
ここで、最小差圧ΔPminが得られている駆動軸(この場合はアーム)の補正係数(K2)は、常に1になることがわかる。
ここで、仮に、上記補正係数K1、K2がそのまま操作量補正手段8dに入力されたものと仮定すると(第2の補正係数演算手段8cが存在しないと仮定すると)、この操作量補正手段8dでは、各レバー操作量Viに応じて定まる開口面積Aiに対して、補正係数Kiを乗算して求めた補正開口面積Ki・Aiに相当する駆動指令信号S1、S2を出力するのであるから、ブーム用流量制御弁4に対しては本来の開口面積A1を0.5倍した駆動指令が、アーム用流量制御弁5に対しては本来の開口面積A2を1.0倍した駆動指令が出力されることになる。
すなわち、最小差圧ΔPminが得られているアーム側の開口面積A2は補正されることなく、差圧ΔP1がより大きな値を示しているブーム側の開口面積A1については、差圧ΔP1の大きさに応じた補正量だけ補正される。つまり差圧ΔP1の大きさに応じた分だけ開口面積A1を絞るような補正がなされ、圧力補償が実現される。
ここに、第2の補正係数演算手段8cでは、最小差圧ΔPminが得られている駆動軸がアーム側となっているため、アーム側のレバー操作量V2が最小差圧側操作量Vminとして選択される。
いま、アーム側操作レバー7の操作量Vmin が100%(フルレバー操作)であったものとすると、上記記憶テーブルより、操作量Vmin最大値に対応する補正係数下限値KL=0.2が読み出され、この補正係数下限値KLと上記各補正係数K1,K2との大小比較がそれぞれ行われる。K1=0.5,K2=1.0となっており、補正係数K1,K2の方が補正係数下限値KLよりも大きいので、補正係数下限値KLに影響されることなく、補正係数K1,K2がそのままK1′,K2′として第2の補正係数演算手段8cから出力されることになる。
ところが、アーム側操作レバー7が上記フルレバー位置(操作量Vmin =100%)から中立位置(操作量Vmin=0%)に戻されると、操作量Vmin最小値に対応する補正係数下限値KL=0.8が、上記記憶テーブルから読み出され、この補正係数下限値KLと上記各補正係数K1,K2との大小比較がそれぞれ行われる。K1=0.5,K2=1.0となっており、補正係数K2(=1.0)に関しては補正係数下限値KL(=0.8)よりも大きいので、補正係数K2がそのままK2´として第2の補正係数演算手段8cから出力されることになるが、補正係数K1(=0.5)に関しては補正係数下限値KL(=0.8)の方が大きな値を示しているので、補正係数下限値KLがK1の代わりにK1´として第2の補正係数演算手段8cから出力されることになる。
これを、オペレータの操作感覚で説明すると、ブーム上げとアームダンプというフルレバー作業を行っているときに、高負荷圧側になっているアーム用の操作レバー7をフルレバー位置から中立位置に徐々に戻していくと、低負荷側になっているブーム側の流量制御弁4の開口面積A1を絞る度合いが減少されるように、つまり圧力補償の度合いが緩やかになるように補正がなされるので(補正係数K1を大きくする)、油圧ポンプ1から低負荷側であるブーム側流量制御弁4に流入する圧油の流量が多くなり、ブーム側油圧シリンダ2の速度が、加速されるという操作感覚を得ることができ、オペレータの望む操作感覚に合致させることができる。
また、このように軽負荷のブーム側の流量制御弁4の開口面積A1を絞らないようにすることで、油圧ポンプ1の吐出圧Ppが高負荷のアーム側の負荷圧以下に落ち込むので、アーム用操作レバー7の操作にかかわらず、ポンプ全流量をブーム側に供給させて、加速化を図ることができる。
以上のように、圧力補償の度合いを減少させる補正を行う場合、油圧シリンダの各室ごとに圧力センサを配設しているが、図3(a)に示すように、流量制御弁4(あるいは5)のスプールストローク方向に応じて自動的に油圧シリンダ2(あるいは3)へ流入する側の圧油の負荷圧を導く管路14(あるいは管路15)を設け、この管路14(あるいは管路15)上に、油圧シリンダ2(あるいは3)に流入する側の圧油の負荷圧P1(あるいはP2)を検出する圧力センサ10c(あるいは11c)を設けるようにしてもよい。このようにすることで圧力センサの数を減らすことができる。しかも、この場合には、図4(a)に示すように、制御部8の差圧検出手段8a’において、図2で必要であった、ボトム側の圧力P1B(あるいはP2B)と、ヘッド側の圧力P1H(あるいはP2H)とを選択するための構成を設けなくて済むという効果が得られる。
さらに、図3(b)に示すように、油圧ポンプ1の吐出圧Ppと上記流入側負荷圧P1(あるいはP2)との差圧ΔP1(あるいはΔP2)を直接検出する差圧センサ10d(あるいは11d)を設けるようにすれば、油圧ポンプ1用の圧力センサ9の配設をも省略することが可能となる。しかも、この場合には、図4(b)に示すように、制御部8の差圧演算手段8a’’において、図4(a)で必要であった、ポンプ吐出圧Ppと、負荷圧P1(あるいはP2)と差圧ΔP1(あるいはΔP2)を演算するための構成を設けなくて済むという効果が得られる。
また、図5に示すようないわゆるロードセンシング制御が行われる油圧回路に適用してもよい。この図5に対応する制御ブロック図を図6に示す。なお、図1、図2、図3(b)、図4(b)と同一の要素には同一の符号を付けて説明を省略する。
図5に示される油圧ショベルの制御装置では、流量制御弁4,5のそれぞれの流出側の負荷圧を導く管路14,15が配設されており、シャトル弁16によって、これら各負荷圧の内で高圧側の圧力PLが選択されるようになっている。シャトル弁16によって選択された最大負荷圧力PLの圧油が管路17を介して可変容量型ポンプ1の斜板傾転角を制御するサーボ弁19の一方に導きかれるとともに、このサーボ弁19の反対側には油圧ポンプ1の吐出圧Ppの圧油が管路18を介して導かれるようになっている。また、このサーボ弁19には、所定のばね力F=ΔPのバネが付設されている。したがって、このサーボ弁19では、上記ポンプ1の吐出圧Ppが、最大負荷圧PLよりも、バネ力に応じた一定値、つまり差圧予設定値ΔPだけ高くなるように、油圧ポンプ1の斜板傾転角が制御される。つまり、常に、差圧Pp−PLが差圧予設定値ΔPになるようなロードセンシング制御がなされる。
ここで、油圧ポンプ1の吐出量に十分余裕があるものとすると、図2で説明した最小差圧△Pmin を上記差圧予設定値ΔPとみなすことができる。したがって、図6に示される第1の補正係数演算手段8b´では、最小差圧ΔPminを、上記ロードセンシング制御の目標差圧ΔPに固定設定することができる。この結果、図2の第1の補正係数演算手段8bのごとく差圧検出手段8aから出力される差圧検出値ΔP1、ΔP2の中から最小差圧△Pminを選択する処理を行う必要がなく、同様の制御を、より簡易な構成で行うことが可能となる。
なお、この方式をとった場合には、目標差圧ΔP(=ΔPmin)と、実際に検出される差圧Pp−PLとの間にずれがあることにより、圧力補償としては完全に正確でなく誤差が生じる可能性もあるが、図2に示す制御と概略同等の効果は得られる。
また、図7に示すように、最小差圧ΔPminを上記目標差圧ΔPに固定するのではなくて、上記誤差を低減させるために、操作レバーの操作量の和に基づいて最小差圧ΔPminを予測するような構成も可能である。
すなわち、油圧ポンプ1が目標差圧ΔPを保持できなくなり誤差が生じるのは、油圧ポンプ1の吐出可能量よりも操作レバーの操作量に応じた要求流量の方が大きくなっている場合であるので、吐出可能量と要求流量との比較結果に応じて最小差圧ΔPminを推定するようにしたものである。
図7の第1の補正係数演算手段8b″には、各流量制御弁4、5に対する駆動指令信号(開口面積)S1,S2、油圧ポンプ1の吐出圧Ppが入力される。ここで、駆動指令(開口面積)S1,S2と要求流量Q1、Q2(操作レバー6、7の操作量に応じた要求流量Q1、Q2)との対応関係は、予め記憶テーブルに記憶されている。そこで、入力された駆動指令(開口面積)S1、S2に対応する要求流量Q1、Q2がこの記憶テーブルから読み出され、この読み出された要求流量Q1、Q2の和が、全体の要求流量Qrとして求められる。
一方、油圧ポンプ1に関して、ポンプ吐出圧Ppと吐出可能流量Qpとの対応関係を示す等馬力カーブが予め記憶テーブルに記憶されている。そこで、入力された油圧ポンプ1の検出吐出圧Ppに対応する吐出可能流量Qpがこの記憶テーブルから読み出される。
また、ポンプ吐出可能流量Qpと全体要求流量Qrとの差△Qと、最小差圧ΔPminとの対応関係について、予め記憶テーブルに記憶されている。そこで、現在の差ΔQに対応する最小差圧ΔPminがこの記憶テーブルから読み出されることで、最小差圧が推定される。すなわち、ポンプ吐出圧Ppと最大負荷圧PLとの実際の差圧が十分大きい場合には、油圧ポンプ1で目標差圧が保持されるようになり、この実際の差圧が0になると、目標差圧が0になるような推定がなされる。
このように、上記構成によれば、ポンプ吐出可能流量Qpと全体要求流量Qrとの差ΔQに応じて最小差圧ΔPminをきわめて高い精度で、最小差圧ΔPminを検出することなく求めることができる。
図2に示す第2の補正係数演算手段8cでは、第1の補正係数演算手段8bによる最小差圧ΔPminの選択処理に連動して、最小差圧ΔPminとなっている駆動軸の操作量を最小差圧側操作量Vmin として選択するようにしているが、最小差圧ΔPminになっている駆動軸の操作量Vminを逐次選択するのではなくて、特定の駆動軸の操作量をVminに固定してしまうことも可能である。
図8は、これを実現する制御ブロック図を例示したものである。
同図8に示す第2の補正係数演算手段8c″では、最小差圧ΔPminになっている駆動軸がブーム、アームのいずれであろうとも、ブーム用操作レバー6の操作量V1が一義的にVminとされ、現在の操作量Vminに対応する補正係数下限値KLが記憶テーブルから読み出されるようになっている。
この場合の現象を説明すると、いま、前述したのと同様にブーム上げとアームダンプの複合操作がなされており、ブーム側が高負荷圧になっている状態で、最大負荷圧であるブーム側の操作レバー6をフルレバー位置から中立位置に戻していくものとすると、図2の制御ブロック図の場合と同様にして、補正係数下限値KLが増大することにより低負荷側であるアーム用流量制御弁5の開口面積の絞り込みの度合いが弱まり、低負荷側のアーム用油圧シリンダ3に多くの流量が流れ込むようになり、負荷なりの流量分配が得られることになる。
逆に、ブーム側が低負荷圧側になっている状態であるとして、このブーム側の操作レバー6をフルレバー位置から中立位置に戻していくものとすると、同様に補正係数下限値KLが増大することにより低負荷圧側であるブーム用流量制御弁4の開口面積の絞り込みの度合いが弱まり、低負荷側のブーム用油圧シリンダ2に多くの流量が流れ込むようになり、結果的に、負荷なりの流量分配を同様にして得ることができる。
このように、Vmin を常時ブーム用操作レバー6の操作量V1として固定しておくことにより、ブームのファイコン操作時には油圧システム全体が負荷なりの動きとなり、またフルレバー操作時には油圧システム全体で圧力補償が十分かかった状態にもっていくことができ、オペレータの操作感覚に合致させることができる。
以上のように、特定の駆動軸の操作量をVminに固定しておく場合であっても、この特定軸の操作に連動した負荷なりの流量分配を実現することができる。
なお、ブームが単独操作されている場合には、第1の補正係数演算手段8bにおいて、ブーム用流量制御弁4の前後差圧△P1が最小差圧△Pminとして選択されており、補正係数K1は1になっているので、ブーム側は、第2の補正係数演算手段8c″で得られた補正係数下限値KL(≦1)の制限の影響を受けることはない。つまり、通常と同様に単独操作を行うことができる。
また、Vminとなる駆動軸を一の駆動軸に固定するのではなく、作業内容に応じて適宜変更するようなことも可能である。
図9は、これを実現する制御ブロック図を例示したものである。
同図9に示す第2の補正係数演算手段8c″´のVmin選択処理部30では、複数の操作レバー6、7,40、41の内で同時に操作されているレバーの組合せに応じて、その中の特定の操作レバーの操作量がVminとして選択される。
なお、図9において、40はバケットを駆動するための操作レバーであり、操作量V3が出力されるようになっており、41は油圧ショベルの上部旋回体を駆動するための操作レバーであり、操作量V4が出力されるようになっているものとする。
例えば、第2の補正係数演算手段8c″´のVmin選択処理部30では、ブームと旋回用の操作レバーが同時操作されていると、ブーム用操作レバー6の操作量V1がVminとして選択され、またブームとアーム用の操作レバーが同時操作されていると、これら両操作レバー6、7の操作量の和V1+V2がVminとして選択され、またアームとバケット用の操作レバーが同時操作されていると、バケット用操作レバー40の操作量V3がVminとして選択され、これら以外の操作レバーの組合せでは、Vminが0に設定される。以上説明した第2の補正係数演算手段8c〜8c″´では、Vminの大きさに対応する補正係数下限値KLを求め、この補正係数下限値KLと第1の補正係数演算手段8bから出力される補正係数K1,K2との大小比較を行うようにしているが、図10に示すような処理にてこれと同等の処理を行うようにしてもよい。
すなわち、図10に示す第2の補正係数演算手段8c″″では、操作量Vminと補正ゲインG(G≧1)との対応関係が予め記憶テーブルに記憶されている。そこで、図2の制御ブロック図と同様にして、現在最小差圧ΔPminになっている駆動軸の操作量Vmin(V1)に対応する補正ゲインGが、この記憶テーブルから読み出される。この読み出された補正ゲインGは、補正係数K1,K2に乗算され、この値G・K1、G・K2と、1.0との大小比較がそれぞれ実行され、小さい方の値が新たな補正係数K1´、K2´としてそれぞれ出力される。
つまり、図2のように補正係数の下限を設定するのではなくて、いわば補正係数の上限を1.0でサチュレーションするという手法である。
この図10に示す処理の場合、最小差圧側操作量Vminの大きさに応じて、補正係数K1,K2が1.0以下の範囲内で、1.0に、より近づくように補正されるので、図2の制御と同様に、低負荷圧側の流量制御弁の開口面積の絞りの度合いを(圧力補償の度合い)を減少させることができ、負荷なりの流量分配が実現されることになる。
図11は図10の変形例である。
すなわち、この図11では、最小差圧△Pminに前もって上記補正ゲインG(G≧1)が乗算され(最小差圧△Pminを実際よりも過大評価しておき)、補正係数K1,K2を予め大きめに演算しておくようにしている。そして、その後、1以上になった最小差圧側の駆動軸の補正係数の上限を、1以下に制限するようにしており、図10と同等の効果が得られる。
以上説明した場合は、Vminと補正係数下限値KLあるいは補正ゲインGとの対応関係、つまり特性を、各補正係数K1,K2に共通のものとしているが、各補正係数K1、K2毎に補正係数下限値KLあるいは補正ゲインGの特性を異ならせることも可能である。
図12は、これを実現する制御ブロック図であり、同図12の第2の補正係数演算手段8c″″″には、ブーム側とアーム側とで、最小差圧側操作量Vminと補正係数下限値KLとの対応関係、つまり特性がそれぞれ異なるものとして設定されている。この場合、アーム側の特性の方がブーム側の特性よりも、補正係数下限値KLの増大し始めるポイントが、より操作量Vminの小側に位置されるように、設定されている。
このため、最大負荷圧側がブームであるときには、VminとKL1との特性にしたがい、操作レバーが僅かに中立側に戻されただけで、負荷なりの制御、つまり圧力補償を弱めた制御がなされることになるが、最大負荷圧側がアームであるときには、VminとKL2との特性にしたがい、操作レバーが相当中立側に戻されない限り、負荷なりの制御、つまり圧力補償を弱めた制御がなされないことになる。
以上説明した操作量補正手段8dでは、レバー操作量Vに対応する開口面積Aを演算し、これに補正係数K´を乗じることにより補正開口面積が得られる駆動指令Sを生成するようにしているが、図13(a)、(b)に示すように、より簡易に操作量補正手段8dを構成してもよい。
図13(a)は、第2の補正係数演算手段8cから出力された補正係数K1′、K2´を、乗算部22、23にて操作量V1、V2に直接乗算することにより駆動指令S1、S2を生成するように構成したものである。
図13(b)は、第2の補正係数演算手段8cから出力された補正係数K1′、K2´を、操作量最大値Vmaxに乗算したものと、操作量V1、V2との大小比較を最小値選択部22´、23´で行い、小さいものを駆動指令S1、S2として出力するように構成したものである。
図13(a)、(b)に示す構成では、駆動指令S1、S2と開口面積A1、A2との対応関係あるいは操作量V1、V2と開口面積A1、A2との対応関係(略二次曲線である)を厳密に考慮していないので、完全に正確なる圧力補償を実現することはできないが、当該対応関係を厳密に考慮した場合と比較して遜色なく同等の負荷なりの制御を実現することができる。
図14は、図13(a)、(b)に示す構成を実現するための全体構成図である。
同図14に示すように、図1の電気操作レバー6、7の代わりに、油圧パイロット式操作レバー(いわゆるPPCレバー)6´、7´が設けられている。
この操作レバー6´、7´の操作量を示すパイロット圧V1、V2は、圧力センサ20,21によってそれぞれ検出され、この検出された操作量V1,V2に基づいて前述したのと同様に補正係数演算処理が実行される。一方、操作レバー6´、7´の操作量を示す信号は、図13(a)あるいは(b)の操作量補正手段8dの乗算部22、23あるいは最小値選択部22´、23´に出力される。これらは、電磁減圧弁で構成されている。また、電磁減圧弁22、23あるいは22´、23´には、補正係数K1´、K2´が入力される。
そこで、この電磁減圧弁22、23あるいは22´、23´に入力されている補正係数K1´、K2´が1のときには、油圧パイロット式操作レバー6´、7´から出力されているパイロット圧V1、V2は減圧されないで、そのまま出力されることになる。一方、補正係数K1´、K2´が1よりも小さくなると、操作レバ−6´、7´から出力されたパイロット圧が減圧されて、出力される。そして、この減圧されたパイロット圧V1、V2がそれぞれ流量制御弁4、5に対して加えられる。
また、図14に示すごとく操作レバー6´、7´から出力されるパイロット圧V1、V2を、流量制御弁4、5までの管路の途中で減圧するという構成をとる代わりに、図15に示すように、操作レバー6´、7´の出力信号V1、V2をそのまま流量制御弁4、5にそれぞれ加えつつ流量制御弁4、5に付与される力を調整することにより、同様の効果を得るようにしてもよい。
同図15では、操作レバー6´、7´の操作量を示すパイロット圧V1、V2がそのまま流量制御弁4、5にそれぞれ加えられる。
流量制御弁4、5では、操作レバー6´、7´からのパイロット圧が作用する側の反対側に、電磁弁12,13から出力されたパイロット圧に比例した力がストローク規制部24、25によって付与される。ストローク規制部24、25は、流量制御弁4、5を付勢するバネに対して電磁比例弁12、13から出力されたパイロット圧に応じた力を加えるものである。
すなわち、電磁弁12、13に、制御部8で生成された駆動指令S1、S2が入力されると、これら駆動指令S1、S2に比例したパイロット圧の圧油が、上記ストローク規制部24、25にそれぞれ加えられる。したがって、ストローク規制部24、25は、駆動指令S1、S2に応じたスプール位置を越えて、操作レバー6´、7´の操作量V1、V2に応じたスプール位置まで、流量制御弁4、5のスプールがストロークされてしまうことを防止する作用をなす。
操作レバー6´、7´の操作量V1、V2がそれぞれ駆動指令S1、S2以下である場合には、このストローク規制部24、25によるストロークの制限は受けないが、操作レバー6´、7´の操作量V1、V2がそれぞれ駆動指令S1、S2よりも大きくなった場合には、ストローク規制部24、25によるストロークの規制を受けることになり、この図15に示す構成のものでも、図14の構成のものと同様の効果が得られる。
以上説明した処理では、圧力補償の制御を、流量制御弁4、5の開口面積A1、A2を補正することにより実現しているが、図16に示すように、流量制御弁4、5に、流量分配を調整する圧力補償弁26、27がそれぞれ設けられている場合には、この圧力補償弁26、27を用いて同様の圧力補償の制御を行うようにしてもよい。
すなわち、図16において、操作レバー6´、7´は、図14、図15と同様に油圧式PPCレバーであるものとする。
流量制御弁4,5それぞれには、これら流量制御弁4、5の前後差圧ΔP1、ΔP2をそれぞれ制御する圧力補償弁26,27が付設されている。
圧力補償弁26、27には、それぞれ、管路14,15を介して、流量制御弁4、5から流出する側の圧油が、弁の一方側に導かれるとともに、弁の他方側には、圧力補償弁26、27をそれぞれ通過し、流量制御弁4、5に流入する側の圧油が導かれている。さらに、圧力補償弁26、27には、これら両圧油に所定の差圧を持たせるように、電磁比例弁12,13から出力されるパイロット圧に応じた力と、バネによる付勢力が付与されている。
いま、操作レバー6´、7´がフルレバー位置まで操作され、このフルレバー操作に応じたパイロット圧が流量制御弁4、5にそれぞれ加えられたときに、流量制御弁4、5の前後差圧ΔP1、ΔP2がそれぞれ所定の差圧、例えば20kg/cm2になるように設定されているものとする。
ここで、操作レバー6´、7´を徐々に戻して、流量制御弁4、5に加えられるパイロット圧を小さくしていくと、圧力補償弁26、27がそれぞれ左側(開き側)に駆動されることになる。これにより、流量制御弁4、5の流入側の圧油の圧力が上昇することになり、この圧力が油圧ポンプ1の吐出圧Ppに近くなる。すなわち、流量制御弁4、5の前後差圧ΔP1、ΔP2が大になるので、流量制御弁4、5の開口面積A1、A2が同じであっても、より多くの流量が駆動軸に流れるようになり、開口面積A1、A2を補正する場合と同様に、負荷なりの流量分配が実現されることになる。
図17は、図16に示す制御部8の構成を示す制御ブロック図である。
同図17に示すように、差圧検出手段8a″では、流量制御弁と圧力補償弁とをまとめて1つの操作弁4´、5´とみなしている。すなわち、操作弁4´、5´に流入する圧油の圧力、つまり圧力補償弁26、27の前圧(ポンプ吐出圧)Ppが圧力センサ9で検出されるともに、この操作弁4´、5´から流出する圧油の圧力、つまり流量制御弁4、5の後圧(油圧シリンダ負荷圧)P1、P2がそれぞれ圧力センサ10c、10cで検出され、これらの差圧ΔP1、ΔP2(前後差圧)が演算される。
第1の補正係数演算手段8bでは、補正係数K1、K2が、上記演算された前後差圧ΔP1、ΔP2に基づいて演算される。ただし、流量制御弁4、5の前後差圧自体は、圧力補償弁26、27の働きによって各駆動軸で所定の差圧に近くなるように制御されているので、補正係数K1,K2の値がゼロに近いほど圧力補償弁26、27にて圧力補償をかけている度合いが高いことになる。
第2の補正係数演算手段8c7´には、パイロット圧センサ20、21でそれぞれ検出された操作レバー6´、7´の操作量V1,V2が入力され、これらの内で最小差圧側の操作量Vminが選択され、この最小差圧側操作量Vminに対応する補正係数下限値KLが記憶テーブルから読み出される。
ここで、最小差圧側操作量Vminと補正係数下限値KLとの対応関係を示す特性は、最小差圧側操作量Vminが小さくなるにつれて、補正係数KLの値がゼロから1に徐々に近づく特性に設定されている。
そこで、第1の補正係数演算手段8bで演算された補正係数K1,K2と、記憶テーブルから読み出された補正係数下限値KLとの差K1−KL、K2−KLがそれぞれ求められ、この差が新たな補正係数K1′,K2′(−1≦K′≦1)として出力される。
操作量補正手段8d´には、補正係数K´(K1´、K2´)と電磁比例弁12、13に対する駆動指令S´(S1´、S2´)との対応関係を示す特性が予め記憶テーブルとして記憶されている。この特性は補正係数K1´、K2´がマイナスの値になるに従い、駆動指令S1´、S2´の値が小さくなるようなものとして設定されている。
そこで、第2の補正係数演算手段8c7´から出力された補正係数K1′K2′が入力されると、この補正係数K1´、K2´に対応する駆動指令S1´、S2´がこの記憶テーブルから読み出され、圧力補償弁26、27の差圧を制御する電磁比例弁12、13に対してそれぞれ出力される。
ここで、いま、ブームが最小差圧ΔPminとなっている駆動軸であるものとすると、第1の補正係数演算手段8bにおいて、このブーム側の補正係数K1が1と求められる。このため、第2の補正係数演算手段8c7´で補正係数下限値のKLとの差として求められるK1′は、最小差圧側操作量Vminの大きさにかかわらずに、常にプラスの値を示す。よって、最大の駆動指令S1´が操作量補正手段8d´から電磁比例弁12を介して圧力補償弁26に加えられ、圧力補償弁26は流量制御弁4の前後差圧ΔP1を、所定の差圧(20kg/cm2)に保持する作用をなす。一方、最小差圧ΔPminになってい駆動軸以外の軸、たとえばアームでは、補正係数K2が1よりも小さくなっているので、補正係数K2の値が小さいほど、最小差圧側操作量Vminの操作量が小さいほど、補正係数K2′の負の絶対値は大きくなる。このため、操作量補正手段8d´から出力される駆動指令S2´としては、最大値よりも小さな値をとる。駆動指令S2´が小さくなると、圧力補償弁27を右側(閉じ側)に押す力が弱くなるので、圧力補償機能が弱まることになり、これにより、負荷なりの流量分配が実現されることになる。
このように、高負荷圧側の操作レバーがフルレバー位置から中立位置に少しでも戻されると、最小差圧側操作量Vminが小さくなることにより、補正係数K2が小さいほど、つまり低負荷側の駆動軸(圧力補償弁での圧力補償が強い駆動軸)ほど、圧力補償の度合いが、減少されることになる。よって、たとえば、放土から掘削開始点への戻し操作など、ラフでスピードが要求される作業を行う場合に、オペレータとしては、最大負荷圧となっている駆動軸の操作レバーの操作を加減することにより(フルレバー位置から中立位置に戻すと)、より低負荷圧になっている駆動軸のみを加速させることができ、オペレータの望む操作感覚に合致させることができるとともに、作業効率を向上させることができる。
以上説明した処理では、圧力補償の度合いを減少させる制御を行う場合について説明した。以下では、作業に応じて、圧力補償の度合いを増大させる制御を行う本願実施形態について説明する。
こうした、いわゆる圧力の過補償を行う方法として、第1の補正係数演算手段8bに入力される差圧を、実際に検出される差圧よりも大きめに補正しておく方法と、第1の補正係数演算手段8bで演算、出力される補正係数を、小さめに求める方法の2種類がある。
そこで、まず、前者の第1の補正係数演算手段8bに入力される差圧を、実際に検出される差圧よりも大きめに補正しておく方法を実現する実施形態について図18を参照して説明する。
図18は、図1の全体構成を前提として制御部8で実行される制御内容を示す制御ブロック図である。
同図18に示すように、過補償補正手段8eでは、差圧検出手段8a″″を介して、油圧シリンダ2、3に流入される圧油の圧力P1,P2が取り込まれ、これら圧力P1,P2の内で、大きな方が最大圧Pmaxとして選択される。
ここで、最大圧Pmax と、圧力補正ゲインGpとの対応関係が記憶テーブルに記憶されている。この対応関係を示す特性は、最大圧Pmaxが大きい程、圧力補正ゲインGpの値が1から0に徐々に変化する特性となるように設定されている。なお、圧力補正ゲインGpの値を、最大圧Pmaxの大きさいかんにかかわらずに、一定値に設定してもよい。
そこで、現在の最大圧Pmaxに対応する圧力補正ゲインGpがこの記憶テーブルから読み出され、この読み出された圧力補正ゲインGpが、切換スイッチ31の3つの入力端子の内の一つの入力端子に加えられる。この切換スイッチ31の他の2つの入力端子には、常時1となる信号が加えられており、2つの出力端子からは検出圧力P1を補正するためのゲインG1、検出圧力P2を補正するためのゲインG2がそれぞれ出力される。
この切換スイッチ31は、検出圧力P1、P2の中から最大圧Pmaxを選択する動作に連動して切換え作動される。検出圧力P1が最大圧Pmaxとして選択された場合には、切換スイッチ31からは1.0を示すゲインG1が出力されるとともに、圧力補正ゲインGpを示すゲインG2が出力されるように切り換えられ(上側に切り換えられ)、検出圧力P2が最大圧Pmaxとして選択された場合には、切換スイッチ31からは圧力補正ゲインGpを示すゲインG1が出力されるとともに、1.0を示すゲインG2が出力されるように切り換えられる(下側に切り換えられる)。
いま、最大圧Pmaxがアーム側の検出圧力P2であるものとすると、切換スイッチ31からはゲインG1=Gp(Gp<1)、ゲインG2=1が切換出力され、これらゲインG1,G2が、実際の検出圧力P1,P2にそれぞれ乗算され、検出圧P1がP1´に補正されるとともに、検出圧P2がP2´に補正される。このため、補正圧力P1´は、実際の検出圧力P1よりも小さくなり、補正圧力P2´は、実際の検出圧力P2と同じ値をとる。
この補正圧力P1´、P2´は、差圧検出手段8a″″に戻され、この補正圧力P1´、P2´とポンプ吐出圧の検出値Ppを用いて差圧ΔP1、ΔP2がそれぞれ求められ、これらが第1の補正係数演算手段8bに出力される。以下、第1の補正係数演算手段8bでは、補正係数K1、K2が演算され、この補正係数K1、K2が操作量補正手段8dに出力され、この操作量補正手段8dから駆動指令S1、S2が生成、出力される。
このように、軽負荷圧側であるブーム側の補正圧力P1´は、実際の検出圧力P1よりも小さく、つまり、より軽負荷なものと仮想されて、差圧ΔP1が求められる。したがって、差圧ΔP1としては、より大きな値をとることになり、補正係数K1は、より小さな値をとることになる。よって、ブーム側の流量制御弁4に出力される駆動指令S1は、より小さな値をとることにより、流量制御弁4の開口面積A1は、より絞られ、軽負荷側の駆動軸に流れる流量は、より制限されることになる。一方、高負荷側であるアーム側の補正圧力P2´は実際の検出圧力P2と同じで、補正係数K1は1.0のままであるので、高負荷側の駆動軸には流量が多く流れることになる。
このように、上記構成によれば、軽負荷側の駆動軸に関して、ポンプ吐出圧Ppとの差圧を、実際の差圧よりも大きくなるように補正するようにしているので、低負荷圧側の流量制御弁の開口面積を、より絞り、流量を、より制限することができるとともに、その分だけ、高負荷側の流量を、より多く流すことができるという過補償の作用がもたらされる。
たとえば、ブーム上げと旋回とを同時に操作してダンプへの積込み作業を行う場合に、上記構成の制御を適用することができる。掘削位置から放土位置までの旋回角が90度の場合に、旋回側を過補償すると、旋回体側の操作レバーによる微操作性が向上するとともに、ブームをきわめて速く上昇させることができるようになり、オペレータの望む操作感覚に合致させることができ、作業効率を向上させることができる。また、掘削位置から放土位置までの旋回角が180度の場合に、ブーム側を過補償すると、ブームの操作レバーによる微操作性が向上するとともに、旋回体をきわめて速く動かせることができるようになり、オペレータの望む操作感覚に合致させることができ、作業効率を向上させることができる。
上記構成では、最大圧Pmaxを示す駆動軸の種類に応じて、過補償とすべき駆動軸を選択するようにしている。
次ぎに、作業の目的に応じて、過補償にすべき駆動軸を指示、設定する本発明の実施形態を説明する。
図19は、これを実現する制御ブロック図である。
同図19に示すように、過補償補正手段8e´には、差圧検出手段8a″″´を介してポンプ吐出圧Pp、検出負荷圧P1,P2が入力されており、現在のポンプ吐出圧Ppに対応する補正ゲインGpが記憶テーブルから読み出され、これがモード選択スイッチ32に入力される。
このモード選択スイッチ32は、作業種類を示す作業モードを選択するスイッチであり、選択された作業モードに応じて過補償すべき駆動軸が切り換えられる。たとえば、作業モードとして、第1の作業モードを選択すると、モード選択スイッチ32は上側に切り換えられ、補正ゲインG1=1,補正ゲインG2=Gpが出力される。また、他の第2の作業モードを選択すると、モード選択スイッチ32は下側に切り換えられ、補正ゲインG1=Gp,補正ゲインG2=1が出力される。
よって、第1の作業モードが選択されると、モード選択スイッチ32から出力された補正ゲインG1=1,補正ゲインG2=Gp(<1)が、それぞれ検出負荷圧P1,P2に乗算され、補正圧力P1´、P2´として、差圧検出手段8a″″´に戻される。以下、図18に示す制御ブロック図と同様の演算処理が実行されることになる。
この結果、差圧ΔP2が実際の差圧よりも大きく求められることになり、流量制御弁5の開口面積A2は、より絞られ、アーム側に流れる流量は、より制限されることになる。一方、ブーム側の補正圧力P1´は実際の検出圧力P1と同じであり、差圧ΔP1は実際の差圧と同じであるので、補正係数K1は1.0のままとなり、ブーム側には流量が多く流れることになる。
このように本実施形態では、第1の作業モードが選択されたならば、アーム側の圧力P2の方がブーム側の圧力よりも低い、軽負荷であると仮定して、アーム側の過補償制御がなされることになる。一方、逆に第2の作業モードが選択されたならば、ブーム側の圧力P1の方がアーム側の圧力よりも低い、軽負荷であると仮定して、ブーム側の過補償制御がなされる。
さて、上述した実施形態では、圧力の過補償を行う方法として、第1の補正係数演算手段8bに入力される差圧を、実際に検出される差圧よりも大きめに補正しておく方法について説明したが、つぎに、第1の補正係数演算手段8bで演算、出力される補正係数を、小さめに求めておく他の方法について説明する。
図20は、この方法を実施するための制御ブロック図である。
同図20に示すように、過補償補正手段8e″には、第1の補正係数演算手段8bから出力された補正係数K1,K2が入力される。そこで、この入力された補正係数K1、K2がそれぞれn乗(n≧2)され、これが新たな補正係数K1´、K2´として操作量補正手段8dに出力される。そして、この操作量補正手段8dから駆動指令S1、S2がそれぞれ生成出力される。
このように過補償補正手段8e″では、補正係数K1、K2をn乗することにより、補正係数K1、K2が小さな値を示すほど、つまり軽負荷圧になっている駆動軸ほど、より小さな値になるように補正している。
たとえば、n乗を3乗とし、ブーム側が高負荷側であるとすると、ブーム側の補正係数K1は1であり、これを3乗したとしても、新たな補正係数K1´は1のままとなる。これに対して軽負荷側であるアーム側の補正係数K2が0.8であるとすると、これを3乗した結果は、0.512となる。新たな補正係数K2´が0.512となり、元の0.8に較べて、より小さな値となるので、アーム側の流量制御弁5の開口面積A2は、より絞られることになり、過補償が有効に実現されているのがわかる。
また、n=2の場合には、第1の補正係数演算手段8bで演算、出力されたK1=√(ΔPmin/ΔP1)、K2=√(ΔPmin/ΔP2)を、過補償補正手段8e″であらためて2乗して、K1´=ΔPmin/ΔP1、K2´=ΔPmin/ΔP2を求めることになるので、第1の補正係数演算手段8bで、最初から、K1´=ΔPmin/ΔP1、K2´=ΔPmin/ΔP2を演算しておき、これをそのまま操作量補正手段8dに出力させてもよい。
また、過補償補正手段8e″´を図21に示すように構成してもよい。
すなわち、同図21に示す過補償補正手段8e″´では、油圧ポンプ1の吐出圧Ppと補正係数K1、K2の上限を制限するリミットKLとの対応関係が、記憶テーブルに予め記憶されている。そこで、現在の油圧ポンプ1の吐出圧Ppに対応する補正係数上限値KLがこの記憶テーブルから読み出される。モード選択スイッチ32は、この補正係数上限値KLにより補正係数の上限を制限すべき駆動軸を選択するものであり、記憶テーブルから読み出された補正係数上限値KLと、モード選択スイッチ32で選択された駆動軸側の補正係数、たとえばK1との大小比較が行われ、小さい方の値が、新たな補正係数K1´として出力される。よって、補正係数K1´は、元のK1に較べてより小さくなるように補正されることになり、ブーム側の流量制御弁4の開口面積A1は、より絞られるようになり、過補償が実現される。他方の補正係数K2は、1と大小比較がなされるので、補正係数K2´は、元の補正係数K2の値のままとなる。
また、図22に示すように過補償補正手段8e″″を構成してもよい。
同図22に示すように、この過補償補正手段8e″″には、操作レバー6、7の操作量V1,V2が入力される。また、操作レバー6、7の操作量V1、V2のうちで選択された操作量Vと、補正係数上限値KLとの対応関係を示す記憶テーブルが設定されている。上記選択操作量Vは、モード選択スイッチ32の選択操作に連動して、操作レバー6、7の操作量V1、V2の中から選択される。
モード選択スイッチ32で第1の作業モードが選択され、上側に切り換えられると、選択操作量Vとしてブーム用操作レバー6の操作量V1が選択されるとともに、モード選択スイッチ32からアーム側の補正係数K2の上限値を制限する補正係数上限値KLが出力されることになる。この場合には、ブーム用操作レバー6の操作量Vが大きくなるに伴い、他の駆動軸であるアーム側の流量制御弁5の開口面積A2が、より多く絞られる。そして、ブーム側の流量はより増大することになる。
一方、モード選択スイッチ32で第2の作業モードが選択され、下側に切り換えられると、選択操作量Vとしてアーム操作レバー7の操作量V2が選択されるとともに、モード選択スイッチ32からブーム側の補正係数K1の上限値を制限する補正係数上限値KLが出力されることになる。この場合には、アーム用操作レバー7の操作量Vが大きくなるに伴い、他の駆動軸であるブーム側の流量制御弁4の開口面積A1が、より多く絞られる。そして、アーム側の流量はより増大することになる。
なお、以上説明した実施形態では、油圧ショベルのような建設機械を想定して説明したが、もちろん任意の油圧駆動機械に適用可能である。また、主に、ブーム、アームといった2つの作業機の制御に適用されることを想定したが、3以上の作業機に適用することも当然可能である。
また、油圧アクチュエータとして、主に油圧シリンダを想定して説明したが、旋回体駆動用、走行用などに用いる油圧モータに対しても同様に本発明は適用可能である。