JP5309649B2 - ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関し、より詳しくは、バイオマス由来の原料を使用したポリアミド樹脂組成物に関する。
近年、バイオマス由来の原料を使用したポリアミド樹脂(56ナイロン)が製造されている。56ナイロンは、66ナイロン等とほぼ同等の機械物性を有する。バイオマス由来の原料を使用したポリアミド樹脂を用いた例として、特許文献1に、ジカルボン酸単位と、ペンタメチレンジアミン単位を含むジアミン単位とを構成成分とするポリアミド樹脂を含有するポリアミドフィルムが記載されている。
特開2007−138047号公報
ところで、一般にポリアミド樹脂は、その特性を利用して、耐熱老化性が要求される部品等の用途に広く使用されている。
しかし、バイオマス由来の原料を使用したポリアミド樹脂は、例えば、石化原料から合成される66ナイロン等と比べ、ハロゲン化銅等の熱安定剤を配合した場合であっても、耐熱老化性が不十分であることが判明している。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、バイオマス由来の原料を使用し、且つ耐熱老化性が改良されたポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
そこで本発明者は鋭意検討の結果、バイオマス由来の原料を使用したポリアミド樹脂に含まれる硫黄がポリアミド樹脂の耐熱老化性に影響を与えることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
かくして本発明によれば、ペンタメチレンジアミンとジカルボン酸とを主な単量体成分として用いる重縮合反応により得られるポリアミド樹脂とハロゲン化第一銅とを含み、単量体成分中の硫黄の合計含有量が1.2重量ppm以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物が提供される。
ここで、本発明のポリアミド樹脂組成物は、重縮合反応に用いられる単量体成分中のアミノ酸の合計含有量が100重量ppm以下であることが好ましい。
また、重縮合反応に用いられる単量体成分中のメチオニンの合計含有量が5重量ppm以下であることが好ましい。
さらに、重縮合反応に用いられる単量体成分の一つであるジカルボン酸が、アジピン酸であることが好ましい。
次に、重縮合反応に用いられる単量体成分の一つであるペンタメチレンジアミンは、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞または細胞の処理物を使用し、リジンから産出されたものであることが好ましい。
また、ペンタメチレンジアミンを産出する際に用いるリジンは、グルコースを発酵させて得られたものであることが好ましい。
尚、ペンタメチレンジアミンは、グルコースを発酵させ、直接得てもよい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ハロゲン化第一銅に由来する銅の含有量が5重量ppm〜500重量ppmであることが好ましい。
また、ハロゲン化第一銅に由来する銅の含有量と重縮合反応に用いられる単量体成分中の硫黄の含有量との比(銅含有量/硫黄含有量)が30を超えることが好ましい。
また、ポリアミド樹脂を得る重縮合反応の重縮合触媒として燐含有化合物を用い、且つ重縮合触媒として用いられた燐含有化合物に由来する燐の含有量が1重量ppm〜90重量ppmであることが好ましい。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、強化材5重量部〜150重量部をさらに含むことが好ましい。
この場合、強化材が、ガラス繊維であることが好ましい。
本発明によれば、バイオマス由来の原料を使用し、且つ耐熱老化性が改良されたポリアミド樹脂等が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(ポリアミド樹脂)
本実施の形態で使用するポリアミド樹脂は、ペンタメチレンジアミンに由来する構造単位を少なくとも含む構造を有する。
さらに、本実施の形態において、ポリアミド樹脂は、ペンタメチレンジアミンを含む脂肪族ジアミンとジカルボン酸とを単量体成分とし、これらを用いた重縮合反応により得られたものであることが好ましい。
(ペンタメチレンジアミン)
本実施の形態において、単量体成分である脂肪族ジアミン中のペンタメチレンジアミンの濃度は、通常、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
ここで、ペンタメチレンジアミン(1,5−ジアミノペンタン)以外の他の脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。
本実施の形態において、ペンタメチレンジアミンは、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞または当該細胞の処理物を使用してリジンから産出される方法が挙げられる。
ポリアミド樹脂の単量体成分として、このようなペンタメチレンジアミンを用いることにより、ポリアミド樹脂の単量体成分に占めるバイオマス由来原料の割合(バイオマス比率)を高くすることができる。
本実施の形態では、ポリアミドにおけるバイオマス比率が2.51%以上であることが好ましい。バイオマス比率が2.51%以上の場合、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の発生を抑制する効果が得られる。
上記のペンタメチレンジアミンは、例えば、以下の方法によって製造される。即ち、リジンの酵素的脱炭酸反応は、リジン溶液に酸を加えることにより行われる。この場合、リジン溶液のpHが酵素的脱炭酸反応に適した範囲に維持されるように、リジン溶液に酸が加えられる。ここで、リジン溶液に加えられる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸等の有機酸が挙げられる。次に、酵素的脱炭酸反応により得られた反応生成液を通常の分離精製方法により処理することにより、遊離ペンタメチレンジアミンが採取される。
(ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩)
本実施の形態では、リジンの酵素的脱炭酸反応において、アジピン酸等のジカルボン酸を使用することにより、ポリアミドの単量体成分としてペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩を直接採取することができる。以下、酸としてアジピン酸を用いて、リジンの酵素的脱炭酸反応により、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を製造する方法について説明する。
原料として用いるリジンは、通常、遊離塩基(リジンベース)であることが好ましい。さらに、リジンはグルコースを発酵させて得られたものであることが好ましい。また、リジンのアジピン酸塩を原料として用いてもよい。酵素的脱炭酸反応によりペンタメチレンジアミンを生成するリジンとして、L−リジン、D−リジンが挙げられる。中でも、L−リジンが好ましい。また、リジンの形態としては、精製されたリジン、グルコースを含む合成培地を用いて生成したリジンを含む発酵液が挙げられる。但し、発酵液の場合は、酵素的脱炭酸反応により生成するペンタメチレンジアミンがアジピン酸と塩を形成することが可能であることが必要である。リジン溶液を調製する溶媒としては、好適には水が用いられる。
反応液のpHは、アジピン酸によって調整するため、一般に他のpH調整剤や緩衝剤を用いる必要はない。但し、前記溶媒として緩衝液を用いてもよい。このような緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液等が挙げられる。但し、ペンタメチレンジアミンとアジピン酸との塩を形成させるという点からは、緩衝剤等は用いないことが好ましく、たとえ用いる場合であっても低濃度に抑えることが好ましい。
リジンとして遊離リジンを用いる場合は、リジン溶液にアジピン酸を加えて酵素的脱炭酸反応に適したpHとなるように調整する。具体的には、pHとしては、通常4以上、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上で、通常8以下、好ましくは7以下、より好ましくは6.5以下が挙げられる。なお、リジンとして、リジンのアジピン酸塩を用いる場合は、反応液調製時にアジピン酸を加える必要はない。以下、このように、反応液のpHを酵素的脱炭酸反応に適したpHに調整することを「中和」と称す場合がある。
リジンの酵素的脱炭酸反応は、例えば、上記のようにして中和されたリジン溶液にリジン脱炭酸酵素(LDC)を添加することによって行うことができる。LDCとしては、リジンに作用してペンタメチレンジアミンを生成させるものであれば特に制限はない。LDCとしては、精製酵素を用いてもよく、LDCを産生する微生物、植物細胞又は動物細胞等の細胞を用いてもよい。LDC又はそれを産生する細胞は、1種でもよく、2種以上の混合物であってもよい。また、細胞をそのまま用いてもよく、LDCを含む細胞処理物を用いてもよい。細胞処理物としては、細胞破砕液、及びその分画物が挙げられる。
前記微生物としては、E.coli等のエシェリヒア属細菌、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)等のコリネ型細菌、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)等のセラチア属細菌等の細菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の真核細胞が挙げられる。これらの中では細菌、特にE.coliが好ましい。
前記微生物は、LDCを産生する限り、野生株でもよく、変異株であってもよい。また、LDC活性が上昇するように改変された組換え株であってもよい。植物細胞又は動物細胞も、LDC活性が上昇するように改変された組換え細胞を用いることができる。
リジン溶液にLDCを添加して反応を開始した後は、反応の進行に伴い、リジンから遊離される炭酸ガスが反応液から放出され、pHが上昇する。従って、反応液のpHが前記範囲となるように、アジピン酸を反応液に添加する。アジピン酸は連続的に添加してもよく、pHが前記範囲に維持される限り、分割して添加してもよい。反応条件は、LDCがリジンに作用してペンタメチレンジアミンを生成させる条件であれば特に制限されず、濃度は、通常20℃以上、好ましくは30℃以上、通常60℃以下、好ましくは40℃以下で行う。
原料のリジン又はリジン・アジピン酸塩は、反応開始時に反応液に全量添加してもよく、LDC反応の進行に応じて、分割して添加してもよい。
酵素反応は、バッチ式によって行うと、アジピン酸の添加を容易に行うことができる。また、LDC、LDCを産生する細胞又はその処理物を固定化した担体を用いた移動床カラムクロマトグラフィーによって、反応を行うこともできる。その場合は、反応系のpHが所定の範囲に維持されたまま反応が進行するように、リジン及びアジピン酸をカラムの適当な部位に注入すればよい。
上記のようにして、リジンの酵素的脱炭酸反応によるペンタメチレンジアミン生成に伴って上昇するpHを、アジピン酸を用いて逐次中和することにより、酵素反応が良好に進行する。このようにして生成するペンタメチレンジアミンは、アジピン酸塩として反応液中に蓄積する。
LDC反応により得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩は、反応液から公知の方法を組み合わせることによって単離、精製することができる。例えば、反応液をオートクレーブ等により殺菌した後、遠心分離により上清を回収し、活性炭等を用いて上清を脱色し、適宜濃縮する。ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩は、使用態様に応じて、溶液のままであってもよく、結晶であってもよい。ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の結晶は、例えば、濃縮した反応液を冷却することによりペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を析出させることによって、形成させることができる。上記のようにして得られる結晶は、ペンタメチレンジアミンとアジピン酸を等モルで含んでいるため、ポリアミド製造の原料として好適であり、必要に応じて乾燥して使用することができる。
本実施の形態において、LDC反応により得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩は、晶析又は蒸留により、反応液から単離・精製することが好ましい。リジンの酵素的脱炭酸反応により得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を、晶析又は蒸留により反応液から単離・精製することによって、不純物として混入しているアミノ酸等の濃度を低減させることができる。また、アミノ酸のなかでも、メチオニン、システイン、シスチン等の含硫アミノ酸の濃度を低減させ、これらの含硫アミノ酸に由来する硫黄含有量を低減させることができる。
ここで、本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂組成物において、重縮合反応に用いられる単量体成分中のアミノ酸の、ポリアミド樹脂組成物に含まれる含有量が100重量ppm以下、好ましくは、50重量ppm以下、さらに好ましくは、10重量ppm以下に低減させることが好ましい。重縮合反応に用いられる単量体成分中のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン等のモノアミノジカルボン酸;リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン等のジアミノモノカルボン酸等が挙げられる。
さらに、重縮合反応に用いられる単量体成分中のアミノ酸の中でも、メチオニン、システイン、シスチン等の含硫アミノ酸のポリアミド樹脂組成物に含まれる含有量を低減させることが好ましい。この場合、ポリアミド樹脂を得るための単量体成分であるペンタメチレンジアミンにおいて、特に、重縮合反応に用いられる単量体成分中のメチオニンの含有量を5重量ppm以下、好ましくは、3重量ppm以下、さらに好ましくは、1重量ppm以下に低減させることが好ましい。かかるメチオニンの含有量が低減されたペンタメチレンジアミンとジカルボン酸とを単量体成分とした重縮合反応により、発酵法において混入した不純物が低減されたポリアミド樹脂が得られる。
また、本実施の形態において、重縮合反応に用いられる単量体成分中のメチオニン、システイン、シスチン等の含硫アミノ酸が低減されることにより、これらの含硫アミノ酸に由来する硫黄の、ポリアミド樹脂組成物中の含有量を、1.2重量ppm以下、好ましくは、1.1重量ppm以下、さらに好ましくは、1.0重量ppm以下に低減させることができる。
含硫アミノ酸に由来する硫黄の、ポリアミド樹脂組成物中の含有量を低減させることにより、硫黄の含有量が過度に多い場合と比較して、ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を向上させることができる。
(晶析法)
以下に、リジンの酵素的脱炭酸反応により得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を、晶析により反応液から単離・精製する一例について説明する。
通常、リジンの酵素的脱炭酸反応により得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液は着色しているため、晶析前に脱色することが好ましい。脱色剤としては活性炭、合成吸着剤、活性白土、シリカ、ゼオライト等が挙げられ、中でも活性炭が好ましい。
脱色後のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液は、窒素バブリングにより溶存酸素を追い出した後、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩濃度が50重量%〜69重量%、好ましくは60重量%〜67重量%まで濃縮する。ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩濃度が過度に小さいと、晶析後の収率が低下し、過度に大きいと、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩に混入するアミノ酸等の不純物濃度が高くなる傾向がある。
濃縮は、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の温度50℃〜70℃、減圧度150Torr以下で行うのが好ましい。温度が過度に低いと、濃縮時間が長くなり、温度が過度に高いと、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩が分解するので好ましくない。また、減圧度が150Torrを超えると濃縮時間が長くなるので好ましくない。
晶析は、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を冷却してペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を析出させて行われる。種晶の添加は、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を冷却する降温途中で行うことが好ましい。種晶は、析出するペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩が好ましい。但し、種晶としての効果が得られればそれに限定されない。
冷却時の降温速度は、通常1℃/hr以上、好ましくは2℃/hr以上、さらに好ましくは3℃/hr以上、又通常30℃/hr以下、好ましくは20℃/hr以下、さらに好ましくは10℃/hr以下である。降温速度が過度に遅いと、晶析に長時間を要する。降温速度が過度に早いと、結晶サイズが小さくなる傾向にあり、精製度合いが低下する方向であり好ましくない。
晶析終了温度は、通常1℃以上、好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上、又通常30℃以下、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。晶析終了温度が過度に高いと、収率が低下する傾向がある。晶析終了温度が過度に低いと、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーを移送時に配管が閉塞しやすくなるので好ましくない。
晶析率は、濃縮液のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩濃度と晶析終了温度により適宜決定される。通常、晶析率は1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、又通常46重量%以下、好ましくは39重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下に制御することが好ましい。晶析率が過度に低いと、収率が低下する傾向がある。晶析率が過度に高いと、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩に混入する不純物濃度が高くなる傾向がある。
晶析後のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーは、常法に従い、固液分離して結晶として得られる。例えば、遠心濾過を行う場合は、母液を振り切った後に、遠心濾過器が回転している状態で少量の脱塩水をシャワー状にふりかけ、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩に付着している母液をさらに洗い流すと精製度が上がり好ましい。
脱塩水量は、wetケーキ(若干の水を含んだペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩)に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、又通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。脱塩水量が過度に少ないと、洗浄効果が小さくなる傾向がある。脱塩水量が過度に多いと、収率が低下する傾向がある。このようにして得られた結晶を1番晶と称する。
固液分離後の母液や洗浄液は回収して、再度、濃縮、晶析、固液分離を行い、2番晶を得る。同様にして、3番晶、4番晶等を得ることができる。
前述した1番晶を1回晶析品とすると、これを再度脱塩水に溶解し、濃縮、晶析、ふりかけ洗浄及び固液分離を行うことにより、より精製度の高い2回晶析品を得ることができる。同様にして、さらに精製度の高い3回晶析品、4回晶析品も得ることができる。
(蒸留)
次に、リジンの酵素的脱炭酸反応により得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を、蒸留により反応液から単離・精製する一例について説明する。
本実施の形態では、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液にアルカリを添加・混合してペンタメチレンジアミンを遊離させ、その後、(1)溶媒で抽出した上で蒸留する方法、(2)そのまま蒸留する方法、が挙げられる。
(1)の方法の具体例としては、例えば、特開2004−000114号公報に記載された方法が挙げられる。また、(2)の方法を用いる場合は、蒸留に先立って脱水蒸留を行い、アジピン酸のアルカリ塩を析出・分離しておくことが好ましい。
(ジカルボン酸)
次に、本実施の形態において、ポリアミド樹脂を得るために使用する単量体成分としてのジカルボン酸の具体例は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。また、ジカルボン酸としてアジピン酸を用いる場合、ジカルボン酸中のアジピン酸の濃度は、通常、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
さらに、本発明により得られる効果を損なわない程度において、他の単量体成分を用いることができる。このような他の単量体成分としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
(重縮合方法)
本実施の形態において、脂肪族ジアミン及びジカルボン酸の重縮合方法は特に限定されず、従来公知の方法から適宜選択することが出来る。重縮合方法の一例としては、例えば、脂肪族ジアミン及びジカルボン酸を含む水溶液を高温高圧下で、脱水反応を進行させる加熱重縮合法;脂肪族ジアミン及びジカルボン酸を加圧加熱下で重縮合して得られた低次縮合物(オリゴマー)を高分子量化する方法;脂肪族ジアミンを溶解した水溶液と、ジカルボン酸塩を水性溶媒又は有機溶媒に溶解させた溶液とを接触させ、これらの界面で重縮合反応させる界面重縮合法等が挙げられる。
本実施の形態では、脂肪族ジアミン及びジカルボン酸の重縮合方法としては、化学工業的な観点から加熱重縮合法が好ましい。加熱重縮合法により脂肪族ジアミン及びジカルボン酸を重縮合する場合、脂肪族ジアミンとジカルボン酸とを反応させたジカルボン酸塩を調製し、脱塩水の存在下でこのジカルボン酸塩を加熱し、脱水反応を進行させる方法が好ましい。この方法で得られたポリアミドは、加熱重縮合後、さらに固相重縮合することによって、分子量を上昇させることが可能である。固相重縮合は、例えば、100℃〜当該樹脂の融点の温度範囲で、真空中又は不活性ガス中で加熱することにより行われる。
(重縮合触媒)
本実施の形態において、脂肪族ジアミン及びジカルボン酸の重縮合反応は、重縮合触媒として下記式(1)で表される燐含有化合物と脱塩水とを用いて行われることが好ましい。
PO 式(1)
(但し、式(1)中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。X及びYは、式(1)の化合物が全体として電気的に中性となり、かつ、X+Y=3を満たす0〜3の整数である。Zは2〜4の整数である。)
式(1)で表される燐含有化合物としては、燐酸水素塩類が好ましい。また、燐含有化合物として、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が含まれる。
また、燐酸種としては、正燐酸、亜燐酸または次亜燐酸が挙げられる。
本実施の形態において、式(1)で表される燐含有化合物の中でも、ナトリウム塩が最も好ましい。具体例としては、例えば、亜燐酸1水素2ナトリウム塩5水和物(NaHPO)、亜燐酸2水素1ナトリウム塩2.5水和物(NaHPO)等が挙げられる。
さらに、ナトリウム塩の場合、(Na原子数)/(P原子数)が0.1以上が好ましく、1以上がより好ましく、2以上が特に好ましい。具体的には、X=1又は2、Y=2又は1、Z=2又は3若しくは4であるナトリウム塩が好ましく、中でもX=2、Y=1、Z=2又は3若しくは4であるナトリウム塩がより好ましく、特に、NaHPOが最も好ましい。
重縮合触媒として使用される式(1)で表される燐含有化合物の使用量は、単量体成分の総重量に対し、燐原子換算で1重量ppm〜90重量ppm、好ましくは5重量ppm〜50重量ppm(以下、wt−ppmと記すことがある。)である。燐含有化合物の使用量が過度に少ないと、重縮合反応が促進しない傾向がある。燐含有化合物の使用量が過度に多いと、得られるポリアミド樹脂の強度や透明性が損なわれる傾向がある。
また、式(1)で表される燐含有化合物と併せて使用する脱塩水の使用量は、通常、単量体成分に対し、1重量%〜200重量%、好ましくは50重量%〜150重量%の割合である。脱塩水の使用量が過度に少ない場合、及び過度に多い場合、脂肪族ジアミン及びジカルボン酸の重縮合反応における反応速度が低下することがある。
本実施の形態において、式(1)で表される燐含有化合物を含む重縮合触媒を使用して脂肪族ジアミン及びジカルボン酸を重縮合することにより、得られたポリアミド樹脂中に、式(1)で表される燐含有化合物に由来する燐化合物が含まれる。
かかるポリアミド樹脂における、式(1)で表される燐含有化合物に由来する燐化合物の含有量は、燐原子換算で1重量ppm〜90重量ppm、好ましくは、3重量ppm〜50重量ppmの範囲である。
このように、式(1)で表される燐含有化合物を含む重縮合触媒を使用して脂肪族ジアミン及びジカルボン酸を重縮合することにより、得られたポリアミド樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。
本実施の形態において、脂肪族ジアミン及びジカルボン酸の重縮合により得られるポリアミドの分子量は特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。実用性の観点から、通常、ポリアミドの25℃における98%硫酸溶液(ポリアミド濃度:0.01g/ml)の相対粘度の下限が、通常1.5以上、好ましくは1.8以上、特に好ましくは2.2以上であり、上限は、通常8.0以下、好ましくは5.0以下、特に好ましくは3.5以下である。相対粘度が過度に小さいと実用的強度が得られない傾向がある。相対粘度が過度に大きいと、ポリアミドの流動性が低下し、成形加工性が損なわれる傾向がある。
(ポリアミド樹脂組成物)
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂組成物には、熱安定剤としてハロゲン化第一銅が含まれる。
ここで、ハロゲン化第一銅としては、例えば、ヨウ化第一銅、臭化第一銅、塩化第一銅等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂の熱安定性の点で、ヨウ化第一銅、塩化第一銅が好ましい。ハロゲン化第一銅は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド樹脂組成物に配合されるハロゲン化第一銅の配合量は、銅原子に換算した含有量として、通常5重量ppm以上、好ましくは20重量ppm以上、特に好ましくは80重量ppm以上であり、上限は、通常500重量ppm以下、好ましくは300重量ppm以下、特に好ましくは150重量ppm以下である。
ここで、ポリアミド樹脂組成物に配合されるハロゲン化第一銅の配合量は、ハロゲン化第一銅に由来する銅の含有量と重縮合反応に用いられる単量体成分中の硫黄の含有量との比(銅含有量/硫黄含有量)が30を超えるように、好ましくは、40以上、さらに好ましくは50以上となるようにポリアミド樹脂組成物に配合されることが好ましい。
銅含有量が過度に少ないと、耐熱老化性が低下する傾向がある。
また、本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂組成物は、上記ハロゲン化第一銅に加え、ハロゲン化アルカリ金属塩を含むことにより、耐熱老化性がさらに向上する。
ハロゲン化アルカリ金属塩としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、ヨウ化カリウムの使用が好ましい。ハロゲン化アルカリ金属塩はそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハロゲン化アルカリ金属塩の配合量は、下限が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、上限は、通常、1重量%以下、好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.2重量以下である。
(強化材)
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂組成物に強化材を配合することにより、ポリアミド樹脂組成物の実用的強度をさらに向上させることができる。
強化材の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、下限は、通常5重量部以上、好ましくは20重量部以上、特に好ましくは40重量部以上であり、上限は、通常150重量部以下、好ましくは120重量部以下、特に好ましくは100重量部以下である。強化材の配合量が過度に多いと、ポリアミド樹脂組成物の流動性が低下する傾向がある。
このような強化材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、窒化硼素、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、が挙げられる。これらの中でも、補強効果が高いガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維としては、通常、熱可塑性樹脂に配合される公知のガラス繊維が使用でき、なかでも、Eガラス(無アルカリガラス)から製造されるチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維の繊維径は、通常、1μm〜20μm、好ましくは、5μm〜15μmである。また、ガラス繊維は、ポリアミド樹脂との接着性を向上させるために、シランカップリング剤等により表面処理されていることが好ましい。
(添加剤)
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂には、必要に応じて、各種の添加剤が配合される。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、他の重縮合体等が挙げられる。
具体的には、酸化防止剤又は熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物及びこれらの置換体等が挙げられる。耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。離型剤又は滑剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素、ポリエチレンワックス等が挙げられる。顔料としては、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等が挙げられる。染料としては、ニグロシン、アニリンブラック等が挙げられる。結晶核剤としては、タルク、シリカ、カオリン、クレー等が挙げられる。可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等が挙げられる。難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が挙げられる。充填剤としては、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、針状、板状充填材が挙げられる。他の重合体としては、他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。これらは、ポリアミド樹脂を製造する工程において、添加量、添加工程等が適宜選択され、添加すればよい。
本実施の形態において、ポリアミド樹脂の重縮合から成形までの任意の段階で、ポリアミド樹脂組成物に添加剤、強化材を配合することができる。中でも、ポリアミド樹脂と添加剤、強化材とを押出機中に投入し、これらを溶融混練することにより、ポリアミド樹脂組成物を調製することが好ましい。
また、本実施の形態のポリアミド樹脂は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、ブロー成形、真空成形等の任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。成形品としては、例えば、射出成形品、フィルム、シート、フィラメント、テーパードフィラメント、繊維等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂は、接着剤、塗料等にも使用することができる。
さらに、本実施の形態のポリアミド樹脂の具体的な用途例としては、自動車・車両関連部品として、例えば、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成形品)、結束バンド、レゾネーター、エアークリーナー、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナー、キャニスター、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、コネクター、コルゲートチューブ、プロテクター等の自動車用アンダーフード部品;ドアハンドル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレールレグ、ドアミラーステー、バンパー、スポイラー、ホイールカバー等の自動車用外装部品;カップホルダー、コンソールボックス、アクセルペダル、クラッチペダル、シフトレバー台座、シフトレバーノブ等の自動車用内装部品が挙げられる。
また、本実施の形態のポリアミド樹脂は、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、コネクタ、コネクタのハウジング、コネクタのシェル、ICソケット類、コイルボビン、ボビンカバー、リレー、リレーボックス、コンデンサーケース、モーターの内部部品、小型モーターケース、ギヤ・カム、ダンシングプーリー、スペーサー、インシュレーター、キャスター、端子台、電動工具のハウジング、スターターの絶縁部分、ヒューズボックス、ターミナルのハウジング、ベアリングリテーナー、スピーカー振動板、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途に使用することができる。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において使用したポリアミド樹脂とその単量体成分、ポリアミド樹脂組成物の評価方法は以下の通りである。
(1)ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩中の硫黄含有量、アミノ酸含有量、メチオニン含有量
重縮合反応に使用する単量体成分であるペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩中の硫黄含有量、アミノ酸含有量、メチオニン含有量は、アミノ酸分析計(株式会社日立製作所製L−8900)を用いて測定した。
先ず、試料を水に溶かし所定の濃度の水溶液とし分析試料とした。分析条件は、生体アミノ酸分離条件、分析法はニンヒドリン発色法(570nm、440nm)とした。標準品には、アミノ酸混合液(和光純薬工業株式会社製ANII型及びB型)を希釈したものを用い、試料注入量は10μLとした。定量計算として、Proは440nm、他のアミノ酸は570nmのピーク面積から一点外部標準法にてアミノ酸の含有量を算出した(単位:重量ppm)。
ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩中の硫黄の含有量は、得られた含硫アミノ酸の測定値に基づき算出した(単位:重量ppm)。
(2)相対粘度(η
ポリアミド樹脂の相対粘度(η)は、ポリアミド樹脂の98%硫酸溶液(濃度:0.01g/ml)を調製し、25℃で、オストワルド式粘度計を使用して測定した(単位:dl/g)。
(3)燐化合物の含有量の分析
ポリアミド樹脂に含まれる燐化合物の含有量は、ポリアミド樹脂を、硫酸−硝酸で湿式分解し、その後、ICP質量分析法により測定した燐原子量として求めた(単位:重量ppm)。
(4)ポリアミド樹脂組成物の調製
燐含有化合物を含む重縮合触媒を用いたペンタメチレンジアミン及びアジピン酸の重縮合により調製したポリアミド樹脂に、後述する表1に示す組成で、塩化第1銅(関東化学株式会社製)、ガラス繊維(日本電気硝子株式会社製T249H)を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
ポリアミド樹脂組成物の調製には、二軸混練機(東芝機械株式会社製:TEM−35B型二軸混練機)を用いた。設定温度は、実施例1、実施例3及び比較例1は270℃であり、実施例2、実施例4及び比較例2は280℃である。尚、ガラス繊維は折損抑制のためサイドフィードした。
(5)耐熱老化試験
後述する表1に示す配合組成のポリアミド樹脂組成物を使用し、それぞれISO規格に準じ、射出成形機(日本製鋼所株式会社社製:J75EII型射出成形機)を使用してISO試験片を成形した。
ガラス繊維を配合した実施例2、実施例4及び比較例2の場合、射出成形機の樹脂温度は270℃、金型温度は80℃である。ガラス繊維を配合しない実施例1、実施例3及び比較例1の場合は、射出成形機の樹脂温度は265℃、金型温度は80℃である。
得られたISO試験片を使用し、それぞれISO規格に準じ、120℃×1,000時間放置後の試験片の引張り強さの、放置前の試験片の引張り強さに対する割合を求めた。数値が大きいほど、耐熱老化性が良好である(単位:%)。
(アスパルトキナーゼおよびホモセリンデヒドロゲナーゼへの変異導入株AL2作製)
<遺伝子破壊用ベクターの構築>
(A)枯草菌ゲノムDNAの抽出
LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1lに溶解]10mlに、枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214)を対数増殖期後期まで培養し、菌体を集めた。得られた菌体を10mg/mlの濃度のリゾチームを含む10mM NaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mlに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mlになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000×g、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)/1mM EDTA・2Na溶液5mlを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)PCRによるSacB遺伝子の増幅およびクローニング
枯草菌SacB遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、既に報告されている該遺伝子の塩基配列(GenBank Database Accession No.X02730)を基に設計した合成DNA(配列番号1および配列番号2)を用いたPCRによって行った。
(反応液組成)
鋳型DNA1μl、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン株式会社製) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。
(反応温度条件)
DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch株式会社製)を用い、94℃で20秒、68℃で2分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts株式会社)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造株式会社製)により5’末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いて大腸菌ベクター(pBluescriptII:STRATEGENE製)のEcoRV部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mlアンピシリンおよび50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g及び寒天15gを蒸留水1lに溶解]に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、次に50μg/mLアンピシリンおよび10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。SacB遺伝子が大腸菌内で機能的に発現する株は、ショ糖含有培地にて生育不能となるはずである。得られたプラスミドDNAを制限酵素SalIおよびPstIで切断することにより、約2kbの挿入断片が認められ、該プラスミドをpBS/SacBと命名した。
(C)クロラムフェニコール耐性SacBベクターの構築
大腸菌プラスミドベクターpHSG396(宝酒造株式会社:クロラムフェニコール耐性マーカー)500ngに制限酵素PshBI10unitsを37℃で一時間反応させた後、フェノール/クロロフォルム抽出およびエタノール沈殿により回収した。これを、クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝酒造株式会社製)により両末端を平滑化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いてMluIリンカー(宝酒造株式会社製)を連結、環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mlクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたクローンから常法によりプラスミドDNAを調製し、制限酵素MluIの切断部位を有するクローンを選抜し、pHSG396Mluと命名した。
一方、上記(B)にて構築したpBS/SacBを制限酵素SalIおよびPstIで切断した後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化した。これにライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いてMluIリンカーを連結したのち、0.75%アガロースゲル電気泳動によりSacB遺伝子を含む約2.0kbのDNA断片を分離、回収した。このSacB遺伝子断片を、制限酵素MluI切断後、アルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase Calf intestine:宝酒造株式会社製)にて末端を脱リン酸化したpHSG396Mlu断片とライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いて連結させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mlクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。こうして得られたコロニーを、次に34μg/mlクロラムフェニコールおよび10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法によりプラスミドDNAを精製した。こうして得られたプラスミドDNAをMluI切断により解析した結果、約2.0kbの挿入断片を持つことが確認され、これをpCMB1と命名した。
(D)カナマイシン耐性遺伝子の取得
カナマイシン耐性遺伝子の取得は、大腸菌プラスミドベクターpHSG299(宝酒造株式会社:カナマイシン耐性マーカー)のDNAを鋳型とし、配列番号3および配列番号4で示した合成DNAをプライマーとしたPCR法によって行った。反応液組成:鋳型DNA1ng、PyrobestDNAポリメラーゼ(宝酒造株式会社製)0.1μl、1倍濃度添付バッファー、0.5μM各々プライマー、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。
(反応温度条件)
DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch株式会社製)を用い、94℃で20秒、62℃で15秒、72℃で1分20秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts株式会社製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約1.1kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造株式会社製)により5’末端をリン酸化した。
(E)カナマイシン耐性SacBベクターの構築
上記(C)で構築したpCMB1を制限酵素Van91IおよびScaIで切断して得られた約3.5kbのDNA断片を0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。これを上記(D)で調製したカナマイシン耐性遺伝子と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
このカナマイシン含有培地上で生育した株は、ショ糖含有培地にて生育不能であることが確認された。また、同株から調製したプラスミドDNAは、制限酵素HindIII消化により354、473、1807、1997bpの断片を生じたことから、構造に間違いないと判断し、当該プラスミドをpKMB1と命名した。構築したpKMB1を制限酵素SalIで切断して得られた約4.6kbのDNA断片を0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。これを、クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝酒造株式会社製)により両末端を平滑化した後、EcoRV制限酵素サイトを含むリンカー(配列番号5)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いて連結した。得られたプラスミドをEcoRVで切断し、再び上記方法により連結し、このプラスミドをpKMB3と命名した。
(コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のアスパルトキナーゼ遺伝子変異株の作製)
<コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株アスパルトキナーゼ遺伝子のクローニング>
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032(以下ATCC13032)株のアスパルトキナーゼ遺伝子(以下lysC)の取得は、対象とする菌をATCC13032とすること以外上記(A)と同様の操作により調製したATCC13032のDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号6および配列番号7)を用いたPCRによって行った。
なお、反応液は、鋳型DNA1μlおよびPlatinum(登録商標)Pfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン株式会社製)0.2μlに、各プライマーが0.3μM、MgSOが1mM、デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTPs)が0.25μMとなるように、1倍濃度Pfx Amplification Buffer(インビトロジェン株式会社製)を加えて全量を20μlとすることにより調整した。また、反応温度条件としては、DNAサーマルサイクラー(MJResearch株式会社製PTC−200)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、68℃で1分からなるサイクルを35回繰り返した。ただし、1サイクル目は94℃で1分20秒の保温を行った。
得られたlysC遺伝子のDNA断片はフェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿による精製を行い、1.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することで約1.3kbのDNA断片を検出し、DNA Fragment Purification Kit MagExtractor(東洋紡績株式会社製)を用いてゲルから回収した。
このDNA断片を、大腸菌ベクターpT7Blueベクター(宝酒造株式会社製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/ml アンピシリンおよび50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを用いてオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号15および配列番号16)によるコロニーPCRを行った。鋳型DNAは、コロニーを50μlの滅菌水に研濁した後、5分間煮沸処理した上清とした。
(反応液組成)
鋳型DNA1μl、Ex−TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造株式会社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.2μM 各々プライマー、0.2μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。
(反応温度条件)
DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch株式会社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は4分とした。
これにより1286bpのPCR増幅産物を得る株を選抜し、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。lysC挿入断片の塩基配列は、アプライドバイオシステム社製塩基配列解読装置(モデルABI3130xl)およびビックダイターミネーターサイクルシークエンスキットver.3を用いて確認した。
<ATCC13032株アスパルトキナーゼ遺伝子変異導入用プラスミドの構築>
次に、上記シークエンス解析に基づき、クローニングしたlysC遺伝子の931番目から933番目のACC(Thr)をATC(Ile)に変異させるためにクロスオーバーPCRを行った。遺伝子前半部分を増幅させるオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号8および配列番号9)および後半部分を増幅させるオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号10および配列番号11)を合成し、増幅断片を鋳型としてPCRを行った。
得られた断片をエタノール沈殿によって精製し、これを鋳型としてオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号8および配列番号11)によって増幅させた。この断片を1.0%アガロース電気泳動により分離し、臭化エチジウム染色を用いて可視化することによりlysC遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片を検出し、ゲルから切り出してキットにより精製した。回収した断片はリン酸化を行い、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿による精製の後、プラスミドベクターpKMB1に制限酵素SacI、SphIで切断したDNA断片と混合し、ライゲーションキットver.2(タカラバイオ社製)を用いて連結した。
このようにして得られた変異導入用プラスミドを用いて大腸菌(DH5α)を塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した。この組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンおよび50μg/mL X−Galを含むLB寒天培地上で培養した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドをシークエンス解析により、1286kbの挿入断片が認められることを確認した。このプラスミドをpKMB1−lysCT311Iと命名した。
大腸菌JM110にpKMB1−lysCT311Iを、電気パルス法により導入した。この組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養した。培地上にコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。
<アスパルトキナーゼ遺伝子変異株の作製>
ATCC13032株にpKMB1−lysCT311Iを、電気パルス法により導入し、得られた形質転換体をカナマイシン 50μg/mlを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pKMB1−lysCT311IがATCC13032株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのlysC遺伝子とATCC13032株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されているはずである。
次に、上記相同組み換え株をカナマイシン50μg/mlを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。その結果、2回目の相同組み換えによりSacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株を約30個得た。
この様にして得られた株の中には、そのlysC遺伝子がpKMB1−lysCT311Iに由来する変異型に置き換わったものと野生型に戻ったものが含まれる。lysC遺伝子が変異型であるか野生型であるかの確認は、L−リジンとL−スレオニンによる協奏的フィードバック阻害が解除されたことによるS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性を指標に選択し、得られた変異株をAL1と命名した。
(コリネバクテリウム・グルタミカムAL1のhom遺伝子変異株の作製)
<ホモセリンデヒドロゲナーゼ(以下hom)遺伝子のクローニング>
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032(以下ATCC13032)ATCC13032株のホモセリン脱水素酵素(以下hom)遺伝子の取得は、対象とする菌をATCC13032とすること以外上記(A)と同様の操作により調製したATCC13032のDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号12および配列番号13)を用いたPCRによって行った。
なお、反応液は、鋳型DNA1μlおよびPlatinum(登録商標)Pfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μlに、各プライマーが0.3μM、MgSOが1mM、デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTPs)が0.25μMとなるように、1倍濃度Pfx Amplification Buffer(インビトロジェン社製)を加えて全量を20μlとすることにより調整した。また、反応温度条件としては、DNAサーマルサイクラー(MJResearch社製PTC−200)を用い、98℃で5秒、68℃で20秒からなるサイクルを30回繰り返した。ただし、1サイクル目の前に94℃で1分、最終サイクルの後に72℃で3分の保温を行った。
<hom遺伝子変異導入用プラスミドの構築>
次に、上記シークエンス解析に基づき、クローニングしたhom遺伝子配列の175番目から177番目の配列をGTT(Val)からGCT(Ala)に変異させるためにクロスオーバーPCRを行った。
遺伝子前半部分を増幅させるオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号12および配列番号14)および後半部分を増幅させるオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号15および配列番号13)を合成し、増幅断片を鋳型としてPCRを行った。得られた断片をエタノール沈殿によって精製し、これを鋳型としてオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号12および配列番号15)によって増幅させた。
この断片を1.0%アガロース電気泳動により分離し、臭化エチジウム染色を用いて可視化することによりhom遺伝子を含む約1.0kbのDNA断片を検出し、ゲルから切り出してキットにより精製した。回収した断片はリン酸化を行い、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿による精製の後、プラスミドベクターpKMB3に制限酵素EcoRVで切断したDNA断片と混合し、ライゲーションキットver.2(タカラバイオ社製)を用いて連結した。
このようにして得られた変異導入用プラスミドを用いて大腸菌(DH5α)を塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した。この組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンおよび50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地上で培養した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドをシークエンス解析により、約1.0kbの挿入断片が認められることを確認した。このプラスミドをpKMB3ALhom59と命名した。
大腸菌JM110にpKMB3ALhom59を、電気パルス法により導入した。この組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養した。培地上にコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。
<hom遺伝子変異株の作製>
コリネバクテリウム・グルタミカムAL1株にpKMB3ALhom59を電気パルス法により導入し、得られた形質転換体をカナマイシン 50μg/mlを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pKMB3ALhom59がATCC13032株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのhom遺伝子とATCC13032株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されているはずである。
次に、上記相同組み換え株をカナマイシン50μg/mlを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組み換えによりSacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株を約3個得た。
この様にして得られた株の中には、そのhom遺伝子がpKMB3ALhom59に由来する変異型に置き換わったものと野生型に戻ったものが含まれる。hom遺伝子が変異型であるか野生型であるかの確認は、変異導入箇所増幅用のオリゴヌクレオチドプライマー(配列16および配列17)およびHybridization probeを用いた融解曲線分析(ロシュ・ダイアグノスティック株式会社製ライトサイクラー1.5)による変異検出によって行った。この結果V59A変異が導入されたdouble crossover組換え体であることが確認された。こうして得られた変異株をAL2と命名した。
[リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増強株の作製]
次いで、後述するカダベリン塩酸塩水溶液の調製に用いるリジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増幅株の作製手順について説明する。
<大腸菌DNA抽出>
LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、塩化ナトリウム(NaCl)5gを蒸留水1Lに溶解]10mlに、大腸菌JM109株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体を、10mg/mlのリゾチームを含む10mMNaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mMエチレンジアミン四酢酸ジナトリウム(EDTA・2Na)水溶液0.15mlに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mlになるように加え、37℃で1時間保温した。更に、ドデシル硫酸ナトリウムを、最終濃度が0.5%になるように加え、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を加え、室温で10分間緩やかに振盪した後、全量を遠心分離(5000×g、20分間、10℃〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように加えた後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15000×g、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに、10mM トリス緩衝液(pH7.5)/1mM EDTA・2Na溶液5mlを加え、4℃で一晩静置し、後述のPCRの鋳型DNAとして使用した。
<cadAのクローニング>
大腸菌cadAの取得は、上記手順で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大腸菌K12−MG1655株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(下記の配列番号18及び配列番号19で表わされる配列からなるDNA)をプライマーとして用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行なった。
なお、反応液は、鋳型DNA1μl及びPlatinum(登録商標)Pfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン株式会社製)0.2μlに、各プライマーが0.3μM、MgSOが1mM、デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTPs)が0.25μMとなるように、1倍濃度Pfx Amplification Buffer(インビトロジェン社製)を加えて全量を20μlとすることにより調製した。
また、反応温度条件としては、DNAサーマルサイクラー(MJResearch社製PTC−200)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で2.5分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は10分とした。
PCRの終了後、増幅産物をエタノール沈殿により精製し、制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断した。得られたDNA標品を、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離した後、臭化エチジウム染色を用いて可視化することにより、cadAを含む約2.6kbの断片を検出し、QIA Quick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて目的DNA断片の回収を行なった。
回収したDNA断片を、大腸菌プラスミドベクターpUC18(タカラバイオ株式会社製)を制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断して調製したDNA断片と混合し、ライゲーションキットver.2(タカラバイオ株式会社製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAを用いて大腸菌(JM109株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mlアンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)及び50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断することにより、約2.5kbの挿入断片が認められることを確認した。このプラスミドをpCAD1と命名し、pCAD1を含む大腸菌株をJM109/pCAD1と命名した。
<cadA増幅株の培養>
上記手順により得られた大腸菌株JM109/pCAD1をLB培地入り500ml容フラスコ1本で前培養した後、10mlの培養液を200mlの2倍濃度LB培地が入った1l容フラスコに接種し、温度35℃、通気なし(0vvm)、振とう回転数160rpmの条件下で培養を行なった。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を終濃度で0.5mMになるように加え、その後14時間培養を継続した。
次に、6000rpm、10分の条件で遠心分離を行い培養液からの菌体回収を行なった。この湿菌体を10mMの酢酸ナトリウム溶液に懸濁して保存、または、後述のリジン脱炭酸反応に使用した。
(ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の作成)
<コリネバクテリウム・グルタミカム AL2株によるリジンの発酵生産>
コリネバクテリウム・グルタミカム AL2株を、滅菌LB培地を200ml含む1L容フラスコ5本に1白金耳ずつ植菌し、30℃で24時間振とうし、前々培養液(計1L)を得た。この前々培養液の全量を、99LのLPG1培地(表1参照)を入れた全容200Lの培養タンクに植菌し、30℃、pH7.2、滅菌した空気を1vvmで通気、撹拌回転数はDOが3ppm以上になるように可変させて6時間培養した。この全量を、2.5mのLPG培地を含む全容5mの発酵槽に無菌的に移送し、滅菌空気を1vvmで通気、30℃で培養を開始した。
pHは、アンモニアガスを供給することにより7.2に制御した。撹拌回転数はDOが3ppm以下にならないように段階的に変更した。培地中のグルコースが枯渇した時点から、滅菌したフィード溶液[50%(w/v)グルコース、4.5%(w/v)NH4Cl、0.5mg/L D−ビオチン]を定速で連続的に供給し、50時間まで培養を継続した。培養終了後の全容積は約3.5mであった。培養後のリジン濃度の測定は、BL5リジンセンサ(王子計測機器株式会社製)により行い、培養終了後のリジン濃度は、約90g/Lであった。
尚、表1にLPG1培地を示す。
Figure 0005309649
<ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の作成>
上述した操作により作成したリジンを含む発酵溶液に、ピリドキサルリン酸を0.1mMの濃度となるように加え、更に、大腸菌株JM109/pCAD1の菌体を、OD660が0.5になるように加えてリジン脱炭酸反応を開始した。
反応時の条件は、温度37℃、通気量なし(0vvm)、撹拌回転数70rpmとした。反応中の溶液のpHは、250kgのアジピン酸をイオン交換水400Lに懸濁したスラリーを加え、pH6.5になるように制御し、合計22時間反応させた。
反応終了時には、リジン残存濃度が0.03g/L以下であり、ほぼ100%のリジンがペンタメチレンジアミンに変換されていた。反応後の溶液(約4m)は、菌体の不活化処理(80℃、30分)を実施した後、分子量13,000カットのUF膜モジュール(旭化成工業株式会社製ACP−3053)を通して高分子量の不純物除去を行なった。
尚、配列番号と配列番号に対応した塩基配列は以下の通りである。
(配列番号)
1 CCTTTTTAACCCATCACATATACCTGCCGTTCAC
2 AAAGGTTAGGAATACGGTTAGCCATTTGCCTG
3 GAGGTCTGCCTCGTGAAGAAG
4 CTCATTAGAAAAACTCATCGAGCATCA
5 GGATATCC
6 GTGTGCGTGAAGCACTCGATG
7 GCCTGAGTAATGTCTTCTACCTCGA
8 GTTTTCCCAGTCACGACGTTG
9 AGCGAGGGCAGGTGAAGATGATGTCGGTGGTGCCGT
10 ACGGCACCACCGACATCATCTTCACCTGCCCTCGCT
11 ACACAGGAAACAGCTATGACCATG
12 CACCATCTCAATGGTCATGGTGAA
13 GATGGATGCCAAAATTGCAGCCTT
14 GAGATATCAGAAGCAGCAATGCCA
15 TGGCATTGCTGCTTCTGATATCTC
16 CGAGTACGGTGATGAACTTG
17 CTTCAGAGCTGCGAGAACTAC
18 GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG
19 ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG
[ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の精製・単離]
(1)活性炭による脱色
直径700mmの活性炭塔に活性炭(三菱化学カルゴン株式会社製MM−11)105kg(約440L)を仕込み、2日間脱塩水を通水した。次に、前記ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液(約4m)を1.32m/hの速度で通液し、最後に500Lの脱塩水を通水した。初期460Lをパージした後、活性炭処理したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を採取した。
(2)濃縮
PPプリーツカートリッジフィルターTCP−JXを通して、前記活性炭処理後のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を2m撹拌槽に仕込み、ジャケット温度110℃、内温57℃、真空度140Torr〜150Torrにて濃縮を開始し、適宜、活性炭処理後のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を仕込みながら濃縮を行った。
ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩濃度は63.5重量%であった。
尚、上記濃縮液等のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液中のペンタメチレンジアミン濃度は、1N−HCl水溶液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量から算出した。同様に上記濃縮液等のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液中のアジピン酸濃度は、1N−NaOH水溶液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量から算出した。滴定には、自動滴定装置(三菱化学株式会社製GT−06型)を使用した。
(3)晶析
次に、同一の2m撹拌槽にて晶析を行った。撹拌翼は3枚後退翼、撹拌速度は40rpm、降温速度は8℃/hである。
内温37.4℃のときに、予め作成したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温10.5℃で晶析終了として、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーを得た。尚、種晶としてのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩は、本実施例に準じてラボスケールにて準備した。
(4)遠心濾過
直径1.22mの遠心濾過器を用い、前記ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーを3回に分けて遠心濾過した。回転数は980rpm、母液振り切り時間は15分、母液振り切り後に10℃の脱塩水約12kgをシャワー状に振りかけて洗浄し、その脱塩水の振り切り時間は15分間とした。
1番晶(1回晶析品)として得られたwetケーキは約190kg(ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩として約160kg)であった。
尚、上記ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩重量は、wetケーキの水分量を水分計(三菱化学株式会社製:電量滴定式水分測定装置CA−06型)と、水分気化装置(三菱化学株式会社製:VA−06型)とを使用して測定し、測定値から算出した。
(5)2回晶析品
1回晶析品の一部を脱塩水に溶解し50重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液とし、これに1回晶析品を得たのと同様の操作を加えて、より精製度の高い2回晶析品(wetケーキ約40kg)を得た。
[ペンタメチレンジアミンの精製・単離]
前述した[ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の精製・単離]の(4)遠心濾過において、遠心濾過後の濾液であるペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を回収した。次に、回収したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液中のペンタメチレンジアミン濃度を測定し、水溶液中のペンタメチレンジアミンのモル数を算出した。続いて、この水溶液に、算出したペンタメチレンジアミンのモル数の2倍のモル数に相当する水酸化ナトリウム(濃度48重量%水溶液)を添加し、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液からペンタメチレンジアミンを遊離させた。同時に、アジピン酸ナトリウムが析出した。
次に、遊離したペンタメチレンジアミンを含むスラリーを60℃、50Torrにて脱水蒸留を行った。さらに、析出したアジピン酸ナトリウムを遠心濾過にて固液分離した。
次に、得られた濾液を80℃、30Torrにて単蒸留してペンタメチレンジアミンを得た。得られたペンタメチレンジアミンの数量は約90kgであった。
(実施例1)
<ポリアミド樹脂の製造>
上記ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の精製・単離にて調製したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の2回晶析品25kgに脱塩水25kgを添加した後、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩に対して燐原子換算で30重量ppmの亜燐酸水素2ナトリウム・5水和物を添加し、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。
プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。
次に、オートクレーブ内の圧力を除々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で反応終了とした。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1%以下となる迄乾燥し、ポリアミド樹脂(PA56)を得た。相対粘度(η)は2.8であった。
続いて、このポリアミド樹脂(PA56)に、表1に示すように銅含有量30重量ppmで塩化第一銅を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
(実施例2)
実施例1で得られたポリアミド樹脂(PA56)に、さらに、後述する表2に示すように、銅含有量100重量ppmとなるような塩化第一銅とガラス繊維43重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
参考例3)
蒸留により単離したペンタメチレンジアミン、アジピン酸(旭化成ケミカルズ株式会社製)及び脱塩水を用い、濃度約50重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を調製し、pH8.0〜pH8.1に調整した。このペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩に対して燐原子換算で30重量ppmの亜リン酸水素2ナトリウム・5水和物を添加し、実施例1と同様な条件で重縮合を行い、ポリアミド樹脂(PA56)を得た。相対粘度(η)は2.8であった。
続いて、このポリアミド樹脂(PA56)に、表2に示すように銅含有量30重量ppmで塩化第一銅を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
参考例4)
参考例3で使用したポリアミド樹脂(PA56)に、表2に示すように、銅含有量が100重量ppmとなるような塩化第一銅とガラス繊維43重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
(比較例1)
実施例1において、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の2回晶析品に代えて、1番晶(1回晶析品)を使用した以外は、実施例1と同様な条件で重縮合を行い、ポリアミド樹脂(PA56)を得た。相対粘度(η)は2.8であった。
続いて、このポリアミド樹脂(PA56)に、表2に示すように銅含有量30重量ppmで塩化第一銅を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
(比較例2)
比較例1で用いたポリアミド樹脂(PA56)に、表2に示すように、銅含有量が100重量ppmとなるような塩化第一銅とガラス繊維43重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を調製した。
実施例1〜実施例2、参考例3〜参考例4、比較例1、比較例2において得られたペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩に含まれる硫黄含有量、アミノ酸含有量、メチオニン含有量を測定した。
またこれらのポリアミド樹脂組成物について耐熱老化性の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005309649
表2に示す結果から、硫黄の含有量が1.2重量ppm未満であるペンタメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られたポリアミド樹脂と、ハロゲン化第一銅とを含むポリアミド樹脂組成物(実施例1〜実施例)は、120℃×1,000時間放置後の試験片の引張り強さが低下せず、耐熱老化性が良好であることが分かる。
一方、硫黄の含有量が1.2重量ppm以上であるペンタメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られたポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物(比較例1,2)は、120℃×1,000時間放置後の試験片の引張り強さが大幅に低下し、耐熱老化性が改善されないことが分かる。

Claims (8)

  1. ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液からペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩を単離するペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法であって、
    ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液を濃縮し、濃縮したペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液を冷却して晶析し、ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩スラリーとし、
    該ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩スラリーを固液分離することによりペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩を単離することを特徴とするペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  2. 前記ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液の濃縮における温度が50℃〜70℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  3. 前記濃縮したペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液中のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩濃度が50重量%〜69重量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  4. 前記ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液の冷却における降温速度が1℃/hr〜30℃/hrの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  5. 前記ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液の晶析終了温度が1℃以上30℃以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  6. 前記ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩スラリーの晶析率が1重量%以上46重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  7. 前記固液分離が遠心濾過でなされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  8. 前記ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩水溶液におけるペンタメチレンジアミンが、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞または当該細胞の処理物を使用し、リジンから産出されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
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