JP5306473B2 - 倒立振子型車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、床面上を移動可能な倒立振子型車両の制御装置に関する。
床面上を移動する移動動作部と、この移動動作部を駆動するアクチュエータ装置とが組み付けられた基体に、鉛直方向に対して傾動自在に乗員の搭乗部が組み付けられた倒立振子型車両が従来より知られている。この倒立振子型車両は、搭乗部の傾斜角度をある目標傾斜角度に保つために(搭乗部が傾倒しないようにするために)、倒立振子の支点を動かすような形態で、移動動作部を移動させる必要がある車両である。
この種の倒立振子型車両の制御技術としては、例えば、特許文献1に見られるものが本願出願人により提案されている。
この特許文献1には、乗員の搭乗部が組み付けられた車両の基体が球体状の移動動作部に対して前後方向の軸周りと左右方向の軸周りとの2軸周りに傾動自在に設けられた倒立振子型車両の制御技術が記載されている。この技術では、基体の傾斜角度(=搭乗部の傾斜角度)の計測値と目標傾斜角度との偏差と、アクチュエータ装置としてのモータの速度(ひいては移動動作部の移動速度)の計測値と目標速度との偏差とを“0”に近づけるようにモータの駆動トルクが逐次決定される。そして、その決定した駆動トルクに応じて、移動動作部の移動動作がモータを介して制御される。
なお、倒立振子型車両として機能し得る車両としては、例えば、特許文献2、3に見られるものも本願出願人により提案されている。
特許第3070015号 PCT国際公開公報WO/2008/132778 PCT国際公開公報WO/2008/132779
ところで、特許文献1〜3に見られる如き倒立振子型車両では、搭乗部(又は基体)の傾斜角度を安定に一定値に保持することは一般には困難である。すなわち、乗員が、搭乗部の傾斜角度を一定値に保持しようとしても、一般には、該傾斜角度の変動(ふらつき)が生じやすい。従って、搭乗部の傾斜角度が概ね一定に保持されるような定常的な状態では、該傾斜角度の微小変動に伴って移動動作部の移動速度(車両全体の移動速度)が頻繁に変動するのを抑制するために、該移動速度の変動に対して素早くそれを解消するように移動動作部の移動動作を制御することを望ましいと考えられる。すなわち、該移動速度の変動に対して感度よく、該変動を抑制する駆動力が前記移動動作部に付与されるようにモータ等のアクチュエータ装置を制御することが望ましいと考えられる。
他方、例えば、乗員が自身の前後方向等で車両の移動速度を増速させようとするような場合のように、乗員が意識的に車両の移動速度を変化させようとする場合には、その移動速度の変化が円滑に行なわれるようにすることが望ましいと考えられる。しかるに、上記のように、移動速度の変動に対して移動動作部に付与される駆動力の変動の感度が高くなるようにした場合には、車両の移動速度の円滑な変化が阻害される恐れがある。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、車両の動作状況等に応じて車両の移動速度の変動を適切に制御することができる倒立振子型車両の制御装置を提供することを目的とする。
本発明の倒立振子型車両の制御装置は、かかる目的を達成するために、床面上を移動可能な移動動作部と、該移動動作部を駆動するアクチュエータ装置と、該移動動作部及びアクチュエータ装置が組付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組付けられた乗員の搭乗部とを備えた倒立振子型車両の制御装置であって、
前記搭乗部の実際の傾斜角度に応じた出力を生成する傾斜角度計測手段と、
前記車両の所定の代表点の移動速度に応じた出力を生成する代表点速度計測手段と、
前記移動動作部に付与する駆動力を規定する制御用操作量を決定し、その決定した制御用操作量に応じて前記移動動作部の移動動作を前記アクチュエータ装置を介して制御する移動動作部制御手段とを備え、
前記移動動作部制御手段は、前記搭乗部に乗員が搭乗した状態で前記制御用操作量を決定するための処理モードとして、第1処理モードと、該第1処理モードの処理の実行中に所定の第1条件が成立した場合に該第1処理モードから移行する第2処理モードとを有すると共に、前記第1処理モードでは、前記傾斜角度計測手段の出力が示す前記搭乗部の傾斜角度の計測値と所定値の目標傾斜角度との偏差である傾斜偏差と、前記代表点速度計測手段の出力が示す前記代表点の移動速度の計測値と所定値の目標移動速度との偏差である速度偏差とを“0”に近づけるように、少なくとも前記傾斜偏差と速度偏差とに応じて前記制御用操作量を決定し、前記第2処理モードでは、前記代表点の移動速度の計測値又は該代表点の移動速度の計測値のうちの所定方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにしつつ、前記傾斜偏差及び速度偏差のうちの少なくとも傾斜偏差を“0”に近づけるように、少なくとも該傾斜偏差に応じて前記制御用操作量を決定することを特徴とする(第1発明)。
なお、本発明において、「床」は、通常的な意味での床(屋内の床など)だけを意味するものではなく、屋外の地面もしくは路面をも含むものとして使用する。
上記第1発明によれば、前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードにおいては、前記傾斜偏差と速度偏差とを“0”に近づけるように前記制御用操作量を決定する。このため、前記搭乗部の実際の傾斜角度の変動等に起因して、前記代表点の実際の移動速度、ひいては、速度偏差が変動しようとすると、その変動を抑制する駆動力を移動動作部に付与させるべく前記制御用操作量が決定される。この結果、第1処理モードでは、前記傾斜偏差を概ね一定に保持した状態での前記代表点の移動速度の安定性が高まることとなる。
一方、第1処理モードの実行中に前記所定の第1条件が成立した場合には、前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードの処理を実行する。この第2処理モードにおいては、移動動作部制御手段は、前記代表点の移動速度の計測値又は該代表点の移動速度の計測値のうちの所定方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにしつつ、前記傾斜偏差及び速度偏差のうちの少なくとも傾斜偏差を“0”に近づけるように前記制御用操作量を決定する。なお、上記感度が第1処理モードよりも相対的に低くなるということは、該感度が“0”になる(前記制御用操作量が、前記代表点の移動速度の計測値又は該代表点の移動速度の計測値のうちの所定方向の成分の変化に依存しなくなる)場合も含まれるものとする。
このため、第2処理モードでは、前記代表点の実際の移動速度又は該代表点の移動速度のうちの所定方向の成分の変化に対して、前記移動動作部に付与される駆動力が変化し難くなるか、もしくは変化しなくなる。このため、代表点の実際の移動速度の自動的な制御が緩和もしくは解消される。従って、該代表点の移動速度が外力等によって柔軟に変化し易くなる。
よって、第1発明によれば、車両の動作状況等に応じて車両の移動速度の変動を適切に制御することが可能となる。
補足すると、第1発明において、前記所定の第1条件としては、例えば、車両の動作状態、操縦操作状態、環境状態などに関する条件を採用することができる。
また、前記代表点としては、前記搭乗部に搭乗した乗員と車両との全体の重心点や、前記移動動作部や基体の所定部位の点等を用いることができる。
また、前記代表点の移動速度に係わる前記所定の目標移動速度としては、例えば、その大きさが“0”近傍の所定範囲内の値(“0”を含む)となる速度を採用することが考えられる。このようにした場合には、前記傾斜偏差が“0”もしくはほぼ“0”となる状態で、前記代表点の実際の移動速度を“0”もしくはほぼ“0”に保つようにすることが可能となる。
また、前記搭乗部の傾斜角度に係わる前記所定の目標傾斜角度としては、例えば、前記搭乗部に搭乗した乗員と車両とを合わせた全体のうち、該搭乗部と一体的に傾動可能な部分(乗員を含む)の全体の重心点が該搭乗部の傾動中心(傾動の支点)の直上もしくはほぼ直上に位置する状態(すなわち当該重心点に作用する重力によって、該傾動中心の周りに発生するモーメントが“0”もしくはほぼ“0”となる状態)での該搭乗部の傾斜角度を採用することが好適である。
かかる第1発明における倒立振子型車両では、前記移動動作部が、床面上を所定の1方向に移動可能に構成され、前記搭乗部が、当該所定の1方向と直交する方向の1軸周りに傾動自在に前記基体に組付けられていてもよい。
あるいは、前記移動動作部は、床面上を互いに直交する第1の方向及び第2の方向を含む全方向に移動可能に構成されていると共に、前記搭乗部は、前記第1の方向の軸周りと第2の方向の軸周りとの2軸周りに傾動自在に前記基体に組付けられていてもよい。この場合には、前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードでは、前記傾斜偏差のうちの第2の方向の軸周り成分である第1傾斜偏差成分と、第1の方向の軸周り成分である第2傾斜偏差成分と、前記速度偏差のうちの第1の方向の成分である第1速度偏差成分と第2の方向の成分である第2速度偏差成分とをそれぞれ“0”に近づけるように前記制御用操作量を決定し、前記第2処理モードでは、前記代表点の移動速度の計測値のうちの少なくとも第1の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにしつつ、前記第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分、第1速度偏差成分及び第2速度偏差成分のうちの少なくとも第1傾斜偏差成分及び第2傾斜偏差成分を“0”に近づけるように前記制御用操作量を決定することが好ましい(第2発明)。
なお、第2発明において、前記移動動作部が、「第1の方向及び第2の方向を含む全方向に移動可能」ということは、該第1の方向及び第2の方向に直交する軸方向で見た場合における各瞬間での該移動動作部の速度ベクトルの向きが、前記アクチュエータ装置による移動動作部の駆動によって、上記軸方向の周りの任意の角度方向の向きを採り得るということを意味する。この場合、上記軸方向は、概ね、上下方向又は床面に垂直な方向である。また、本発明における「直交」は厳密な意味での直交であることは必須ではなく、本発明の本質を逸脱しない範囲で、厳密な意味での直交から若干のずれがあってもよい。
この第2発明によれば、前記第1処理モードでは、前記傾斜偏差を概ね一定に保持した状態で、前記第1の方向及び第2の方向を含む全方向における前記代表点の移動速度の安定性が高まることとなる。また、前記第2処理モードでは、少なくとも前記第1の方向での前記代表点の移動速度が柔軟に変化し易くなる。従って、少なくとも第1の方向での前記代表点の移動速度を所望の形態で自在に変化させることが可能となる。
この第2発明では、前記代表点の移動速度の計測値のうちの前記第2の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度を、前記第1処理モードと同一とする態様と、第1処理モードと異ならせる態様とを採用することができる。
この場合、特に、前記第1の方向及び第2の方向が、それぞれ前記搭乗部に搭乗した乗員の前後方向、左右方向に設定されている場合には、前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードでは、少なくとも前記代表点の移動速度の計測値のうちの第1の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなり、且つ、前記代表点の移動速度の計測値のうちの第2の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも低くならないようにしつつ、前記第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分、第1速度偏差成分及び第2速度偏差成分のうちの少なくとも第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分及び第2速度偏差成分を“0”に近づけるように、少なくとも該第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分及び第2速度偏差成分に応じて前記制御用操作量を決定することが好適である(第3発明)。
この第3発明によれば、前記第2処理モードでは、乗員の前後方向(第1の方向)では、前記代表点の移動速度の柔軟な変更が可能となる一方、乗員の左右方向(第2の方向)では、前記代表点の移動速度の変動が第1処理モードと同等か、もしくは、それよりも強めに抑制される。換言すれば、第2処理モードでは、前記代表点の移動速度のうち、乗員の前後方向の成分は変化し易いが、乗員の左右方向の成分は変化し難いものとなる。
ここで、車両の移動は、多くの場合、乗員の前後方向もしくはこれに近い方向で行なわれる。そして、第3発明によれば、このように乗員の前後方向もしくはこれに近い方向で車両を移動させる場合に、乗員の左右方向での該乗員の上体のふら付き等に起因して車両の代表点の移動速度が左右方向で変動するのを抑制できる。乗員の前後方向もしくはこれに近い方向で車両を移動させるための車両の操縦操作が容易になる。
前記第1発明では、より具体的な態様として、次のような態様を採用することができる。すなわち、前記移動動作部が、床面上を少なくとも前記所定方向としての第1の方向に移動可能であると共に、前記制御用操作量は、前記第1の方向での移動動作部の移動動作を制御するために該移動動作部に付与する駆動力を規定する第1制御用操作量を少なくとも含む。そして、前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードでは、少なくとも前記第1の方向に直交する方向の軸周りでの前記傾斜偏差に第1aゲイン係数を乗じてなる第1a操作量成分と前記第1の方向での前記速度偏差に第1bゲイン係数を乗じてなる第1b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定する。また、該移動動作部制御手段は、前記第2処理モードでは、前記第1の方向での前記速度偏差に前記第1bゲイン係数よりも小さい絶対値を有する第1cゲインを乗じてなる第1c操作量成分と、前記第1の方向での前記代表点の移動速度の計測値と該計測値に一致又は追従させるように該計測値に応じて可変的に決定した前記第1の方向での代表点の目標移動速度との偏差に第1dゲイン係数を乗じてなる第1d操作量成分と、“0”とのうちのいずれか1つを前記第1b操作量成分に代わりに用いる前記第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定する(第4発明)。
この第4発明によれば、前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードでは、少なくとも前記第1a操作量成分と第1b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第1合成処理により、前記第1の方向での移動動作部の移動動作を制御するための前記第1制御用操作量を決定する。これにより、前記傾斜偏差と速度偏差とを“0”に近づけるように第1制御用操作量を決定することができる。
そして、第2処理モードでは、前記移動動作部制御手段は、第1c操作量成分と第1d操作量成分と“0”とのうちのいずれか1つを前記第1b操作量成分に代わりに用いる前記第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定する。これにより、前記記第2処理モードでは、前記代表点の移動速度の計測値のうちの少なくとも第1の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにすることができる。ひいては、該第1の方向での前記代表点の移動速度を、外力等によって柔軟に変化させることが可能となる。
また、前記第2発明又は第3発明において、前記制御用操作量が、前記第1の方向での移動動作部の移動動作を制御するために該移動動作部に付与する駆動力を規定する第1制御用操作量と、前記第2の方向での移動動作部の移動動作を制御するために該移動動作部に付与する駆動力を規定する第2制御用操作量とから構成される場合には、前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードでは、少なくとも前記第1傾斜偏差成分に第1aゲイン係数を乗じてなる第1a操作量成分と、前記第1速度偏差成分に第1bゲイン係数を乗じてなる第1b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定すると共に、少なくとも前記第2傾斜偏差成分に第2aゲイン係数を乗じてなる第2a操作量成分と、前記第2速度偏差成分に第2bゲイン係数を乗じてなる第2b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第2合成処理により前記第2制御用操作量を決定することが好ましい。さらに、該移動動作部制御手段は、前記第2処理モードでは、前記第1速度偏差成分に前記第1bゲイン係数よりも小さい絶対値を有する第1cゲインを乗じてなる第1c操作量成分と、前記代表点の移動速度の計測値のうちの前記第1の方向の成分と該成分に一致又は追従させるように該成分に応じて可変的に決定した該第1の方向での前記代表点の目標移動速度との偏差に第1dゲイン係数を乗じてなる第1d操作量成分と、“0”とのうちのいずれか1つを前記第1b操作量成分に代わりに用いる前記第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定すると共に、前記第1処理モードと同一の前記第2合成処理により前記第2制御用操作量を決定することが好ましい(第5発明)。
この第5発明によれば、前記第1の方向での車両の代表点の移動に関しては、前記第4発明と同様に、該第1の方向での前記代表点の移動速度を外力等によって柔軟に変化させることができる。
一方、第2の方向での車両の代表点の移動に関しては、第1処理モードと第2処理モードとで同一の前記第2合成処理により前記第2制御用操作量が決定される。このため、第1処理モードと第2処理モードとのいずれのモードでも、該第2の方向での代表点の移動速度の目標移動速度に対する制御性が高まる。その結果、第2の方向での代表点の移動速度の変動を抑制することができる。
なお、この第5発明は、特に、前記第3発明と組合せることが好適である。これによれば、乗員の前後方向での前記代表点の移動速度の柔軟性を高めつつ、乗員の左右方向での前記代表点の移動速度の拘束性を高めることができる。その結果、車両の操縦性が高まる。
補足すると、第2発明において、第2の方向での車両の代表点の移動に関して、第1の方向での代表点の移動の場合と同様に、前記代表点の移動速度の計測値のうちの第2の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにすることも可能である。この場合には、第2制御用操作量を第1制御用操作量と同じ手法で決定するようにすればよい。
以上説明した第1〜第5発明では、前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードの処理の実行中に所定の第2条件が成立した場合に、前記第1処理モードの処理を再開することが好ましい(第6発明)。
この第6発明によれば、前記第2条件が成立した場合に、第2処理モードから第1処理モードに戻すので、前記第1処理モードでの車両の運転と、第2処理モードでの車両の運転とを車両の動作状況等に適合させて、選択的に行なうことができる。
この第6発明では、前記代表点の移動速度を増速させる要求である加速要求が発生した否かを判断する加速要求判断手段を備え、前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードの処理の実行中に前記加速要求判断手段の判断結果が肯定的になった場合に、前記所定の第1条件が成立したものとして、前記第2処理モードの処理の実行を開始することが好ましい(第7発明)。
この第7発明によれば、前記加速要求判断手段の判断結果が肯定的になった場合、すなわち、前記加速要求が発生した場合に、前記第2処理モードの処理の実行が開始される。このため、加速要求が発生した状況で、前記代表点の移動速度を円滑に増速させることが可能となる。
さらに、上記第7発明では、前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードの処理の実行中に、前記加速要求判断手段の判断結果が否定的となる状態が所定時間、継続した場合に、前記所定の第2条件が成立したものとして前記第1処理モードの処理を再開することが好ましい(第8発明)。
この第8発明によれば、加速要求が連続的又は間欠的に発生する状態が解消すると、その解消後、所定時間が経過するまで、処理モードを前記第2処理モードに維持することができる。このため、前記代表点の移動速度の増速後の一定期間において、移動動作部に付与される駆動力が該代表点の移動速度の影響を受け難い状態を継続することができる。その結果、前記代表点の移動速度の増速後に、乗員が前記搭乗部の傾斜角度を保つようにすることによって、該代表点の移動速度を積極的に変動させるような駆動力が移動動作部に付与されないようにすることができる。ひいては、代表点の移動速度の増速後に、乗員が特別な操縦操作をせずとも、車両が慣性力によって滑走するような状態を実現できる。
また、上記第7発明又第8発明では、前記車両が、前記アクチュエータ装置により前記移動動作部を駆動することによって発生する車両の推進力以外の外力が付加された場合に、該外力によって前記代表点の移動速度を増速可能な車両である場合には、前記加速要求判断手段は、少なくとも前記代表点の移動速度の計測値の大きさの時間的変化率又は該計測値のうちの前記所定方向の成分の大きさの時間的変化率である速度変化率に基づいて前記加速要求が発生したか否かを判断することが好ましい(第9発明)。
かかる第9発明によれば、前記加速要求判断手段は、少なくとも前記速度変化率に基づいて、前記加速要求が発生したか否かを判断するので、その判断を車両の実際の動作状態に即して判断することができる。ひいては、前記第1処理モードから第2処理モードへの移行を車両の実際の動作状態に即した適切なタイミングで行なうことができる。
なお、第9発明においては、例えば、前記速度変化率が所定の閾値よりも大きくなるということを、加速要求が発生したと判断することの必要条件(もしくは必要十分条件)として、加速要求が発生したか否かを判断することが考えられる。
また、第9発明において、例えば、前記搭乗部に搭乗した乗員が随時、自身の足を着床させることができるように該搭乗部が構成されている場合には、該乗員が自身の足によって床を蹴ることによって、前記外力を車両に作用させることが可能である。あるいは、例えば、車両の外部の作業者もしくは補助者、又は適当な装置によって、適宜、車両に外力を作用させるようにしてもよい。
実施形態の倒立振子型車両の正面図。 実施形態の倒立振子型車両の側面図。 実施形態の倒立振子型車両の下部を拡大して示す図。 実施形態の倒立振子型車両の下部の斜視図。 実施形態の倒立振子型車両の移動動作部(車輪体)の斜視図。 実施形態の倒立振子型車両の移動動作部(車輪体)とフリーローラとの配置関係を示す図。 実施形態の倒立振子型車両の制御ユニットの処理を示すフローチャート。 実施形態の倒立振子型車両の動力学的挙動を表現する倒立振子モデルを示す図。 第1実施形態での図7のSTEP9の処理に係わる処理機能を示すブロック図。 図9に示すゲイン調整部の処理機能を示すブロック図。 図10に示すリミット処理部(又は図12に示すリミット処理部)の処理機能を示すブロック図。 図9に示す重心速度制限部76の処理機能を示すブロック図。 図9に示す姿勢制御演算部80の処理機能を示すブロック図。 図9に示す要求重心速度生成部74の処理を示すフローチャート。 図14のSTEP23のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図14のSTEP24のサブルーチン処理を示すフローチャート。 第2実施形態での図7のSTEP9の処理に係わる処理機能を示すブロック図。 図17に示す速度ゲイン調整部106の処理を示すフローチャート。 図18のSTEP33のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図18のSTEP34のサブルーチン処理を示すフローチャート。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を以下に説明する。まず、図1〜図6を参照して、本実施形態における倒立振子型車両の構造を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態における倒立振子型車両1は、乗員(運転者)の搭乗部3と、床面に接地しながら該床面上を全方向(前後方向及び左右方向を含む2次元的な全方向)に移動可能な移動動作部5と、この移動動作部5を駆動する動力を該移動動作部5に付与するアクチュエータ装置7と、これらの搭乗部3、移動動作部5及びアクチュエータ装置7が組付けられた基体9とを備える。
ここで、本実施形態の説明では、「前後方向」、「左右方向」は、それぞれ、搭乗部3に標準的な姿勢で搭乗した乗員の上体の前後方向、左右方向に一致もしくはほぼ一致する方向を意味する。なお、「標準的な姿勢」は、搭乗部3に関して設計的に想定されている姿勢であり、乗員の上体の体幹軸を概ね上下方向に向け、且つ、上体を捻ったりしていない姿勢である。
この場合、図1においては、「前後方向」、「左右方向」はそれぞれ、紙面に垂直な方向、紙面の左右方向であり、図2においては、「前後方向」、「左右方向」はそれぞれ、紙面の左右方向、紙面に垂直な方向である。また、本実施形態の説明では、参照符号に付する添え字「R」,「L」は、それぞれ車両1の右側、左側に対応するものという意味で使用する。
基体9は、移動動作部5及びアクチュエータ装置7とが組付けられた下部フレーム11と、この下部フレーム11の上端から上方に延設された支柱フレーム13とを備える。
支柱フレーム13の上部には、該支柱フレーム13から前方側に張り出したシートフレーム15が固定されている。そして、このシートフレーム15上に、乗員が着座するシート3が装着されている。本実施形態では、このシート3が乗員の搭乗部となっている。従って、本実施形態における倒立振子型車両1(以降、単に車両1という)は、乗員がシート3に着座した状態で、床面上を移動するものである。
また、シート3の左右には、シート3に着座した乗員が必要に応じて把持するためのグリップ17R,17Lが配置され、これらのグリップ17R,17Lがそれぞれ、支柱フレーム13(又はシートフレーム15)から延設されたブラケット19R,19Lの先端部に固定されている。
下部フレーム11は、左右方向に間隔を存して二股状に対向するように配置された一対のカバー部材21R,21Lを備える。これらのカバー部材21R,21Lの上端部(二股の分岐部分)は、前後方向の軸心を有するヒンジ軸23を介して連結され、カバー部材21R,21Lの一方が他方に対して相対的にヒンジ軸23の周りに揺動可能となっている。この場合、カバー部材21R,21Lは、図示を省略するバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。
また、カバー部材21R,21Lのそれぞれの外面部には、前記シート3に着座した乗員の右足を載せるステップ25Rと左足を載せるステップ25Lとが各々、右向き、左向きに張り出すように突設されている。
移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、下部フレーム11のカバー部材21R,21Lの間に配置されている。これらの移動動作部5及びアクチュエータ装置7の構造を図3〜図6を参照して説明する。
なお、本実施形態で例示する移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、例えば前記特許文献2の図1に開示されているものと同じ構造のものである。従って、本実施形態の説明においては、移動動作部5及びアクチュエータ装置7の構成に関して、前記特許文献2に記載された事項については、簡略的な説明に留める。
本実施形態では、移動動作部5は、ゴム状弾性材により円環状に形成された車輪体であり、ほぼ円形の横断面形状を有する。この移動動作部5(以降、車輪体5という)は、その弾性変形によって、図5及び図6の矢印Y1で示す如く、円形の横断面の中心C1(より詳しくは、円形の横断面中心C1を通って、車輪体5の軸心と同心となる円周線)の周りに回転可能となっている。
この車輪体5は、その軸心C2(車輪体5全体の直径方向に直交する軸心C2)を左右方向に向けた状態で、カバー部材21R,21Lの間に配置され、該車輪体5の外周面の下端部にて床面に接地する。
そして、車輪体5は、アクチュエータ装置7による駆動(詳細は後述する)によって、図5の矢印Y2で示す如く車輪体5の軸心C2の周りに回転する動作(床面上を輪転する動作)と、車輪体5の横断面中心C1の周りに回転する動作とを行なうことが可能である。その結果、車輪体5は、それらの回転動作の複合動作によって、床面上を全方向に移動することが可能となっている。
アクチュエータ装置7は、車輪体5と右側のカバー部材21Rとの間に介装される回転部材27R及びフリーローラ29Rと、車輪体5と左側のカバー部材21Lとの間に介装される回転部材27L及びフリーローラ29Lと、回転部材27R及びフリーローラ29Rの上方に配置されたアクチュエータとしての電動モータ31Rと、回転部材27L及びフリーローラ29Lの上方に配置されたアクチュエータとしての電動モータ31Lとを備える。
電動モータ31R,31Lは、それぞれのハウジングがカバー部材21R,21Lに各々取付けられている。なお、図示は省略するが、電動モータ31R,31Lの電源(蓄電器)は、支柱フレーム13等、基体9の適所に搭載されている。
回転部材27Rは、左右方向の軸心を有する支軸33Rを介してカバー部材21Rに回転可能に支持されている。同様に、回転部材27Lは、左右方向の軸心を有する支軸33Lを介してカバー部材21Lに回転可能に支持されている。この場合、回転部材27Rの回転軸心(支軸33Rの軸心)と、回転部材27Lの回転軸心(支軸33Lの軸心)とは同軸心である。
回転部材27R,27Lは、それぞれ電動モータ31R,31Lの出力軸に、減速機としての機能を含む動力伝達機構を介して接続されており、電動モータ31R,31Lからそれぞれ伝達される動力(トルク)によって回転駆動される。各動力伝達機構は、例えばプーリ・ベルト式のものである。すなわち、図3に示す如く、回転部材27Rは、プーリ35Rとベルト37Rとを介して電動モータ31Rの出力軸に接続されている。同様に、回転部材27Lは、プーリ35Lとベルト37Lとを介して電動モータ31Lの出力軸に接続されている。
なお、上記動力伝達機構は、例えば、スプロケットとリンクチェーンとにより構成されるもの、あるいは、複数のギヤにより構成されるものであってもよい。また、例えば、電動モータ31R,31Lを、それぞれの出力軸が各回転部材27R,27Lと同軸心になるように各回転部材27R,27Lに対向させて配置し、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸を回転部材27R,27Lに各々、減速機(遊星歯車装置等)を介して連結するようにしてもよい。
各回転部材27R,27Lは、車輪体5側に向かって縮径する円錐台と同様の形状に形成されており、その外周面がテーパ外周面39R,39Lとなっている。
回転部材27Rのテーパ外周面39Rの周囲には、回転部材27Rと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数のフリーローラ29Rが配列されている。そして、これらのフリーローラ29Rは、それぞれ、ブラケット41Rを介してにテーパ外周面39Rに取付けられ、該ブラケット41Rに回転自在に支承されている。
同様に、回転部材27Lのテーパ外周面39Lの周囲には、回転部材27Lと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数(フリーローラ29Rと同数)のフリーローラ29Lが配列されている。そして、これらのフリーローラ29Lは、それぞれ、ブラケット41Lを介してにテーパ外周面39Lに取付けられ、該ブラケット41Lに回転自在に支承されている。
前記車輪体5は、回転部材27R側のフリーローラ29Rと、回転部材27L側のフリーローラ29Lとの間に挟まれるようにして、回転部材27R,27Lと同軸心に配置されている。
この場合、図1及び図6に示すように、各フリーローラ29R,29Lは、その軸心C3が車輪体5の軸心C2に対して傾斜すると共に、車輪体5の直径方向(車輪体5をその軸心C2の方向で見たときに、該軸心C2と各フリーローラ29R,29Lとを結ぶ径方向)に対して傾斜する姿勢で配置されている。そして、このような姿勢で、各フリーローラ29R,29Lのそれぞれの外周面が車輪体5の内周面に斜め方向に圧接されている。
より一般的に言えば、右側のフリーローラ29Rは、回転部材27Rが軸心C2の周りに回転駆動されたときに、車輪体5との接触面で、軸心C2周りの方向の摩擦力成分(車輪体5の内周の接線方向の摩擦力成分)と、車輪体5の前記横断面中心C1の周り方向の摩擦力成分(円形の横断面の接線方向の摩擦力成分)とを車輪体5に作用させ得るような姿勢で、車輪体5の内周面に圧接されている。左側のフリーローラ29Lについても同様である。
この場合、前記したように、カバー部材21R,21Lは、図示しないバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。このため、この付勢力によって、右側のフリーローラ29Rと左側のフリーローラ29Lとの間に車輪体5が挟持されると共に、車輪体5に対する各フリーローラ29R,29Lの圧接状態(より詳しくはフリーローラ29R,29Lと車輪体5との間で摩擦力が作用し得る圧接状態)が維持される。
以上説明した構造を有する車両1においては、電動モータ31R,31Lによりそれぞれ、回転部材27R,27Lを同方向に等速度で回転駆動した場合には、車輪体5が回転部材27R,27Lと同方向に軸心C2の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5が床面上を前後方向に輪転して、車両1の全体が前後方向に移動することとなる。なお、この場合は、車輪体5は、その横断面中心C1の周りには回転しない。
また、例えば、回転部材27R,27Lを互いに逆方向に同じ大きさの速度で回転駆動した場合には、車輪体5は、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。これにより、車輪体がその軸心C2の方向(すなわち左右方向)に移動し、ひいては、車両1の全体が左右方向に移動することとなる。なお、この場合は、車輪体5は、その軸心C2の周りには回転しない。
さらに、回転部材27R,27Lを、互いに異なる速度(方向を含めた速度)で、同方向又は逆方向に回転駆動した場合には、車輪体5は、その軸心C2の周りに回転すると同時に、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。
この時、これらの回転動作の複合動作(合成動作)によって、前後方向及び左右方向に対して傾斜した方向に車輪体5が移動し、ひいては、車両1の全体が車輪体5と同方向に移動することとなる。この場合の車輪体5の移動方向は、回転部材27R,27Lの回転方向を含めた回転速度(回転方向に応じて極性が定義された回転速度ベクトル)の差に依存して変化するものとなる。
以上のように車輪体5の移動動作が行なわれるので、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転速度(回転方向を含む)を制御し、ひいては回転部材27R,27Lの回転速度を制御することによって、車両1の移動速度及び移動方向を制御できることとなる。
なお、シート(搭乗部)3及び基体9は、車輪体5の軸心C2を支点として、左右方向の軸心C2周りに傾動自在となっていると共に、車輪体5の接地面(下端面)を支点として、前後方向の軸周りに該車輪体5と共に傾動自在となっている。
次に、本実施形態の車両1の動作制御のための構成を説明する。なお、以降の説明では、図1及び図2に示すように、前後方向の水平軸をX軸、左右方向の水平軸をY軸、鉛直方向をZ軸とするXYZ座標系を想定し、前後方向、左右方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向と言うことがある。
まず、車両1の概略的な動作制御を説明すると、本実施形態では、基本的には、シート3に着座した乗員がその上体を傾けた場合(詳しくは、乗員と車両1とを合わせた全体の重心点の位置(水平面に投影した位置)を動かすように上体を傾けた場合)に、該上体を傾けた側に基体9がシート3と共に傾動する。そして、この時、基体9が傾いた側に車両1が移動するように、車輪体5の移動動作が制御される。例えば、乗員が上体を前傾させ、ひいては、基体9をシート3と共に前傾させると、車両1が前方に移動するように、車輪体5の移動動作が制御される。
すなわち、本実施形態では、乗員が上体を動かし、ひいては、シート3と共に基体9を傾動させるという動作が、車両1に対する1つの基本的な操縦操作(車両1の動作要求)とされ、その操縦操作に応じて車輪体5の移動動作がアクチュエータ装置7を介して制御される。
ここで、本実施形態の車両1は、その全体の接地面としての車輪体5の接地面が、車両1とこれに搭乗する乗員との全体を床面に投影した領域に比して面積が小さい単一の局所領域となり、その単一の局所領域だけに床反力が作用する。このため、基体9が傾倒しないようにするためには、乗員及び車両1の全体の重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置するように、車輪体5を動かす必要がある。
そこで、本実施形態では、乗員及び車両1の全体の重心点が、車輪体5の中心点(軸心C2上の中心点)のほぼ真上に位置する状態(より正確には当該重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態)での基体9の姿勢を目標姿勢とし、基本的には、基体9の実際の姿勢を目標姿勢に収束させるように、車輪体5の移動動作が制御される。
また、車両1を発進させる場合等において、アクチュエータ装置7による推進力とは別に、例えば乗員が必要に応じて自身の足により床を蹴り、それにより車両1の移動速度を増速させる推進力(乗員の足平と床との摩擦力による推進力)を、付加的な外力として車両1に作用させた場合には、それに応じて車両1の移動速度(より正確には、乗員及び車両の全体の重心点の移動速度)が増速するように、車輪体5の移動動作が制御される。
さらに、車両1に乗員が搭乗していない状態では、車両1の単体の重心点が、車輪体5の中心点(軸心C2上の中心点)のほぼ真上に位置する状態(当該重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態)での基体9の姿勢を目標姿勢とし、該基体9の実際の姿勢を目標姿勢に収束させ、ひいては、基体9が傾倒することなく車両1が自立するように、車輪体5の移動動作が制御される。
また、車両1に乗員が搭乗している状態と搭乗していない状態とのいずれの状態においても、基体9の実際の姿勢の目標姿勢からずれが大きいほど、車両1の移動速度が速くなると共に、基体9の実際の姿勢の目標姿勢に一致する状態では、車両1の移動が停止するように車輪体5の移動動作が制御される。
補足すると、「姿勢」は空間的な向きを意味する。本実施形態では、基体9がシート3と共に傾動することで、基体9やシート3の姿勢が変化する。また、本実施形態では、基体9とシート3とは一体的に傾動するので、基体9の姿勢をその目標姿勢に収束させるということは、シート3の姿勢を該シート3に対応する目標姿勢(基体9の姿勢が基体9の目標姿勢に一致する状態でのシート3の姿勢)に収束させるということと等価である。
本実施形態では、以上の如き車両1の動作制御を行なうために、図1及び図2に示すように、マイクロコンピュータや電動モータ31R,31Lのドライブ回路ユニットなどを含む電子回路ユニットにより構成された制御ユニット50と、基体9の姿勢(又はシート3の姿勢)に関する状態量として、基体9の所定の部位の鉛直方向(重力方向)に対する傾斜角度θb及びその変化速度(=dθb/dt)を計測するための傾斜センサ52と、車両1に乗員が搭乗しているか否かを検知するための荷重センサ54と、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の回転角度及び回転角速度を検出するための角度センサとしてのロータリエンコーダ56R,56Lとがそれぞれ、車両1の適所に搭載されている。
この場合、制御ユニット50及び傾斜センサ52は、例えば、基体9の支柱フレーム13の内部に収容された状態で該支柱フレーム13に取付けられている。また、荷重センサ54は、シート3に内蔵されている。また、ロータリエンコーダ56R,56Lは、それぞれ、電動モータ31R,31Lと一体に設けられている。なお、ロータリエンコーダ56R,56Lは、それぞれ、回転部材27R,27Lに装着してもよい。
上記傾斜センサ52は、より詳しくは、加速度センサとジャイロセンサ等のレートセンサ(角速度センサ)とから構成され、これらのセンサの検出信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、傾斜センサ52の加速度センサ及びレートセンサの出力を基に、所定の計測演算処理(これは公知の演算処理でよい)を実行することによって、傾斜センサ52を搭載した部位(本実施形態では支柱フレーム13)の、鉛直方向に対する傾斜角度θbの計測値とその変化速度(微分値)である傾斜角速度θbdotの計測値とを算出する。
この場合、計測する傾斜角度θb(以降、基体傾斜角度θbということがある)は、より詳しくは、それぞれ、Y軸周り方向(ピッチ方向)の成分θb_xと、X軸周り方向(ロール方向)の成分θb_yとから成る。同様に、計測する傾斜角速度θbdot(以降、基体傾斜角速度θbdotということがある)も、Y軸周り方向(ピッチ方向)の成分θbdot_x(=dθb_x/dt)と、X軸周り方向(ロール方向)の成分θbdot_y(=dθb_y/dt)とから成る。
補足すると、本実施形態では、基体9の支柱フレーム13と一体にシート3が傾動するので、基体傾斜角度θbは、搭乗部3の傾斜角度としての意味も持つ。
なお、本実施形態の説明では、上記基体傾斜角度θbなど、X軸及びY軸の各方向(又は各軸周り方向)の成分を有する運動状態量等の変数、あるいは、該運動状態量に関連する係数等の変数に関しては、その各成分を区別して表記する場合に、該変数の参照符号に、添え字“_x”又は“_y”を付加する。
この場合において、並進速度等の並進運動に係わる変数については、そのX軸方向の成分に添え字“_x”を付加し、Y軸方向の成分に添え字“_y”を付加する。
一方、角度、回転速度(角速度)、角加速度など、回転運動に係わる変数については、並進運動に係わる変数と添え字を揃えるために、便宜上、Y軸周り方向の成分に添え字“_x”を付加し、X軸周り方向の成分に添え字“_y”を付加する。
さらに、X軸方向の成分(又はY軸周り方向の成分)と、Y軸方向の成分(又はX軸周り方向の成分)との組として変数を表記する場合には、該変数の参照符号に添え字“_xy”を付加する。例えば、上記基体傾斜角度θbを、Y軸周り方向の成分θb_xとX軸周り方向の成分θb_yの組として表現する場合には、「基体傾斜角度θb_xy」というように表記する。
前記荷重センサ54は、乗員がシート3に着座した場合に該乗員の重量による荷重を受けるようにシート3に内蔵され、その荷重に応じた検出信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、この荷重センサ54の出力により示される荷重の計測値に基づいて、車両1に乗員が搭乗しているか否かを判断する。
なお、荷重センサ54の代わりに、例えば、乗員がシート3に着座したときにONとなるようなスイッチ式のセンサを用いてもよい。
ロータリエンコーダ56Rは、電動モータ31Rの出力軸が所定角度回転する毎にパルス信号を発生し、このパルス信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、そのパルス信号を基に、電動モータ53Rの出力軸の回転角度を計測し、さらにその回転角度の計測値の時間的変化率(微分値)を電動モータ53Rの回転角速度として計測する。電動モータ31L側のロータリエンコーダ56Lについても同様である。
制御ユニット50は、上記の各計測値を用いて所定の演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の目標値である速度指令を決定し、その速度指令に従って、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度をフィードバック制御する。
なお、電動モータ31Rの出力軸の回転角速度と、回転部材27Rの回転角速度との間の関係は、該出力軸と回転部材27Rとの間の一定値の減速比に応じた比例関係になるので、本実施形態の説明では、便宜上、電動モータ31Rの回転角速度は、回転部材27Rの回転角速度を意味するものとする。同様に、電動モータ31Lの回転角速度は、回転部材27Lの回転角速度を意味するものとする。
以下に、制御ユニット50の制御処理をさらに詳細に説明する。
制御ユニット50は、所定の制御処理周期で図7のフローチャートに示す処理(メインルーチン処理)を実行する。
まず、STEP1において、制御ユニット50は、傾斜センサ52の出力を取得する。
次いで、STEP2に進んで、制御ユニット50は、取得した傾斜センサ52の出力を基に、基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sと、基体傾斜角速度θbdotの計測値θbdot_xy_sとを算出する。
なお、以降の説明では、上記計測値θb_xy_sなど、変数(状態量)の実際の値の観測値(計測値又は推定値)を参照符号により表記する場合に、該変数の参照符号に、添え字“_s”を付加する。
次いで、制御ユニット50は、STEP3において、荷重センサ54の出力を取得した後、STEP4の判断処理を実行する。この判断処理においては、制御ユニット50は、取得した荷重センサ54の出力が示す荷重計測値があらかじめ設定された所定値よりも大きいか否かによって、車両1に乗員が搭乗しているか否か(シート3に乗員が着座しているか否か)を判断する。
そして、制御ユニット50は、STEP4の判断結果が肯定的である場合には、基体傾斜角度θbの目標値θb_xy_objを設定する処理と、車両1の動作制御用の定数パラメータ(各種ゲインの基本値など)の値を設定する処理とを、それぞれSTEP5、6で実行する。
STEP5においては、制御ユニット50は、基体傾斜角度θbの目標値θb_xy_objとして、あらかじめ定められた搭乗モード用の目標値を設定する。
ここで、「搭乗モード」は、車両1に乗員が搭乗している場合での車両1の動作モードを意味する。この搭乗モード用の目標値θb_xy_objは、車両1とシート3に着座した乗員との全体の重心点(以降、車両・乗員全体重心点という)が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態となる基体9の姿勢において、傾斜センサ52の出力に基づき計測される基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sに一致又はほぼ一致するようにあらかじめ設定されている。
また、STEP6においては、制御ユニット50は、車両1の動作制御用の定数パラメータの値として、あらかじめ定められた搭乗モード用の値を設定する。なお、定数パラメータは、後述するhx,hy,Ki_a_x,Ki_b_x,Ki_a_y,Ki_b_y(i=1,2,3)等である。
一方、STEP4の判断結果が否定的である場合には、制御ユニット50は、基体傾斜角度θb_xyの目標値θb_xy_objを設定する処理と、車両1の動作制御用の定数パラメータの値を設定する処理とを、STEP7、8で実行する。
STEP7においては、制御ユニット50は、傾斜角度θbの目標値θb_xy_objとして、あらかじめ定められた自立モード用の目標値を設定する。
ここで、「自立モード」は、車両1に乗員が搭乗していない場合での車両1の動作モードを意味する。この自立モード用の目標値θb_xy_objは、車両1単体の重心点(以降、車両単体重心点という)が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態となる基体9の姿勢において、傾斜センサ52の出力に基づき計測される基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sに一致又はほぼ一致するようにあらかじめ設定されている。この自立モード用の目標値θb_xy_objは、搭乗モード用の目標値θb_xy_objと一般的には異なる。
また、STEP8においては、制御ユニット50は、車両1の動作制御用の定数パラメータの値として、あらかじめ定められた自立モード用の値を設定する。この自立モード用の定数パラメータの値は、搭乗モード用の定数パラメータの値と異なる。
搭乗モードと自立モードとで、上記定数パラメータの値を異ならせるのは、それぞれのモードで上記重心点の高さや、全体質量等が異なることに起因して、制御入力に対する車両1の動作の応答特性が互いに異なるからである。
以上のSTEP4〜8の処理によって、搭乗モード及び自立モードの各動作モード毎に各別に、基体傾斜角度θb_xyの目標値θb_xy_objと定数パラメータの値とが設定される。
なお、STEP5,6の処理、又はSTEP7,8の処理は、制御処理周期毎に実行することは必須ではなく、STEP4の判断結果が変化した場合にだけ実行するようにしてもよい。
補足すると、搭乗モード及び自立モードのいずれにおいても、基体傾斜角速度θbdotのY軸周り方向の成分θbdot_xの目標値とX軸周り方向の成分θbdot_yの目標値とは、いずれも“0”である。このため、基体傾斜角速度θbdot_xyの目標値を設定する処理は不要である。
以上の如くSTEP5,6の処理、又はSTEP7,8の処理を実行した後、制御ユニット50は、次にSTEP9において、車両制御演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令を決定する。この車両制御演算処理の詳細は後述する。
次いで、STEP10に進んで、制御ユニット50は、STEP9で決定した速度指令に応じて電動モータ31R,31Lの動作制御処理を実行する。この動作制御処理では、制御ユニット50は、STEP9で決定した電動モータ31Rの速度指令と、ロータリエンコーダ56Rの出力に基づき計測した電動モータ31Rの回転速度の計測値との偏差に応じて、該偏差を“0”に収束させるように電動モータ31Rの出力トルクの目標値(目標トルク)を決定する。そして、制御ユニット50は、その目標トルクの出力トルクを電動モータ31Rに出力させるように該電動モータ31Rの通電電流を制御する。左側の電動モータ31Lの動作制御についても同様である。
以上が、制御ユニット50が実行する全体的な制御処理である。
次に、上記STEP9の車両制御演算処理の詳細を説明する。
なお、以降の説明においては、前記搭乗モードにおける車両・乗員全体重心点と、前記自立モードにおける車両単体重心点とを総称的に、車両系重心点という。該車両系重心点は、車両1の動作モードが搭乗モードである場合には、車両・乗員全体重心点を意味し、自立モードである場合には、車両単体重心点を意味する。
また、以降の説明では、制御ユニット50が各制御処理周期で決定する値(更新する値)に関し、現在の(最新の)制御処理周期で決定する値を今回値、その1つ前の制御処理周期で決定した値を前回値ということがある。そして、今回値、前回値を特にことわらない値は、今回値を意味する。
また、X軸方向の速度及び加速度に関しては、前方向きを正の向きとし、Y軸方向の速度及び加速度に関しては、左向きを正の向きとする。
本実施形態では、前記車両系重心点の動力学的な挙動(詳しくは、Y軸方向からこれに直交する面(XZ平面)に投影して見た挙動と、X軸方向からこれに直交する面(YZ平面)に投影して見た挙動)が、近似的に、図8に示すような、倒立振子モデルの挙動(倒立振子の動力学的挙動)によって表現されるものとして、STEP9の車両制御演算処理が行なわれる。
なお、図8において、括弧を付していない参照符号は、Y軸方向から見た倒立振子モデルに対応する参照符号であり、括弧付きの参照符号は、X軸方向から見た倒立振子モデルに対応する参照符号である。
この場合、Y軸方向から見た挙動を表現する倒立振子モデルは、車両系重心点に位置する質点60_xと、Y軸方向に平行な回転軸62a_xを有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪62_x(以降、仮想車輪62_xという)とを備える。そして、質点60_xが、仮想車輪62_xの回転軸62a_xに直線状のロッド64_xを介して支持され、該回転軸62a_xを支点として該回転軸62a_xの周りに揺動自在とされている。
この倒立振子モデルでは、質点60_xの運動が、Y軸方向から見た車両系重心点の運動に相当する。また、鉛直方向に対するロッド64_xの傾斜角度θbe_xがY軸周り方向での基体傾斜角度計測値θb_x_sと基体傾斜角度目標値θb_x_objとの偏差θbe_x_s(=θb_x_s−θb_x_obj)に一致するものとされる。また、ロッド64_xの傾斜角度θbe_xの変化速度(=dθbe_x/dt)がY軸周り方向の基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに一致するものとされる。また、仮想車輪62_xの移動速度Vw_x(X軸方向の並進移動速度)は、車両1の車輪体5のX軸方向の移動速度に一致するものとされる。
同様に、X軸方向から見た挙動を表現する倒立振子モデル(図8の括弧付きの符号を参照)は、車両系重心点に位置する質点60_yと、X軸方向に平行な回転軸62a_yを有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪62_y(以降、仮想車輪62_yという)とを備える。そして、質点60_yが、仮想車輪62_yの回転軸62a_yに直線状のロッド64_yを介して支持され、該回転軸62a_yを支点として該回転軸62a_yの周りに揺動自在とされている。
この倒立振子モデルでは、質点60_yの運動が、X軸方向から見た車両系重心点の運動に相当する。また、鉛直方向に対するロッド64_yの傾斜角度θbe_yがX軸周り方向での基体傾斜角度計測値θb_y_sと基体傾斜角度目標値θb_y_objとの偏差θbe_y_s(=θb_y_s−θb_y_obj)に一致するものとされる。また、ロッド64_yの傾斜角度θbe_yの変化速度(=dθbe_y/dt)がX軸周り方向の基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに一致するものとされる。また、仮想車輪62_yの移動速度Vw_y(Y軸方向の並進移動速度)は、車両1の車輪体5のY軸方向の移動速度に一致するものとされる。
なお、仮想車輪62_x,62_yは、それぞれ、あらかじめ定められた所定値Rw_x,Rw_yの半径を有するものとされる。
また、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x,ωw_yと、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R,ω_L(より正確には、回転部材27R,27Lのそれぞれの回転角速度ω_R,ω_L)との間には、次式01a,01bの関係が成立するものとされる。

ωw_x=(ω_R+ω_L)/2 ……式01a
ωw_y=C・(ω_R−ω_L)/2 ……式01b

なお、式01bにおける“C”は、前記フリーローラ29R,29Lと車輪体5との間の機構的な関係や滑りに依存する所定値の係数である。また、ωw_x,ω_R,ω_Lの正の向きは、仮想車輪62_xが前方に向かって輪転する場合の該仮想車輪62_xの回転方向、ωw_yの正の向きは、仮想車輪62_yが左向きに輪転する場合の該仮想車輪62_yの回転方向である。
ここで、図8に示す倒立振子モデルの動力学は、次式03x,03yにより表現される。なお、式03xは、Y軸方向から見た倒立振子モデルの動力学を表現する式、式03yは、X軸方向から見た倒立振子モデルの動力学を表現する式である。

2θbe_x/dt2=α_x・θbe_x+β_x・ωwdot_x ……式03x
2θbe_y/dt2=α_y・θbe_y+β_y・ωwdot_y ……式03y

式03xにおけるωwdot_xは仮想車輪62_xの回転角加速度(回転角速度ωw_xの1階微分値)、α_xは、質点60_xの質量や高さh_xに依存する係数、β_xは、仮想車輪62_xのイナーシャ(慣性モーメント)や半径Rw_xに依存する係数である。式03yにおけるωwdot_y、α_y、β_yについても上記と同様である。
これらの式03x,03yから判るように、倒立振子モデルの質点60_x,60_yの運動(ひいては車両系重心点の運動)は、それぞれ、仮想車輪62_xの回転角加速度ωwdot_x、仮想車輪62_yの回転角加速度ωwdot_yに依存して規定される。
そこで、本実施形態では、Y軸方向から見た車両系重心点の運動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_xの回転角加速度ωwdot_xを用いると共に、X軸方向から見た車両系重心点の運動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_yの回転角加速度ωwdot_yを用いる。
そして、STEP9の車両制御演算処理を概略的に説明すると、制御ユニット50は、X軸方向で見た質点60_xの運動と、Y軸方向で見た質点60_yの運動とが、車両系重心点の所望の運動に対応する運動となるように、操作量としての上記回転角加速度ωwdot_x,ωwdot_yの指令値(目標値)である仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdを決定する。さらに、制御ユニット50は、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdをそれぞれ積分してなる値を、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x,ωw_yの指令値(目標値)である仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmd,ωw_y_cmdとして決定する。
そして、制御ユニット50は、仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmdに対応する仮想車輪62_xの移動速度(=Rw_x・ωw_x_cmd)と、仮想車輪回転角速度指令ωw_y_cmdに対応する仮想車輪62_yの移動速度(=Rw_y・ωw_y_cmd)とを、それぞれ、車両1の車輪体5のX軸方向の目標移動速度、Y軸方向の目標移動速度とし、それらの目標移動速度を実現するように、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdを決定する。
なお、本実施形態では、操作量(制御入力)としての上記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdは、それぞれ、後述する式07x,07yに示す如く、3個の操作量成分を加え合わせることによって決定される。
補足すると、本実施形態における操作量(制御入力)としての上記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdのうち、ωwdot_x_cmdは、X軸方向に移動する仮想車輪62_xの回転角加速度であるから、車輪体5をX軸方向に移動させるために該車輪体5に付与すべき駆動力を規定する操作量として機能するものとなる。また、ωwdot_y_cmdは、Y軸方向に移動する仮想車輪62_yの回転角加速度であるから、車輪体5をY軸方向に移動させるために該車輪体5に付与すべき駆動力を規定する操作量として機能するものとなる。
制御ユニット50は、上記の如き、STEP9の車両制御演算処理を実行するための機能として、図9のブロック図で示す機能を備えている。
すなわち、制御ユニット50は、基体傾斜角度計測値θb_xy_sと基体傾斜角度目標値θb_xy_objとの偏差である基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sを算出する偏差演算部70と、前記車両系重心点の移動速度である重心速度Vb_xyの観測値としての重心速度推定値Vb_xy_sを算出する重心速度算出部72と、乗員等による車両1の操縦操作(車両1に推進力を付加する操作)によって要求されていると推定される上記重心速度Vb_xyの要求値としての要求重心速度V_xy_aimを生成する要求重心速度生成部74と、これらの重心速度推定値Vb_xy_s及び要求重心速度V_xy_aimから、電動モータ31R,31Lの回転角速度の許容範囲に応じた制限を加味して、重心速度Vb_xyの目標値としての制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdを決定する重心速度制限部76と、後述する式07x,07yのゲイン係数の値を調整するためのゲイン調整パラメータKr_xyを決定するゲイン調整部78とを備える。
制御ユニット50は、さらに、前記仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを算出する姿勢制御演算部80と、この仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを、右側の電動モータ31Rの速度指令ω_R_cmd(回転角速度の指令値)と左側の電動モータ31Lの速度指令ω_L_cmd(回転角速度の指令値)との組に変換するモータ指令演算部82とを備える。
なお、図9中の参照符号84を付したものは、姿勢制御演算部80が制御処理周期毎に算出する仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを入力する遅延要素を示している。該遅延要素84は、各制御処理周期において、仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdの前回値ωw_xy_cmd_pを出力する。
前記STEP9の車両制御演算処理では、これらの上記の各処理部の処理が以下に説明するように実行される。
すなわち、制御ユニット50は、まず、偏差演算部70の処理と重心速度算出部72の処理とを実行する。
偏差演算部70には、前記STEP2で算出された基体傾斜角度計測値θb_xy_s(θb_x_s及びθb_y_s)と、前記STEP5又はSTEP7で設定された目標値θb_xy_obj(θb_x_obj及びθb_y_obj)とが入力される。そして、偏差演算部70は、θb_x_sからθb_x_objを減算することによって、Y軸周り方向の基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s(=θb_x_s−θb_x_obj)を算出すると共に、θb_y_sからθb_y_objを減算することによって、X軸周り方向の基体傾斜角度偏差計測値θbe_y_s(=θb_y_s−θb_y_obj)を算出する。
なお、偏差演算部70の処理は、STEP9の車両制御演算処理の前に行なうようにしてもよい。例えば、前記STEP5又は7の処理の中で、偏差演算部70の処理を実行してもよい。
前記重心速度算出部72には、前記STEP2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_s(θbdot_x_s及びθbdot_y_s)の今回値が入力されると共に、仮想車輪速度指令ωw_xy_cmdの前回値ωw_xy_cmd_p(ωw_x_cmd_p及びωw_y_cmd_p)が遅延要素84から入力される。そして、重心速度算出部72は、これらの入力値から、前記倒立振子モデルに基づく所定の演算式によって、重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を算出する。
具体的には、重心速度算出部72は、次式05x,05yにより、Vb_x_s及びVb_y_sをそれぞれ算出する。

Vb_x_s=Rw_x・ωw_x_cmd_p+h_x・θbdot_x_s ……05x
Vb_y_s=Rw_y・ωw_y_cmd_p+h_y・θbdot_y_s ……05y

これらの式05x,05yにおいて、Rw_x,Rw_yは、前記したように、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの半径であり、これらの値は、あらかじめ設定された所定値である。また、h_x,h_yは、それぞれ倒立振子モデルの質点60_x,60_yの高さである。この場合、本実施形態では、車両系重心点の高さは、ほぼ一定に維持されるものとされる。そこで、h_x,h_yの値としては、それぞれ、あらかじめ設定された所定値が用いられる。補足すると、高さh_x,h_yは、前記STEP6又は8において値を設定する定数パラメータに含まれるものである。
上記式05xの右辺の第1項は、仮想車輪62_xの速度指令の前回値ωw_x_cmd_pに対応する該仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度であり、この移動速度は、車輪体5のX軸方向の実際の移動速度の現在値に相当するものである。また、式05xの右辺の第2項は、基体9がY軸周り方向にθbdot_x_sの傾斜角速度で傾動することに起因して生じる車両系重心点のX軸方向の移動速度(車輪体5に対する相対的な移動速度)の現在値に相当するものである。これらのことは、式05yについても同様である。
なお、前記ロータリエンコーダ56R,56Lの出力を基に計測される電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の計測値(今回値)の組を、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度の組に変換し、それらの回転角速度を、式05x、05yのωw_x_cmd_p、ωw_y_cmd_pの代わりに用いてもよい。ただし、回転角速度の計測値に含まれるノイズの影響を排除する上では、目標値であるωw_x_cmd_p、ωw_y_cmd_pを使用することが有利である。
次に、制御ユニット50は、要求重心速度生成部74の処理とゲイン調整部78の処理とを実行する。この場合、要求重心速度生成部74及びゲイン調整部78には、それぞれ、重心速度算出部72で上記の如く算出された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)が入力される。
そして、要求重心速度生成部74は、詳細は後述するが、車両1の動作モードが搭乗モードである場合に、入力された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を基に、要求重心速度V_xy_aim(V_x_aim,V_y_aim)を決定する。なお、本実施形態では、車両1の動作モードが自立モードである場合には、要求重心速度生成部74は、要求重心速度V_x_aim及びV_y_aimをいずれも“0”とする。
また、ゲイン調整部78は、入力された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を基に、前記ゲイン調整パラメータKr_xy(Kr_x及びKr_y)を決定する。
このゲイン調整部78の処理を図10及び図11を参照して以下に説明する。
図10に示すように、ゲイン調整部78は、入力された重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをリミット処理部86に入力する。このリミット処理部86では、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の許容範囲に応じた制限を適宜、加えることによって、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1を生成する。出力値Vw_x_lim1は、前記仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度Vw_xの制限後の値、出力値Vw_y_lim1は、前記仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度Vw_yの制限後の値としての意味を持つ。
このリミット処理部86の処理を、図11を参照してさらに詳細に説明する。なお、図11中の括弧付きの参照符号は、後述する重心速度制限部76のリミット処理部104の処理を示すものであり、リミット処理部86の処理に関する説明では無視してよい。
リミット処理部86は、まず、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをそれぞれ処理部86a_x,86a_yに入力する。処理部86a_xは、Vb_x_sを仮想車輪62_xの半径Rw_xで除算することによって、仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度をVb_x_sに一致させたと仮定した場合の該仮想車輪62_xの回転角速度ωw_x_sを算出する。同様に、処理部86a_yは、仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度をVb_y_sに一致させたと仮定した場合の該仮想車輪62_yの回転角速度ωw_y_s(=Vb_y_s/Rw_y)を算出する。
次いで、リミット処理部86は、ωw_x_s,ωw_y_sの組を、XY−RL変換部86bにより、電動モータ31Rの回転角速度ω_R_sと電動モータ31Lの回転角速度ω_L_sとの組に変換する。
この変換は、本実施形態では、前記式01a,01bのωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_s,ωw_y_s,ω_R_s,ω_L_sに置き換えて得られる連立方程式を、ω_R_s,ω_L_sを未知数として解くことにより行なわれる。
次いで、リミット処理部86は、XY−RL変換部86bの出力値ω_R_s,ω_L_sをそれぞれ、リミッタ86c_R,86c_Lに入力する。このとき、リミッタ86c_Rは、ω_R_sが、あらかじめ設定された所定値の上限値(>0)と下限値(<0)とを有する右モータ用許容範囲内に収まっている場合には、ω_R_sをそのまま出力値ω_R_lim1として出力する。また、リミッタ86c_Rは、ω_R_sが、右モータ用許容範囲から逸脱している場合には、該右モータ用許容範囲の上限値と下限値とのうちのω_R_sに近い方の境界値を出力値ω_R_lim1として出力する。これにより、リミッタ86c_Rの出力値ω_R_lim1は、右モータ用許容範囲内の値に制限される。
同様に、リミッタ86c_Lは、ω_L_sが、あらかじめ設定された所定値の上限値(>0)と下限値(<0)とを有する左モータ用許容範囲内に収まっている場合には、ω_L_sをそのまま出力値ω_L_lim1として出力する。また、リミッタ86c_Lは、ω_L_sが、左モータ用許容範囲から逸脱している場合には、該左モータ用許容範囲の上限値と下限値とのうちのω_L_sに近い方の境界値を出力値ω_L_lim1として出力する。これにより、リミッタ86c_Lの出力値ω_L_lim1は、左モータ用許容範囲内の値に制限される。
上記右モータ用許容範囲は右側の電動モータ31Rの回転角速度(絶対値)が高くなり過ぎないようにし、ひいては、電動モータ31Rが出力可能なトルクの最大値が低下するのを防止するために設定された許容範囲である。このことは、左モータ用許容範囲についても同様である。
次いで、リミット処理部86は、リミッタ86c_R,86c_Lのそれぞれの出力値ω_R_lim1,ω_L_lim1の組を、RL−XY変換部86dにより、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x_lim1,ωw_y_lim1の組に変換する。
この変換は、前記XY−RL変換部86bの変換処理の逆変換の処理である。この処理は、前記式01a,01bのωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_lim1,ωw_y_lim1,ω_R_lim1,ω_L_lim1に置き換えて得られる連立方程式を、ωw_x_lim1,ωw_y_lim1を未知数として解くことにより行なわれる。
次いで、リミット処理部86は、RL−XY変換部86dの出力値ωw_x_lim1,ωw_y_lim1をそれぞれ処理部86e_x,86e_yに入力する。処理部86e_xは、ωw_x_lim1に仮想車輪62_xの半径Rw_xを乗じることによって、ωw_x_lim1を仮想車輪62_xの移動速度Vw_x_lim1に変換する。同様に、処理部86e_yは、ωw_y_lim1を仮想車輪62_yの移動速度Vw_y_lim1(=ωw_y_lim1・Rw_y)に変換する。
以上のリミット処理部86の処理によって、仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度Vw_xと、仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度Vw_yとをそれぞれ重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させたと仮定した場合(換言すれば、車輪体5のX軸方向の移動速度とY軸方向の移動速度とをそれぞれ、Vb_x_s,Vb_y_sに一致させたと仮定した場合)に、それらの移動速度を実現するために必要な電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_s,ω_L_sが、両方とも、許容範囲内に収まっている場合には、Vb_x_s,Vb_y_sにそれぞれ一致する出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組がリミット処理部86から出力される。
一方、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_s,ω_L_sの両方又は一方が許容範囲から逸脱している場合には、その両方又は一方の回転角速度が強制的に許容範囲内に制限された上で、その制限後の電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_lim1,ω_L_lim1の組に対応する、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組がリミット処理部86から出力される。
従って、リミット処理部86は、その出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組に対応する電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲を逸脱しないことを必須の必要条件として、その必要条件下で可能な限り、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1をそれぞれVb_x_s,Vb_y_sに一致させるように、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組を生成する。
図10の説明に戻って、ゲイン調整部78は、次に、演算部88_x,88_yの処理を実行する。演算部88_xには、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sと、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1とが入力される。そして、演算部88_xは、Vw_x_lim1からVb_x_sを減算してなる値Vover_xを算出して出力する。また、演算部88_yには、Y軸方向の重心速度推定値Vb_y_sと、リミット処理部86の出力値Vw_y_lim1とが入力される。そして、演算部88_yは、Vw_y_lim1からVb_y_sを減算してなる値Vover_yを算出して出力する。
この場合、リミット処理部86での出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の強制的な制限が行なわれなかった場合には、Vw_x_lim1=Vb_x_s、Vw_y_lim1=Vb_y_sとなるので、演算部88_x,88_yのそれぞれの出力値Vover_x,Vover_yはいずれも“0”となる。
一方、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1が、入力値Vb_x_s,Vb_y_sに対して強制的な制限を施して生成された場合には、Vw_x_lim1のVb_x_sからの修正量(=Vw_x_lim1−Vb_x_s)と、Vw_y_lim1のVb_y_sからの修正量(=Vw_y_lim1−Vb_y_s)とがそれぞれ、演算部88_x,88_yから出力される。
次いで、ゲイン調整部78は、演算部88_xの出力値Vover_xを処理部90_x,92_xに順番に通すことによって、ゲイン調整パラメータKr_xを決定する。また、ゲイン調整部78は、演算部88_yの出力値Vover_yを処理部90_y,92_yに順番に通すことによって、ゲイン調整パラメータKr_yを決定する。なお、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yは、いずれも“0”から“1”までの範囲内の値である。
上記処理部90_xは、入力されるVover_xの絶対値を算出して出力する。また、処理部92_xは、その出力値Kr_xが入力値|Vover_x|に対して単調に増加し、且つ、飽和特性を有するようにKr_xを生成する。該飽和特性は、入力値がある程度大きくなると、入力値の増加に対する出力値の変化量が“0”になるか、もしくは、“0”に近づく特性である。
この場合、本実施形態では、処理部92_xは、入力値|Vover_x|があらかじめ設定された所定値以下である場合には、該入力値|Vover_x|に所定値の比例係数を乗じてなる値をKr_xとして出力する。また、処理部92_xは、入力値|Vover_x|が所定値よりも大きい場合には、“1”をKr_xとして出力する。なお、上記比例係数は、|Vover_x|が所定値に一致するときに、|Vover_x|と比例係数との積が“1”になるように設定されている。
また、処理部90_y,92_yの処理は、それぞれ上記した処理部90_x,92_xの処理と同様である。
以上説明したゲイン調整部78の処理によって、リミット処理部86での出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の強制的な制限が行なわれなかった場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、それぞれ、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させても、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲内に収まるような場合には、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yはいずれも“0”に決定される。
一方、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1が、入力値Vb_x_s,Vb_y_sに対して強制的な制限を施して生成された場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、それぞれ、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させると、電動モータ31R,31Lのいずれかの回転角速度が許容範囲を逸脱してしまう場合(いずれかの回転角速度の絶対値が高くなり過ぎる場合)には、前記修正量Vover_x,Vover_yのそれぞれの絶対値に応じて、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yの値がそれぞれ決定される。この場合、Kr_xは、“1”を上限値して、修正量Vover_xの絶対値が大きいほど、大きな値になるように決定される。このことは、Kr_yについても同様である。
図9の説明に戻って、制御ユニット50は、重心速度算出部72及び要求重心速度生成部74の処理を前記した如く実行した後、次に、重心速度制限部76の処理を実行する。
この重心速度制限部76には、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)と、要求重心速度生成部74で決定された要求重心速度Vb_xy_aim(Vb_x_aim及びVb_y_aim)とが入力される。そして、重心速度制限部76は、これらの入力値を使用して、図12のブロック図で示す処理を実行することによって、制御用目標重心速度Vb_xy_mdfd(Vb_x_mdfd及びVb_y_mdfd)を決定する。
具体的には、重心速度制限部76は、まず、定常偏差算出部94_x,94_yの処理を実行する。
この場合、定常偏差算出部94_xには、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sが入力されると共に、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdの前回値Vb_x_mdfd_pが遅延要素96_xを介して入力される。そして、定常偏差算出部94_xは、まず、入力されるVb_x_sが比例・微分補償要素(PD補償要素)94a_xに入力する。この比例・微分補償要素94a_xは、その伝達関数が1+Kd・Sにより表される補償要素であり、入力されるVb_x_sと、その微分値(時間的変化率)に所定値の係数Kdを乗じてなる値とを加算し、その加算結果の値を出力する。
次いで、定常偏差算出部94_xは、入力されるVb_x_mdfd_pを、比例・微分補償要素94a_xの出力値から減算してなる値を演算部94b_xにより算出した後、この演算部94b_xの出力値を、位相補償機能を有するローパスフィルタ94c_xに入力する。このローパスフィルタ94c_xは、伝達関数が(1+T2・S)/(1+T1・S)により表されるフィルタである。そして、定常偏差算出部94_xは、このローパスフィルタ94c_xの出力値Vb_x_prdを出力する。
また、定常偏差算出部94_yには、Y軸方向の重心速度推定値Vb_y_sが入力されると共に、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdの前回値Vb_y_mdfd_pが遅延要素96_yを介して入力される。
そして、定常偏差算出部94_yは、上記した定常偏差算出部94_xと同様に、比例・微分補償要素94a_y、演算部94b_y及びローパスフィルタ94c_yの処理を順次実行し、ローパスフィルタ94c_yの出力値Vb_y_prdを出力する。
ここで、定常偏差算出部94_xの出力値Vb_x_prdは、Y軸方向から見た車両系重心点の現在の運動状態(換言すればY軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_xの運動状態)から推測される、将来のX軸方向の重心速度推定値の収束予測値の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdに対する定常偏差としての意味を持つものである。同様に、定常偏差算出部94_y出力値Vb_y_prdは、X軸方向から見た車両系重心点の現在の運動状態(換言すればX軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_yの運動状態)から推測される、将来のY軸方向の重心速度推定値の収束予測値の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdに対する定常偏差としての意味を持つものである。以降、定常偏差算出部94_x,94_yのそれぞれの出力値Vb_x_prd,Vb_y_prdを重心速度定常偏差予測値という。
重心速度制限部76は、上記の如く定常偏差算出部94_x,94_yの処理を実行した後、定常偏差算出部94_xの出力値Vb_x_prdに要求重心速度Vb_x_aimを加算する処理と、定常偏差算出部94_yの出力値Vb_y_prdに要求重心速度Vb_y_aimを加算する処理とをそれぞれ、演算部98_x,98_yにより実行する。
従って、演算部98_xの出力値Vb_x_tは、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdに、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを付加した速度となる。同様に、演算部98_yの出力値Vb_y_tは、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdに、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを付加した速度となる。
なお、車両1の動作モードが自立モードである場合等、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”である場合には、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdがそのまま、演算部98_xの出力値Vb_x_tとなる。同様に、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimが“0”である場合には、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdがそのまま、演算部98_yの出力値Vb_y_tとなる。
次いで、重心速度制限部76は、演算部98_x,98_yのそれぞれの出力値Vb_x_t,Vb_y_tを、リミット処理部100に入力する。このリミット処理部100の処理は、前記したゲイン調整部78のリミット処理部86の処理と同じである。この場合、図11に括弧付きに参照符号で示す如く、リミット処理部100の各処理部の入力値及び出力値だけがリミット処理部86と相違する。
具体的には、リミット処理部100では、前記仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、Vb_x_t,Vb_y_tにそれぞれ一致させたと仮定した場合の各仮想車輪62_x,62_yの回転角速度ωw_x_t,ωw_y_tがそれぞれ処理部86a_x,86a_yにより算出される。そして、この回転角速度ωw_x_t,ωw_y_tの組が、XY−RL変換部86bにより、電動モータ31R,31Lの回転角速度ω_R_t,ω_L_tの組に変換される。
さらに、これらの回転角速度ω_R_t,ω_L_tが、リミッタ86c_R,86c_Lによって、それぞれ、右モータ用許容範囲内の値と左モータ用許容範囲内の値とに制限される。そして、この制限処理後の値ω_R_lim2,ω_L_lim2が、RL−XY変換部86dによって、仮想車輪62_x,62_yの回転角速度ωw_x_lim2,ωw_y_lim2に変換される。
次いで、この各回転角速度ωw_x_lim2,ωw_y_lim2に対応する各仮想車輪62_x,62_yの移動速度Vw_x_lim2,Vw_y_lim2がそれぞれ処理部86e_x,86e_yによって算出され、これらの移動速度Vw_x_lim2,Vw_y_lim2がリミット処理部100から出力される。
以上のリミット処理部100の処理によって、リミット処理部100は、リミット処理部86と同様に、その出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の組に対応する電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲を逸脱しないことを必須の必要条件として、その必要条件下で可能な限り、出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2をそれぞれVb_x_t,Vb_y_tに一致させるように、出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の組を生成する。
なお、リミット処理部100における右モータ用及び左モータ用の各許容範囲は、リミット処理部86における各許容範囲と同一である必要はなく、互いに異なる許容範囲に設定されていてもよい。
図12の説明に戻って、重心速度制限部76は、次に、演算部102_x,102_yの処理を実行することによって、それぞれ制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdを算出する。この場合、演算部102_xは、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2から、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdを減算してなる値をX軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして算出する。同様に、演算部102_yは、リミット処理部100の出力値Vw_y_lim2から、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdを減算してなる値をY軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとして算出する。
以上のようにして決定される制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdは、リミット処理部100での出力値Vw_x_lim2Vw_y_lim2の強制的な制限が行なわれなかった場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度を、それぞれ、演算部98_xの出力値Vb_x_tと演算部98_yの出力値Vb_y_tとに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させても、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲内に収まるような場合には、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimがそれぞれ、そのまま、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。
なお、この場合、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”であれば、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdも“0”となり、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimが“0”であれば、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdも“0”となる。
一方、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2が、入力値Vb_x_t,Vb_y_tに対して強制的な制限を施して生成された場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度を、それぞれ、演算部98_xの出力値Vb_x_tと演算部98_yの出力値Vb_y_tとに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させると、電動モータ31R,31Lのいずれかの回転角速度が許容範囲を逸脱してしまう場合(いずれかの回転角速度の絶対値が高くなり過ぎる場合)には、X軸方向については、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2の入力値Vb_x_tからの修正量(=Vw_x_lim2−Vb_x_t)だけ、要求重心速度Vb_x_aimを補正してなる値(当該修正量をVb_x_aimに加算した値)が、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして決定される。
また、Y軸方向については、リミット処理部100の出力値Vw_y_lim2の入力値Vb_y_tからの修正量(=Vw_y_lim2−Vb_y_t)だけ、要求重心速度Vb_y_aimを補正してなる値(当該修正量をVb_y_aimに加算した値)が、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとして決定される。
この場合において、例えばX軸方向の速度に関し、要求重心速度Vb_x_aimが“0”でない場合には、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、要求重心速度Vb_x_aimよりも“0”に近づくか、もしくは、要求重心速度Vb_x_aimと逆向きの速度となる。また、要求重心速度Vb_x_aimが“0”である場合には、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、定常偏差算出部94_xが出力するX軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdと逆向きの速度となる。これらのことは、Y軸方向の速度に関しても同様である。
以上が、重心速度制限部76の処理である。
図9の説明に戻って、制御ユニット50は、以上の如く重心速度算出部72、重心速度制限部76、ゲイン調整部78、及び偏差演算部70の処理を実行した後、次に、姿勢制御演算部80の処理を実行する。
この姿勢制御演算部80の処理を、以下に図13を参照して説明する。なお、図13において、括弧を付していない参照符号は、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xの回転角速度の目標値である前記仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmdを決定する処理に係わる参照符号であり、括弧付きの参照符合は、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yの回転角速度の目標値である前記仮想車輪回転角速度指令ωw_y_cmdを決定する処理に係わる参照符号である。
姿勢制御演算部80には、偏差演算部70で算出された基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sと、前記STEP2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_sと、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_sと、重心速度制限部76で算出された制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdと、ゲイン調整部78で算出されたゲイン調整パラメータKr_xyとが入力される。
そして、姿勢制御演算部80は、まず、これらの入力値を用いて、次式07x,07yにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_xy_cmdを算出する。

ωwdot_x_cmd=K1_x・θbe_x_s+K2_x・θbdot_x_s
+K3_x・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd) ……式07x
ωwdot_y_cmd=K1_y・θbe_y_s+K2_y・θbdot_y_s
+K3_y・(Vb_y_s−Vb_y_mdfd) ……式07y

従って、本実施形態では、Y軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_xの運動(ひいては、Y軸方向から見た車両系重心点の運動)を制御するための操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdと、X軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_yの運動(ひいては、X軸方向から見た車両系重心点の運動)を制御するための操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdとは、それぞれ、3つの操作量成分(式07x,07yの右辺の3つの項)を加え合わせることによって決定される。
この場合、式07xにおける各操作量成分に係わるゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xは、ゲイン調整パラメータKr_xに応じて可変的に設定され、式07yにおける各操作量成分に係わるゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yは、ゲイン調整パラメータKr_yに応じて可変的に設定される。以降、式07xにおけるゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xのそれぞれを第1ゲイン係数K1_x、第2ゲイン係数K2_x、第3ゲイン係数K3_xということがある。このことは、式07yにおけるゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yについても同様とする。
式07xにおける第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)と、式07yにおける第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)とは、図13中にただし書きで示した如く、次式09x、09yにより、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yに応じて決定される。

Ki_x=(1−Kr_x)・Ki_a_x+Kr_x・Ki_b_x ……式09x
Ki_y=(1−Kr_y)・Ki_a_y+Kr_y・Ki_b_y ……式09y
(i=1,2,3)

ここで、式09xにおけるKi_a_x、Ki_b_xは、それぞれ、第iゲイン係数Ki_xの最小側(“0”に近い側)のゲイン係数値、最大側(“0”から離れる側)のゲイン係数値としてあらかじめ設定された定数値である。このことは、式09yにおけるKi_a_y、Ki_b_yについても同様である。
従って、式07xの演算に用いる各第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)は、それぞれに対応する定数値Ki_a_x、Ki_b_xの重み付き平均値として決定される。そして、この場合、Ki_a_x、Ki_b_xにそれぞれ掛かる重みが、ゲイン調整パラメータKr_xに応じて変化させられる。このため、Kr_x=0である場合には、Ki_x=Ki_a_xとなり、Kr_x=1である場合には、Ki_x=Ki_b_xとなる。そして、Kr_xが“0”から“1”に近づくに伴い、第iゲイン係数Ki_xはKi_a_xからKi_b_x近づいていく。
同様に、式07yの演算に用いる各第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)は、それぞれに対応する定数値Ki_a_y、Ki_b_yの重み付き平均値として決定される。そして、この場合、Ki_a_y、Ki_b_yにそれぞれ掛かる重みが、ゲイン調整パラメータKr_yに応じて変化させられる。このため、Ki_xの場合と同様に、Kr_yの値が“0”から“1”の間で変化するに伴い、第iゲイン係数Ki_yの値が、Ki_a_yとKi_b_yとの間で変化する。
補足すると、上記定数値Ki_a_x、Ki_b_x及びKi_a_y,Ki_b_y(i=1,2,3)は、前記STEP6又は8において値が設定される定数パラメータに含まれるものである。
姿勢制御演算部80は、上記の如く決定した第1〜第3ゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xを用いて前記式07xの演算を行なうことで、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを算出する。
さらに詳細には、図13を参照して、姿勢制御演算部80は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_sに第1ゲイン係数K1_xを乗じてなる操作量成分u1_xと、基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに第2ゲイン係数K2_xを乗じてなる操作量成分u2_xとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、重心速度推定値Vb_x_sと制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差(=Vb_x_s−Vb_x_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_xを乗じてなる操作量成u3_xを処理部80cで算出する。そして、姿勢制御演算部80は、これらの操作量成分u1_x,u2_x,u3_xを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを算出する。
同様に、姿勢制御演算部80は、上記の如く決定した第1〜第3ゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yを用いて前記式07yの演算を行なうことで、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを算出する。
この場合には、姿勢制御演算部80は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_y_sに第1ゲイン係数K1_yを乗じてなる操作量成分u1_yと、基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに第2ゲイン係数K2_yを乗じてなる操作量成分u2_yとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、重心速度推定値Vb_y_sと制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとの偏差(=Vb_y_s−Vb_y_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_yを乗じてなる操作量成u3_yを処理部80cで算出する。そして、姿勢制御演算部80は、これらの操作量成分u1_y,u2_y,u3_yを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを算出する。
ここで、式07xの右辺の第1項(=第1操作量成分u1_x)及び第2項(=第2操作量成分u2_x)は、X軸周り方向での基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_sを、フィードバック制御則としてのPD則(比例・微分則)により“0”に収束させる(基体傾斜角度計測値θb_x_sを目標値θb_x_objに収束させる)ためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
また、式07xの右辺の第3項(=第3操作量成分u3_x)は、重心速度推定値Vb_x_sと制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差をフィードバック制御則としての比例則により“0”に収束させる(Vb_x_sをVb_x_mdfdに収束させる)ためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
これらのことは、式07yの右辺の第1〜第3項(第1〜第3操作量成分u1_y,u2_y,u3_y)についても同様である。
姿勢制御演算部80は、上記の如く、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdを算出した後、次に、これらのωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdをそれぞれ積分器80fにより積分することによって、前記仮想車輪回転速度指令ωw_x_cmdωw_y_cmdを決定する。
以上が姿勢制御演算部80の処理の詳細である。
補足すると、式07xの右辺の第3項を、Vb_x_sに応じた操作量成分(=K3_x・Vb_x_s)と、Vb_x_mdfdに応じた操作量成分(=−K3_x・Vb_x_mdfd)とに分離した式によって、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを算出するようにしてよい。同様に、式07yの右辺の第3項を、Vb_y_sに応じた操作量成分(=K3_y・Vb_y_s)と、Vb_y_mdfdに応じた操作量成分(=−K3_y・Vb_y_mdfd)とに分離した式によって、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを算出するようにしてよい。
また、本実施形態では、車両系重心点の挙動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_x,62_yの回転角加速度指令ωw_x_cmd,ωw_y_cmdを用いるようにしたが、例えば、仮想車輪62_x,62_yの駆動トルク、あるいは、この駆動トルクを各仮想車輪62_x,62_yの半径Rw_x,Rw_yで除算してなる並進力(すなわち仮想車輪62_x,62_yと床面との間の摩擦力)を操作量として用いるようにしてもよい。
図9の説明に戻って、制御ユニット50は、次に、姿勢制御演算部80で上記の如く決定した仮想車輪回転速度指令ωw_x_cmdωw_y_cmdをモータ指令演算部82に入力し、該モータ指令演算部82の処理を実行することによって、電動モータ31Rの速度指令ω_R_cmdと電動モータ31Lの速度指令ω_L_cmdとを決定する。このモータ指令演算部82の処理は、前記リミット処理部86(図11参照)のXY−RL変換部86bの処理と同じである。
具体的には、モータ指令演算部82は、前記式01a,01bのωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_cmdωw_y_cmd,ω_R_cmd,ω_L_cmdに置き換えて得られる連立方程式を、ω_R_cmd,ω_L_cmdを未知数として解くことによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令ω_R_cmdω_L_cmdを決定する。
以上により前記STEP9の車両制御演算処理が完了する。
以上説明した如く制御ユニット50が制御演算処理を実行することによって、前記搭乗モード及び自立モードのいずれの動作モードにおいても、基本的には、基体9の姿勢が、前記基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s,θbe_y_sの両方が“0”となる姿勢(以下、この姿勢を基本姿勢という)に保たれるように、換言すれば、車両系重心点(車両・乗員全体重心点又は車両単体重心点)の位置が、車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態に保たれるように、操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_xy_cmdが決定される。より詳しく言えば、基体9の姿勢を前記基本姿勢に保ちつつ、車両系重心点の移動速度の推定値としての重心速度推定値Vb_xy_sを制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdに収束させるように、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_xy_cmdが決定される。なお、制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdは、通常は(詳しくは搭乗モードで乗員等が車両1の付加的な推進力を付与しない限り)、“0”である。この場合には、基体9の姿勢を前記基本姿勢に保ちつつ、車両系重心点がほぼ静止するように、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_xy_cmdが決定されることとなる。
そして、ωwdot_xy_cmdの各成分を積分してなる仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを変換してなる電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が、電動モータ31R,31Lの速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdとして決定される。さらに、その速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdに従って、各電動モータ31R,31Lの回転速度が制御される。ひいては車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度が、ωw_x_cmdに対応する仮想車輪62_xの移動速度と、ωw_y_cmdに対応する仮想車輪62_yの移動速度とに各々一致するように制御される。
このため、例えば、Y軸周り方向で、実際の基体傾斜角度θb_xが目標値θb_x_objから前傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_x_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が前方に向かって移動する。同様に、実際のθb_xが目標値θb_x_objから後傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_x_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が後方に向かって移動する。
また、例えば、X軸周り方向で、実際の基体傾斜角度θb_yが目標値θb_y_objから右傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_y_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が右向きに移動する。同様に、実際のθb_yが目標値θb_y_objから左傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_y_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が左向きに移動する。
さらに、実際の基体傾斜角度θb_x,θb_yの両方が、それぞれ目標値θb_x_obj,θb_y_objからずれると、θb_xのずれを解消するための車輪体5の前後方向の移動動作と、θb_yのずれを解消するための車輪体5の左右方向の移動動作とが合成され、車輪体5がX軸方向及びY軸方向の合成方向(X軸方向及びY軸方向の両方向に対して傾斜した方向)に移動することとなる。
このようにして、基体9が前記基本姿勢から傾くと、その傾いた側に向かって、車輪体5が移動することとなる。従って、例えば前記搭乗モードにおいて、乗員が意図的にその上体を傾けると、その傾けた側に、車輪体5が移動することとなる。
なお、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdが“0”である場合には、基体9の姿勢が基本姿勢に収束すると、車輪体5の移動もほぼ停止する。また、例えば、基体9のY軸周り方向の傾斜角度θb_xを基本姿勢から傾いた一定の角度に維持すると、車輪体5のX軸方向の移動速度は、その角度に対応する一定の移動速度(制御用目標重心速度Vb_x_mdfdと一定の定常偏差を有する移動速度)に収束する。このことは、基体9のX軸周り方向の傾斜角度θb_yを基本姿勢から傾いた一定の角度に維持した場合も同様である。
また、例えば、前記要求重心速度生成部74で生成される要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimの両方が“0”となっている状況において、基体9の前記基本姿勢からの傾き量(基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s,θbe_y_s)が比較的大きくなり、それを解消し、もしくはその傾き量を維持するために必要な車輪体5のX軸方向及びY軸方向の一方又は両方の移動速度(これらの移動速度は、それぞれ、図12に示した前記重心速度定常偏差予測値Vb_x_prd、Vb_y_prdに相当する)が、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度を許容範囲から逸脱させてしまうような、過大な移動速度になるような状況では、該車輪体5の移動速度に対して逆向きとなる速度(詳しくは、Vw_x_lim2−Vb_x_prd及びVw_y_lim2−Vb_y_prd)が制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。そして、制御入力を構成する操作量成分のうちの操作量成分u3_x,u3_yが、この制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをそれぞれ収束させるように決定される。このため、基体9の前記基本姿勢からの傾き量が過大になるのを予防し、ひいては、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度が高速になり過ぎるのが防止される。
さらに、前記ゲイン調整部78では、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sの一方又は両方が大きくなり、ひいては、基体9の前記基本姿勢からの傾きを解消し、もしくはその傾き量を維持するために必要な車輪体5のX軸方向及びY軸方向の一方又は両方の移動速度が、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度を許容範囲から逸脱させてしまうような、過大な移動速度になる恐れがある状況では、その逸脱が顕著になるほど(詳しくは、図10に示すVover_x,Vover_yの絶対値が大きくなるほど)、前記ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yの一方又は両方が“0”から“1”に近づけられる。
この場合、前記式09xにより算出される各第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)は、Kr_xが“1”に近づくほど、最小側の定数値Ki_a_xから最大側の定数値Ki_b_xに近づく。このことは、前記式09yにより算出される各第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)についても同様である。
そして、上記ゲイン係数の絶対値が大きくなることによって、基体9の傾きの変化に対する操作量(仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmd)の感度が高まる。従って、基体9の基本姿勢からの傾き量が大きくなろうとすると、それを素早く解消するように、車輪体5の移動速度が制御されることとなる。従って、基体9が基本姿勢から大きく傾くことが強めに抑制され、ひいては、車輪体5のX軸方向及びY軸方向の一方又は両方の移動速度が、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度を許容範囲から逸脱させてしまうような、過大な移動速度になるのを防止することができる。
また、搭乗モードにおいて、要求重心速度生成部74が、乗員等の操縦操作による要求に応じて要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aim(Vb_x_aim,Vb_y_aimの一方又は両方が“0”でない要求重心速度)を生成した場合には、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度が許容範囲を逸脱するような高速の回転角速度にならない限り(詳しくは図12に示すVw_x_lim2,Vw_y_lim2がVb_x_t,Vb_y_tにそれぞれ一致する限り)、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimがそれぞれ前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。このため、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimを実現するように(実際の重心速度が要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimに近づくように)、車輪体5の移動速度が制御される。
次に、説明を後回しにした、前記要求重心速度生成部74の処理の詳細を説明する。
要求重心速度生成部74は、本実施形態では、車両1の動作モードが自立モードである場合には、前記したように、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimを“0”とする。
一方、要求重心速度生成部74は、車両1の動作モードが搭乗モードである場合には、本実施形態では、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを“0”に保ちつつ、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを乗員等による車両1の操縦操作(車両1に推進力を付加する操作)に応じて可変的に決定する。
ここで、例えば、車両1の乗員が、車両1の発進時等において、車両1の移動速度(車両系重心点の移動速度)を前後方向で積極的に増速させようとする場合には、自身の足により床を蹴り、それにより車両1に移動速度を前後方向で増速させる推進力(乗員の足平と床との摩擦力による推進力)を車両1に付加する。あるいは、例えば、車両1の乗員の要求に応じて、外部の補助者等が、車両1にその移動速度を前後方向で増速させる推進力を付加する場合もある。
このような場合に、要求重心速度生成部74は、前記重心速度算出部72で算出されるX軸方向の重心速度推定値Vb_x_sの大きさ(絶対値)の時間的変化率に基づいて、車両1の移動速度(詳しくは、車両系重心点の移動速度)をX軸方向で増速させる要求としての加速要求の発生の有無を判断しつつ、それに応じて、要求重心速度Vb_x_aimを逐次決定する。なお、加速要求の発生時とその直後の期間とを除く通常的な状態では、要求重心速度生成部74は、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを“0”に保持する。
具体的には、要求重心速度生成部74は、図14のフローチャートに示す処理を所定の制御処理周期で逐次実行することによって、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを決定する。
以下説明すると、要求重心速度生成部74は、まず、STEP21の処理を実行する。この処理では、要求重心速度生成部74は、入力される重心速度推定値Vb_x_sの絶対値|Vb_x_s|の時間的変化率(微分値)DVb_x_sを算出する。以降、DVb_x_sを重心速度絶対値変化率DVb_x_sという。
次いで、STEP22に進んで、前記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdを決定するための制御ユニット50の現在の演算処理モードが、どのモードであるかを判断する。
ここで、本実施形態では、要求重心速度生成部74は、要求重心速度Vb_x_aimの基本値(以下、要求重心速度基本値Vb_x_aim1)を決定した上で、この要求重心速度基本値Vb_x_aim1に一次遅れの応答時定数で追従させる(定常的には一致させる)ように要求重心速度Vb_x_aimを決定する。この場合、この要求重心速度基本値Vb_x_aim1の決定の仕方が、上記演算処理モードによって規定されるようになっている。
そして、本実施形態では、該演算処理モードとしては、第1処理モード及び第2処理モードの2種類のモードがある。
第1処理モードは、車両1の移動速度を減衰させる(前記第3操作量成分u3_xyの機能によってX軸方向及びY軸方向の重心速度Vb_xyを“0”に近づけていく)ように、ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdを決定する処理モードである。この第1処理モードでは、要求重心速度生成部74は、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを“0”に保持しつつ、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを“0”に収束させる(定常的には“0”に保持する)ように、要求重心速度基本値Vb_x_aim1を逐次決定する。
また、第2処理モードは、第1処理モードに比して、X軸方向での車両1の移動速度の減衰が生じ難いように(X軸方向における第3操作量成分u3_xが“0”もしくはそれに近い値になるように)、ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdを決定する処理モードである。この第2処理モードでは、要求重心速度生成部74は、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを“0”に保持しつつ、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを、車両系重心点の実際のX軸方向の移動速度としての重心速度推定値Vb_x_sに追従させるように(ほぼ一致させるように)、要求重心速度基本値Vb_x_aim1を逐次決定する。
なお、制御ユニット50の起動時等に該制御ユニット50が初期化された状態での演算処理モード(初期演算処理モード)は、第1処理モードである。
要求重心速度生成部74は、上記STEP22において、現在の演算処理モードが第1処理モードである場合と、第2処理モードである場合とで、それぞれ、次に、STEP23の演算処理、STEP24の演算処理を実行し、要求重心速度基本値Vb_x_aim1を決定する。
これらの各モードに対応する演算処理は、次のように実行される。
STEP23における第1処理モード用の演算処理は、図15のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、要求重心速度生成部74は、まず、前記STEP21で算出した重心速度絶対値変化率DVb_x_sが、あらかじめ設定された正の値の第1閾値DV1_x(>0)よりも大きいか否かをSTEP23−1で判断する。この判断処理は、車両1の移動速度を車両1の前後方向で増速させようとする加速要求が有るか否かを判断する処理である。
この場合、DVb_x_s>DV1_xであるということは、X軸方向での実際の重心速度Vb_xの絶対値|Vb_x|が第1閾値DV1_xよりも大きな時間的変化率で増加している状況を意味する。従って、STEP23−1の判断結果が肯定的になる状況は、乗員あるいは外部の補助者等により前後方向での重心速度Vb_xの大きさを増加させようとする操縦操作(車両1に概略前後方向の推進力を付加する操縦操作)が行なわれている状況である。
STEP23−1の判断結果が否定的となる場合、すなわち、車両1の加速要求(前後方向での車両1の加速要求)が無い場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−4において、要求重心速度基本値Vb_x_aim1の値を“0”に設定し、図15の処理を終了する。
一方、STEP23−1の判断結果が肯定的となる場合、すなわち、前後方向での車両1の加速要求が発生した場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−2で要求重心速度基本値Vb_x_aim1を決定する。この場合、要求重心速度生成部74は、重心速度算出部72から入力されたX軸方向の重心速度推定値Vb_x_sに、あらかじめ設定された所定値の第1比率γ1を乗じてなる値を、要求重心速度基本値Vb_x_aim1として決定する。上記第1比率γ1は、本実施形態では、“1”よりも若干小さい正の値(例えば0.8)に設定されている。このようなSTEP23−2の処理は、Vb_x_aim1の決定の仕方を、次回の制御処理サイクルから開始する第2処理モードに合わせるものである。
なお、上記第1比率γ1の値が“1”よりも若干小さいことは必須ではなく、例えば、該第1比率γ1の値を“1”あるいはそれよりも若干大きい値に設定してもよい。本実施態では、車両1の移動速度の増速中に、乗員が体感的(感覚的)に認識する車両1の移動速度(詳しくは、車両系重心点の移動速度)が、実際の移動速度に比べて高速であるかのように認識されるのを防止するために、第1比率γ1の値を“1”よりも若干小さい値に設定している。
次いで、要求重心速度生成部74は、STEP23−3で演算処理モードを第1処理モードから第2処理モードに変更し、図15の処理を終了する。
以上が、STEP23における第1処理モード用の演算処理である。
なお、STEP23−1の判断結果が否定的となる場合には、演算処理モードは変更されないので、次回の制御処理周期においても、演算処理モードは、第1処理モードに維持されることとなる。
次に、STEP24における第2処理モード用の演算処理は、図16のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、要求重心速度生成部74は、まず、前記STEP21で算出した重心速度絶対値変化率DVb_x_sが、あらかじめ設定された負の値の第3閾値DV3(<0)よりも小さいか否かをSTEP24−1において判断する。この判断処理は、車両1の乗員が重心速度Vb_xの大きさを積極的に減少させようとする減速要求が発生したか否かを判断するものである。この場合、車両1の乗員が意図的に自身の足を接地させ、自身の足と床との間に車両1の制動方向の摩擦力を発生させたような場合にSTEP24−1の判断結果が肯定的になる。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP24−1の判断結果が肯定的である場合(減速要求が発生した場合)には、STEP24−9において、要求重心速度基本値Vb_x_aim1の値を“0”に設定する。さらに、要求重心速度生成部74は、演算処理モードを第2処理モードから第1処理モードに変更した後、図16の処理を終了する。
また、STEP24−1の判断結果が否定的である場合(減速要求が発生していない場合)には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP24−2の判断処理を実行する。
この判断処理では、要求重心速度生成部74は、前記重心速度絶対値変化率DVb_x_s(STEP21で算出した値)が、あらかじめ設定された第2閾値DV2よりも小さいか否かを判断する。この第2閾値DV2は、本実施形態では、前記第3閾値DV3よりも大きい(DV3よりも“0”に近い)負の所定値に設定されている。なお、第2閾値DV2は、“0”もしくは“0”よりも若干大きい正の値(但し、前記第1閾値DV1よりも小さい値)に設定されていてもよい。
このSTEP24−2の判断処理は、加速要求が解消したか否か(車両1の移動速度の増速のために車両1に推進力が付加される状態が終了したか否か)を判断するものである。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP24−2の判断結果が否定的である場合には、加速要求が継続しているものとして、STEP24−3において要求重心速度基本値Vb_x_aim1を決定し、図16の処理を終了する。この場合、STEP24−3では、前記STEP23−2と同じ処理によりVb_x_aim1が決定される。すなわち、要求重心速度生成部74は、重心速度算出部72から入力されたX軸方向の重心速度推定値Vb_x_sに、前記第1比率γ1を乗じてなる値をVb_x_aim1として決定する。なお、この場合、演算処理モードは、次回の制御処理周期でも第2処理モードに維持される。
また、STEP24−2の判断結果が肯定的である場合、すなわち、加速要求が解消したものと判断される場合には、要求重心速度生成部74は、さらに、STEP24−4の判断処理を実行する。
この判断処理では、前記重心速度絶対値変化率DVb_x_sの前回値DVb_x_s_pが、前記第2閾値DV2以上であるか否か、すなわち、前回の制御処理周期においてSTEP24−2の判断結果が否定的であったか否かが判断される。
このSTEP24−4の判断結果が肯定的となるということは、現在の制御処理周期が、加速要求が継続している状態から解消状態に切替わった直後のタイミングであることを意味する。そして、この場合には、要求重心速度生成部74は、STEP24−5において、カウントダウンタイマを初期化する。
このカウントダウンタイマは、加速要求の解消後の経過時間(詳しくは、加速要求及び減速要求が発生しない状態での経過時間)を計時するタイマである。そして、STEP24−5では、該タイマの計時値CNTに、あらかじめ設定された初期値Tmがセットされる。初期値Tmは、加速要求の解消後、加速要求及び減速要求が発生しない状態で第2処理モードを継続させようとする時間の設定値を意味する。
次いで、要求重心速度生成部74は、STEP24−6において要求重心速度基本値Vb_x_aim1を決定し、図16の処理を終了する。なお、この場合、演算処理モードは、次回の制御処理周期でも第2処理モードに維持される。
本実施形態では、上記STEP24−6では、要求重心速度生成部74は、重心速度算出部72から入力されたX軸方向の重心速度推定値Vb_x_sに、あらかじめ設定された所定値の第2比率γ2を乗じてなる値を、要求重心速度基本値Vb_x_aim1として決定する。上記第2比率γ2は、本実施形態では、例えば、前記第1比率γ1よりも“1”に近い正の値(例えば0.9)に設定されている。
なお、上記第2比率γ2の値が第1比率γ1よりも“1”に近い値であることは必須ではなく、例えば、該第2比率γ2の値を第1比率γ1と同じ値に設定してもよい。あるいは、第2比率γ2を“1”、あるいは“1”よりも若干大きい値、あるいは、第1比率γ1よりも若干小さい値に設定してもよい。第2比率γ2は、基本的には、“1”近傍の値で、第1比率γ1と一致もしくはほぼ一致することが好ましい。
STEP24−4の判断結果が否定的である場合(詳しくは、加速要求の解消後で、加速要求及び減速要求が無い状態が継続している場合)には、要求重心速度生成部74は、STEP24−7において、前記カウントダウンタイマの計時値CNTをデクリメントする。すなわち、計時値CNTの現在値から所定値ΔT(制御処理周期の時間)を差し引くことによって、計時値CNTを更新する。
次いで、要求重心速度生成部74は、カウントダウンタイマの計時値CNTが“0”よりも大きいか否か、すなわち、カウントダウンタイマの計時が終了したか否かをSTEP24−8にて判断する。
このSTEP24−8の判断結果が肯定的である場合は、加速要求が解消してから、カウントダウンタイマの前記初期値Tmにより表される時間が未だ経過していない場合である。この場合には、要求重心速度生成部74は、前記STEP24−6の処理を実行することで、Vb_x_s・γ2を要求重心速度基本値Vb_x_aim1として決定し、図16の処理を終了する。なお、この場合、演算処理モードは、次回の制御処理周期でも第2処理モードに維持される。
前記STEP24−8の判断結果が否定的となった場合、すなわち、加速要求が解消してから、カウントダウンタイマの前記初期値Tmにより表される所定時間が経過した場合には、要求重心速度生成部74は、STEP25−9において、要求重心速度基本値Vb_x_aim1の値を“0”に設定する。
さらに、要求重心速度生成部74は、STEP24−10にて、演算処理モードを第2処理モードから第1処理モードに戻し、図16の処理を終了する。
以上が、STEP24における第2処理モード用の演算処理である。
図14の説明に戻って、要求重心速度生成部74は、以上の如くSTEP23、24のいずれかの演算処理を実行した後、次に、その演算処理により決定した要求重心速度基本値Vb_x_aim1をフィルタに通す処理をSTEP25にて実行する。
該フィルタは、例えば一次遅れのフィルタ(ローパスフィルタ)である。従って、STEP25で得られるフィルタの出力値は、ある時定数で要求重心速度基本値Vb_x_aim1に追従していくものとなる。このため、演算処理モードの切替わりの直後等でVb_x_aim1が急激もしくは不連続に変化しても、該フィルタの出力値が滑らかに変化しつつ、Vb_x_aim1に追従する(定常的には、Vb_x_aim1に一致する)こととなる。
次いで、STEP26に進んで、要求重心速度生成部74は、上記フィルタの出力値をリミッタに通すことによって、最終的にX軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを決定する。この場合、該リミッタは、要求重心速度Vb_x_aimの絶対値が過大になるのを防止するためのものであり、フィルタの出力値があらかじめ設定された所定の上限値(>0)と下限値(<0)との間の範囲に収まる場合には、フィルタの出力値をそのまま要求重心速度Vb_x_aimとして出力する。また、該リミッタは、フィルタの出力値の絶対値が上記上限値と下限値との間の範囲から逸脱している場合には、該上限値と下限値とのうちのフィルタの出力値に近い方の限界値を要求重心速度Vb_x_aimとして出力する。
なお、上記上限値と下限値とは、それらの絶対値が同一でなくてもよく、それらの絶対値が互いに異なっていてもよい。
以上がX軸方向の要求重心速度Vb_x_aimの生成処理の詳細である。
補足すると、STEP25で用いるフィルタの時定数を、演算処理モード等に応じて変化させてもよい。例えば、第1処理モードでは、フィルタの時定数を相対的に長めの時間値に設定し、第2処理モードではフィルタの時定数を相対的に短めの時間値に設定してもよい。このようにすることで、第1処理モードでは、特に、第2処理モードからの移行直後に、要求重心速度Vb_x_aimが急減に減衰するのが防止される。また、第2処理モードでは、特に、車両1のX軸方向での実際の重心速度Vb_xの増速中に、要求重心速度Vb_x_aimを素早く実際の該重心速度Vb_xの変化に追従させることができる。また、例えば、第1処理モードでは、減速要求が発生している状況では、減速要求が発生していない状況よりも、上記フィルタの時定数を短めに設定し、要求重心速度Vb_x_aimをより素早く“0”に減衰させるようにしてもよい。
また、例えば、演算処理モードが第2処理モードから第1処理モードに切替わった直後においては、要求重心速度基本値Vb_x_aim1自体を、所定の変化速度(所定の時間的変化率)で“0”まで徐々に変化させていくようにしてもよい。
以上説明した要求重心速度生成部74の処理によって、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimは、以下のような態様で決定されることとなる。
例えば、車両1の移動速度を乗員の前後方向(X軸方向)で増速するために、乗員が自身の足平で床を蹴ることによって、あるいは、補助者等が車両1を押すことによって、車両1に対して、概略前後方向の推進力(詳しくは、前記STEP23−1の判断結果が肯定的となるような推進力)を付加した場合を想定する。
なお、推進力を付加する前の演算処理モードは、前記第1処理モードであるとする。また、ここでは、理解の便宜上、図14のSTEP25で得られるフィルタの出力値は、STEP26でのリミッタによる強制的な制限がかからない程度の範囲内に収まるものとする。すなわち、STEP26で逐次決定される要求重心速度Vb_x_aimは、要求重心速度基本値Vb_x_aim1をフィルタに通した値に一致するものとする。同様に、実際の重心速度Vb_x,Vb_yが、前記リミット処理部104での出力値V_x_lim2,V_y_lim2の強制的な制限が行なわれない程度の範囲内に収まるものとする。すなわち、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdは、それぞれ要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimに一致するものとする。このような状況は、車両1の標準的(通常的)な動作状況である。
この場合、車両1に推進力を付加することによって、前記STEP23−1の判断結果が肯定的となると、図15のSTEP23−3の処理によって、演算処理モードが第1処理モードから第2処理モードに変更されることとなる。
この第2処理モードでは、減速要求が発生しない状況(STEP24−1の判断結果が否定的となる状況)で、加速要求が解消するまでの期間(STEP24−2の判断結果が肯定的になるまでの期間)において、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sの今回値(現在値)に、所定値の第1比率γ1を乗じてなる値、すなわち、Vb_x_sよりも若干小さい大きさの速度値が、要求重心速度基本値Vb_x_aim1として逐次決定される。
このため、要求重心速度生成部74が逐次決定する要求重心速度Vb_x_aimは、車両1に付加された推進力によって増速する実際の重心速度Vb_xにほぼ一致する速度値(=γ1・Vb_x_s)に追従するように、決定されることとなる。
そして、このように決定される要求重心速度Vb_x_aimがX軸方向の前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして決定される。従って、Vb_x_mdfdは、γ1・Vb_x_sに一致又はほぼ一致する値となる。また、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimは“0”に保持されるので、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは“0”となる。さらに、各仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_cmd,ωdotw_y_cmdにそれぞれ含まれる第3操作量成分u3_x,u3_yは、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを各々収束させるように決定される。
この結果、乗員が車両1に付加した推進力による車両系重心点の実際の移動速度の増速(概略前後方向での増速)が該推進力による要求に即して速やかに行なわれるように、車輪体5の移動速度が制御されることとなる。従って、車両1が付加された推進力によって乗員の前後方向で円滑に加速することとなる。
さらに詳細には、上記の如くVb_x_mdfdは、γ1・Vb_x_sに一致又はほぼ一致する値となるので、X軸方向に係わる第3操作量成分u3_xは、u3_x=K3_x・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd)≒K3_x・(1−γ1)・Vb_x_sとなる。そして、K3_x・(1−γ1)が、Vb_x_sの変化に対するωwdot_x_cmdの変化の感度(以下、対速度感度ということがある)に相当するものとなる。この場合、1−γ1は、“0”に近い値(本実施形態では、例えば0.2)であるので、上記対速度感度も“0”に近いものとなる。従って、ωwdot_x_cmdは、Vb_x_sに対する依存性が低いものとなり、Vb_x_sが変化してもωwdot_x_cmdの変化は微小なものとなる。ひいては、電動モータ31R,31Lによって車輪体5にX軸方向で付与される駆動力は、Vb_x_sの値に応じた規制を受け難いものとなる。その結果、上記の如く、車両1が付加された推進力によって乗員の前後方向で円滑に加速することとなる。
次に、第2処理モードにおいて、車両1への推進力の付加が終了し、加速要求が継続的に解消すると(図16のSTEP24−2、24−4の判断結果がそれぞれ、肯定的、否定的になると)、前記カウントダウンタイマの計時が終了するまでの所定時間Tmの期間において、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sの今回値(現在値)に、所定値の第2比率γ2を乗じてなる値、すなわち、Vb_x_sよりも若干小さい大きさの速度値が、要求重心速度基本値Vb_x__aim1として逐次決定される。
このため、要求重心速度生成部74が逐次決定する要求重心速度Vb_x_aimは、第2処理モードの開始後、加速要求が解消するまでの期間と同様に、実際の重心速度Vb_xにほぼ一致する速度値(=γ2・Vb_x_s)に追従するように、決定されることとなる。
そして、このように決定される要求重心速度Vb_x_aimがX軸方向の前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして決定される。従って、Vb_x_mdfdは、γ2・Vb_x_sに一致又はほぼ一致する値となる。また、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimは“0”に保持されるので、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdは“0”となる。さらに、各仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_cmd,ωdotw_y_cmdにそれぞれ含まれる第3操作量成分u3_x,u3_yは、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを各々収束させるように決定される。
この場合、X軸方向に係わる第3操作量成分u3_xは、u3_x=K3_x・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd)≒K3_x・(1−γ2)・Vb_x_sとなる。従って、K3_x・(1−γ2)が、前記対速度感度に相当するものとなる。そして、1−γ2は、“0”に近い値(本実施形態では、例えば0.1)であるので、上記対速度感度も“0”に近いものとなる。このため、第2処理モードの開始後、加速要求が解消するまでの期間と同様に、ωwdot_x_cmdは、Vb_x_sに対する依存性が低いものとなる。
この結果、加速要求が解消しても、その解消後、所定時間Tmが経過するまでの期間は、減速要求が発生しない限り、電動モータ31R,31Lによって車輪体5にX軸方向で付与される駆動力は、Vb_x_sの値の影響を受け難いものとなる。この場合、乗員が車両系重心点を、前記基本姿勢での位置よりも、車両1の後方側にずらすよように、基体9及びシート3を傾動させない限り、車輪体5には、制動方向の駆動力がほとんど作用しないこととなる。このため、車両1の加速後、所定時間Tmの期間は、乗員がその上体を積極的に動かすような操縦操作をせずとも、車両1が滑走するような状態が維持されることとなる。
次に、第2処理モードにおいて、減速要求が発生するか、又は、加速要求の解消後、所定時間Tmが経過した場合には、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”に減衰していき、最終的に“0”に保たれるように決定される。そして、このように決定されれるVb_x_aimが、X軸方向の前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして決定される。また、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimは“0”に保持されるので、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdは“0”となる。さらに、各仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdにそれぞれ含まれる第3操作量成分u3_x,u3_yは、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを各々収束させるように決定される。
この場合、X軸方向に係わる第3操作量成分u3_xが制動方向で増加していくこととなる。このため、車両1のX軸方向の移動速度が減衰していくこととなる。
補足すると、第1処理モードでは、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、基本的には、“0”となるか、もしくは、単調に“0”に近づけられていく。そして、この状態では、上記対速度感度は、前記第3ゲイン係数K3_x(>K3_x・(1−γ1))に一致するか、又は、K3_x・(1−γ2)からK3_xに近づいていく。従って、第2処理モードでは、前記対速度感度は、第1処理モードよりも相対的に低いものとなる。また、第1処理モードでは、Vb_x_sを“0”に近づけるように車輪体5に付与される駆動力が、第2処理モードよりも強めに作用することとなる。
また、第1処理モードと第2処理モードとのいずれにおいても、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdは、基本的には、“0”となる。従って、本実施形態では、Y軸方向での車両系重心点の移動速度Vb_yは、変動し難いものとなる。
なお、例えばγ1,γ2を“1”に設定することによって、第2処理モードでの第3操作量成分u3_xを“0”にすることもできる。このようにした場合には、第2処理モードにおいて、X軸方向の重心速度Vb_x_sの影響を全く受けないようにして、ωdotw_x_cmdを決定することができることとなる。
ここで、本実施形態の車両1と本発明との対応関係を補足しておく。
本実施形態では、X軸方向、Y軸方向がそれぞれ本発明における第1の方向、第2の方向に相当する。
また、傾斜センサ52と、図7のSTEP2の処理とによって、本発明における傾斜角度計測手段が実現される。そして、基体9の傾斜角度θb_x,θb_yが本発明における搭載部の傾斜角度に相当する。
また、前記車両系重心点(詳しくは車両・乗員全体重心点)が、本発明における車両の所定の代表点に相当し、前記重心速度算出部72によって、本発明における代表点速度計測手段が実現される。そして、重心速度Vb_x,Vb_yが本発明における代表点の移動速度に相当する。
また、制御ユニット50が実行する図7のSTEP9,10の処理によって、本発明における移動動作部制御手段が実現される。
また、前記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdがそれぞれの本発明における制御用操作量に相当する。この場合、詳しくは、ωwdot_x_cmdが第1制御用操作量に相当し、ωwdot_y_cmdが第2制御用操作量に相当する。
また、本実施形態では、第1処理モードでの前記第1ゲイン係数K1_x、第3ゲイン係数K3_x、第1操作量成分u1_x(式07xの右辺第1項)、第3操作量成分u3_x(式07xの右辺第3項)がそれぞれ、本発明における第1aゲイン係数、第1bゲイン係数、第1a操作量成分、第1b操作量成分に相当し、式07xの演算処理が第1合成処理に相当する。また、第2処理モードでの第3ゲイン係数K3_x、第3操作量成分u3_x(式07xの右辺第3項)がそれぞれ、本発明における第1dゲイン係数、第1d操作量に相当する。なお、本実施形態では、第1bゲイン係数と第1dゲイン係数とは同一の値となるが、第3ゲイン係数K3_xの値を第1処理モードと第2処理モードとで異ならせるようにしてもよい。
また、本実施形態では、前記STEP23−1の判断処理によって、本発明における加速要求判断手段が実現される。そして、このSTEP23−1の判断結果が肯定的となる場合が、本発明における所定の第1条件が成立する場合に相当する。さらに、STEP24−1の判断結果が肯定的となる場合、あるいは、STEP24−2とSTEP24−4との判断結果がそれぞれ、肯定的、否定的となる場合が、本発明における所定の第2条件が成立する場合に相当する。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図17〜図20を参照して説明する。なお、本実施形態は、制御ユニット50の一部の処理のみが第1実施形態と相違するものとである。従って、本実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成部分又は同一の機能部分については、第1実施形態と同一の参照符号を用い、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御ユニット50は、前記した図7のSTEP9の車両制御演算処理を実行するための機能として、図17のブロック図で示す機能を備えている。
この場合、本実施形態では、制御ユニット50は、第1実施形態と同様に、偏差演算部70、重心速度算出部72、ゲイン調整部78、重心速度制限部76、姿勢制御演算部80、モータ指令演算部82、遅延要素84を備える。
一方、本実施形態では、制御ユニット50は、第1実施形態における前記要求重心速度生成部74の代わりに、前記第3操作量成分u3_xに係わる第3ゲイン係数K3_xの値を調整するためのゲイン調整用パラメータKr_3を決定する速度ゲイン調整部106が備えられている。そして、この速度ゲイン調整部106に、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_x_sが入力されるようになっている。また、姿勢制御演算部80には、前記第1実施形態で説明した前記基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_s、基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_s、ゲイン調整パラメータKr_xy、制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdの他に、速度ゲイン調整部106が決定するゲイン調整用パラメータKr_3が入力されるようになっている。
なお、本実施形態では、搭乗モードと自立モードとのいずれの動作モードにおいても、重心速度制限部76の処理(図12に示した処理)で使用する要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimの値は常に“0”とされる。このため、図17では、重心速度制限部76にVb_x_aim,Vb_y_aimを入力することを省略している
そして、本実施形態における制御ユニット50の処理は、速度ゲイン調整部106の処理と、姿勢制御演算部80の一部の処理とが、第1実施形態と相違し、それ以外は、第1実施形態と同じである。
本実施形態は、車両1に概略前後方向の推進力が付加された場合に、第1実施形態の如くX軸方向の要求重心速度Vb_x_aim、ひいては、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdを可変的に調整する代わりに、第1ゲイン係数K3_xの値を調整するようにしたものである。
そして、この第1ゲイン係数K3_xの値の調整のためのゲイン調整パラメータKr3_xが、前記速度ゲイン調整部106により逐次決定される。この場合、速度ゲイン調整部106は、図18のフローチャートに示す処理によって、ゲイン調整パラメータKr3_xを決定する。
以下説明すると、速度ゲイン調整部106は、まず、前記STEP21と同じ処理をSTEP31で実行し、重心速度絶対値変化率DVb_x_sを算出する。
次いで、速度ゲイン調整部106は、STEP32の判断処理を実行する。この判断処理は、前記STEP22と同じ判断処理であり、現在の演算処理モード(仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdの決定の仕方のモード)が第1処理モードであるか、第2処理モードであるかが判断される。この場合、第1実施形態と同様に、第1処理モードは、車両1の移動速度を減衰させる(前記第3操作量成分u3_xyの機能によってX軸方向及びY軸方向の重心速度Vb_xyを“0”に近づけていく)ように、ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdを決定する処理モードである。また、第2処理モードは、第1処理モードに比して、X軸方向での車両1の移動速度の減衰が生じ難いように(X軸方向における第3操作量成分u3_xが“0”もしくはそれに近い値になるように)、ωwdot_x_cmdωwdot_y_cmdを決定する処理モードである。
そして、速度ゲイン調整部106は、上記STEP32において、現在の演算処理モードが第1処理モードである場合と、第2処理モードである場合とで、それぞれ、次に、STEP33の演算処理、STEP34の演算処理を実行し、ゲイン調整パラメータKr3_xの基本値Kr3_x_1(以下、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1という)を決定する。
STEP33における第1処理モード用の演算処理は、図19のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、速度ゲイン調整部106は、まず、前記STEP23−1と同じ判断処理をSTEP33−1で実行することによって、車両1の加速要求が発生したか否かを判断する。
そして、STEP33−1の判断結果が否定的である場合(加速要求が発生していない場合)には、速度ゲイン調整部106は、STEP33−4において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“1”に決定し、図19の処理を終了する。なお、この場合、演算処理モードは変更されないので、次回の制御処理周期においても、演算処理モードは、第1処理モードに維持されることとなる。
また、STEP33−1の判断結果が肯定的である場合(加速要求が発生した場合)には、速度ゲイン調整部106は、STEP33−2において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“0”に決定する。さらに、速度ゲイン調整部106は、STEP33−3において、演算処理モードを第1処理モードから第2処理モードに変更し、図19の処理を終了する。
以上が、STEP33における第1処理モード用の演算処理である。
次に、STEP34における第2処理モード用の演算処理は、図20のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、速度ゲイン調整部106は、まず、前記STEP24−1と同じ判断処理をSTEP34−1で実行することによって、車両1の減速要求が発生したか否かを判断する。
そして、この判断結果が肯定的である場合(減速要求が発生した場合)には、速度ゲイン調整部106は、STEP34−9において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“1”に決定する。さらに、速度ゲイン調整部106は、STEP34−10において、演算処理モードを第2処理モードから第1処理モードに戻し、図20の処理を終了する。
また、STEP34−1の判断結果が否定的である場合(減速要求が発生していない場合)には、前記STEP24−2と同じ判断処理をSTEP34−2で実行することによって、加速要求が解消したか否かを判断する。そして、速度ゲイン調整部106は、STEP34−2の判断結果が肯定的である場合(加速要求が継続しているものと見なされる場合)には、STEP34−3において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“0”に決定し、図20の処理を終了する。なお、この場合、演算処理モードは、次回の制御処理周期でも第2処理モードに維持される。
一方、STEP34−2の判断結果が肯定的である場合には、速度ゲイン調整部106は、前記STEP24−4と同じ判断処理をSTEP34−4で実行することによって、現在の制御処理周期が、加速要求が継続している状態から解消状態に切替わった直後のタイミングであるか否かを判断する。
そして、速度ゲイン調整部106は、前記STEP24−5と同じ処理をSTEP34−5で実行することによって、加速要求の解消後の経過時間を計時するためのカウントダウンタイマの計時値CNTを初期化する(計時値CNTとして所定時間Tmを設定する)。
次いで、速度ゲイン調整部106は、STEP34−6において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“0”に決定し、図20の処理を終了する。なお、この場合、演算処理モードは、次回の制御処理周期でも第2処理モードに維持される。
STEP34−4の判断結果が否定的である場合(加速要求の解消後で、加速要求及び減速要求が無い状態が継続している場合)には、速度ゲイン調整部106は、前記STEP24−7と同じ処理をSTEP34−7で実行することによって、カウントダウンタイマの計時値CNTをデクリメントする。
次いで、速度ゲイン調整部106は、前記STEP24−8と同じ判断処理をSTEP34−8で実行することによって、カウントダウンタイマの計時が終了したか否かを判断する。
このSTEP34−8の判断結果が肯定的である場合(加速要求が解消してから、所定時間Tmが未だ経過していない場合)には、速度ゲイン調整部106は、STEP34−6において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“0”に決定し、図20の処理を終了する。なお、この場合、演算処理モードは、次回の制御処理周期でも第2処理モードに維持される。
また、STEP34−8の判断結果が否定的となった場合(加速要求が解消してから、所定時間Tmが経過した場合)には、速度ゲイン調整部106は、前記したSTEP34−9、34−10の処理を実行し、図20の処理を終了する。すなわち、速度ゲイン調整部106は、要求重心速度生成部74は、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“1”に決定すると共に、演算処理モードを第2処理モードから第1処理モードに戻す。
以上が、STEP34における第2処理モード用の演算処理である。
図18の説明に戻って、速度ゲイン調整部106は、以上の如くSTEP33、34のいずれかの演算処理を実行した後、次に、その演算処理により決定したゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1をフィルタに通す処理をSTEP35で実行することによって、最終的にゲイン調整パラメータKr3_xを決定する。
該フィルタは、例えば一次遅れのフィルタ(ローパスフィルタ)である。従って、ゲイン調整パラメータKr3_xは、ある時定数でゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1に追従していくものとなる。このため、ゲイン調整パラメータKr3_xは、滑らかに変化しつつ、Kr3_x_1に追従する(定常的には、Kr3_x_1に一致する)こととなる。
以上が速度ゲイン調整部106の処理の詳細である。
補足すると、前記第1実施形態におけるSTEP25で用いるフィルタに関する時定数と同様に、STEP35で用いるフィルタの時定数を、演算処理モード等に応じて変化させてもよい。例えば、第1処理モードでは、フィルタの時定数を相対的に長めの時間値に設定し、第2処理モードではフィルタの時定数を相対的に短めの時間値に設定してもよい。また、例えば、第1処理モードでは、減速要求が発生している状況では、減速要求が発生していない状況よりも、上記フィルタの時定数を短めに設定し、ゲイン調整パラメータKr3_xが、より素早く“1”に復帰するようにしてもよい。
また、例えば、演算処理モードが第2処理モードから第1処理モードに切替わった直後においては、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1自体を、所定の変化速度(所定の時間的変化率)で“0”から“1”まで徐々に変化させていくようにしてもよい。
本実施形態では、以上の如く決定されるゲイン調整パラメータKr3_xが入力される姿勢制御演算部80は、以下に説明するようにように操作量(制御入力)としての前記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdを決定する。そして、姿勢制御演算部80は、第1実施形態と同様に、ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdを積分することにより、仮想車輪回転速度指令ωw_x_cmdωw_y_cmdを決定して出力する。
この場合、本実施形態では、Y軸方向に係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdの決定の仕方は、前記第1実施形態と同じである。すなわち、姿勢制御演算部80は、ゲイン調整部78から入力されるゲイン調整パラメータKr_yを用いて前記式09yにより第1〜第3ゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)を決定する。そして、姿勢制御演算部80は、この決定した第1〜第3ゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)を用いて、前記式07yの演算によりωwdot_y_cmdを決定する。
一方、本実施形態では、X軸方向に係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdの決定の仕方は、前記第1実施形態と相違する。具体的には、姿勢制御演算部80は、まず、第1実施形態と同様に、ゲイン調整部78から入力されるゲイン調整パラメータKr_xを用いて前記式09xにより第1〜第3ゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)を決定する。そして、姿勢制御演算部80は、これらの第1〜第3ゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)と、前記速度ゲイン調整部部106から入力されるゲイン調整パラメータKr3_xとを用いて、次式07x2の演算により、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを決定する。

ωwdot_x_cmd=K1_x・θbe_x_s+K2_x・θbdot_x_s
+(K3_x・Kr3)・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd)
……式07x2

すなわち、姿勢制御演算部80は、前記式07xの右辺の第3項(第3操作量成分u3_x)におけるゲイン係数K3_xの代わりに、このゲイン係数K3_xにゲイン調整パラメータKr3_xを乗じてなるゲイン係数(=K3_x・Kr3_x)を用いた式によって、ωwdot_x_cmdを決定する。この場合、Kr3=0である場合には、式07x2の第3項は、“0”となる。
本実施形態は、以上説明した事項以外は、前記第1実施形態と同一である。
かかる本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
より具体的には、演算処理モードが前記第1処理モードに継続的に維持されている状況で、第1実施形態の場合と同様に、車両1に対して、概略前後方向の推進力を付加した場合を想定する。
なお、ここでは、理解の便宜上、実際の重心速度Vb_x,Vb_yが、前記リミット処理部104での出力値V_x_lim2,V_y_lim2の強制的な制限が行なわれない程度の範囲内に収まるものとする。すなわち、車両1の動作状況は、標準的(通常的)な動作状況であり、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdが、それぞれ要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aim(本実施形態では、Vb_x_aim=Vb_y_aim=0)に一致するものとする。。
この場合、車両1に推進力を付加することによって、前記STEP33−1の判断結果が肯定的となると(加速要求が発生すると)、図19のSTEP33−3の処理によって、演算処理モードが第1処理モードから第2処理モードに変更される。
そして、この第2処理モードでは、減速要求が発生しない状況(STEP34−1の判断結果が否定的となる状況)において、加速要求が解消した後、所定時間Tmが経過するまでの期間において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値が“0”に決定される。
このため、ゲイン調整パラメータKr3_xは、“0”に保持されるか、又は、“1”よりも“0”に近い値に決定されることとなる。
ここで、前記式07x2から明らかなように、本実施形態では、X軸方向に関しては、K3_x・Kr3_xが、Vb_x_sの変化に対するωwdot_x_cmdの変化の感度(対速度感度)に相当するものとなる。そして、上記の如く、第2処理モードでKr3_xが“0”に保持されるか、又は、“1”よりも“0”に近い値に決定される状況では、K3_x・Kr3_x、ひいては、対速度感度は“0”もしくはこれに近い値になる。従って、ωwdot_x_cmdは、Vb_x_sに対する依存性が低いものとなり、Vb_x_sが変化してもωwdot_x_cmdが変化しないか、もしくは、その変化が微小なものとなる。ひいては、電動モータ31R,31Lによって車輪体5にX軸方向で付与される駆動力は、Vb_x_sの値に応じた規制を受け難いものとなる。その結果、車両1が付加された推進力によって乗員の前後方向で円滑に加速することとなる。
次に、第2処理モードにおいて、車両1への推進力の付加が終了し、加速要求が継続的に解消すると(図20のSTEP34−2、34−4の判断結果がそれぞれ、肯定的、否定的になると)、所定時間Tmが経過するまでの期間において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値が引き続き、“0”に保持される。このため、ゲイン調整パラメータKr3_xも“0”に保持されることとなる。
そして、このような状況では、前記対速度感度も“0”となり、ωwdot_x_cmdは、Vb_x_sの影響を受けないものとなる。従って、加速要求が解消しても、その解消後、所定時間Tmが経過するまでの期間は、減速要求が発生しない限り、電動モータ31R,31Lによって車輪体5にX軸方向で付与される駆動力は、Vb_x_sの値の影響を受けないものとなる。
この結果、第1実施形態と同様に、車両1の加速後、所定時間Tmの期間は、乗員がその上体を積極的に動かすような操縦操作をせずとも、車両1が滑走するような状態が維持されることとなる。
次に、第2処理モードにおいて、減速要求が発生するか、又は、加速要求の解消後、所定時間Tmが経過した場合には、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値が“0”から“1”に変更される。このため、ゲイン調整パラメータKr3_xは、“0”から“1”に近づいていき、最終的に、“1”に保たれる。
この場合、前記式07x2の第3項(第3操作量成分u3_x)が制動方向で増加していくこととなる。このため、車両1のX軸方向の移動速度が減衰していくこととなる。
補足すると、本実施形態における第1処理モードでは、前記対速度感度は、前記第3ゲイン係数K3_x(>K3_x・Kr3_x)に一致するか、又は、K3_x・Kr3_xからK3_xに近づいていく。従って、本実施形態においても、第2処理モードでは、前記対速度感度は、第1処理モードよりも相対的に低いものとなる。また、第1処理モードでは、Vb_x_sを“0”に近づけるように車輪体5に付与される駆動力が、第2処理モードよりも強めに作用することとなる。
また、Y軸方向に関しては、第1処理モードと第2処理モードとで、第3ゲイン係数K3_yは同じである。従って、第1処理モードと第2処理モードとのいずれにおいても、第1実施形態と同様に、Y軸方向での車両系重心点の移動速度Vb_yは、変動し難いものとなる。
なお、本実施形態では、第2処理モードでのSTEP34−3、34−6において、ゲイン調整パラメータ基本値Kr3_x_1の値を“0”としたが、STEP34−3、34−6の両方又は一方において、Kr3_x_1の値を“0”よりも若干大きい値(例えば0.1)に設定してもよい。このようにしても、基本的には、第2処理モードにおける対速度感度を十分に小さくして、車輪体5にX軸方向で付与される駆動力が、Vb_x_sの値の影響を受け難いようにすることができる。
ここで、本実施形態の車両1と本発明との対応関係を補足しておく。
本実施形態では、第1処理モードでの前記第1ゲイン係数K1_x、第3ゲイン係数K3_x、第1操作量成分u1_x(式07xの右辺第1項)、第3操作量成分u3_x(式07xの右辺第3項)がそれぞれ、本発明における第1aゲイン係数、第1bゲイン係数、第1a操作量成分、第1b操作量成分に相当し、式07xの演算処理が第1合成処理に相当する。また、第2処理モードでの第3ゲイン係数K3_xとゲイン調整パラメータKr3_xとの積(=K3_x・Kr3_x)、式07x2の右辺第3項がそれぞれ、本発明における第1dゲイン係数、第1d操作量に相当する。
また、本実施形態では、前記STEP33−1の判断処理によって、本発明における加速要求判断手段が実現される。そして、このSTEP33−1の判断結果が肯定的となる場合が、本発明における所定の第1条件が成立する場合に相当する。さらに、STEP34−1の判断結果が肯定的となる場合、あるいは、STEP34−2とSTEP34−4との判断結果がそれぞれ、肯定的、否定的となる場合が、本発明における所定の第2条件が成立する場合に相当する。
上記以外は、本実施形態と本発明との対応関係が、第1実施形態の場合と同様である。
次に、以上説明した実施形態に係わる変形態様に関していくつか説明しておく。
前記各実施形態では、Y軸方向に関しては、前記第1処理モードと第2処理モードとで、同じ処理により操作量としての仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを決定するようにしたが、X軸方向の場合と同様に、第1処理モードと第2処理モードとで異なル処理によりωwdot_y_cmdを決定するようにしてもよい。この場合、例えば、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを第1実施形態と同様に、第1処理モードと第2処理モードとで変化させるように決定すればよい。あるいは、例えば、前記式07yの第3項のゲイン係数を調整するためのゲイン調整パラメータを第2実施形態と同様の手法で、第1処理モードと第2処理モードとで変化させるように決定し、このゲイン調整パラメータを、式07yの第3項にさらに乗算してなる式によって、ωwdot_y_cmdを決定するようにすればよい。
また、前記実施形態では、図1及び図2に示した構造の車両1を例示したが、本発明における倒立振子型車両1は、本実施形態で例示した車両に限られるものではない。
具体的には、本実施形態の車両1の移動動作部としての車輪体5は一体構造のものであるが、例えば、前記特許文献3の図10に記載されているような構造のものであってもよい。すなわち、剛性を有する円環状の軸体に、複数のローラをその軸心が該軸体の接線方向に向くようにして回転自在に外挿し、これらの複数のローラを軸体に沿って円周方向に配列させることによって、車輪体を構成してもよい。
さらに移動動作部は、例えば、特許文献2の図3に記載されているようなクローラ状の構造のものであってもよい。
あるいは、例えば、前記特許文献2の図5、特許文献3の図7、もしくは特許文献1の図1に記載されているように、移動動作部を球体により構成し、この球体を、アクチュエータ装置(例えば前記車輪体5を有するアクチュエータ装置)によりX軸周り方向及びY軸周り方向に回転駆動するように車両を構成してもよい。
また、前記実施形態では、乗員の搭乗部としてシート3を備えた車両1を例示したが、本発明における倒立振子型車両は、例えば特許文献3の図8に見られるように、乗員が両足を載せるステップと、そのステップ上で起立した乗員が把持する部分とを基体に組付けた構造の車両であってもよい。
このように本発明は、前記特許文献1〜3等に見られる如き、各種の構造の倒立振子型車両に適用することが可能である。
さらには、本発明における倒立振子型車両は、移動動作部を複数(例えば、左右方向に2つ、あるいは、前後方向に2つ、あるいは、3つ以上)備えていてもよい。
また、移動動作部は、全方向に移動可能である必要はなく、1方向にのみ移動可能なものであってもよい。この場合、運搬対象物体の搭載部は、1軸周りでのみ傾動自在に基体に組付けられておればよい。例えば、前記実施形態での車輪体5の代わりに、X軸方向(乗員の前後方向)にのみ移動可能で、且つ、X軸周り方向での傾動が不能である(又は傾動し難い)移動動作部(例えば、Y軸方向の軸周りにのみ回転自在な複数の車輪をY軸方向に同軸心に並列させてなる移動動作部を車両1に備えてもよい。そして、この場合、運搬対象物体の搭載部をY軸方向の軸周りにのみ傾動自在とし、その傾動に応じて移動動作部がX軸方向に移動するようにしてもよい。
また、本発明における倒立振子型車両は、基体が乗員の搭乗部と共に傾動することは必須ではない。例えば、複数の移動動作部を有する場合に、これらの移動動作部を組付ける基体が床面に対して傾動しないようにすると共に、この基体に対して搭乗部を傾動自在に組付けるようにしてもよい。
1…倒立振子型車両、3…シート(搭乗部)、5…車輪体(移動動作部)、7…アクチュエータ装置、9…基体、52…傾斜センサ(傾斜角度計測手段)、72…重心速度算出部(代表点速度計測手段)、STEP2…傾斜姿勢計測手段、STEP9,10…移動動作部制御手段、STEP23−1…加速要求判断手段。

Claims (9)

  1. 床面上を移動可能な移動動作部と、該移動動作部を駆動するアクチュエータ装置と、該移動動作部及びアクチュエータ装置が組付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組付けられた乗員の搭乗部とを備えた倒立振子型車両の制御装置であって、
    前記搭乗部の実際の傾斜角度に応じた出力を生成する傾斜角度計測手段と、
    前記車両の所定の代表点の移動速度に応じた出力を生成する代表点速度計測手段と、
    前記移動動作部に付与する駆動力を規定する制御用操作量を決定し、その決定した制御用操作量に応じて前記移動動作部の移動動作を前記アクチュエータ装置を介して制御する移動動作部制御手段とを備え、
    前記移動動作部制御手段は、前記搭乗部に乗員が搭乗した状態で前記制御用操作量を決定するための処理モードとして、第1処理モードと、該第1処理モードの処理の実行中に所定の第1条件が成立した場合に該第1処理モードから移行する第2処理モードとを有すると共に、前記第1処理モードでは、前記傾斜角度計測手段の出力が示す前記搭乗部の傾斜角度の計測値と所定値の目標傾斜角度との偏差である傾斜偏差と、前記代表点速度計測手段の出力が示す前記代表点の移動速度の計測値と所定値の目標移動速度との偏差である速度偏差とを“0”に近づけるように、少なくとも前記傾斜偏差と速度偏差とに応じて前記制御用操作量を決定し、前記第2処理モードでは、前記代表点の移動速度の計測値又は該代表点の移動速度の計測値のうちの所定方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにしつつ、前記傾斜偏差及び速度偏差のうちの少なくとも傾斜偏差を“0”に近づけるように、少なくとも該傾斜偏差に応じて前記制御用操作量を決定することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  2. 請求項1記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記移動動作部は、床面上を互いに直交する第1の方向及び第2の方向を含む全方向に移動可能に構成されていると共に、前記搭乗部は、前記第1の方向の軸周りと第2の方向の軸周りとの2軸周りに傾動自在に前記基体に組付けられており、
    前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードでは、前記傾斜偏差のうちの第2の方向の軸周り成分である第1傾斜偏差成分と、第1の方向の軸周り成分である第2傾斜偏差成分と、前記速度偏差のうちの第1の方向の成分である第1速度偏差成分と第2の方向の成分である第2速度偏差成分とをそれぞれ“0”に近づけるように前記制御用操作量を決定し、前記第2処理モードでは、前記代表点の移動速度の計測値のうちの少なくとも第1の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなるようにしつつ、前記第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分、第1速度偏差成分及び第2速度偏差成分のうちの少なくとも第1傾斜偏差成分及び第2傾斜偏差成分を“0”に近づけるように前記制御用操作量を決定することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  3. 請求項2記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記第1の方向及び第2の方向は、それぞれ前記搭乗部に搭乗した乗員の前後方向、左右方向に設定されており、前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードでは、少なくとも前記代表点の移動速度の計測値のうちの第1の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも相対的に低くなり、且つ、前記代表点の移動速度の計測値のうちの第2の方向の成分の変化に対する前記制御用操作量の変化の感度が前記第1処理モードよりも低くならないようにしつつ、前記第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分、第1速度偏差成分及び第2速度偏差成分のうちの少なくとも第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分及び第2速度偏差成分を“0”に近づけるように、少なくとも該第1傾斜偏差成分、第2傾斜偏差成分及び第2速度偏差成分に応じて前記制御用操作量を決定することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  4. 請求項1記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記移動動作部は、床面上を少なくとも前記所定方向としての第1の方向に移動可能であると共に、前記制御用操作量は、前記第1の方向での移動動作部の移動動作を制御するために該移動動作部に付与する駆動力を規定する第1制御用操作量を少なくとも含み、
    前記移動動作部制御手段は、
    前記第1処理モードでは、少なくとも前記第1の方向に直交する方向の軸周りでの前記傾斜偏差に第1aゲイン係数を乗じてなる第1a操作量成分と前記第1の方向での前記速度偏差に第1bゲイン係数を乗じてなる第1b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定し、
    前記第2処理モードでは、前記第1の方向での前記速度偏差に前記第1bゲイン係数よりも小さい絶対値を有する第1cゲインを乗じてなる第1c操作量成分と、前記第1の方向での前記代表点の移動速度の計測値と該計測値に一致又は追従させるように該計測値に応じて可変的に決定した前記第1の方向での代表点の目標移動速度との偏差に第1dゲイン係数を乗じてなる第1d操作量成分と、“0”とのうちのいずれか1つを前記第1b操作量成分に代わりに用いる前記第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  5. 請求項2記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記制御用操作量は、前記第1の方向での移動動作部の移動動作を制御するために該移動動作部に付与する駆動力を規定する第1制御用操作量と、前記第2の方向での移動動作部の移動動作を制御するために該移動動作部に付与する駆動力を規定する第2制御用操作量とから構成され、
    前記移動動作部制御手段は、
    前記第1処理モードでは、少なくとも前記第1傾斜偏差成分に第1aゲイン係数を乗じてなる第1a操作量成分と、前記第1速度偏差成分に第1bゲイン係数を乗じてなる第1b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定すると共に、少なくとも前記第2傾斜偏差成分に第2aゲイン係数を乗じてなる第2a操作量成分と、前記第2速度偏差成分に第2bゲイン係数を乗じてなる第2b操作量成分とを含む所定の複数種類の操作量成分を合成する第2合成処理により前記第2制御用操作量を決定し、
    前記第2処理モードでは、前記第1速度偏差成分に前記第1bゲイン係数よりも小さい絶対値を有する第1cゲインを乗じてなる第1c操作量成分と、前記代表点の移動速度の計測値のうちの前記第1の方向の成分と該成分に一致又は追従させるように該成分に応じて可変的に決定した該第1の方向での前記代表点の目標移動速度との偏差に第1dゲイン係数を乗じてなる第1d操作量成分と、“0”とのうちのいずれか1つを前記第1b操作量成分に代わりに用いる前記第1合成処理により前記第1制御用操作量を決定すると共に、前記第1処理モードと同一の前記第2合成処理により前記第2制御用操作量を決定することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  6. 請求項1記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードの処理の実行中に所定の第2条件が成立した場合に、前記第1処理モードの処理を再開することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  7. 請求項6記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記代表点の移動速度を増速させる要求である加速要求が発生した否かを判断する加速要求判断手段を備え、
    前記移動動作部制御手段は、前記第1処理モードの処理の実行中に前記加速要求判断手段の判断結果が肯定的になった場合に、前記所定の第1条件が成立したものとして、前記第2処理モードの処理の実行を開始することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  8. 請求項7記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記移動動作部制御手段は、前記第2処理モードの処理の実行中に、前記加速要求判断手段の判断結果が否定的となる状態が所定時間、継続した場合に、前記所定の第2条件が成立したものとして前記第1処理モードの処理を再開することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
  9. 請求項7記載の倒立振子型車両の制御装置において、
    前記車両は、前記アクチュエータ装置により前記移動動作部を駆動することによって発生する車両の推進力以外の外力が付加された場合に、該外力によって前記代表点の移動速度を増速可能な車両であり、
    前記加速要求判断手段は、少なくとも前記代表点の移動速度の計測値の大きさの時間的変化率又は該計測値のうちの前記所定方向の成分の大きさの時間的変化率である速度変化率に基づいて前記加速要求が発生したか否かを判断することを特徴とする倒立振子型車両の制御装置。
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