JP2011070328A - 移動体 - Google Patents

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Takuo Koyanagi
拓郎 小柳
Masaki Aihara
雅樹 相原
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Abstract

【課題】断線の発生に伴い移動体の状態の連続性が損なわれる事態を防止する
【解決手段】上位制御部200から配線500を介して中間制御部400に出力される指示信号を、中間制御部400の指示信号記憶部413に記憶させ、この指示信号記憶部413に記憶されている指示信号に応じた制御信号を、電動モータのドライブ回路ユニットなどを含む制御ユニット50に対して出力する。
【選択図】図21

Description

本発明は、床面上を移動可能な移動体に関する。
モータに接続された駆動コイルに供給される電力の電圧値に基づき、駆動コイルが断線したか否かを検出し、駆動コイルが断線していることを検出した場合、駆動コイルに電力を供給させる制御を終了させ、断線等の移動にともなう装置の誤作動の発生を防ぐものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−75596号公報 国際公開第02/040226号パンフレット
しかしながら、移動体が移動している間に断線が発生した場合、移動体を移動させるための駆動部に対する制御が突然終了してしまうと、移動体が突然停止してしまう等、移動体の状態の連続性が損なわれるという問題がある。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、断線の発生に伴い移動体の状態の連続性が損なわれるという事態を防止するための移動体を提供することにある。
上記問題を解決するために、請求項1に記載した発明は、移動体(例えば、実施形態による全方向移動車両1)が、基体(例えば、実施形態による基体9)と、前記基体に取り付けられるとともに、駆動されることで前記基体を移動させる移動動作部と、前記移動動作部を駆動させる駆動部(例えば、実施形態によるアクチュエータ装置7)と、入力される指示信号に基づき前記駆動部を駆動させる第1制御部(例えば、実施形態による中間制御部400および制御ユニット50)と、配線を介して前記第1制御部と接続されており、前記指示信号を生成するとともに、前記配線を介して前記指示信号を前記第1制御部に出力する第2制御部(例えば、実施形態による上位制御部200)と、を備え、前記第1制御部は、前記指示信号を表わす指示信号情報を記憶する指示信号記憶部を備え、前記指示信号のうち前記指示信号記憶部に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号を表わす記憶指示信号情報を参照して、前記配線を介して前記第2制御部から入力する前記指示情報が、前記指示信号記憶部に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号であるか否かを判断し、前記指示信号記憶部に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号であると判断した場合、前記配線を介して前記第2制御部から入力する前記指示情報を表わす情報を前記指示信号情報として前記指示信号記憶部に記憶させるとともに、前記指示信号記憶部から読み出した前記指示信号情報に基づいて、前記駆動部を制御するための制御信号を生成することを特徴とする。これにより、第1制御部は、第2制御部から入力された指示信号を記憶して、記憶した指示情報に基づいた制御信号を出力することができる。
請求項2に記載した発明は、前記第2制御部が、予め決められた周期性を前記指示信号に与えるための周期信号を生成する周期信号生成部(例えば、実施形態による周期信号生成部213)を備え、前記周期信号に基づき前記指示信号に周期的な情報を与えることを特徴とする。これにより、第2制御部は、第1制御部に周期的な情報を有する指示信号を出力する。
請求項3に記載した発明は、前記第2制御部が、予め決められた変調周波数で前記指示信号を変調することを特徴とする。これにより、第1制御部が、予め決められた変調周波数に基づき、第2制御部によって生成された周期的な情報を検出することができる。
請求項4に記載した発明は、前記第2制御部が、予め決められた電圧レベルの前記周期信号を周期的なタイミングで生成し、前記指示信号に前記周期信号を重畳して、前記第2制御部に出力することを特徴とする。これにより、第1制御部が、予め決められた電圧レベルに基づき、第2制御部によって生成された周期的な情報を検出することができる。
請求項5に記載した発明は、前記記憶指示信号情報が、前記駆動部を駆動させることを表わす指示信号を含むことを特徴とする。これにより、第1制御部は、駆動部を駆動させることを表わす指示信号を記憶して、この指示情報に基づいた制御信号を出力することができる。
請求項6に記載した発明は、前記基体に取り付けられるとともに、ユーザからの操作入力を受け付けて当該操作入力に応じた操作情報を得る操作部(例えば、実施形態による操作部300)とをさらに備え、前記第2制御部は、前記操作部によって得られた操作情報に基づき前記指示信号を生成することを特徴とする。これにより、第2制御部が、操作部から出力される操作情報に基づき指示信号を生成し、第1制御部が、この指示信号に基づき操作情報を検出することができる。
請求項1に記載した発明によれば、第1制御部と第2制御部のとを接続する配線に断線が発生し、第2制御部から第1制御部に指示信号が出力されない事態が発生した場合であっても、第1制御部が指示信号記憶部に記憶されている指示信号を表わす情報に基づき、駆動部を制御することができる。よって、第1制御部と第2制御部のとを接続する配線に断線が発生し、第2制御部から第1制御部に指示信号が出力されない事態が発生した場合であっても、第1制御部が指示信号記憶部に記憶されている指示信号を表わす情報に基づき、駆動部を制御することができるため、移動動作部の状態の連続性を確保することができる。
請求項2に記載した発明によれば、第1制御部が、第2制御部から第1制御部に入力される指示信号に周期性を与え、第2制御部が、第1制御部によって周期性が検出された場合、断線が発生していないことを表わす正常状態であると判断し、周期性が検出された場合、断線が発生していることを表わす異常状態であると判断することができる。よって、移動体の断線を検出するとともに、断線発生時に移動体の状態の連続性を損なわせることを防止することができる。
請求項3に記載した発明によれば、指示信号に対して時系列に連続的な周期性を与えることができるため、第1制御部によって、より迅速に断線を検出することができる。
請求項4に記載した発明によれば、指示信号に対して時系列に断続的な周期性を与えることができるため、第2制御部から入力される信号に基づき、より正確に指示信号を表わす情報を検出することができる。
請求項5に記載した発明によれば、第1制御部によって駆動部が駆動されている途中に、断線が発生し、第2制御部から駆動部を駆動するための制御信号が第1制御部に出力されない場合であっても、第1制御部は、駆動部を駆動するための制御信号を出力し続けることができる。このため、駆動中の駆動部が、断線が発生することによって駆動が停止され、駆動されている移動体の状態の連続性が損なわれるという事態を回避することができる。
請求項6に記載した発明によれば、操作部から出力される操作情報に基づき動作している駆動部の状態の連続性が損なわれるという事態を回避することができる。
第1実施形態の全方向移動車両の正面図。 本実施形態の全方向移動車両の側面図。 本実施形態の全方向移動車両の下部を拡大して示す図。 本実施形態の全方向移動車両の下部の斜視図。 本実施形態の全方向移動車両の移動動作部(車輪体)の斜視図。 本実施形態の全方向移動車両の移動動作部(車輪体)とフリーローラとの配置関係を示す図。 本実施形態の全方向移動車両の制御ユニットの処理を示すフローチャート。 本実施形態の全方向移動車両の動力学的挙動を表現する倒立振子モデルを示す図。 図7のSTEP9の処理に係わる処理機能を示すブロック図。 図9に示すゲイン調整部の処理機能を示すブロック図。 図10に示すリミット処理部(又は図12に示すリミット処理部)の処理機能を示すブロック図。 図9に示す重心速度制限部76の処理機能を示すブロック図。 図9に示す姿勢制御演算部80の処理機能を示すブロック図。 図9に示す要求重心速度生成部74の処理を示すフローチャート。 図14のSTEP23のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図15のSTEP23−5のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図15のSTEP23−5のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図15のSTEP23−6のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図14のSTEP24のサブルーチン処理を示すフローチャート。 図14のSTEP25のサブルーチン処理を示すフローチャート。 実施形態の全方向移動車両の制御系の構成の一例を示す概略図。 図21に示す信号受取器の構成の一例を示すブロック図。 図21に示す信号受取器が利用する指示信号対応情報の一例を示す概略図。 図21に示す制御系の指示状態遷移と制御状態遷移の一例を説明する参考図。 図24に示す制御系の指示状態遷移と制御状態遷移の他の例を説明する参考図。 第2実施形態の二足歩行を行う移動動作部を備えるロボットの側面図。 図26に示す制御系に適用可能な構成の一例を示す概略図。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を以下に説明する。まず、図1〜図6を参照して、本実施形態における全方向移動車両の構造を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態における全方向移動車両1は、乗員(運転者)の搭乗部3と、床面に接地しながら該床面上を全方向(前後方向及び左右方向を含む2次元的な全方向)に移動可能な移動動作部5と、この移動動作部5を駆動する動力を該移動動作部5に付与するアクチュエータ装置7(駆動部)と、これらの搭乗部3、移動動作部5及びアクチュエータ装置7が組付けられた基体9とを備える。
ここで、本実施形態の説明では、「前後方向」、「左右方向」は、それぞれ、搭乗部3に標準的な姿勢で搭乗した乗員の上体の前後方向、左右方向に一致もしくはほぼ一致する方向を意味する。なお、「標準的な姿勢」は、搭乗部3に関して設計的に想定されている姿勢であり、乗員の上体の体幹軸を概ね上下方向に向け、且つ、上体を捻ったりしていない姿勢である。
この場合、図1においては、「前後方向」、「左右方向」はそれぞれ、紙面に垂直な方向、紙面の左右方向であり、図2においては、「前後方向」、「左右方向」はそれぞれ、紙面の左右方向、紙面に垂直な方向である。また、本実施形態の説明では、参照符号に付する添え字「R」,「L」は、それぞれ車両1の右側、左側に対応するものという意味で使用する。
基体9は、移動動作部5及びアクチュエータ装置7が組付けられた下部フレーム11と、この下部フレーム11の上端から上方に延設された支柱フレーム13とを備える。
支柱フレーム13の上部には、該支柱フレーム13から前方側に張り出したシートフレーム15が固定されている。そして、このシートフレーム15上に、乗員が着座するシート3が装着されている。本実施形態では、このシート3が乗員の搭乗部となっている。従って、本実施形態における全方向移動車両1(以降、単に車両1という)は、乗員がシート3に着座した状態で、床面上を移動するものである。
また、シート3の左右には、シート3に着座した乗員が必要に応じて把持するためのグリップ17R,17Lが配置され、これらのグリップ17R,17Lがそれぞれ、支柱フレーム13(又はシートフレーム15)から延設されたブラケット19R,19Lの先端部に固定されている。
下部フレーム11は、左右方向に間隔を存して二股状に対向するように配置された一対のカバー部材21R,21Lを備える。これらのカバー部材21R,21Lの上端部(二股の分岐部分)は、前後方向の軸心を有するヒンジ軸23を介して連結され、カバー部材21R,21Lの一方が他方に対して相対的にヒンジ軸23の周りに揺動可能となっている。この場合、カバー部材21R,21Lは、図示を省略するバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。
また、カバー部材21R,21Lのそれぞれの外面部には、前記シート3に着座した乗員の右足を載せるステップ25Rと左足を載せるステップ25Lとが各々、右向き、左向きに張り出すように突設されている。
移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、下部フレーム11のカバー部材21R,21Lの間に配置されている。これらの移動動作部5及びアクチュエータ装置7の構造を図3〜図6を参照して説明する。
なお、本実施形態で例示する移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、例えば前記特許文献2の図1に開示されているものと同じ構造のものである。従って、本実施形態の説明においては、移動動作部5及びアクチュエータ装置7の構成に関して、前記特許文献2に記載された事項については、簡略的な説明に留める。
本実施形態では、移動動作部5は、ゴム状弾性材により円環状に形成された車輪体であり、ほぼ円形の横断面形状を有する。この移動動作部5(以降、車輪体5という)は、その弾性変形によって、図5及び図6の矢印Y1で示す如く、円形の横断面の中心C1(より詳しくは、円形の横断面中心C1を通って、車輪体5の軸心と同心となる円周線)の周りに回転可能となっている。
この車輪体5は、その軸心C2(車輪体5全体の直径方向に直交する軸心C2)を左右方向に向けた状態で、カバー部材21R,21Lの間に配置され、該車輪体5の外周面の下端部にて床面に接地する。
そして、車輪体5は、アクチュエータ装置7による駆動(詳細は後述する)によって、図5の矢印Y2で示す如く車輪体5の軸心C2の周りに回転する動作(床面上を輪転する動作)と、車輪体5の横断面中心C1の周りに回転する動作とを行なうことが可能である。その結果、車輪体5は、それらの回転動作の複合動作によって、床面上を全方向に移動することが可能となっている。
アクチュエータ装置7は、車輪体5と右側のカバー部材21Rとの間に介装される回転部材27R及びフリーローラ29Rと、車輪体5と左側のカバー部材21Lとの間に介装される回転部材27L及びフリーローラ29Lと、回転部材27R及びフリーローラ29Rの上方に配置されたアクチュエータとしての電動モータ31Rと、回転部材27L及びフリーローラ29Lの上方に配置されたアクチュエータとしての電動モータ31Lとを備える。
電動モータ31R,31Lは、それぞれのハウジングがカバー部材21R,21Lに各々取付けられている。なお、図示は省略するが、電動モータ31R,31Lの電源(蓄電器)は、支柱フレーム13等、基体9の適所に搭載されている。
回転部材27Rは、左右方向の軸心を有する支軸33Rを介してカバー部材21Rに回転可能に支持されている。同様に、回転部材27Lは、左右方向の軸心を有する支軸33Lを介してカバー部材21Lに回転可能に支持されている。この場合、回転部材27Rの回転軸心(支軸33Rの軸心)と、回転部材27Lの回転軸心(支軸33Lの軸心)とは同軸心である。
回転部材27R,27Lは、それぞれ電動モータ31R,31Lの出力軸に、減速機としての機能を含む動力伝達機構を介して接続されており、電動モータ31R,31Lからそれぞれ伝達される動力(トルク)によって回転駆動される。各動力伝達機構は、例えばプーリ・ベルト式のものである。すなわち、図3に示す如く、回転部材27Rは、プーリ35Rとベルト37Rとを介して電動モータ31Rの出力軸に接続されている。同様に、回転部材27Lは、プーリ35Lとベルト37Lとを介して電動モータ31Lの出力軸に接続されている。
なお、上記動力伝達機構は、例えば、スプロケットとリンクチェーンとにより構成されるもの、あるいは、複数のギヤにより構成されるものであってもよい。また、例えば、電動モータ31R,31Lを、それぞれの出力軸が各回転部材27R,27Lと同軸心になるように各回転部材27R,27Lに対向させて配置し、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸を回転部材27R,27Lに各々、減速機(遊星歯車装置等)を介して連結するようにしてもよい。
各回転部材27R,27Lは、車輪体5側に向かって縮径する円錐台と同様の形状に形成されており、その外周面がテーパ外周面39R,39Lとなっている。
回転部材27Rのテーパ外周面39Rの周囲には、回転部材27Rと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数のフリーローラ29Rが配列されている。そして、これらのフリーローラ29Rは、それぞれ、ブラケット41Rを介してテーパ外周面39Rに取付けられ、該ブラケット41Rに回転自在に支承されている。
同様に、回転部材27Lのテーパ外周面39Lの周囲には、回転部材27Lと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数(フリーローラ29Rと同数)のフリーローラ29Lが配列されている。そして、これらのフリーローラ29Lは、それぞれ、ブラケット41Lを介してにテーパ外周面39Lに取付けられ、該ブラケット41Lに回転自在に支承されている。
前記車輪体5は、回転部材27R側のフリーローラ29Rと、回転部材27L側のフリーローラ29Lとの間に挟まれるようにして、回転部材27R,27Lと同軸心に配置されている。
この場合、図1及び図6に示すように、各フリーローラ29R,29Lは、その軸心C3が車輪体5の軸心C2に対して傾斜すると共に、車輪体5の直径方向(車輪体5をその軸心C2の方向で見たときに、該軸心C2と各フリーローラ29R,29Lとを結ぶ径方向)に対して傾斜する姿勢で配置されている。そして、このような姿勢で、各フリーローラ29R,29Lのそれぞれの外周面が車輪体5の内周面に斜め方向に圧接されている。
より一般的に言えば、右側のフリーローラ29Rは、回転部材27Rが軸心C2の周りに回転駆動されたときに、車輪体5との接触面で、軸心C2周りの方向の摩擦力成分(車輪体5の内周の接線方向の摩擦力成分)と、車輪体5の前記横断面中心C1の周り方向の摩擦力成分(円形の横断面の接線方向の摩擦力成分)とを車輪体5に作用させ得るような姿勢で、車輪体5の内周面に圧接されている。左側のフリーローラ29Lについても同様である。
この場合、前記したように、カバー部材21R,21Lは、図示しないバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。このため、この付勢力によって、右側のフリーローラ29Rと左側のフリーローラ29Lとの間に車輪体5が挟持されると共に、車輪体5に対する各フリーローラ29R,29Lの圧接状態(より詳しくはフリーローラ29R,29Lと車輪体5との間で摩擦力が作用し得る圧接状態)が維持される。
以上説明した構造を有する車両1においては、電動モータ31R,31Lによりそれぞれ、回転部材27R,27Lを同方向に等速度で回転駆動した場合には、車輪体5が回転部材27R,27Lと同方向に軸心C2の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5が床面上を前後方向に輪転して、車両1の全体が前後方向に移動することとなる。なお、この場合は、車輪体5は、その横断面中心C1の周りには回転しない。
また、例えば、回転部材27R,27Lを互いに逆方向に同じ大きさの速度で回転駆動した場合には、車輪体5は、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5がその軸心C2の方向(すなわち左右方向)に移動し、ひいては、車両1の全体が左右方向に移動することとなる。なお、この場合は、車輪体5は、その軸心C2の周りには回転しない。
さらに、回転部材27R,27Lを、互いに異なる速度(方向を含めた速度)で、同方向又は逆方向に回転駆動した場合には、車輪体5は、その軸心C2の周りに回転すると同時に、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。
この時、これらの回転動作の複合動作(合成動作)によって、前後方向及び左右方向に対して傾斜した方向に車輪体5が移動し、ひいては、車両1の全体が車輪体5と同方向に移動することとなる。この場合の車輪体5の移動方向は、回転部材27R,27Lの回転方向を含めた回転速度(回転方向に応じて極性が定義された回転速度ベクトル)の差に依存して変化するものとなる。
以上のように車輪体5の移動動作が行なわれるので、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転速度(回転方向を含む)を制御し、ひいては回転部材27R,27Lの回転速度を制御することによって、車両1の移動速度及び移動方向を制御できることとなる。
次に、本実施形態の車両1の動作制御のための構成を説明する。なお、以降の説明では、図1及び図2に示すように、前後方向の水平軸をX軸、左右方向の水平軸をY軸、鉛直方向をZ軸とするXYZ座標系を想定し、前後方向、左右方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向と言うことがある。
まず、車両1の概略的な動作制御を説明すると、本実施形態では、基本的には、シート3に着座した乗員がその上体を傾けた場合(詳しくは、乗員と車両1とを合わせた全体の重心点の位置(水平面に投影した位置)を動かすように上体を傾けた場合)に、該上体を傾けた側に基体9がシート3と共に傾動する。そして、この時、基体9が傾いた側に車両1が移動するように、車輪体5の移動動作が制御される。例えば、乗員が上体を前傾させ、ひいては、基体9をシート3と共に前傾させると、車両1が前方に移動するように、車輪体5の移動動作が制御される。
すなわち、本実施形態では、乗員が上体を動かし、ひいては、シート3と共に基体9を傾動させるという動作が、車両1に対する1つの基本的な操縦操作(車両1の動作要求)とされ、その操縦操作に応じて車輪体5の移動動作がアクチュエータ装置7を介して制御される。
ここで、本実施形態の車両1は、その全体の接地面としての車輪体5の接地面が、車両1とこれに搭乗する乗員との全体を床面に投影した領域に比して面積が小さい単一の局所領域となり、その単一の局所領域だけに床反力が作用する。このため、基体9が傾倒しないようにするためには、乗員及び車両1の全体の重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置するように、車輪体5を動かす必要がある。
そこで、本実施形態では、乗員及び車両1の全体の重心点が、車輪体5の中心点(軸心C2上の中心点)のほぼ真上に位置する状態(より正確には当該重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態)での基体9の姿勢を目標姿勢とし、基本的には、基体9の実際の姿勢を目標姿勢に収束させるように、車輪体5の移動動作が制御される。
また、車両1を発進させる場合等において、アクチュエータ装置7による推進力とは別に、例えば乗員が必要に応じて自身の足により床を蹴り、それにより車両1の移動速度を増速させる推進力(乗員の足平と床との摩擦力による推進力)を、付加的な外力として車両1に作用させた場合には、それに応じて車両1の移動速度(より正確には、乗員及び車両の全体の重心点の移動速度)が増速するように、車輪体5の移動動作が制御される。なお、当該推進力の付加が停止された状態では、車両1の移動速度が一旦、一定速度に保持された後、減衰して、該車両1が停止するように、車輪体5の移動動作が制御される(車輪体5の制動制御が行なわれる)。
さらに、車両1に乗員が搭乗していない状態では、車両1の単体の重心点が、車輪体5の中心点(軸心C2上の中心点)のほぼ真上に位置する状態(より正確には当該重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態)での基体9の姿勢を目標姿勢とし、該基体9の実際の姿勢を目標姿勢に収束させ、ひいては、基体9が傾倒することなく車両1が自立するように、車輪体5の移動動作が制御される。
本実施形態では、以上の如き車両1の動作制御を行なうために、図1及び図2に示すように、マイクロコンピュータや電動モータ31R,31Lのドライブ回路ユニットなどを含む電子回路ユニットにより構成された制御ユニット50と、基体9の所定の部位の鉛直方向(重力方向)に対する傾斜角θb及びその変化速度(=dθb/dt)を計測するための傾斜センサ52と、車両1に乗員が搭乗しているか否かを検知するための荷重センサ54と、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の回転角度及び回転角速度を検出するための角度センサとしてのロータリーエンコーダ56R,56Lがそれぞれ、車両1の適所に搭載されている。
この場合、制御ユニット50及び傾斜センサ52は、例えば、基体9の支柱フレーム13の内部に収容された状態で該支柱フレーム13に取付けられている。また、荷重センサ54は、シート3に内蔵されている。また、ロータリーエンコーダ56R,56Lは、それぞれ、電動モータ31R,31Lと一体に設けられている。なお、ロータリーエンコーダ56R,56Lは、それぞれ、回転部材27R,27Lに装着してもよい。
この制御ユニット50は、移動動作部5やアクチュエータ装置7が組付けられている付近に配置されており、図2に示す通り、支柱フレーム13の下部フレーム11に近い側に配置されている。
また、制御ユニット50は、上位制御部200(詳細について後述する)と配線500を介して接続されている。
上位制御部200は、基体9の支柱フレーム13の内部に収容された状態で該支柱フレーム13に取付けられており、制御ユニット50よりも上方に配置されている。
この上位制御部200は、基体9の上部に設けられた操作部300と接続されている。
操作部300は、ユーザからの操作入力を受け付け、この操作入力を表わす操作情報を得る。この操作部300は、例えば、制御ユニット50に対して電源(蓄電器)からの電力を、電動モータ31R,31Lに供給して駆動させることを指示する電源オンボタン301と、電動モータ31R,31Lへの供給を遮断して駆動を終了させることを指示する電源オフボタン302と、を含む。
なお、制御ユニット50は、中間制御部(後述する)から入力される制御信号に基づき、移動動作部5を駆動させるようアクチュエータ装置7を制御する制御部であるとともに、上位制御部200および中間制御部(後述する)によって制御される被制御部である。
上記傾斜センサ52は、より詳しくは、加速度センサとジャイロセンサ等のレートセンサ(角速度センサ)とから構成され、これらのセンサの検出信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、傾斜センサ52の加速度センサ及びレートセンサの出力を基に、所定の計測演算処理(これは公知の演算処理でよい)を実行することによって、傾斜センサ52を搭載した部位(本実施形態では支柱フレーム13)の、鉛直方向に対する傾斜角度θbの計測値とその変化速度(微分値)である傾斜角速度θbdotの計測値とを算出する。
この場合、計測する傾斜角度θb(以降、基体傾斜角度θbということがある)は、より詳しくは、それぞれ、Y軸周り方向(ピッチ方向)の成分θb_xと、X軸周り方向(ロール方向)の成分θb_yとから成る。同様に、計測する傾斜角速度θbdot(以降、基体傾斜角速度θbdotということがある)も、Y軸周り方向(ピッチ方向)の成分θbdot_x(=dθb_x/dt)と、X軸周り方向(ロール方向)の成分θbdot_y(=dθb_y/dt)とから成る。
なお、本実施形態の説明では、上記基体傾斜角度θbなど、X軸及びY軸の各方向(又は各軸周り方向)の成分を有する運動状態量等の変数、あるいは、該運動状態量に関連する係数等の変数に関しては、その各成分を区別して表記する場合に、該変数の参照符号に、添え字“_x”又は“_y”を付加する。
この場合において、並進速度等の並進運動に係わる変数については、そのX軸方向の成分に添え字“_x”を付加し、Y軸方向の成分に添え字“_y”を付加する。
一方、角度、回転速度(角速度)、角加速度など、回転運動に係わる変数については、並進運動に係わる変数と添え字を揃えるために、便宜上、Y軸周り方向の成分に添え字“_x”を付加し、X軸周り方向の成分に添え字“_y”を付加する。
さらに、X軸方向の成分(又はY軸周り方向の成分)と、Y軸方向の成分(又はX軸周り方向の成分)との組として変数を表記する場合には、該変数の参照符号に添え字“_xy”を付加する。例えば、上記基体傾斜角度θbを、Y軸周り方向の成分θb_xとX軸周り方向の成分θb_yの組として表現する場合には、「基体傾斜角度θb_xy」というように表記する。
前記荷重センサ54は、乗員がシート3に着座した場合に該乗員の重量による荷重を受けるようにシート3に内蔵され、その荷重に応じた検出信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、この荷重センサ54の出力により示される荷重の計測値に基づいて、車両1に乗員が搭乗しているか否かを判断する。
なお、荷重センサ54の代わりに、例えば、乗員がシート3に着座したときにONとなるようなスイッチ式のセンサを用いてもよい。
ロータリーエンコーダ56Rは、電動モータ31Rの出力軸が所定角度回転する毎にパルス信号を発生し、このパルス信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、そのパルス信号を基に、電動モータ53Rの出力軸の回転角度を計測し、さらにその回転角度の計測値の時間的変化率(微分値)を電動モータ53Rの回転角速度として計測する。電動モータ31L側のロータリーエンコーダ56Lについても同様である。
制御ユニット50は、上記の各計測値を用いて所定の演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の目標値である速度指令を決定し、その速度指令に従って、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度をフィードバック制御する。
なお、電動モータ31Rの出力軸の回転角速度と、回転部材27Rの回転角速度との間の関係は、該出力軸と回転部材27Rとの間の一定値の減速比に応じた比例関係になるので、本実施形態の説明では、便宜上、電動モータ31Rの回転角速度は、回転部材27Rの回転角速度を意味するものとする。同様に、電動モータ31Lの回転角速度は、回転部材27Lの回転角速度を意味するものとする。
以下に、制御ユニット50の制御処理をさらに詳細に説明する。
制御ユニット50は、所定の制御処理周期で図7のフローチャートに示す処理(メインルーチン処理)を実行する。
まず、STEP1において、制御ユニット50は、傾斜センサ52の出力を取得する。
次いで、STEP2に進んで、制御ユニット50は、取得した傾斜センサ52の出力を基に、基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sと、基体傾斜角速度θbdotの計測値θbdot_xy_sとを算出する。
なお、以降の説明では、上記計測値θb_xy_sなど、変数(状態量)の実際の値の観測値(計測値又は推定値)を参照符号により表記する場合に、該変数の参照符号に、添え字“_s”を付加する。
次いで、制御ユニット50は、STEP3において、荷重センサ54の出力を取得した後、STEP4の判断処理を実行する。この判断処理においては、制御ユニット50は、取得した荷重センサ54の出力が示す荷重計測値があらかじめ設定された所定値よりも大きいか否かによって、車両1に乗員が搭乗しているか否か(シート3に乗員が着座しているか否か)を判断する。
そして、制御ユニット50は、STEP4の判断結果が肯定的である場合には、基体傾斜角度θbの目標値θb_xy_objを設定する処理と、車両1の動作制御用の定数パラメータ(各種ゲインの基本値など)の値を設定する処理とを、それぞれSTEP5、6で実行する。
STEP5においては、制御ユニット50は、基体傾斜角度θbの目標値θb_xy_objとして、あらかじめ定められた搭乗モード用の目標値を設定する。
ここで、「搭乗モード」は、車両1に乗員が搭乗している場合での車両1の動作モードを意味する。この搭乗モード用の目標値θb_xy_objは、車両1とシート3に着座した乗員との全体の重心点(以降、車両・乗員全体重心点という)が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態となる基体9の姿勢において、傾斜センサ52の出力に基づき計測される基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sに一致又はほぼ一致するようにあらかじめ設定されている。
また、STEP6においては、制御ユニット50は、車両1の動作制御用の定数パラメータの値として、あらかじめ定められた搭乗モード用の値を設定する。なお、定数パラメータは、後述するhx,hy,Ki_a_x,Ki_b_x,Ki_a_y,Ki_b_y(i=1,2,3)等である。
一方、STEP4の判断結果が否定的である場合には、制御ユニット50は、基体傾斜角度θb_xyの目標値θb_xy_objを設定する処理と、車両1の動作制御用の定数パラメータの値を設定する処理とを、STEP7、8で実行する。
STEP7においては、制御ユニット50は、傾斜角度θbの目標値θb_xy_objとして、あらかじめ定められた自立モード用の目標値を設定する。
ここで、「自立モード」は、車両1に乗員が搭乗していない場合での車両1の動作モードを意味する。この自立モード用の目標値θb_xy_objは、車両1単体の重心点(以降、車両単体重心点という)が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態となる基体9の姿勢において、傾斜センサ52の出力に基づき計測される基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sに一致又はほぼ一致するようにあらかじめ設定されている。この自立モード用の目標値θb_xy_objは、搭乗モード用の目標値θb_xy_objと一般的には異なる。
また、STEP8においては、制御ユニット50は、車両1の動作制御用の定数パラメータの値として、あらかじめ定められた自立モード用の値を設定する。この自立モード用の定数パラメータの値は、搭乗モード用の定数パラメータの値と異なる。
搭乗モードと自立モードとで、上記定数パラメータの値を異ならせるのは、それぞれのモードで上記重心点の高さや、全体質量等が異なることに起因して、制御入力に対する車両1の動作の応答特性が互いに異なるからである。
以上のSTEP4〜8の処理によって、搭乗モード及び自立モードの動作モード毎に個別に、基体傾斜角度θb_xyの目標値θb_xy_objと定数パラメータの値とが設定される。
なお、STEP5,6の処理、又はSTEP7,8の処理は、制御処理周期毎に実行することは必須ではなく、STEP4の判断結果が変化した場合にだけ実行するようにしてもよい。
補足すると、搭乗モード及び自立モードのいずれにおいても、基体傾斜角速度θbdotのY軸周り方向の成分θbdot_xの目標値とX軸周り方向の成分θbdot_yの目標値とは、いずれも“0”である。このため、基体傾斜角速度θbdot_xyの目標値を設定する処理は不要である。
以上の如くSTEP5,6の処理、又はSTEP7,8の処理を実行した後、制御ユニット50は、次にSTEP9において、車両制御演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令を決定する。この車両制御演算処理の詳細は後述する。
次いで、STEP10に進んで、制御ユニット50は、STEP9で決定した速度指令に応じて電動モータ31R,31Lの動作制御処理を実行する。この動作制御処理では、制御ユニット50は、STEP9で決定した電動モータ31Rの速度指令と、ロータリーエンコーダ56Rの出力に基づき計測した電動モータ31Rの回転速度の計測値との偏差に応じて、該偏差を“0”に収束させるように電動モータ31Rの出力トルクの目標値(目標トルク)を決定する。そして、制御ユニット50は、その目標トルクの出力トルクを電動モータ31Rに出力させるように該電動モータ31Rの通電電流を制御する。左側の電動モータ31Lの動作制御についても同様である。
以上が、制御ユニット50が実行する全体的な制御処理である。
次に、上記STEP9の車両制御演算処理の詳細を説明する。
なお、以降の説明においては、前記搭乗モードにおける車両・乗員全体重心点と、前記自立モードにおける車両単体重心点とを総称的に、車両系重心点という。該車両系重心点は、車両1の動作モードが搭乗モードである場合には、車両・乗員全体重心点を意味し、自立モードである場合には、車両単体重心点を意味する。
また、以降の説明では、制御ユニット50が各制御処理周期で決定する値(更新する値)に関し、現在の(最新の)制御処理周期で決定する値を今回値、その1つ前の制御処理周期で決定した値を前回値ということがある。そして、今回値、前回値を特にことわらない値は、今回値を意味する。
また、X軸方向の速度及び加速度に関しては、前方向きを正の向きとし、Y軸方向の速度及び加速度に関しては、左向きを正の向きとする。
本実施形態では、前記車両系重心点の動力学的な挙動(詳しくは、Y軸方向からこれに直交する面(XZ平面)に投影して見た挙動と、X軸方向からこれに直交する面(YZ平面)に投影して見た挙動)が、近似的に、図8に示すような、倒立振子モデルの挙動(倒立振子の動力学的挙動)によって表現されるものとして、STEP9の車両制御演算処理が行なわれる。
なお、図8において、括弧を付していない参照符号は、Y軸方向から見た倒立振子モデルに対応する参照符号であり、括弧付きの参照符号は、X軸方向から見た倒立振子モデルに対応する参照符号である。
この場合、Y軸方向から見た挙動を表現する倒立振子モデルは、車両系重心点に位置する質点60_xと、Y軸方向に平行な回転軸62a_xを有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪62_x(以降、仮想車輪62_xという)とを備える。そして、質点60_xが、仮想車輪62_xの回転軸62a_xに直線状のロッド64_xを介して支持され、該回転軸62a_xを支点として該回転軸62a_xの周りに揺動自在とされている。
この倒立振子モデルでは、質点60_xの運動が、Y軸方向から見た車両系重心点の運動に相当する。また、鉛直方向に対するロッド64_xの傾斜角度θbe_xがY軸周り方向での基体傾斜角度計測値θb_x_sと基体傾斜角度目標値θb_x_objとの偏差θbe_x_s(=θb_x_s−θb_x_obj)に一致するものとされる。また、ロッド64_xの傾斜角度θbe_xの変化速度(=dθbe_x/dt)がY軸周り方向の基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに一致するものとされる。また、仮想車輪62_xの移動速度Vw_x(X軸方向の並進移動速度)は、車両1の車輪体5のX軸方向の移動速度に一致するものとされる。
同様に、X軸方向から見た挙動を表現する倒立振子モデル(図8の括弧付きの符号を参照)は、車両系重心点に位置する質点60_yと、X軸方向に平行な回転軸62a_yを有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪62_y(以降、仮想車輪62_yという)とを備える。そして、質点60_yが、仮想車輪62_yの回転軸62a_yに直線状のロッド64_yを介して支持され、該回転軸62a_yを支点として該回転軸62a_yの周りに揺動自在とされている。
この倒立振子モデルでは、質点60_yの運動が、X軸方向から見た車両系重心点の運動に相当する。また、鉛直方向に対するロッド64_yの傾斜角度θbe_yがX軸周り方向での基体傾斜角度計測値θb_y_sと基体傾斜角度目標値θb_y_objとの偏差θbe_y_s(=θb_y_s−θb_y_obj)に一致するものとされる。また、ロッド64_yの傾斜角度θbe_yの変化速度(=dθbe_y/dt)がX軸周り方向の基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに一致するものとされる。また、仮想車輪62_yの移動速度Vw_y(Y軸方向の並進移動速度)は、車両1の車輪体5のY軸方向の移動速度に一致するものとされる。
なお、仮想車輪62_x,62_yは、それぞれ、あらかじめ定められた所定値Rw_x,Rw_yの半径を有するものとされる。
また、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x,ωw_yと、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R,ω_L(より正確には、回転部材27R,27Lのそれぞれの回転角速度ω_R,ω_L)との間には、次式01a,01bの関係が成立するものとされる。
ωw_x=(ω_R+ω_L)/2 ……式01a
ωw_y=C・(ω_R−ω_L)/2 ……式01b
なお、式01bにおける“C”は、前記フリーローラ29R,29Lと車輪体5との間の機構的な関係や滑りに依存する所定値の係数である。
ここで、図8に示す倒立振子モデルの動力学は、次式03x,03yにより表現される。なお、式03xは、Y軸方向から見た倒立振子モデルの動力学を表現する式、式03yは、X軸方向から見た倒立振子モデルの動力学を表現する式である。
2θbe_x/dt2=α_x・θbe_x+β_x・ωwdot_x ……式03x
2θbe_y/dt2=α_y・θbe_y+β_y・ωwdot_y ……式03y
式03xにおけるωwdot_xは仮想車輪62_xの回転角加速度(回転角速度ωw_xの1階微分値)、α_xは、質点60_xの質量や高さh_xに依存する係数、β_xは、仮想車輪62_xのイナーシャ(慣性モーメント)や半径Rw_xに依存する係数である。式03yにおけるωwdot_y、α_y、β_yについても上記と同様である。
これらの式03x,03yから判るように、倒立振子の質点60_x,60_yの運動(ひいては車両系重心点の運動)は、それぞれ、仮想車輪62_xの回転角加速度ωwdot_x、仮想車輪62_yの回転角加速度ωwdot_yに依存して規定される。
そこで、本実施形態では、Y軸方向から見た車両系重心点の運動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_xの回転角加速度ωwdot_xを用いると共に、X軸方向から見た車両系重心点の運動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_yの回転角加速度ωwdot_yを用いる。
そして、STEP9の車両制御演算処理を概略的に説明すると、制御ユニット50は、X軸方向で見た質点60_xの運動と、Y軸方向で見た質点60_yの運動とが、車両系重心点の所望の運動に対応する運動となるように、操作量としての上記回転角加速度ωwdot_x,ωwdot_yの指令値(目標値)である仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdを決定する。さらに、制御ユニット50は、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdをそれぞれ積分してなる値を、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x,ωw_yの指令値(目標値)である仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmd,ωw_y_cmdとして決定する。
そして、制御ユニット50は、仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmdに対応する仮想車輪62_xの移動速度(=Rw_x・ωw_x_cmd)と、仮想車輪回転角速度指令ωw_y_cmdに対応する仮想車輪62_yの移動速度(=Rw_y・ωw_y_cmd)とを、それぞれ、車両1の車輪体5のX軸方向の目標移動速度、Y軸方向の目標移動速度とし、それらの目標移動速度を実現するように、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdを決定する。
なお、本実施形態では、操作量(制御入力)としての上記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdは、それぞれ、後述する式07x,07yに示す如く、3個の操作量成分を加え合わせることによって決定される。
制御ユニット50は、上記の如き、STEP9の車両制御演算処理を実行するための機能として、図9のブロック図で示す機能を備えている。
すなわち、制御ユニット50は、基体傾斜角度計測値θb_xy_sと基体傾斜角度目標値θb_xy_objとの偏差である基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sを算出する偏差演算部70と、前記車両系重心点の移動速度である重心速度Vb_xyの観測値としての重心速度推定値Vb_xy_sを算出する重心速度算出部72と、乗員等による車両1の操縦操作(車両1に推進力を付加する操作)によって要求されていると推定される上記重心速度Vb_xyの要求値としての要求重心速度V_xy_aimを生成する要求重心速度生成部74と、これらの重心速度推定値Vb_xy_s及び要求重心速度V_xy_aimから、電動モータ31R,31Lの回転角速度の許容範囲に応じた制限を加味して、重心速度Vb_xyの目標値としての制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdを決定する重心速度制限部76と、後述する式07x,07yのゲイン係数の値を調整するためのゲイン調整パラメータKr_xyを決定するゲイン調整部78とを備える。
制御ユニット50は、さらに、前記仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを算出する姿勢制御演算部80と、この仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを、右側の電動モータ31Rの速度指令ω_R_cmd(回転角速度の指令値)と左側の電動モータ31Lの速度指令ω_L_cmd(回転角速度の指令値)との組に変換するモータ指令演算部82とを備える。
なお、図9中の参照符号84を付したものは、姿勢制御演算部70が制御処理周期毎に算出する仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを入力する遅延要素を示している。該遅延要素84は、各制御処理周期において、仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdの前回値ωw_xy_cmd_pを出力する。
前記STEP9の車両制御演算処理では、これらの上記の各処理部の処理が以下に説明するように実行される。
すなわち、制御ユニット50は、まず、偏差演算部70の処理と重心速度算出部72の処理とを実行する。
偏差演算部70には、前記STEP2で算出された基体傾斜角度計測値θb_xy_s(θb_x_s及びθb_y_s)と、前記STEP5又はSTEP7で設定された目標値θb_xy_obj(θb_x_obj及びθb_y_obj)とが入力される。そして、偏差演算部70は、θb_x_sからθb_x_objを減算することによって、Y軸周り方向の基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s(=θb_x_s−θb_x_obj)を算出すると共に、θb_y_sからθb_y_objを減算することによって、X軸周り方向の基体傾斜角度偏差計測値θbe_y_s(=θb_y_s−θb_y_obj)を算出する。
なお、偏差演算部70の処理は、STEP9の車両制御演算処理の前に行なうようにしてもよい。例えば、前記STEP5又は7の処理の中で、偏差演算部70の処理を実行してもよい。
前記重心速度算出部72には、前記STEP2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_s(θbdot_x_s及びθbdot_y_s)の今回値が入力されると共に、仮想車輪速度指令ωw_xy_cmdの前回値ωw_xy_cmd_p(ωw_x_cmd_p及びωw_y_cmd_p)が遅延要素84から入力される。そして、重心速度算出部72は、これらの入力値から、前記倒立振子モデルに基づく所定の演算式によって、重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を算出する。
具体的には、重心速度算出部72は、次式05x,05yにより、Vb_x_s及びVb_y_sをそれぞれ算出する。
Vb_x_s=Rw_x・ωw_x_cmd_p+h_x・θbdot_x_s ……05x
Vb_y_s=Rw_y・ωw_y_cmd_p+h_y・θbdot_y_s ……05y
これらの式05x,05yにおいて、Rw_x,Rw_yは、前記したように、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの半径であり、これらの値は、あらかじめ設定された所定値である。また、h_x,h_yは、それぞれ倒立振子モデルの質点60_x,60_yの高さである。この場合、本実施形態では、車両系重心点の高さは、ほぼ一定に維持されるものとされる。そこで、h_x,h_yの値としては、それぞれ、あらかじめ設定された所定値が用いられる。補足すると、高さh_x,h_yは、前記STEP6又は8において値を設定する定数パラメータに含まれるものである。
上記式05xの右辺の第1項は、仮想車輪62_xの速度指令の前回値ωw_x_cmd_pに対応する該仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度であり、この移動速度は、車輪体5のX軸方向の実際の移動速度の現在値に相当するものである。また、式05xの右辺の第2項は、基体9がY軸周り方向にθbdot_x_sの傾斜角速度で傾動することに起因して生じる車両系重心点のX軸方向の移動速度(車輪体5に対する相対的な移動速度)の現在値に相当するものである。これらのことは、式05yについても同様である。
なお、前記ロータリーエンコーダ56R,56Lの出力を基に計測される電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の計測値(今回値)の組を、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度の組に変換し、それらの回転角速度を、式05x、05yのωw_x_cmd_p、ωw_y_cmd_pの代わりに用いてもよい。ただし、回転角速度の計測値に含まれるノイズの影響を排除する上では、目標値であるωw_x_cmd_p、ωw_y_cmd_pを使用することが有利である。
次に、制御ユニット50は、要求重心速度生成部74の処理とゲイン調整部78の処理とを実行する。この場合、要求重心速度生成部74及びゲイン調整部78には、それぞれ、重心速度算出部72で上記の如く算出された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)が入力される。
そして、要求重心速度生成部74は、詳細は後述するが、車両1の動作モードが搭乗モードである場合に、入力された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を基に、要求重心速度V_xy_aim(V_x_aim,V_y_aim)を決定する。なお、本実施形態では、車両1の動作モードが自立モードである場合には、要求重心速度生成部74は、要求重心速度V_x_aim及びV_y_aimをいずれも“0”とする。
また、ゲイン調整部78は、入力された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を基に、前記ゲイン調整パラメータKr_xy(Kr_x及びKr_y)を決定する。
このゲイン調整部78の処理を図10及び図11を参照して以下に説明する。
図10に示すように、ゲイン調整部78は、入力された重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをリミット処理部86に入力する。このリミット処理部86では、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の許容範囲に応じた制限を適宜、加えることによって、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1を生成する。出力値Vw_x_lim1は、前記仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度Vw_xの制限後の値、出力値Vw_y_lim1は、前記仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度Vw_yの制限後の値としての意味を持つ。
このリミット処理部86の処理を、図11を参照してさらに詳細に説明する。なお、図11中の括弧付きの参照符号は、後述する重心速度制限部76のリミット処理部104の処理を示すものであり、リミット処理部86の処理に関する説明では無視してよい。
リミット処理部86は、まず、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをそれぞれ処理部86a_x,86a_yに入力する。処理部86a_xは、Vb_x_sを仮想車輪62_xの半径Rw_xで除算することによって、仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度をVb_x_sに一致させたと仮定した場合の該仮想車輪62_xの回転角速度ωw_x_sを算出する。同様に、処理部86a_yは、仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度をVb_y_sに一致させたと仮定した場合の該仮想車輪62_yの回転角速度ωw_y_s(=Vb_y_s/Rw_y)を算出する。
次いで、リミット処理部86は、ωw_x_s,ωw_y_sの組を、XY−RL変換部86bにより、電動モータ31Rの回転角速度ω_R_sと電動モータ31Lの回転角速度ω_L_sとの組に変換する。
この変換は、本実施形態では、前記式01a,01bのωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_s,ωw_y_s,ω_R_s,ω_L_sに置き換えて得られる連立方程式を、ω_R_s,ω_L_sを未知数として解くことにより行なわれる。
次いで、リミット処理部86は、XY−RL変換部86bの出力値ω_R_s,ω_L_sをそれぞれ、リミッタ86c_R,86c_Lに入力する。このとき、リミッタ86c_Rは、ω_R_sが、あらかじめ設定された所定値の上限値(>0)と下限値(<0)とを有する右モータ用許容範囲内に収まっている場合には、ω_R_sをそのまま出力値ω_R_lim1として出力する。また、リミッタ86c_Rは、ω_R_sが、右モータ用許容範囲から逸脱している場合には、該右モータ用許容範囲の上限値と下限値とのうちのω_R_sに近い方の境界値を出力値ω_R_lim1として出力する。これにより、リミッタ86c_Rの出力値ω_R_lim1は、右モータ用許容範囲内の値に制限される。
同様に、リミッタ86c_Lは、ω_L_sが、あらかじめ設定された所定値の上限値(>0)と下限値(<0)とを有する左モータ用許容範囲内に収まっている場合には、ω_L_sをそのまま出力値ω_L_lim1として出力する。また、リミッタ86c_Lは、ω_L_sが、左モータ用許容範囲から逸脱している場合には、該左モータ用許容範囲の上限値と下限値とのうちのω_L_sに近い方の境界値を出力値ω_L_lim1として出力する。これにより、リミッタ86c_Lの出力値ω_L_lim1は、左モータ用許容範囲内の値に制限される。
上記右モータ用許容範囲は右側の電動モータ31Rの回転角速度(絶対値)が高くなり過ぎないようにし、ひいては、電動モータ31Rが出力可能なトルクの最大値が低下するのを防止するために設定された許容範囲である。このことは、左モータ用許容範囲についても同様である。
次いで、リミット処理部86は、リミッタ86c_R,86c_Lのそれぞれの出力値ω_R_lim1,ω_L_lim1の組を、RL−XY変換部86dにより、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x_lim1,ωw_y_lim1の組に変換する。
この変換は、前記XY−RL変換部86bの変換処理の逆変換の処理である。この処理は、前記式01a,01bのωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_lim1,ωw_y_lim1,ω_R_lim1,ω_L_lim1に置き換えて得られる連立方程式を、ωw_x_lim1,ωw_y_lim1を未知数として解くことにより行なわれる。
次いで、リミット処理部86は、RL−XY変換部86dの出力値ωw_x_lim1,ωw_y_lim1をそれぞれ処理部86e_x,86e_yに入力する。処理部86e_xは、ωw_x_lim1に仮想車輪62_xの半径Rw_xを乗じることによって、ωw_x_lim1を仮想車輪62_xの移動速度Vw_x_lim1に変換する。同様に、処理部86e_yは、ωw_y_lim1を仮想車輪62_yの移動速度Vw_y_lim1(=ωw_y_lim1・Rw_y)に変換する。
以上のリミット処理部86の処理によって、仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度Vw_xと、仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度Vw_yとをそれぞれ重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させたと仮定した場合(換言すれば、車輪体5のX軸方向の移動速度とY軸方向の移動速度とをそれぞれ、Vb_x_s,Vb_y_sに一致させたと仮定した場合)に、それらの移動速度を実現するために必要な電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_s,ω_L_sが、両方とも、許容範囲内に収まっている場合には、Vb_x_s,Vb_y_sにそれぞれ一致する出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組がリミット処理部86から出力される。
一方、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_s,ω_L_sの両方又は一方が許容範囲から逸脱している場合には、その両方又は一方の回転角速度が強制的に許容範囲内に制限された上で、その制限後の電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_lim1,ω_L_lim1の組に対応する、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組がリミット処理部86から出力される。
従って、リミット処理部86は、その出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組に対応する電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲を逸脱しないことを必須の必要条件として、その必要条件下で可能な限り、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1をそれぞれVb_x_s,Vb_y_sに一致させるように、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組を生成する。
図10の説明に戻って、ゲイン調整部78は、次に、演算部88_x,88_yの処理を実行する。演算部88_xには、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sと、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1とが入力される。そして、演算部88_xは、Vw_x_lim1からVb_x_sを減算してなる値Vover_xを算出して出力する。また、演算部88_yには、Y軸方向の重心速度推定値Vb_y_sと、リミット処理部86の出力値Vw_y_lim1とが入力される。そして、演算部88_yは、Vw_y_lim1からVb_y_sを減算してなる値Vover_yを算出して出力する。
この場合、リミット処理部86での出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の強制的な制限が行なわれなかった場合には、Vw_x_lim1=Vb_x_s、Vw_y_lim1=Vb_y_sとなるので、演算部88_x,88_yのそれぞれの出力値Vover_x,Vover_yはいずれも“0”となる。
一方、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1が、入力値Vb_x_s,Vb_y_sに対して強制的な制限を施して生成された場合には、Vw_x_lim1のVb_x_sからの修正量(=Vw_x_lim1−Vb_x_s)と、Vw_y_lim1のVb_y_sからの修正量(=Vw_y_lim1−Vb_y_s)とがそれぞれ、演算部88_x,88_yから出力される。
次いで、ゲイン調整部78は、演算部88_xの出力値Vover_xを処理部90_x,92_xに順番に通すことによって、ゲイン調整パラメータKr_xを決定する。また、ゲイン調整部78は、演算部88_yの出力値Vover_yを処理部90_y,92_yに順番に通すことによって、ゲイン調整パラメータKr_yを決定する。なお、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yは、いずれも“0”から“1”までの範囲内の値である。
上記処理部90_xは、入力されるVover_xの絶対値を算出して出力する。また、処理部92_xは、その出力値Kr_xが入力値|Vover_x|に対して単調に増加し、且つ、飽和特性を有するようにKr_xを生成する。該飽和特性は、入力値がある程度大きくなると、入力値の増加に対する出力値の変化量が“0”になるか、もしくは、“0”に近づく特性である。
この場合、本実施形態では、処理部92_xは、入力値|Vover_x|があらかじめ設定された所定値以下である場合には、該入力値|Vover_x|に所定値の比例係数を乗じてなる値をKr_xとして出力する。また、処理部92_xは、入力値|Vover_x|が所定値よりも大きい場合には、“1”をKr_xとして出力する。なお、上記比例係数は、|Vover_x|が所定値に一致するときに、|Vover_x|と比例係数との積が“1”になるように設定されている。
また、処理部90_y,92_yの処理は、それぞれ上記した処理部90_x,92_xの処理と同様である。
以上説明したゲイン調整部78の処理によって、リミット処理部86での出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の強制的な制限が行なわれなかった場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、それぞれ、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させても、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲内に収まるような場合には、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yはいずれも“0”に決定される。
一方、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1が、入力値Vb_x_s,Vb_y_sに対して強制的な制限を施して生成された場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、それぞれ、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させると、電動モータ31R,31Lのいずれかの回転角速度が許容範囲を逸脱してしまう場合(いずれかの回転角速度の絶対値が高くなり過ぎる場合)には、前記修正量Vover_x,Vover_yのそれぞれの絶対値に応じて、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yの値がそれぞれ決定される。この場合、Kr_xは、“1”を上限値して、修正量Vx_overの絶対値が大きいほど、大きな値になるように決定される。このことは、Kr_yについても同様である。
図9の説明に戻って、制御ユニット50は、重心速度算出部72及び要求重心速度生成部74の処理を前記した如く実行した後、次に、重心速度制限部76の処理を実行する。
この重心速度制限部76には、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)と、要求重心速度生成部74で決定された要求重心速度V_xy_aim(V_x_aim及びV_y_aim)とが入力される。そして、重心速度制限部76は、これらの入力値を使用して、図12のブロック図で示す処理を実行することによって、制御用目標重心速度V_xy_mdfd(V_x_mdfd及びV_y_mdfd)を決定する。
具体的には、重心速度制限部76は、まず、定常偏差算出部94_x,94_yの処理を実行する。
この場合、定常偏差算出部94_xには、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sが入力されると共に、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdの前回値Vb_x_mdfd_pが遅延要素96_xを介して入力される。そして、定常偏差算出部94_xは、まず、入力されるVb_x_sが比例・微分補償要素(PD補償要素)94a_xに入力する。この比例・微分補償要素94_xは、その伝達関数が1+Kd・Sにより表される補償要素であり、入力されるVb_x_sと、その微分値(時間的変化率)に所定値の係数Kdを乗じてなる値とを加算し、その加算結果の値を出力する。
次いで、定常偏差算出部94_xは、入力されるVb_x_mdfd_pを、比例・微分補償要素94_xの出力値から減算してなる値を演算部94b_xにより算出した後、この演算部94b_xの出力値を、位相補償機能を有するローパスフィルタ94c_xに入力する。このローパスフィルタ94c_xは、伝達関数が(1+T2・S)/(1+T1・S)により表されるフィルタである。そして、定常偏差算出部94_xは、このローパスフィルタ94c_xの出力値Vb_x_prdを出力する。
また、定常偏差算出部94_yには、Y軸方向の重心速度推定値Vb_y_sが入力されると共に、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdの前回値Vb_y_mdfd_pが遅延要素96_yを介して入力される。
そして、定常偏差算出部94_yは、上記した定常偏差算出部94_xと同様に、比例・微分補償要素94a_y、演算部94b_y及びローパスフィルタ94c_yの処理を順次実行し、ローパスフィルタ94c_yの出力値Vb_y_prdを出力する。
ここで、定常偏差算出部94_xの出力値Vb_x_prdは、Y軸方向から見た車両系重心点の現在の運動状態(換言すればY軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_xの運動状態)から推測される、将来のX軸方向の重心速度推定値の収束予測値の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdに対する定常偏差としての意味を持つものである。同様に、定常偏差算出部94_y出力値Vb_y_prdは、X軸方向から見た車両系重心点の現在の運動状態(換言すればX軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_yの運動状態)から推測される、将来のY軸方向の重心速度推定値の収束予測値の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdに対する定常偏差としての意味を持つものである。以降、定常偏差算出部94_x,94_yのそれぞれの出力値Vb_x_prd,Vb_y_prdを重心速度定常偏差予測値という。
重心速度制限部76は、上記の如く定常偏差算出部94_x,94_yの処理を実行した後、定常偏差算出部94_xの出力値Vb_x_prdに要求重心速度Vb_x_aimを加算する処理と、定常偏差算出部94_yの出力値Vb_y_prdに要求重心速度Vb_y_aimを加算する処理とをそれぞれ、演算部98_x,98_yにより実行する。
従って、演算部98_xの出力値Vb_x_tは、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdに、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを付加した速度となる。同様に、演算部98_yの出力値Vb_y_tは、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdに、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを付加した速度となる。
なお、車両1の動作モードが自立モードである場合等、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”である場合には、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdがそのまま、演算部98_xの出力値Vb_x_tとなる。同様に、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimが“0”である場合には、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdがそのまま、演算部98_yの出力値Vb_y_tとなる。
次いで、重心速度制限部76は、演算部98_x,98_yのそれぞれの出力値Vb_x_t,Vb_y_tを、リミット処理部100に入力する。このリミット処理部100の処理は、前記したゲイン調整部78のリミット処理部86の処理と同じである。この場合、図11に括弧付きに参照符号で示す如く、リミット処理部100の各処理部の入力値及び出力値だけがリミット処理部86と相違する。
具体的には、リミット処理部100では、前記仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、Vb_x_t,Vb_y_tにそれぞれ一致させたと仮定した場合の各仮想車輪62_x,62_yの回転角速度ωw_x_t,ωw_y_tがそれぞれ処理部86a_x,86a_yにより算出される。そして、この回転角速度ωw_x_t,ωw_y_tの組が、XY−RL変換部86bにより、電動モータ31R,31Lの回転角速度ω_R_t,ω_L_tの組に変換される。
さらに、これらの回転角速度ω_R_t,ω_L_tが、リミッタ86c_R,86c_Lによって、それぞれ、右モータ用許容範囲内の値と左モータ用許容範囲内の値とに制限される。そして、この制限処理後の値ω_R_lim2,ω_L_lim2が、RL−XY変換部86dによって、仮想車輪62_x,62_yの回転角速度ωw_x_lim2,ωw_y_lim2に変換される。
次いで、この各回転角速度ωw_x_lim2,ωw_y_lim2に対応する各仮想車輪62_x,62_yの移動速度Vw_x_lim2,Vw_y_lim2がそれぞれ処理部86e_x,86e_yによって算出され、これらの移動速度Vw_x_lim2,Vw_y_lim2がリミット処理部100から出力される。
以上のリミット処理部100の処理によって、リミット処理部100は、リミット処理部86と同様に、その出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の組に対応する電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲を逸脱しないことを必須の必要条件として、その必要条件下で可能な限り、出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2をそれぞれVb_x_t,Vb_y_tに一致させるように、出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の組を生成する。
なお、リミット処理部100における右モータ用及び左モータ用の各許容範囲は、リミット処理部86における各許容範囲と同一である必要はなく、互いに異なる許容範囲に設定されていてもよい。
図12の説明に戻って、重心速度制限部76は、次に、演算部102_x,102_yの処理を実行することによって、それぞれ制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdを算出する。この場合、演算部102_xは、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2から、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdを減算してなる値をX軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして算出する。同様に、演算部102_yは、リミット処理部100の出力値Vw_y_lim2から、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdを減算してなる値をY軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとして算出する。
以上のようにして決定される制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdは、リミット処理部100での出力値V_x_lim2,V_y_lim2の強制的な制限が行なわれなかった場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度を、それぞれ、演算部98_xの出力値Vb_x_tと演算部98_yの出力値Vb_y_tとに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させても、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲内に収まるような場合には、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimがそれぞれ、そのまま、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。
なお、この場合、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”であれば、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdも“0”となり、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimが“0”であれば、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdも“0”となる。
一方、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2が、入力値Vb_x_t,Vb_y_tに対して強制的な制限を施して生成された場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度を、それぞれ、演算部98_xの出力値Vb_x_tと演算部98_yの出力値Vb_y_tとに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させると、電動モータ31R,31Lのいずれかの回転角速度が許容範囲を逸脱してしまう場合(いずれかの回転角速度の絶対値が高くなり過ぎる場合)には、X軸方向については、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2の入力値Vb_x_tからの修正量(=Vw_x_lim2−Vb_x_t)だけ、要求重心速度Vb_x_aimを補正してなる値(当該修正量をVb_x_aimに加算した値)が、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして決定される。
また、Y軸方向については、リミット処理部100の出力値Vw_y_lim2の入力値Vb_y_tからの修正量(=Vw_y_lim2−Vb_y_t)だけ、要求重心速度Vb_y_aimを補正してなる値(当該修正量をVb_y_aimに加算した値)が、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとして決定される。
この場合において、例えばX軸方向の速度に関し、要求重心速度Vb_x_aimが“0”でない場合には、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、要求重心速度Vb_x_aimよりも“0”に近づくか、もしくは、要求重心速度Vb_x_aimと逆向きの速度となる。また、要求重心速度Vb_x_aimが“0”である場合には、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、定常偏差算出部94_xが出力するX軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdと逆向きの速度となる。これらのことは、Y軸方向の速度に関しても同様である。
以上が、重心速度制限部76の処理である。
図9の説明に戻って、制御ユニット50は、以上の如く重心速度算出部72、重心速度制限部76、ゲイン調整部78、及び偏差演算部70の処理を実行した後、次に、姿勢制御演算部80の処理を実行する。
この姿勢制御演算部80の処理を、以下に図13を参照して説明する。なお、図13において、括弧を付していない参照符号は、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xの回転角速度の目標値である前記仮想車輪回転角速度指令ωw_x_comを決定する処理に係わる参照符号であり、括弧付きの参照符合は、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yの回転角速度の目標値である前記仮想車輪回転角速度指令ωw_y_comを決定する処理に係わる参照符号である。
姿勢制御演算部80には、偏差演算部70で算出された基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sと、前記STEP2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_sと、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_sと、重心速度制限部76で算出された目標重心速度Vb_xy_cmdと、ゲイン調整部78で算出されたゲイン調整パラメータKr_xyとが入力される。
そして、姿勢制御演算部80は、まず、これらの入力値を用いて、次式07x,07yにより、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_xy_comを算出する。
ωwdot_x_cmd=K1_x・θbe_x_s+K2_x・θbdot_x_s
+K3_x・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd) ……式07x
ωwdot_y_cmd=K1_y・θbe_y_s+K2_y・θbdot_y_s
+K3_y・(Vb_y_s−Vb_y_mdfd) ……式07y
従って、本実施形態では、Y軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_xの運動(ひいては、Y軸方向から見た車両系重心点の運動)を制御するための操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_comと、X軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_yの運動(ひいては、X軸方向から見た車両系重心点の運動)を制御するための操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_y_comとは、それぞれ、3つの操作量成分(式07x,07yの右辺の3つの項)を加え合わせることによって決定される。
この場合、式07xにおける各操作量成分に係わるゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xは、ゲイン調整パラメータKr_xに応じて可変的に設定され、式07yにおける各操作量成分に係わるゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yは、ゲイン調整パラメータKr_yに応じて可変的に設定される。以降、式07xにおけるゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xのそれぞれを第1ゲイン係数K1_x、第2ゲイン係数K2_x、第3ゲイン係数K3_xということがある。このことは、式07yにおけるゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yについても同様とする。
式07xにおける第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)と、式07yにおける第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)とは、図13中にただし書きで示した如く、次式09x、09yにより、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yに応じて決定される。

Ki_x=(1−Kr_x)・Ki_a_x+Kr_x・Ki_b_x ……式09x
Ki_y=(1−Kr_y)・Ki_a_y+Kr_y・Ki_b_y ……式09y
(i=1,2,3)
ここで、式09xにおけるKi_a_x、Ki_b_xは、それぞれ、第iゲイン係数Ki_xの最小側(“0”に近い側)のゲイン係数値、最大側(“0”から離れる側)のゲイン係数値としてあらかじめ設定された定数値である。このことは、式09yにおけるKi_a_y、Ki_b_yについても同様である。
従って、式07xの演算に用いる各第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)は、それぞれに対応する定数値Ki_a_x、Ki_b_xの重み付き平均値として決定される。そして、この場合、Ki_a_x、Ki_b_xにそれぞれ掛かる重みが、ゲイン調整パラメータKr_xに応じて変化させられる。このため、Kr_x=0である場合には、Ki_x=Ki_a_xとなり、Kr_x=1である場合には、Ki_x=Ki_b_xとなる。そして、Kr_xが“0”から“1”に近づくに伴い、第iゲイン係数Ki_xはKi_a_xからKi_b_x近づいていく。
同様に、式07yの演算に用いる各第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)は、それぞれに対応する定数値Ki_a_y、Ki_b_yの重み付き平均値として決定される。そして、この場合、Ki_a_y、Ki_b_yにそれぞれ掛かる重みが、ゲイン調整パラメータKr_yに応じて変化させられる。このため、Ki_xの場合と同様に、Kr_yの値が“0”から“1”の間で変化するに伴い、第iゲイン係数Ki_yの値が、Ki_a_yとKi_b_yとの間で変化する。
補足すると、上記定数値Ki_a_x、Ki_b_x及びKi_a_y,Ki_b_y(i=1,2,3)は、前記STEP6又は8において値が設定される定数パラメータに含まれるものである。
姿勢制御演算部80は、上記の如く決定した第1〜第3ゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xを用いて前記式07xの演算を行なうことで、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを算出する。
さらに詳細には、図13を参照して、姿勢制御演算部80は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_sに第1ゲイン係数K1_xを乗じてなる操作量成分u1_xと、基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに第2ゲイン係数K2_xを乗じてなる操作量成分u2_xとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、重心速度推定値Vb_x_sと制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差(=Vb_x_s−Vb_x_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_xを乗じてなる操作量成分u3_xを処理部80cで算出する。そして、姿勢制御演算部80は、これらの操作量成分u1_x,u2_x,u3_xを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_comを算出する。
同様に、姿勢制御演算部80は、上記の如く決定した第1〜第3ゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yを用いて前記式07yの演算を行なうことで、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを算出する。
この場合には、姿勢制御演算部80は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_y_sに第1ゲイン係数K1_yを乗じてなる操作量成分u1_yと、基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに第2ゲイン係数K2_yを乗じてなる操作量成分u2_yとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、重心速度推定値Vb_y_sと制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとの偏差(=Vb_y_s−Vb_y_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_yを乗じてなる操作量成分u3_yを処理部80cで算出する。そして、姿勢制御演算部80は、これらの操作量成分u1_y,u2_y,u3_yを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_comを算出する。
ここで、式07xの右辺の第1項(=第1操作量成分u1_x)及び第2項(=第2操作量成分u2_x)は、Y軸周り方向での基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_sを、フィードバック制御則としてのPD則(比例・微分則)により“0”に収束させる(基体傾斜角度計測値θb_x_sを目標値θb_x_objに収束させる)ためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
また、式07xの右辺の第3項(=第3操作量成分u3_x)は、重心速度推定値Vb_x_sと目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差をフィードバック制御則としての比例則により“0”に収束させる(Vb_x_sをVb_x_mdfdに収束させる)ためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
これらのことは、式07yの右辺の第1〜第3項(第1〜第3操作量成分u1_y,u2_y,u3_y)についても同様である。
姿勢制御演算部80は、上記の如く、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_com,ωwdot_y_comを算出した後、次に、これらのωwdot_x_com,ωwdot_y_comをそれぞれ積分器80fにより積分することによって、前記仮想車輪回転速度指令ωw_x_com,ωw_y_comを決定する。
以上が姿勢安定化制御演算部80の処理の詳細である。
補足すると、式07xの右辺の第3項を、Vb_x_sに応じた操作量成分(=K3_x・Vb_x_s)と、Vb_x_mdfdに応じた操作量成分(=−K3_x・Vb_x_mdfd)とに分離した式によって、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_comを算出するようにしてよい。同様に、式07yの右辺の第3項を、Vb_y_sに応じた操作量成分(=K3_y・Vb_y_s)と、Vb_y_mdfdに応じた操作量成分(=−K3_y・Vb_y_mdfd)とに分離した式によって、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_y_comを算出するようにしてよい。
また、本実施形態では、車両系重心点の挙動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_x,62_yの回転角加速度指令ωw_x_cmd,ωw_y_cmdを用いるようにしたが、例えば、仮想車輪62_x,62_yの駆動トルク、あるいは、この駆動トルクに各仮想車輪62_x,62_yの半径Rw_x,Rw_yを乗じてなる並進力(すなわち仮想車輪62_x,62_yと床面との間の摩擦力)を操作量として用いるようにしてもよい。
図9の説明に戻って、制御ユニット50は、次に、姿勢安定化制御演算部80で上記の如く決定した仮想車輪回転速度指令ωw_x_com,ωw_y_comをモータ指令演算部82に入力し、該モータ指令演算部82の処理を実行することによって、電動モータ31Rの速度指令ω_R_comと電動モータ31Lの速度指令ω_L_comとを決定する。このモータ指令演算部82の処理は、前記リミット処理部86(図11参照)のXY−RL変換部86bの処理と同じである。
具体的には、モータ指令演算部82は、前記式01a,01bのωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_com,ωw_y_com,ω_R_cmd,ω_L_cmdに置き換えて得られる連立方程式を、ω_R_cmd,ω_L_cmdを未知数として解くことによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令ω_R_com,ω_L_comを決定する。
以上により前記STEP9の車両制御演算処理が完了する。
以上説明した如く制御ユニット50が制御演算処理を実行することによって、前記搭乗モード及び自立モードのいずれの動作モードにおいても、基本的には、基体9の姿勢が、前記基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s,θbe_y_sの両方が“0”となる姿勢(以下、この姿勢を基本姿勢という)に保たれるように、換言すれば、車両系重心点(車両・乗員全体重心点又は車両単体重心点)の位置が、車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態に保たれるように、操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_xy_comが決定される。より詳しく言えば、基体9の姿勢を前記基本姿勢に保ちつつ、車両系重心点の移動速度の推定値としての重心速度推定値Vb_xy_sを制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdに収束させるように、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_xy_comが決定される。なお、制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdは、通常は(詳しくは搭乗モードで乗員等が車両1の付加的な推進力を付与しない限り)、“0”である。この場合には、基体9の姿勢を前記基本姿勢に保ちつつ、車両系重心点がほぼ静止するように、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_xy_comが決定されることとなる。
そして、ωdotw_xy_comの各成分を積分してなる仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_comを変換してなる電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が、電動モータ31R,31Lの速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdとして決定される。さらに、その速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdに従って、各電動モータ31R,31Lの回転速度が制御される。ひいては車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度が、ωw_x_comに対応する仮想車輪62_xの移動速度と、ωw_y_comに対応する仮想車輪62_yの移動速度とに各々一致するように制御される。
このため、例えば、Y軸周り方向で、実際の基体傾斜角度θb_xが目標値θb_x_objから前傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_x_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が前方に向かって移動する。同様に、実際のθb_xが目標値θb_x_objから後傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_x_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が後方に向かって移動する。
また、例えば、X軸周り方向で、実際の基体傾斜角度θb_yが目標値θb_y_objから右傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_y_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が右向きに移動する。同様に、実際のθb_yが目標値θb_y_objから左傾側にずれると、そのずれを解消すべく(θbe_y_sを“0”に収束させるべく)、車輪体5が左向きに移動する。
さらに、実際の基体傾斜角度θb_x,θb_yの両方が、それぞれ目標値θb_x_obj,θb_y_objからずれると、θb_xのずれを解消するための車輪体5の前後方向の移動動作と、θb_yのずれを解消するための車輪体5の左右方向の移動動作とが合成され、車輪体5がX軸方向及びY軸方向の合成方向(X軸方向及びY軸方向の両方向に対して傾斜した方向)に移動することとなる。
このようにして、基体9が前記基本姿勢から傾くと、その傾いた側に向かって、車輪体5が移動することとなる。従って、例えば前記搭乗モードにおいて、乗員が意図的にその上体を傾けると、その傾けた側に、車輪体5が移動することとなる。
なお、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdが“0”である場合には、基体9の姿勢が基本姿勢に収束すると、車輪体5の移動もほぼ停止する。また、例えば、基体9のY軸周り方向の傾斜角度θb_xを基本姿勢から傾いた一定の角度に維持すると、車輪体5のX軸方向の移動速度は、その角度に対応する一定の移動速度(制御用目標重心速度Vb_x_mdfdと一定の定常偏差を有する移動速度)に収束する。このことは、基体9のX軸周り方向の傾斜角度θb_yを基本姿勢から傾いた一定の角度に維持した場合も同様である。
また、例えば、前記要求重心速度生成部74で生成される要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimの両方が“0”となっている状況において、基体9の前記基本姿勢からの傾き量(基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s,θbe_y_s)が比較的大きくなり、それを解消し、もしくはその傾き量を維持するために必要な車輪体5のX軸方向及びY軸方向の一方又は両方の移動速度(これらの移動速度は、それぞれ、図12に示した前記重心速度定常偏差予測値Vb_x_prd、Vb_y_prdに相当する)が、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度を許容範囲から逸脱させてしまうような、過大な移動速度になるような状況では、該車輪体5の移動速度に対して逆向きとなる速度(詳しくは、Vw_x_lim2−Vb_x_prd及びVw_y_lim2−Vb_y_prd)が制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。そして、制御入力を構成する操作量成分のうちの操作量成分u3_x,u3_yが、この制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをそれぞれ収束させるように決定される。このため、基体9の前記基本姿勢からの傾き量が過大になるのを予防し、ひいては、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度が高速になり過ぎるのが防止される。
さらに、前記ゲイン調整部78では、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sの一方又は両方が大きくなり、ひいては、基体9の前記基本姿勢からの傾きを解消し、もしくはその傾き量を維持するために必要な車輪体5のX軸方向及びY軸方向の一方又は両方の移動速度が、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度を許容範囲から逸脱させてしまうような、過大な移動速度になる恐れがある状況では、その逸脱が顕著になるほど(詳しくは、図10に示すVover_x,Vover_yの絶対値が大きくなるほど)、前記ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yの一方又は両方が“0”から“1”に近づけられる。
この場合、前記式09xにより算出される各第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)は、Kr_xが“1”に近づくほど、最小側の定数値Ki_a_xから最大側の定数値Ki_b_xに近づく。このことは、前記式09yにより算出される各第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)についても同様である。
そして、上記ゲイン係数の絶対値が大きくなることによって、基体9の傾きの変化に対する操作量(仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_cmd,ωdotw_y_cmd)の感度が高まる。従って、基体9の基本姿勢からの傾き量が大きくなろうとすると、それを素早く解消するように、車輪体5の移動速度が制御されることとなる。従って、基体9が基本姿勢から大きく傾くことが強めに抑制され、ひいては、車輪体5のX軸方向及びY軸方向の一方又は両方の移動速度が、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度を許容範囲から逸脱させてしまうような、過大な移動速度になるのを防止することができる。
また、搭乗モードにおいて、要求重心速度生成部74が、乗員等の操縦操作による要求に応じて要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aim(Vb_x_aim,Vb_y_aimの一方又は両方が“0”でない要求重心速度)を生成した場合には、電動モータ31R,31Lの一方又は両方の回転角速度が許容範囲を逸脱するような高速の回転角速度にならない限り(詳しくは図12に示すVw_x_lim2,Vw_y_lim2がVb_x_t,Vb_y_tにそれぞれ一致する限り)、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimがそれぞれ前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。このため、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimを実現するように(実際の重心速度が要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimに近づくように)、車輪体5の移動速度が制御される。
次に、説明を後回しにした、前記要求重心速度生成部74の処理の詳細を説明する。
要求重心速度生成部74は、本実施形態では、車両1の動作モードが自立モードである場合には、前記したように、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimを“0”とする。
一方、要求重心速度生成部74は、車両1の動作モードが搭乗モードである場合には、乗員等による車両1の操縦操作(車両1に推進力を付加する操作)に応じて、該操作により要求されると推定される要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimを決定する。
ここで、例えば、車両1の乗員が、車両1の発進時等において、車両1の移動速度(車両系重心点の移動速度)を積極的に増速させようとする場合には、自身の足により床を蹴り、それにより車両1に移動速度を増速させる推進力(乗員の足平と床との摩擦力による推進力)を車両1に付加する。あるいは、例えば、車両1の乗員の要求に応じて、外部の補助者等が、車両1にその移動速度を増速させる推進力を付加する場合もある。
このような場合に、要求重心速度生成部74は、車両系重心点の実際の速度ベクトル(以降、重心速度ベクトル↑Vbという)の大きさ(絶対値)の時間的変化率に基づいて、車両1の移動速度を増加させる要求としての加速要求が発生したか否かを判断しつつ、それに応じて、↑Vbの目標値としての要求重心速度ベクトル↑Vb_aim(要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimを2つの成分とする速度ベクトル)を逐次決定する。
その処理を概略的に説明すると、上記加速要求が発生した場合には、該加速要求が解消するまでの間、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの大きさを増加させるように、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimが決定される。そして、上記加速要求が解消すると、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの大きさを段階的に減衰させていくように、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimが決定される。この場合、本実施形態では、基本的には、加速要求が解消してから、所定時間の期間、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの大きさが一定に保たれる。そして、その後に、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの大きさが“0”まで連続的に減衰させられる。なお、この減衰時には、適宜、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの向きがX軸方向に近づけられる。
このような処理を実行する要求重心速度生成部74を、図14〜図20のフローチャートを参照して以下に詳細に説明する。
図14を参照して、要求重心速度生成部74は、まず、STEP21の処理を実行する。この処理では、要求重心速度生成部74は、入力される重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを2つの成分とする速度ベクトル(実際の重心速度ベクトル↑Vbの観測値)である推定重心速度ベクトル↑Vb_sの大きさ|↑Vb_s|(=sqrt(Vb_x_s2+Vb_y_s2))の時間的変化率(微分値)DVb_sを算出する。このDVb_sは、実際の重心速度ベクトル↑Vbの大きさの時間的変化率の観測値(推定値)としての意味を持つ。以降、DVb_sを推定重心速度絶対値変化率DVb_sという。なお、上記sqrt( )は、平方根関数である。
さらに、STEP21では、要求重心速度生成部74は、入力される重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sのそれぞれの時間的変化率(微分値)である重心加速度推定値Vbdot_x_s,Vvdot_y_sを算出する。なお、Vbdot_x_s,Vvdot_y_sを2つの成分とするベクトルは、車両系重心点の実際の加速度ベクトルの観測値を意味する。
次いで、STEP22に進んで、要求重心速度生成部74は、要求重心速度Vb_x_aimを算出するための現在の演算処理モードが、どのモードであるかを判断する。
ここで、本実施形態では、要求重心速度生成部74は、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの基本値(以降、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1という)を決定した上で、この基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1に要求重心速度ベクトル↑Vb_aimを追従させるように(定常的には一致させるように)、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimを決定する。
上記演算処理モードは、上記基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1の決定の仕方の種別を表すものである。そして、本実施形態では、該演算処理モードとしては、制動モード、速度追従モード、速度ホールドモードの3種類のモードがある。
制動モードは、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1の大きさを“0”に減衰させていくか、又は“0”に保持するように↑Vb_aim1を決定するモードである。また、速度追従モードは、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1を、推定重心速度ベクトル↑Vb_sに追従させるように(一致又はほぼ一致させるように)決定するモードである。また、速度ホールドモードは、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1の大きさを一定に保つように↑Vb_aim1を決定するモードである。
なお、制御ユニット50の起動時等に該制御ユニット50が初期化された状態での演算処理モード(初期演算処理モード)は、制動モードである。
要求重心速度生成部74は、上記STEP22において、現在の演算処理モードが制動モードである場合と、速度追従モードである場合と、速度ホールドモードである場合とで、それぞれ、次に、STEP23の演算処理、STEP24の演算処理、STEP25の演算処理を実行し、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1を決定する。
これらの各モードに対応する演算処理は、次のように実行される。
STEP23における制動モードの演算処理は、図15のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、要求重心速度生成部74は、まず、前記STEP21で算出した推定重心速度絶対値変化率DVb_sと、重心加速度推定値Vbdot_x_s,Vbdot_y_sとに関して、DVb_s>DV1、且つ、|Vbdot_x_s|>a1*|Vbdot_y_s|という条件が成立するか否かをSTEP23−1で判断する。この判断処理は、車両1の移動速度を車両1の概略前後方向で増速させようとする加速要求が有るか否かを判断する処理である。
ここで、上記DV1は、あらかじめ設定された正の値の第1閾値DV1(>0)である。そして、DVb_s>DV1であるということは、実際の重心速度ベクトル↑Vbの大きさ|↑Vb|が第1閾値DV1よりも大きな時間的変化率で増加している状況を意味する。
また、上記a1は、あらかじめ設定された正の値の係数値である。そして、|Vbdot_x_s|>a1*|Vbdot_y_s|であるということは、車両系重心点の実際の加速度ベクトルが“0”でないX軸方向の成分を有し、且つ、該加速度ベクトルのX軸方向に対する鋭角側の角度(=tan-1(|Vbdot_y_s|/|Vbdot_x_s|)が、所定角度(=tan-1(1/a1))よりも“0”に近い状況であることを意味する。本実施形態では、a1は、例えば“1”又はこれに近い値に設定されている。
従って、STEP23−1の判断結果が肯定的になる状況は、乗員あるいは外部の補助者等により概略前後方向での重心速度ベクトル↑Vbの大きさを増加させようとする操縦操作(車両1に概略前後方向の推進力を付加する操縦操作)が行なわれている状況である。
STEP23−1の判断結果が否定的となる場合、すなわち、車両1の加速要求(概略前後方向での車両1の加速要求)が無い場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−4の判断処理を実行する。
STEP23−4の判断処理では、要求重心速度生成部74は、STEP21で算出した推定重心速度絶対値変化率DVb_sが、あらかじめ設定された負の値の第3閾値DV3(<0)よりも小さいか否かを判断する。この判断処理は、車両1の乗員が重心速度ベクトル↑Vbの大きさを積極的に減少させようとする減速要求が発生したか否かを判断するものである。この場合、車両1の乗員が意図的に自身の足を接地させ、自身の足と床との間に車両1の制動方向の摩擦力を発生させたような場合にSTEP23−4の判断結果が肯定的になる。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP23−4の判断結果が否定的である場合(減速要求が発生していない場合)には、STEP23−5で第1制動演算処理を実行することによって、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1の大きさ|↑Vb_aim1|(以降、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|という)と方位角θvb_aim1(以降、基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1という)とを決定し、図15の処理を終了する。また、STEP23−4の判断結果が肯定的である場合(減速要求が発生した場合には)、要求重心速度生成部74は、STEP23−6で第2制動演算処理を実行することによって、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1とを決定し、図15の処理を終了する。
なお、本実施形態では、基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1は、sin(θvb_aim1)=Vb_x_aim1/|↑Vb_aim1|,cos(θvb_aim1)=Vb_y_aim1/|↑Vb_aim1|となる角度(180°≦θVb_aim≦180°)として定義される。また、|↑Vb_aim|=0である場合には、θVb_aim=0°であるとする。
上記STEP23−5の第1制動演算処理は、図16及び図17のフローチャートに示す如く実行される。
この第1制動演算処理では、要求重心速度生成部74は、まず、STEP23−5−1において基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|の前回値|↑Vb_aim_p|からあらかじめ設定された正の所定値ΔVb1だけ減少させてなる値を、|↑Vb_aim1|の候補値ABS_Vbとして算出する。ΔVb1は、制御処理周期毎の|↑Vb_aim1|の減少量(ひいては|↑Vb_aim1|の時間的変化率)を規定する設定値である。
次いで、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−2において、この候補値ABS_Vbと、“0”とのうちの大きい方の値max(0,ABS_Vb)を、|↑Vb_aim1|の今回値として決定する。従って、ABS_Vb≧0である場合には、ABS_Vbがそのまま|↑Vb_aim1|の今回値として決定され、ABS_Vb<0である場合には、|↑Vb_aim1|の今回値は“0”とされる。
次いで、要求重心速度生成部74は、上記の如く決定した|↑Vb_aim1|が“0”であるか否かをSTEP23−5−3で判断する。この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−5−4において、θvb_aim1の今回値を0°とし、図16の処理を終了する。
STEP23−5−3の判断結果が否定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−5−5からの処理によって、θvb_aim1の前回値θvb_aim1_pの値が、0°≦θvb_aim1_p≦θth1+、θth1-≦θvb_aim1_p<0°、θth2+≦θvb_aim1_p≦180°、−180°≦θvb_aim1_p≦θth2-、θth1+<θvb_aim1_p<θth2+、θth2-<θvb_aim1_p<θth1-のいずれの範囲内の値であるかに応じて、θvb_aim1の今回値を決定する。
ここで、θth1+は、0°と90°との間の値であらかじめ設定された正の方位角閾値、θth1-は、0°と−90°との間の値であらかじめ設定された負の方位角閾値、θth2+は、90°と180°との間の値であらかじめ設定された正の方位角閾値、θth2-は、−90°と−180°との間の値であらかじめ設定された負の方位角閾値である。本実施形態では、θth1+とθth1-とは、それらの絶対値が互いに同一の値(例えば45°もしくはその近辺の角度値)に設定されている。また、θth2+とθth2-とは、それらの絶対値が互いに同一の値(例えば135°もしくはその近辺の角度値)に設定されている。なお、θth1+とθth1-との差(=(θth1+)−(θth1-))と、θth2とθth2-との差(=(θth2+)−(θth2-))とは、互いに同一である必要なない。
STEP23−5−5からの処理は以下に説明する如く実行される。すなわち、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−5において、0°≦θvb_aim1_p≦θth1+であるか否かを判断する。この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−6において、θvb_aim1の前回値θvb_aim1_pからあらかじめ設定された正の所定値Δθvb1だけ減少させてなる値を、θvb_aim1の候補値ANG_Vbとして算出する。Δθvb1は、制御処理周期毎のθvb_aim1の変化量(ひいてはθvb_aim1の時間的変化率)を規定する設定値である。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−7において、この候補値ANG_Vbと、0°とのうちの大きい方の角度値max(0,ANG_Vb)をθvb_aim1の今回値として決定し、図16の処理を終了する。従って、ANG_Vb≧0°である場合には、ANG_Vbがそのままθvb_aim1の今回値として決定され、ANG_Vb<0°である場合には、θvb_aim1の今回値は0°とされる。
STEP23−5−5の判断結果が否定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−5−8において、θth1-≦θvb_aim1_p<0°であるか否かを判断する。この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−9において、θvb_aim1の前回値θvb_aim1_pから前記所定値Δθvb1だけ増加させてなる値を、θvb_aim1の候補値ANG_Vbとして算出する。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−10において、この候補値ANG_Vbと、0°とのうちの小さい方の角度値min(0,ANG_Vb)をθvb_aim1の今回値として決定し、図16の処理を終了する。従って、ANG_Vb≦0°である場合には、ANG_Vbがそのままθvb_aim1の今回値として決定され、ANG_Vb>0°である場合には、θvb_aim1の今回値は0°とされる。
STEP23−5−8の判断結果が否定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、図17のSTEP23−5−11において、θth2+≦θvb_aim1_p≦180°であるか否かを判断する。この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−12において、θvb_aim1の前回値θvb_aim1_pから前記所定値Δθvb1だけ増加させてなる値を、θvb_aim1の候補値ANG_Vbとして算出する。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−13において、この候補値ANG_Vbと、0°とのうちの小さい方の角度値min(180,ANG_Vb)をθvb_aim1の今回値として決定し、図17の処理を終了する。従って、ANG_Vb≦180°である場合には、ANG_Vbがそのままθvb_aim1の今回値として決定され、ANG_Vb>180°である場合には、θvb_aim1の今回値は180°とされる。
STEP23−5−11の判断結果が否定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−5−14において、−180°≦θvb_aim1_p≦θth2-であるか否かを判断する。この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−15において、θvb_aim1の前回値θvb_aim1_pから前記所定値Δθvb1だけ減少させてなる値を、θvb_aim1の候補値ANG_Vbとして算出する。
そして、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−16において、この候補値ANG_Vbと、−180°とのうちの大きい方の角度値max(180,ANG_Vb)をθvb_aim1の今回値として決定し、図17の処理を終了する。従って、ANG_Vb≧−180°である場合には、ANG_Vbがそのままθvb_aim1の今回値として決定され、ANG_Vb<−180°である場合には、θvb_aim1の今回値は−180°とされる。
STEP23−5−14の判断結果が否定的である場合、すなわち、θth1+<θvb_aim1_p<θth2+又はθth2-<θvb_aim1_p<θth1-である場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−5−17において、θvb_aim1の今回値を、前回値θvb_aim1_pと同じ値に決定し、図17の処理を終了する。
以上が、STEP23−5の第1制動演算処理の詳細である。
一方、前記STEP23−6の第2制動演算処理は、図18のフローチャートに示す如く実行される。
この第2制動演算処理では、要求重心速度生成部74は、まず、STEP23−6−1において基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|の前回値|↑Vb_aim_p|からあらかじめ設定された正の所定値ΔVb2だけ減少させてなる値を、|↑Vb_aim1|の候補値ABS_Vbとして算出する。ΔVb2は、第2制動演算処理での、制御処理周期毎の|↑Vb_aim1|の減少量(ひいては|↑Vb_aim1|の時間的変化率)を規定する設定値である。この場合、ΔVb2は、前記第1制動演算処理で使用する所定値ΔVb1よりも大きな値に設定されている。
次いで、要求重心速度生成部74は、STEP23−6−2において、前記STEP23−5−2と同様の処理を実行し、STEP23−6−1で算出した候補値ABS_Vbと、“0”とのうちの大きい方の値max(0,ABS_Vb)を、|↑Vb_aim1|の今回値として決定する。
次いで、要求重心速度生成部74は、上記の如く決定した|↑Vb_aim1|が“0”であるか否かをSTEP23−6−3で判断する。この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−6−4において、θvb_aim1の今回値を“0”とし、図18の処理を終了する。
また、STEP23−6−3の判断結果が否定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP23−6−5において、θvb_aim1の今回値を、前回値θvb_aim1_pと同じ値に決定し、図18の処理を終了する。
以上が、STEP23−6の第2制動演算処理の詳細である。
図15の説明に戻って、前記STEP23−1の判断結果が肯定的である場合、すなわち、概略前後方向での車両1の加速要求が有る場合には、要求重心速度生成部74は、STEP23−2で基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1とを決定する。要求重心速度生成部74は、STEP23−3で演算処理モードを制動モードから速度追従モードに変更し、図15の処理を終了する。
上記STEP23−2では、具体的には、前記推定重心速度ベクトル↑Vb_s(今回値)の大きさ|↑Vb_s|(=sqrt(Vb_x_s2+Vb_y_s2))に、あらかじめ設定された所定値の比率γを乗じてなる値が、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|として決定される。上記比率γは、本実施形態では、“1”よりも若干小さい正の値(例えば0.8)に設定されている。
さらに、STEP23−2では、推定重心速度ベクトル↑Vb_sの方位角θvb_s(=sin-1(Vb_x_s/|↑Vb_s|))がそのまま、基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1として決定される。従って、STEP23−2では、結果的には、推定重心速度ベクトル↑Vb_sに上記比率γを乗じてなるベクトルが、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1として決定されることとなる。
このようなSTEP23−2の処理は、|↑Vb_x_aim1|とθvb_aim1との決定の仕方を、次回の制御処理サイクルから開始する速度追従モードに合わせるものである。
なお、上記比率γの値が“1”よりも若干小さいことは必須ではなく、例えば、該比率γの値を“1”あるいはそれよりも若干大きい値に設定してもよい。本実施形態では、乗員が体感的(感覚的)に認識する車両1の移動速度が、実際の移動速度に比べて高速であるかのように認識されるのを防止するために、比率γの値を“1”よりも若干小さい値に設定している。
以上が、STEP23における制動モードの演算処理である。
なお、STEP23−1の判断結果が否定的となる場合には、演算処理モードは変更されないので、次回の制御処理周期においても、演算処理モードは、制動モードに維持されることとなる。
次に、STEP24における速度追従モードの演算処理は、図19のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、要求重心速度生成部74は、まず、STEP24−1において、前記STEP23−4と同じ判断処理、すなわち、車両1の減速要求が発生したか否かの判断処理を実行する。
この判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP24−6において、前記STEP23−6と同じ処理(図18のフローチャートに示す処理)を実行することによって、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1とを決定する。さらに、要求重心速度生成部74は、STEP24−7において、演算処理モードを速度追従モードから制動モードに変更し、図19の処理を終了する。
一方、前記STEP24−1の判断結果が否定的である場合、すなわち、車両1の減速要求が発生していない場合には、要求重心速度生成部74は、次にSTEP24−2の処理を実行する。このSTEP24−2では、要求重心速度生成部74は、前記STEP23−2と同じ処理を実行し、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1とを決定する。すなわち、|↑Vb_x_s|*γが|↑Vb_aim1|として決定される共に、θvb_sがθvb_aim1として決定される。
次いで、要求重心速度生成部74は、STEP24−3において、前記推定重心速度絶対値変化率DVb_s(STEP21で算出した値)が、あらかじめ設定された第2閾値DV2よりも小さいか否かを判断する。この第2閾値DV2は、本実施形態では、前記第3閾値DV3よりも大きい(DV3よりも“0”に近い)負の所定値に設定されている。なお、第2閾値DV2は、“0”もしくは“0”よりも若干大きい正の値(ただし、前記第1閾値DV1よりも小さい値)に設定されていてもよい。
このSTEP24−3の判断処理は、速度追従モードから、前記速度ホールドモードへの移行タイミングを判断するものである。そして、要求重心速度生成部74は、STEP24−3の判断結果が否定的である場合には、そのまま図19の処理を終了する。この場合には、演算処理モードは変更されないので、次回の制御処理周期においても、演算処理モードは、速度追従モードに維持されることとなる。
また、STEP24−3の判断結果が肯定的である場合には、要求重心速度生成部74は、車両1の加速要求が完了したものとみなして、STEP24−4において、カウントダウンタイマを初期化する。そして、要求重心速度生成部74は、STEP24−5にて演算処理モードを速度追従モードから速度ホールドモードに変更し、図19の処理を終了する。
上記カウントダウンタイマは、次回の制御処理周期から開始する速度ホールドモードの開始後の経過時間を計時するタイマである。そして、STEP24−4では、該タイマの計時値CNTに、あらかじめ設定された初期値Tmがセットされる。初期値Tm_xは、速度ホールドモードを継続させようとする時間の設定値を意味する。
以上が、STEP24における速度追従モードの演算処理である。
次に、STEP25における速度ホールドモードの演算処理は、図20のフローチャートに示す如く実行される。具体的には、要求重心速度生成部74は、まず、STEP25−1において、前記STEP23−4と同じ判断処理、すなわち、車両1の減速要求が発生したか否かの判断処理を実行する。
そして、このSTEP25−1の判断結果が肯定的である場合(車両1の減速要求が発生した場合)には、要求重心速度生成部74は、次に、STEP25−2において、前記STEP23−6と同じ処理(図18のフローチャートに示す処理)を実行することによって、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1とを決定する。さらに、要求重心速度生成部74は、STEP25−3において、演算処理モードを速度ホールドモードから制動モードに変更し、図20の処理を終了する。
一方、前記STEP25−1の判断結果が否定的である場合(車両1の減速要求が発生していない場合)には、要求重心速度生成部74は、前記STEP23−1と同じ判断処理、すなわち概略前後方向での車両1の加速要求が有るか否かの判断処理をSTEP25−4で実行する。
そして、STEP25−4の判断結果が肯定的である場合(概略前後方向での車両1の加速要求が再び発生した場合)には、要求重心速度生成部74は、STEP25−5において、前記STEP23−2と同じ処理を実行することによって、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度ベクトル方位角θvb_aim1とを決定する。すなわち、|↑Vb_x_s|*γが|↑Vb_aim1|として決定される共に、θvb_sがθvb_aim1として決定される。
さらに、要求重心速度生成部74は、STEP25−6において、演算処理モードを速度ホールドモードから速度追従モードに変更し、図20の処理を終了する。
前記STEP25−4の判断結果が否定的である場合(概略前後方向での加速要求が無い状態が継続している場合)には、要求重心速度生成部74は、STEP25−7において、前記カウントダウンタイマの計時値CNTをデクリメントする。すなわち、計時値CNTの現在値から所定値ΔT(制御処理周期の時間)を差し引くことによって、計時値CNTを更新する。
次いで、要求重心速度生成部74は、カウントダウンタイマの計時値CNTが“0”よりも大きいか否か、すなわち、カウントダウンタイマの計時が終了したか否かをSTEP25−8にて判断する。
このSTEP25−8の判断結果が肯定的である場合は、速度ホールドモードが開始してから、カウントダウンタイマの前記初期値Tmにより表される時間が未だ経過していない場合である。この場合には、要求重心速度生成部74は、演算処理モードを速度ホールドモードに維持するものとして、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度方位角θvb_aim1とをSTEP25−9にて決定し、図20の処理を終了する。
この場合、STEP25−9では、|↑Vb_aim1|の今回値は、前回値|↑Vb_aim1_p|と同じ値に決定される。また、θvb_aim1の今回値は、前回値θvb_aim1_pと同じ値に決定される。従って、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1_pの前回値がそのまま、↑Vb_aim1の今回値の速度ベクトルとして決定される。
なお、STEP25−8の判断結果が肯定的である場合には、演算処理モードは変更されないので、次回の制御処理周期においても、演算処理モードは、速度ホールドモードに維持されることとなる。
前記STEP25−8の判断結果が否定的となった場合、すなわち、速度ホールドモードが開始してから、カウントダウンタイマの前記初期値Tmにより表される所定時間が経過した場合には、要求重心速度生成部74は、STEP25−10において、前記STEP23−5と同じ処理(図16及び図17のフローチャートの処理)を実行することによって、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|と基本要求重心速度方位角θvb_aim1とを決定する。
さらに、要求重心速度生成部74は、STEP25−11にて、演算処理モードを速度ホールドモードから制動モードに変更し、図20の処理を終了する。
以上が、STEP25における速度ホールドモードの演算処理である。
図14の説明に戻って、要求重心速度生成部74は、以上の如くSTEP23〜25のいずれかの演算処理を実行した後、次に、その演算処理により決定した|↑Vb_aim1|とθvb_aim1とをそれぞれフィルタに入力する処理(フィルタリング処理)をSTEP26にて実行する。
ここで、|↑Vb_aim1|とθvb_aim1とをそれぞれ入力するフィルタは、特に、演算処理モードが制動モードから速度追従モードに変更された直後に、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの大きさ|↑Vb_aim|と方位角θvb_aimとがステップ状に急変するのを防止するための一次遅れ特性のローパスフィルタである。この場合、|↑Vb_aim|を入力するフィルタの時定数は比較的短い時定数に設定されており、|↑Vb_aim1|が急変した直後以外の状況では該フィルタの出力値が|↑Vb_aim1|に一致又はほぼ一致するようになっている。θvb_aim1を入力するフィルタについても同様である。
そして、STEP26では、θvb_aim1を入力したフィルタの出力値が、そのまま、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの方位角θvb_aim(以降、要求重心速度ベクトル方位角θvb_aimという)として決定される。
次いで、STEP27に進んで、要求重心速度生成部74は、|↑Vb_aim1|を入力したフィルタの出力値を、リミッタに通してなる値を、最終的に要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの大きさ|↑Vb_aim|(以降、要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim|という)として決定する。この場合、該リミッタは、|↑Vb_aim|が過大になるのを防止するためのものであり、|↑Vb_aim1|を入力したフィルタの出力値があらかじめ設定された所定の上限値以下である場合には、該フィルタの出力値をそのまま|↑Vb_aim|として出力する。また、該リミッタは、フィルタの出力値が上記上限値を超えている場合には、該上限値を|↑Vb_aim|として出力する。換言すれば、該リミッタは、フィルタの出力値と上記上限値とのうちの小さい方の値を|↑Vb_aim|として出力する。
次いで、STEP28に進んで、要求重心速度生成部74は、上記の如く決定した|↑Vb_aim|とθvb_aimとから、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimのX軸方向成分(X軸方向の要求重心速度)Vb_x_aimと、Y軸方向の成分(Y軸方向の要求重心速度)Vb_y_aimとを算出する。より詳しくは、|↑Vb_aim|*sin(θvb_aim)がVb_x_aimとして算出され、|↑Vb_aim|*cos(θvb_aim)がVb_y_aimとして算出される。
以上が要求重心速度生成部74の処理の詳細である。
以上説明した要求重心速度生成部74の処理によって、要求重心速度ベクトル↑Vb_aimは(ひいては要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aim)は、以下のような態様で決定されることとなる。
すなわち、例えば、車両1の移動速度を増速するために、乗員が自身の足平で床を蹴ることによって、あるいは、補助者等が車両1を押すことによって、車両1に対して、概略X軸方向の推進力(詳しくは、前記STEP23−1の判断結果が肯定的となるような推進力)を付加した場合を想定する。
なお、推進力を付加する前の演算処理モードは、前記制動モードであるとする。また、ここでは、理解の便宜上、図14のSTEP26で|↑Vb_aim1|を入力するフィルタの出力値は、STEP27でのリミッタによる強制的な制限がかからない程度の範囲内に収まる値(該リミッタの上限値以下の値)であるとする。同様に、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sが、前記リミット処理部104での出力値V_x_lim2,V_y_lim2の強制的な制限が行なわれない程度の範囲内に収まるものとする。
この場合、車両1に推進力を付加することによって、前記STEP23−1の判断結果が肯定的となると、図15のSTEP23−3の処理によって、演算処理モードが制動モードから速度追従モードに変更されることとなる。
この速度追従モードでは、減速要求が発生しない状況(STEP24−1の判断結果が否定的となる状況)で、推定重心速度ベクトル↑Vb_sの今回値(現在値)に、所定値の比率γを乗じてなるベクトル、すなわち、↑Vb_sよりも大きさが若干小さく、且つ、↑Vb_sと同じ向きの速度ベクトルが、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1として逐次決定される。
このため、要求重心速度生成部74が逐次決定する要求重心速度ベクトル↑Vb_aimは、車両1に付加された推進力によって増速する(大きさが増加する)実際の重心速度ベクトル↑Vbにほぼ一致する速度ベクトル↑Vb_aim1(=γ*↑Vb_s)に追従するように、決定されることとなる。
そして、このように決定される要求重心速度ベクトル↑Vb_aimのX軸方向成分とY軸方向成分とが前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。さらに、各仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_cmd,ωdotw_y_cmdにそれぞれ含まれる操作量成分u3_x,u3_yは、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを各々収束させるように決定される。
この結果、乗員が車両1に付加した推進力による車両系重心点の実際の移動速度の増速(概略前後方向での増速)が該推進力による要求に即して速やかに行なわれるように、車輪体5の移動速度が制御されることとなる。従って、車両1が付加された推進力によって円滑に加速することとなる。
なお、速度追従モードにおいて、車両1に制動力を付加することによって、図19のSTEP24−1の判断結果が肯定的になると(減速要求が発生すると)、演算処理モードが前記制動モードに変化する。このため、車両1の移動速度が減衰していくこととなる。この場合、減速要求の発生中は、STEP23−6の第2制動演算処理(図18の処理)によって、|↑Vb_aim1|とθvb_aim1とが決定されるので、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1、あるいはこれに追従する要求重心速度ベクトル↑Vb_aimは、その向きを一定に保ったまま、大きさが一定の時間的変化率(前記所定値ΔVb2により規定される時間的変化率)で減衰していくように決定されることとなる。
次に、速度追従モードにおいて、車両1への推進力の付加が終了し、推定重心速度絶対値変化率DVb_sが前記第2閾値DV2よりも小さくなると(図19のSTEP24−3の判断結果が肯定的になると)、図19のSTEP24−5の処理によって、演算処理モードが速度追従モードから速度ホールドモードに変更されることとなる。
この速度ホールドモードでは、加速要求及び減速要求が発生しない状況(図19のSTEP25−1、25−4の判断結果がいずれも否定的となる状況)で、カウントダウンタイマの計時が終了するまで、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1は、前回値の速度ベクトル↑Vb_aim1_pと同じ速度ベクトルに設定される。
従って、速度ホールドモードの開始後、カウントダウンタイマの計時が終了するまでの所定時間(カウントダウンタイマの初期値Tmの時間)の期間において、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1は、速度ホールドモードが開始する直前に決定された速度ベクトルと同じ速度ベクトルで一定に保持されることとなる。
このため、↑Vb_aim1に追従するように決定される要求重心速度ベクトル↑Vb_aimも、一定の速度ベクトル(速度ホールドモードが開始する直前に決定された↑Vb_aimと一致又はほぼ一致する速度ベクトル)に保たれるように決定されることとなる。
そして、上記の如く決定される要求重心速度ベクトル↑Vb_aimのX軸方向成分とY軸方向成分とが前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。さらに、各仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_cmd,ωdotw_y_cmdにそれぞれ含まれる操作量成分u3_x,u3_yは、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを各々収束させるように決定される。
この結果、車両1の増速後に、カウントダウンタイマの計時が終了するまでの期間(前記初期値Tmにより表される時間の期間)において、乗員の上体の姿勢の頻繁な調整を必要とすることなく、車両系重心点の実際の速度ベクトル↑Vbの大きさ及び向きが一定に保たれるように該車輪体5の移動速度が制御されることとなる。従って、この状況での車両1の実際の走行状態は、乗員がその上体を積極的に動かすような操縦操作をせずとも、ほぼ一定の速度ベクトルで滑走するような状態となる。
なお、速度ホールドモードにおいて、再び車両1に概略前後方向の推進力を付加することによって、図20のSTEP25−4の判断結果が肯定的になると(加速要求が発生すると)、演算処理モードが前記速度追従モードに戻る。このため、車両1が再び概略前後方向で加速することとなる。
また、速度ホールドモードにおいて、車両1に制動力を付加することによって、図20のSTEP25−1の判断結果が肯定的になると(減速要求が発生すると)、演算処理モードが前記制動モードに変化する。このため、車両1の移動速度が減衰していくこととなる。この場合、速度追従モードで減速要求が発生した場合と同様に、減速要求の発生中は、STEP23−6の第2制動演算処理(図18の処理)によって、|↑Vb_aim1|とθvb_aim1とが決定される
次に、速度ホールドモードにおいて、加速要求及び減速要求が発生しない状況(図20のSTEP25−1、25−4の判断結果がいずれも否定的となる状況)が保たれたまま、前記カウントダウンタイマの計時が終了すると、図20のSTEP25−11の処理によって、演算処理モードが速度ホールドモードから制動モードに変更されることとなる。
この制動モードでは、加速要求及び減速要求が発生しない状況(図15のSTEP23−1,23−4の判断結果がいずれも否定的となる状況)で、図16のSTEP23−5−1,23−5−2の処理が制御処理周期毎に実行されることによって、基本要求重心速度ベクトル絶対値|↑Vb_aim1|が、“0”まで一定の時間的変化率(前記ΔVb1により規定される時間的変化率)で連続的に減衰していくこととなる。そして、|↑Vb_aim1|が“0”まで減衰した後には、|↑Vb_aim1|が“0”に保持される。
さらに、制動モードでは、加速要求及び減速要求が発生しない状況で、図16のSTEP23−5−3以降の処理が制御処理周期毎に実行される。この場合、速度ホールドモードから制動モードへの移行直前に決定された基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1の向き(図20のSTEP25−8の判断結果が否定的となる制御処理周期の1つ前の制御処理周期で決定された↑Vb_aim1の向き)が、X軸方向と異なり、且つ、比較的X軸方向に近い向きである場合(より正確には、移行直前に決定された↑Vb_aim1の方位角θvb_aim1が、0°<θvb_aim1_p≦θth1+、θth1-≦θvb_aim1_p<0°、θth2+≦θvb_aim1_p<180°、−180°<θvb_aim1_p≦θth2-のいずれかの範囲内の角度値である場合)には、|↑Vb_aim1|が“0”に減衰するまでの期間内において、θvb_aim1が一定の時間的変化率で収束目標角度値としての0°又は180°又は−180°に近づいていき、最終的に、該収束目標角度値に保持される。従って、制動モードの開始後、|↑Vb_aim1|が“0”に減衰するまでの期間内において、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aimの向きが、連続的にX軸方向に近づいていくこととなる。換言すれば、当該期間内において、基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aimのX軸方向成分Vb_x_aim1の絶対値に対するY軸方向成分Vb_y_aim1の絶対値の比率が、“0”に近づいていくこととなる。そして、|↑Vb_aim1|が“0”に減衰するまでに、↑Vb_aim1の向きがX軸方向と同じ向きに到達すると(Vb_y_aim1=0になると)、↑Vb_aim1の向きがX軸方向と同じ向きに保持される。
従って、↑Vb_aim1は、その大きさが減衰しつつ、その向きがX軸方向に近づく(収束する)ように決定される。このように↑Vb_aim1が決定される状況では、↑Vb_aim1に追従するように決定される要求重心速度ベクトル↑Vb_aimも、その大きさが減衰しつつ、その向きがX軸方向に近づくように決定されることとなる。
また、速度ホールドモードから制動モードへの移行直前に決定された基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1の向きが、X軸方向と異なり、且つ、X軸方向から比較的乖離した向きである場合(より正確には、上記移行直前に決定された↑Vb_aim1の方位角θvb_aim1が、θth1+<θvb_aim1_p<θth2+、θth2-<θvb_aim1_p<θth1-のいずれかの範囲内の角度値である場合)には、|↑Vb_aim1|が“0”に減衰するまでの期間内において、θvb_aim1が、上記移行直前に決定された↑Vb_aim1の方位角θvb_aim1と同じ角度値で一定に保持される。
従って、↑Vb_aim1は、その大きさが減衰しつつ、その向きが一定に保たれるように決定される。このように↑Vb_aim1が決定される状況では、↑Vb_aim1に追従するように決定される要求重心速度ベクトル↑Vb_aimも、その大きさが減衰しつつ、その向きが一定に保たれるように決定されることとなる。
なお、本実施形態では、速度ホールドモードでは、↑Vb_aim1は、その大きさ及び向きが一定に保持されるので、速度ホールドモードから制動モードへの移行直前に決定された基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1は、結果的には、速度追従モードから速度ホールドモードへの移行直前に決定された↑Vb_aim1(本実施形態では、図19のSTEP24−3の判断結果が肯定的となる制御処理周期で決定された↑Vb_aim1)に一致する。
そして、制動モードで上記の如く決定される要求重心速度ベクトル↑Vb_aimのX軸方向成分とY軸方向成分とが前記制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。さらに、各仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_cmd,ωdotw_y_cmdにそれぞれ含まれる操作量成分u3_x,u3_yは、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdに重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sを各々収束させるように決定される。
この結果、前記制動モードの前の演算処理モードが速度ホールドモードである場合に、乗員がその上体の動きによる積極的な操縦操作を行なわずとも、車両系重心点の実際の速度ベクルの大きさが速度ホールドモードでの大きさから連続的に減衰していくように車輪体5の移動速度が制御されることとなる。
この場合、速度ホールドモードから制動モードへの移行直前に決定された↑Vb_aim1(=速度追従モードから速度ホールドモードへの移行直前に決定された↑Vb_aim1)の向きが、X軸方向と異なり、且つ、比較的X軸方向に近い向きである場合には、乗員がその上体の動きによる積極的な操縦操作を行なわずとも、車両系重心点の速度ベクトルの大きさが減衰しながら、該速度ベクトルの向きが自動的にX軸方向(乗員の前後方向)に近づいていくこととなる。従って、乗員の前後方向に対する車両1の直進性が高まる。
ここで、車両1を加速しようとする場合、多くの場合、特に乗員の前後方向で車両1を加速することが要求される。この場合、本実施形態の車両1は、上記の如く前後方向に対する直進性が高いので、車両1に付加する推進力の向きが、前後方向から多少ずれていても、その後の速度ホールドモードに続く制動モードにおいて、自動的に車両系重心点の速度ベクトルが、前後方向に向くように車輪体5の移動速度が制御される。
このため、車両1の移動方向のばらつきが生じにくく、乗員の前後方向に対して高い直進性を有する車両1(乗員の前後方向に進み易い車両1)が実現されている。ひいては、車両1を前後方向に移動させる場合に、車両1に付加する推進力を正確に前後方向に向けずとも、該車両1を前後方向に移動させることができる。その結果、車両1を前後方向に移動させる操縦操作が容易になる。
また、速度ホールドモードから制動モードへの移行直前に決定された基本要求重心速度ベクトル↑Vb_aim1(=速度追従モードから速度ホールドモードへの移行直前に決定された↑Vb_aim1)の向きが、X軸方向と異なり、且つ、X軸方向から比較的乖離した向きである場合には、乗員がその上体の動きによる積極的な操縦操作を行なわずとも、車両系重心点の速度ベクトルの大きさが減衰しながら、該速度ベクトルの向きがほぼ一定に保たれる。すなわち、速度ホールドモードから制動モードへの移行直前に決定された↑Vb_aim1の向きが、X軸方向から比較的乖離した向きである場合には、速度追従モードで最終的に乗員が意図した車両系重心の速度ベクトルの向きが、X軸方向と異なる向きである可能性が高い。従って、速度追従モード以後に、車両系重心点が、乗員が意図する方向と乖離する向きに移動しようとするのを防止できる。
次に、図21を参照して、本実施形態に係る全方向移動車両1に含まれる制御系の構成について詳細に説明する。
図21は、全方向移動車両1の制御系の構成の一例を示す概略図である。
図21に示す通り、全方向移動車両1の制御系は、上述の制御ユニット50と、上位制御部200と、中間制御部400とを備える。
上位制御部200は、操作部300および出力部320と接続されており、配線500を介して中間制御部400と接続されている。この上位制御部200は、操作部300によって得られた操作情報が入力されるとともに、中間制御部400から判定結果を表わす情報(詳細については後述する)を入力すると、この判定結果を表わす情報を出力部320に出力する。
また、上位制御部200は、指示信号生成部211と、信号送出部212と、周期信号生成器213とを含む信号送出部210を備え、操作部300から入力された操作情報に基づき指示信号を生成するとともに、この指示信号に周期性を与えて周期指示信号を生成し、配線500を介して中間制御部400にこの周期指示信号を出力する。なお、この指示信号は、操作情報に応じて予め決められた電圧レベルで表わされる。
指示信号生成部211は、操作部300と接続されており、操作部300から入力される操作情報に応じた指示信号を生成する。本実施形態において、この指示信号生成部211は、操作情報が入力された際に、この操作情報に応じた単パルスの指示信号を生成する。
例えば、電源オンボタン301が押下され、操作部300から電源オンを表わす操作情報が入力されると、指示信号生成部211は、この操作情報に応じて予め決められている電圧レベルDv2の指示信号DS2(図24参照)を生成して、信号送出部212に出力する。一方、電源オフボタン302が押下され、操作部300から電源オフを表わす操作情報が入力されると、指示信号生成部211は、この操作情報に応じて予め決められている電圧レベルDv1の指示信号DS1(図24参照)を生成して、信号送出部212に出力する。
また、指示信号生成部211は、操作部300から入力される操作情報を検出しない場合、操作情報を検出しない場合として予め決められている電圧レベルDv0の指示信号DS0(図24参照)を生成して、信号送出部212に出力する。
周期信号生成部213は、予め決められた周期性を指示信号に与えるための周期信号を生成する。この周期信号生成部213は、例えば、信号送出器212から出力される指示信号を変調周波数で変調する周期信号を生成し、信号送出器212に出力する。
また、周期信号生成部213は、周期信号として変調信号を生成するものに限られず、例えば、予め決められた電圧レベルのパルス信号を周期的なタイミングで繰り返す周期信号を生成し、信号送出器212に出力するものであってもよい。この場合、信号送出器212は、指示信号生成部211から入力される指示信号に、周期信号生成部213から入力される周期信号を重畳し、この周期信号が重畳された指示信号を周期指示信号として中間制御部400に出力する。これにより、操作情報が入力されていないタイミングであっても、周期信号に基づいた周期性を有する指示信号が得られる。
なお、予め決められた電圧レベルの周期信号とは、指示信号生成部211によって生成される指示信号のいずれの電圧レベルとも異なる電圧レベルDv3の周期信号であることが好ましい。一方、周期信号の電圧レベルが指示信号DS0〜DS2のいずれかの電圧レベルと同一である場合、指示信号生成部211によって指示信号DS0〜DS2が生成されるタイミングと、パルス信号が周期的に与えられるタイミングとが、相対的にずれていることが好ましい。
信号送出部212は、指示信号生成部211から指示信号が入力されるとともに、周期信号生成部213によって生成される周期信号が入力される。この信号送出器212は、周期信号に基づき、指示信号生成部211から入力される指示信号に、繰り返される周期信号を重畳させることにより、繰り返し変化する周期性を与えて周期指示信号を生成し、配線部500を介して中間制御部400に出力する。例えば、信号送出器212は、周期信号に基づき、入力される指示信号を変調して、変調周波数で変調された周期指示信号を出力する。
中間制御部400は、信号受取部410と、自己診断部420と、実動作部430と、を備え、上位制御部200と配線500を介して接続されている。この中間制御部400は、配線500を介して上位制御部200から入力される周期指示信号に基づき指示信号を検出して、この指示信号に基づき制御信号を生成するとともに、この制御信号に基づき制御ユニット50を制御する。なお、中間制御部400は、制御ユニット50と一体的に構成してもよい。
信号受取部410は、信号受取器411と、指示保持器412と、を含む。
信号受取器411は、配線500を介して上位制御部200から出力された周期指示信号が入力される。この信号受取器411は、入力された周期指示信号に基づき周期性を検出して、この検出された周期性を表わす検出周期情報を自己診断部420に出力するとともに、周期指示信号に基づき指示信号を検出する。
この信号受取器411としては、例えば、図22に示すように、BPF( Band Pass Filter )4111と、比較器4112とを備え、入力する周期指示信号を分割して、BPF4111および比較器4112のそれぞれに入力させる。
BPF4111は、周期信号生成部213によって生成される信号の周波数成分を透過する周波数特性を有する。このBPF4111は、変調された周期指示信号が入力されると、この変調された周波指示信号に基づき変調周波数のみを検出し、検出された変調周波数を検出周期情報として出力する。
比較器4112は、指示信号に応じて予め決められている電圧レベルの閾値と、この電圧レベルの閾値によって表わされる電圧レベルの指示信号とが対応付けられている指示信号対応情報を内部の記憶部に備える。この比較器4112は、変調された周期指示信号が入力されると、この指示信号対応情報を参照して、この変調された周期指示信号の電圧レベルに対応する指示信号を検出する。
この指示信号対応情報は、例えば、図23に示すものが利用可能である。図23は、指示信号対応情報の一例を示す概略図である。
図23に示す通り、指示信号対応情報は、周期指示信号の電圧レベルVが、電圧レベルDv0以上かつ電圧レベルDv0.5未満である場合、指示信号DS0に対応していることを表わしている。また、指示信号対応情報は、周期指示信号の電圧レベルVが、電圧レベルDv0.5以上かつ電圧レベルDv1.5未満である場合、指示信号DS1に対応し、電圧レベルDv1.5以上かつ電圧レベルDv2.5未満である場合、指示信号DS2に対応していることを表わしている。
指示保持器412は、指示信号を記憶する指示信号記憶部413を備え、この指示信号記憶部413に記憶されている指示信号を表わす指示信号情報を読み出し、実動作部430に出力する。この指示保持器412は、信号受取器411から指示信号が入力されると、この指示信号が表わす情報が、指示信号情報として指示信号記憶部413に記憶すべき情報であるか否かを判断し、記憶すべき情報として予め決められている情報のみを、指示信号情報として、指示信号記憶部413に記憶させる。
この指示信号記憶部413には、指示保持器412によって記憶される指示信号情報と、記憶する指示信号を表わす記憶指示信号情報を記憶している。ここでは、記憶指示信号情報は、指示保持器412によって記憶すべき情報であるか否かを判断する際に利用され、指示信号記憶部413に記憶するべき情報を含み、例えば、電源オフの操作情報を表わす指示信号DS1と、電源オンの操作情報を表わす指示信号DS2とを含む。つまり、操作情報の入力がないことを表わす指示信号DS0を除く指示信号である。
より具体的に説明すると、この指示保持器412は、信号受取器411から指示信号が入力されると、指示信号記憶部413の記憶指示信号情報を参照して、入力された指示信号が表わす指示信号情報が、記憶指示信号情報に含まれているか否かを判断する。つまり、指示保持器412は、入力された指示信号が表わす情報が指示信号記憶部413に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号であるか否かを判断する。記憶指示信号情報に入力した指示信号が表わす情報が含まれている場合、指示保持器412は、この指示信号は指示信号記憶部413に記憶させる指示信号であると判断し、この指示信号を指示信号記憶部413に記憶させる。
なお、指示保持器412は、記憶指示信号情報を参照して、入力された指示信号が表わす情報が指示信号記憶部413に記憶させる情報であると判断した場合、例えば、この指示信号を指示信号記憶部413の同一の記憶領域に上書き保存して、記憶させると判断された指示信号のうち、最も新しい指示信号を指示信号記憶部413に記憶させる。
自己診断部420は、状態判定器421と、異常フラグ保持器422と、結果送出器423とを含み、配線500を介して上位制御部200と接続されている。この自己診断部420は、信号受取部410から出力される検出周期情報が入力され、この検出周期情報に基づき、上位制御部200と中間制御部400とを接続する配線500が断線しているか否かを判断する。
状態判定器421は、入力された検出周期情報に基づき、断線が発生していないことを表わす正常状態であるか否かを判断する。この状態判定器421は、例えば、計時部4211を備え、予め決められた判定期間内において、検出周期情報が検出された時間を計時する。
また、状態判定器421は、正常状態を表わす正常状態判定時間を記憶する記憶部4212を備え、この記憶部4212を参照して、判定期間内において検出周期情報が検出された時間が、正常状態判定時間に達しているか否かを判断し、正常状態判定時間に達している場合、正常状態であると判断し、判断結果を結果送出器423に出力する。
さらに、状態判定器421は、判定期間内において検出周期情報が検出された時間が、正常状態判定時間に達していない場合、正常状態でない(つまり異常状態である)と判断し、判断結果を異常フラグ保持器422に出力する。
なお、状態判定器421は、判断結果を得た場合、判断した際に計時部4211によって計時された時刻情報を判断結果に関連付けて異常フラグ保持器422および結果送出器423に出力する。
異常フラグ保持器422は、状態判定器421から正常状態でないことを表わす判断結果が入力され、入力された判断結果を、この判断結果に関連付けられている時刻情報と対応付けて、内部に備える記憶部4221で記憶する。
結果送出器423は、状態判定器421から正常状態であることを表わす判断結果が入力されるとともに、異常フラグ保持器422から正常状態でないことを表わす判断結果が入力される。この結果送出器423は、入力される判断結果を表わす情報を、配線500を介して上位制御部200に出力する。
なお、上位制御部200は、接続されている出力部320に結果送出器423から入力された情報を出力する。結果送出器423は、入力された判断結果に基づき、出力部320によって判断結果を表わす情報が出力されるための情報を作成して、出力するものであってもよい。例えば、出力部320が、表示画面である場合、この表示画面に表示される画面データを作成して出力するものであってもよい。
実動作部430は、実行器431を含み、信号受取部410の指示保持器412から出力される指示信号に基づき、制御ユニット50の制御を実行させる制御信号を制御ユニット50に出力する。
次に、図22に示す全方向移動車両1の制御系の構成の動作処理の一例について説明する。ここでは、図24を参照して、上位制御部200から出力される指示信号の状態遷移と、中間制御部400から出力される制御信号の状態遷移について説明する。
図24(a)は、操作情報に応じて上位制御部200から出力される指示信号の電圧レベルを表わす図である。図24(b)は、図24(a)に示した指示信号の状態遷移(以下、指示状態遷移という)を表わす図である。
また、図24(c)は、指示信号に応じて中間制御部400から出力される制御信号の電圧レベルを表わす図である。図24(d)は、図24(c)に示した制御信号の状態遷移(以下、制御状態遷移という)を表わす図である。
図24(a)に示す通り、時間t1の時点で、操作部300の電源オンボタン301が押下されると、操作部300から出力された電源オンを表わす操作情報が、上位制御部200の指示信号生成部211に入力される。この指示信号生成部211は、電源オンを表わす操作情報に応じた電圧レベルDv2の指示信号DS2を生成し、信号送出器212に出力する。また、周期信号生成部213は、予め決められている変調周波数で指示信号を変調する周期信号を生成し、信号送出器212に出力する。
これにより、信号送出器212は、周期信号生成部213から入力された周期信号に基づき、指示信号生成部211から入力される指示信号DS2を変調し、この変調された周期指示信号を、配線部500を介して中間制御部400に出力する。
そして、中間制御部400の信号受取部410には、配線500を介して周期指示信号が入力される。信号受取器411は、この周期指示信号に基づき、この周期指示信号に含まれる周期性を検出して、検出周期情報を自己判断部420に出力するとともに、指示信号DS2を検出して指示保持器412に出力する。
例えば、この信号受取器411が図23にようにBPF4111と比較器4112を備える場合、BPF4111は通過する周期指示信号から変調周波数を検出して、この変調周波数が検出された期間やタイミング(時刻)を表わす検出周期情報を自己診断部420に出力する。ここでは、BPF4111は、時間t1において周期性を検出したことを表わす検出周期情報を出力する。
また、比較器4112が指示信号対応情報を参照して、周期指示情報に含まれる指示情報DS2を検出し、検出した指示情報DS2を指示保持器412に出力する。
指示保持器412は、指示信号記憶部413を参照して、信号受取器411から入力される指示信号DS2が、指示信号記憶部413に記憶させる指示信号であるか否かを判断する。ここで、指示信号DS2は、指示信号記憶部413に記憶させる指示信号である指示信号として指示信号記憶部413に記憶されている。よって、指示保持器412は、受信した指示信号DS2を指示信号記憶部413に記憶させるとともに、指示信号記憶部413に記憶されている指示情報DS2を読み出し、実動作部430の実行器431に出力する。
そして、実行器431は、信号受取部410の指示保持器412から出力される指示信号DS2に基づき、制御ユニット50に対して電源がオンされている場合の制御を実行させる制御信号CS2を制御ユニット50に出力する。
つまり、図24(c)に示す通り、実行器431は、時間t1において、電圧レベルDv2の制御信号CS2を生成し、制御ユニット50に出力する。
次いで、図24(a)に示す通り、時間t2〜t3の期間では、操作部300に対して操作入力がないため、上位制御部200の指示信号生成部211には、いずれの指示信号も入力されない。このため、指示信号生成部211は、指示がないことを表わす電源レベルDv0の指示信号DS0を生成し、信号送出器212に出力する。
これにより、信号送出器212は、周期信号生成部213から入力された周期信号に基づき、指示信号生成部211から入力される指示信号DS0を変調し、この変調された周期指示信号を、配線部500を介して中間制御部400に出力する。
そして、中間制御部400の信号受取部410には、配線500を介して周期指示信号が入力される。信号受取器411は、この周期指示信号に基づき、この周期指示信号に含まれる周期性を検出して、検出周期情報を自己判断部420に出力するとともに、指示信号DS0を検出して指示保持器412に出力する。
指示保持器412は、指示信号記憶部413を参照して、信号受取器411から入力される指示信号DS0が、指示信号記憶部413に記憶させる指示信号であるか否かを判断する。ここで、指示信号DS0は、記憶指示信号情報に含まれていない。よって、指示保持器412は、受信した指示信号DS0を指示信号記憶部413に記憶させることなく、指示信号記憶部413に記憶されている指示情報DS2を読み出し、実動作部に出力する。
そして、実行器431は、信号受取部410の指示保持器412から出力される指示信号DS2に基づき、制御ユニット50に対して電源がオンされている場合の制御を実行させる制御信号CS2を制御ユニット50に出力する。
つまり、図24(c)に示す通り、実行器431は、時間t2〜t3において、電圧レベルDv2の制御信号CS2を生成し、制御ユニット50に出力する。
なお、実行器431は、単パルスの指示信号を出力する上位制御部200と異なり、連続して概ね同一の電圧レベルの制御信号を出力する。
そして、図24(a)に示す通り、時間t4の時点で、操作部300の電源オフボタン302が押下されると、操作部300から出力された電源オフを表わす操作情報が、上位制御部200の指示信号生成部211に入力される。この指示信号生成部211は、電源オンを表わす操作情報に応じた電源レベルDv1の指示信号DS1を生成し、信号送出器212に出力する。
これにより、信号送出器212は、周期信号生成部213から入力された周期信号に基づき、指示信号生成部211から入力される指示信号DS1を変調し、この変調された周期指示信号を、配線部500を介して中間制御部400に出力する。
そして、中間制御部400の信号受取部410には、配線500を介して周期指示信号が入力される。信号受取器411は、この周期指示信号に基づき、この周期指示信号に含まれる周期性を検出して、検出周期情報を自己判断部420に出力するとともに、指示信号DS1を検出して指示保持器412に出力する。
指示保持器412は、指示信号記憶部413を参照して、信号受取器411から入力される指示信号DS1が、指示信号記憶部413に記憶させる指示信号であるか否かを判断する。ここで、指示信号DS1は、記憶指示信号情報に含まれる。よって、指示保持器412は、受信した指示信号DS1を指示信号記憶部413に記憶させるとともに、指示信号記憶部413に記憶されている指示情報DS1を読み出し、実動作部に出力する。
そして、実行器431は、信号受取部410の指示保持器412から出力される指示信号DS1に基づき、制御ユニット50に対して電源がオフされている場合の制御を実行させる制御信号CS1を制御ユニット50に出力する。
つまり、図24(c)に示す通り、実行器431は、時間t4において、電圧レベルDv1の制御信号CS1を生成し、制御ユニット50に出力する。
上述の通り、時間t1において電源オンを表わす操作情報が上位制御部200に入力され、その後時間t2〜t3においていずれの操作情報も上位制御部200に入力されず、時間t4において電源オフを表わす操作情報が上位制御部200に入力された場合、指示状態遷移は、以下のようになる。
つまり、時間t1において、“指示無”の状態から“ON”の状態に変化し、その後、“指示無”の状態に遷移する。そして、時間t2、t3では、“指示無”の状態を維持する。次いで、時間t4において、“指示無”の状態から“OFF”の状態に変化し、再び、“指示無”の状態に遷移する。
このように、上位制御部200から出力される指示信号の状態遷移は、操作情報が入力されることで、“指示無”の状態から、“ON”の状態あるいは“OFF”の状態に変化し、再び“指示無”の状態に遷移する。言い換えると、図24(b)に示す通り、この指示信号の状態遷移は、状態が変化する場合、一の状態から“指示無”の状態に遷移した後、他の状態に変化する。
一方、中間制御部400から出力される制御信号の電圧レベルは、図24(c)に示すように、操作情報が入力されたときのみ変化し、操作情報の変化に伴いこの操作情報が表わす状態に遷移する。これは、操作情報が変化しない場合、中間制御部400は、制御信号を変化させることなく、指示信号記憶部413に記憶されている指示信号に対応する制御信号を、制御ユニット50に出力することによる。
よって、制御信号の状態遷移は、図24(d)に示す通り、“指示無”に対応する状態に変化することなく、“ON”の状態と“OFF”の状態との間を遷移する。
このように、本実施形態に係る全方向移動車両1は、上位制御部200から配線500を介して中間制御部400に出力される指示信号を、中間制御部400の指示信号記憶部413に記憶させ、この指示信号記憶部413に記憶されている指示信号に応じた制御信号を、電動モータ31R,31Lのドライブ回路ユニットなどを含む制御ユニット50に対して出力するようにした。これにより、配線500が断線した場合であっても、中間制御部400は、指示信号記憶部413を参照することで、断線する以前に上位制御部200から入力されている指示信号に基づき、制御信号を生成することができる。
よって、制御ユニット50によって電動モータ31R,31Lが駆動されている途中に、断線が発生し、上位制御部200から電動モータ31R,31Lを駆動するための制御信号が中間制御部400に出力されない場合であっても、中間制御部400は、電動モータ31R,31Lを駆動するための制御信号を出力し続けることができる。これにより、駆動中の電動モータ31R,31Lが、断線が発生することによって駆動が停止され、全方向移動車両1の動作状態の連続性が損なわれるという事態を回避することができる。
一方、本実施形態によらない全方向移動車両1の場合、駆動している電動モータ31R,31Lが突然停止することで、全方向移動車両1の状態の連続性が損なわれる問題がある。
しかし、上記構成により、断線が発生した場合であっても、操作部300が受け付けた操作入力に応じた制御信号を、中間制御部400が制御ユニット50に対して出力することによって、駆動している電動モータ31R,31Lが、操作入力に反した動きをする事態を防止することができる。このように、制御ユニット50が倒立振子モデルにおける車両制御演算処理を行う全方向移動車両1において、アクチュエータ装置7を制御するための制御信号に基づく指示信号が断線により得られない場合であっても、中間制御部400において指示信号を記憶しておくことにより、断線の影響を受けずに、アクチュエータ装置7に対して制御されている動作を継続することができる。よって、全方向移動車両1の動作が突然変化して、状態が変化する事態を防止することができる。
図24に戻って、図示の通り、時間t6の時点で、操作部300の電源オンボタン301が押下され、電源オンを表わす操作情報が上位制御部200に入力された状態において、その後、時間t9において、断線が発生した場合について説明する。
時間t6において指示信号DS2が上位制御部200から中間制御部400に出力されることによって、上述同様、指示保持器412は、指示信号DS2を検出するとともに、指示信号記憶部413にこの指示信号DS2を記憶させる。また、自己診断部420には、検出周期情報が入力され、状態判定器421によって正常状態であることが判断されている。
ここで、時間t9において断線が発生すると、周期指示信号が配線500を介して上位制御部200から信号受取器411に入力されない状態が続く。ここで、指示保持器412は、指示信号記憶部413に記憶されている指示信号DS2を読み出し、実動作部430の実行器431に出力する。
これにより、実行器431は、信号受取部410の指示保持器412から出力される指示信号DS2に基づき、制御ユニット50に対して電源がオンされている場合の制御を実行させる制御信号CS2を制御ユニット50に出力する。
よって、図24(c)に示す通り、実行器431は、時間t9において、電圧レベルDv2の制御信号CS2を生成し、制御ユニット50に出力する。
一方、信号受取器411は、上位制御部200から指示信号が入力されていないため、検出周期情報を自己診断部420に出力することができない。よって、状態判定器421は、周期性を検出できないため、正常状態でないと判断し、異常フラグ保持器422にこの判断結果を出力する。
このように、本実施形態に係る全方向移動車両1は、上述の通り、上位制御部200を出力される指示信号に周期性を与えることによって、中間制御部400がこの周期性を検出し、周期性が検出された場合、断線が発生していないことを表わす正常状態であると判断し、周期性が検出された場合、断線が発生していることを表わす異常状態であると判断するようにした。
これにより、全方向移動車両1の断線を検出するとともに、断線発生時に全方向移動車両1の動作を突然停止させたり、状態の連続性を損なわせることを防止することができる。
なお、中間制御部400は、断線が検出された場合、出力部320にその旨を出力して、ユーザに断線を通知することができる。この場合、基体9がユーザによって外されることで指示保持器412が指示信号DS1を検出し、指示信号記憶部413にこの指示信号DS1を記憶させる構成であってもよい。これにより、中間制御部400は、制御ユニット50に対して電源がオフされている場合の制御を実行させる制御信号CS1を出力し、全方向移動車両1は電源がオフされた状態となる。
また、中間制御部400の状態判定器421は、計時部4211を用いて、正常状態でないと連続して判断した時間を計時し、予め決められている時間を計時した場合、指示保持器412に対して、指示信号SD1を出力する構成であってもよい。
なお、本実施形態において、操作部300は、電源オンを表わす操作情報と、電源オフを表わす操作情報の2つを出力する構成を例に説明したが、本発明は、上記構成に限られず、操作部300は、2以上の操作情報を出力するものであってもよい。
例えば、操作部300が4つの操作情報A、B、C、Dを出力する場合について、図25を参照して説明する。
図25(a)に示す通り、操作情報A、B、C、Dに基づく指示信号の状態遷移は、A〜Dの状態で変化する場合、必ず、“指示無”の状態を経由する。
つまり、図25(b)に示す通り、時間t11において、“指示無”の状態から“C”の状態に変化し、その後、“指示無”の状態に遷移する。次いで、時間t12において、“指示無”の状態から“B”の状態に変化し、その後、“指示無”の状態に遷移する。そして、時間t13では、“指示無”の状態を維持する。
次いで、時間t14において、“指示無”の状態から“D”の状態に変化し、再び、“指示無”の状態に遷移する。そして、時間t15〜16では、“指示無”の状態を維持する。時間t17では、“指示無”の状態から“A”の状態に変化し、その後、“指示無”の状態に遷移する。
このように、上位制御部200から出力される指示信号の状態遷移は、操作情報が入力されることで、“指示無”の状態から、“A”の状態、“B”の状態、“C”の状態あるいは“D”の状態に変化し、再び“指示無”の状態に遷移する。
一方、中間制御部400から出力される制御信号の電圧レベルは、図25(b)に示すように、操作情報が入力されたときのみ変化し、操作情報の変化に伴いこの操作情報が表わす状態に遷移する。つまり、時間t11で“D”の状態から“C”の状態に変化し、時間t12で“C”の状態から“B”の状態に変化し、時間t14で“B”の状態から“D”の状態に変化し、時間t19で“D”の状態から“A”の状態に変化する。
なお、本実施形態において、中間制御部400は、制御ユニット50と一体的に形成され、中間制御部400と制御部ユニット50は配線を介さずに接続されている構成であることが好ましい。
[第2実施形態]
本願発明に係る移動体としては、本実施形態による全方向移動車両1に限られず、例えば、二足歩行を行う移動動作部を備えるロボット等であってもよい。
図26は、二足歩行を行う移動動作部を備えるロボット(以下、移動体1aという。)の一実施形態の側面図を示す。
図に示すように移動体1aは、2本の脚部リンク5R(5L)を備えると共に、その上方に基体3aが設けられる。基体3aの上部には頭部4が設けられ、基体3aの両側に2本の腕部リンク2R(2L)が設けられる。基体3a内部には、制御盤250などが設けられる。基体3aの背部には、格納部6が設けられ、その内部には、脚部リンク5R(5L)及び腕部リンク2R(2L)などを駆動する電動モータ(以下、駆動部という。)などに電力を供給するバッテリ部(図示せず)、上位制御部200などが設けられる。また、格納部6上部には、上位制御部200に接続される操作部300及び出力部320(図示せず)が設けられる。なお、移動体1aの詳細の構成については、特許文献2などを参照することとし、ここでの説明は概略に留める。
上位制御部200は、配線500を介して制御盤250に接続される。なお、制御盤250は、第1実施形態に示した中間制御部400と制御部ユニット50に相当し、例えば、移動体1aのメインI/O(Input /Output )等のインターフェース装置であって、本実施形態に係る上位制御部200に対応する機能と構成を備え、操作部300と接続される。
この上位制御部200は、操作部300によって得られた操作情報が入力されるとともに、制御盤250から判定結果を表わす情報が入力されると、この判定結果を表わす情報を出力部320に出力する。
また、上位制御部200は、配線500を介して制御盤250に第1実施形態に示した周期指示信号(対中間制御部400に対する信号)を出力する。上位制御部200と制御盤250間の動作に関する詳細は、第1実施形態を参照する。
また、図27に示す通り、移動体1aが備える制御系の構成は、配線560で接続されている制御盤250と機能機器550であってもよい。
機能機器550は、制御盤250から制御を受ける被制御部であり、例えば、移動体1aの駆動部に電力を供給する電源制御部等である。機能機器550は、第1実施形態に係る中間制御部400のように供給される制御信号に応じた制御状態を保持することができ、制御盤250から供給される制御信号に応じて保持する制御状態が更新される。また、機能機器550は、保持した制御状態に応じて、各駆動部に対する電力の供給を制御して、保持した制御状態に応じて各駆動部を駆動することができる。さらに、機能機器550は、制御信号に重畳された周期性信号を検出することにより、制御盤250との通信状態を判定して、必要に応じて保持した制御状態による制御に切り換えることができる。
本実施形態に示したように、複数のユニットに分割され、各ユニット間が複数の配線を介して接続される制御系、すなわち、主たる制御部に従属する被制御部(駆動部)を制御する場合においても、それぞれのユニットが接続される配線上に制御信号に周期性信号を重畳させることにより、通信状態に応じて被制御部がそれぞれの制御状態を保持することができる。なお、通信状態の判定は、第1実施形態に示した判定方法を用いることができる。
なお、信号受取器411は、上位制御部200から、指示信号対応情報で予め決められている電圧レベルの閾値の範囲でない指示信号(例えば、電圧レベルDv2.5以上の指示信号)を検出した場合、操作情報がない場合として予め決められている電圧レベルDv0の指示信号DS0と判断して、指示信号DS0を指示保持器412に出力するものであってもよい。これにより、上位制御部200から予め決められている規定外の指示信号が入力された場合であっても、中間制御部400は、この規定外の指示信号に対応する制御信号を制御ユニット50に出力せず、指示信号記憶部413に記憶されている指示信号に対応する制御信号を出力することができる。
なお、指示信号記憶部413に記憶されている記憶指示信号情報は、アクチュエータ装置7を制御するための操作情報に基づき生成される指示信号を含むものであることが好ましく、例えば、指示信号DS2だけであってもよい。
なお、上記の実施形態では、入力される信号の判定を、信号の電圧レベルを用いて行う形態を例示したが、本実施形態で示した閾値を用いて分割する数、閾値レベルなどは、任意に設定することができる。
また、信号の特徴を電圧レベルによって特徴づけるほかに、パルス幅、断続するパルスの組合せパターンなどの特徴を用いて特長づけることとしてもよい。電圧レベルによる特徴づけを他の方法に代えることにより、信号に重畳する周期性信号の電圧レベルを高めることが可能となる。
このように、倒立振子型の全方向移動車両や2足歩行ロボットなどでは、信号遮断により姿勢制御の機能を中断させるより、姿勢制御の動作を継続するほうが、姿勢を維持する点で有利である。本実施形態に示した信号伝送手法を用いた制御系を形成することにより、容易に実現が可能となる。
1…全方向移動車両(移動体)、3…シート、5…移動動作部、7…アクチュエータ装置(駆動部)、9…基体、50…制御ユニット(第1制御部)、200…上位制御部(第2制御部)、
210…信号送出部、211…指示信号生成部、212…信号送出器、213…周期信号生成部、300…操作部、301…電源オンボタン、302…電源オフボタン、320…出力部、400…中間制御部(第1制御部)、411…信号受取器、412…指示保持器、413…指示信号記憶部、420…自己診断部、421…状態判定器、422…異常フラグ保持器、423…結果送出器、430…実動作部、431…実行器、500…配線

Claims (6)

  1. 基体と、
    前記基体に取り付けられるとともに、駆動されることで前記基体を移動させる移動動作部と、
    前記移動動作部を駆動させる駆動部と、
    入力される指示信号に基づき前記駆動部を駆動させる第1制御部と、
    配線を介して前記第1制御部と接続されており、前記指示信号を生成するとともに、前記配線を介して前記指示信号を前記第1制御部に出力する第2制御部と、
    を備え、
    前記第1の制御部は、
    前記指示信号を表わす指示信号情報を記憶する指示信号記憶部を備え、前記指示信号のうち前記指示信号記憶部に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号を表わす記憶指示信号情報を参照して、前記配線を介して前記第2制御部から入力する前記指示情報が、前記指示信号記憶部に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号であるか否かを判断し、前記指示信号記憶部に記憶させる指示信号として予め決められている指示信号であると判断した場合、前記配線を介して前記第2制御部から入力する前記指示情報を表わす情報を前記指示信号情報として前記指示信号記憶部に記憶させるとともに、前記指示信号記憶部から読み出した前記指示信号情報に基づいて、前記駆動部を制御するための制御信号を生成する
    ことを特徴とする移動体。
  2. 前記第2制御部は、
    予め決められた周期性を前記指示信号に与えるための周期信号を生成する周期信号生成部を備え、前記周期信号に基づき前記指示信号に周期的な情報を与える
    ことを特徴とする請求項1に記載の移動体。
  3. 前記第2制御部は、
    予め決められた変調周波数で前記指示信号を変調する
    ことを特徴とする請求項2に記載の移動体。
  4. 前記第2制御部は、
    予め決められた電圧レベルの前記周期信号を周期的なタイミングで生成し、前記指示信号に前記周期信号を重畳して、前記第1制御部に出力する
    ことを特徴とする請求項2に記載の移動体。
  5. 前記記憶指示信号情報は、
    前記駆動部を駆動させることを表わす指示信号を含む
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の移動体。
  6. 前記基体に取り付けられるとともに、ユーザからの操作入力を受け付けて当該操作入力に応じた操作情報を得る操作部とをさらに備え、
    前記第2制御部は、前記操作部によって得られた操作情報に基づき前記指示信号を生成する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の移動体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102336236A (zh) * 2011-07-09 2012-02-01 路海燕 一种电动遥控独轮车

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