JP5305416B2 - 衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法及びその装置。 - Google Patents

衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法及びその装置。 Download PDF

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Description

この発明は、衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法及びその装置に関し、特に、1周波数の観測データのみで電離圏遅延を推定し、電離圏異常を検出する方法及びその装置に関するものである。
一般に、人工衛星や天体から発せられる電磁波信号が、地上に到達するまでの間に、電離圏及び対流圏を通過するが、それぞれの領域を電磁波信号が通過する際に遅延が生じる。これらの遅延は、それぞれ電離圏遅延及び対流圏遅延と呼ばれている。従って、この電磁波信号を測位信号として用いる場合、これらの電離圏遅延及び対流圏遅延が測位誤差源のひとつとなっている。
測位誤差の原因のひとつである電離圏遅延量の補正は勿論のこと、その他の補正情報を提供するために、世界的に実用化が進められているシステムとしては、航法衛星を使って補正情報を送信する地上型航法衛星補強システム(Ground−Based Augmentation System:以下、GBASと記す。)がある。
このGBASは、航空機の着陸のために地上局によって補強されたGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた衛星航法システムで、空港周辺の約20NM(約37km)以内の空域において、衛星信号(GNSS信号)を地上から補強することにより、航空機の進入着陸誘導に利用しようとする次世代の航空機着陸誘導システムである。なお、静止衛星を使った補正情報を送信する衛星航法補強システム(Satellite Based Augmentation System:以下、SBASと記す。)があり、このSBASは日本が受け持つ管制空域内全域を飛行する航空機を誘導するために使用されるシステムである。
従って、GBASでは、非常に高い精度の補強情報が要求される。そのため、基準局とモニタ局間の基線長が長い場合(長基線)でも短い場合(短基線)でも、航法衛星から受信した衛星信号の電離圏遅延や対流圏遅延等の影響を除去しようとの要望がある。
そこで、従来から電離圏遅延や対流圏遅延等の影響を除去するための各種の方法があるが、その1つの方法として、測位用衛星から送信されるL1波とL2波との2つの周波数の衛星信号を用いて、基準周波数信号とする整数値バイアスを、基線長の長短に係わらず高精度に決定することが出来る相対測位装置がある。
これは、下記特許文献1に記載のように、測位用衛星から送信されるそれぞれ異なる2つの周波数の衛星信号を受信し、推定手段で、1つの基準周波数の衛星信号に対して異なる周波数の衛星信号を差分合成してなるワイドレーン結合の整数値バイアスを推定演算するとともに、基準周波数の衛星信号の電離圏遅延バイアスを遅延バイアス平均成分と遅延バイアス変動成分とに分解して推定演算し、ワイドレーン結合の観測方程式と電離圏フリー結合の観測方程式とにより推定演算するようにしたものである。
特開2005−321362号公報
図4に示すように、航法衛星50からの衛星信号は、それぞれ基準局51とモニタ局52、53、54で受信されるが、この場合、基準局(受信機a)51とそれぞれモニタ局(受信機b)52、53、54との間隔(以下、基線長と記す)が、長い長基線Aあるいは中基線Aの場合は勿論のこと、短い短基線Aの場合でも電離圏異常による電離圏遅延差が大きな測位誤差となる。
例えば、長基線Aの場合の相対測位では、電離圏遅延や対流圏遅延が測位誤差として大きく現れるため、上記特許文献1に記載のように、2つの周波数の衛星信号(2周波)の観測データを利用してモデル補正や推定手法を用いることにより測位精度の信頼性を高めている。一方、短基線Aの場合の相対測位では、それらは相殺されるものと仮定される。その上、2周波観測データを用いているので、例えば、電離圏異常時にはシンチレーションという現象により受信が途切れやすく、何らかの理由によりいずれか一方の周波数の観測データが途切れた場合には、2周波を結合して同時に完全に利用する方法の場合、モニタリングができなくなるという問題がある。
又、長基線Aは勿論のこと、短基線Aの場合であっても、プラズマバブルやSED(Storm Enhanced Density)等により、電離圏に異常が発生した場合、例えば、図4に示すように、電離圏の厚い箇所tや薄い箇所tが発生し、さらに厚い箇所tと薄い箇所tとの間に勾配があるような場合には、電離圏異常をモニタリングすることが出来なくなり、測位誤差が増大するという問題がある。
そこで、発明者は、本願発明のように、1つの周波数の衛星信号(1周波)の観測データを利用するとともに、基線長を種々変えた場合について実験し、検討した。
例えば、本願発明のように、1周波の搬送波位相を利用するとともに、基線長を数百mオーダーの短基線Aとした場合、搬送波位相には搬送波位相バイアスが含まれるため、通常は搬送波位相バイアスを決定する必要があるが、基線長を短くすれば搬送波位相バイアスを決定する必要は無くなる。しかしながら、基線長が短い場合、電離圏遅延差も小さくなるため、搬送波位相の観測雑音やマルチパスを適切に調整する必要が生じる。そのため、サイティング要件が厳しくなる。さらに、基線長に完全に依存した方法となり、利用出来る範囲が非常に限定され、応用範囲が狭くなるという問題がある。
次いで、1周波のコード疑似距離を利用するとともに、基線長を10−30km程度の中基線Aとした場合、コード疑似距離は、搬送波位相に比べると、観測雑音やマルチパスは100倍程度ともなりその影響が大きい。そこで、距離(基線長)を短くしていくと、電離圏遅延差が小さくなり、電離圏異常の検出が困難となる。従って、ある程度基線長を長くした上で、観測雑音やマルチパス等の雑音と区別出来る程度に電離圏遅延差が大きくならないと、即ち、変動の大きい電離圏遅延差しか検出出来ない。従って、基線長を長くしているため、その間の電離圏異常をモニタリングすることが出来ないという問題があり、GBASの電離圏フィールドモニタ(Ionospheric Field Monitor:以下、IFMと記す。)としては、利用出来ない可能性がある。
基線長を50km以上の長基線Aとした場合、対流圏遅延、航法衛星の軌道誤差等の影響も考慮する必要がある。従って、パラメータを増やす必要があり、1周波のみでは電離圏異常を検出することが困難となる。そこで、このような場合には、2周波を利用するのが一般的である。なお、2周波を使う方法は、基線長の長短に関係なく、如何なる距離でも使用されているが、上記のような問題がある。
本願発明は、上記のような問題点を鑑みなされたもので、1周波数のみの観測データを用い、基準局とモニタ局間の基線長に影響されることのない衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法及びその装置を提供することを目的としている。
請求項1に係る発明は、複数の周波数で送信される航法衛星からの衛星信号を、基準局とモニタ局で受信し、この受信した衛星信号から取得した衛星データから基準局とモニタ局間の電離圏遅延の異常を検出する方法において、衛星データの1周波数のみのコード疑似距離と搬送波位相の観測データを、それぞれ基準局及びモニタ局について求め、基準局とモニタ局における1周波数のみの搬送波位相及び電離圏フリー線形結合(GRAPHIC:GRoup And Phase Ionospheric Correction)の受信機間一重差(SD:Single Difference)を求め、同じエポックで基準局とモニタ局とで共通に観測された全航法衛星について、SD電離圏遅延、SD搬送波位相バイアス、SD受信機時計誤差を状態変数とする観測方程式を構成し、この観測方程式の状態変数を、最小二乗原則でエポック毎に推定して、観測方程式のフロート解を求め、次いで、最小二乗原則で求めたSD搬送波位相バイアスを、エポック毎に他の航法衛星から求めたSD搬送波位相バイアスとの間の二重差(DD:Double Difference)であるDD搬送波位相バイアスを求め、整数不定性決定手法によりエポック毎に求めたDD搬送波位相バイアスを整数化した整数解の候補を求め、この求めた整数解の候補に対し検定を実行して観測方程式のフィックス解を求め、基準局とモニタ局間の推定したSD電離圏遅延、SD受信機時計誤差を修正するとともに、最終的に得られたSD電離圏遅延を、閾値と比較することにより電離圏異常を検出することを特徴とする衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、基準局とモニタ局間の基線長を短基線としたものである。
請求項3に係る発明は、請求項1〜請求項2の何れかに記載の発明において、最小二乗原則は、最小二乗法を用いることとしたものである。
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項2の何れかに記載の発明において、最小二乗原則は、カルマンフィルタを用いることとしたものである。
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の発明において、整数不定性決定手法は、LAMBDA(Least−squares AMBiguity Decorrelation Adjustment)法を適用することとしたものである。
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、DD搬送波位相バイアスのフィックス解を拘束条件として、次のエポックの観測方程式に適用することとしたものである。
請求項7に係る発明は、複数の周波数で送信される航法衛星からの衛星信号を、GPS受信機を備えた基準局とGPS受信機を備えたモニタ局で受信し、この受信した衛星信号から取得した衛星データから電離圏遅延の異常を検出する装置において、下記(1)〜(10)の機能を備えたモニタリング装置と、(1)基準局及びモニタ局でそれぞれ受信した衛星信号から取得した衛星データの1周波数のみのコード疑似距離と搬送波位相の観測データを作成する機能と、(2)基準局とモニタ局における1周波数のみの搬送波位相及び電離圏フリー線形結合の受信機間一重差を求める機能と、(3)同じエポックで基準局とモニタ局とで共通に観測された全航法衛星について、SD電離圏遅延、SD搬送波位相バイアス、SD受信機時計誤差を状態変数とする観測方程式を構成する機能と、(4)この観測方程式の状態変数を、最小二乗原則でエポック毎に演算し、推定する機能と、(5)推定した状態変数を有する観測方程式のフロート解を求める機能と、(6)最小二乗原則で求めたSD搬送波位相バイアスを、エポック毎に他の航法衛星から求めたSD搬送波位相バイアスとの間の二重差であるDD搬送波位相バイアスを求める機能と、(7)整数不定性決定手法によりエポック毎に求めたDD搬送波位相バイアスを整数化した整数解の候補を求める機能と、(8)この整数解の候補に対し検定を実行して観測方程式のフィックス解を求める機能と、(9)基準局とモニタ局間の推定したSD電離圏遅延、SD受信機時計誤差を修正する機能と、(10)最終的に得られたSD電離圏遅延と電離圏異常を判定するための閾値とを比較することにより電離圏異常を検出する機能とを備えていることを特徴とする衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の発明において、基準局とモニタ局間の基線長を短基線としたものである。
請求項9に係る発明は、請求項7〜請求項8の何れかに記載の発明において、最小二乗原則は、最小二乗法を用いることとしたものである。
請求項10に係る発明は、請求項7〜請求項8の何れかに記載の発明において、最小二乗原則は、カルマンフィルタを用いることとしたものである。
請求項11に係る発明は、請求項7〜請求項10の何れかに記載の発明において、整数不定性決定手法は、LAMBDA法を適用することとしたものである。
請求項12に係る発明は、請求項7〜請求項11の何れかに記載の発明において、モニタリング装置は、DD搬送波位相バイアスのフィックス解を拘束条件として、次のエポックの観測方程式を作成し、適用する機能とを備えたものである。
請求項1及び請求項7に係る発明は、上記のように構成したので、GBASにおいて問題とされている電離圏異常を検出することが出来る。その上、急激な測位誤差の増大を回避することが出来るので、ロバストな測位システムを実現することが出来る。又、航法衛星からの衛星信号のうち1周波数のみの衛星データを利用しているので、従来の2周波数を利用するシステムのように、電離圏異常時に発生するシンチレーション現象により衛星信号の受信が途切れるという問題もなく、電離圏異常を安定的にモニタリングすることが出来る。その上、安価なシステムを構成することが出来る。
SD電離圏フリー線形結合を用いることにより、電離圏異常時でもそれらの影響を受けず、搬送波位相バイアスを高速かつ正確に推定することが可能である。又、従来のように、単純にコード疑似距離を利用する方法に比べて、電離圏フリー線形結合は観測ノイズが低減されており、より信頼性の高い推定が出来る。搬送波位相バイアスを高速かつ正確に推定出来る。
受信機間一重差(SD)を行う事により、航法衛星側に起因する誤差要因(主に衛星時計誤差,衛星側の初期位相成分)を相殺することが出来る。又、その他の誤差要因である衛星の軌道誤差もまたほぼ相殺出来る。
さらに、他の航法衛星から求めたSD搬送波位相バイアスとの間の二重差(DD)であるDD搬送波位相バイアスを求めているので、受信機側の初期位相成分が相殺され、観測方程式を整数として扱うことが出来、整数不安定性決定手法を用いることが出来、パラメータを修正することが出来る。
請求項2及び請求項8に係る発明は、上記のように構成したので、請求項1及び請求項7に係る発明と同様の効果がある。さらに、基準局とモニタ局間の基線長は、短基線であるから、対流圏遅延は相殺されると仮定することが出来る。又、航法衛星の軌道誤差は、ほぼ0とすることが出来る。
請求項3及び請求項9に係る発明は、上記のように構成したので、請求項1〜請求項2及び請求項7〜請求項8に係る発明と同様の効果がある。
請求項4及び請求項10に係る発明は、上記のように構成したので、請求項1〜請求項2及び請求項7〜請求項8に係る発明と同様の効果がある。さらに、推定値とその推定誤差共分散をエポック間で引き継ぎが可能となるので、適切な時間変化のモデルを与えれば、遂次的に最適な最小二乗原則に基づいて推定値が得られる。
請求項5及び請求項11に係る発明は、上記のように構成したので、請求項1〜請求項4及び請求項7〜請求項10に係る発明と同様な効果がある。さらに、LAMBDA法を適用することにより、整数解の候補が得られる。
請求項6及び請求項12に係る発明は、上記のように構成したので、請求項1〜請求項5及び請求項7〜請求項11に係る発明と同様な効果がある。さらに、測定精度の信頼性が向上する。
この発明の実施例を示すもので、本願発明の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法を説明するための模式図である。 この発明の実施例を示すもので、本願発明の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法を説明するためのブロック図である。 この発明の実施例を示すもので、本願発明の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法における電離圏遅延差の推定を行う際の処理フローである。 従来例を示す模式図である。
1周波数のみの観測データを用い、基準局とモニタ局間の基線長に影響されることのない衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法及びその装置を提供とすることを目的として、複数の周波数で送信される航法衛星からの衛星信号を、基準局とモニタ局で受信し、この受信した衛星信号から取得した衛星データの1周波数のみのコード疑似距離と搬送波位相の観測データを、それぞれ基準局及びモニタ局について求め、基準局とモニタ局における1周波数のみの搬送波位相及び電離圏フリー線形結合の受信機間一重差を求め、同じエポックで基準局とモニタ局とで共通に観測された全航法衛星について、SD電離圏遅延、SD搬送波位相バイアス、SD受信機時計誤差を状態変数とする観測方程式を構成し、この観測方程式の状態変数を、カルマンフィルタでエポック毎に推定して、観測方程式のフロート解を求め、次いで、カルマンフィルタで求めたSD搬送波位相バイアスを、エポック毎に他の航法衛星から求めたSD搬送波位相バイアスとの間の二重差であるDD搬送波位相バイアスを求め、LAMBDA法によりエポック毎に求めたDD搬送波位相バイアスを整数化した整数解の候補を求め、この求めた整数解の候補に対し検定を実行して観測方程式のフィックス解を求め、基準局とモニタ局間の推定したSD電離圏遅延、SD受信機時計誤差を修正するとともに、最終的に得られたSD電離圏遅延を、閾値と比較することにより電離圏異常を検出し、DD搬送波位相バイアスのフィックス解を拘束条件として、次のエポックの観測方程式に適用することで実現する。
この発明の実施例を、図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、この発明の実施例を示すもので、図1及び図2は本願発明の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法を説明するための模式図及びブロック図で、図3は本願発明の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法における電離圏遅延差の推定を行う際の処理フローである。
図1及び図2において、モニタリング装置1は、基準局3及びモニタ局4から送信された航法衛星2(2a、2b・・・)の観測データをもとに電離圏異常を検出する機能を有する装置である。
航法衛星2(2a、2b・・・)は、この実施例ではGPS衛星であり、それぞれ衛星信号(GPS衛星自身の詳細な軌道情報等の衛星データを含む)を、複数の周波数(L1:1.5GHz帯/L2:1.2GHz帯等)で送信している。
基準局3及びモニタ局4は、最終的には航法衛星2(2a、2b・・・)から送信される衛星信号(以下、単に衛星信号と記す。)による測位精度を向上させる目的で、場所が既知である複数の既知点にそれぞれ設置される。また、基準局3及びモニタ局4は、必要に応じてそれぞれ1又は複数局設置され、これら基準局3及びモニタ局4とモニタリング装置1とは、ネットワーク(図示せず)を介して接続されている。
基準局3及びモニタ局4は、GPS衛星から送信されている複数の周波数の衛星信号の内、1つの周波数(L1)のみを受信可能な、いわゆる1周波型のGPS受信機11及びGPS受信機12をそれぞれ有している。基準局3及びモニタ局4は、このGPS受信機11及びGPS受信機12で衛星信号を受信することにより得られた観測データ13及び観測データ14を、ネットワークを介してモニタリング装置1へ送信する。
また、この実施例では、説明を簡単にするために、基準局3とモニタ局4との基線長は短基線としている。
GPS受信機11及びGPS受信機12は、本願発明では前述の通り、いわゆる1周波型のGPS受信機を使用しているが、当然ながら2つの周波数(L1、L2)とも受信可能な2周波型GPS受信機を有するものでも良い。また、GPS受信機11及びGPS受信機12は、L1以外の周波数、例えば、L2やL5等のいずれか1つの周波数を受信可能なGPS受信機を有するものでも良い。
観測データ13及び観測データ14は、それぞれ、GPS受信機11及びGPS受信機12において受信した衛星信号から取得した衛星データをもとに算出されたデータであって、航法衛星2(2a、2b・・・)と基準局3又はモニタ局4とのコード疑似距離(以下、単にコード疑似距離と記す。)や、基準局3又はモニタ局4における衛星信号の搬送波の位相(以下、単に搬送波位相と記す。)等の情報を含むデータである。また、この実施例の場合、GPS受信機11及びGPS受信機12は、前述の通り、1周波型のGPS受信機を使用しているため、観測データ13及び観測データ14は、1周波数のみのデータとなっている。
なお、モニタリング装置1の代わりに、基準局2やモニタ局3の一つにモニタリング装置1の機能を持たせても良い。また、基準局3とモニタ局4との基線長は中長基線であっても、本願発明の手法は適用可能である。
次に、作用動作について、図1〜図2に基づいて説明する。
まず、基準局3及びモニタ局4は、航法衛星2(2a、2b・・・)からの衛星信号をGPS受信機11及びGPS受信機12でそれぞれ受信し、この受信した衛星信号に含まれる衛星データをもとに算出された観測データ13及び観測データ14を、ネットワークを介してモニタリング装置1へ送信する。
次に、モニタリング装置1では、このネットワークを介して基準局3及びモニタ局4から得られた観測データ13及び観測データ14に対して、適切な前処理を行う(図2 15)。この前処理15は、複数の受信機を使う場合の定常手段であって、時刻合わせ等の処理を行っている。前処理15は、複数の受信機を使う場合、モニタリング装置1にデータを送って処理する際に、受信機自体も離れているために時間の遅延があり、また、受信機間の時間のズレが大きすぎると、航法衛星も電離圏自体も動いているので、時刻合わせ等の処理をする必要があるために行っている。
そして、この前処理15の後に、電離圏遅延差推定部において電離圏の遅延差の推定を行い(図2 16)、最終的にこの推定された電離圏の遅延をもとに電離圏異常を検知する(図2 17)。
次に、電離圏遅延差推定部16において行われる電離圏遅延差の推定の処理フローにおけるアルゴリズムを、図3に基づいて説明する。最初に、このアルゴリズムの全体の流れと概要について説明する。
まず、基準局3とモニタ局4において取得した1周波数のみの搬送波位相及びコード疑似距離を利用して(ステップ21)、そのときの搬送波位相および電離圏フリー線形結合の受信機間一重差(SD:Single Difference)を観測量とした観測方程式を構成する(ステップ25)。次いで、この観測方程式に含まれる状態変数であって、推定すべきパラメータであるSD電離圏遅延、SD搬送波位相バイアス及びSD受信機時計誤差をエポック毎に推定する(ステップ22)。
なお、エポックとは、GPS受信機で用いられる時間の単位である。また、上記の電離圏遅延や搬送波位相バイアス等の各パラメータの前に付しているSDは、当該各パラメータの受信機間のデータの差をとった受信機間一重差を意味する。例えば、上記のSD受信機時計誤差とは、受信機時計誤差の受信機間一重差という意味である。以後、特に記載のない限り、この様に記載する。
さらに、後述するDD(DD:Double Difference)は、各パラメータについて受信機間で一重差をとったもの(SD)と、さらに別の航法衛星において各パラメータについて受信機間で一重差をとったもの(SD)との差をとる航法衛星間の二重差を意味する。このDDについてもSDと同様に、各パラメータの前にDDを付した場合には、特に記載のない限り、当該パラメータの二重差を意味するものとして記載する。
次に、上記状態変数は、最小二乗法またはカルマンフィルタ等の最小二乗原則を用いてエポック毎に推定する(ステップ24,26)。このとき得られた推定値は、フロート解(Float解)と呼ばれる(ステップ27)。カルマンフィルタを使うことで、推定値と、その推定誤差共分散をエポック間で引き継ぐことが可能となるので、適切な時間変化のモデルを与えてやれば、逐次的に最適な最小二乗原則での推定値が得られることとなる。
このカルマンフィルタによって得られたフロート解において、SD搬送波位相バイアスは、受信機の初期位相成分が含まれるので、基本的に整数としては扱うことが出来ない。しかしながら、基準となる航法衛星を選択した上で(ステップ28)、エポック毎にSD搬送波位相バイアスをDD搬送波位相バイアスに変換することにより、整数解として扱うことが出来るようになる(ステップ29)。
なお、本願発明のように、この二重差に変換することにより、搬送波位相バイアスを整数解として扱うことが出来る理由は、以下の通りである。まず、受信機間一重差を求める際には、各受信機で共通にある特定の航法衛星を対象としてデータを取得しているので、航法衛星側の誤差成分(衛星時計誤差、衛星軌道誤差等)を相殺することができる。この受信機間の一重差を求めた状態で、さらにデータ取得する対象の航法衛星をもう一つ増やして同様に受信機間の一重差を求める。この受信機間の一重差同士の差をさらに求めることにより、今度は受信機側を共通とすることができるので、受信機側の誤差成分を相殺することが出来る。この受信機側の誤差成分として、SD搬送波位相バイアスに含まれている受信機側の初期位相を相殺することが出来るので、整数解として扱うことが出来る。
このようにして、搬送波位相バイアスが整数解として扱うことが出来るようになれば、整数不定性決定手法を適用することが出来る。この整数不定性決定手法を適用する事により、さらにパラメータをより最適な値へ修正をすることが出来る。この実施例では、この整数不定性決定手法は、現時点において、最も実用化が進んでおり、かつ、この分野で最も利用されているLAMBDA(Least−squares AMBiguity Decorrelation Adjustment)法を利用している。なお、本願発明は、LAMBDA法に限定されるものではなく、同様な手法であれば、他の方法であっても良い。
この実施例では、このLAMBDA法を利用するために、カルマンフィルタによって得られた推定値及び推定誤差共分散の搬送波位相バイアスの部分をDDに変換して(ステップ29)、LAMBDA法を適用する(ステップ30)。LAMBDA法を適用することにより、整数解の候補が得られる。この整数解の候補に対して、一定の基準をもとに順列をつけた状態で算出する。
次いで、整数解の候補に対して適切な検定(Validation)を行い(ステップ31)、最終的な整数解であるフィックス解(Fix解)を求める(ステップ32)。このフィックス解をもとにして、最終的に得られたSD電離圏遅延を逐次的にモニタリングすることにより、電離圏異常を検出する(ステップ33)。
なお、最終的に整数解として算出されたDD搬送波位相バイアスの信頼性が十分高ければ、DD搬送波位相バイアスのフィックス解を拘束条件として、次のエポックで観測方程式に組み込むことも出来る。
次に、図3に基づいて、電離圏遅延差推定部16において行われる電離圏遅延差の推定の処理フローにおけるアルゴリズムの詳細について説明する。
基準局3の位置を(χ,y,z)、モニタ局4の位置を(χ,y,z)としたとき、基準局3及びモニタ局4において観測される航法衛星2(2a、2b・・・)の位置を(χ,y,z)とする。この場合、基準局3及びモニタ局4における搬送波位相(距離)及びコード疑似距離は、下記の数式1で表現できる。なお、座標系はWGS84系の地心地球固定座標系(ECEF:Earth Centered Earth Fixed)としている。また、以後の数式等において用いられているパラメータの添字については、aは基準局3を、bはモニタ局4を、pは航法衛星2(2a、2b・・・)をそれぞれ表している。
Figure 0005305416
上記数式1において、搬送波位相(距離)の式とコード疑似距離の式を比較すると、電離圏遅延であるδIが、互いに±となっている、即ち、極性が反対になっているのが特徴である。また、数式1における搬送波位相(距離)の式には、Nというバイアス成分が含まれているのも特徴である。なお、搬送波位相やコード疑似距離の観測ノイズであるεΦ及びερは、平均0の正規性白色雑音として、そのときの分散の値に関しては仰角に応じた重み付けを行う。この重み付けの手法としては、仰角が低ければノイズが上がるような係数を掛け算している。また、搬送波位相バイアスNには、それぞれ初期位相の受信機側・航法衛星側の初期位相成分が含まれているため、整数でなく、実数となる。
ここで、基準局3と航法衛星2(2a、2b・・・)との間の幾何学的距離は、下記の数式2で表現できる。
Figure 0005305416
モニタ局4と航法衛星2(2a、2b・・・)との間の幾何学的距離も、同様に下記の数式3で表現できる。
Figure 0005305416
さらに、搬送波位相(距離)およびコード疑似距離に基づいた電離圏フリー線形結合(GRAPHIC:GRoup And PHase Ionospheric Correction)は、下記の数式4で表現できる。この数式4は、搬送波位相(距離)とコード疑似距離を加算して2分割しているのが特徴的である。上記したように、数式1における搬送波位相(距離)の式とコード疑似距離の式を比較すると、電離圏遅延であるδIが互いに±となっている、即ち、極性が反対になっている。このように、極性が反対となっているので、加算することにより、この電離圏遅延であるδIを相殺出来る。しかしながら、加算することによって係数がつくことになるが、2分割することにより、通常のコード疑似距離等の成分と同様な成分の式となる。
Figure 0005305416
基準局3とモニタ局4との間で、受信機間一重差(SD)を搬送波位相および電離圏フリー線形結合に対して行うと下記の数式5となる。なお、受信機間一重差を行うことにより、航法衛星側に起因する誤差要因(主に衛星時計誤差、航法衛星側の初期位相成分、衛星軌道誤差)は相殺される。
Figure 0005305416
この数式5に含まれているパラメータのうち、基準局3とモニタ局4の位置は既知であるから、その距離の成分である幾何学的距離は既知として扱うことが出来る。この実施例では、基準局3とモニタ局4の基線長は短基線という条件であるので、対流圏遅延は相殺されると仮定できる。従って、δTSDは殆ど0として扱うことが出来る。それ故、数式5は簡単な式となり、SD搬送波位相およびSD電離圏フリー線形結合は以下の数式6で表現できる。
Figure 0005305416
数式6に示すように、SD電離圏フリー線形結合を用いることにより、電離圏異常時でもそれらの影響を受けず、搬送波位相バイアスの推定を容易にすることが出来る。また、単純にコード疑似距離を利用する場合に比べて、電離圏フリー線形結合は観測ノイズが低減されており、より信頼性の高い推定が可能となる。
次いで、数式6において、同じエポックで基準局3とモニタ局4とで共通に観測された全航法衛星(2a、2b・・・)に対する式を作成すると、最終的に下記の数式7のようなベクトルと行列式で表現された式となる。なお、このとき、基準局3とモニタ局4とで共通に観測された航法衛星(2a、2b・・・)の数は、全部でn個とする。
Figure 0005305416
ここで、状態空間モデルを以下の数式8に示す。この状態空間モデルは、二つの式から構成されており、数式8の上の式(x)は状態方程式と呼ばれ、時間的な予測をするモデルである。数式8の下の式(y)は、観測方程式であり、上記の数式7を簡潔に表現したものである。なお、kはエポックを表す。
Figure 0005305416
この数式8において、w及びvは、平均0の正規性白色雑音とする。また、数式8の観測方程式におけるY、H、χ、vは、下記の数式9で表される。
Figure 0005305416
従って、カルマンフィルタのアルゴリズムは、下記の表1の様に表現出来る。
Figure 0005305416
カルマンフィルタを適用するためには、数式8の上の式(x)に示す状態方程式における状態変数のダイナミクスモデルが必要である。この状態方程式におけるχの中のパラメータである電離圏遅延、受信機時計誤差及び搬送波位相バイアス等が、状態変数である。その状態変数のダイナミクスモデルについては、それぞれ複数のダイナミクスモデルが知られている。カルマンフィルタには、この状態変数それぞれに対して予測というプロセスがあり、この予測に関して、どのダイナミクスモデルを使用して予測を行うのかを決定することが重要である。従って、測定を行う地域における電離圏の状態や、使用する受信機の特性等に応じ、状態変数それぞれについて適切なダイナミクスモデルを選択する必要がある。
電離圏遅延のダイナミクスモデルには、下記の表2に示すように、ランダムウォークや1次ガウス・マルコフモデル等の状態変数のモデルがある。なお、この実施例では、1次ガウス・マルコフを適用している。
Figure 0005305416
受信機時計誤差のダイナミクスモデルには、下記の表3に示すように、ホワイトノイズやランダムウォーク、1次ガウス・マルコフモデル等の状態変数のモデルがある。なお、この実施例では、ランダムウォークを適用している。
Figure 0005305416
搬送波位相バイアスのダイナミクスモデルには、下記の表4に示すように、コンスタントやランダムウォーク等の状態変数のモデルがある。なお、この実施例では、ランダムウォークを適用している。
Figure 0005305416
以上の表2〜表4に示した状態変数のダイナミクスモデルに基づいて、下記の数式10に示す状態遷移行列及びシステム雑音行列が得られる。
Figure 0005305416
また、カルマンフィルタは、最初に初期値を与える必要があり、その初期値については下記の数式11に示す通りとする。
Figure 0005305416
数式11において、電離圏遅延のISD,0に関しては、その初期値は基本的には0であるが、数式11における括弧内の式でも初期値を設定可能である。疑似距離ρSDのパラメータの中には、幾何学的な距離rSDと受信機時計誤差bSD,0と電離圏遅延ISD,0と、その観測ノイズが含まれている。この観測ノイズには、コードマルチパスを含んでいると考えられる。幾何学的な距離rSDは既知であり、受信機時計誤差も数式11に示すように、最小の値が最小二乗法等で求められ、これらの値を疑似距離ρSDから減算することにより、電離圏遅延ISD,0と観測ノイズの成分だけとなる。観測ノイズの成分については、観測ノイズに含まれるコードマルチパスが大きければ、電離圏遅延の初期値ISD,0が不適切な値に設定される可能性を含んでいるが、コードマルチパスが小さければ、数式11における括弧内の式でも初期値を設定可能である。
搬送波位相バイアスNSD,0に関しては、数式11に示すように、搬送波位相(距離)ΦSDから幾何学的距離rSDと受信機時計誤差bSD,0を減算することにより、初期値として求めることが出来る。搬送波位相(距離)ΦSDのパラメータの中には、幾何学的な距離rSDと受信機時計誤差bSD,0と搬送波位相バイアスNSD,0と電離圏遅延ISD,0と、その観測ノイズが含まれている。
数式6からも明らかであるように、受信機時計誤差bSD,0は、大きな成分であるが、電離圏遅延の初期値ISD,0を求めるときと同様に、最小の値が最小二乗法等で求められる。幾何学的な距離rSDも前述の通り既知であることから、受信機時計誤差bSD,0と幾何学的な距離rSDを搬送波位相(距離)ΦSDから減算することにより、搬送波位相バイアスNSD,0と電離圏遅延ISD,0と観測ノイズの成分だけとなる。
さらに、この残った成分の中で、観測ノイズは殆どないので無視することが出来る。電離圏遅延に関しても、搬送波位相バイアスのNSD,0の初期値は、大体の値を設定出来れば良いので、電離圏遅延もまた殆どないと仮定できる。以上のことから、数式11に示すように、搬送波位相バイアスのNSD,0の初期値は、搬送波位相(距離)ΦSDから幾何学的距離rSDと受信機時計誤差bSD,0を減算することにより求めることが出来る。
受信機時計誤差の初期値bSD,0は、数式11や前述の通り、それぞれ基準局3とモニタ局4とにおいて、一般的な最小二乗法等で受信機の時計を求めた上でその差を取ることにより求める。この手法は、単独測位等で一般的な手法である。
なお、最初の推定の初期値以外に、例えば新しく見え始めた航法衛星、即ち、新たな可視航法衛星に関しても初期値を設定する必要があるので、それについても同様に設定する。ただし、一旦受信し、何かしらの原因で受信が途切れてしまい、また受信されるという状態もある。このような受信欠落後に、ある一定期間(数エポック〜数十エポック程度)であれば、電離圏遅延に関しては、急に極端な変動は起こり得ないために大きな差はないとして、欠落直前の推定値を保持する。その上で、受信が途切れてから一定期間後に、また受信した場合には、その値を再受信後の初期値として設定する。このようにすることで、推定時の収束を速めることが可能である。
上述のカルマンフィルタにより得られた解
Figure 0005305416
は、フロート解と呼ばれる。このフロート解のSD搬送波位相バイアスの推定値
Figure 0005305416
は、受信機側の初期位相の成分が含まれるため、一般的に整数として扱うことが出来ないので、下記の数式12に示すように、変換行列を用いてDDに変換することで、受信機側の初期位相分を相殺し、整数として扱うことが可能となる。なお、この変換行列が数式12のDとTの式である。また、同様に、その時の推定誤差の共分散の値に関しても、同じように変換する。このように変換した後に、搬送波のバイアス成分とそれ以外(受信機時計誤差及び電離圏遅延に関する共分散)という分け方をして、さらにそれぞれの相関をとる形で、推定誤差の共分散を4分割にしている。
なお、SDからDDへの変換に際しての基準となる航法衛星の選択方法については、最高仰角の航法衛星を選択するのが一般的であるが、必ずしもその航法衛星が電離圏異常の影響を受けていないとは限らないため、残差、共分散、航法衛星の配置等を利用して総合的に判断される。
Figure 0005305416
上記の数式12により、搬送波位相バイアスをDDに変換した上で、整数不定性決定手法であるLAMBDA法を適用する。このLAMBDA法を適用すると、搬送波位相バイアスの整数解
Figure 0005305416
の候補が得られる。この整数解の候補には順列が付けられており、最も誤差(残差)の少ない候補を最善解
Figure 0005305416
とし、その次を次善解
Figure 0005305416
として、この2つの解を整数解の候補とするのが一般的である。
この得られた2つの候補に対して、それぞれの誤差を評価することにより適切に検定を行う。この検定方法には色々な方法があり、この実施例では下記の数式13に示すレシオテストを用いている。
Figure 0005305416
上記数式13に示すような検定を行う必要がある理由は、LAMBDA法によって得られた2つの候補を比較した場合に、似たような値であれば、どちらの解を採用すれば良いのかを判断できないからである。しかし、数式13において、その比がかけ離れていれば(閾値以上であるならば)、圧倒的に最善解の誤差が小さいこととなり、その最善解を採用することができる。
最終的に検定を通過した場合、下記の数式14によって修正を行うことによって、フィックス解が求められる。
Figure 0005305416
なお、数式13に示す検定を通過しなかった場合は、上記数式14による修正は行わず、フィックス解ではなく、フロート解を利用して、後述する電離圏異常を検出する。
以上の処理により、最終的に得られたフィックス解若しくはフロート解におけるSD電離圏遅延を、閾値と比較する等のモニタリングを逐次的に行うことにより、電離圏異常を検出する。
さらにフィックス解として推定されて決定された搬送波位相バイアスの整数解の信頼性が、十分高いと判断出来れば、それを拘束条件として、次のエポックにおいて、数式7に示す観測方程式の一番下の式として組み込んで、推定することが可能である。この場合、次のエポックの観測方程式は、下記の数式15となる。この数式15では、εは、極めて小さな雑音を設定している。
Figure 0005305416
なお、信頼性が十分高いという判断としては、一定回数連続で同一の解が得られたとき等が考えられる。このようにして、信頼性が高いかどうかを判断して、信頼性が十分高いと判断されれば、次のエポックからは、フロート解を推定する段階から、拘束条件を付けて推定を行っていくこととなる。
この発明による衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法及び装置は、移動体の測位システム、誘導システム等に利用可能であり、広くGNSS衛星を利用した測位分野に応用することが出来る。
1 モニタリング装置
2(2a、2b・・・) 航法衛星
3 基準局
4 モニタ局

Claims (12)

  1. 複数の周波数で送信される航法衛星からの衛星信号を、基準局とモニタ局で受信し、この受信した衛星信号から取得した衛星データから前記基準局と前記モニタ局間の電離圏遅延の異常を検出する方法において、
    前記衛星データの1周波数のみのコード疑似距離と搬送波位相の観測データを、それぞれ前記基準局及び前記モニタ局について求め、
    前記基準局と前記モニタ局における前記1周波数のみの搬送波位相及び電離圏フリー線形結合(GRAPHIC:GRoup And Phase Ionospheric Correction)の受信機間一重差(SD:Single Difference)を求め、
    同じエポックで前記基準局と前記モニタ局とで共通に観測された全航法衛星について、SD電離圏遅延、SD搬送波位相バイアス、SD受信機時計誤差を状態変数とする観測方程式を構成し、
    この観測方程式の前記状態変数を、最小二乗原則でエポック毎に推定して、前記観測方程式のフロート解を求め、
    次いで、最小二乗原則で求めた前記SD搬送波位相バイアスを、エポック毎に他の航法衛星から求めたSD搬送波位相バイアスとの間の二重差(DD:Double Difference)であるDD搬送波位相バイアスを求め、
    整数不定性決定手法により前記エポック毎に求めたDD搬送波位相バイアスを整数化した整数解の候補を求め、
    この求めた整数解の候補に対し検定を実行して前記観測方程式のフィックス解を求め、
    前記基準局と前記モニタ局間の推定したSD電離圏遅延、SD受信機時計誤差を修正するとともに、最終的に得られたSD電離圏遅延を、閾値と比較することにより電離圏異常を検出すること
    を特徴とする衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法。
  2. 前記基準局と前記モニタ局間の基線長を短基線としたこと
    を特徴とする請求項1に記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法。
  3. 前記最小二乗原則は、最小二乗法を用いること
    を特徴とする請求項1〜請求項2の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法。
  4. 前記最小二乗原則は、カルマンフィルタを用いること
    を特徴とする請求項1〜請求項2の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法。
  5. 前記整数不定性決定手法は、LAMBDA(Least−squares AMBiguity Decorrelation Adjustment)法を適用すること
    を特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法。
  6. 前記DD搬送波位相バイアスのフィックス解を拘束条件として、次のエポックの観測方程式に適用すること
    特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する方法。
  7. 複数の周波数で送信される航法衛星からの衛星信号を、GPS受信機を備えた基準局とGPS受信機を備えたモニタ局で受信し、この受信した衛星信号から取得した衛星データから電離圏遅延の異常を検出する装置において、
    下記(1)〜(10)の機能を備えたモニタリング装置と、
    (1)前記基準局及び前記モニタ局でそれぞれ受信した衛星信号から取得した衛星データの1周波数のみのコード疑似距離と搬送波位相の観測データを作成する機能と、
    (2)前記基準局と前記モニタ局における前記1周波数のみの搬送波位相及び電離圏フリー線形結合の受信機間一重差を求める機能と、
    (3)同じエポックで前記基準局と前記モニタ局とで共通に観測された全航法衛星について、SD電離圏遅延、SD搬送波位相バイアス、SD受信機時計誤差を状態変数とする観測方程式を構成する機能と、
    (4)この観測方程式の前記状態変数を、最小二乗原則でエポック毎に演算し、推定する機能と、
    (5)前記推定した状態変数を有する前記観測方程式のフロート解を求める機能と、
    (6)最小二乗原則で求めた前記SD搬送波位相バイアスを、エポック毎に他の航法衛星から求めたSD搬送波位相バイアスとの間の二重差であるDD搬送波位相バイアスを求める機能と、
    (7)整数不定性決定手法により前記エポック毎に求めたDD搬送波位相バイアスを整数化した整数解の候補を求める機能と、
    (8)この整数解の候補に対し検定を実行して前記観測方程式のフィックス解を求める機能と、
    (9)前記基準局と前記モニタ局間の推定したSD電離圏遅延、SD受信機時計誤差を修正する機能と、
    (10)最終的に得られたSD電離圏遅延と電離圏異常を判定するための閾値とを比較することにより電離圏異常を検出する機能と、
    を備えていることを特徴とする衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置。
  8. 前記基準局と前記モニタ局間の基線長を短基線としたこと
    を特徴とする請求項7に記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置。
  9. 前記最小二乗原則は、最小二乗法を用いること
    を特徴とする請求項7〜請求項8の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置。
  10. 前記最小二乗原則は、カルマンフィルタを用いること
    を特徴とする請求項7〜請求項8の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置。
  11. 前記整数不定性決定手法は、LAMBDA法を適用すること
    を特徴とする請求項7〜請求項10の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置。
  12. 前記モニタリング装置は、前記DD搬送波位相バイアスのフィックス解を拘束条件として、次のエポックの観測方程式を作成し、適用する機能と
    を備えていること特徴とする請求項7〜請求項11の何れかに記載の衛星航法システムにおける電離圏異常を検出する装置。
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