JP7061856B2 - 変位監視装置、及び変位監視方法 - Google Patents
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また、ネットワーク型RTK方式により精度よく位置を検出するためには、GNSS受信機が衛星から受信する搬送波のサイクルを確定するアンビギュイティ決定が必要となる。通常、搬送波が不連続となるサイクルスリップが生じた場合、アンビギュイティ決定までに数分から数十分の時間を要し、アンビギュイティ決定がなされるまでは観測点の変位を解析することができなくなってしまう。
以下、本発明の実施の形態についての一例を図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係るインフラ監視システム1の一例の概略構成図である。インフラ監視システム1は、例えば、川11に建設されたダム湖12におけるダム堤体10の変位や変形を監視するために用いられる。
図1に示すように、第1の実施形態に係るインフラ監視システム1は、GNSS基準点21に設置されたGNSS受信機31と、複数のGNSS観測点22(GNSS観測点22-1、22-2、22-3、…)に設置されたGNSS受信機32(GNSS受信機32-1、32-2、32-3、…)と、変位監視装置34とを含んで構成される。
また、第1の実施形態に係るインフラ監視システム1では、これと同時に地球重心座標上に不動の仮想基準点23を設定し、ダム堤体10の周辺全体(以下、ダム堤体10全体という)の変位と、GNSS基準点21とダム堤体10のGNSS観測点22毎の地球重心座標上の位置及び不動の仮想基準点23の地球重心座標上の位置の二点間の距離L2(距離L2-1、L2-2、L2-3…)とを、地球重心座標の成分(X軸、Y軸、Z軸)毎に算出して時系列で記憶しておく。ここで、ダム堤体10全体の変位とは、例えば、GNSS観測点22の全てに共通する変位である。これにより、ダム堤体10全体の変位と、GNSS基準点21の単独の変位と、GNSS観測点22の各々の単独の変位とを確認することが可能となる。つまり、第1の実施形態に係るインフラ監視システム1では、GNSS基準点21の単独の変位と、ダム堤体10全体の変位と、GNSS観測点22の各々の単独の変位と、を個別に確認することができる。
そして、各計測時に、GNSS基準点21、ダム堤体10全体、およびGNSS観測点22の各々の地球重心座標上の位置それぞれと、不動の仮想基準点23の地球重心座標上の位置との2点間の各々の距離Ltを計測する。ここで、距離Ltには、各計測時におけるGNSS基準点21と不動の仮想基準点23との間の距離Lt1、ダム堤体10全体の位置と不動の仮想基準点23との間の距離Lt2#、GNSS観測点22の各々と不動の仮想基準点23との間の距離Lt2(距離Lt2-1、Lt2-2、Lt2-3、…)が含まれる。
そして、初期設定時に求められた参照距離Laの各々と、各々の参照距離Laに対応する距離Ltの各々との差分を求める。
dX=Xa-Xt
dY=Ya-Yt
dZ=Za-Zt
・日本列島のプレート変動に伴う長期的な変位トレンド
・地域ごとに微妙に異なる季節変動トレンド
・地震、豪雨(雪)、干ばつ等が発生した際の変位ステップ
・熱膨張収縮、受信機障害、周辺の環境因子(植物繁茂)等によるノイズ
図2に示すように、第1の実施形態に係るインフラ監視システム1は、初期設定処理(ステップS1)と、観測点の測位処理(ステップS2)と、GNSS基準点の変位計測処理(ステップS3)と、解析処理(ステップS4)とからなる。まず、ステップS1の初期設定処理から説明する。
(ステップS101)変位監視装置34は、GNSS基準点21のGNSS受信機31及び全てのGNSS観測点22の各々のGNSS受信機32の各々の受信情報を取得し、取得した受信情報から、地球重心座標で、GNSS基準点21及び全てのGNSS観測点22の各々の位置を取得する。
(ステップS103)変位監視装置34は、地球重心座標軸上に不動の仮想基準点23を設定する。ここで、不動の仮想基準点23を地球重心座標上に設定する際には、GNSS受信機31及びGNSS受信機32の各々の地球重心座標、または/および、ネットワーク等を使って配信される周囲の電子基準点で囲まれた任意の地点を独自に決定する。
(ステップS104)変位監視装置34は、ステップS102で求められた初期設定値のGNSS基準点21の地球重心座標上の位置と、ステップS103で設定された不動の仮想基準点23の地球重心座標上の位置との2点間の距離をX軸、Y軸、Z軸の各成分毎に算出する。
(ステップS105)変位監視装置34は、初期設定値のGNSS基準点21の地球重心座標上の位置と不動の仮想基準点23の地球重心座標上の位置との2点間の距離の各成分を参照距離Laとして記憶する。
(ステップS201)変位監視装置34は、観測点の変位計測指令を待ち、観測点の変位計測指令を受け取ると、処理をステップS202に進める。観測点の変位計測指令は、所定時間毎に定期的に入力される。
(ステップS202)変位監視装置34は、変位計測指令を受け取ると(ステップS201:Yes)、GNSS観測点22の地球重心座標上の位置の各々とステップS103で設定された不動の仮想基準点23の地球重心座標上の位置との2点間の距離Ltの各々をX軸、Y軸、Z軸の成分毎に算出する。
(ステップS203)変位監視装置34は、ステップS104で求められた参照距離Laの各々のうちと、ステップS202で求められた距離Ltとの差分値(La-Lt)を求める。
(ステップS301)変位監視装置34は、基準点の変位計測指令を待ち、基準点の変位計測指令を受け取ると、処理をステップS302に進める。基準点の変位計測指令は、所定の時間毎に定期的に入力される。
(ステップS302)変位監視装置34は、基準点の変位計測指令を受け取ると(ステップS301:Yes)、GNSS基準点21の地球重心座標上の位置と不動の仮想基準点23の地球重心座標上の位置との2点間の距離LtをX軸、Y軸、Z軸毎に算出する。
(ステップS303)変位監視装置34は、ステップS104で求められた参照距離Laと、ステップS302で求められた距離Ltとの差分値(La-Lt)を求める。
(ステップS401)変位監視装置34は、解析開始指令を待ち、解析開始指令を受け取ると(ステップS401:Yes)、処理をステップS402に進める。
(ステップS402)変位監視装置34は、解析指令を受け取ると(ステップS401:Yes)、受け取った解析指令が観測対象の変位解析か否かを判定し、観測対象の変位解析なら(ステップS402:Yes)、処理をステップS403に進め、観測点の変位解析でなければ(ステップS402:No)、処理をステップS405に進める。
(ステップS403)変位監視装置34は、ステップS203で記憶した各GNSS観測点22の時系列の地球重心座標における位置情報の各々から、観測点の各所の変位、変形状況を解析して、ステップS404に処理を進める。
(ステップS404)変位監視装置34は、観測点の各所の変位、変形状況の解析結果をグラフ等で表示する。
(ステップS405)変位監視装置34は、受け取った解析指令がGNSS基準点の変位解析か否かを判定し、GNSS基準点の変位解析なら(ステップS405:Yes)、処理をステップS406に進め、観測点の変位解析でなければ(ステップS405:No)、処理をステップS401にリターンする。
(ステップS407)変位監視装置34は、GNSS基準点21の変位の解析結果を、グラフ等で表示する。
図7において、GNSS基準点受信情報取得部(第2の取得部)51は、GNSS基準点21に設置したGNSS受信機31の受信情報を取得する。GNSS観測点受信情報取得部(第1の取得部)52は、複数のGNSS観測点22の各々に設置したGNSS受信機32の各々の受信情報を取得する。不動の仮想基準点情報取得部(第3の取得部)53は、GNSS受信機31の受信情報やGNSS受信機32の各々の受信情報とともに、不動の仮想基準点23の情報を取得する。
また、本実施形態では、参照距離Laを記憶させることにより、GNSS基準点21、およびGNSS観測点22の各々における初期設定時の位置や初期設定時の位置の決定に用いたアンビギュイティを保持することが可能となる。このため、通常、搬送波が不連続となるサイクルスリップが生じた場合、アンビギュイティを決定し直す代わりに、保持しているアンビギュイティを用いて各々の位置を検出することができる。このため、サイクルスリップが生じた場合であっても、アンビギュイティを決定し直す必要がなくアンビギュイティ決定までの時間を短縮することができ、より高速にGNSS基準点21、ダム堤体10全体、およびGNSS観測点22の各々の位置を検出できる。
以下、第2の実施形態に係る変位監視装置34Aについて説明する。変位監視装置34Aは、例えば、建設現場などの作業現場において作業するクレーン車等の重機(観測対象)の移動(位置の変化、すなわち変位)を監視する監視システムに適用される。当該監視システムは、例えば、重機がある場所で作業をした後、他の場所に移動して一旦停止した後に別の作業を開始した等、重機の移動を監視する。
第2の実施形態において、GNSS観測点22Aは、例えば、クレーン車のジブやフック等、重機の稼働域を避けた、クレーン車内の運転席や操作室等の固定点に設置される。変位監視装置34Aは、重機の固定点に設置されたGNSS観測点22Aの位置の変位に基づいて、重機の位置が変位したか否かを判定する。
第2の実施形態において、基準点変位・観測点変位解析部59Aは、観測点の位置に基づいて衛星信号の搬送波における位相のアンビギュイティを決定し、決定したアンビギュイティを記憶させ、搬送波における位相のサイクルスリップ情報に基づいてGNSS観測点22Aの位置を計測する。ここで、サイクルスリップ情報は、搬送波においてサイクルスリップが発生したか否かを示す情報である。基準点変位・観測点変位解析部59Aは、例えば、搬送波の信号が不連続で観測された場合、サイクルスリップが発生したと判定する。基準点変位・観測点変位解析部59Aは、サイクルスリップが発生したと判定した場合、記憶させたアンビギュイティを用いてGNSS観測点22Aの位置を計測する。これにより、基準点変位・観測点変位解析部59Aは、サイクルスリップが発生した場合であっても、アンビギュイティを決定し直す必要がない。
なお、第2の実施形態に係る変位監視装置34Aの監視対象は、高速で移動し続ける移動体や、短時間に遠くの場所に移動するものではなく、移動・停止を狭い範囲で繰り返すものが好ましい。狭い範囲ではサイクルスリップが発生する前後のアンビギュイティに有意な差が生じる可能性が少ないためである。
以下、第2の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、変位監視装置34Aは、例えば、カーナビゲ-ション(以下、カーナビという)の解析システムに適用される。GNSS観測点22Aは、例えば、車両の内部に設置される。当該解析システムは、カーナビが搭載された車両の位置を解析する。
ある地点で車両のエンジンがオン状態となると、カーナビの電源状態もオン状態となる。カーナビに電源が投入されることで、変位監視装置34AによりGNSS観測点22Aにおける位置が取得される。この場合、基準点変位・観測点変位解析部59Aは、観測点の位置に基づいて衛星信号の搬送波における位相のアンビギュイティを決定し、決定したアンビギュイティを記憶させ、記憶させたアンビギュイティ及び搬送波における位相のサイクルスリップ情報に基づいてGNSS観測点22Aの位置を計測する。車両がある地点から別の地点に移動した後、車両のエンジンがオフ状態とされると、カーナビの電源状態もオフ状態となる。そして、所定の期間(例えば、数時間、あるいは数日間)車両を停車した後、再び車両のエンジンをオン状態とすると、カーナビの電源状態もオン状態となる。再びカーナビの電源が投入された場合、GNSS観測点22Aにおける位置を検出する際に、記憶させたアンビギュイティを用いてGNSS観測点22Aの位置を計測する。車両は高速で移動する移動体の一つであるが、車両のエンジンがオフ状態とされた後、再びオン状態とされるまでの間は、原則として移動することがない。車両のエンジンがオフ状態とされた際のアンビギュイティを記憶させておくことにより、次回にカーナビを立ち上げた際に、GNSS観測点22Aの位置をより高速に検出することが可能となる。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
Claims (5)
- 観測対象の観測点に設置される第1のGNSS受信機からの受信情報を取得する第1の取得部と、
所定の基準位置に設置される第2のGNSS受信機からの受信情報を取得する第2の取得部と、
前記第1のGNSS受信機の受信情報と前記第2のGNSS受信機の受信情報とから前記観測点の位置を相対測位により算出する位置算出部と、
ネットワークを使って配信される周囲の電子基準点から設定された仮想基準点の地球重心座標上の位置を取得する第3の取得部と、
前記第1のGNSS受信機からの受信情報と、前記第2のGNSS受信機からの受信情報と、前記仮想基準点の情報と、から、前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の地球重心座標上の位置と、前記仮想基準点の地球重心座標上の位置と、の間の3次元空間における距離を算出する基準点距離・観測点距離算出部と、
前記所定の基準位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離、前記観測点の位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離、各々の変化に基づいて、前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の変位を解析する基準点変位・観測点変位解析部と
を備える変位監視装置。 - 前記基準点変位観測点変位解析部は、前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の地球重心座標上の位置のX、Y、Zの各成分と、前記仮想基準点の地球重心座標上の位置のX、Y、Zの各成分とに基づく、前記所定の基準位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離、前記観測点の位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離、各々の変化に基づいて、前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の変位を解析する
請求項1に記載の変位監視装置。 - 前記基準点変位・観測点変位解析部は、初期位置での前記所定の基準位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離、初期位置での前記観測点の位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離、各々を参照距離とし、当該参照距離の各々と、当該参照距離の各々に対応する計測毎の前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の地球重心座標上の位置と、前記仮想基準点の地球重心座標上の位置と、の間の3次元空間における距離との差分値の各々の時系列毎の変化から、前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の変位を解析する
請求項1又は2に記載の変位監視装置。 - 前記基準点変位・観測点変位解析部は、前記観測点の位置に基づいて衛星信号の搬送波位相のアンビギュイティを決定し、決定した前記アンビギュイティを記憶させ、前記決定した前記アンビギュイティ及び前記搬送波位相のサイクルスリップ情報に基づいて、前記観測点の位置を計測する
請求項3に記載の変位監視装置。 - 第1の取得部が、観測対象の観測点に設置される第1のGNSS受信機からの受信情報を取得する工程と、
第2の取得部が、所定の基準位置に設置される第2のGNSS受信機からの受信情報を取得する工程と、
位置算出部が、前記第1のGNSS受信機の受信情報と前記第2のGNSS受信機の受信情報とから前記観測点の位置を相対測位により算出する工程と、
第3の取得部が、ネットワークを使って配信される周囲の電子基準点から設定された仮想基準点の地球重心座標上の位置を取得する工程と、
基準点距離算出部が、前記第1のGNSS受信機からの受信情報と、前記第2のGNSS受信機からの受信情報と、前記仮想基準点の情報と、から、前記所定の基準位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離と、前記観測点の位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置との間の3次元空間における距離と、を算出する工程と、
基準点変位・観測点変位解析部が、前記所定の基準位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置の間の3次元空間における距離、前記観測点の位置の地球重心座標上の位置と前記仮想基準点の地球重心座標上の位置の間の3次元空間における距離、各々の変化に基づいて、前記所定の基準位置と前記観測点の位置の各々の変位を解析する工程と
を有する変位監視方法。
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