JP5303946B2 - 記録媒体に体積型ホログラム層を形成させる転写方法及びその装置 - Google Patents

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Description

本発明は体積型ホログラム層を形成させる転写方法及びその装置に関する。
現在、小切手、商品券等の有価証券、通帳、パスポート、IDカード等の身分証明書類、及び紙幣の偽造が増加しており、その被害は甚大である。この為、従来から、ホログラムを用いた画像形成方法が採用されている。ホログラムは、画像の見え方が変化するとの特徴を有し、かつ、モノクロ(カラー)コピー機では複製できないため、比較的セキュリティ性が高いものとされている。しかしながら、近年、ホログラムの代表例であるレリーフ型ホログラムであっても、その偽造(模造)品が市場に出回っているのが実情である。
レリーフ型ホログラムと別の原理を用いたホログラムとして、体積型ホログラムが挙げられる。体積型ホログラムは、特殊な感光材料にレーザーを用いて画像を形成するものであることから、レリーフ型ホログラムよりもセキュリティ性が高いとされ、近年、偽造防止手段としての用途が期待されている。
体積型ホログラムは屈折率の異なる複数の材料が用いられるのが一般的であり、通常は特定の光を照射することによって重合させることが可能な光重合性材料が用いられている。このため、体積型ホログラムは機械強度が大きくなる傾向にあることが一般に知られている。また、体積型ホログラムは、屈折率差が三次元的に配列されることによりホログラム像が記録されるという性質上、ホログラムが形成される層の厚みが厚くなる傾向にある。このため、体積型ホログラム転写箔を用いて転写する場合には、箔切れ性が強く要求される。体積型ホログラム転写箔において、箔切れ性を向上させる為に、本出願人は、接着剤層の破断点伸度を体積型ホログラム層と同等又はそれ以下にしたものを提案している(特許文献1:特開2005−70064号公報)。
また、近年、セキュリティ性向上の観点から、体積型ホログラム転写箔内に、ホログラム画像のみならず、蛍光画像形成層、紫外線防止層、光学可変画像形成層、その他の機能層を備えた多層型転写箔が形成される傾向にある。このため、体積型ホログラム転写箔にあっては、ホログラム画像形成時の箔切れ容易性がさらに要求されている状況にある。取り分け、複数の部材からなる記録媒体(例えば、通帳、パスポート等の冊子)の少なくとも一つの部材(例えば、紙)に、体積型ホログラム層を形成させる場合に非常に要求される。実際、この様な部材に従来の体積型ホログラム転写方法を行った場合、転写不良とともに、部材である紙の折れ、破れ等の不良が発生することがあった。
本発明者は、このような問題を解決する為に、上記先行技術を含めた様々な方法を行ってみた。例えば、基材と、剥離性保護層と、ホログラム層と、接着剤層とを備えてなるホログラム転写箔において、1)剥離性保護層を基材から剥離し易くする方法、2)ホログラム層の構成材料を脆化させる方法等を試みた。しかしながら、いずれの方法も所望の目的を達成させるものではなかった。
従って、現在、複数の部材を備えた記録媒体の少なくとも一つの該部材に、体積型ホログラム層を形成させる転写方法の開発が切望されている。
特開2005−70064号公報
発明者は、今般、体積型ホログラム転写体を用いて記録媒体に体積型ホログラム層を形成させる際、「保持材」を用いることにより、記録媒体を安定に保持することができ、転写容易性と、体積型ホログラム転写体における転写部位の切れ容易性を向上させると共に、記録媒体の折れ及び破損を有効に防止することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。従って、本発明は、記録媒体に体積型ホログラム層を含む転写部位を転写する際において、転写部位の切れ容易性及び基材の剥離容易性と、記録媒体の破損防止を高い次元において達成することができる、転写方法及び転写装置を提供するものである。
よって、本発明は、記録媒体に、体積型ホログラム層を形成させる転写方法であって、 前記記録媒体と、体積型ホログラム転写体と、保持材とを用意し、
前記体積型ホログラム転写体が、基材と、該基材に、剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層とをこれらの順で備えてなり、かつ、前記保持材が前記記録媒体を保持するものであり、
前記記録媒体の被転写面と反対の面に保持材を付与し、
前記記録媒体の被転写面に、前記体積型ホログラム転写体を前記接着剤層の面で付着させ、
前記剥離性保護層と、前記体積型ホログラム層と、及び前記接着剤層を備えてなる転写部位を転写し、
前記基材のみを剥離することを含んでなるものである。
また、本発明による転写装置は、記録媒体に、体積型ホログラム層を形成させるものであって、
前記体積型ホログラム転写体が、基材と、該基材に、剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層とをこれらの順で備えてなり、
前記記録媒体の被転写面と反対の面に付与され、かつ、前記記録媒体を保持する保持材と、
前記記録媒体の被転写面に、前記体積型ホログラム転写体を接着剤層の面で付着させ、前記剥離性保護層と、前記体積型ホログラム層と、及び前記接着剤層を備えてなる転写部位を転写し、かつ、前記基材のみを剥離する転写部とを備えてなるものである。
本発明による方法及び装置によれば、被転写体である記録媒体が保持材に安定に保持されることから、記録媒体が捲れ上がることなく、転写を容易に行うことができ、かつ、転写部位のみを切り離し、かつ、体積型ホログラム転写体における基材のみを剥離させることを極めて容易に行うことができるとの効果を有する。この結果、体積型ホログラム転写体(特に、多数積層構造を有するもの)を複数の部材を備えた記録媒体に転写する際に、記録媒体及びその部材の破損及び折れ等を有効に防止することができ、体積型ホログラム転写体本来の目的を達成させることが可能となる。また、本発明では、複雑な剥離機構を設ける必要がないため、多様な転写機にて転写可能になるとの利益を有する。
定義
「画像」とは、無彩色、有彩色等の様々な色により、全体又は部分的に形成された、パターン、線画、文字、図形、記号等の様々な態様のものをいう。
「保持材の粘着力又は吸着力」は、以下の方法により測定することが可能である。PETシートを貼り付けた後、引っ張り試験機(商品名:万能材料試験機:インストロン 社製)により、300mm/minの速さで180度引き剥がしを行った際の剥離力(N/25mm)として測定する。
転写方法及び転写装置
特徴
本発明の特徴を従来の転写方法との比較において説明する。図1は従来の転写方法(装置)の概要を示し、図2は図1における従来の転写方法(装置)において記録媒体1(又はその構成部材)から基材5を剥離しようとした際の状態(図1のA矢印部分)の概略を示したものである。図1に示す通り、記録媒体1に、体積型ホログラム転写体3を用いて転写し、記録媒体1から体積型ホログラム転写体3の基材5を剥離しようとした場合、体積型ホログラム転写体3が記録媒体1に付着したままとなるか、体積型ホログラム転写体3における基材5が全く剥離しないことがあった。その結果、図2に示す通り、記録媒体1(又はその構成部材)が体積型ホログラム転写体3(又は基材5)に引っ張られて、記録媒体1及びその構成部材が破損したり、大きく折れ曲がったり、大きく湾曲する等の不具合が生じることがあった。そこで、本発明は、図3に概略するように、記録媒体1(又はその構成部材)の被転写面と反対の面に付与し、記録媒体1を保持する保持材7を採用することとしたのである。その結果、図4及び図5に示す通り、体積型ホログラム転写体3から基材5のみが素早く剥離され、記録媒体1には転写部位2(図4及び図5の上部から、剥離性保護層8と、体積型ホログラム層9と、接着剤層10の順で構成されている)が転写されることとなる。
本発明による転写方法及び転写装置は、以下のように説明できる。記録媒体(又はその構成部材)を用意し、この記録媒体の被転写面と反対の面に保持材を付与し、必要に応じて、搬送装置により、転写部に搬送される。この際、別に用意された体積型ホログラム転写体もまた、転写部に搬送される。転写部では、保持材に安定に保持された記録媒体の転写される面に、体積型ホログラム転写体が付着され、転写装置(転写部)により、好ましくは加圧及び/又は加熱されて、記録媒体の表面に、体積型ホログラム転写体における剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層及びその他の層からなる転写部位が転写され、転写後、体積型ホログラム転写体における基材のみが、記録媒体から剥離される。
その後、転写された記録媒体と保持材とは、必要に応じて排出装置(分離部)を用いて排出され、分離される。これにより、記録媒体中の部材に所望の体積型ホログラム層を含んだ転写部位が転写される。
本発明による転写方法及び転写装置は、この様に保持材を用いることにより記録媒体及びその部材の破損及び折れ等を有効に防止することに特徴があり、多様な転写装置にて転写を可能とするものである。転写装置としては転写部と保持材が備えられていれば良く、図3に記載の形態のものになんら限定されるものではない。転写記録媒体を転写装置の転写部に挿入する方向は、転写記録媒体が冊子体の場合、綴じ方向と平行な方向、綴じ方向とは垂直の方向、あるいは綴じ方向に対してそれ以外の角度が挙げられる。また、転写開始位置については、転写記録媒体の端部の場合と、端部ではない場合が挙げられる。さらに、転写部から転写記録媒体が排出される方向としては、いかなる方向であっても良く、転写記録媒体が冊子体の場合、綴じ方向と平行な方向、綴じ方向とは垂直の方向、あるいは綴じ方向に対してそれ以外の角度が挙げられる。また、挿入方向と排出方向の関係に関しては、いかなる角度関係にあっても良く、同じ方向の0°、逆方向の180°、垂直方向の90°、またそれ以外の角度が挙げられる。
保持材
保持材は、記録媒体を保持するものであり、特に、転写時に、体積型ホログラム転写体から転写部位を記録媒体に転写することを安定に行うことができる程度の保持能力を有するものであることが好ましい。また、本発明にあっては、保持材は、転写時に、記録媒体を保持でき、かつ、転写後に容易に記録媒体から分離されるものが好ましい。保持材はそれ自体が記録媒体を保持する能力を有するものであってもよく、また、保持材は、基本材(例えば、基本板)に記録媒体を保持する能力(粘着又は吸着能力)を有するものを備えたものであってもよい。保持材は記録媒体(又はその構成部材)の被転写面と反対の面に付与される。ここで、「付与」とは、例えば、付着、離形性固着、離形性固定、支持、設置、配置、符合、重ね合わせ等(これらに限定されない)の全ての行為を包含する意である。保持材が記録媒体(又はその構成部材)の被転写面と反対の面に付与されることにより、記録媒体又はその構成部材は保持材上で安定に保持され(好ましくは固定され)、その後の転写において、記録媒体又はその構成部材に所望の体積型ホログラム層(転写部位)を適切かつ強固に形成させることが可能となる。
保持材の材質は、転写される記録媒体(又はその構成部材)に合わせて様々なものを採用することができる。保持材の形態は、テープ、板、フィルム、シート、薄膜、箔等であってよい。保持材自体が記録媒体を保持する能力を有するものの具体例としては、硬化後に粘着性と剛性を発現するモノマーを硬化等して形成した粘着性樹脂等が挙げられ、また、粘着性モノマーを最表面にし、かつ、硬化後に剛性を発現するモノマーをその下層にして硬化等して形成された最表面粘着性樹脂等が挙げられる。さらに、例えば、アクリル樹脂又はウレタン樹脂等に空気泡が導入された発泡性樹脂等が吸着能力を有するものの具体例として挙げられる。
保持材が、基本材の上に、記録媒体を保持する能力を有するものを備えたものである場合、その基本材としては、例えば、紙、木材、プラスチック、金属、ガラス、セラミックス等のものが挙げられる。保持材は、記録媒体を保持する必要性から剛性であることが好ましい。「剛性」の程度は、20mm×25mm程度の範囲の端部(25mm幅の部分)を5mm変形させて持ち上げるのに必要な力として表現することができ、具体的には、10N以上、より好ましくは30N以上である。
保持材の大きさ(表面積)は、自由に定められるが、好ましくは記録媒体と同等以下のものである。保持材の大きさが記録媒体と同等以下であることにより、体積型ホログラム転写体から保持材に無用な転写部位が転写されることがなく、保持材自体の目的を有効に達成することができるからである。保持材の厚さは、転写される記録媒体(記録媒体)に合わせて様々な値にすることができるが、記録媒体の厚さと同程度又は転写容易性の範囲内においてさらに厚いものであってもよい。また、保持材の厚みは、0.05mm以上10mm以下程度の範囲であり、より好ましくは下限値が0.1mm以上であり、上限値が5mm以下程度である。
本発明の好ましい態様によれば、保持材は、記録媒体を保持する為に、その表面に粘着層又は吸盤層を有しているものが好ましい。例えば、図4及び図5のように、保持材7の表面に粘着層又は吸盤層11(12)を備えたものとして構成されてよい。粘着層又は吸盤層は記録媒体を保持し、転写後に記録媒体から体積型ホログラム転写体における基材5のみを剥離し易くするものであればいずれのものであってもよい。本発明における「粘着層」は、粘着能力を発現しうるものであればいずれのものを使用して形成されてよく、例えば、粘着剤、接着剤、感圧性接着剤、ゲル粘着剤等によって形成されてよい。また、このような材料が表面に形成された粘着シート又は粘着テープのようなものであってもよい。
本発明における吸盤層は、マイクロ吸盤層が好ましくは用いられる。「マイクロ吸盤層」とは、表面に微細な凹部を無数に備えてなり、記録媒体の被転写面と反対の面に押しつけると、凹部の空気が抜けて陰圧となる吸盤作用により、吸着性を発現するものである。
マイクロ吸盤層の代表的なものとしては、例えば、アクリル樹脂又はウレタン樹脂等に空気泡が導入された樹脂発泡層が挙げられる。この内容は、特開昭62−280281、特開平6−98803、特開2001−356724、特開2004−38119及び特開2006−276280に開示されており、これら特許公報に開示された内容は、本明細書の一部を成す。また、このような材料が表面に形成された吸着シート又は吸着テープのようなものであってもよい。
本発明において、粘着層又は吸盤層の粘着性又は吸着性は、粘着力又は吸着力(剥離力(N/25mm))として表すことができる。本発明の好ましい態様によれば、保持材の粘着力あるいは吸着力は、0.02N/25mm以上5N/25mm以下程度の範囲、より好ましくは下限が0.05N/25mm以上であり上限が2N/25mm以下である。
本発明の好ましい態様によれば、粘着層又は吸盤層は保持材の全部又は一部分に存在してよいが、記録媒体を剥離する際に、記録媒体の損傷を防止する観点から、一部分に存在することが好ましい。例えば、図4のように、保持材7の表面全部に粘着層又は吸盤層11を備えたもの、又は、図5(好ましい)のように、保持材7の表面端部に粘着層又は吸盤層12を備えたもの、として構成されてよい。粘着層又は吸盤層が保持材の一部分に存在する場合、その範囲は、保持材表面の全表面積の1%以上85%以下程度の面積が好ましく、より好ましくは下限が4%以上であり、上限が20%以下程度の面積であることが好ましい。また、本発明の好ましい態様によれば、粘着層又は吸盤層が保持材の一部分に存在する場合、その位置は、保持材の端部であることが好ましく、図5のように、記録媒体から体積型ホログラム転写体における基材5が最初に剥離される部分に対応する、保持材の端部であることがより好ましい。
転写方法によっては、図5に限定されない場合もある。つまり転写記録媒体から体積型ホログラム転写体における基材が最初に剥離される部分が転写記録媒体の端部に対応しない場合、また、基材の剥離開始が固定されていない場合などがある。そのような場合には、基材の剥離開始位置にかかわらず転写記録媒体の端部から破損してしまう。そのような場合には、保持材上に粘着層又は吸盤層の存在する位置は、基材が剥離される際に記録媒体のめくれに起因する破損が有効に防止され得る、記録媒体の端部に対応する場所であることがより好ましい。
記録媒体
本発明は、被転写体として記録媒体が用いられる。記録媒体は単体又は複数の部材を備えたものであってよい。本発明の方法(装置)は、好ましくは、複数の部材を備えた記録媒体においてその効果を発揮する。記録媒体及び部材は、繊維、木材、プラスチック、ガラス、布、金属等の何れのものであっても良い。複数の部材を備えた記録媒体は、転写されるものであればいずれのものであってもよいが、冊子状体のものが好ましくは使用され、例えば、通帳、パスポート、身分証明書、手帳、書籍、雑誌、パンフレット等を挙げることができ、セキュリティ性が望まれる冊子状体のものが好ましくは使用される。部材は、記録媒体が冊子状体のものの場合、薄いものが好ましくは使用され、例えば、紙、プラスチックフィルム、薄い木板、薄いプラスチック板、金属箔が用いられる。本発明においては、転写対象は記録媒体であるが、「記録媒体」には、それを構成する部材も当然に包含する意である。したがって、本発明においては、記録媒体を構成する部材もまた、転写対象となる。
記録媒体が冊子状体(特に、通帳、パスポート)の場合、記録媒体及び部材は、紙、特に、偽造防止用紙が通常使用される。紙の場合、秤量が80g/m以上130g/m以下のものが好ましくは使用される。特に、偽造防止用紙は104g/m程度のものが多く、90g/mのものを使用することもある。また、この偽造防止用紙の厚みは約90μm以上160μm以下程度の範囲である。本発明による転写方法又は装置を使用することにより、僅かな力で捲れ上がり、容易に折れ曲がるという特性を有した紙(特に、偽造防止用紙)に対しても、破損及び折れ等を有効に防止した上で、体積型ホログラム層を形成させることが可能である。
体積型ホログラム転写体
体積型ホログラム転写体は、偽造防止性の高い体積型ホログラム画像を、記録媒体に転写するものである。体積型ホログラム転写体は、基材と、剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層とを少なくとも備えてなり、必要に応じて、他の機能層を備えてなるもので構成されてよい。体積型ホログラム転写体の形態は、薄膜、箔、テープ、板、フィルム、シート等であってよい。
1.基材
基材は、剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層と、他の機能層を支持するものであり、このような機能を発揮するものであれば、いずれのものを使用することができ、好ましくは樹脂フィルムである。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリイミドフィルム等を挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムが好ましい。
基材の厚みは、積層される層の数量、種類に応じて適宜定めることが可能であるが、転写方法(装置)の操作容易性等を考慮して、一般に、2μm以上200μm以下範囲程度であり、好ましくは下限が10μm以上、上限が50μm以下とすることができる。
2.剥離性保護層
剥離性保護層は、基材の上に形成される。剥離性保護層は、基材と体積型ホログラム層との接着力を任意の範囲に調整することができる為、体積型ホログラム転写体から基材のみを容易に剥離させることが可能となる。また、この転写部位が転写された後、剥離性保護層は体積型ホログラム層を覆うことになる為、その画像情報を保護することが可能となる。
剥離性保護層に用いられる材料の具体例としては、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の1種または2種以上混合したもの等を挙げることができる。これらの樹脂を基材に付与し、硬化させることで、剥離性保護層を形成することができる。また、剥離性保護層は前述の基材と同様の樹脂フィルムであってもよい。この場合、これらの樹脂フィルムを基材にラミネートすることで、剥離性保護層を形成することができる。
3.体積型ホログラム層
体積型ホログラム層は、偽造防止性の高い体積型ホログラム画像を形成する層である。
本発明に用いられる体積型ホログラム層の厚みは、適宜調整することができるが、1μm以上50μm以下程度の範囲であり、好ましく下限が3μm以上であり、上限が25μm以下である。
構成材料
構成材料は、体積型ホログラムを記録することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に体積型ホログラムに用いられる材料を任意に用いることができる。
このような材料としては、例えば、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知の体積型ホログラム記録材料が挙げることできるが、なかでも本発明においては、(i)バインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有する第1の感光材料、または、(ii)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系および光カチオン重合開始剤系を含有するからなる第2の感光材料を好適に用いることができる。
(i)第1の感光材料
バインダー樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステルまたはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体、またはそれらの混合物;ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物等を挙げることができる。
ここで、体積型ホログラム層を形成する際には、記録された体積型ホログラムを安定化するために、加熱してモノマーを移動させる工程が実施される場合がある。このため、本発明に用いられるバインダー樹脂はガラス転移温度が比較的低く、モノマー移動が容易に移動できるものであることが好ましい。
光重合可能な化合物としては、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびそれらの混合物を用いることができる。具体例としては、不飽和カルボン酸およびその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物等を挙げることができる。
不飽和カルボン酸のモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等を挙げることができる。また脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート等を挙げることができる。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等を挙げることができる。また、イタコン酸エステルとしてはエチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート等を挙げることができる。また、上記クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等を挙げることができる。さらにイソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等を挙げることができる。さらにまた、マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等を挙げることができる。
ハロゲン化不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等を挙げることができる。また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を挙げることができる。
光重合開始剤としては、例えば、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、イミダゾール二量体類等を挙げることができる。光重合開始剤は、記録された体積型ホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるものが好ましい。例えば有機過酸化物系にあっては紫外線照射することにより容易に分解されるので好ましい。
増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を挙げることができる。
(ii)第2の感光材料
第2感光材料が用いられる場合、体積型ホログラム層に体積型ホログラムを記録する方法としては、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで、光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光とは別の波長の光を照射する方法が用いることができる。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
ラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は、カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、なかでも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積型ホログラムが形成されることによるものである。したがって、平均屈折率の差が上記値以上にあることにより、屈折率変調が十分となり好ましい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等を挙げることができる。
光ラジカル重合開始剤系としては、体積型ホログラムを記録する際に、第1露光によって活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。このような光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明ホログラムとする場合には、シアニン系色素の使用が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することでホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積型ホログラムを得ることができるからである。
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3´−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3´,9´−ジエチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、3,3´,9−トリエチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´,9−トリエチル−2,2´−(4,5,4´,5´−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1´,3,3,3´,3´−ヘキサメチル−2,2´−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´−ジエチル−2,2´−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3´−カルボキシメチル−5´−クロロ−2,2´−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5´−ジフェニル−9−エチル−3,3´−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
活性ラジカル発生化合物としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4´−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4´−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4´−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3´−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)ー1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4´−メトキシ−1´−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤系としては、体積型ホログラムが記録される際の第1露光に対しては低感光性で、第1露光と異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系であれば特に限定されるものではない。第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが用いられることが特に好ましい。このような光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
任意材料
第2の感光材料には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色料等を併用してもよい。バインダー樹脂は、ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物と相溶性のよいものであればよく、例えば塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性を有していてもよい。
4.接着剤層
接着剤層は、体積型ホログラム層等を含んでなる転写部位を転写対象である記録媒体の表面に、接着させる機能を有するものである。接着剤層の厚みは特に限定されるものではなく、適宜設定することができるが、通常、0.3μm以上50μm以下程度の範囲であり、好ましくは、下限が0.5μm以上であり、上限が25μm以下である。厚みが上記範囲内にあることにより、接着性がよく、加熱時間を短縮することが可能となる。
接着剤層は、いずれの材料で形成されてよいが、熱接着性のものが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、マレイン酸変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の一種又は二種以上のものを挙げることができる。また、接着剤層は、添加剤として、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を添加することが可能である。
5.任意の層
体積型ホログラム転写体は、任意の層をさらに備えてもよい。任意の層としては、画像形成層、プライマー層、バリア層、紫外線防止層が挙げられる
1)画像形成層
本発明にあっては、セキュリティ向上をより図る為に、画像形成層を形成することができる。画像形成層は、好ましくは、体積型ホログラム層の上下層(好ましくは下層)に形成されてなるのが好ましい。画像形成層に形成される画像は、体積型ホログラム層の画像情報と合わせて、所望の画像とることができる。画像形成層の厚みは0.1μm以上50μm以下程度の範囲内であり、好ましくは下限が0.5μm以上であり、上限が20μm以下である。
画像形成層の例としては、様々な画像形成層を採用することができ、染料、顔料によって画像が形成された画像形成層、紫外線を吸収することにより蛍光を発する蛍光材料によって画像が形成された蛍光画像形成層、視認する角度によって色が変化する光学可変材料によって画像が形成された光学可変画像形成層を挙げることができる。本発明においては、蛍光画像形成層および光学可変画像形成層を用いることが好ましい。蛍光画像形成層が用いられることにより、画像形成層の存在を外部から容易に視認できないようにすることができるため、本発明の体積型ホログラム転写体を用いて、より偽造防止機能に優れた体積型ホログラム層を作製することができる。光学可変材料で作製された画像は、通常のインキでは複製することが不可能であるため、上記光学可変画像形成層が用いられていることにより、さらに偽造防止機能に優れた体積型ホログラム層を作製することができる。
(i)光学可変画像形成層
光学可変画像形成層は、光学可変材料によって画像が形成されたものである。光学可変材料としては、所望の色を発現できるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも所定の角度から観た際に、ホログラムの像と同一色の色を発現できるものであることが好ましい。このような光学可変材料が用いられることにより、所定の角度から視認した際に、画像形成層の画像と、ホログラム像とを同一色の画像にすることができるため、例えば、ホログラムと、光学可変画像形成層における画像とが重なるように形成することにより、特定の角度において体積型ホログラムが視認されないようにすることが可能になり、さらにセキュリティ性を向上させることができる。
光学可変材料としては、例えば、パール顔料、偏光インキ、液晶インキ、および再帰反射性インキ等を挙げることができる。本発明においてはこれらの光学可変材料を1種類又は2種類以上を用いてもよい。
パール顔料としては、魚介類から抽出したパールエッセンス、塩基性炭酸鉛、酸性ヒ酸鉛、酸塩化ビスマス、雲母を金属酸化物で被覆したもの等を挙げることができ、安全性の見地から雲母を金属酸化物で被覆したものが好ましい。ここで、金属酸化物としては、その光沢性および屈折率から酸化チタン、酸化鉄が好ましくは利用される。また、パール顔料は、それをさらに顔料、染料等で着色したものであってもよい。
偏光インキおよび液晶インキとは、偏光コレステリック高分子液晶顔料とバインダーおよび分散剤等を混合したインキを意味するものである。偏光コレステリック高分子液晶顔料は、支持体に架橋性液晶ポリオルガノシロキサンと重合開始剤の混合溶液を剪断力などにより配向させながら塗布し、その後紫外線照射や加熱により架橋させ、架橋した液晶層を支持体から剥離し、ミル等で粉砕することによって得ることができる。
再帰反射性インキとは、ガラスビーズなど反射鏡となる粒子をバインダーに分散させたインキである。このようなインキとしては、雲母やアルミニウム粉体、着色パール顔料などその他の顔料素材と混ぜて使用してもよい。
(ii)蛍光画像形成層
蛍光画像形成層は、紫外線を吸収することにより、蛍光を発する蛍光材料によって画像が形成されたものである。蛍光材料としては、紫外線を吸収することにより所望の波長の蛍光を発することができるものであれば特に限定されるものではない。蛍光材料は少なくとも1種類が用いられるものであるが、本工程においては発光する蛍光の波長が異なる複数の蛍光材料が用いられることが好ましく、特に赤、緑、青の各色を発色する蛍光材料が用いられることが好ましい。これにより画像形成層に蛍光でフルカラーの画像を形成することが可能になるからである。
本発明に用いられる蛍光材料としては、例えば、有機蛍光色素および無機蛍光色素を挙げることができる。有機蛍光色素としては、例えば、有機蛍光色素として、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、フルオレセイン、エオシン等の色素、アントラセン等のベンゼン環を持つ化合物などが挙げられる。具体的には可視光で無色の蛍光染料としては、EB−501(三井化学(株)製、発光色:青色)、EG−302(三井化学(株)製、発光色:黄緑色)、EG−307(三井化学(株)製、発光色:緑色)、ER−120(三井化学(株)製、発光色:赤色)、ER−122(三井化学(株)製、発光色:赤色)、蛍光増白剤と呼ばれるユビテックスOB(チバスペシャルティケミカルズ社製、発光色:青色)、ユーロピウム−テノイルトリフルオロアセトンキレート(シンロイヒ(株)、赤橙色)等を挙げることができる。
無機蛍光色素としては、無機蛍光色素としては、Ca、Ba、Mg、Sr、などの酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩のなどの結晶を主成分とし、Eu、Mn、Pb、Fe、Mn、Zn、Ag、Cuなどの金属元素または希土類元素をドープ剤として添加した顔料を用いることができる。具体的には可視光下では無色から白色のG−300シリーズ(SrAl:Eu,Dy 根本特殊化学製 発光色:緑)やV−300シリーズ(CaAl4:Eu,Nd 根本特殊化学製 発光色:紫)等を挙げることができる。
蛍光材料としては、たとえば、チオフェン系蛍光色素、β−キノフタロン系蛍光色素、クマリン系蛍光色素、ビススチリルベンゼン系蛍光色素、オキサゾール系蛍光色素、およびユーロピウム錯体系蛍光色素等を挙げることができる。これらの蛍光色素の具体例としては、例えば特開2004−122690号公報に記載されたものを例示することができる。
蛍光画像形成層には上記蛍光材料以外に、通常、バインダー樹脂が含まれることが好ましい。本発明に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。本発明においてはこれらのいずれの樹脂であっても好適に用いることができる。
2)プライマー層
本発明の好ましい態様では、体積型ホログラム転写体を構成する複数の層の接着性を向上させる為に、プライマー層を備えることができる。プライマー層は、例えば、剥離性保護層と体積型ホログラム層との間に、体積型ホログラム層と接着剤層との間に、形成することができる。
プライマー層は、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルあるいはアクリル酸等との共重合体、エポキシ樹脂等を材料として形成することができる。
3)バリア層
本発明の好ましい態様では、バリア層を形成させることができる。体積型ホログラム層中の感光材料が、他の層へ低分子量成分の移行が起こり、体積型ホログラムの再生波長が青側(短波長側)に移行してしまうということが生じうる。バリア層はこのような問題を解消することができるものとして使用される。本発明にあっては、バリア層は、体積型ホログラム層と接着剤層の間に形成することが好ましい。
バリア層に用いられる材料としては、所望のバリア性を発現できる材料であれば特に限定されるものではないが、通常、透明性有機樹脂材料が用いられる。透明性有機樹脂材料としては、例えば、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
4)紫外線防止層
本発明の好ましい態様では、紫外線防止層を備えなることができ、好ましくは、画像形成層の上に形成されることが好ましい。紫外線防止層に用いられる材料としては、例えば、有機系紫外線吸収剤、反応性紫外線吸収剤、および無機系紫外線吸収剤を挙げることができる。有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンソフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系、フェニルトリアジン系、シュウ酸アニリド系、マロン酸エステル系、シアノアクリレート系、等の紫外線吸収剤が挙げられる。反応性紫外線吸収剤の例としては、上記した有機系紫外線吸収剤に、例えばビニル基、アクリロイル基、メタクロイル基等の付加重合性二重結合、或いはアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを樹脂バインダーに反応固定して使用する。反応固定する方法として従来公知のモノマー、オリゴマー、または反応性重合体の樹脂成分と上記のような付加重合性二重結合を有する反応性紫外線吸収剤とをラジカル重合することにより共重合体とすることができる。また、反応性紫外線吸収剤が水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基を有する場合には、上記の反応性基と反応性を有する熱可塑性樹脂を使用し、必要に応じて触媒を用いて、熱等によって反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂に反応固定することができる。また、無機系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄の微粒子が挙げられ、適時バインダーに分散して使用することができる。
本発明の内容を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明の内容は下記の実施例により限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
保持材の作製
基本板Aとしてプラスチック製の下敷き(イカリボシ社製 M−13)を8.5cm×12cmに切り出す。さらに、粘着シート(コクヨ社製 ひっつきシート:タ−372T)を8.5cm×10cmの大きさに切ったものを、切り出したプラスチック製下敷きの端部に両面テープ(ニチバン社製 ナイスタック NWBB−10)で保持し、粘着層aを形成した保持材1を作製した。
体積型ホログラム転写体の作製
1)第1積層体:PETフィルム/体積型ホログラム層/表面離型処理PETフィルム PETフィルム(ルミラーT60(50μm):東レ(株)製)を準備し、ホログラム形成材料として、下記組成からなる体積型ホログラム記録材料を、乾燥膜厚7μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、塗工面に表面離型処理PETフィルム(「SP−PET」50μm、トーセロ(株)製)をラミネートし、第1積層体を作製した。
<体積型ホログラム記録材料の組成>
・バインダー樹脂(ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000))
50重量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシルメチル−2,2’−チアカルボシアニン沃素塩 0.5重量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 6重量部
・2,2−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン
80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 80重量部
・フッ素系微粒子 8重量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比) 200重量部
2)第2積層体:PETフィルム/剥離性保護層
PETフィルム(ルミラーT60(50μm);東レ(株)製)を準備し、剥離性保護層として、下記組成からなる材料を、乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、第2積層体を作製した。
<保護層形成用材料の組成>
・ポリメチルメタクリレート樹脂(分子量;35000) 97重量部
・ポリエチレンワックス(分子量;10000、平均粒径;5μm) 3重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)) 400重量部
3)体積型ホログラムの記録
第1積層体に波長;532nmのレーザー光を用いてリップマンホログラムを撮影し記録した。記録後、この積層体を100℃の雰囲気中で10分間加熱し、加熱後、表面離型処理済PETフィルムを剥離して露出させた体積型ホログラム記録用材料の層に、第2積層体(PETフィルム/剥離性保護層)の剥離性保護層側が接するようにして重ね、ニップした80℃の熱ローラー対の間を通過させて、第1積層体と第2積層体とが重なった第3の積層体を得た後、高圧水銀灯を用いて、全面に照射線量;2500mJ/cmの紫外線を照射して、体積型ホログラム記録用材料の層の定着を行った。
4)接着剤層の塗工
上記で作製した第3の積層体において、第1積層体のPETフィルムを剥離し体積型ホログラム層上に下記組成からなる材料を、乾燥膜厚4μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、接着剤層を形成した。これにより、体積型ホログラム転写体を作製した。
<接着剤層形成用材料の組成>
・ポリエステル樹脂(ハ゛イロン550:TOYOBO製Tg−15℃:分子量28000) 20重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)) 80重量部
5)垂直切れ込み部の作製
上記によって作製した体積型ホログラム転写体のヒートシール面から抜き加工機(OPM−HL300−S 恩田製作所製)を用いフイルムの長尺方向に対して垂直方向全体に垂直切れ込みを入れた。垂直切れ込みの形態としてフィルムの長尺方向に対して垂直方向全体に0.8mm間隔で18本の切れ込みを入れたものを作製した。
冊子体への転写
厚み125μm、秤量102g/mであり、サイズが17cm×12cmの偽造防止用紙を複数枚重ねて、中央部分を綴じた冊子体を用意した。その冊子体を広げた中の1頁の下に上記保持材1を挿入して、偽造防止用紙の最初に転写される部分の反対の面を保持材の粘着層部分に保持した。保持材で保持された偽造防止用紙を最表面にした状態で、市販の冊子用ロールラミネーターを用い、上記体積型ホログラム転写体を冊子体の中の偽造防止用紙に転写した。転写温度130℃、転写スピード1m/minであった。
(実施例2)
粘着シートの大きさを8.5cm×1cmの大きさに切ったものを用いた以外は、実施例1と同様に保持材を作製し、粘着層aを持った保持材2とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材2を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例3)
基本板Aの代りに厚み265μm、秤量270g/mの合成紙(基本板B)を用いた。また、粘着シート(3M社製 ポストイット強粘着ノート 657SS−B)を8.5cm×7.5cmに切り出したものを基本板Bに保持した以外は実施例1と同様に保持材を作製し、粘着層bをもった保持材3とした。この場合は8.5cm×1.8cmの部分が粘着層であった。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材3を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例4)
粘着層aの代わりにマイクロ吸盤層のある吸着両面テープ(日東化工製 7786)を8.5cm×12cmに切り出したものを基本板Bに保持した以外は実施例1と同様に保持材を作製し、吸盤層cを持った保持材4とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材4を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例5)
マイクロ吸盤層のある吸着両面テープを8.5cm×0.5cmに切り出したものを用いた以外は、実施例4と同様に保持材を作製し、吸盤層cをもった保持材5とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材5を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例6)
粘着層aの代わりにミクロ吸盤層のある吸着シート(株式会社アクト製 ミューフィットMQ−005)を8.5cm×12cmに切り出したものを基本板Bに保持した以外は実施例1と同様に保持材を作製し、吸盤層dをもつた保持材6とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材6を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例7)
ミクロ吸盤層のある吸着シートの大きさを8.5cm×2cmに切り出したものを用いた以外は、実施例6と同様に保持材を作製し、吸盤層dをもった保持材7とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材7を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例8)
粘着層として粘着シート(3M社製 ポストイット 再生紙ノート 657RP)を用いた以外は、実施例3と同様に保持材を作製し、粘着層eをもった保持材8とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材8を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例9)
粘着層として粘着シート(リンテック社製 SRL−0753B(AS))を用いた以外は、実施例3と同様に保持材を作製し、粘着層fをもった保持材9とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材9を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例10)
粘着層として粘着シート(リンテック社製 SRL−0502(SF))を用いた以外は、実施例3と同様に保持材を作製し、粘着層gをもった保持材10とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材10を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例11)
基本板Aの代りに基本板Cとしてプラスチック製のソフト下敷き(イカリボシ社製 MS34H)を用いた他は、実施例2と同様に保持材を作製し、粘着層aをもった保持材11とした。実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材11を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例12)
粘着層として、Scotch(登録商標)「はってはがせるテープ」(住友3M社製:667)を用いた以外は、実施例2と同様にして保持材を作製し、粘着層hをもった保持材12とした。垂直切れ込み部を作製しなかった以外は、実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1の代わりに保持材12を用いた以外は実施例1と同様に転写した。
(実施例13)
実施例4と同様に基本板B、粘着層cから保持材を作製し保持材13とした。実施例1と同様の冊子体を用意し、その冊子体を広げた中の1頁の下に上記保持材13を挿入して、偽造防止用紙の全ての端部を保持材の粘着層部分に保持した。保持材で保持された偽造防止用紙を最表面にした状態で、市販の冊子用ロールラミネーターを用い、上記体積型ホログラム転写体を冊子体の中の偽造防止用紙に転写した。転写温度130℃、転写スピード1m/minであった。その際に偽造防止用紙の端部でない部分から基材を剥離した。
(実施例14)
実施例3と同様に基本板B、粘着層bを持った保持材14を作製した。この場合は、実施例3と同様、8.5cm×1.8cmの部分が粘着層であった。実施例1と同様の冊子体を用意し、その冊子体を広げた中の1頁の下に上記保持材13を挿入して、偽造防止用紙の1端部を保持材の粘着層部分に保持した。保持材で保持された偽造防止用紙を最表面にした状態で、市販の冊子用ロールラミネーターを用い、上記体積型ホログラム転写体を冊子体の中の偽造防止用紙に転写した。転写温度130℃、転写スピード1m/minであった。その際に偽造防止用紙の端部でない部分から基材を剥離し始め、保持材で保持した偽造防止用紙の端部に位置する基材を最後に剥離した。
(実施例15)
実施例4と同様に基本板B、粘着層cから保持材を作製し保持材15とした。実施例1と同様の偽造防止用紙を、冊子状に綴じずに単体で用意する。1枚の偽造防止用紙の全ての端部を保持材の粘着層部分に保持した。保持材で保持された偽造防止用紙を最表面にした状態で、市販の冊子用ロールラミネーターを用い、上記体積型ホログラム転写体を冊子体の中の偽造防止用紙に転写した。転写温度130℃、転写スピード1m/minであった。
(実施例16)
実施例8と同様に基本板B、粘着層eから保持材を作製し保持材16とした。ただし、粘着層は保持材の全端部にのみ配置するようにし、中央部には設けなかった。保持材内の粘着層の割合は20%であった。実施例15と同様の単体の偽造防止用紙を用意し、1枚の偽造防止用紙の全ての端部を保持材の粘着層部分に保持した。保持材で保持された偽造防止用紙を最表面にした状態で、市販の冊子用ロールラミネーターを用い、上記体積型ホログラム転写体を冊子体の中の偽造防止用紙に転写した。転写温度130℃、転写スピード1m/minであった。
(比較例1)
実施例1と同様の体積型ホログラム転写体を用い、保持材1を用いない以外は実施例1と同様に転写した。
評価試験
実施例及び比較例について以下の評価試験を行った。
評価試験1:転写後の記録媒体の破損確認試験
転写結果について、下記の評価基準に従って評価し、その結果を表1に表した。
評価基準
評価◎:紙の破れ、破損、折れ曲がり、湾曲は一切存在しなかった。
評価○:紙の一部に、高さ1mm未満程度の湾曲又は1mm未満程度の折れが、生じたが、印刷物として問題は無かった。
評価○:紙の一部に、高さ1mm以上3mm以下程度の湾曲又は1mm以上3mm以下程度の折れが生じたが、実用上問題は無かった。
評価×:紙の破れ、破損、折れ曲がり、湾曲が存在し、印刷物として使用出来なかった。
評価試験2:粘着力又は吸着力評価
実施例で用いた保持材を幅2.5cm、長さ10cmに切り出し、厚さ1mmのアクリル板の上に固定する。固定には、両面テープ(ニチバン社製 ナイスタック NWBB−10)を用いた。幅2.5cm、長さ25cmに切り出したPETフィルム(ルミラーT60(50μm):東レ(株)製)を前述の粘着・吸着表面に貼り付ける。インストロン社製の万能材料試験機5565を用い、アクリル板を垂直に固定してPETフィルムを180度引き剥がしを行った際の剥離力(N/25mm)を粘着力・吸着力とした。180度引き剥がしのスピードは、300mm/minであり、剥離範囲10mm〜30mmの間の平均荷重をとった。評価試験2の結果は、表2に表した通りであった。
評価試験3:剛性評価
実施例で用いた基本板の剛性(曲げに対する寸法変化)を測定するために、幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、厚さ1mmのアクリル板の上に幅2.5cm、長さ3cmの範囲を固定する。固定には、両面テープ(ニチバン社製ナイスタック NWBB−10)を用いた。さらに、固定されていない幅2.5cm、長さ2cmの部分の先端に、幅2.5cm、長さ5cmに切り出したPETフィルム(ルミラーT60(50μm):東レ(株)製)を貼り付けた。固定には、両面テープ(ニチバン社製 ナイスタック NWBB−10)を用いた。インストロン社製の万能材料試験機5565を用い、アクリル板を水平に固定してPETフィルムを90度引っ張る試験を行った。固定していない基本板、柔軟性板が変形して先端が0mmから5mmまで持ち上がるのに必要な力(N)をとった。
引き上げスピードは、300mm/minであった。評価試験3の結果は、表3に表した通りであった。
Figure 0005303946
Figure 0005303946
Figure 0005303946
図1は、従来の体積型ホログラムの転写方法の概略図である。 図2は、従来の体積型ホログラムの転写方法によって、転写された直後の記録媒体の破損状態を示すものである。 図3は、本発明の体積型ホログラムの転写方法の概略図である。 図4は、本発明により転写部位から基材のみが剥離する状態の概略図である。 図5は、本発明により転写部位から基材のみが剥離する状態の概略図である。

Claims (5)

  1. 記録媒体に、体積型ホログラム層を形成させる転写方法であって、
    前記記録媒体と、体積型ホログラム転写体と、保持材とを用意し、
    前記体積型ホログラム転写体が、基材と、該基材に、剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層とをこれらの順で備えてなり、
    前記保持材が前記記録媒体を保持するものであり、
    前記保持材が0.05mm以上10mm以下の厚みを有し、
    前記保持材を幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、厚さ1mmのアクリル板の上に両面テープで前記保持材の幅2.5cm、長さ3cmの範囲を固定し、前記保持材における固定されていない幅2.5cm、長さ2cmの端部の先端に、幅2.5cm、長さ5cmのPETフィルムを両面テープで貼り付けた状態で、前記アクリル板を水平に固定して前記PETフィルムを引き上げスピード300mm/minで90度に引っ張る試験によって前記保持材の剛性評価を行った場合、前記保持材は、前記端部を変形させて5mm持ち上げるのに必要な力が10N以上となる剛性を有するものであり、
    前記保持材が前記保持材の表面に粘着層または吸盤層を有し、
    前記粘着層または吸盤層が、前記保持材の表面の全表面積の4%以上20%以下の面積で、かつ前記保持材の端部に形成されており、
    前記記録媒体の被転写面と反対の面に保持材を付与し、
    前記記録媒体の被転写面に、前記体積型ホログラム転写体を前記接着剤層の面で付着させ、
    前記剥離性保護層と、前記体積型ホログラム層と、及び前記接着剤層を備えてなる転写部位を転写し、
    前記基材のみを剥離することを含んでなる、転写方法。
  2. 前記記録媒体が、秤量80g/m以上130g/m以下の紙である、請求項1に記載の転写方法。
  3. 前記記録媒体から前記保持材を分離することをさらに含んでなる、請求項1または2に記載の転写方法。
  4. 記録媒体に、体積型ホログラム転写体を用いて、体積型ホログラム層を形成させる転写装置であって、
    前記体積型ホログラム転写体が、基材と、該基材に、剥離性保護層と、体積型ホログラム層と、接着剤層とをこれらの順で備えてなり、
    前記記録媒体の被転写面と反対の面に付与され、かつ、前記記録媒体を保持する保持材と、
    前記記録媒体の被転写面に、前記体積型ホログラム転写体を接着剤層の面で付着させ、前記剥離性保護層と、前記体積型ホログラム層と、及び前記接着剤層を備えてなる転写部位を転写し、かつ、前記基材のみを剥離する転写部とを備えてなり、
    前記保持材が0.05mm以上10mm以下の厚みを有し、
    前記保持材を幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、厚さ1mmのアクリル板の上に両面テープで前記保持材の幅2.5cm、長さ3cmの範囲を固定し、前記保持材における固定されていない幅2.5cm、長さ2cmの端部の先端に、幅2.5cm、長さ5cmのPETフィルムを両面テープで貼り付けた状態で、前記アクリル板を水平に固定して前記PETフィルムを引き上げスピード300mm/minで90度に引っ張る試験によって前記保持材の剛性評価を行った場合、前記保持材は、前記端部を変形させて5mm持ち上げるのに必要な力が10N以上となる剛性を有するものであり、
    前記保持材が前記保持材の表面に粘着層または吸盤層を有し、
    前記粘着層または吸盤層が、前記保持材の表面の全表面積の4%以上20%以下の面積で、かつ前記保持材の端部に形成されている、転写装置。
  5. 前記転写後に、前記記録媒体から前記保持材を分離する分離部をさらに備えてなる、請求項4に記載の転写装置。
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