JP5303234B2 - 高密度カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法 - Google Patents

高密度カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高密度カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法に関するものである。
従来から、カーボンナノチューブ(CNT)を溶媒に撹拌、分散させ、紙等の多孔質体でフィルタリングして、紙状にしたCNT集合体(CNTペーパー)は、燃料電池の電極等の電極材として用いられている。また、透過性が現れるまで超薄膜化したCNT集合体は、ガラス基板上に形成することで透明電極となり、ディスプレイ用途などへの応用が期待されている。
例えば、特許文献1には、電気二重層キャパシタ用分極性材料として、カーボンナノチューブを用いた試みが示されている。しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、樹脂成分であるバインダーを用いているため、容量特性の良い電極が得られないといった問題点があった。
これを改善するために、特許文献2に示すように、導電性ファイバー、あるいは導電性チューブを、バインダーや導電補助材料などの材料を用いず、電極基板にその長手方向を略平行に付着接合させる提案もなされている。しかし、この特許文献2の発明は、導電性ファイバーあるいは導電性チューブを電気泳動法などの電着法を用いて電極基板に付着接合させるというものであり、電極基板に付着接合させるときに、導電性ファイバーあるいは導電性チューブを有機溶媒に分散させた溶液を超音波で撹拌しながら行うなど、複雑で手間のかかるものであった。
そこで、本出願人は上記の問題点を解決すべく、特許文献3に示すような発明を完成させた。すなわち、特許文献3に示した電気二重層キャパシタ用電極は、カーボンナノチューブを抄紙成型したシートが、集電体を構成し表面に凹凸部のある基材と、その凹凸部により一体化されていることを特徴とするものである。
また、カーボンナノチューブを抄紙成型したシートが、集電体を構成するエッチング箔の表面に形成された凹凸部によってエッチング箔と一体化されていることを特徴とするものである。また、基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブが、エッチング箔の表面に形成された凹凸部によって該エッチング箔と一体化されていることを特徴とするものである。
特開2005−136020号公報 特開2006−222175号公報 特願2008−086002号公報 Science Vol.306,p.1362-1364(2004) Chemical Physics Letters 403,p.320-323(2005) Journal of Physical Chemistry B2004,108,p.18395-18397
しかしながら、従来の比表面積が500m2/g以下のカーボンナノチューブは、強固なファンデルワールス力によりバンドル(束)を形成し、ミクロ凝集しているため、高分散化が困難であり、透過性が現れるまで超薄膜化したCNT集合体を得ることは困難であった。また、特許文献3に示された電気二重層キャパシタ用電極よりさらに電気的特性に優れた電極を得ることができる電極材料の開発が切望されていた。
本発明は、上述したような従来技術の課題を解決するために提案されたものであって、その目的は、容量特性に優れた電極等を得ることができる高密度カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、電気二重層キャパシタ用分極性材料としてカーボンナノチューブを用いた場合に、優れた容量特性を得ることができる電極材料を得るべく検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。特に、従来の比表面積が500m2/g以下のカーボンナノチューブは、強固なファンデルワールス力によりバンドル(束)を形成し、ミクロ凝集しているため、高分散化が困難であったが、比表面積が600〜2600m2/gと大きいカーボンナノチューブは、ファンデルワールス力によるバンドル(束)形成、ミクロ凝集がほとんどないため、高分散化が期待できる点に着目したものである。なお、本明細書中において、比表面積が600〜2600m2/gのカーボンナノチューブをSGCNTと記す。
(高密度カーボンナノチューブ集合体の製造方法)
所定量の比表面積が600〜2600m2/gであるCNT(単層SGCNT又は多層SGCNT)を、所定量のイソプロピルアルコール中に混ぜ、ホモジナイザーにより撹拌することにより分散溶液を得る。この溶液を所定の金属チャンバーに導入し、100〜280MPaの超高圧を印加する。この超高圧処理によって得られた高分散溶液を、PTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過し、抄紙成型によりシート化し、このシートをロールプレス、垂直プレス等によってさらに0.01〜100t/cm2のプレス圧力で圧延して、高密度化したシート(高密度SGCNT集合体)を得る。
ここで、本明細書において、「高密度SGCNT集合体」とは、SGCNTが高分散されて堆積した、比表面積が600〜2600m2/g、密度が0.5〜1.5g/cm3であるSGCNT集合体をいい、「高密度SGCNTシート」とは、この高密度SGCNT集合体をシート化したものをいう。
(カーボンナノチューブ)
本発明に用いられるカーボンナノチューブとしては、比表面積が600〜2600m2/gのものが好ましい。このように大きな比表面積は、電気化学キャパシタの静電容量をより高いものとし、且つエネルギー密度をより高いものとするために望ましい。カーボンナノチューブは、単層でも、二層でも、三層以上の多層であってもよく、それらが混合していてもよい。
従来、電気化学キャパシタの電極に使用されていたカーボンナノチューブの比表面積は高々500m2/g程度であったが、本発明では比表面積が600m2/g以上の非常に大きなカーボンナノチューブを用いる。カーボンナノチューブのこのような大きな比表面積は、カーボンナノチューブ間にバンドルが形成されていないものを使用するか、あるいは形成されていても極めて少ないものを選択的に使用することにより達成することができる。
この場合、バンドルのない、あるいはバンドルが極めて少ないカーボンナノチューブは、例えば、上記の非特許文献1や非特許文献2等に記載されている方法を用いることにより得ることができる。また、比表面積が数百m2/g程度の市販されているHiPco(登録商標、Carbon Nanotechnologies社製)に対し、例えば、非特許文献3に記載されているような、バンドル構造を解放するような手段を施す方法を用いて得ることもできる。なお、本発明に用いるSGCNTは、単層の場合、直径が2〜4nm、長さが0.1〜10mm、純度が80〜99.98%のものが好ましい。二層以上の場合、直径が4〜10nm、長さが0.1〜10mm、純度が80〜99.98%のものが好ましい。
(密度)
多層SGCNTを用いて上記の方法により得られる高密度SGCNT集合体の密度は、0.5〜1.2g/cm3であることが好ましく、単層SGCNTを用いて上記の方法により得られる高密度SGCNT集合体の密度は、0.7〜1.5g/cm3であることが好ましい。それぞれ、上記の範囲内のものを電極材料として用いると、良好な電気的特性を有する電気二重層キャパシタ用電極を得ることができる。
(超高圧処理)
超高圧処理は、上記のようにして得られた分散溶液を所定の金属チャンバーに導入し、100〜280MPaの超高圧を印加する。なお、金属チャンバーとしては、スリット式チャンバー、ボール衝突チャンバー等を用いることができる。
上記のようにして超高圧を印加することにより、分散溶液と金属チャンバーの壁面、分散溶液と金属チャンバー内に設置されたスリット、あるいは、分散溶液と金属チャンバー内に導入されたボール等が高エネルギーで衝突し、これによりカーボンナノチューブのバンドル(束)やマクロ凝集がほぐれ、より高分散する。また、超高圧を印加することにより、溶液同士も高エネルギーで混じり合うため、これによってもカーボンナノチューブのバンドル(束)やマクロ凝集がほぐれ、より高分散する。
(シート化処理)
シート化処理は、上記の超高圧処理によって得られた高分散溶液を、PTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過し、抄紙成型してシートを得た後、このシートを60℃で、3時間減圧乾燥を行う。
(圧延処理)
圧延処理は、2本のロールの間を通して圧延するロールプレスや、上下から平行に圧力を加える垂直プレス等を用いて行い、プレスする圧力は0.01〜100t/cm2が好ましい。その理由は、圧力が弱すぎると高密度化が十分ではなく、高すぎると、CNTシートに欠陥ができるためである。
本発明によれば、容量特性に優れた電極等を得ることができる高密度カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法を提供することができる。
(実施例1)
SGCNT(直径3nm、長さ0.5〜1mm、800m2/g)を約500mg計り取り、2Lのイソプロピルアルコール中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、SGCNT/イソプロピルアルコール分散溶液を作製した。この溶液を所定の金属チャンバーに導入し、200MPaの超高圧を印加し、得られた高分散溶液をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過し、抄紙成型によりシートを得た。このシートを60℃、減圧乾燥した。このシートを、ロールプレスを用いて、プレス圧力10t/cm2で圧延し、高密度化したシート(高密度SGCNT集合体)を作製した。
(実施例2)
超高圧処理の条件を220MPaとした以外は、上記実施例1と同様にして高密度化したシートを作製した。
(実施例3)
超高圧処理の条件を250MPaとした以外は、上記実施例1と同様にして高密度化したシートを作製した。
(実施例4)
超高圧処理の条件を280MPaとした以外は、上記実施例1と同様にして高密度化したシートを作製した。
(比較例1)
圧延処理を行わなかった以外は、上記実施例1と同様にしてシート(SGCNT集合体)を作製した。
(比較例2)
圧延処理を行わなかった以外は、上記実施例2と同様にしてシートを作製した。
(比較例3)
圧延処理を行わなかった以外は、上記実施例3と同様にしてシートを作製した。
(比較例4)
圧延処理を行わなかった以外は、上記実施例4と同様にしてシートを作製した。
(従来例1)
上記実施例1と同様に、SGCNT(直径3nm、長さ0.5〜1mm、800m2/g)を約500mg計り取り、2Lのイソプロピルアルコール中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、SGCNT/イソプロピルアルコール分散溶液を作製した。この分散溶液をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過し、抄紙成型によりシートを得た。このシートを60℃、減圧乾燥した。このシートを、ロールプレスを用いて、プレス圧力10t/cm2で圧延し、シート(SGCNT集合体)を作製した。
(従来例2)
上記圧延処理の条件を20t/cm2とした以外は、上記従来例1と同様にしてシートを作製した。
(従来例3)
上記圧延処理を行わず、上記従来例1と同様にしてシートを作製した。
(従来例4)
上記圧延処理を行わず、ホモジナイザー処理の時間を10分とした以外は、上記従来例1と同様にしてシートを作製した。
(試験結果)
上記のようにして作製した従来例1及び実施例3の各シートについて、その表面形態をSEM観察により確認したところ、それぞれ図1、図2に示すような結果が得られた。これらのSEM写真から明らかなように、実施例3においては、CNT同士のマクロ凝集がほぐれ、高分散していることが確認された。
また、上記の実施例、比較例及び従来例の各シートについて、密度、電気伝導度、容量密度、及び電解液含浸後の密度を測定したところ、表1に示すような結果が得られた。
なお、容量密度は、実施例、比較例及び従来例の各シートにアルミニウム集電体を貼り付けて電極とし、ラミネートセルを作製して充放電試験を行い、容量密度を算出した。電解液には1Mテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート・プロピレンカーボネート溶液を用いた。
また、電気伝導度は、実施例、比較例及び従来例の各シートを、1cm×1cmの大きさにカットし、四探針法により測定した。さらに、電解液含浸後の密度は、実施例、比較例及び従来例の各シートを、1Mテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート・プロピレンカーボネート溶液に真空下(−100kPa)で6時間浸漬し、含浸処理を行った後、該溶液から取り出し、密度を測定した。
表1から明らかなように、超高圧処理及び圧延処理の両方を実施した実施例1〜実施例4では、超高圧処理のみを実施した比較例1〜比較例4と比べて、密度、電気伝導度、容量密度のいずれにおいても極めて良好な結果が得られた。これは、圧延処理により、より高密度化が図れたためであると考えられる。このことは、圧延処理を行った従来例1・2の方が、圧延処理を行わなかった従来例3・4より、密度、電気伝導度、容量密度のいずれにおいても良好な結果が得られたことからも明らかである。
また、実施例1〜実施例4は、圧延処理のみを実施した従来例1・2と比べて、密度、容量密度のいずれにおいても良好な結果が得られた。また、超高圧処理のみを実施した比較例1〜比較例4は、超高圧処理及び圧延処理のいずれも実施しなかった従来例3・4と比べて、密度、電気伝導度、容量密度のいずれにおいても良好な結果が得られた。これは、超高圧処理により、カーボンナノチューブのバンドル(束)やマクロ凝集がほぐれ、分散性が高まったためであると考えられる。
また、電解液含浸による密度の低下は、従来例1においては、電解液含浸前の44.4%と大きく低下したのに対し、実施例3においては、電解液含浸前の66.7%に低下したに過ぎなかった。このことから、実施例3においては、電解液含浸後も高密度が維持され、高い容量密度が得られることが分かった。
従来例1の表面形態を示す図面代用写真。 実施例3の表面形態を示す図面代用写真。

Claims (6)

  1. カーボンナノチューブの分散溶液に所定の圧力を印加してカーボンナノチューブが高分散され、この分散溶液をろ過、乾燥したシートを圧延してカーボンナノチューブが堆積した、比表面積が600〜2600m/g、密度が0.5〜1.5g/cmであることを特徴とする高密度カーボンナノチューブ集合体。
  2. 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の高密度カーボンナノチューブ集合体。
  3. 密度が0.7〜1.5g/cmであることを特徴とする請求項2に記載の高密度カーボンナノチューブ集合体。
  4. 前記カーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の高密度カーボンナノチューブ集合体。
  5. 密度が0.5〜1.2g/cmであることを特徴とする請求項4に記載の高密度カーボンナノチューブ集合体。
  6. 所定量のカーボンナノチューブを所定量のイソプロピルアルコール中に混ぜ、撹拌することにより分散溶液を得た後、その溶液を100〜280MPaで超高圧処理し、得られた高分散溶液をろ過、乾燥することによりシート化し、このシートをさらに0.01〜100t/cmのプレス圧力で圧延して、比表面積が600〜2600m/g、密度が0.5〜1.5g/cmである高密度化したカーボンナノチューブ集合体を得ることを特徴とする高密度カーボンナノチューブ集合体の製造方法。
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