JP5302721B2 - 固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の表面導電化処理方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の表面導電化処理方法 Download PDF

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Description

本発明は固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の表面導電化処理方法に関するものである。
固体高分子形燃料電池は、イオン伝導性を有する高分子膜を電解質として用いる燃料電池である。固体高分子形燃料電池は、「単セル」と呼ばれる基本単位を複数積層して直列接続し高電圧を発生させる構造を有している。
「単セル」は、高分子電解質膜を中にしてその両側を白金などから成る触媒膜で挟み込み、該触媒膜の両外側に、炭素繊維から成る集電体(以下、「カーボンペーパー」という)を介在させてセパレータ用基材を一体化して構成され、一方のカーボンペーパーとセパレータ用基材との間には水素ガスの通路が形成され、他方のカーボンペーパーとセパレータ用基材との間には空気(酸素)の通路が形成されて、発電された電流が前記カーボンペーパーからセパレータ用基材へ流れて取り出されるものである。
したがって、エネルギー効率の観点から、カーボンペーパーとセパレータ用基材との接触抵抗は低く保つことが望ましい。なお、カーボンペーパーとセパレータ用基材との接触抵抗は、主にセパレータ用基材の接触面における物性に依存するものである。
該固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の材料に、従来は炭素系材料が多く使用されていたが、脆性の問題から厚さを薄くできず、燃料電池システムのコンパクト化が困難であったことから、近年、割れにくい炭素系材料からなるセパレータ用基材が開発されたが、製造コストが高価となる問題があった。
また、前記炭素系材料の他に、ステンレス、チタン、チタン合金等からなる金属材料があって、該金属材料は、炭素系材料の問題点であった脆性問題を解決してセパレータ用基材の厚さを薄くすることができ、燃料電池システムのコンパクト化を図ることができるが、前記カーボンペーパーとの接触抵抗が低いこと、および耐食性に優れていること、が課題として残されている。
一般に、当該燃料電池の運転環境下において接触抵抗の低い金属(例えば、銅)は耐食性で劣る傾向がある。これに対し、貴金属類は接触抵抗が低く、かつ耐食性にも優れるという特性を有するが、金等の高価な貴金属を使用することは、経済性の観点から問題があった。
そこで近年、高価な貴金属の使用量を低減するか、あるいは用いずに、セパレータ用基材の表面とカーボンペーパーとの接触抵抗を低減するための方法が種々提案されている。
貴金属の使用量を低減する方法としては、セパレータ用基材となる耐食性金属の表面に貴金属の薄膜を形成させた上で、ショットピーニングにより、貴金属を母材金属へ圧させる技術が開示されている(例えば特許文献1)。しかし、これらの方法は、セパレータ用基材となるステンレスまたはチタン表面に、導電性能を向上するために金メッキなどの高価な貴金属層(皮膜)を形成する表面処理が必要であるため、経済性の観点から十分な問題解決とはなっていない実情がある。
経済性の観点からは、安価な耐食性金属を用いたステンレス鋼製、あるいはチタンおよびチタン合金製のセパレータ用基材を採用することが最適であるが、この場合、セパレータ用基材の表面に形成されている不動態膜や不純物に起因して、セパレータ用基材とカーボンペーパーとの接触抵抗が大きくなり、燃料電池のエネルギー効率が大幅に低下することが新たな問題となる。
前記金属製のセパレータ用基材の表面に形成されている不動態膜や不純物に起因する接触抵抗増大の問題を解消する方法として、セパレータ用基材の表面にセパレータ用基材より高硬度の核粒子に高耐食性かつ対カーボン低接触抵抗性の金属をコーティングした固体プレーティング粒子をブラストして、固体プレーティング材にコーティングされた金属をセパレータ用基材の表層に強制的に打ち込む技術(例えば、特許文献2)が開示されている。しかし、当該方法では、同一の固体プレーティング粒子を用いて、繰り返しブラストするため、経時的に固体プレーティング粒子の表面の金属コーティング層が薄くなり、セパレータ用基材の表層に打ち込まれる前記金属量が低下し、当該方法によるセパレータ用基材の表面処理品質が均一にならない問題があった。また、硬質な導電性粒子をブラスト法などによって機械的に打ち込む方法では、セパレータ用基材が歪み変形する可能性があり、セパレータの平坦性が低下する問題もあった。
また、前記金属製のセパレータ用基材の表面に形成される不動態皮膜あるいは不純物に起因する接触抵抗増大の問題を解消する別の方法として、セパレータ用基材に用いる、例
えばステンレス鋼を熱処理することにより、導電性能を有する炭化物系金属介在物を内部より表面に析出させ、当該析出した介在物を電気の通り道として活用する技術が開示されている(例えば、特許文献3)。しかし、前記熱処理による導電性能を向上させる方法では、長時間の処理時間が必要となり、処理工程も複雑となる問題があった。
特開2005−174624号公報 特開2001−250565号公報 特開2003−193206号公報
本発明は、前記問題を解決し、特にステンレス鋼、チタン、チタン合金からなる固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の表面に導電性能を向上させる方法として、複雑な工程を必要とせず、ブラスト工程においてセパレータ用基材の歪みが生じる恐れがなく、低コストで品質性能が安定したセパレータ用基材が製造できる、セパレータ用基材の導電化処理方法を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の導電化処理方法は、ステンレス鋼、チタン、チタン合金の何れかからなる固体高分子型燃料電池の板状のセパレータ用基材の表面に、平均粒子径1〜10μmのCr B、CrB 2、 VB、TaB 2、 WB、Cr 2、 WC、VC、TaC、Mo C、Cr N、VN、TaNのうち少なくとも1種類以上の化合物からなる導電性化合物粒子とエタノールまたは水とを混合して調製した懸濁液をスプレー塗布して乾燥させ、導電性化合物粒子コート層を形成する工程と、該導電性化合物粒子コート層に、平均粒子径50〜200μmのブラスト粒子を、ブラスト粒子速度を10〜30m/secとし、またはブラストエアー圧力を0.01〜0.1MPaとして衝突させて前記基材表面に塗布された導電性化合物粒子をセパレータ用基材の内部方向に打ち込んで固着させる工程と、前記工程でセパレータ用基材に固着されなかった導電性化合物粒子およびセパレータ用基材の表面の不純物を洗浄除去する工程を有することを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、前記請求項1に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の導電化処理方法において、前記導電性化合物粒子コート層を形成するためにスプレー塗布した懸濁液に混合調製した導電性化合物粒子の全質量に対し、該導電性化合物粒子コート層にブラスト粒子を衝突させて導電性化合物粒子コート層内の導電性化合物粒子をセパレータ用基材の内部方向に打ち込み固着された質量の割合を30%以上にしたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、前記請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の導電化処理方法により製造された固体高分子型燃料電池の板状のセパレータ用基材であって、該セパレータ用基材の表面の算術平均粗さ(Ra)0.3μm〜0.5μm、十点平均粗さ(Rz)1.5μm〜4.0μmであり、該セパレータ用基材の四隅のうち、1隅を原点Oとし、原点Oからセパレータ用基材の圧延方向にある角をL、原点Oからセパレータ用基材の圧延垂直方向にある角をC、原点Oから対角線方向にある角をXとし、OL間の線分の長さをLL、OC線分の長さをLC、OX間の長さをLXとし、直線OLと加工品の厚さ方向中心面までの最大ひずみ高さをHL1、直線CXとのそれをHL2、直線OCとのそれをHC1、直線LXとのそれをHC2、直線OXとのそれをHXC としたとき、[式1]〜[式5]で定義されるそり率WL1、WL2、WC1、WC2、WXCの各値が0.015以下であることを特徴とするものである。
Figure 0005302721
本発明に係る固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の導電化処理方法は、ステンレス鋼、チタン、チタン合金の何れかからなる固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の表面に、予め平均粒子径1〜10μmの導電性化合物粒子とエタノールまたは水とを混合して調製した懸濁液をスプレー塗布して乾燥させて導電性化合物粒子コート層を形成し、該導電性化合物粒子コート層に、平均粒子径が50〜200μmのブラスト粒子を噴射して前記導電性化合物粒子コート層を形成する導電性化合物粒子を基材内部方向に打ち込んで固着させてセパレータ用基材の表面に導電性被膜を形成することができる。
前記導電性化合物粒子の最大径を10μmに設定した理由は、エタノールまたは水の溶液と混合調製して懸濁液にしてスプレーガンにてスプレーする際に、スプレーノズルを詰まらせないためのものであり、前記ブラスト粒子の平均粒子径を50〜200μmに設定した理由は、後述のブラストエアー圧力(0.01〜0.1MPa)でセパレータ基材の反り(歪み)の発生を最小限に抑え、且つ優れた導電性能を得ることができる導電性化合物粒子の必要量をセパレータ用基材の表面に打ち込み固着することができるブラスト粒子の粒子径である。
セパレータ表面にスプレー塗布して形成する前記導電性化合物粒子コート層の導電性化合物の量は、前記懸濁液の調製時の導電性粒子とエタノールまたは水の混合比や該懸濁液をスプレー塗布する量を調整することにより制御することができる。従って、本発明によれば、カーボンペーパとの接触抵抗を目標値にするために必要な導電性化合物量を容易に安定的に制御することが可能である。
本発明のブラスト処理は、セパレータ用基材の表面に予め塗布された導電性化合物量を
セパレータ用基材内へ打ち込むハンマーの役割を果たすものであるから、ブラスト粒子の粒子径、材質(または質量)、硬さ、とその衝突速度(または噴射圧力)により決定される衝突エネルギーは、前記ハンマー効果を発揮し得るレベルの衝突エネルギーを有するものであればよく、ブラスト粒子の衝突速度は低速(または噴射圧力は低圧)でよい。その結果、ブラスト装置の損耗が少なく、該ブラスト装置の補修あるいはメンテナンス費用を少なくすることができる。
従来のブラスト加工において採用されているブラスト粒子が被加工物へ衝突する速度は50〜120m/sec前後であるが、本発明のブラスト粒子の被加工部への衝突速度は請求項1に記載の10〜30m/secの低速域で前記導電性化合物粒子をセパレータ用基材の表面に打ち込むハンマー効果を得ることができ、ブラスト処理によるセパレータの歪みの問題を解決することができる。
さらに、従来のブラスト加工において採用されているブラストエアー圧力は0.1MPa以上であるのが一般的であるが、本発明に採用するブラストエアー圧力は、0.01〜0.1MPaの低圧域で前記導電性化合物粒子をセパレータ用基材の表面に打ち込むハンマー効果を得ることができ、ブラスト処理によるセパレータ用基材の歪みの問題を解決することができる。前記、本発明のブラストエアー圧力の最小値0.01MPaは、噴射流に脈動を発生させない、即ちブラスト加工ムラを発生させないための圧力であり、最大値0.1MPaは、セパレータ用基材の表面に優れた導電性能を有する皮膜を形成するために導電性化合物粒子をセパレータ用基材の表面に打ち込んで固着することができ、且つセパレータ用基材の反り(歪み)の発生を最小に抑制して前記導電性能に影響を与えない範囲の圧力である。
さらに、前記導電性能に優れた皮膜を形成することができる導電性化合物粒子には、CB、CrB2、VB、TaB2、WB、Cr2、WC、VC、TaC、MoC、CrN、VN、TaNのうち少なくとも1種類以上の化合物からなる粉体があって、本発明には、前記各種粉体を用いることができ、該各種紛体の原料価格は安価であるから製造コストを低減することができる。
導電性能に優れたセパレータ用基材を製造するには、さらに、請求項2に記載の発明に示すように、前記導電性化合物粒子コート層を形成するためにスプレー塗布した懸濁液に混合調製した導電性化合物粒子の全質量に対し、該導電性化合物粒子コート層にブラスト粒子を衝突させて導電性化合物粒子コート層内の導電性化合物粒子をセパレータ用基材の内部方向に打ち込み固着された質量の割合を30%以上にすれば、良好な導電性能が発揮できるセパレータ用基材を製造することができるものであり、また、前記セパレータ用基材の各そり率(warp ration)に関し、請求項3に記載の発明に示すように前記[式1]〜[式5]により定義されるWL1、WL2、WC1、WC2、WXCを、0.015以下として製造されたセパレータ用基材を用いれば、当該複数枚のセパレータ用基材を重ね合わせて形成されるフラットな燃料電池スタックを800〜1000段前後組み上げることができ、最終的に導電性能に優れた燃料電池を構築できるものとなる。
本発明のセパレータ用基材の導電化処理方法の工程説明図である。 固体高分子型燃料電池のセパレータ用基板のそり率を評価する説明図である。
以下に、本発明の好ましい実施形態である製造工程と、優れた導電性能を有するセパレータ用基材を製造するための材料の選定について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のセパレータ用基材の導電化処理方法の工程説明図であって、1はセパレータ用基材、2はセパレータ用基材の表面に形成される導電性化合物粒子コート層、3は導電性化合物粒子、4はブラスト粒子を示す。また、Aは導電性化合物粒子コート層形成工程、Bは導電性化合物粒子固着工程、Cはコート層洗浄除去工程を示す。
(導電性化合物粒子コート層形成工程)
準備するセパレータ用基材1、および前記セパレータ用基材1の表面に導電性化合物粒子コート層2を形成する懸濁液を混合調製するため導電性化合物粒子3と溶液の選定について説明する。
セパレータ用基材1は、耐候性、耐腐食性が要求され、具体的には、ステンレス、チタン、チタン合金等を選定することができる。
導電性化合物粒子3は、導電性能は勿論のこと耐酸性、耐腐食性、および前記セパレータ用基材1に採用されるステンレス、チタン、チタン合金等より高硬度のものであること、および平均粒子径が1〜10μmの金属硼化物、金属炭化物、金属窒化物を選定することができ、具体的には、Cr、CrN、CrB、CrB、VB、VC、VN、WB、WC、TaB、TaC、TaN、M Cのうちの1種類または2種類以上を混合した金属化合物を選定することができる。
溶液は、a)無害であること、b)塗布後の乾燥時間を短縮するため揮発性が高いこと、c)塗布作用に均一性を必要とするためセパレータ用基材1に対し濡れ性が良好であること、の条件が上げられ、具体的には、エタノールを選定することができる。なお、その他の溶液に、水を用いることができるが、水は金属に対する濡れ性が悪いため増粘剤の添加をする必要がある。
以下に、懸濁液を混合調製する過程を説明する。
図示しないレギュレターを介して乾燥エアーが供給される加圧ポートと、先端に混合調製された懸濁液をスプレー塗布するスプレーガンを接続した液送ポートと、タンク槽内に懸濁液を混合調製する攪拌ユニットを形成した加圧型塗装タンク装置のタンク槽内に、前記導電性化合物粒子3と溶液を、その混合比が重量割合で1:16〜1:5となるように投入する。前記混合比に設定した幅は、選定された導電性化合物粒子3と溶液の混合性や、その混合調製された懸濁液を塗布するスプレー作業性が訂正な状態で行える範囲を鑑み定めたもので、選定される導電性化合物粒子3の比重の違いにより決定されるものである。
次に、前記攪拌ユニットを駆動させて加圧型塗装タンク装置のタンク構内に投入された前記導電性化合物粒子3と溶液を撹拌して懸濁液を混合調製すると同時に加圧ポートより乾燥エアーを供給してタンク槽内を0.1〜0.2MPaに加圧する。
混合調製された懸濁液は、タンク槽の液送ポートに接続されたスプレーガンより前記セパレータ用基材1の表面にスプレー塗布されて導電性化合物粒子コート層2を形成し、該導電性化合物粒子コート層2を乾燥される。前記スプレーガンのノズル径は1.0mm、スプレー圧力は0.01〜0.1MPaでよく、前記乾燥方法は、自然乾燥でも良いが60〜100℃に加熱すれば乾燥時間を短縮することができ生産性は向上する。この段階における乾燥した状態の導電性化合物粒子コート層2の導電性化合物粒子3は、図1に示すようにセパレータ用基材1の表面に一様に塗布されているが粒子同士やセパレータ基材との固着力は弱く、拭取れば簡単に除去できる状態である。
(導電性化合物粒子固着工程)
前記、セパレータ用基材1の表面にスプレー塗布後、乾燥され形成された導電性化合物粒子コート層2に、セパレータ用基材1の表面の直角方向から平均粒子径が50〜200μmのブラスト粒子を粒子速度10〜30m/sec、或いはエアーブラスト法による場合は前記粒子速度にするためのエアーブラストエアー圧0.01〜0.1MPaにて10〜100g/cmの量を衝突させる。ここで、ブラスト法がエアーを用いない機械的なインペラー式の場合は、ブラスト粒子の粒子速度を前記10〜30m/secになるようにインペラーの回転速度を制御すれば良い。
ブラスト粒子4に付与する前記の粒子速度10〜30m/sec、或いはブラストエアー圧0.01〜0.1MPaは、前記導電性化合物粒子コート層2の導電性化合物粒子3に対しハンマー効果のみを付与する衝突エネルギーを有する極低速で、前記導電性化合物粒子3はハンマー効果により導電性化合物粒子コート層2の不動態膜を貫通しセパレータ用基材1へ打ち込むことができる。また、ブラスト粒子4の衝突する速度が極低速であるから、厚さ0.15mm以下のような薄いセパレータ用基材1であっても歪みは最小限に抑えることができ、更にブラスト装置の損耗も低減できる。
また、ブラスト粒子4の材質は、前記のように低速で衝突されて粒子の破損が極めて少ないから特に限定する必要はないが、超硬ショット、スチールショット、高比重セラミック粒子がより好ましい。その理由は、本発明のブラスト粒子4の作用・目的はハンマー効果を得ることであるから、前記の超硬ショット、スチールショット、高比重セラミック粒子のような比重が高い粒子を採用すれば、その粒子速度を低速にすることができてセパレータ用基材1の歪みを少なくすることができるからである。その他の作用・効果としては、ブラスト粒子4を衝突させた後にセパレータ用基材1の表面に打ち込まれずに離脱している導電性化合物粒子3の除去の作用・効果も大なものである。
(コート層洗浄除去工程)
前記導電性化合物粒子コート層形成工程と導電性化合物粒子固着工程を終了したセパレータ用基材1を、図示しない超音波洗浄機にかけて、前記導電性化合物粒子固着工程で打ち込み固着されなかった導電性化合物粒子3と不純物を洗浄除去する。
以上の工程を経て、成形性・コンパクト軽量化を目的として薄板化されたセパレータ用基材1であっても、特別の設備を必要とせず前記セパレータ用基材1の歪みを無くし、その表面に導電性化合物粒子3を容易に固着することができる。以下に、確認のために実施した実施例、および比較例の試験条件とその結果について述べる。
(実施例1)
外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1を準備し、導電性化合物粒子3として平均粒子径が2μmの炭化バナジウム(VC)40gとエタノール溶液600gを図示されない加圧型塗装タンク装置の内径が97mm、内容量が1Lのタンク槽に投入し、撹拌ユニットを駆動させて混合して懸濁液を調製した。なお、前記チタン製のセパレータ用基材1の表面に導電化する面積、即ち懸濁液をスプレー塗布して導電性化合物粒子コート層を形成しブラスト粒子を衝突させて導電性化合物粒子を打ち込んで固着させるセパレータ用基材1の片面の面積を100×100mm=10000mm(100cm)とした。なお、前記導電性化合物粒子3、エタノール溶液の重量は、該セパレータ用基材1の片面にスプレー塗布する懸濁液を混合調製するために投入した重量を示す。
次に、加圧ポートヘレギュレータを介して0.1MPaの乾燥エアーを供給してタンク構内を加圧する。この加圧によって、タンク槽内の前記混合調製された懸濁液は、液送ポートに接続された内径4mmのPTFE製チューブを介してスプレーガンへ供給される。スプレーガンに供給された懸濁液は、0.1MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布されて導電性化合物粒子コート層2が形成される。
前記導電性化合物粒子コート層2を形成する前記懸濁液の単位面積当たりのスプレー塗布する量は、単位面積当たり約0.2mg/cmとし、スプレー塗布する面積を100×100mm(100cm/片面)として導電性化合物粒子コート層形成工程Aを終了した。
スプレー塗布終了後に、そのセパレータ用基材1を80℃に保持された恒温器へ装入して、エタノール溶液を蒸発乾燥させた。
乾燥を終了したセパレータ用基材1を図示しない重力式エアーブラストの加工キャビネット内に配置された加工テーブルに固定し、エアーブラストノズルを先端が前記セパレータ用基材1の導電性化合物粒子コート層2の表面と200mmの距離を隔てた位置とし方向が直角方向となるように設定し、該エアーブラストノズルから平均粒子径100μmの超硬ショットをブラストエアー圧力0.015MPa、噴射密度23g/cmで噴射させて前記セパレータ用基材1の導電性化合物粒子コート層2の表面に衝突させて導電性化合物粒子固着工程Bを終了した。
以上でセパレータ用基材1の片面の導電性化合物粒子コート層形成工程Aと導電性化合物粒子固着工程Bが終了した。同様に、他面も前記各工程を終了させ、当該セパレータ用基材1を超音波洗浄器に装入して、前記ブラスト時に発生し付着した粉塵やセパレータ用基材1の表面に固着してない余剰の導電性化合物粒子3である炭化バナジウム(VC)等を洗浄除去した後、前記恒温器へ装入して乾燥させてコート層洗浄除去工程Cを終了した。
(実施例2)
平均粒子径4μmのTaNを100gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記タンク槽内の懸濁液を、加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積当たりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布し、その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例3)
平均粒子径2μmのVCを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記タンク槽内の懸濁液を、加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積当たりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.018MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例4)
平均粒子径4μmのTaNを100gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記タンク構内
の懸濁液を、加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積当たりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.018MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例5)
平均粒子径2μmのVCを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記タンク槽内の懸濁液を、加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積当たりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が180μmのガラスビーズとし、0.080MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例6)
平均粒子径4μmのTaNを100gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記タンク槽内の懸濁液を、加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積当たりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が180μmのガラスビーズとし、0.080MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例7)
平均粒子径4μmのVCを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのステンレス(SUS316L)から成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmの超硬ショットとし、0.015MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例8)
平均粒子径4μmのTaNを100gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのステンレス(SUS316L)から成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.018MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例9)
平均粒子径6μmのCrBを20g、および平均粒子径3μmのCrBを20gと
エタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのステンレス(SUS316L)から成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmの超硬ショットとし、0.015MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例10)
平均粒子径3μmのVBを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのステンレス(SUS316L)から成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmの超硬ショットとし、0.015MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例11)
平均粒子径5μmのTaBを100gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのステンレス(SUS316L)から成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.018MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例12)
平均粒子径7μmのCrを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.018MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例13)
平均粒子径5μmのWCを50gおよび平均粒子径4μmのWBを50gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が180μmのガラスビーズとし、0.080MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例
1と同様とした。
(実施例14)
平均粒子径3μmのTaCを100gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより1.0mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が180μmのガラスビーズとし、0.080MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例15)
平均粒子径4μmのMoCを60gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.6mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmの超硬ショットとし、0.015MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例16)
平均粒子径8μmのCrNを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのチタンから成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.018MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(実施例17)
平均粒子径6μmのVNを40gとエタノール溶液600gを実施例1と同様の加圧型塗装タンク装置のタンク槽に投入し懸濁液を混合調製した。次いで、前記加圧タンク槽内の懸濁液を加圧してスプレーガンにより0.2mg/cmの単位面積あたりの塗布量をもって実施例1と同様の外形寸法が150mm×150mm×0.15mmtのステンレス(SUS316L)から成るセパレータ用基材1の表面にスプレー塗布して乾燥させた後、導電性化合物粒子固着工程Bに用いるブラスト粒子を平均粒子径が100μmのTiNとし、0.015MPaの圧力でセパレータ用基材1の表面に形成された導電性化合物粒子コート層2に噴射して衝突させた。その他の試験条件は実施例1と同様とした。
(比較例1)
実施例1の導電性化合物粒子3に用いた同様のVCを、実施例1の導電性化合物粒子固着工程Bと同様のブラスト条件であるブラストエアー圧力0.015MPa、噴射密度23g/cmで直接セパレータ用基材1の表面へ噴射し、導電性化合物粒子3であるVCをセパレータ用基材1の表面へ固着させたのち、該セパレータ用基材1を超音波洗浄機にかけてブラスト時に発生した粉塵や固着されなかった余剰の導電性化合物粒子3を洗浄除去した。
(比較例2)
ブラストエアー圧力を0.4MPaに変更した以外の試験条件は前記比較例1と同様とし、導電性化合物粒子3(VC)をセパレータ用基材1の表面へ直接衝突させ、該セパレータ用基材1を超音波洗浄機にて洗浄した。
(比較例3)
ブラストエアー圧力を比較例2と同様の0.4MPaとし、導電性化合物粒子3をTaNに変更した以外の試験条件は前記比較例1と同様とし、導電性化合物粒子3(TaN)をセパレータ用基材1の表面へ直接衝突させ、該セパレータ用基材1を超音波洗浄機にて洗浄した。
(比較例4)
セパレータ基材の材質をステンレス(SUS316L)に変更した以外の試験条件は前記比較例3と同様にし、導電性化合物粒子3(TaN)をセパレータ用基材1(SUS316L)の表面へ直接衝突させ、該セパレータ用基材1を超音波洗浄機にて洗浄した。
以上の実施例1〜17および比較例1〜4で実施検討した導電性化合物粒子の単位面積当たりの固着量(mg/cm)、セパレータ用基材1加工後の表裏の表面粗さ(算術平均粗さ:Raと十点平均粗さ:Rz)の平均値、セパレータ用基材1とカーボンペーパーとの接触抵抗の評価、セパレータ用基材1の対角線上の反りの評価、の結果を次の表1に示す。
Figure 0005302721
前記、表1に記載の「導電性化合物粒子の固着量(mg/cm)」は、「エネルギー分散型蛍光X線分析装置」(EDX)を用いて測定した。
また、表1に記載の「接触抵抗の評価」は、セパレータ用基材1とカーボンペーパとの接触抵抗を測定しその測定値を基に「○」:15mΩ・cm以下、「△」:15〜20mΩ・cm、「×」:20mΩ・cm以上として「○」「△」「×」を付記してランク付け評価をした。
また、表1に記載の「対角線上の反りの評価」は、セパレータ用基材1の対角線上の反りの測定値(即ち、対角線上の両端の高さの差異/対角線の距離=算出値)をもとに「○」:0.01以下、「△」:0.01〜0.015、「×」:0.015以上として「○」「△」「×」のランク付けをした。
(実施例18)
また、セパレータ用基材1とカーボンペーパーの「接触抵抗の評価」をするために、導電性化合物粒子コート層形成工程Aにおけるセパレータ用基材1の表面への懸濁液の単位面積当たりのスプレー塗布する量を0.08mg/cm、0.2mg/cm、0.4mg/cm、に段階的に変化させて導電性化合物粒子コート層を形成し、以下、導電性化合物粒子固着工程B、コート層洗浄除去工程Cの工程は前記実施例1と同様にしてセパレータ用基材1の表面に導電性化合物粒子3を打ち込み固着させた。
前記セパレータ用基材1の内部方向に打ち込まれ固着された導電性化合物粒子3の質量を「エネルギー分散型蛍光X線分析装置」(EDX)にて各々測定し、その質量を前記スプレー塗布した懸濁液に混合調整した導電性化合物粒子3の全質量で除した割合(%)を示す「固着割合」と、該固着割合が得られたときのセパレータ用基材1とカーボンペーパーの接触抵抗値を測定してランク付けをした結果を「接触抵抗の評価」として次の表2に示す。
Figure 0005302721
表2に記載の「接触抵抗の評価」は、前記表1と同様に、セパレータ用基材1とカーボンペーパとの接触抵抗を測定しその測定値を基に「○」:15mΩ・cm以下、「△」:15〜20mΩ・cm、「×」:20mΩ・cm以上として「○」「△」「×」のランク付けをした。
従来技術である導電性化合物粒子3をセパレータ用基材1の表面に直接ブラストして導電性化合物粒子3を固着させる方法における導電性化合物粒子3の固着量については、前記導電性化合物粒子3の噴射圧力を前記比較例2〜4に示されるように、本発明におけるブラスト粒子4の噴射圧力の20倍以上の圧力にすることにより、本発明における導電性化合物粒子3の最少固着量(0.02mg/cm)を得ることができるが、セパレータ用基材1の対角線上の反り量が大きくなることから前記最少の固着量(0.02mg/cm)以上の固着できない問題がある。本発明は、前記実施例1〜17から明らかなよう
に、セパレータ用基材1の表面に導電性化合物粒子3を固着させる方法を、セパレータ用基材1の表面に導電性化合物粒子3の粉末を混合する懸濁液をスプレー塗付して導電性化合物粒子コート層2を形成したのち、該導電性化合物粒子コート層2に超硬ショット、TiN、ガラスビーズのいずれかのブラスト粒子4をブラストエアーを用いて衝突させることにより、導電性化合物粒子3の種類、あるいはブラスト粒子4の種類に関係なく、セパレータ用基材1の表面に、少ないエネルギーで安価に導電性化合物粒子3を打ち込み確実に固着することが可能となって、従来技術の問題点を解決することができる。
また、実施例18から明らかのように、導電性化合物粒子コート層を形成するためにスプレー塗布した懸濁液に混合調製した導電性化合物粒子の全質量に対し、該導電性化合物粒子コート層にブラスト粒子を衝突させて導電性化合物粒子コート層内の導電性化合物粒子をセパレータ用基材の内部方向に打ち込み固着された質量の割合(固着割合)を30%以上にすれば、セパレータ用基材とカーボンペーパーとの接触抵抗が15mΩ・cm以下となり、良好な導電性能が発揮できるセパレータ用基材を製造することができる。
1 セパレータ用基材
2 導電性化合物粒子コート層
3 導電性化合物粒子
4 ブラスト粒子
A 導電性化合物粒子コート層形成工程
B 導電性化合物粒子固着工程
C コート層洗浄除去工程

Claims (3)

  1. テンレス鋼、チタン、チタン合金の何れかからなる固体高分子型燃料電池の板状のセパレータ用基材の表面に、平均粒子径1〜10μmのCr B、CrB 2、 VB、TaB 2、 WB、Cr 2、 WC、VC、TaC、Mo C、Cr N、VN、TaNのうち少なくとも1種類以上の化合物からなる導電性化合物粒子とエタノールまたは水とを混合して調製した懸濁液をスプレー塗布して乾燥させ、導電性化合物粒子コート層を形成する工程と、該導電性化合物粒子コート層に、平均粒子径50〜200μmのブラスト粒子を、ブラスト粒子速度を10〜30m/secとし、またはブラストエアー圧力を0.01〜0.1MPaとして衝突させて前記基材表面に塗布された導電性化合物粒子をセパレータ用基材の内部方向に打ち込んで固着させる工程と、前記工程でセパレータ用基材に固着されなかった導電性化合物粒子およびセパレータ用基材の表面の不純物を洗浄除去する工程を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の導電化処理方法。
  2. 前記導電性化合物粒子コート層を形成するためにスプレー塗布した懸濁液に混合調製した導電性化合物粒子の全質量に対し、該導電性化合物粒子コート層にブラスト粒子を衝突させて導電性化合物粒子コート層内の導電性化合物粒子をセパレータ用基材の内部方向に打ち込み固着された質量の割合を30%以上にしたことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材の導電化処理方法。
  3. 前記請求項1または2の方法により製造された固体高分子型燃料電池の板状のセパレータ用基材であって、該セパレータ用基材の表面の算術平均粗さ(Ra)0.3μm〜0.5μm、十点平均粗さ(Rz)1.5μm〜4.0μmであり、該セパレータ用基材の四隅のうち、1隅を原点Oとし、原点Oからセパレータ用基材の圧延方向にある角をL、原点Oからセパレータ用基材の圧延垂直方向にある角をC、原点Oから対角線方向にある角をXとし、OL間の線分の長さをLL、OC線分の長さをLC、OX間の長さをLXとし、直線OLと加工品の厚さ方向中心面までの最大ひずみ高さをHL1、直線CXとのそれをHL2、直線OCとのそれをHC1、直線LXとのそれをHC2、直線OXとのそれをHXC としたとき、[式1]〜[式5]で定義されるそり率WL1、WL2、WC1、WC2、WXCの各値が0.015以下であることを特徴とする固体高分子型燃料電池のセパレータ用基材。
    Figure 0005302721
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