JP5302546B2 - 白内障予防剤 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防剤に関する。
白内障とは、眼球内部にある水晶体が白濁し、視力の低下を引き起こす疾病である。白内障を引き起こす原因として、先天性のものや紫外線等による外傷、その他の疾病に付随して起こるもの等がある。最も多い例は老人性に起因する白内障であり、老化に伴い代謝が低下することにより異常物質が体内に蓄積し、その結果として眼球の白濁が起こることが知られている。白内障は一度水晶体が濁ってしまうと、水晶体を除去して人工のレンズを埋め込む等の外科的処置を施さない限りは、再びもとの視力を回復することは難しい。また、確実に進行を止める治療法はなく、進行を遅らせる成分を含む点眼薬等が普及している程度である。
食品由来の成分で白内障予防効果があるとされるものとして、ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンが挙げられる。高ガラクトース負荷をかけたSDラットにクルクミンを与えた場合、ガラクトース負荷により誘導される白内障を遅延させる効果を有することが確認されている(例えば、非特許文献1参照。)。クルクミンはその強力な抗酸化作用により、体内の酸化を抑制することで、結果として白内障の遅延効果へと繋がると考えられているが、クルクミンは脂溶性であり、食品に直接混ぜる等の利用法では腸管からの吸収は難しく、高い効果は期待できない。また、ラクトフェリンを有効成分とした加齢性眼疾患改善剤(例えば、特許文献1参照。)も知られている。この特許文献では、老齢ラットにおける涙腺の平均重量や涙腺細胞内構造等の顕微鏡所見より、加齢に伴う眼疾患改善について記載しているが、老齢ラットにおける涙腺細胞の分泌機能が亢進すると思われる形態的特徴を確認しているのみである。さらに、ラクトフェリンは加熱により不安定となる、消化により分解される、酸化されやすい等の理由のため、飲食品、医薬品、飼料で利用可能な用途が限定されるという欠点がある。
特開2006-219415号公報 Suryanarayana et al.,Mol.Vis.,2003 Jun 9;9: 223-30
本発明は、飲食品、医薬品、飼料への汎用性が高く、より効果の高い新規な白内障予防剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、ラクトフェリン類の白内障予防作用について鋭意検討を重ねた結果、ラクトフェリン類と鉄を含む溶液とを混合して鉄‐ラクトフェリンの形態にすること、さらに、ラクトフェリン類に一定の割合で、炭酸及び/又は重炭酸と鉄とを保持させた鉄‐ラクトフェリン結合体あるいは鉄‐ラクトフェリン複合体にすることにより、顕著な白内障予防効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の構成からなる発明である。
(1)ラクトフェリン類1分子当たり少なくとも3原子の鉄を保持している鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防剤。
(2)鉄‐ラクトフェリンが、ラクトフェリン類に炭酸及び/又は重炭酸と鉄とを保持している鉄‐ラクトフェリン結合体及び/又は鉄‐ラクトフェリン複合体である(1)記載の白内障予防剤。
(3)鉄‐ラクトフェリンが、ラクトフェリン類1g当たり、15mg以上の炭酸及び/又は重炭酸と10〜700mgの鉄とを保持している鉄‐ラクトフェリン結合体及び/又は鉄‐ラクトフェリン複合体である(1)記載の白内障予防剤。
(4)鉄‐ラクトフェリン類が、ラクトフェリン1g当たり、35〜400mgの炭酸及び/又は重炭酸と40〜500mgの鉄とを保持している鉄‐ラクトフェリン結合体及び/又は鉄‐ラクトフェリン複合体である(1)記載の白内障予防剤。
(5)(1)〜(4)に記載の鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防用医薬品。
(6)(1)〜(4)に記載の鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防用飲食品。
(7)(1)〜(4)に記載の鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防用飼料。
本発明により、鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防剤が提供される。本発明の白内障予防剤は水溶性であるため、飲食品、医薬品、飼料成分としての汎用性が高い。また、鉄‐ラクトフェリンという形態であるので、熱安定性が高く、加熱により失活しないでラクトフェリン類としての機能を保つ。また、鉄を保持しているため、消化に対して耐性もあるためラクトフェリン類としての機能を保ったまま小腸へ届き、経口摂取した場合、より高い生理効果を発揮することができる等の優れた効果を奏する。
天然のラクトフェリン類は、通常1分子当たり2原子の鉄をキレート結合する能力を有しており、これはラクトフェリン類1g当たり鉄 1.4mgを保持することに相当する。それに対して、本発明で用いる鉄‐ラクトフェリン類は、ラクトフェリン類1分子当たり少なくとも3原子の鉄を安定に保持できるようにしたものである。このような鉄‐ラクトフェリンとすることにより、多量の鉄イオンをラクトフェリン類に保持させることができる。このような鉄‐ラクトフェリンは通常、天然には存在しないが、この鉄‐ラクトフェリンを得るには、例えば、ラクトフェリンを水に溶解し、これに鉄化合物を添加してラクトフェリン類と鉄とを反応させて溶液中の鉄を非遊離状態にして得られる鉄‐ラクトフェリン(特許2735375号公報)、ラクトフェリン溶液に鉄塩を添加し、アルカリを加えて溶液のpHを上げて得られる鉄を安定に保持するラクトフェリン粉末(特開平7- 17875号公報)、ラクトフェリンのアミノ基に重炭酸イオンを介して鉄が結合した耐熱性鉄‐ラクトフェリン結合体(特許2835902号公報)、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸とラクトフェリンとを含む溶液に鉄を含有する溶液を混合して得られる鉄‐ラクトフェリン複合体(特許2884045号公報)等を例示することができる。また、鉄‐ラクトフェリン分解物も用いることができる。
本発明では、鉄‐ラクトフェリンとして、前記のいずれのものでも用いることができる。すなわち、本発明でいう鉄‐ラクトフェリンは、鉄とラクトフェリン類とが一体となった状態のものであって、鉄とラクトフェリン類とが直接結合して一体となっていても、あるいは、他の物質を介して一体となった状態のものであってもよく、いわゆる、鉄がイオンの状態で存在していないものであればよい。特に、ラクトフェリン類が炭酸及び/又は重炭酸と鉄とを保持した、鉄‐ラクトフェリン結合体(特許2835902号公報)や鉄‐ラクトフェリン複合体(特許2884045号公報)を用いることが好ましい。これらの鉄‐ラクトフェリン結合体及び鉄‐ラクトフェリン複合体は、ラクトフェリン類1g当たり、15mg以上の炭酸及び/又は重炭酸と10〜700mg の鉄を保持した鉄‐ラクトフェリンである。
経口摂取されたラクトフェリンの多くは通常そのままでは消化酵素による分解を受けるため、本来の機能を発揮し得ない。
本発明者らは、鉄‐ラクトフェリンとすることで消化酵素による分解が限定的となり、鉄‐ラクトフェリンが小腸のレセプターまで達し、吸収され、活性を失うことなく白内障予防効果を発揮することを見出した。
また、ラクトフェリンは中性域において加熱に対して不安定であり、62.5℃、30分の加熱によりほぼ失活し、70℃、15分の加熱により完全に失活する(Ford, J. E. et al., The Journal of Pediatrics,90, 1,29-35, 1977)。したがって、ラクトフェリンを飲食品、医薬に添加して用いる際に高温加熱処理を採用できないのが実状であり、ラクトフェリン類を失活させずに飲食品、医薬品、飼料に配合する場合には制限があった。
本発明者らは、ラクトフェリン類に鉄を十分結合吸着させることで耐熱性を付与する方法により作製された鉄‐ラクトフェリンを用いれば、加熱処理してもその生理活性を維持し、白内障予防効果を発揮することを見出した。
さらに、本発明で用いる鉄‐ラクトフェリンは、鉄を保持するにもかかわらず鉄の収斂味や金属味も呈さないという優れた適性を有しており、飲食品、医薬品、飼料に添加して用いる場合には特に有利なものである。
本発明の白内障予防剤に用いる鉄‐ラクトフェリンを製造する際に原料として使用できるラクトフェリン類としては、哺乳類の乳等の分泌液から分離されるラクトフェリンを例示することができる。さらに、血液や臓器等から分離されるトランスフェリンや卵等から分離されるオボトランスフェリン等もラクトフェリンと同様に使用することができる。これらのラクトフェリン類については、既に大量に調製する方法がいくつも知られており、どのような方法で調製されたラクトフェリン類でもよい。また、ラクトフェリン類は、完全に単離されている必要はなく、他の成分が含まれていても構わない。さらに、微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等から遺伝子操作により産生されたラクトフェリン類も使用することが可能である。そして、ラクトフェリン類をトリプシン、ペプシン、キモトリプシン等の蛋白分解酵素により、或いは、酸やアルカリにより分解したラクトフェリン類分解物もラクトフェリン類として使用することができる。
また、本発明で用いる鉄‐ラクトフェリンを製造する際に原料として使用できる鉄としては、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄等を例示することができる。
本発明の白内障予防剤は、鉄‐ラクトフェリンを有効成分とするものであるが、他の栄養成分、例えばカルシウム、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンK、各種オリゴ糖等を併せて配合しても構わない。
本発明の白内障予防剤は、製剤の分野において通常使用されている製剤成分、例えば、増量剤、希釈剤、溶剤や充填剤等のような賦形剤、溶解補助剤、可溶化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤や徐放化剤等のような補助剤、あるいは、抗酸化剤、保存剤、光沢剤、甘味剤、着色剤、着香剤等の添加物と混合し、常法にしたがって、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、ドリンク剤、シロップ剤、液剤等種々の剤形の製剤とすることができる。
また、本発明は、上述のようにして得られる鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする飲食品である。飲食品としてはどのような飲食品でも良く、鉄‐ラクトフェリン自体であっても良いし、鉄‐ラクトフェリン自体を配合した飲食品としても良い。鉄‐ラクトフェリンは、喫食時にどのような飲食品に添加しても良く、飲食品の製造工程中に製品の原料に配合しても良い。飲食品の例として、チーズ、バター、発酵乳等の乳食品、ドリンクヨーグルト、コーヒー飲料、果汁等の飲料、ゼリー、プリン、クッキー、ビスケット、ウエハース等の菓子、さらには、冷凍食品等の飲食品を挙げることができる。
なお、本発明品は鉄も強化されているため、鉄を補助的に摂取することができる。すなわち、鉄強化を目的とした飲食品の場合、鉄の酸化促進作用や風味への影響が問題となるが、本発明の鉄‐ラクトフェリンは鉄を保持するにもかかわらず鉄の収斂味や金属味も呈さないという優れた適性を有しており、飲食品に配合しにくい鉄も同時に摂取することができる。
さらに、本発明は、上述のようにして得られる鉄‐ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防用飼料である。家畜用飼料やペットフードとして、前記飲食品と同様に、どのような飼料に配合しても良く、その製造工程中に原料に添加しても良い。
本発明において、白内障予防効果を発揮させるためには、体重、性別や年齢等を考慮して適宜決定すればよいが、通常成人の場合、鉄‐ラクトフェリンを一日当たり、0.1〜5,000mg、好ましくは0.1〜190mg、さらに好ましくは20〜80mg摂取できるよう配合量等を調整すればよい。ただ、ラクトフェリンと鉄‐ラクトフェリンの抗酸化能をβ−カロテン退色法により比較したところ、0.01mMの濃度で約2.5倍の抗酸化能を有すること(試験例2)、ラットの胃腸にて一時間反応させたラクトフェリンと鉄‐ラクトフェリンとのウェスタンブロッティングでの解析ではラクトフェリンは完全に消化されてしまっているのに対し、鉄‐ラクトフェリンはほとんど分解を受けていないこと(試験例3)から、実際には上記の有効量よりも低用量で鉄‐ラクトフェリンを摂食しても効果があると考えられる。本発明の白内障抑制作用を有する成分は、白内障予防剤として、あるいはそれらを配合した飲食品、医薬品、飼料を経口摂取することによって、白内障予防作用を発揮する。
本発明では、ガラクトース負荷食を与えた白内障モデルラットを用いて、白内障の発生の有無を調べる方法により、鉄‐ラクトフェリンの白内障予防効果を検証した。ガラクトースは通常肝臓内でガラクトースキナーゼ及びガラクトース‐1‐リン酸ウリジルトランスフェラーゼの働きによりグルコース‐1‐リン酸に速やかに変換され、生体内で利用される。しかしながら、遺伝子欠損や過剰のガラクトースが血中に入った場合、ガラクトースは肝臓で処理しきれずに還元を受け、糖アルコールの一種であるガラクチトールへと変換される。ガラクチトールは糖尿病患者が生体内に蓄積するポリオール類であるソルビトールと同様の成分であり、眼球の水晶体内へと蓄積していく。このような水晶体内のポリオール類の蓄積は浸透圧の増加を招き、内部のカルシウム濃度が増加し、カルシウムイオンで活性化される細胞内プロテアーゼであるm‐カルパインの活性化を引き起こし、水晶体内のクリスタリンが分解され白濁沈殿することで白内障が誘発される。すなわち、高ガラクトース負荷食による白内障の誘発モデルは、ポリオール類の水晶体内蓄積という、糖尿病性白内障や老人性白内障に多く見られるメカニズムを模したものである。
以下に実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(鉄‐ラクトフェリン(105Fe-Lf)の調製)
ウシラクトフェリン(DMV社製)90gと塩化第二鉄6水和物 52gを水10リットルに溶解し、撹拌機で撹拌しながら重炭酸ナトリウム5gを添加して鉄‐ラクトフェリンを含む溶液を調製した。そして、この溶液を分子量5,000カットの限外濾過膜で脱塩及び濃縮した後、水を加えて容量10リットルの鉄‐ラクトフェリン溶液とした。なお、この鉄‐ラクトフェリン溶液中の鉄量を誘導結合プラズマ発光分光器(ICP) (ST-3000、Leeman Labs 社製) で測定したところ、鉄‐ラクトフェリン溶液中に含まれる鉄量は 102mg/100mlであった。この鉄‐ラクトフェリンは、誘導結合プラズマ発光分光器(ICP) 分析及び元素分析を行ったところ、ラクトフェリン1分子当たりに鉄を 105原子、重炭酸を5分子保持していた。
このようにして得られた鉄‐ラクトフェリンは、そのまま本発明の白内障予防剤として使用可能である。
(鉄‐ラクトフェリン(108Fe-Lf)の調製)
水2リットルに重炭酸ナトリウム400gそのままを添加し、撹拌機で撹拌して調製した重炭酸ナトリウム過飽和溶液中に、ウシラクトフェリン 90gと塩化第二鉄6水和物 52gを水8リットルに溶解した溶液を撹拌しながら添加し、鉄‐ラクトフェリンを含む溶液を調製した。この溶液を分子量 5,000カットの限外濾過膜で脱塩及び濃縮した後、水を加えて容量10リットルの鉄‐ラクトフェリン溶液とした。なお、この鉄‐ラクトフェリン溶液中の鉄量を誘導結合プラズマ発光分光器(ICP) で測定したところ、鉄‐ラクトフェリン溶液中に含まれる鉄量は101mg/100mlであった。この鉄‐ラクトフェリンは、ラクトフェリン1分子当たりに鉄を 108原子、重炭酸を54分子保持していた。
このようにして得られた鉄‐ラクトフェリンは、そのまま本発明の白内障予防剤として使用可能である。
(鉄‐トランスフェリンの調製)
炭酸カルシウム0.05モル、重炭酸アンモニウム1.2モルを含む溶液1リットルを塩酸にてpH7.8に調整した(A溶液)。硫酸第二鉄を鉄イオンとして、1.5ミリモルを含む溶液0.2リットル(B1溶液)、トランスフェリン(アポ型、高純度、牛血漿製、和光純薬工業社製)10マイクロモルを含む溶液0.8リットル(B2溶液)を調製した。B1溶液とB2溶液を混合後、A溶液にB1/B2混合液を加え、鉄を結合したトランスフェリン溶液を調製した。この溶液を分子量5,000カットの限外濾過膜にて脱塩及び濃縮した後、水を加えて容量200ミリリットルの鉄‐トランスフェリン溶液とした。なお、この鉄‐トランスフェリン溶液中の鉄量を誘導結合プラズマ発光分光器(ICP) で測定したところ、この鉄‐トランスフェリン溶液中に含まれる鉄量は13mg/100mlであった。
このようにして得られた鉄‐トランスフェリンは、そのまま本発明の白内障予防剤として使用可能である。
(鉄‐オボトランスフェリンの調製)
炭酸ナトリウム0.5モル、重炭酸カリウム0.7モルを含む溶液1リットルを酢酸にてpH8.3に調整した(A溶液)。硝酸鉄(III)を鉄イオンとして、1.5ミリモルを含む溶液0.2リットル(B1溶液)、オボトランスフェリン(タイプIV、粗、卵白製、無鉄、シグマ社製)10マイクロモルを含む溶液0.8リットル(B2溶液)を調製した。B1溶液とB2溶液を混合後、A溶液にB1/B2混合液を加え、鉄を結合したオボトランスフェリン溶液を調製した。この溶液を分子量5,000カットの限外濾過膜で脱塩及び濃縮した後、水を加えて容量200ミリリットルの鉄‐オボトランスフェリン溶液とした。なお、この鉄‐オボトランスフェリン溶液中の鉄量を誘導結合プラズマ発光分光器(ICP) で測定したところ、鉄‐オボトランスフェリン溶液中に含まれる鉄量は、13mg/100mlであった。
このようにして得られた鉄‐オボトランスフェリンは、そのまま本発明の白内障予防剤として使用可能である。
[試験例1]
本試験例1は、糖尿病性並びに老人性白内障のモデルとして、高ガラクトース負荷飼料によりラットに白内障を誘発させ、その餌中に、鉄‐ラクトフェリン又はラクトフェリンを添加し、一定期間後の白内障の発生を評価するものである。また、ガラクトースを含まない固形飼料を与えたラットをコントロールとした。ガラクトース負荷飼料の組成を表1に示す。
4週齢のFisher系ラットに、ガラクトース負荷飼料を56日間摂食させ、実験に用いた。実験群は、以下に示すように、1群5匹の2群(A群(ラクトフェリン)とB群(鉄‐ラクトフェリン))とした。飼料摂食0、14、28、56日目に採血及び採尿し、56日目に眼球の濁度を目視により測定した。
A群:ラクトフェリン(DMV社製)0.31798g+鉄(塩化第二鉄)0.08338g
B群:鉄‐ラクトフェリン(実施例1で調製) 0.38078g
ラクトフェリンの実際のLF含有率:91.52%
鉄‐ラクトフェリンの実際のLF含有率:76.52%
塩化第二鉄の実際の鉄含有率:24.49%
鉄‐ラクトフェリンの実際の鉄含有率:5.36%
眼球の白濁を判定する基準として、目視により明らかに白濁している眼球に関しては+++、わずかながら白みを帯び始めている眼球に関しては+、全く白濁していない眼球に関しては−と評価した。さらに、個体が白内障を発症しているかどうかの判定基準については、どちらか片方、または両方の眼が+++と判定された個体については○(白内障を発症している)、片方が+で片方が−か、または両方の眼が+と判定された個体については△(白内障になりかかっている)、両方の眼が−と判定された個体については×(白内障を発症していない)と判定した。56日目に眼球の濁度を目視により測定した結果を表2に示す。
実験結果を表2に示す。
ガラクトース負荷食を摂食させて体内を酸化させることによって発症する白内障は、摂食後8週間で認められた。一方、ガラクトースを与えないコントロールでは、白内障の発症は認められなかった。
ガラクトース負荷食を摂食させ、かつ、ラクトフェリンを与えたA群では、5匹中3匹が白内障と判定されたが、鉄‐ラクトフェリンを与えたB群では、5匹中1匹のみが白内障と判定された。
この結果から、鉄‐ラクトフェリンを投与することにより、ラクトフェリン投与群と比較して、白内障の発症をより遅延させることが明らかとなった。
採血したものについて赤血球数、ヘマトクリット値を測定したところ、コントロールに比べてA群及びB群とも増加した。また、摂食後2週間で両群ともに尿量、尿糖量は増加し、pHは若干アルカリ側となったが、摂食後4週間以降は正常化した。
[試験例2]
鉄‐ラクトフェリンの抗酸化能力について検証するため、βカロテン退色法を用いた。この方法はリノール酸の酸化に伴い生じるリノール酸過酸化物がβカロテンの二重結合と反応し、βカロテンの色が退色していくことを利用したもので、一定時間内の吸光度を求めて、どれだけβカロテンが退色したかを測定する。このとき、抗酸化剤はβカロテンの退色を抑制するため、しばしばサンプルの抗酸化能を測定する目的で用いられる。
βカロテン法はまず、βカロテン溶液(1mg/ml)、リノール酸溶液(100mg/ml)、Tween40溶液(200mg/ml)を、それぞれクロロホルムを溶媒として調製した。次いでβカロテン溶液500μl、リノール酸溶液200μl、Tween40溶液1mlをフラスコ中で混合し、窒素気流によって乾固した。これを100mlの純水に溶解し、9mlのリン酸バッファ−(0.2M、pH=6.8)を加えたものを反応溶液とした。0.01mMの70Fe-Lfサンプルと、0.01mMのLFサンプル、ブランクとしてクエン酸鉄ナトリウムを70Fe-Lf相当量添加したサンプルそれぞれ20μlとβカロテン/リノール酸溶液180μlを混合し、直ちに450nmにおける吸光度を測定してA0とした(鉄のみのサンプルをブランクとし吸光度はB0とした)。50℃で20分間インキュベートした後の吸光度を測定してA20とした(ブランクはB20)。抗酸化活性は以下の式で求めた。ΔA=A0−A20、ΔB=B0−B20として抗酸化活性(%)={(ΔB−ΔA)/ΔB}×100
鉄のみをサンプルとして添加した場合の値を0として補正をかけた。この場合、抗酸化活性はLF(ラクトフェリン)と鉄を加えたサンプルでは70.36%、70Fe-Lf(鉄‐ラクトフェリン)の場合、181.69%となった。この値を比較すると、鉄‐ラクトフェリンの抗酸化活性はラクトフェリンに鉄を加えたものの約2.5倍存在することが分かった。鉄‐ラクトフェリンが高い抗酸化活性を有することは、鉄‐ラクトフェリンが体内の活性酸素により引き起こされる水晶体の酸化を抑制して、白内障の発生を予防する効果があることを示す。
[試験例3]
鉄‐ラクトフェリンの分解耐性について検証するため、ラットを用いた動物実験と、ウェスタンブロッティングによる解析を行った。
ラクトフェリン(TATUA社製)を89.32mg/ml混合した水溶液と鉄‐ラクトフェリン(実施例1)を93.2mg/ml混合した飼料をそれぞれ23週齢のFisher系ラット(クレア社製)に3ml強制経口(ゾンデ)投与し、15分の反応時間を置いた後に開腹して胃の内容物を小腸へしごき出し、小腸を結びとめてさらに45分経過した後に取り出した小腸内容物に対して抗ラクトフェリン抗体(ヤガイ社製)を用いてウェスタンブロッティングすることにより解析した。
ウェスタンブロッティングの結果を図2に示す。
FeLf(鉄‐ラクトフェリン)は3レーンあり、左から10倍希釈、100倍希釈、1000倍希釈のサンプルを示している。LF(ラクトフェリン)は10倍希釈のサンプルを示している。ラクトフェリンは分子量約80kDaであり、鉄‐ラクトフェリンは消化酵素による分解を受けていないが、ラクトフェリンは完全に分解されていることが分かる。
(タブレットの製造)
実施例1で調製した鉄‐ラクトフェリン溶液を凍結乾燥して得られた鉄‐ラクトフェリン粉末とカルシウムとを配合し、タブレットを製造した。すなわち、炭酸カルシウム20%、鉄‐ラクトフェリン粉末10%、マルトース40%、エリスリトール16%、ソルビトール2%、香料4%、甘味料0.5%、賦形剤としてデキストリンを5%、滑択剤として二酸化珪素を2.5%の組成で混合し、常法により打錠し、白内障予防剤タブレットを製造した。なお、このタブレットには1錠(500mg) 当たり鉄が 3.7mg含まれていた。なお、鉄量は誘導結合プラズマ発光分光器(ICP) で測定を行った(以下の実施例も同様である)。
(清涼飲料水の製造)
実施例2で調製した鉄‐ラクトフェリンを配合した清涼飲料水を調製した。すなわち、組成が鉄‐ラクトフェリン溶液5%、50%乳酸溶液0.12%、マルチトール7.5%、香料 0.2%、水 87.18%である原料を混合し、プレート殺菌機を用いて90℃、15秒間殺菌し、白内障予防作用を賦与した清涼飲料水を製造した。なお、この清涼飲料水には 100ml当たり鉄が5mg含まれていた。
(乳飲料の製造)
実施例2で調製した鉄‐ラクトフェリン溶液を凍結乾燥して得られた鉄‐ラクトフェリンを、鉄含量が3mg/100gとなるように生乳に配合し、150kgf/cm2で均質処理を行い、プレート殺菌機を用いて 130℃、2秒間殺菌し、白内障予防作用を賦与した乳飲料を製造した。
(タブレットの製造)
実施例3で調製した鉄‐トランスフェリン溶液を凍結乾燥して得られた鉄‐トランスフェリン粉末とカルシウムとを配合したタブレットを製造した。すなわち、炭酸カルシウム20%、鉄‐ラクトフェリン粉末10%、マルトース40%、エリスリトール16%、ソルビトール2%、香料4%、甘味料としてトレハロースを 0.5%、賦形剤としてデキストリンを5%、滑択剤として二酸化珪素を2.5%の組成で原料を混合し、常法により打錠し、白内障予防剤タブレットを製造した。なお、このタブレットには1錠(500mg)あたり鉄が0.8mg含まれていた。
(清涼飲料水の製造)
実施例4で調製した鉄‐オボトランスフェリンを配合した清涼飲料水を調製した。すなわち、組成が鉄‐オボトランスフェリン溶液5%、50%乳酸溶液0.12%、マルチトール7.5%、香料 0.2%、水 87.18%である原料を混合し、プレート殺菌機を用いて90℃、15秒間殺菌し、白内障予防作用を賦与した清涼飲料水を製造した。なお、この清涼飲料水中には100mlあたり鉄が0.65mg含まれていた。
(イヌ飼育飼料の製造)
実施例1で調製した鉄‐ラクトフェリン溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥物を60メッシュのフルイで整粒化し、鉄‐ラクトフェリン粉末を調製した。表3に示した原料を配合し、本発明の白内障予防用イヌ飼育飼料を製造した。
鉄−ラクトフェリンとラクトフェリンの抗酸化能力について、βカロテン退色法で測定した図である。(試験例2) 鉄−ラクトフェリンラクトフェリンの分解耐性について、ウェスタンブロッティングを行なった図である。(試験例3)

Claims (5)

  1. ラクトフェリン類1分子当たり少なくとも3原子の鉄を保持している鉄−ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防医薬組成物
  2. 鉄−ラクトフェリンが、ラクトフェリン類に炭酸及び/又は重炭酸と鉄とが結合している鉄−ラクトフェリン結合体及び/又は鉄−ラクトフェリン複合体である請求項1記載の白内障予防医薬組成物
  3. 鉄−ラクトフェリンが、ラクトフェリン類1g当たり、15mg以上の炭酸及び/又は重炭酸と10〜700mgの鉄とを保持している鉄−ラクトフェリン結合体及び/又は鉄‐ラクトフェリン複合体である請求項1記載の白内障予防医薬組成物
  4. 鉄−ラクトフェリンが、ラクトフェリン類1g当たり、35〜400mgの炭酸及び/又は重炭酸と40〜500mgの鉄とを保持している鉄−ラクトフェリン結合体及び/又は鉄−ラクトフェリン複合体である請求項1記載の白内障予防医薬組成物
  5. 請求項1乃至4に記載の鉄−ラクトフェリンを有効成分とする白内障予防用医薬品。
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