JP5301281B2 - 臓器特異的遺伝子、その同定方法およびその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、各種生物の臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子の同定方法、該方法により得られたマウスの臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子のセット、並びに該方法により同定される臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子を組み合わせて、特異的高発現遺伝子が得られていない臓器もしくは組織を同定する方法に関する。
〔発明の背景〕
最近の再生医学(医療)の進展には目覚しいものがある。ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の樹立法が確立されて以来、ES細胞や間葉系幹細胞(MSC)をはじめとする体性幹細胞から移植用の細胞・組織、さらには臓器そのものを、細胞工学的・発生工学的アプローチにより工業的に生産することが、現実的な目標として掲げられるようになった。実際に、血液、神経、心筋、肝臓、膵臓などでは、ES細胞からの分化誘導系が確立されつつあり、ES細胞を用いた治療手法も既に報告されている。
一方、薬物の各臓器に対する毒性の評価は、通常、ラット等の実験動物への化合物投与によるインビボ毒性試験により行われているが、このような試験には、(1)毒性の発現に数日ないし数ヶ月を要する、(2)多量の化合物を必要とする、(3)実験動物の購入・維持管理にコストがかかる等の欠点がある他、必ずしもヒトにおける毒性を反映しないという根本的な問題を抱えている。
医薬品化合物の開発初期段階において、毒性の有無を迅速に予測し、構造の最適化を効率よく行うには、インビトロスクリーニング系の構築が必須である。インビトロスクリーニングでは、通常、各種臓器から単離した組織の初代培養やそこから樹立された細胞株が使用されるが、初代培養ではインビボ試験の場合と同様に上記(3)の欠点があり、一方、細胞株を用いる場合には、継代を続けるうちにそれが由来する臓器もしくは組織に固有の特性が消失したり、個々の細胞では、それらが有機的に統合された臓器もしくは組織の病理を十分に反映できない等の問題がある。そのため、ヒト細胞を用いたからといって必ずしもヒト個体における毒性を正確に反映するとは限らない。
従って、ES細胞をはじめとする幹細胞からの分化誘導により発生した組織・臓器の毒性評価への利用が大いに望まれている。
ES細胞等の幹細胞から各種の細胞への分化の確認は、通常、形態学的観察に加えて、当該分化した細胞に特異的に発現する遺伝子(即ち、分化マーカー遺伝子)の産物を転写レベル(例:RT-PCR、マイクロアレイ解析等)または翻訳レベル(例:免疫組織染色等)で検出することにより行われている。例えば、肝細胞分化マーカーとしてアルブミン遺伝子等、膵β細胞分化マーカーとしてインスリン遺伝子等が挙げられる。しかしながら、アルブミン産生細胞やインスリン産生細胞に分化したことが確認されたからといって、直ちにそれらが肝細胞や膵β細胞であるとはいえない。実際、ES細胞をインスリン産生細胞に分化させたとの報告はあるが、それらの細胞はβ細胞とは少し異なっている。
したがって、ES細胞等の幹細胞から分化させた組織・臓器が、所望の組織・臓器の生理的状態を反映しているか否か、即ち所望の組織・臓器そのものであるか否かを検証するためには、単一もしく数種の分化マーカー遺伝子の発現によるのではなく、多数の分化マーカー遺伝子の発現を網羅的に解析することが重要であろう。
分化マーカー遺伝子となり得る各種組織・臓器特異的遺伝子のセットはいくつか報告されている(例えば、ヒト組織特異的遺伝子セットについては、特許文献1等を参照)。しかしながら、特異的遺伝子の定義(判断基準)はさまざまであり、統一はなされていない。例えば、本発明者らは以前、独自に開発したカニクイザルDNAマイクロアレイを用いた各種臓器における網羅的遺伝子発現解析結果から、カニクイザルの組織・臓器特異的遺伝子群を抽出したことを発表しているが(非特許文献1)、そこでは、所定の組織(臓器)での発現強度が、[それ以外の各組織・臓器での発現強度の中央値 (50%値)]+[それ以外の各組織・臓器での発現強度の75%値×2]を超えるものを、該所定の組織(臓器)特異的高発現遺伝子として抽出した。この抽出方法は、組織・臓器特異的遺伝子を網羅的に同定する手段として、従来知られた方法よりも相対的に優れたものであったが、それでも該方法により抽出された特異的高発現遺伝子の中には、真に当該組織(臓器)特異的であるとはいえないものがある頻度で存在していた。
特開2004-135552公報 The Journal of Toxicological Science, Vol. 31 Supplement, page S168, 2006, Title:カニクイザルのDNAマイクロアレイ開発と臓器特異的高発現遺伝子の探索
したがって、本発明の目的は、真に所定の組織もしくは臓器で特異的に高発現する遺伝子群を抽出し得る方法を提供することであり、以って再生医療などにおける分化マーカー遺伝子として有用な該組織・臓器特異的高発現遺伝子のセットを提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、Gene Logic社より提供されるマウス遺伝子発現データを利用して鋭意解析を重ねた結果、2以上の個体について臓器もしくは組織ごとに所定の遺伝子群の発現量データを得、その中のある遺伝子について、調べた個体の中での、(a)ある特定の臓器(組織)における発現量の最小値と、(b)それ以外の臓器および組織における発現量の最大値との比((a)/(b))が1よりも大きい場合に、該遺伝子を該特定の臓器(組織)における特異的高発現遺伝子として抽出すれば、真にその臓器(組織)に特異的な遺伝子のみのセットを取得しうることを見出した。
さらに、本発明者らは、上記方法によっては特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織(「臓器A」という)であっても、調べた個体の中での、(a)臓器Aにおける発現量および特異的高発現遺伝子(「遺伝子X」という)が抽出された別の臓器もしくは組織(「臓器B」という)における発現量のうちの最小値と、(b)臓器A、B以外の臓器および組織における発現量の最大値との比が1より大きい遺伝子が存在すれば、該遺伝子を臓器AおよびBにおける特異的高発現遺伝子(「遺伝子Y」という)として抽出し、未同定の臓器(組織)における遺伝子XおよびYの発現量を測定して、遺伝子Xの発現が基準値未満で且つ遺伝子Yの発現が基準値以上の場合に、該未同定の臓器(組織)を臓器Aであると同定することができることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、ラット、イヌおよびヒトにおいても同様に、臓器(組織)特異的高発現遺伝子セットの抽出、並びにそれらを組み合わせた特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器(組織)の同定が可能であることを実証して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]以下の(1)〜(3)の工程を含んでなる、臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子の抽出方法;
(1)2以上の個体につき、臓器もしくは組織ごとに所定の遺伝子群の発現量を測定する
(2)各遺伝子について、(a)全個体中での、ある特定の臓器もしくは組織における発現量の最小値および(b)全個体中での、それ以外の臓器および組織における発現量の最大値を取得する
(3)上記(a)/(b)比が1より大きい場合に、該遺伝子を該特定の臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子として抽出する
[2](a)/(b)比が2以上の場合に、その遺伝子を特定の臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子として抽出する、上記[1]記載の方法;
[3]上記[1]記載の方法により特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織の同定方法であって、以下の工程を含んでなる方法;
(1)各遺伝子について、(a)全個体中での、該臓器もしくは組織における発現量および特異的高発現遺伝子が存在する他の特定の臓器もしくは組織における発現量のうちの最小値、並びに(b)全個体中での、上記(a)の各臓器もしくは組織以外の臓器および組織における発現量の最大値を取得する
(2)上記(a)/(b)比が1より大きい場合に、該遺伝子を上記(a)の各臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子として抽出する
(3)未同定の臓器もしくは組織における(i)該他の特定の臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子および(ii)上記(2)で抽出される特異的高発現遺伝子の発現量を測定する
(4)上記(i)および(ii)の特異的高発現遺伝子の発現量を指標として、該未同定の臓器もしくは組織を、該特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織であると同定する
[4]臓器もしくは組織が哺乳動物由来である、上記[3]記載の方法;
[5]臓器もしくは組織がヒトまたはマウス由来である、上記[4]記載の方法;
[6]配列番号n(nは1〜35の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む35種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス脂肪組織特異的遺伝子発現解析ツール;
[7]配列番号n(nは36〜71の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む36種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス膀胱特異的遺伝子発現解析ツール;
[8]配列番号n(nは72〜502の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む431種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス血液特異的遺伝子発現解析ツール;
[9]配列番号n(nは503〜508の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む6種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス骨特異的遺伝子発現解析ツール;
[10]配列番号n(nは509〜754の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む246種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス脳特異的遺伝子発現解析ツール;
[11]配列番号n(nは755〜771の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む17種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス乳腺特異的遺伝子発現解析ツール;
[12]配列番号n(nは772〜823の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む52種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス結腸特異的遺伝子発現解析ツール;
[13]配列番号824に示される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸、並びに/あるいは配列番号825に示される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸を含む、マウス食道特異的遺伝子発現解析ツール;
[14]配列番号n(nは826〜848の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む23種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス心臓特異的遺伝子発現解析ツール;
[15]配列番号n(nは849〜992の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む144種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス肝臓特異的遺伝子発現解析ツール;
[16]配列番号n(nは993〜1135の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む143種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス肺特異的遺伝子発現解析ツール;
[17]配列番号n(nは1136〜4105の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む2970種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス膵臓特異的遺伝子発現解析ツール;
[18]配列番号n(nは4106〜4300の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む195種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス脾臓特異的遺伝子発現解析ツール;
[19]配列番号n(nは4301〜4329の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む29種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス胃特異的遺伝子発現解析ツール;
[20]配列番号n(nは4330〜8998の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む4669種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス精巣特異的遺伝子発現解析ツール;
[21]配列番号n(nは8999〜9139の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む141種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス胸腺特異的遺伝子発現解析ツール;
[22]配列番号n(nは9140〜9205の整数)に示される各塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む66種の核酸から選ばれる1以上を含む、マウス腎臓特異的遺伝子発現解析ツール;
[23]配列番号9206に示される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸を含む、マウス膵臓および前立腺特異的遺伝子発現解析ツール;
などを提供する。
本発明の抽出方法によれば、真に臓器もしくは組織特異的に高発現する遺伝子のセットを抽出することができる。また、そのようにして得られる臓器(組織)特異的高発現遺伝子のセットは、臓器もしくは組織の分化マーカーとして有用である。さらに、本発明の同定方法によれば、特異的高発現遺伝子が得られていない臓器もしくは組織を同定することができる。
非特許文献1に記載される臓器・組織特異的遺伝子の抽出方法の概略を示す図である。 実施例1(A)および比較例(B)で得られた脂肪組織特異的高発現遺伝子群の各種臓器・組織での発現を示す図である。各列は抽出された特異的高発現遺伝子を示し、各行は上から脂肪組織(n=5)、膀胱(n=4)、血液(n=2)、大腿骨(n=4)、脳(n=4)、乳腺(n=3)、結腸(n=4)、食道(n=4)、心臓(n=4)、左腎臓(n=4)、肝臓(n=4)、肺(n=2)、膵臓(n=1)、前立腺(n=5)、右腎臓(n=4)、骨格筋(n=5)、脾臓(n=3)、胃(n=3)、精巣(n=5)、胸腺(n=2)の各臓器・組織を示す。 実施例1(A)および比較例(B)で得られた心臓脂肪組織特異的高発現遺伝子群の各種臓器・組織での発現を示す図である。各列は抽出された特異的高発現遺伝子を示し、各行は上から脂肪組織(n=5)、膀胱(n=4)、血液(n=2)、大腿骨(n=4)、脳(n=4)、乳腺(n=3)、結腸(n=4)、食道(n=4)、心臓(n=4)、左腎臓(n=4)、肝臓(n=4)、肺(n=2)、膵臓(n=1)、前立腺(n=5)、右腎臓(n=4)、骨格筋(n=5)、脾臓(n=3)、胃(n=3)、精巣(n=5)、胸腺(n=2)の各臓器・組織を示す。 実施例1(A)および比較例(B)で得られた肝臓特異的高発現遺伝子群の各種臓器・組織での発現を示す図である。各列は抽出された特異的高発現遺伝子を示し、各行は上から脂肪組織(n=5)、膀胱(n=4)、血液(n=2)、大腿骨(n=4)、脳(n=4)、乳腺(n=3)、結腸(n=4)、食道(n=4)、心臓(n=4)、左腎臓(n=4)、肝臓(n=4)、肺(n=2)、膵臓(n=1)、前立腺(n=5)、右腎臓(n=4)、骨格筋(n=5)、脾臓(n=3)、胃(n=3)、精巣(n=5)、胸腺(n=2)の各臓器・組織を示す。 実施例1(A)および比較例(B)で得られた胸腺特異的高発現遺伝子群の各種臓器・組織での発現を示す図である。各列は抽出された特異的高発現遺伝子を示し、各行は上から脂肪組織(n=5)、膀胱(n=4)、血液(n=2)、大腿骨(n=4)、脳(n=4)、乳腺(n=3)、結腸(n=4)、食道(n=4)、心臓(n=4)、左腎臓(n=4)、肝臓(n=4)、肺(n=2)、膵臓(n=1)、前立腺(n=5)、右腎臓(n=4)、骨格筋(n=5)、脾臓(n=3)、胃(n=3)、精巣(n=5)、胸腺(n=2)の各臓器・組織を示す。 実施例1(A)および比較例(B)で得られた胃特異的高発現遺伝子群の各種臓器・組織での発現を示す図である。各列は抽出された特異的高発現遺伝子を示し、各行は上から脂肪組織(n=5)、膀胱(n=4)、血液(n=2)、大腿骨(n=4)、脳(n=4)、乳腺(n=3)、結腸(n=4)、食道(n=4)、心臓(n=4)、左腎臓(n=4)、肝臓(n=4)、肺(n=2)、膵臓(n=1)、前立腺(n=5)、右腎臓(n=4)、骨格筋(n=5)、脾臓(n=3)、胃(n=3)、精巣(n=5)、胸腺(n=2)の各臓器・組織を示す。
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子の新規な抽出方法を提供する。該方法は、以下の (1)〜(3) の工程:
(1) 2以上の個体につき、臓器もしくは組織ごとに所定の遺伝子群の発現量を測定する工程;
(2) 各遺伝子について、(a) 全個体中での、ある特定の臓器もしくは組織における発現量の最小値および (b) 全個体中での、それ以外の臓器および組織における発現量の最大値を取得する工程;および
(3) 上記 (a)/(b) 比が1より大きい場合に、該遺伝子を該特定の臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子として抽出する工程
を含んでなることを特徴とする。
本発明の抽出方法が適用され得る対象は、2以上の分化した組織からなる生物である限り特に限定されないが、好ましくは高等動植物、より好ましくは哺乳動物(例:ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等)やニワトリ、アヒルなどの鳥類などが挙げられる。特に好ましくはヒトおよびマウスである。
本発明の測定方法に供される生物個体数は2以上であれば特に制限はないが、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、特に好ましくは10以上の個体について、臓器もしくは組織ごとに遺伝子群の発現量が調べられる。
測定対象となる臓器もしくは組織は対象となる生物により異なるが、例えば、哺乳動物の場合、脂肪組織、膀胱、血液、大腿骨、脳、脊髄、下垂体、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、血管、乳腺、結腸、食道、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、前立腺、骨格筋、脾臓、胃、精巣、胸腺、卵巣、胎盤、子宮等が挙げられるが、それらに限定されない。
各臓器および組織は、例えば、マウスやラット等の実験動物の場合、常法により安楽死させ、該臓器および組織を切除、単離することにより得られる。一方、ヒトについては、血液などの一部の組織を除いて、正常の生体から臓器および組織を採取することができないので、死亡した個体や患者等から採取することになるが、病死(病気)の場合、疾患特異的な遺伝子発現の変動が予測されるので、例えば、交通事故死者などの疾患に罹病していなかった個体から臓器および組織を採取することが望ましい。
採取した臓器もしくは組織における所定の遺伝子群の発現は、該臓器もしくは組織からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれる該遺伝子群の転写産物を検出することにより調べることができる。RNA画分の調製は、グアニジン−CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができるが、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit; QIAGEN製等)を用いて、微量試料から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。
本発明の抽出方法において発現量が測定される所定の遺伝子群としては、対象となる生物での発現が知られている遺伝子の全体集合が挙げられる。該遺伝子群に含まれる遺伝子数は対象となる生物種によって異なるが、例えば、ヒト、マウス、ラット、サルなどの哺乳動物の場合、約5,000〜約30,000である。ヒト、マウス、ラット、カニクイザル、アカゲザルなどの各種哺乳動物については、そのような遺伝子群の発現を解析するためのプローブセットを搭載したDNAチップ(マイクロアレイ)が市販されており(例えば、Affymetrix社製など)、それらを利用することができる。
例えば、上記のようにして調製したRNA画分から、逆転写反応によりT7プロモーター等の適当なプロモーターを導入したcDNAを合成し、さらにRNAポリメラーゼを用いてcRNAを合成する(この時ビオチンなどで標識したモノヌクレオチドを基質として用いることにより、標識されたcRNAが得られる)。この標識cRNAを上記DNAマイクロアレイと接触させてハイブリダイゼーション反応させ、アレイ上の各プローブに結合した標識量を測定することにより、各遺伝子の発現量を測定することができる。
例えば、ヒト、マウス、ラット等については、上記DNAマイクロアレイを用いた各種臓器および組織における遺伝子群の発現解析データがデータベース化されて限定的に公開されており(例えば、Gene Logic社などから)、そのような生物種については、実際に上記のような遺伝子発現の測定を行わなくても、該データベースにアクセスしてそのデータを解析することによって、臓器もしくは組織特異的遺伝子(セット)を抽出することもできる。
上記のようにして、各個体(個体数 = m)ごとに、各臓器もしくは組織における所定の遺伝子群(例えば、各遺伝子について1〜nの番号を付す)の発現量データが得られる。
次に、その中のある遺伝子iについて、調べた全個体の中での、(a)ある特定の臓器もしくは組織Aにおける発現量(EXP 1(i/A), ・・・EXP m(i/A))の最小値(Min[EXP 1-m(i/A)])と、(b)それ以外の臓器および組織(例えば、B〜Z)における遺伝子iの発現量の最大値(Max[EXP 1-m(i/B-Z)])との比((a)/(b))が1よりも大きい場合に、遺伝子iを臓器もしくは組織Aにおける特異的高発現遺伝子として抽出する。
上記の操作を、遺伝子1〜遺伝子nについて、臓器もしくは組織A〜Zごとに行うことにより、各臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子のセットが抽出される。
(a)/(b)比は1より大きな値であれば特に制限されず、任意に設定することができる。該数値を高く設定すればより臓器(組織)特異性が高くなるが、あまり高く設定しすぎると、多くの臓器(組織)で特異的高発現遺伝子が抽出されないという弊害がある。好ましくは、(a)/(b)比は1.5以上〜16以上、より好ましくは2以上〜8以上の範囲で適宜選択され得る。
上記抽出方法((a)/(b)比を2以上に設定)により、(M1)配列番号1〜35に示される各塩基配列を含む35種のマウス脂肪組織特異的高発現遺伝子、(M2)配列番号36〜71に示される各塩基配列を含む36種のマウス膀胱特異的高発現遺伝子、(M3)配列番号72〜502に示される各塩基配列を含む431種のマウス血液特異的高発現遺伝子、(M4)配列番号503〜508に示される各塩基配列を含む6種のマウス骨特異的高発現遺伝子、(M5)配列番号509〜754に示される各塩基配列を含む246種のマウス脳特異的高発現遺伝子、(M6)配列番号755〜771に示される各塩基配列を含む17種のマウス乳腺特異的高発現遺伝子、(M7)配列番号772〜823に示される各塩基配列を含む52種のマウス結腸特異的高発現遺伝子、(M8)配列番号824および825に示される各塩基配列を含む2種のマウス食道特異的高発現遺伝子、(M9)配列番号826〜848に示される各塩基配列を含む23種のマウス心臓特異的高発現遺伝子、(M10)配列番号849〜992に示される各塩基配列を含む144種のマウス肝臓特異的遺伝子、(M11)配列番号993〜1135に示される各塩基配列を含む143種のマウス肺特異的高発現遺伝子、(M12)配列番号1136〜4105に示される各塩基配列を含む2970種のマウス膵臓特異的高発現遺伝子、(M13)配列番号4106〜4300に示される各塩基配列を含む195種のマウス脾臓特異的高発現遺伝子、(M14)配列番号4301〜4329に示される各塩基配列を含む29種のマウス胃特異的高発現遺伝子、(M15)配列番号4330〜8998に示される各塩基配列を含む4669種のマウス精巣特異的高発現遺伝子、(M16)配列番号8999〜9139に示される各塩基配列を含む141種のマウス胸腺特異的高発現遺伝子および(M17)配列番号9140〜9205に示される各塩基配列を含む66種のマウス腎臓特異的高発現遺伝子が得られた。
同様に、上記抽出方法により、(R1)配列番号9207〜9231に示される各塩基配列を含む25種のラット脂肪特異的高発現遺伝子、(R2)配列番号9232〜9258に示される各塩基配列を含む27種のラット血液特異的高発現遺伝子、(R3)配列番号9259に示される塩基配列を含む1種のラット十二指腸特異的高発現遺伝子、(R4)配列番号9260〜9263に示される各塩基配列を含む4種のラット胸腺特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を2以上に設定)、(R5)配列番号9264〜9266に示される各塩基配列を含む3種のラット結腸特異的高発現遺伝子、(R6)配列番号9267〜9270に示される各塩基配列を含む4種のラット心臓特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を4以上に設定)、(R7)配列番号9271〜9275に示される各塩基配列を含む5種のラット副腎特異的高発現遺伝子、(R8)配列番号9276〜9277に示される各塩基配列を含む2種のラット膀胱特異的高発現遺伝子、(R9)配列番号9278〜9281に示される各塩基配列を含む4種のラット小脳特異的高発現遺伝子、(R10)配列番号9282に示される塩基配列を含む1種のラット食道特異的高発現遺伝子(R11)9283〜9292に示される各塩基配列を含む10種のラット大腿骨特異的高発現遺伝子、(R12)配列番号9293〜9294に示される各塩基配列を含む2種のラット回腸特異的高発現遺伝子、(R13)配列番号9295〜9306に示される各塩基配列を含む12種のラット腎臓特異的高発現遺伝子、(R14)配列番号9307〜9904に示される各塩基配列を含む598種のラット精巣特異的高発現遺伝子、(R15)配列番号9905〜9953に示される各塩基配列を含む49種のラット肝臓特異的高発現遺伝子、(R16)配列番号9954〜9960に示される各塩基配列を含む7種のラット肺特異的高発現遺伝子、(R17)配列番号9961〜9971に示される各塩基配列を含む11種のラット乳腺特異的高発現遺伝子、(R18)配列番号9972〜10004に示される各塩基配列を含む33種のラット膵臓特異的高発現遺伝子、(R19)配列番号10005〜10030に示される各塩基配列を含む26種のラット前立腺特異的高発現遺伝子、(R20)配列番号10031に示される塩基配列を含む1種のラット骨格筋特異的高発現遺伝子、(R21)配列番号10032に示される塩基配列を含む1種のラット脾臓特異的高発現遺伝子、(R22)配列番号10033〜10042に示される各塩基配列を含む10種のラット胃特異的高発現遺伝子および(R23)配列番号10043〜10044に示される各塩基配列を含む2種のラット顎下リンパ節特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を8以上に設定)が得られた。
同様に、上記抽出方法により、(D1)配列番号10056〜10057に示される各塩基配列を含む2種のイヌ十二指腸(粘膜)特異的高発現遺伝子、(D2)配列番号10058〜10062に示される各塩基配列を含む5種のイヌ胃(粘膜)特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を2以上に設定)、(D3)配列番号10063に示される塩基配列を含む1種のイヌ大動脈特異的高発現遺伝子、(D4)配列番号10064に示される塩基配列を含む1種のイヌ膀胱特異的高発現遺伝子、(D5)配列番号10065〜10070に示される各塩基配列を含む6種のイヌ腎臓(髄質)特異的高発現遺伝子、(D6)配列番号10071に示される塩基配列を含む1種のイヌ腸間膜リンパ節特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を4以上に設定)、(D7)配列番号10072〜10077に示される各塩基配列を含む6種のイヌ脂肪特異的高発現遺伝子、(D8)配列番号10078〜10084に示される各塩基配列を含む7種のイヌ副腎特異的高発現遺伝子、(D9)配列番号10085〜10094に示される各塩基配列を含む10種のイヌ大脳皮質特異的高発現遺伝子、(D10)配列番号10095〜10126に示される各塩基配列を含む32種のイヌ精巣上体特異的高発現遺伝子、(D11)配列番号10127〜10130に示される各塩基配列を含む4種のイヌ心臓特異的高発現遺伝子、(D12)配列番号10131〜10140に示される各塩基配列を含む10種のイヌ腎臓(皮質)特異的高発現遺伝子、(D13)配列番号10141〜10258に示される各塩基配列を含む118種のイヌ肝臓特異的高発現遺伝子、(D14)配列番号10259〜10268に示される各塩基配列を含む10種のイヌ肺特異的高発現遺伝子、(D15)配列番号10269〜10358に示される各塩基配列を含む90種のイヌ膵臓特異的高発現遺伝子、(D16)配列番号10359〜10361に示される各塩基配列を含む3種のイヌ下垂体特異的高発現遺伝子、(D17)配列番号10362〜10385に示される各塩基配列を含む24種のイヌ骨格筋特異的高発現遺伝子、(D18)配列番号10386〜10438に示される各塩基配列を含む53種のイヌ皮膚特異的高発現遺伝子、(D19)配列番号10439〜10443に示される各塩基配列を含む5種のイヌ脾臓特異的高発現遺伝子、(D20)配列番号10444〜10455に示される各塩基配列を含む12種のイヌ胃(粘膜)特異的高発現遺伝子、(D21)配列番号10456〜10466に示される各塩基配列を含む11種のイヌ顎下リンパ節特異的高発現遺伝子、(D22)配列番号10467〜11769に示される各塩基配列を含む1303種のイヌ精巣特異的高発現遺伝子、(D23)配列番号11770〜11771に示される各塩基配列を含む2種のイヌ胸腺特異的高発現遺伝子、(D24)配列番号11772〜11785に示される各塩基配列を含む14種のイヌ甲状腺特異的高発現遺伝子および(D25)配列番号11786に示される塩基配列を含む1種のイヌ全回腸(粘膜+筋肉)特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を8以上に設定)が得られた。
同様に、上記抽出方法により、(H1)配列番号11790〜11806に示される各塩基配列を含む17種のヒト大動脈特異的高発現遺伝子、(H2)配列番号11807〜11814に示される各塩基配列を含む8種のヒト視床下部特異的高発現遺伝子、(H3)配列番号11815〜11817に示される各塩基配列を含む3種のヒト右心室特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を2以上に設定)、(H4)配列番号11818に示される塩基配列を含む1種のヒト膀胱特異的高発現遺伝子、(H5)配列番号11819〜11837に示される各塩基配列を含む19種のヒト大脳特異的高発現遺伝子、(H6)配列番号11838〜11840に示される各塩基配列を含む3種のヒト視床特異的高発現遺伝子、(H7)配列番号11841に示される塩基配列を含む1種のヒト左心室特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を4以上に設定)、(H8)配列番号11842〜11849に示される各塩基配列を含む8種のヒト骨組織特異的高発現遺伝子、(H9)配列番号11850〜11852に示される各塩基配列を含む3種のヒト小脳特異的高発現遺伝子、(H10)配列番号11853〜11864に示される各塩基配列を含む12種のヒト腎臓特異的高発現遺伝子、(H11)配列番号11865〜11869に示される各塩基配列を含む5種のヒト肝臓特異的高発現遺伝子、(H12)配列番号11870〜11888に示される各塩基配列を含む19種のヒト肺特異的高発現遺伝子、(H13)配列番号11889〜11933に示される各塩基配列を含む45種のヒト膵臓特異的高発現遺伝子、(H14)配列番号11934〜11937に示される各塩基配列を含む4種のヒト前立腺特異的高発現遺伝子、(H15)配列番号11938〜11951に示される各塩基配列を含む14種のヒト骨格筋特異的高発現遺伝子、(H16)配列番号11952〜11956に示される各塩基配列を含む5種のヒト皮膚特異的高発現遺伝子、(H17)配列番号11957に示される塩基配列を含む1種のヒト脾臓特異的高発現遺伝子、(H18)配列番号11958〜11967に示される各塩基配列を含む10種のヒト精巣特異的高発現遺伝子、(H19)配列番号11968〜11977に示される各塩基配列を含む10種のヒト甲状腺特異的高発現遺伝子および(H20)配列番号11978に示される塩基配列を含む1種のヒト右心房特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を8以上に設定)が得られた。
これらの臓器(組織)特異的高発現遺伝子は、その発現を解析することにより、未同定の臓器もしくは組織の同定(分化マーカー)、特定の臓器もしくは組織における薬物毒性の評価(毒性マーカーの候補)、特定の臓器疾患の診断(疾患マーカーの候補)として利用することができる。
したがって、本発明はまた、上記のマウス、ラット、イヌもしくはヒトの臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子の塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸を含む、該各種動物の臓器もしくは組織特異的遺伝子発現解析ツールを提供する。
「実質的に同一の塩基配列」とは、各配列番号に示される塩基配列からなる核酸と、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列を意味する。ここで「高ストリンジェントな条件」とは、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1% SDS中65℃での一回以上の洗浄を意味する。例えば、各配列番号に示される塩基配列と実質的に同一の塩基配列として、各配列番号に示される塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列が挙げられる。本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
本発明の臓器(組織)特異的遺伝子発現解析ツールを構成する各核酸としては、検出対象であるマウス、ラット、イヌもしくはヒト由来遺伝子転写産物と特異的にハイブリダイズし得る核酸(プローブ)や、該転写産物の一部もしくは全部を増幅するプライマーとして機能し得る一対のオリゴヌクレオチド(プライマー)などが挙げられる。該核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。
プローブとして用いられる核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、供される試料に応じてセンス鎖(例:cDNA、cRNAの場合)またはアンチセンス鎖(例:mRNA、cDNAの場合)を選択して用いることができる。該核酸の長さは標的核酸と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はなく、例えば約15塩基以上、好ましくは約20塩基以上、より好ましくは約25塩基以上である。該核酸は、標的核酸の検出・定量を可能とするために、標識剤により標識されていることが好ましい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン-(ストレプト)アビジンを用いることもできる。一方、プローブとなる核酸を固相上に固定化する場合には、試料中の核酸を上記と同様の標識剤を用いて標識することができる。
プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのセットとしては、各配列番号に示される塩基配列を含むマウス由来遺伝子転写産物のセンス鎖およびアンチセンス鎖とそれぞれ特異的にハイブリダイズすることができ、それらに挟まれるDNA断片を増幅し得るものであれば特に制限はなく、例えば、各々約15〜約100塩基、好ましくは各々約15〜約50塩基の長さを有し、約100bp〜数kbpのDNA断片を増幅するようにデザインされたオリゴDNAのセットが挙げられる。
マウス、ラット、イヌもしくはヒト由来臓器(組織)特異的遺伝子転写産物を検出し得るプローブとして機能する核酸は、該遺伝子の転写産物の一部もしくは全部を増幅し得る上記プライマーセットを用い、該いず・BR>黷ゥの動物の当該臓器(組織)由来のCDNAもしくはゲノムDNAを鋳型としてPCR法によって所望の長さの核酸を増幅するか、該臓器(組織)由来のCDNAもしくはゲノムDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション等により上記臓器(組織)特異的高発現遺伝子もしくはCDNAをクローニングし、必要に応じて制限酵素等を用いて適当な長さの断片とすることにより取得することができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(MOLECULAR CLONING)第2版に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。あるいは、該核酸は、マウス、ラット、イヌもしくはヒト由来臓器(組織)特異的高発現遺伝子産物の各塩基配列情報(例えばマウスの場合、配列番号1〜9205に示される塩基配列)に基づいて、該塩基配列および/またはその相補鎖配列の一部もしくは全部を市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによっても得ることができる。また、シリコンやガラス等の固相上で該核酸を直接IN SITU(ON CHIP)合成することにより、該核酸が固相化されたチップ(アレイ)を作製することもできる。
本発明のマウス、ラット、イヌもしくはヒト各臓器(組織)特異的遺伝子発現解析ツールは、上記の各種動物の各臓器(組織)特異的高発現遺伝子群から選ばれる少なくとも1種、好ましくは2種以上の遺伝子の転写産物を検出し得る核酸のセットを含む。該解析ツールは、該核酸のセットに加えて、内部標準として、マウスのハウスキーピング遺伝子の転写産物の塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸を1種以上含んでいてもよい。ここで「実質的に同一の塩基配列」とは上記と同義である。マウスのハウスキーピング遺伝子としては、例えば、β−アクチン、GAPDH、ヘキソキナーゼ、ヒストン等が挙げられるが、それらに限定されない。
これらの核酸は、乾燥した状態もしくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水もしくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、該核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。
あるいは、該核酸は、適当な固相に固定化された状態で提供することもできる。固相としては、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。また、固定化手段としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
核酸プローブが固相に固定化された状態で提供される好ましい一例として、DNAマイクロアレイが挙げられる。DNAマイクロアレイは、核酸プローブを基板(ガラス、シリコンなど)上で1ヌクレオチドづつ合成するAffymetrix方式、もしくは予め調製された核酸プローブを基板上にスポッティングするStanford方式のいずれかにより作製することができる。
微量RNA試料を用いてマウス、ラット、イヌもしくはヒト臓器(組織)特異的遺伝子の発現を定量的に解析するためには、競合RT−PCRまたはリアルタイムRT−PCRを用いることが好ましい。競合RT−PCRとは、目的のDNAを増幅し得るプライマーのセットにより増幅され得る既知量の他の鋳型核酸をcompetitorとして反応液中に共存させて競合的に増幅反応を起こさせ、増幅産物の量を比較することにより、目的DNAの量を算出する方法をいう。従って、競合RT−PCRを用いる場合、本発明の試薬は、上記プライマーセットに加えて、該プライマーセットにより増幅され、目的DNAと区別することができる増幅産物(例えば、目的のDNAとはサイズの異なる増幅産物、制限酵素処理により異なる泳動パターンを示す増幅産物など)を生じる核酸をさらに含有することができる。このcompetitor核酸はDNAであってもRNAであってもよい。DNAの場合、RNA試料から逆転写反応によりcDNAを合成した後にcompetitorを添加してPCRを行えばよく、RNAの場合は、RNA試料に最初から添加してRT−PCRを行うことができる。後者の場合、逆転写反応の効率も考慮に入れているので、元のmRNAの絶対量を推定することができる。
一方、リアルタイムRT−PCRは、PCRの増幅量をリアルタイムでモニタリングできるので、電気泳動が不要で、より迅速にマウス臓器(組織)特異的遺伝子の発現を解析可能である。通常、モニタリングは種々の蛍光試薬を用いて行われる。これらの中には、SYBR Green I、エチジウムブロマイド等の二本鎖DNAに結合することにより蛍光を発する試薬(インターカレーター)の他、上記プローブとして用いることができる核酸(但し、該核酸は増幅領域内で標的核酸にハイブリダイズする)の両端をそれぞれ蛍光物質(例:FAM、HEX、TET、FITC等)および消光物質(例:TAMRA、DABCYL等)で修飾したもの等が含まれる。
本発明はまた、上記した本発明の遺伝子解析ツールの1種以上を用いて、マウス、ラット、イヌもしくはヒト由来試料中の遺伝子転写産物を測定することを含む、該いずれかの動物における遺伝子発現解析方法を提供する。
例えば、本発明の遺伝子解析ツールは、疾患モデル動物(マウス、ラット、イヌ)や薬剤を投与された動物(マウス、ラット、イヌもしくはヒト)から採取された各種臓器試料、あるいは薬剤に曝露された、動物組織の初代培養もしくはそれから誘導される培養物・株化細胞等を用いて、疾患マーカー遺伝子、薬理作用マーカー遺伝子あるいは薬剤毒性マーカー遺伝子を検出・同定する、さらには疾患メカニズム、薬理作用メカニズム、毒性作用メカニズムの解析に好ましく使用され得る。
マウス、ラット、イヌもしくはヒトから採取した臓器(組織)試料または薬剤に曝露されたマウス、ラット、イヌもしくはヒト細胞・組織試料における遺伝子の発現は、該試料からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれる該マーカー遺伝子の転写産物を検出することにより調べることができる。RNA画分の調製は、グアニジン−CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができるが、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit; QIAGEN製等)を用いて、微量試料から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。RNA画分中の遺伝子転写産物を検出する手段としては、例えば、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット、ドットブロット、DNAチップ(マイクロアレイ)解析等)を用いる方法、あるいはPCR(RT−PCR、競合PCR、リアルタイムPCR等)を用いる方法などが挙げられる。微量試料から迅速且つ簡便に定量性よく遺伝子の発現変動を検出できる点で競合PCRやリアルタイムPCRなどの定量的PCR法が、また、複数のマーカー遺伝子の発現変動を一括検出することができ、検出方法の選択によって定量性も向上させ得るなどの点でDNAチップ(マイクロアレイ)解析が好ましい。
ノーザンブロットまたはドットブロットハイブリダイゼーションによる場合、遺伝子発現の検出は、標識プローブとして用いられる核酸を含有する上記本発明の遺伝子解析ツールを用いて行うことができる。すなわち、ノーザンハイブリダイゼーションによる場合は、上記のようにして調製したRNA画分をゲル電気泳動にて分離した後、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド等のメンブレンに転写し、本発明の試薬または本発明のキット中に含まれる各試薬を含むハイブリダイゼーション緩衝液中、上記「高ストリンジェントな条件下で」ハイブリダイゼーションさせた後、適当な方法でメンブレンに結合した標識量をバンド毎に測定することにより、各遺伝子の発現量を測定することができる。ドットブロットの場合も、RNA画分をスポットしたメンブレンを同様にハイブリダイゼーション反応に付し(各遺伝子についてそれぞれ行う)、スポットの標識量を測定することにより、各遺伝子の発現量を測定することができる。
DNAチップ(マイクロアレイ)解析による場合、例えば、上記のようにして調製したRNA画分から、逆転写反応によりT7プロモーター等の適当なプロモーターを導入したcDNAを合成し、さらにRNAポリメラーゼを用いてcRNAを合成する(この時ビオチンなどで標識したモノヌクレオチドを基質として用いることにより、標識されたcRNAが得られる)。この標識cRNAを上記固相化プローブと接触させてハイブリダイゼーション反応させ、固相上の各プローブに結合した標識量を測定することにより、各遺伝子の発現量を測定することができる。当該方法は、検出する遺伝子(従って、固相化されるプローブ)の数が多くなるほど、迅速性および簡便性の面で有利である。
さらに、本発明は、上記本発明の抽出方法によっては特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織(Aという)であっても、未同定の臓器もしくは組織を、当該特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織Aであると同定することができる新規判定方法を提供する。
まず、ある遺伝子i(i = 1〜n)について、調べた全個体(個体数 = m)の中での、(a)臓器もしくは組織Aにおける発現量(EXP 1(i/A), ・・・EXP m(i/A))および特異的高発現遺伝子のセットXが得られている臓器もしくは組織(Bという)における発現量(EXP 1(i/B), ・・・EXP m(i/B))のうちの最小値(Min[EXP 1-m(i/A,B)])と、(b)臓器A、B以外の臓器および組織(例えば、C〜Z)における遺伝子iの発現量の最大値(Max[EXP 1-m(i/C-Z)])との比((a)/(b))が1よりも大きい場合に、遺伝子iを臓器もしくは組織AおよびBにおける特異的高発現遺伝子として抽出する。この操作を遺伝子1〜nについて実施することにより、臓器もしくは組織AおよびB特異的高発現遺伝子のセットYが得られる。ここで、セットXに含まれる遺伝子とセットYに含まれる遺伝子との間には、一切重複はない。尚、(a)/(b)比は上記本発明の抽出方法と同様、1より大きな数値であれば任意に設定することができ、好ましくは1.5以上〜16以上、より好ましくは2以上〜8以上の範囲で適宜選択され得る。
次に、未同定の臓器もしくは組織における、臓器もしくは組織B特異的高発現遺伝子セットX(例えば、遺伝子x1, x2, ・・・xpを含む)に含まれる1種以上の遺伝子、並びに臓器もしくは組織AおよびB特異的高発現遺伝子のセットY(例えば、遺伝子y1, y2, ・・・yqを含む)に含まれる1種以上の遺伝子の発現量を測定する。未同定の臓器もしくは組織はセットXおよびYに含まれる遺伝子群が由来する生物種由来のものであれば、特に制限はなく、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、イヌ、ラットまたはマウス由来の臓器もしくは組織が挙げられる。
その結果、Xに含まれる遺伝子の発現が基準値未満であり、且つYに含まれる遺伝子の発現が基準値以上の場合には、該未同定の臓器(組織)は、臓器AまたはBのいずれかであるが、臓器Bではないことになるので、臓器Aであると同定することができる。
ここで各遺伝子の発現量における「基準値」とは、個々の遺伝子によって異なるが、例えば、遺伝子セットXに含まれる遺伝子xiについては、m匹(m≧2、好ましくはm≧5、より好ましくはm≧10)の哺乳動物個体における、臓器もしくは組織Bにおける発現量のうちの最小値(Min[EXP 1-m(xi/B)])、あるいは臓器B以外の臓器および組織(例えば、AおよびC〜Z)における該遺伝子の発現量の最大値(Max[EXP 1-m(xi/A,C-Z)])等が挙げられ、後者がより好ましい。一方、遺伝子セットYに含まれる遺伝子yiについては、m匹(m≧2、好ましくはm≧5、より好ましくはm≧10)のマウス個体における、臓器もしくは組織Aにおける発現量および臓器もしくは組織Bにおける発現量のうちの最小値(Min[EXP 1-m(yi/A,B)])、あるいは臓器A、B以外の臓器および組織(例えば、C〜Z)における該遺伝子の発現量の最大値(Max[EXP 1-m(yi/C-Z)])等が挙げられ、前者がより好ましい。
例えば、後述の実施例に示される通り、上記本発明の抽出方法((a)/(b)比は2以上)を実施しても、マウス前立腺特異的高発現遺伝子は得られない。しかしながら、マウス膵臓および前立腺に特異的な遺伝子として、配列番号9206に示される塩基配列を含む遺伝子が抽出される。したがって、未同定のマウス臓器もしくは組織における、マウス膵臓特異的高発現遺伝子(配列番号1136〜4105に示される各塩基配列を含む2970種の遺伝子)から選ばれる1種以上の遺伝子と、該マウス膵臓および前立腺特異的高発現遺伝子との発現を調べることにより、該マウス臓器もしくは組織が膵臓、前立腺あるいはそれ以外のいずれであるかを同定することができる。したがって、本発明はまた、(M18)配列番号9206に示される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸を含む、マウス膵臓および前立腺特異的遺伝子発現解析ツールを提供する。ここで「実質的に同一の塩基配列」とは上記と同義である。
同様に、本発明の抽出方法により、ラットについては、(R24)配列番号10045に示される塩基配列を含む1種のラット回腸および空腸特異的高発現遺伝子、(R25)配列番号10046〜10048に示される各塩基配列を含む3種のラット腸間膜リンパ節および顎下リンパ節特異的高発現遺伝子、(R26)配列番号10049に示される塩基配列を含む1種のラット腸間膜リンパ節および顎下リンパ節および胸腺特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を2以上に設定)、(R27)配列番号10050に示される塩基配列を含む1種のラット全大脳皮質(前頭葉+頭頂葉+側頭葉)特異的高発現遺伝子((a)/(b)比を4以上に設定)、(R28)配列番号10051〜10053に示される各塩基配列を含む3種のラット回腸および空腸および十二指腸特異的高発現遺伝子および(R29)配列番号10054〜10055に示される各塩基配列を含む2種のラット回腸および空腸および十二指腸および結腸特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を8以上に設定)が得られた。また、イヌについては、(D26)配列番号11787〜11789に示される各塩基配列を含む3種のイヌ全十二指腸(粘膜+筋肉)特異的高発現遺伝子((a)/(b)比を8以上に設定)が得られた。さらに、ヒトについては、(H21)配列番号11979に示される塩基配列を含む1種のヒト右心房および右心室特異的高発現遺伝子((a)/(b)比を2以上に設定)、(H22)配列番号11980〜11981に示される各塩基配列を含む2種のヒト左心室および右心室特異的高発現遺伝子((a)/(b)比を4以上に設定)、(H23)配列番号11982〜11983に示される各塩基配列を含む2種のヒト左心房および右心房特異的高発現遺伝子並びに(H24)配列番号11984〜11986に示される各塩基配列を含む3種のヒト全心臓(左心房+右心房+左心室+右心室)特異的高発現遺伝子(以上、(a)/(b)比を8以上に設定)が得られた。
上記の各配列番号に示される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列またはその部分配列を含む核酸は、他のマウス、ラット、イヌもしくはヒトの臓器もしくは組織特異的遺伝子発現解析ツールを構成する核酸と同様にして調製することができる。
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
[材料と方法]
1. 使用データベース及びデータ抽出方法
Gene Logic社BioExpressから2006年4月21日に雄性C57BL/6マウスの遺伝子発現データを抽出した。抽出時に使用したパラメーターを表1に示す。なお、Mouse Genome 430 2.0 Arrayには45101個のプローブセットが含まれている。
2. 遺伝子発現データのLog-ratio値の算出方法
抽出した遺伝子発現データはAvadis version3.3ソフトウェア(Strand Genomics社製)を用いて底2の対数変換を行った。それぞれのプローブセットの値からAFFX-GapdhMur/M32599_5_at、AFFX-GapdhMur/M32599_M_at、AFFX-GapdhMur/M32599_3_atの平均値を引いた値をLog-ratio値として算出した。Fold changeは2(Log-ratio値)とした。
3. 組織特異的高発現遺伝子の抽出方法
組織特異的高発現遺伝子は以下の方法に従って抽出した。抽出した遺伝子発現データを用いて目的とする組織での遺伝子発現の最低のLog-ratio値から他組織での最高のLog-ratio値を引いた値が1以上(Fold change=2倍以上)を示すプローブセットを目的とする組織特異的高発現遺伝子とした。つまり、目的とする組織での最低の遺伝子発現値を示すサンプルは他の組織での最高の遺伝子発現値を示すサンプルより2倍以上高発現していることとなる。これを各組織・臓器について実施し、各臓器・組織の特異的高発現遺伝子を抽出した。特異的高発現遺伝子が得られない組織については他組織と組み合わせ、同様の抽出を行うことにより組み合わせた臓器・組織での特異的高発現遺伝子を抽出した。
[結果]
1. 使用データ
Gene Logic社から導入した遺伝子発現データベースBioExpressから抽出した。抽出された臓器・組織は脂肪組織、膀胱、血液、大腿骨、脳、乳腺、結腸、食道、心臓、腎臓(左)、腎臓(右)、肝臓、肺、膵臓、前立腺、骨格筋、脾臓、胃、精巣、胸腺の計20臓器・組織であり、サンプル数は計72サンプルであった。C57BL/6マウスは39日齢〜9週齢であり、使用した臓器・組織のうち少ないものは1サンプル(膵臓)、多いものは5サンプル(脂肪組織、前立腺、骨格筋、精巣)であった。なお、Gene Logic社のBioExpress中にはマウスサンプルとして他系統が含まれているが、無処置のC57BL/6マウスから得られた各臓器の遺伝子発現データセット(サンプル)の数が最も多かったため、マウス系統としてC57BL/6を採用した。
2. マウス各臓器・組織の特異的高発現遺伝子の同定
上記した組織特異的高発現遺伝子の抽出方法を用いて、マウスの各臓器・組織特異的発現遺伝子を同定した。特異的発現プローブセットの個数は、脂肪組織35、膀胱36、血液431、大腿骨6、脳246、乳腺17、結腸52、食道2、心臓23、腎臓(左)0、腎臓(右)0、肝臓144、肺143、膵臓2970、前立腺0、骨格筋0、脾臓195、胃29、精巣4669、胸腺141であった(表2)。腎臓(左)、腎臓(右)、前立腺及び骨格筋については組織特異的発現プローブセットを得ることが出来なかったため、次の検討を行った。
他の抽出方法で得られる特異的遺伝子との臓器・組織特異性比較
実施例1で得られた各種臓器・組織特異的遺伝子と、本発明者らが以前に発表した方法(非特許文献1および図1参照)により得られた臓器・組織特異的遺伝子(比較例)のマウス各臓器・組織での発現を、ヒートマップを作成して比較した。図2は脂肪組織特異的遺伝子群、図3は心臓特異的遺伝子群、図4は肝臓特異的遺伝子群、図5は胸腺特異的遺伝子群、図6は胃特異的遺伝子群での両者の比較を示している(各図ともAが実施例1で得られた遺伝子群、Bが比較例で得られた遺伝子群の結果を示す)。いずれの臓器・組織遺伝子群においても、実施例1で得られたものは、ほぼすべてがその臓器・組織に発現が限局されているのに対し、比較例で得られた遺伝子群の中には、他の臓器・組織でも高発現している遺伝子が相当数存在した。このことから、本発明の臓器・組織特異的遺伝子抽出方法が、従来の方法に比べてより優れていることが示された。
臓器・組織の組み合わせによる特異的高発現遺伝子の同定
実施例1で特異的高発現遺伝子を同定できなかった腎臓(左)、腎臓(右)、前立腺及び骨格筋について、他臓器・組織と組み合わせることによる特異的高発現遺伝子の同定を試みた。その結果、腎臓(左)及び腎臓(右)を組み合わせた場合に66プローブセットが腎臓(左右)で特異的に発現していることがわかった。また、前立腺については膵臓と組み合わせることにより1プローブセットが前立腺・膵臓で特異的に高発現していることがわかった(表3)。骨格筋については主に筋組織からなる心臓、もしくは単独で特異的遺伝子を取得できなかった前立腺と組み合わせた後に解析を試みたが、特異的高発現遺伝子は取得できなかった。
Wistarラット臓器特異的高発現遺伝子解析
[材料と方法]
1. 使用データベース及びデータ抽出方法
Gene Logic社BioExpressから2007年7月24日に雄性Wistarラット2ヶ月齢の13臓器(膀胱、小脳、結腸、大脳皮質前頭葉、大脳皮質頭頂葉、大脳皮質側頭葉、食道、心臓、左腎臓、左精巣、肝臓、肺、胃)の遺伝子発現データを抽出した。抽出時に使用したパラメーター表4に示す。また、GeneLogic社BioExpressに無い14組織(脾臓、十二指腸、空腸、回腸、腸間膜リンパ節、顎下リンパ節、胸腺、膵臓、副腎、骨格筋、乳腺、大腿骨、前立腺、脂肪組織)及び血液については、雄性Wistarラット2ヶ月齢の3個体より採取、QIAGEN社のRNA抽出キットを用いてRNAを抽出し、Affymetrix社のプロトコールに従いRAE230 2.0 Arrayのデータを得た。なお、Rat Genome RAE230 2.0 Arrayには31099個のプローブセットが含まれている。
2. 遺伝子発現データのLog-ratio値の算出方法
抽出した遺伝子発現データはAvadis version3.3ソフトウェア(Strand Genomics社製)を用いて底2の対数変換を行った。それぞれのプローブセットの値からGAPDHに対するプローブセットである1367557_s_atの値を引いた値をLog-ratio値として算出した。Fold changeは2(Log-ratio値)とした。
3. 臓器・組織特異的高発現遺伝子の抽出方法
臓器・組織特異的高発現遺伝子は以下の方法に従って抽出した。抽出した遺伝子発現データを用いて、目的とする臓器・組織での遺伝子発現の最低のLog-ratio値から他臓器・組織での最高のLog-ratio値を引いた値が1 (2, もしくは3) 以上(Fold change=2 (4, もしくは8) 倍以上)を示すプローブセットを、目的とする組織特異的高発現遺伝子とした。つまり、目的とする組織での最低の遺伝子発現値を示すサンプルは、他の組織での最高の遺伝子発現値を示すサンプルより2 (4, もしくは8) 倍以上高発現していることとなる。これを各臓器・組織について実施し、各臓器・組織の特異的高発現遺伝子を抽出した。特異的高発現遺伝子が得られない組織については他組織と組み合わせ、同様の抽出を行うことにより組み合わせた臓器・組織での特異的高発現遺伝子を抽出した。
[結果]
1. 使用データ
Gene Logic社から導入した遺伝子発現データベースBioExpressから抽出、実際にラットの各臓器・組織から抽出したRNAをマイクロアレイ解析して得た。抽出された臓器・組織は膀胱、小脳、結腸、大脳皮質前頭葉、大脳皮質頭頂葉、大脳皮質側頭葉、食道、心臓、左腎臓、左精巣、肝臓、肺、胃、脾臓、十二指腸、空腸、回腸、腸間膜リンパ節、顎下リンパ節、胸腺、膵臓、副腎、骨格筋、乳腺、大腿骨、前立腺、脂肪組織及び血液の計28臓器・組織であり、サンプル数は計118サンプルであった。使用した臓器・組織のうちは少ないものは3サンプル、多いものは10サンプルであった。
2. ラット各臓器・組織の特異的高発現遺伝子の同定
上記した臓器・組織特異的高発現遺伝子の抽出方法を用いて、ラットの各臓器・組織特異的発現遺伝子を同定した。Fold changeを1倍より大きい、2倍以上、4倍以上および8倍以上としたときの、各臓器・組織における特異的発現プローブセットの個数を表5(A)に、また、臓器・組織の組み合わせによる特異的発現プローブセットの個数を表5(B)にそれぞれ示す。
Beagle犬臓器特異的高発現遺伝子解析
[材料と方法]
1. データ抽出取得方法
12ヶ月齢雄性beagle犬をネンブタール麻酔下で放血し、組織を摘出、QIAGEN社のRNA抽出キットを用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを用いてAffymetrix社のプロトコールに従いCanain ver2.0 Arrayのデータを得た。
2. 遺伝子発現データのLog-ratio値の算出方法
抽出した遺伝子発現データはAvadis version3.3ソフトウェア(Strand Genomics社製)を用いて底2の対数変換を行った。それぞれのプローブセットの値からGAPDHに対するプローブセットであるCfaAffx.23015.1.s1_x_at, CfaAffx.26731.1.s1_x_atおよびCfaAffx.13010.1.s1_x_atの平均値を対数変換した値を引きLog-ratio値として算出した。Fold changeは2(Log-ratio値)とした。
3. 臓器・組織特異的高発現遺伝子の抽出方法
臓器・組織特異的高発現遺伝子は以下の方法に従って抽出した。抽出した遺伝子発現データを用いて、目的とする臓器・組織での遺伝子発現の最低のLog-ratio値から他臓器・組織での最高のLog-ratio値を引いた値が1 (2, もしくは3) 以上(Fold change=2 (4, もしくは8) 倍以上)を示すプローブセットを、目的とする組織特異的高発現遺伝子とした。つまり、目的とする組織での最低の遺伝子発現値を示すサンプルは、他の組織での最高の遺伝子発現値を示すサンプルより2 (4, もしくは8) 倍以上高発現していることとなる。これを各臓器・組織について実施し、各臓器・組織の特異的高発現遺伝子を抽出した。特異的高発現遺伝子が得られない組織については他組織と組み合わせ、同様の抽出を行うことにより組み合わせた臓器・組織での特異的高発現遺伝子を抽出した。
[結果]
1. 使用データ
beagle犬の各臓器・組織から抽出したRNAをマイクロアレイ解析して得た。抽出された臓器・組織は脂肪、副腎、大動脈、膀胱、盲腸(粘膜)、盲腸(筋肉)、大脳皮質、結腸(粘膜)、結腸(筋肉)、十二指腸(粘膜)、十二指腸(筋肉)、精巣上体、心臓、回腸(粘膜)、回腸(筋肉)、空腸(粘膜)、空腸(筋肉)、腎臓(皮質)、腎臓(髄質)、肝臓、肺、腸間膜リンパ節、膵臓、下垂体、直腸(粘膜)、直腸(筋肉)、骨格筋、皮膚、脾臓、胃(粘膜)、胃(筋肉)、顎下リンパ節、精巣、胸腺、甲状腺の計35臓器・組織であり、サンプル数は計125サンプルであった。使用した臓器・組織のうちは少ないものは2サンプル、多いものは4サンプルであった。
2. 各臓器・組織の特異的高発現遺伝子の同定
上記した臓器・組織特異的高発現遺伝子の抽出方法を用いて、beagle犬の各臓器・組織特異的発現遺伝子を同定した。Fold changeを1倍より大きい、2倍以上、4倍以上および8倍以上としたときの、各臓器・組織における特異的発現プローブセットの個数を表6(A)に、また、臓器・組織の組み合わせによる特異的発現プローブセットの個数を表6(B)にそれぞれ示す。
ヒト臓器特異的高発現遺伝子解析
[材料と方法]
1. 使用データベース及びデータ抽出方法
Gene Logic社BioExpressを用いて35歳から55歳の男性の31臓器組織の遺伝子発現データを2007年9月19日に抽出した(脂肪、大動脈、膀胱、胃体部、骨組織、盲腸、小脳、大脳、結腸、十二指腸、食道、心臓(左心房、右心房、左心室、右心室)、視床下部、回腸、空腸、腎臓、肝臓、肺、膵臓、前立腺、直腸、骨格筋、皮膚、脾臓、精巣、視床、甲状腺、静脈)。なお、採用した臓器・組織は病理学的検査で正常であるものとした。
2. 遺伝子発現データのLog-ratio値の算出方法
抽出した遺伝子発現データはAvadis version3.3ソフトウェア(Strand Genomics社製)を用いて底2の対数変換を行った。それぞれのプローブセットの値からGAPDHに対するプローブセットである212581_x_at, 213453_x_atおよび217398_x_atの平均値を対数変換した値を引きLog-ratio値として算出した。Fold changeは2(Log-ratio値)とした。
3. 組織特異的高発現遺伝子の抽出方法
臓器・組織特異的高発現遺伝子は以下の方法に従って抽出した。抽出した遺伝子発現データを用いて、目的とする臓器・組織での遺伝子発現の最低のLog-ratio値から他臓器・組織での最高のLog-ratio値を引いた値が1 (2, もしくは3) 以上(Fold change=2 (4, もしくは8) 倍以上)を示すプローブセットを、目的とする組織特異的高発現遺伝子とした。つまり、目的とする組織での最低の遺伝子発現値を示すサンプルは、他の組織での最高の遺伝子発現値を示すサンプルより2 (4, もしくは8) 倍以上高発現していることとなる。これを各臓器・組織について実施し、各臓器・組織の特異的高発現遺伝子を抽出した。特異的高発現遺伝子が得られない組織については他組織と組み合わせ、同様の抽出を行うことにより組み合わせた臓器・組織での特異的高発現遺伝子を抽出した。
[結果]
1. 使用データ
Gene Logic社から導入した遺伝子発現データベースBioExpressから抽出した。抽出された臓器・組織は脂肪、大動脈、膀胱、胃体部、骨組織、盲腸、小脳、大脳、結腸、十二指腸、食道、心臓(左心房、右心房、左心室、右心室)、視床下部、回腸、空腸、腎臓、肝臓、肺、膵臓、前立腺、直腸、骨格筋、皮膚、脾臓、精巣、視床、甲状腺、静脈の計31臓器・組織であり、サンプル数は計100サンプルであった。使用した臓器・組織のうち少ないものは1サンプル、多いものは9サンプルであった。
2. 各臓器・組織の特異的高発現遺伝子の同定
上記した臓器・組織特異的高発現遺伝子の抽出方法を用いて、ヒトの各臓器・組織特異的発現遺伝子を同定した。Fold changeを1倍より大きい、2倍以上、4倍以上および8倍以上としたときの、各臓器・組織における特異的発現プローブセットの個数を表7(A)に、また、臓器・組織の組み合わせによる特異的発現プローブセットの個数を表7(B)にそれぞれ示す。
本発明の臓器もしくは組織特異的遺伝子の抽出方法は、真の臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子のセットを抽出することができ、各臓器・組織における疾患マーカーや毒性マーカーの探索のためのツールとして有用である。また、本発明の未同定臓器もしくは組織の同定方法は、特異的高発現遺伝子が得られていない臓器もしくは組織をも同定することができ、例えば、再生医療分野における分化の確認などに有用である。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
本出願は、日本で出願された特願2006-293324(出願日:平成18年10月27日)を基礎としており、そこに開示される内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

Claims (4)

  1. 以下の(1)〜(3)の工程:
    (1)5以上の個体につき、臓器もしくは組織ごとに所定の遺伝子群の発現量を測定する
    (2)各遺伝子について、(a)全個体中での、ある特定の臓器もしくは組織における発現量の最小値および(b)全個体中での、それ以外の臓器および組織における発現量の最大値を取得する
    (3)上記(a)/(b)比が2以上〜8以上の場合に、該遺伝子を該特定の臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子として抽出する
    を含んでなる、臓器もしくは組織特異的高発現遺伝子の抽出方法であって、工程(1)において遺伝子群の発現量が測定される臓器もしくは組織は、脂肪組織、膀胱、血液、大腿骨、脳、脊髄、下垂体、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、血管、乳腺、結腸、食道、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、前立腺、骨格筋、脾臓、胃、精巣、胸腺、卵巣、胎盤、および子宮を含む、方法。
  2. 請求項1記載の方法により特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織の同定方法であって、以下の工程を含んでなる方法。
    (1)各遺伝子について、(a)全個体中での、該臓器もしくは組織における発現量および特異的高発現遺伝子が存在する他の特定の臓器もしくは組織における発現量のうちの最小値、並びに(b)全個体中での、上記(a)の各臓器もしくは組織以外の臓器および組織における発現量の最大値を取得する
    (2)上記(a)/(b)比が1より大きい場合に、該遺伝子を上記(a)の各臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子として抽出する
    (3)未同定の臓器もしくは組織における(i)該他の特定の臓器もしくは組織における特異的高発現遺伝子および(ii)上記(2)で抽出される特異的高発現遺伝子の発現量を測定する
    (4)上記(i)および(ii)の特異的高発現遺伝子の発現量を指標として、該未同定の臓器もしくは組織を、該特異的高発現遺伝子が抽出されない臓器もしくは組織であると同定する
  3. 臓器もしくは組織が哺乳動物由来である、請求項2記載の方法。
  4. 臓器もしくは組織がヒトまたはマウス由来である、請求項3記載の方法。
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