以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。また、本明細書において、適宜、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。図2は、実施形態における超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
超音波診断装置Sは、図1および図2に示すように、図略の生体等の被検体に対して超音波(第1超音波信号)を送信すると共に、この被検体で反射した超音波の反射波(エコー、第2超音波信号)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体内から来た第2超音波信号に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像処理部14と、表示部15と、制御部16とを備えて構成されている。
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドの入力や被検体の個人情報等のデータの入力を受け付けるものであり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
送信部12は、制御部16の制御に従って、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を供給して超音波探触子2に第1超音波信号を発生させる回路である。送信部12は、例えば、高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器等を備えて構成される。
受信部13は、制御部16の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信し、この受信した受信信号からアナログ処理によって高調波成分を抽出する回路であり、このアナログ処理によって抽出した受信信号の高調波成分をデジタル信号化して画像処理部14へ出力する。受信部13は、例えば、受信信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器(プリアンプ)と、この増幅器で増幅された受信信号からCCD原理に基づくアナログ積和演算処理によって高調波成分を抽出する高調波成分抽出回路と、この抽出した高調波成分をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換器等を備えて構成される。受信部13については、後に、さらに詳述する。
画像処理部14は、制御部16の制御に従って、受信部13で抽出した受信信号の高調波成分に基づいて公知の信号処理によって被検体内の内部状態の画像(超音波画像)を生成する回路である。
表示部15は、制御部16の制御に従って、画像処理部14で生成された被検体の超音波画像を表示する装置である。表示部15は、例えば、CRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
制御部16は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、受信部13、画像処理部14および表示部15を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
超音波探触子(超音波プローブ)2は、被検体内に第1超音波信号を送信しこの第1超音波信号に基づく被検体内から来た第2超音波信号を受信する装置である。超音波探触子2は、例えば、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる複数の圧電素子を備えて構成されており、これら複数の圧電素子は、例えば、ライン状(1次元アレイ状)に、あるいは2次元マトリックス状(2次元アレイ状)に配列される。圧電素子は、被検体内へ第1超音波信号を送信する場合では、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して入力された送信の電気信号を、圧電現象を利用することによって第1超音波信号に変換して、被検体内にこの第1超音波信号を送信する。そして、圧電素子は、被検体内から来た第2超音波信号を受信する場合では、圧電現象を利用することによってこの受信した第2超音波信号を電気信号に変換して受信信号を、ケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。超音波探触子2が被検体に当てられることによって、圧電素子で生成された第1超音波信号が被検体内へ送信され、被検体内からの第2超音波信号が圧電素子で受信される。
この被検体内から来た第2超音波信号は、被検体内における音響インピーダンスの不整合によって被検体内で第1超音波信号が反射した反射波(エコー)だけでなく、例えば微小気泡(マイクロバブル)等の超音波造影剤(コントラスト剤)が用いられている場合には、被検体内へ送信された第1超音波信号に基づいて超音波造影剤の微小気泡で生成される超音波もある。超音波造影剤では、超音波の照射を受けると、超音波造影剤の微小気泡は、共振もしくは共鳴し、さらに一定の閾値以上の音圧では崩壊、消失する。超音波造影剤では、微小気泡の共振によって、あるいは微小気泡の崩壊、消失によって、超音波が生じている。
圧電素子は、例えば、送信用の第1圧電素子と、音軸方向において第1圧電素子に積層された受信用の第2圧電素子とを備えて構成されてよい。
送信用の第1圧電素子は、その圧電材料に例えば無機圧電材料が用いられる。無機圧電材料は、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等である。このように第1圧電素子に無機圧電材料を用いることによって、送信パワーを比較的簡単な構造で大きくすることが可能となり、高調波のエコーを得るために、比較的大きなパワーで基本波の超音波信号を送信することが可能となる。
受信用の第2圧電素子は、その圧電材料に例えば有機圧電材料が用いられる。有機圧電材料は、例えば、フッ化ビニリデンの重合体を用いることができる。また例えば、有機圧電材料は、フッ化ビニリデン(VDF)系コポリマを用いることができる。このフッ化ビニリデン系コポリマは、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体(コポリマ)であり、他の単量体としては、3フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレン等を用いることができる。フッ化ビニリデン系コポリマは、その共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、例えば、超音波探触子の仕様等に応じて適宜な共重合比が採用される。例えば、フッ化ビニリデン/3フッ化エチレンのコポリマの場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が60mol%〜99mol%が好ましく、有機圧電素子を無機圧電素子に積層する複合素子の場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が85mol%〜99mol%がより好ましい。また、このような複合素子の場合では、他の単量体は、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレンが好ましい。また例えば、有機圧電材料は、ポリ尿素を用いることができる。このポリ尿素の場合では、蒸着重合法で圧電体を作成することが好ましい。ポリ尿素用のモノマとして、一般式、H2N−R−NH2構造を挙げることができる。ここで、Rは、任意の置換基で置換されてもよいアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基、ヘテロ環基を含んでもよい。ポリ尿素は、尿素誘導体と他の単量体との共重合体であってもよい。好ましいポリ尿素として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を用いる芳香族ポリ尿素を挙げることができる。本実施形態では、このように超音波を比較的広い周波数に亘って受信可能な特性を持つ有機圧電素子が第2圧電部223に用いられている。このように第2圧電素子に有機圧電材料を用いることによって、周波数帯域を比較的簡単な構造で広帯域にすることが可能であり、受信信号の高調波成分を受信することが可能となる。
このような構成の超音波診断装置Sでは、例えば、操作入力部11から診断開始の指示が入力されると、制御部16の制御によって送信部12で電気信号の送信信号が生成される。この生成された電気信号の送信信号は、ケーブル3を介して超音波探触子2へ供給される。より具体的には、この電気信号の送信信号は、超音波探触子2における複数の圧電素子へそれぞれ供給される。この電気信号の送信信号は、例えば、所定の周期で繰り返される電圧パルスである。複数の圧電素子は、それぞれ、この電気信号の送信信号が供給されることによってその厚み方向に伸縮し、この電気信号の送信信号に応じて超音波振動する。この超音波振動によって、超音波探触子2は、超音波(第1超音波信号)を放射する。超音波探触子2が被検体に例えば当接されていると、これによって超音波探触子2から被検体に対して第1超音波信号が送信される。
なお、超音波探触子2は、被検体の表面上に当接して用いられてもよいし、被検体の内部に挿入して、例えば、生体の体腔内に挿入して用いられてもよい。
この被検体に対して送信された第1超音波信号は、被検体内部における音響インピーダンスが異なる1または複数の境界面で反射され、超音波の反射波(第2超音波信号)となる。あるいは、第1超音波信号は、超音波造影剤によって第2超音波信号を生じさせる。この第2超音波信号には、送信された第1超音波信号の周波数(基本波の基本周波数)成分だけでなく、基本周波数の整数倍の高調波の周波数成分も含まれる。例えば、基本周波数の2倍、3倍および4倍などの第2次高調波成分、第3次高調波成分および第4次高調波成分等も含まれる。この第2超音波信号は、超音波探触子2で受信される。より具体的には、この第2超音波信号は、複数の圧電素子にそれぞれで受信され、圧電素子で機械的な振動が電気信号に変換されて受信信号として取り出される。この取り出された電気信号の受信信号は、ケーブル3を介して制御部16で制御される受信部13で受信される。受信部13は、この入力された受信信号を受信処理し、より具体的には、例えば増幅した後にCCD原理に基づくアナログ積和演算処理によって高調波成分を抽出し、この高調波成分をアナログ信号からデジタル信号へ変換し、画像処理部14へ出力する。
ここで、上述において、各圧電素子から順次に第1超音波信号が被検体に向けて送信され、被検体で反射した第2超音波信号が各圧電素子で受信される。
そして、画像処理部14は、制御部16の制御によって、受信部13で抽出された受信信号の高調波成分に基づいて、送信から受信までの時間や受信強度などから公知の信号処理によって被検体内の内部状態の画像(超音波画像)を生成し、表示部15は、制御部16の制御によって、画像処理部14で生成された被検体内の超音波画像を表示する。
次に、受信部についてさらに詳述する。図3は、高調波成分を抽出する基本構成を示すブロック図である。図4は、1個の電荷を2個の電荷に2等分する動作を説明するための図である。図5は、2個の電荷を1個の電荷に統合する動作を説明するための図である。
まず、高調波成分の抽出原理について説明する。高調波成分を含む受信信号f(t)は、一般に、式1で表すことができる。
ここで、a
0は、定数項(直流成分)であり、a
nは、第n次高調波におけるsin成分(サイン成分)の振幅であり、b
nは、第n次高調波におけるcos成分(コサイン成分)の振幅であり、ωは、角周波数であり、そして、tは、時間である。nは、1から始まる整数(n=1、2、3、・・・)であり、Σは、n=1からn=∞までの和である。
この式1の2階微分は、式2のように表され、基本波(n=1)を抑圧する場合、例えば、式3の演算g(t)が考え得る。
ここで、発振周波数は、超音波診断装置Sの稼動の際には決まっているので、ω
2は、1以上の定数とすることができるから、式3は、式4のように書き換えられる。
ここで、cは、0から1までの定数である(0<c<1)。
この式4の微分方程式を差分方程式に書き換えると、式4は、式5のように書き換えられる。
ここで、Tは、基本波(n=1)の周期であり(ωT=2π)、△tは、サンプリング周期に相当する。
そして、サンプリング周期△tによってサンプリングされた波形がサンプリング前の原波形を維持するためには、サンプリング周期△tは、基本波の周期Tよりも充分に小さいことが必要である。したがって、式5は、式6となり、倍率を除くと、式7となる。
このように高調波成分は、基本波の関数式で表現することができ、この式7は、例えば、図3に示す回路によって実現され得る。すなわち、図3において、高調波抽出部Hは、第2超音波信号を受信した超音波探触子2の出力を所定の時間間隔でサンプリングすることで得られた複数のアナログ信号をアナログ処理することによって、第2超音波信号から、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における高調波成分を抽出する回路であり、例えば、複数の電荷保持部21(21−1〜21−3)と、複数の電荷保持部21のそれぞれに対応して設けられた複数のアナログ乗算部22(22−1〜22−3)と、アナログ加算部23と、タイミング発生部24とを備えて構成される。
タイミング発生部24は、電荷保持部21、アナログ乗算部22およびアナログ加算部23の各部の動作タイミングを生成し、この生成した動作タイミングをこれら各部へ出力する回路である。
電荷保持部21は、所定時刻の超音波探触子2の出力を電荷で保持する回路である。すなわち、電荷保持部21は、所定時刻の超音波探触子2の出力値に対応する電荷量を保持する回路である。電荷保持部21は、受信信号の高調波成分を表す式の階数に応じた個数(=階数+1)が設けられ、これら複数の電荷保持部21は、直列に接続される。例えば、式6および式7のように受信信号の高調波成分を表す式が2階の差分方程式である場合では、この2階の差分方程式の解を得るために、時刻t、時刻(t−△t)および時刻(t−2△t)の3個の超音波探触子2における各出力が必要であることから、3個の電荷保持部21(21−1〜21−3)が設けられる。そして、これら複数の電荷保持部21(21−1〜21−3)は、第2超音波信号を受信した超音波探触子2の出力を所定の時間間隔でサンプリングすることによって得られた、複数の所定時刻における複数のアナログ信号をそれぞれ保持し、タイミング発生部24から出力される動作タイミングに応答して動作し、タイミング発生部24からの動作タイミングに応じたタイミングで自己の電荷保持部21で保持している電荷を順次に後段の電荷保持部21へ転送する。このような複数の電荷保持部21は、例えば、半導体と、半導体上に形成された絶縁体層と、連続的に配置されるように絶縁体層上に形成された複数の電極(ゲート電極)とを備え、これら各電極に所定パターンの駆動電圧を印加することによって或る電極下のポテンシャル井戸に蓄積された電荷を順次に後段の電極下のポテンシャル井戸へ転送する電荷転送素子(電荷結合素子、Charge-Coupled Devices、CCD)によって構成することができる。
アナログ乗算部22は、各電荷保持部21(21−1〜21−3)に対応して複数個設けられ、電荷保持部21に保持されているアナログ信号にアナログ処理によって重み付けM(0≦M<1)を行って乗算を行う回路である。より具体的には、M×Q=m1×2−1Q+m2×2−2Q+m3×2−3Q+・・・+mn×2−nQと表現することができることから、アナログ乗算部22では、電荷保持部21の出力値(電荷保持部21に保持されているアナログ信号)に対応する電荷量Qが2等分され、一方がさらに2等分され、これが繰り返されることで、2−1Q、2−2Q、2−3Q、・・・、2−nQの複数の電荷が生成され、これら各電荷が重み付け(乗数)Mの2進表現m1、m2、m3、・・・、mnに従って取捨され、この取り上げられた電荷が1個に統合され、M×Qの乗算がアナログ処理で行われる。
このようなアナログ乗算部22は、電荷転送素子(電荷結合素子)を用いて構成することができる。例えば、電荷Qを2個の電荷に2等分する電荷分割部CDは、図4に示すように、半導体31と、半導体31上に形成された絶縁体層32と、絶縁体層32上に連続的に形成された複数の電極(ゲート電極)33(33−1〜33−6)とを備えて構成され、3個1組の電極33を含んで1個の分割部CDkが構成され、図4には、電極33−1〜33−3を含む第1分割部CD1と、電極33−4〜33−6を含む第2分割部CD2とが図示されている。また、各電極33(33−1〜33−6)には、電極33に電圧を印加するための信号線P1〜P3が接続されている。このような電荷分割部CDでは、電極33に外部から電圧を印加することによって電極33下の半導体31内にポテンシャル井戸PWが形成される。ポテンシャル井戸PWは、その対応する電極33に外部から印加される電位によってその深さが制御される。このような電荷分割部CDでは、第1および第2分割部CD1、CD2における各電極33−1〜33−3;33−4〜33−6に所定パターンの駆動電圧を印加することによって、第1分割部CD1に保持されている電荷Qが2個の電荷Q1、Q2(Q1=Q2=Q/2)に2等分され、各電荷Q1、Q2がそれぞれ第1および第2分割部CD1、CD2に保持される。例えば、時刻t11において、初期状態(2等分前、分割前)として、第1分割部CD1の第3電極33−3に電圧が印加されることによって形成された第1分割部CD1の第1ポテンシャル井戸PW3に電荷Qが保持されている。次の動作タイミングの時刻t12において、第1分割部CD1の第2および第3電極33−2、33−3ならびに第2分割部CD2の第1電極33−4のそれぞれに電圧が印加されることによって、第1分割部CD1の第1ポテンシャル井戸PW3が第3電極33−3下だけでなく第1分割部CD1の第2電極33−2下および第2分割部CD2の第1電極33−4にも拡がり、電荷Qがこれら各電極33−2〜33−4下に形成されたポテンシャル井戸PW234に保持される。次の動作タイミングの時刻t13において、第1分割部CD1の第3電極33−3に印加されていた電圧が解消され、そして、第1分割部CD1の第2電極33−2および第2分割部CD2の第1電極33−4に電圧が印加されることによって、電荷Qが第1分割部CD1の第2電極33−2下に形成されたポテンシャル井戸PW2および第2分割部CD2の第1電極33−4下に形成されたポテンシャル井戸PW4にそれぞれ分割されて保持される。このように1個のポテンシャル井戸PW3に蓄積されていた電荷Qが、電極33に所定パターンの駆動電圧を印加することによって、このポテンシャル井戸PW3に隣接するポテンシャル井戸PW2、PW4へ2等分されて保持される。続いて、図4では、次の動作タイミングの時刻t14において、第1分割部CD1では、第1および第2電極33−1、33−2に電圧が印加されることによって、第1分割部CD1の第2ポテンシャル井戸PW2が第2電極33−2下だけでなく第1電極33−1下にも拡がり、電荷Q1(=Q/2)がこの第1および第2電極33−1、33−2下に形成されたポテンシャル井戸PW12に保持される。そして、第2分割部CD2では、第1および第2電極33−4、33−5に電圧が印加されることによって、第2分割部CD2の第1ポテンシャル井戸PW4が第1電極33−4下だけでなく第2電極33−5下にも拡がり、電荷Q2(=Q/2)がこの第1および第2電極33−4、33−5下に形成されたポテンシャル井戸PW45に保持される。次の動作タイミングの時刻t15において、第1分割部CD1では、第1分割部CD1の第2電極33−2に印加されていた電圧が解消されるとともに、第1分割部CD1の第1電極33−1に電圧が印加されることによって、2等分された電荷Q1が第1分割部CD1の第1電極33−1下に形成された第1分割部CD1の第1ポテンシャル井戸に保持される。そして、第2分割部CD2では、第2分割部CD2の第1電極33−4に印加されていた電圧が解消されるとともに、第2分割部CD2の第2電極33−5に電圧が印加されることによって、2等分された電荷Q2が第2分割部CD2の第2電極33−5下に形成された第2分割部CD2の第2ポテンシャル井戸に保持される。このように電荷分割部Dは、所定パターンの駆動電圧を各電極33に印加することによって、第1分割部CD1の第3ポテンシャル井戸PW3に保持されている電荷Qを2等分し、第1分割部CD1の第2ポテンシャル井戸PW2(第1ポテンシャル井戸PW1)および第2分割部CD2の第2ポテンシャル井戸PW5(第3ポテンシャル井戸PW6)のそれぞれへ導き保持することによって、電荷Qを2個の電荷に2等分することができる。
また例えば、複数の電荷を1個の電荷に統合する電荷統合部SDは、電荷分割部CDと同様に、図5に示すように、半導体41と、半導体41上に形成された絶縁体層42と、絶縁体層42上に連続的に形成された複数の電極(ゲート電極)43(43−1〜43−6)とを備えて構成され、3個1組の電極43を含んで1個の分割部SDkが構成され、図5には、電極43−1〜43−3を含む第1統合部SD1と、電極43−4〜43−6を含む第2統合部SD2とが図示されている。また、各電極43(43−1〜43−6)には、電極43に電圧を印加するための信号線P1〜P3が接続されている。このような電荷統合部SDでは、電極43に外部から電圧を印加することによって電極43下の半導体41内にポテンシャル井戸PWが形成される。ポテンシャル井戸PWは、その対応する電極43に外部から印加される電位によってその深さが制御される。このような電荷統合部SDでは、第1および第2統合部SD1、SD2における各電極43−1〜43−3;43−4〜43−6に所定パターンの駆動電圧を印加することによって、第1統合部SD1に保持されている第1電荷Q1と第2統合部SD2に保持されている第2電荷Q2とが合わせられて1個の電荷Q(Q=Q1+Q2)に統合され、この電荷Qが第1統合部SD1(第2統合部SD2)に保持される。例えば、時刻t21において、初期状態(加算処理前)として、第1統合部SD1の第1電極43−1に電圧が印加されることによって形成された第1統合部SD1の第1ポテンシャル井戸PW1に第1電荷Q1が保持され、第2統合部SD2の第2電極43−5に電圧が印加されることによって形成された第2統合部SD2の第2ポテンシャル井戸PW5に第2電荷Q2が保持されている。次の動作タイミングの時刻t22において、第1統合部SD1では、第1統合部SD1の第1および第2電極43−1、43−2に電圧が印加されることによって、第1統合部SD1の第1ポテンシャル井戸PW1が第1電極43−1下だけでなく第2電極43−2下にも拡がり、第1電荷Q1がこの第1および第2電極43−1、43−2下に形成されたポテンシャル井戸PW12に保持される。そして、第2統合部SD2では、第2統合部SD2の第1および第2電極43−4、43−5に電圧が印加されることによって、第2統合部SD2の第2ポテンシャル井戸PW5が第2電極43−5下だけでなく第1電極43−4下にも拡がり、第2電荷Q2がこの第1および第2電極43−4、43−5下に形成されたポテンシャル井戸PW45に保持される。次の動作タイミングの時刻t23において、第1統合部SD1では、第1統合部SD1の第1電極43−1に印加されていた電圧が解消され、そして、第2電極43−2に電圧が印加されることによって、第1および第2電極43−1、43−2下に形成されたポテンシャル井戸PW12に保持されていた第1電荷Q1が第2電極43−2下に形成された第1統合部SD1の第2ポテンシャル井戸PW2に移動して保持される。そして、第2統合部SD2では、第2統合部SD2の第2電極43−5に印加されていた電圧が解消され、そして、第1電極43−4に電圧が印加されることによって、第1および第2電極43−4、43−5下に形成されたポテンシャル井戸PW45に保持されていた第2電荷Q2が第1電極43−4下に形成された第2統合部の第1ポテンシャル井戸PW4に移動して保持される。このような動作によって第1統合部SD1の第1電荷Q1が第2統合部SD2へ寄るとともに、第2統合部SD2の第2電荷Q2が第1統合部SD1へ寄り、第1統合部SD1の第1電荷43−1と第2統合部SD2の第2電荷43−2とが1個の電極(第1統合部の第3電極43−3)43を隔てて配置される。そして、次の動作タイミングの時刻t24において、第1統合部SD1の第1電荷Q1と第2統合部SD2の第2電荷Q2とを隔てているこの第1統合部SD1の第3電極43−3に、第1統合部SD1の第2電極43−2および第2統合部SD2の第1電極43−4にそれぞれ印加されている電圧と同じ電圧が印加されることによって、第1統合部SD1の第2ポテンシャル井戸PW2が第2電極43−2下だけでなく第3電極43−3下にも拡がるとともに、第2統合部SD2の第1ポテンシャル井戸PW4が第1電極43−4下だけでなく第1統合部SD1の第3電極43−3下にも拡がる結果、第1統合部SD1の第2および第3電極43−2、43−3下ならびに第2統合部SDの第1電極43−4下に亘るポテンシャル井戸PW234が形成され、第1統合部SD1の第1電荷Q1と第2統合部SD2の第2電荷Q2とが統合される。そして、次の動作タイミングの時刻t25において、第1統合部SD1の第2電極43−2に印加されていた電圧が解消されるとともに第2統合部SD2の第1電極43−4に印加されていた電圧が解消され、そして、第1統合部SD1の第3電極43−3に電圧が印加されることによって、この統合された第1統合部CD1の第1電荷Q1と第2統合部SD2の第2電荷Q2とが第1統合部SD1の第3電極43−3下に形成された第1統合部SD1の第3ポテンシャル井戸PW3に保持され、第1統合部SD1の第1電荷Q1と第2統合部SD2の第2電荷Q2と加算結果Q(=Q1+Q2)となる。このように電荷統合部SDは、所定パターンの駆動電圧を各電極に印加することによって、第1統合部SD1のポテンシャル井戸PWに保持されている第1電荷Q1と第2統合部SD2のポテンシャル井戸PWに保持されている第2電荷Q2とを1個のポテンシャル井戸PWへ導き統合することによって、第1統合部SD1の第1電荷Q1と第2統合部SD2の第2電荷Q2とを電荷のままで加算することができる。すなわち、電荷統合部SDは、第1統合部SD1の第1電荷Q1と第2統合部SD2の第2電荷Q2とをアナログで加算することができる。
アナログ乗算部22は、例えば、直列に接続されている複数の電荷分割部CDと、電荷統合部SDとを備え、電荷保持部21の出力値に対応する電荷量Qを電荷分割部CDで2等分し、その一方を電荷分割部CDで2等分し、これを繰り返すことで、2−1Q、2−2Q、2−3Q、・・・、2−nQの複数の電荷を生成し、これら各電荷を、重み付けMの2進表現m1、m2、m3、・・・、mnに従って取捨し、この取り上げた電荷を電荷統合部SDで統合することで、M×Qの乗算をアナログで行うことができる。
このようなアナログ乗算部22は、例えば、特開平06−237173号公報(特許第2599679号公報)、特開平06−350453号公報(特許第2955734号公報)、特開平07−335866号公報(特許第2665726号公報)および特開平08−050546号公報も参照することができる。
そして、アナログ乗算部22の重み付けMは、高調波成分を第1超音波信号の基本波で表現した関数式の係数に基づいて設定される。例えば、第2次高調波成分を抽出する場合では、第2次高調波成分が式7の関数式で表現されるので、f(t−△t)の項は、その重み付けMが0.5であり、f(t)の項は、その重み付けMがa(=1−2×((π×△t)/T)2)であり、そして、f(t+△t)の項は、その重み付けMが0.5である。
アナログ加算部23は、複数のアナログ乗算部22の各出力(乗算結果)をアナログ処理によって加算する回路であり、例えば、各アナログ乗算部22の乗算結果として保持されている電荷を1個に統合することによって、複数のアナログ乗算部22の各乗算結果をアナログ処理で加算することができる。アナログ加算部23は、例えば、図5に示す電荷統合部SDによって構成され、電荷転送素子(電荷結合素子)を用いて構成される。
このように電荷保持部21、アナログ乗算部22およびアナログ加算部23は、CCD原理に基づく電荷転送素子(電荷結合素子)を用いて構成可能である。
次に、受信部13のより具体的な構成について説明する。図6は、実施形態の超音波診断装置における受信部の構成を示す図である。図7は、受信部の一部の動作を示すタイムチャートである。
受信部13は、例えば、図6に示すように、プリアンプ部51と、絶対値化部52と、サンプルホールド部(SH部)53と、電荷保持部54と、アナログ乗算部55と、アナログ加算部56と、アナログ−デジタル変換部57と、タイミング発生部58とを備えて構成されている。前記高調波抽出部Hは、電荷保持部54、アナログ乗算部55およびアナログ加算部56が相当する。
プリアンプ部51は、超音波探触子2に接続され、被検体内から来た第2超音波信号に基づく超音波探触子2の出力を所定の増幅率で線形に増幅する増幅回路である。なお、プリアンプ部51は、以後の信号処理を実行する上で充分なレベルの信号が超音波探触子2から出力される場合には、省略可能である。
絶対値化部52は、プリアンプ部51に接続され、プリアンプ部51の出力(超音波探触子2の出力)の絶対値を出力するとともにプリアンプ部51の出力における正負の符号(符号ビット列)を出力する回路である。CCD原理に基づく電荷転送素子(電荷結合素子)を用いて構成される上述の電荷保持部21、アナログ乗算部22およびアナログ加算部23で処理される電荷は、正の値であることから、受信部13で正負の両方を処理可能とするために、超音波探触子2の出力をその大きさと符号とに分ける必要がある。このため、プリアンプ部51の出力が絶対値化部52によって絶対値化されて出力されるとともにその符号が出力される。この符号(符号ビット列)は、以後、絶対値化された超音波探触子2の出力に伴って、SH部53、電荷保持部54、アナログ乗算部55およびアナログ加算部56の各部を伝播する。
SH部53は、絶対値化部52に接続され、タイミング発生部58からの動作タイミングに応じたサンプリング周期△tで、絶対値化部52の出力(絶対値化された超音波探触子2の出力)を保持する回路である。SH部53は、動作タイミングに応じたタイミングで、この保持した絶対値化部52の出力に対応する電荷を電荷保持部54へ出力する。
電荷保持部54は、SH部53に接続され、上述した電荷保持部21に対応し、所定時刻の超音波探触子2の出力値に対応する電荷量を保持する回路である。この電荷保持部54は、超音波探触子2の出力から第2高調波成分を抽出すべく、少なくとも3個の電荷保持部54−1、54−2、54−3を備えて構成される。これら各電荷保持部54−1、54−2、54−3は、直列に接続されており、タイミング発生部58からの動作タイミングに応じたタイミングで自己の電荷保持部54で保持している電荷を順次に後段の電荷保持部54へ転送する。すなわち、複数(この例では3個)の電荷保持部54は、電荷転送素子(電荷結合素子)を構成している。この構成によって、各電荷保持部54−1、54−2、54−3は、時刻(t+△t)、時刻tおよび時刻(t−△t)の3個の超音波探触子2における各出力値f(t+△t)、f(t)、f(t−△t)が保持される。
アナログ乗算部55は、上述したアナログ乗算部22に対応し、電荷保持部21の出力値に対応する電荷量Qを2等分し、その一方をさらに2等分し、これを繰り返すことで2−1Q、2−2Q、2−3Q、・・・、2−nQの複数の電荷を生成し、これら各電荷を、重み付け(乗数)M(0≦M<1)の2進表現m1、m2、m3、・・・、mnに従って取捨し、この取り上げた電荷を統合することで、M×Qの乗算をアナログ処理で行う回路である。このアナログ乗算部55(55−1〜55−3)は、各電荷保持部21(21−1〜21−3)に対応して複数(この例では3個)設けられる。これら各アナログ乗算部55−1〜55−3は、その対応する各電荷保持部21−1〜21−3にそれぞれ接続される。
図6に示す例では第2高調波成分を抽出することから、上述した式6または式7を演算する必要がある。各電荷保持部54−1、54−2、54−3は、上述したように、時刻(t+△t)、時刻tおよび時刻(t−△t)の3個の超音波探触子2における各出力値f(t+△t)、f(t)、f(t−△t)を保持することから、電荷保持部54−1に接続されるアナログ演算部55−1は、0.5×f(t+△t)を演算し、電荷保持部54−2に接続されるアナログ演算部55−2は、a×f(t)を演算し、そして、電荷保持部54−3に接続されるアナログ演算部55−3は、0.5×f(t−△t)を演算する必要がある。また、乗数aは、式6から分かるように、サンプリング周期△tおよび基本波の周期Tに基づいて決定される。より具体的には、乗数aは、サンプリング周期△tの二乗に比例すると共に基本波の周期Tの二乗に反比例する。ここで、送信周波数(基本波の周波数1/T)を4MHzとし、基本波の1波長に対するサンプリング数を100.5ポイント(個)、すなわち、サンプリング周波数(1/△t)を402MHzとすると、乗数a=1−2×((π×1/402M)/(1/4M))2≒1−2−9=511/512となる。したがって、アナログ乗算部55−1は、電荷保持部54−1の出力値に対応する電荷量Qを2等分する回路、すなわち、1×2−1Qを実現する回路で構成することができる。アナログ乗算部55−2は、電荷保持部54−2の出力値に対応する電荷量Qを、1×2−1Q+1×2−2Q+1×2−3Q+1×2−4Q+1×2−5Q+1×2−6Q+1×2−7Q+1×2−8Q+1×2−9Qとする回路で構成することができる。アナログ乗算部55−3は、電荷保持部54−3の出力値に対応する電荷量Qを2等分する回路、すなわち、1×2−1Qを実現する回路で構成することができる。
より具体的には、アナログ乗算部55−1は、電荷保持部54−1の電荷量Qをセンシングフローティングゲート541−1を介して転写し、電荷保持部54−1の電荷量Qと等しい電荷量Qを保持する電荷移送部61−1と、上述した電荷分割部CDのように、電荷移送部61−1の電荷量Qを2等分する電荷分割部621−1と、電荷分割部621−1で2等分された一方の電荷Q2(=Q/2)をタイミング発生部58からの動作タイミングに従って順次に転送する8段の電荷転送部631−1〜638−1とを備えて構成される。センシングフローティングゲート541−1は、電荷保持部54−1の電荷量Qを非破壊で検出する検出用のフローティングゲートであり、例えば、半導体に絶縁体層を介して設けられた電極における前記半導体に対する電位を検出することによって前記半導体に蓄積された電荷量を非破壊で検出するものであり、後述のセンシングフローティングゲート541−2、541−3も同様である。電荷分割部621−1は、上述した電荷分割部CDと同様に、第1および第2分割部を備え、そのうちの一方の分割部、例えば、第2分割部に保持された電荷Q2が8段の電荷転送部631−1〜638−1によって転送される。アナログ乗算部55−1の8段の電荷転送部631−1〜638−1は、アナログ乗算部55−1の出力とアナログ乗算部55−2の出力とを同期させるために必要となった構成である。
アナログ乗算部55−2は、電荷保持部54−2の電荷量Qをセンシングフローティングゲート541−2を介して転写し、電荷保持部54−2の電荷量Qと等しい電荷量Qを保持する電荷移送部61−2と、上述した電荷分割部CDのように、電荷移送部61−1の電荷量Qを順次に2等分する9段の電荷分割部621−2〜629−2と、各電荷分割部621−2〜629−2で2等分された一方の電荷Q1(=2−kQ、k=1〜9)をそれぞれ加算しながらタイミング発生部58からの動作タイミングに従って順次に転送する8段の電荷加算部642〜649とを備えて構成される。電荷分割部621−2〜629−2は、上述した電荷分割部CDと同様に、第1および第2分割部を備え、そのうちの一方の分割部、例えば、第2分割部に保持された電荷Q2が次段の電荷分割部622−2〜628−2でさらに2等分され、そのうちの他方の分割部、例えば、第1分割部に保持された電荷Q1が次段の電荷加算部642〜649で加算される。電荷加算部642〜649は、電荷加算部SDと同様に、第1および第2加算部を備え、そのうちの一方、例えば、第2加算部が前段の前記電荷分割部621−2〜629−2における他方の分割部(第1分割部)と兼用されており、また、そのうちの他方、例えば、第1加算部が次段の第1加算部と直列に接続されており、タイミング発生部58からの動作タイミングに応じたタイミングで自己の第1加算部で保持している電荷を順次に次段の第1加算部へ転送する。
アナログ乗算部55−3は、電荷保持部54−3の電荷量Qをセンシングフローティングゲート541−3を介して転写し、電荷保持部54−3の電荷量Qと等しい電荷量Qを保持する電荷移送部61−3と、上述した電荷分割部CDのように、電荷移送部61−3の電荷量Qを2等分する電荷分割部621−3と、電荷分割部621−3で2等分された一方の電荷Q1(=Q/2)をタイミング発生部58からの動作タイミングに従って順次に転送する8段の電荷転送部631−3〜638−3とを備えて構成される。電荷分割部621−3は、上述した電荷分割部CDと同様に、第1および第2分割部を備え、そのうちの一方の分割部、例えば、第1分割部に保持された電荷Q1が8段の電荷転送部631−3〜638−3によって転送される。アナログ乗算部55−3の8段の電荷転送部631−3〜638−3も、アナログ乗算部55−3の出力とアナログ乗算部55−2の出力とを同期させるために必要となった構成である。
アナログ加算部56は、上述したアナログ加算部23に対応し、複数のアナログ乗算部55(55−1〜55−3)の各乗算結果をアナログ処理で加算する回路であり、例えば、各アナログ乗算部55(55−1〜55−3)の乗算結果として保持されている電荷を1個に統合することによって、複数のアナログ乗算部55(55−1〜55−3)の各乗算結果をアナログ処理で加算する回路である。より具体的には、アナログ加算部56は、アナログ乗算部55で演算されている超音波探触子2の出力における符号が正(+)である場合に、各アナログ乗算部55−1〜55−3の乗算結果である各電荷を統合する電荷統合部71と、アナログ乗算部55で演算されている超音波探触子2の出力における符号が負(−)である場合に、各アナログ乗算部55−1〜55−3の乗算結果である各電荷を統合する電荷統合部72と、アナログ減算回路73とを備えて構成されている。電荷統合部71、72は、上述した電荷統合部SDと同様に構成され、3個の電荷を統合する。アナログ減算回路の正の入力端子(+)には、電荷統合部71の出力が接続され、アナログ減算回路の負の入力端子(−)には、電荷統合部72の出力が接続される。したがって、アナログ乗算部55で演算されている超音波探触子2の出力における符号が正(+)である場合には、プラスの符号を持った電荷統合部71の出力値がアナログ減算回路73から出力され、アナログ乗算部55で演算されている超音波探触子2の出力における符号が負(−)である場合には、マイナスの符号を持った電荷統合部72の出力値がアナログ減算回路73から出力される。
そして、アナログ−デジタル変換部57は、アナログ加算部56に接続され、アナログ加算部56の出力値をアナログ信号からデジタル信号に変換する回路である。アナログ−デジタル変換部57の出力は、受信部13の出力とされ、画像処理部14へ出力される。
このような受信部13では、プリアンプ部51、絶対値化部52、SH部53、電荷保持部54(54−1〜54−4)、アナログ乗算部55(55−1〜55−3)、アナログ加算部56およびアナログ−デジタル変換部57の各部は、タイミング発生部58から動作クロックがそれぞれ供給され、所定の動作タイミングで動作している。さらに、アナログ乗算部55では、その電荷分割部621−1、621−2〜629−2、621−3、電荷転送部631−1〜638−1、631−3〜638−3および電荷加算部642〜649も前記所定の動作タイミングで動作している。
そして、被検体内に送信した第1超音波信号に基づく被検体内から来た第2超音波信号が超音波探触子2で受信され、超音波探触子2の出力がプリアンプ部51に入力される。この超音波探触子2の出力は、プリアンプ部51で所定の増幅率で線形に増幅され、絶対値化部52に入力される。このプリアンプ部51の出力は、例えば、図7の最上段に示される。図7には、最上段の第1段から最下段の第7段に向けて順に、プリアンプ部51の出力(第1段)、絶対値化部52の出力(第2段)、SH部53の出力(第3段)、電荷保持部54−1(第4段)、電荷保持部54−2(第5段)、電荷保持部54−3(第6段)および電荷保持部54−4(第7段)がそれぞれ示されている。
このプリアンプ部51の出力は、図7の第2段に示すように、絶対値化部52で絶対値とされ(負が軸で折り返されて正とされ)、SH部53に入力される。絶対値化部52の出力は、図7の第3段に示すように、SH部53で前記所定の動作タイミング(サンプリング周期)△tでサンプリングされ、電荷量および符号が電荷保持部54−1に入力される。SH部53の出力は、図7の第4段に示すように、電荷保持部54−1で保持される。
そして、4個の電荷保持部54−1〜54−4では、図7の第4段ないし第7段に示すように、前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングで自己の電荷保持部54で保持している電荷をその符号(+または−)とともに順次に後段の電荷保持部54へ転送する。例えば、電荷保持部54−1は、前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングで自己の電荷保持部54−1で保持している電荷をその符号とともに順次に後段の電荷保持部54−2へ転送する。
また、アナログ乗算部55−1では、電荷保持部54−1の電荷Q(t+△t)がその符号とともに電荷移送部61−1へ移送され、その電荷Q(t+△t)が電荷分割部621−1で2等分され、その一方の電荷Q2(=0.5×Q(t+△t))がその符号とともに第1段目の電荷転送部631−1から第8段目の電荷転送部638−1へ前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングで順次に転送される。そして、アナログ乗算部55−1では、その符号が正の場合には、その出力(電荷転送部638−1の出力)がアナログ加算部56の電荷統合部71へ入力され、その符号が負の場合には、その出力(電荷転送部638−1の出力)がアナログ加算部56の電荷統合部72へ入力される。
また、アナログ乗算部55−2では、電荷保持部54−2の電荷Q(t)がその符号とともに電荷移送部61−2へ移送され、その電荷Q(t)が第1段目の電荷分割部621−2で2等分され、前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングで、その一方の電荷Q1(=2−1×Q(t))がその符号とともに第1段目の電荷加算部642へ転送されるとともに、その他方の電荷Q2(=2−1×Q(t))が第2段目の電荷分割部622−2へ転送される。そして、第2段目の電荷分割部622−2では、この電荷2−1×Q(t)が2等分され、前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングで、その一方の電荷Q1(=2−2×Q(t))が第2段目の電荷加算部643へ転送されるともに、その他方の電荷Q2(=2−2×Q(t))が第3段目の電荷分割部623−2へ転送され、そして、第1段目の電荷加算部642の電荷2−1×Q(t)がその符号とともに第2段目の電荷加算部643へ転送される。第2段目の電荷加算部643では、それぞれ転送された電荷2−1×Q(t)と電荷2−2×Q(t)とが加算され(2−1×Q(t)+2−2×Q(t))、第3段目の電荷分割部623−2では、この電荷2−2×Q(t)が2等分される。そして、前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングで、第3段目の電荷分割部623−2における一方の電荷Q1(=2−3×Q(t))が第3段目の電荷加算部644へ転送されるともに、その他方の電荷Q2(=2−3×Q(t))が第4段目の電荷分割部624−2へ転送され、そして、第2段目の電荷加算部643の電荷2−1×Q(t)+2−2×Q(t)がその符号とともに第3段目の電荷加算部644へ転送される。以後、前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングごとに、同様に動作し、第9段目の電荷分割部629−2には、電荷2−9×Q(t)=(1/512)×Q(t)が保持され、第8段目の電荷加算部649には、電荷2−1×Q(t)+2−2×Q(t)+2−3×Q(t)+2−4×Q(t)+2−5×Q(t)+2−6×Q(t)+2−7×Q(t)+2−8×Q(t)+2−9×Q(t)=(511/512)×Q(t)がその符号とともに保持される。
そして、アナログ乗算部55−2では、その符号が正の場合には、その出力(電荷加算部649の出力)がアナログ加算部56の電荷統合部71へ入力され、その符号が負の場合には、その出力(電荷加算部649の出力)がアナログ加算部56の電荷統合部72へ入力される。
また、アナログ乗算部55−3では、電荷保持部54−3の電荷Q(t−△t)がその符号とともに電荷移送部61−3へ移送され、その電荷Q(t−△t)が電荷分割部621−3で2等分され、その一方の電荷Q1(=0.5×Q(t−△t))が第1段目の電荷転送部631−3から第8段目の電荷転送部638−3へ前記所定の動作タイミング△tに応じたタイミングでその符号とともに順次に転送される。そして、アナログ乗算部55−3では、その符号が正の場合には、その出力(電荷転送部638−3の出力)がアナログ加算部56の電荷統合部71へ入力され、その符号が負の場合には、その出力(電荷転送部638−3の出力)がアナログ加算部56の電荷統合部72へ入力される。
そして、アナログ加算部56では、処理すべき電荷の符号が正の場合には、電荷統合部71で各アナログ乗算部55−1〜55−3の各出力が統合されて加算され、アナログ減算回路73の正の入力端子(+)へ入力される。一方、処理すべき電荷の符号が負の場合には、電荷統合部72で各アナログ乗算部55−1〜55−3の各出力が統合されて加算され、アナログ減算回路73の負の入力端子(−)へ入力される。そして、処理すべき電荷の符号が正(+)である場合には、プラスの符号を持った電荷統合部71の出力値がアナログ減算回路73から出力され、処理すべき電荷の符号が負(−)である場合には、マイナスの符号を持った電荷統合部72の出力値がアナログ減算回路73から出力される。アナログ減算回路73の出力は、アナログ加算部56の出力であり、アナログ−デジタル変換部57に入力される。
そして、アナログ−デジタル変換部では、アナログ加算部56の出力がアナログ信号からデジタル信号へ変換され、受信部13の出力とされる。
このように動作することによって、受信部13は、超音波探触子2の出力(第2超音波信号)をアナログ処理(アナログのままで信号処理)することによって第2超音波信号から高調波成分を抽出し、このアナログ処理によって抽出した第2超音波信号の高調波成分をデジタル信号化して画像処理部14へ出力する。
なお、上述では、高調波成分として第2次高調波成分の場合について説明したが、同様に、第3次高調波成分や第4次高調波成分等の高次高調波成分の場合についても同様に説明することができる。
このように本実施形態の超音波診断装置Sでは、超音波探触子2における所定の時間差のある複数のアナログ信号をアナログ処理することによって、すなわち、前記複数のアナログ信号をアナログのままで信号処理することによって、第2超音波信号の高調波成分が抽出され、この高調波成分に基づいて被検体の超音波画像が形成される。したがって、超音波診断装置Sは、被検体内の一箇所に対し2回の送受信が必要ではなく、アナログ処理によって第2超音波信号から高調波成分をより高い分解能で抽出するので、フレームレートを低下させることなく、より階調性の高い超音波画像を形成することができる。また、高調波成分は、フィルタによって抽出されるわけではないので、電気信号の伝播によって減衰損失が発生することもなく、またリンギングも発生しない。
また、超音波診断装置Sでは、上述したように、高調波成分が第1超音波信号の基本波によって関数表現され、高調波抽出部Hがアナログ処理を行う回路で簡易に構成される。
また、超音波診断装置Sでは、電荷保持部21、54、アナログ乗算部22、55およびアナログ加算部23、56が電荷転送素子(電荷結合素子)を用いて構成されるので、高調波抽出部Hがより簡易に構成され、また、高調波抽出部HのICチップ化が可能である。
また、超音波診断装置Sでは、電荷を2等分する電荷分割部CDと、2個の電荷を1個に統合する電荷統合部SDとを用いて構成されるので、高調波抽出部Hがより簡易に構成される。また、電荷の分割と統合とで前記アナログ信号がアナログ処理されるので、高調波抽出部Hは、比較的高精度にアナログ演算処理を実行することができ、比較的高精度に高調波成分を抽出することができる。
図8は、超音波探触子の受信波およびこの受信波に含まれる高調波成分を示す図であり、図9は、図8に示した超音波探触子の受信波から抽出した基本波成分(1st)、第2次高調波成分(2nd)および第3次高調波成分(3rd)を示す図である。図8の横軸は、時間であり、その左縦軸は、受信波の振幅レベルを示し、その右縦軸は、高調波成分の振幅レベルを示す。実線は、受信波を示し、そして、破線は、高調波成分を示す。図9の横軸は、周波数であり、その左縦軸は、基本波成分(1st)の振幅レベルを示し、その右縦軸は、高調波成分(2nd、3rd)の振幅レベルを示す。実線は、基本波成分(1st)を示し、そして、破線は、第2次高調波成分(2nd)、第3次高調波成分(3rd)を示す。図8および図9は、シミュレーションによって得られた結果である。
図8から分かるように、受信波に含まれる高調波成分は、その振幅レベルが受信波の振幅レベルに較べて著しく小さいが、図9から分かるように、本実施形態の高調波抽出部Hによって、ほぼ完全に基本波成分が抑圧されている。したがって、高調波成分をアナログ信号からデジタル信号へ変換する際に、アナログ−デジタル変換器のダイナミックレンジを全体に亘って利用することが可能となり、高調波成分が高分解能で変換され、超音波画像の階調性が向上する。
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
一態様にかかる超音波診断装置は、被検体内に送信した第1超音波信号に基づく前記被検体内から来た第2超音波信号に基づいて前記被検体内の画像を形成する超音波診断装置であって、前記第2超音波信号を受信した超音波探触子の出力を所定の時間間隔でサンプリングすることで得られた複数のアナログ信号をアナログ処理することによって、前記第2超音波信号から、前記第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における高調波成分を抽出する高調波抽出部と、前記高調波抽出部で抽出した前記高調波成分に基づいて前記被検体内の画像を形成する画像処理部とを備える。より具体的には、一態様にかかる超音波診断装置は、超音波探触子を介して被検体内へ第1超音波信号を送信するための送信部と、前記第1超音波信号に基づく前記被検体内から来た第2超音波信号を受信した前記超音波探触子の出力を所定の時間間隔でサンプリングすることで得られた複数のアナログ信号をアナログ処理することによって、前記第2超音波信号から、前記第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における高調波成分を抽出する受信部と、前記受信部で抽出した前記高調波成分に基づいて前記被検体内の画像を形成する画像処理部とを備える。
このような構成の超音波診断装置では、高調波抽出部が超音波探触子における所定の時間差のある複数のアナログ信号をアナログ処理することによって、すなわち、複数のアナログ信号をアナログのままで信号処理することによって、第2超音波信号の高調波成分を抽出し、画像処理部がこの高調波成分に基づいて被検体内の画像を形成する。したがって、このような構成の超音波診断装置は、被検体内の一箇所に対し2回の送受信が必要ではなく、アナログ処理によって第2超音波信号から高調波成分を抽出するので、フレームレートを低下させることなく、より階調性の高い超音波画像を形成することができる。
また、他の一態様では、上述の超音波診断装置において、前記受信部は、前記複数のアナログ信号のそれぞれを保持する複数の電荷保持部と、前記複数の電荷保持部のそれぞれに対応して設けられる複数のアナログ乗算部と、前記複数のアナログ乗算部の各出力をアナログ処理によって加算するアナログ加算部とを備える高調波抽出部を備え、前記アナログ乗算部は、前記電荷保持部に保持されているアナログ信号にアナログ処理によって重み付けを行い、前記重み付けは、前記高調波成分を前記第1超音波信号の基本波で表現した関数式の係数に基づいて設定される。
この構成によれば、高調波成分が第1超音波信号の基本波によって関数表現され、高調波抽出部がアナログ処理を行う回路で簡易に構成可能となる。
また、他の一態様では、上述の超音波診断装置において、前記複数の電荷保持部は、直列に接続され、所定の動作タイミングに応答して自己の電荷保持部で保持しているアナログ信号を順次に後段の電荷保持部へ転送し、前記アナログ乗算部は、電荷転送素子を用いた乗算器であり、前記アナログ加算部は、電荷転送素子を用いた加算器である。
この構成によれば、電荷保持部、アナログ乗算部およびアナログ加算部が電荷転送素子(電荷結合素子)を用いて構成されるので、高調波抽出部がより簡易に構成可能となり、また、高調波抽出部のICチップ化が可能となる。
また、他の一態様では、上述の超音波診断装置において、前記アナログ乗算部は、電荷を2等分して第1および第2分割部にそれぞれ保持し、直列に接続されている複数の電荷分割部と、複数の電荷を1個の電荷に統合する電荷統合部とを備え、電荷保持部で保持しているアナログ信号に対応する電荷量Qを前記電荷分割部で2等分し、その一方を後段の電荷分割部で2等分し、これを繰り返すことで、2−1Q、2−2Q、2−3Q、・・・、2−nQの複数nの電荷を生成し、これら各電荷を、前記重み付けMの2進表現m1、m2、m3、・・・、mnに従って取捨し、この取り上げた電荷を前記電荷統合部で統合する。
この構成によれば、電荷を2等分する電荷分割部と、2個の電荷を1個に統合する電荷統合部とを用いて構成されるので、高調波抽出部がより簡易に構成可能となる。また、電荷の分割と統合とで前記アナログ信号がアナログ処理されるので、高調波抽出部は、比較的高精度にアナログ演算処理を実行することができ、比較的高精度に高調波成分を抽出することができる。
この出願は、2008年7月10日に出願された日本国特許出願特願2008−179755を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。