本発明は、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置とすることの可能なカメラ用羽根駆動装置に関する。
上記のようなカメラ用羽根駆動装置のうち、レンズシャッタ装置(以下、単にシャッタ装置という)としては、2枚のシャッタ羽根を相反する方向へ同時に往復回転させるようにしたものが一般的である。しかし、最近では、カメラが情報端末機器に内蔵されるようになってきたこともあって、装置の小型化を図る必要性から、1枚のシャッタ羽根を往復回転させるようにしたものも多くなってきた。また、相反する方向へ同時に往復回転させるようにした2枚のシャッタ羽根のうち、少なくとも一方を2枚の分割羽根で構成し、全開時にはそれらの分割羽根を十分に重ね合わせることによって、羽根の収容スペースを少なくし、装置の小型化を図れるようにすることも知られている。
そして、それらのシャッタ装置と略同じ構成をしたものは、羽根が撮影レンズの前面を開閉させるように配置することによって、レンズバリア装置とすることが可能であることも知られている。
また、絞り装置としては、従来は、絞りリングを用い、複数枚の絞り羽根を同時に同方向へ往復回転させるようにしたものが普通であったが、情報端末装置内蔵用のカメラを含む最近の小型のデジタルカメラにおいては、小さい円形の開口部を有した1枚の絞り羽根を往復回転させるようにしたものが一般的になっている。
また、最近のフィルタ装置としては、そのような絞り羽根に形成されている開口部をNDフィルタシートで覆うことによってフィルタ羽根としたものが普通になっているが、NDフィルタシートの濃度次第では、NDフィルタシートで覆う開口部の大きさを撮影光路を規制している開口部(露光開口)よりも大きくするようにしたものも知られている。また、NDフィルタシートを傷付けないようにするために、NDフィルタシートだけで製作した羽根部材を、上記の絞り羽根のような形状の2枚の羽根部材でサンドウイッチし、3枚重ねにしたものをフィルタ羽根としたものも知られている。
そして、このような各種のカメラ用羽根駆動装置においては、駆動源として電磁アクチュエータが用いられているが、その代表的なものの一つとして、下記の特許文献1に記載されているような、装置の小型化,低コスト化に有利な電流制御式の電磁アクチュエータが知られている。この電磁アクチュエータは、永久磁石製の回転子が、固定子コイルに対して順方向へ電流を供給すると一方へ回転させられ、逆方向へ電流を供給すると他方へ回転させられるようになっていて、回転子が所定の角度範囲内で回転させられると、回転子と一体の出力ピンが、羽根を往復回転させるようにしたものである。
本発明は、このように、永久磁石製の回転子が所定の角度範囲内でだけ往復回転させられ、回転子と一体の出力ピンの往復回転によって、少なくとも1枚の羽根を往復回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
周知のように、最近では、上記のようなカメラ用羽根駆動装置は、小型化と同時に薄型化が要求されている。しかしながら、その薄型化(光軸に沿った方向の寸法を小さくすること)にとって一番問題となるのは、全体として円柱形をしている電磁アクチュエータの存在である。即ち、特許文献1に記載の電磁アクチュエータからも分かるように、回転子と一体であって回転子の回転軸と平行になるように形成された出力ピンが、羽根を直接回転させるようにしているため、電磁アクチュエータは、回転子の回転軸を光軸と平行になるようにして地板に取り付けられている。
そのため、装置の全体構成としては、電磁アクチュエータのところだけが大きく突き出た構成にならざるを得ない。特に、特許文献1に記載されている構成をした電流制御式の電磁アクチュエータを用いた場合は、固定子コイルが、回転子の二つの軸受け部を囲むようにして巻回されているので、一層突き出た構成になってしまう。そこで、このような、回転子と一体の出力ピンを備えていて、固定子枠の全体形状が略柱状になるようにした電磁アクチュエータを採用したとしても、地板から光軸に沿った方向への突き出し量が少しでも小さくなるようにしたカメラ用羽根駆動装置の出現が期待されている。
また、特許文献1に記載されているカメラ用羽根駆動装置の場合には、回転子と一体の出力ピンが、光軸と直交する面において、円弧状に往復回転させられる。そして、通常の場合、回転子の回転軸と羽根の回転軸は同心上には配置されていない。そのため、回転子の出力ピンは、羽根に形成されている長孔に嵌合させられている。
ところが、長孔の長さが長いと、地板に取り付けられている羽根の根元部の領域を大きくしなければならないので、地板上への他の部材の配置に支障を来たすことがある。特に、相反する方向へ回転させる2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置とする場合には、シャッタ羽根の取付け間隔を小さくして、シャッタ羽根の作動を高速化するようにしたり、2枚のシャッタ羽根の共通部品化を図るようにすることが難しくなる。そうかといって、長孔の大きさを変えずに上記の領域を小さくしようとすると、長孔の一端と外形縁との距離、若しくは長孔の他端と地板への取付け用の孔との距離が短くなって、プレス加工時に羽根が破壊され易くなってしまうなどの問題点がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回転子と一体に所定の回転角度範囲を往復回転する出力ピンを備えていて、固定子枠が全体として柱状の外形形状をした電磁アクチュエータを地板に取り付けても、地板から光軸に沿った方向への突き出し量が従来よりも小さくて済むようになると共に、羽根に形成されていて出力ピンを嵌合させる長孔の長さを従来よりも短くすることの可能なカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明は、各々が光軸を中心にして形成された開口部を有していて両者の間に少なくとも一つの羽室を構成している二つの地板と、前記羽根室内において前記二つの地板のいずれか一方に回転可能に取り付けられている少なくとも1枚の羽根と、永久磁石製の回転子を有していて前記羽根室外で前記二つの地板のいずれか一方に取り付けられており該回転子と一体の出力ピンを前記羽根室内で前記羽根の長孔に嵌合させ該回転子の所定の角度範囲内での往復回転によって前記羽根を前記開口部に進退させる電磁アクチュエータと、を備えたカメラ用羽根駆動装置において、前記電磁アクチュエータは、前記回転子の回転軸が前記光軸と直交する姿勢にさせられて前記二つの地板のいずれか一方に取り付けられており、前記出力ピンは、その軸方向が、前記回転子の径方向になるようにして、少なくとも前記長孔の縁に接触する部位が先細りの直円錐台形に形成されているようにする。
前記出力ピンの、少なくとも前記長孔の縁に接触する部位が先細りの直円錐台形に形成されているようにすると、出力ピンと長孔の縁の間の隙間を小さくすることが可能になって、羽根の作動が安定する。
また、前記羽根が2枚の羽根であり、該2枚の羽根は、異なる位置で前記二つの地板のいずれか一方に回転可能に取り付けられていて、それらの有する長孔の両方に前記出力ピンを嵌合させており、いかなる作動状態においても、一方の羽根の取付け位置から前記出力ピンまでの距離が、他方の羽根の取付け位置から前記出力ピンまでの距離と略同じであるようにすると、2枚の羽根の共通部品化が可能になるし、共通部品化しても二つの羽根の取付け位置の間隔を狭くすることが可能になるので、羽根の高速作動が得やすくなるなど、カメラ用羽根駆動装置の設計の自由度が大きくなる。
更に、本発明に用いられる電磁アクチュエータは、前記出力ピンが前記回転子と一体化されたものであれば、ステップモータであっても差し支えないが、前記回転子は、径方向へ2極に着磁されていて固定子枠に軸受けされており、該固定子枠には、前記回転子の二つの軸受け部の外側を囲むようにして固定子コイルが巻回されていて、前記回転子は、該固定子コイルへの供給電流の方向に対応した方向へ回転力が付与されるようにした電流制御式の電磁アクチュエータにすると、装置の小型化,低コスト化に一層有利なものとなる。
本発明は、永久磁石製の回転子を有していて羽根室外で地板に取り付けられており、回転子と一体の出力ピンを羽根室内で羽根の長孔に嵌合させ、回転子の所定の角度範囲での往復回転によって羽根を往復回転させるようにした電磁アクチュエータを備えているカメラ用羽根駆動装置において、電磁アクチュエータを、回転子の回転軸が光軸と直交する姿勢になるようにして地板に取り付けると共に、出力ピンを、その軸方向が回転子の径方向になるようにして形成しているため、電磁アクチュエータが全体として柱状の外形形状をした固定子枠を有していても、地板から光軸に沿った方向への突き出し量が従来よりも小さくて済むようになると共に、羽根に形成されていて出力ピンを嵌合させる長孔の長さを従来よりも短くすることが可能になり、カメラ用羽根駆動装置の設計の自由度が大きくなるという利点がある。
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置とすることが可能であるが、実施例1は、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置としたものであり、実施例2は、2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置としたものである。そこで、その他の装置として実施する場合のことについては、それらの実施例の説明中で適宜説明を加えることにする。尚、図1〜図5は、実施例1を説明するためのものであり、図6及び図7は実施例2を説明するためのものであって、図8は、実施例1と実施例2との電磁アクチュエータの構成の差異に基づく作用上の差異を説明するためのものである。
先ず、図1〜図5を用いて、実施例1を説明するが、図1は、シャッタ羽根が撮影用の開口部を全開にしている状態を示した平面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。また、図3は、図1の背面側から羽根室内が見えるようにして示した平面図であり、図4は、シャッタ羽根が撮影用の開口部を閉鎖している状態を図3と同様にして示した平面図である。更に、図5は、実施例1と従来例との作用効果の差異を説明するための図であって、図5(a)は実施例1を示したものであり、図5(b)は従来例を示したものである。
本実施例は、本発明のカメラ用羽根駆動装置を、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置として構成したものである。そこで先ず、その構成を説明する。主地板1と補助地板2は、いずれも合成樹脂製であって、平面の外形形状は略同じであり、図示していない適宜な手段によって相互に取り付けられ、それらの間に羽根室を構成しているが、図3及び図4においては、羽根室内が見えるようにするために、補助地板2を三点鎖線で示してある。また、それらの地板1,2には、略中央の対向領域に、光軸を中心にした円形の開口部1a,2aが形成されているが、開口部2aの方が若干大きくて、露光開口は開口部1aによって規制されている。また、図3及び図4から分かるように、それらの地板1,2には、長方形をした逃げ孔1b,2bが対向するようにして形成されているが、逃げ孔1bの方が若干大きい。
図1及び図2から分かるように、主地板1の羽根室外側の面には、カメラ本体への取付部1c,1dと、可撓性を有するフック部1eと、台部1f,1gとが形成されており、台部1fには、位置決めピン1hが立設され、台部1gには、位置決めピン1iが立設されているほか、ねじ穴1jが形成されている。また、図3及び図4から分かるように、主地板1の羽根室内側の面には、羽根取付軸1kと、ストッパ軸1m,1nとが立設されており、それらの先端は、補助地板2に形成された夫々の孔に挿入されているが、それらのうち、羽根取付軸1kの先端が補助地板2の孔2cに挿入されている状態だけが、図2に示されている。そして、その羽根取付軸1kには、長孔3aを有するシャッタ羽根3が回転可能に取り付けられている。
主地板1の羽根室外側の面には、電磁アクチュエータが取り付けられているが、その構成と主地板1への取付け構成を、主に図2を用いて説明する。電磁アクチュエータの固定子枠は、合成樹脂製の第1固定子枠4と第2固定子枠5で構成されている。先ず、第1固定子枠4は、筒状部4aと、その軸方向の一端(図2における左端)を塞ぐように形成された壁部4bとによって、全体としてコップ状に形成されている。そして、壁部4bの略中心に軸受け孔4cを有している。また、壁部4bから張り出すようにして取付け板部4dが形成されていて、そこに孔4eが設けられている。尚、本実施例では、周知であるため図示を省略しているが、この第1固定子枠4には、特許文献1に記載されているようにして4本の鉄ピンが埋設されている。
本実施例の第2固定子枠5は、上記の壁部4bと平行な平板部5aを有していて、第2固定子枠5との間に後述する回転子9の収容室を構成している。そして、平板部5aには、上記の軸受け孔4cと対向するところに軸受け孔5bが形成されている。また、この第2固定子枠5は、平板部5aから垂直に形成された取付け板部5cを有していて、そこに孔5d,5eが設けられている。
このような第1固定子枠4と第2固定子枠5とは、適宜な手段で両者を位置合わせしておいた後、上記の二つの軸受け孔4c,5bの外側を通るようにして形成された一連の環状凹溝に固定子コイル6を巻回することによって、相互に取り付けられている。そして、固定子コイル6の巻回後、第1固定子枠4の筒状部4aの外側に、円筒状のヨーク7が嵌装されている。
このようにして構成されている固定子は、第1固定子枠4の孔4eを主地板1の位置決めピン1hに嵌合させ、また、第2固定子枠5の孔5dを主地板1の位置決めピン1iに嵌合させてから、第1固定子枠4の取付け板部4dに主地板1のフック部1eを引っ掛けておき、ねじ8を、第2固定子枠5の取付け板部5cの孔5eから主地板1のねじ穴1jにねじ込むことによって、主地板1に取り付けられている。
第1固定子枠4と第2固定子枠5との間に構成された収容室には、回転子9が収容されている。この回転子9は、回転軸となる回転軸部9aと、その回転軸部9aから収容室外へ張り出している腕部9bと、腕部9bの先端に形成された出力ピン9cとが合成樹脂で一体成形されており、回転軸部9aの周囲には、円筒形をしていて径方向に2極に着磁された永久磁石9dが固定されている。そして、回転子9は、回転軸部9aの一端を第1固定子枠4の軸受け孔4cに回転可能に嵌合させ、他端を第2固定子枠5の軸受け孔5bに回転可能に嵌合させている。
このように、本実施例の出力ピン9cは、従来のように、出力ピン9cの軸方向が回転子9の回転軸と平行になるようにして形成されておらず、径方向(ラジアル方向)になるようにして形成されている。また、本実施例の出力ピン9cは、従来のように、円柱状に形成されておらず、先細りとなる直円錐台形に形成されている。そして、この出力ピン9cは、主地板1の逃げ孔1bに挿入されていて、羽根室内でシャッタ羽根3の長孔3aに嵌合し、先端を補助地板2の逃げ孔2bに挿入している。
尚、本実施例の回転子9は、回転軸部9aと、腕部9bと、出力ピン9cとを合成樹脂製にしているが、それらを永久磁石製にしても構わない。また、本実施例においては、軸受け部を二つの貫通した軸受け孔4c,5bとして形成しているが、本発明の軸受け部の構成は、このような構成に限定されず、有底孔として形成しても構わない。また、それらの軸受け孔4c,5bの形成部位に軸を形成し、それらの軸を嵌合させるための孔を、回転軸部9aの両端部位に形成するようにしても構わない。
次に、本実施例の作動を説明する。本実施例のシャッタ装置は、周知のように、フィルムを使用するカメラにもデジタルカメラにも採用することが可能であるが、それらのうち、デジタルカメラに採用された場合の作動を説明する。図3に示されている状態は、シャッタ羽根3が開口部1aを全開にした撮影待機状態である。そのため、被写体光が開口部1aを通過して固体撮像素子に当たっており、撮影者は、モニターによって、被写体像を観察することが可能になっている。
また、このとき、電磁アクチュエータの固定子コイル6には電流が供給されていない。しかしながら、周知のように、回転子9の永久磁石9dと上記の図示していない4本の鉄ピンとの間に作用する永久磁石9dの磁力によって、回転子9には、図2の右側から見て、時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、シャッタ羽根3には、出力ピン9cによって、図3において反時計方向へ回転する力が与えられているが、その回転は、ストッパ軸1mに阻止されて、この状態が維持されている。
この状態でカメラのレリーズボタンを押すと、露光制御回路からの信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その後、あらたに撮影のための電荷の蓄積が開始(撮影のための露光開始)される。そして、被写体の輝度に対応した所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、固定子コイル6に対して順方向の電流が供給され、回転子9は、図2の右側から見て、反時計方向へ回転させられる。そのため、出力ピン9cは、図3においてシャッタ羽根3を時計方向へ回転させ、開口部1aを閉じさせる。そして、シャッタ羽根3は、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、ストッパ軸1nに当接して停止する。図4は、そのときの状態を示したものである。
このようにして、シャッタ羽根3の閉じ作動が終了すると、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、固定子コイル6に対し逆方向の電流が供給される。それによって、回転子9は、図2の右側から見て、時計方向へ回転させられるので、出力ピン9cが、シャッタ羽根3を、図4において反時計方向へ回転させ、開口部1aを開かせていく。その後、開口部1aを全開にすると、シャッタ羽根3は、その直後に、ストッパ軸1mに当接して停止させられる。そして、固定子コイル6に対する通電が断たれると、図3の撮影待機状態に復帰したことになる。尚、本実施例のシャッタ装置を、フィルムを使用するカメラに採用した場合は、周知のように、図4に示された状態が撮影待機状態であって、撮影に際して、シャッタ羽根3は、開口部1aを全開にしてから閉鎖するようになる。
ここで、電磁アクチュエータが、本実施例のように構成されていると、従来の構成に対してどのような利点があるのかを、図5を用いて説明する。図5(a)は、本実施例の構成の一部を拡大して示したものであるが、便宜的に、シャッタ羽根3の回転角度を、実施例の場合よりも大きくして示してある。そして、シャッタ羽根3と出力ピン9cについては、撮影待機状態を実線で示し、開口部1aの閉鎖状態を二点鎖線で示している。また、出力ピン9cの作動軌跡を一点鎖線で示してある。つまり、この図5(a)の図面上においては、出力ピン9cの作動軌跡は直線状である。そして、その延長線上に光軸(開口部1aの中心)があることを、四点鎖線で示してある。
図5(b)に示されている従来例は、電磁アクチュエータ以外の構成を図5(a)の構成と全く同じにして示したものであり、符号も同じものを用いている。但し、シャッタ羽根3の長孔3aの長さだけは、図5(a)の場合よりも明らかに長くなっている。また、図5(b)においては、従来の電磁アクチュエータが、従来のような姿勢で主地板1に取り付けられていることを理解できるようにするために、回転子Rを二点鎖線で示しているが、その出力ピンPは実線で示してある。また、出力ピンPの作動軌跡を一点鎖線で示してあるが、周知のように円弧状になる。そして、この図5(b)においても、四点鎖線で示されているように、シャッタ羽根3の撮影待機状態における出力ピンPの位置と、開口部1aの閉鎖状態における出力ピンPの位置とを直線で結ぶと、その延長線上に光軸(開口部1aの中心)があるようにしてある。
このように、図5(a)と図5(b)を並べてみると分かるように、従来例の場合は、出力ピンPの作動軌跡が円弧状になるため、長孔3aの長さAが、本実施例の長孔Bの長さよりも長くなっている。そのため、その分だけ、従来例の場合には、羽根取付軸1kに嵌合している孔の縁から長孔3aの縁までの距離Cが、本実施例におけるDよりも短くなっていることになる。勿論、両者は、A+C=B+Dの関係になっていることは言うまでもない。
本実施例では、二つの地板1,2を必要以上に大きくして示しているが、シャッタ装置の小型化のためには、羽根取付軸1kと長孔3aとの距離を短くすることが要求される。ところが、羽根取付軸1kと長孔3aとの距離が短くなると、シャッタ羽根3の加工が困難になり、プレス機械で打ち抜き加工をすると、羽根取付軸1kに対する嵌合孔と長孔3aの間が破壊されてしまうようになる。このことは、長孔3aの長さ方向の反対側の縁から、シャッタ羽根3の外形縁までの距離についても同じことが言える。
従って、本実施例の場合には、シャッタ羽根3の長孔3aの長さを従来よりも短くすることができることによって、そのようなことを生じさせるおそれがなく、シャッタ羽根3の根元部の領域を従来よりも小さくすることができるので、極めて有利な構成といえる。そして、このことは、出力ピン9cが直円錐台形をしていることとは関係なく、従来のように円柱形をしていても同じことが言える。但し、直円錐台形にした方が有利となる点については、下記の実施例2の説明の終わりのところで説明する。
このように、本実施例は、本発明を、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置として構成したものである。しかしながら、シャッタ羽根3をバリア羽根として、撮影レンズの前面で作動させるようにすれば、レンズバリア装置になる。また、本実施例におけるシャッタ羽根3に、開口部1aよりも小さな開口部を形成すれば、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置になるし、シャッタ羽根3を既に説明したようなフィルタ羽根に代えれば、フィルタ装置になる。そのため、それらの態様は、全て本発明のカメラ用羽根駆動装置である。
次に、図6及び図7を用いて実施例2を説明した後、図8を用いて上記の実施例1の出力ピンと実施例2の出力ピンとの差異について説明する。図6は、シャッタ羽根が撮影用の開口部を全開にしている状態を示した平面図であり、図7は、シャッタ羽根が撮影用の開口部を閉鎖している状態を示した平面図である。また、図8は、図8(a),図8(b)が実施例1の場合を示し、図8(c),図8(d)が実施例2の場合を示したものであって、図8(a),図8(c)はシャッタ羽根の作動停止状態を示したものであり、図8(b),図8(d)はシャッタ羽根の作動途中の状態を示したものである。
尚、本実施例は、本発明を、2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置として構成したものである。しかしながら、本実施例で用いている電磁アクチュエータの構成は、出力ピンの形状が異なるだけで、実施例1の場合と同じである。また、主地板に対する電磁アクチュエータの取付け構成は、実施例1の場合と全く同じである。更に、主地板と補助地板の構成も、シャッタ羽根を2枚にしたことに伴う差異があるだけで、その他の構成は実施例1の場合と同じである。従って、本実施例の説明に際しては、電磁アクチュエータの構成と符号については、出力ピンを除いて上記の図1及び図2を援用する。また、図6及び図7では、主地板と補助地板に実施例1と同じ符号を付け、且つそれらの同じ部位にも同じ符号を付けておく。
そこで、実施例1の場合とは異なる点を中心にして、本実施例の構成を説明する。先ず、本実施例の主地板1は、羽根室側の面に、二つの羽根取付軸1p,1qと、四つのストッパ軸1r,1s,1t,1uとを立設しており、それらの先端を、補助地板2に形成された図示していない孔に挿入している。そして、一方の羽根取付軸1pには、長孔10aを有するシャッタ羽根10が回転可能に取り付けられており、他方の羽根取付軸1qには、長孔11aを有するシャッタ羽根11が回転可能に取り付けられている。
また、回転子9に設けられている本実施例の出力ピン9eは、実施例1の出力ピン9cと同様に、その軸方向が、回転子9の回転軸の径方向(ラジアル方向)となるように形成されているが、その形状は、実施例1の出力ピン9cのような直円錐台形ではなく、周知のような円柱形をしている。そして、この出力ピン9eは、主地板1の逃げ孔1bに挿入されて、羽根室内でシャッタ羽根10,11の長孔10a,11aの両方に嵌合し、先端を補助地板2の逃げ孔2bに挿入している。
次に、本実施例の作動を、デジタルカメラに採用した場合で、簡単に説明する。図6に示された状態は、シャッタ羽根10,11が開口部1aを全開にした撮影待機状態である。このとき、電磁アクチュエータの固定子コイル6には電流が供給されていないが、既に説明したように、回転子9には、図2の右側から見て、時計方向へ回転する力が付与されているため、出力ピン9eによって、シャッタ羽根10には反時計方向へ回転する力が与えられ、シャッタ羽根11には時計方向へ回転する力が与えられている。しかしながら、それらの回転は、ストッパ軸1r,1sに阻止されて、この状態が維持されている。
カメラのレリーズボタンを押すと、撮影が開始され、被写体の輝度に対応した所定時間後に、固定子コイル6に対して順方向の電流が供給される。そのため、回転子9は、図2の右側から見て、反時計方向へ回転させられるので、出力ピン9eは、図6においてシャッタ羽根10を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根11を反時計方向へ回転させて開口部1aを閉じさせる。そして、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根10はストッパ軸1tに当接し、シャッタ羽根11はストッパ軸1uに当接することによって停止する。図7は、そのときの状態を示したものである。
シャッタ羽根10,11の閉じ作動が終了すると、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送され、その後、固定子コイル6に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子9は、図2の右側から見て、時計方向へ回転させられるので、出力ピン9eが、図7において、シャッタ羽根10を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根11を時計方向へ回転させることによって、開口部1aを開かせる。開口部1aが全開すると、その直後に、シャッタ羽根10はストッパ軸1rに当接して停止させられ、シャッタ羽根11はストッパ軸1sに当接して停止させられる。その後、固定子コイル6に対する通電を断つと、図6の撮影待機状態に復帰したことになる。尚、本実施例のシャッタ装置をフィルムを使用するカメラに採用した場合は、図7に示した状態が撮影待機状態になることは言うまでもない。
このような本実施例の場合にも、実施例1において図5を用いて説明したように、図6及び図7においては、出力ピン9eの作動軌跡が直線状になるので、シャッタ羽根10,11の長孔10a,11aは、従来よりも短くなっている。そのため、本実施例では、シャッタ羽根10,11は、羽根取付軸1p,1qに対する嵌合孔と長孔10a,11aの一端との間隔を余り小さくしなくて済み、加工が容易になっている。
また、長孔10a,11aの他端側の縁からシャッタ羽根10,11の外形縁までの距離を短くすることなく、羽根取付軸1p,1qから、長孔10a,11aの他端側の外形縁までの距離が、従来よりも短くなっている。そのため、二つの羽根取付軸1p,1qの間隔が従来よりも小さい。また、シャッタ羽根10,11の作動中において、羽根取付軸1p,1qから出力ピン9eまでの距離は変化するが、その距離は、シャッタ羽根10の場合とシャッタ羽根11の場合とでは常に同じになっている。つまり、このことは、長孔10a,11aの長さが必要最小限の同じ長さになっているということである。従って、本実施例の場合には、2枚のシャッタ羽根10,11を共通部品として製作しておき、一方を裏返して組み付けることができる構成になっているので、小型化,低コスト化が可能になっているほか、シャッタ羽根10,11の高速化も可能になっている。
尚、本実施例は、2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置であるが、2枚のシャッタ羽根のうち、少なくとも一方を2枚の分割羽根で構成し、全開時にはそれらの分割羽根を重ね合わせるようにすれば、装置の小型化を図ることが可能になる。従って、そのように構成したシャッタ装置も本発明のカメラ用羽根駆動装置である。そして、本実施例のシャッタ装置も、そのように少なくとも一方のシャッタ羽根を分割した構成のシャッタ装置も、そのままレンズバリア装置とすることが可能である。従って、それらのようにしたレンズバリア装置も、本発明のカメラ用羽根駆動装置である。
ところで、本実施例の出力ピン9eは円柱状をしているが、実施例1の出力ピン9cは直円錐台形をしていた。そこで、そのような形状の相違からくる両者の作動上の相違点を、図8を用いて説明する。尚、本実施例では、2枚のシャッタ羽根10,11を備えていたが、比較説明の便宜上、図8(c),図8(d)においては、シャッタ羽根10だけを記載してある。
先ず、実施例1を示した図8(a),図8(b)においては、長孔3aの幅方向の寸法をAで示してある。そして、図8(a)に示されているシャッタ羽根3の停止状態においては、出力ピン9cが長孔3aの幅方向の二つの縁に略接触状態となっている。このとき、長孔3aの縁に略接触している出力ピン9cの二つの部位を直線で結んだ寸法がEである。そのため、寸法Eは寸法Aと略同じであるが、若干小さいことになる。また、図8(b)は、回転子9が図8(a)の状態から反時計方向へ回転を開始し、シャッタ羽根3がその作動行程の略中間位置になった状態を示したものであるが、出力ピン9cの中心線と母線とでつくる角度αは、このときにも、長孔3aの幅方向の二つの縁に対向している出力ピン9cの二つの部位を結ぶ直線寸法がEとなるように設定されている。そのため、厳密に言えば、図8(a)の状態から図8(b)の状態に至るシャッタ羽根3の作動行程中において、長孔3aの幅方向の二つの縁に対向している出力ピン9cの二つの部位を結ぶ直線寸法が若干変わることになるが、その変化量は実用上、問題がないようになっている。
実施例1は、このように構成されているため、出力ピン9cは、その後も、図8(b)の状態になるまでと同様、回転子9の反時計方向への回転が停止するまで、長孔3aの幅方向の二つの縁に対して略接触状態を維持していることになる。従って、撮影時におけるカメラの構え方などによって、作動中に、シャッタ羽根3が傾いたり踊ったりするようなことが殆どない。尚、上記の角度αは、シャッタ羽根3の作動基準面から電磁アクチュエータの回転軸部9aの中心までの距離によって変わるものであることは言うまでもない。
それに対して、本実施例の場合には、出力ピン9eが円柱形をしている。そのため、図8(c)に示されたシャッタ羽根10の停止状態においては、長孔10aの幅方向の二つの縁のいずれに対しても、出力ピン9eが傾いた状態になって略接触状態が得られている。従って、この場合には、出力ピン9eの直径をAとした場合、長孔10aの幅方向の寸法はA+Bということになる。回転子9が、この状態から反時計方向へ回転を開始し、シャッタ羽根10がその作動行程の略中間位置になったときの状態が図8(d)に示されている。このとき、出力ピン9eは垂直になっているため、出力ピン9eと長孔10aの幅方向の左側の縁との間には、寸法Bの隙間ができてしまうようになる。従って、撮影時におけるカメラの構え方などによっては、このとき、シャッタ羽根10が傾いたり踊ったりし易くなっていることになる。
このように、上記のような観点に立ってだけ両者を比較した場合には、実施例1の出力ピン9cの方が、本実施例の出力ピン9eよりも有利ということが言える。しかしながら、出力ピンの形状は、上記の観点だけから決められるものでないことは言うまでもない。そのため、本発明は、上記の実施例1の出力ピン9cに、本実施例の出力ピン9eの形状を採用し、本実施例の出力ピン9eに、実施例1の出力ピン9cの形状を採用しても一向に差し支えない。尚、出力ピン9cは、シャッタ羽根3の長孔3aの縁と接触する部位だけが直円錐台形をしていればよいので、全体としては、例えば、直円錐形であっても構わない。同様に、出力ピン9eは、シャッタ羽根10の長孔10aの縁と接触する部位が円柱状をしていればよく、例えば、先端が直円錐台形になっていたり球面になっていても構わない。
上記の各実施例の場合には、駆動源として、特許文献1に記載されているタイプの電流制御式の電磁アクチュエータを用いているが、本発明の電磁アクチュエータは、そのようなタイプの電磁アクチュエータに限定されず、永久磁石を有する回転子と一体に所定の回転角度を往復回転するようにした出力ピンを備えていて、固定子枠が全体として柱状の外形形状をした電磁アクチュエータであるならば、ステップモータであっても構わない。
シャッタ羽根が撮影用の開口部を全開にしている状態を示した実施例1の平面図である。
図1のA−A線断面図である。
図1の背面側から羽根室内が見えるようにして示した平面図である。
シャッタ羽根が撮影用の開口部を閉鎖している状態を図3と同様にして示した平面図である。
実施例1と従来例との作用効果の差異を説明するための図であって、図5(a)は実施例1を示したものであり、図5(b)は従来例を示したものである。
シャッタ羽根が撮影用の開口部を全開にしている状態を図3と同様にして示した実施例2の平面図である。
シャッタ羽根が撮影用の開口部を閉鎖している状態を図6と同様にして示した平面図である。
実施例1と実施例2との作用効果の差異を説明するための図であって、図8(a),図8(b)は実施例1の場合を示し、図8(c),図8(d)は実施例2の場合を示していて、図8(a),図8(c)はシャッタ羽根の作動停止状態を示したものであり、図8(b),図8(d)はシャッタ羽根の作動途中の状態を示したものである。
符号の説明
1 主地板
1a,2a 開口部
1b,2b 逃げ孔
1c,1d 取付部
1e フック部
1f,1g 台部
1h,1i 位置決めピン
1j ねじ孔
1k,1p,1q 羽根取付軸
1m,1n,1r,1s,1t,1u ストッパ軸
2 補助地板
2c,4e,5d,5e 孔
3,10,11 シャッタ羽根
3a,10a,11a 長孔
4 第1固定子枠
4a 筒状部
4b 壁部
4c,5b 軸受け孔
4d,5c 取付け板部
5 第2固定子枠
5a 平板部
6 固定子コイル
7 ヨーク
8 ねじ
9 回転子
9a 回転軸部
9b 腕部
9c,9e,P 出力ピン
9d 永久磁石