JP5294907B2 - 絶縁電線およびコイル - Google Patents
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Description
しかし、製造時に、複数本のエナメル線より成る撚線を円形ダイスに通して外側より円形に圧縮するが、このとき外周面に相当するエナメル層が円形ダイスとの摩擦で損傷し、外周面の絶縁特性が低下する。すなわち、上記従来のリッツ線は、絶縁特性に問題がある。このため、コイルに巻回した場合、巻線間でのショート即ちレアーショートを起こしやすく信頼性に問題がある。なお、外周面に自己融着層を設けているが、これは絶縁特性を保障するものではない。
そこで、本発明の目的は、高周波特性および絶縁特性に優れた絶縁電線およびコイルを提供することにある。
上記第1の観点による絶縁電線では、断面輪郭が非円形のエナメル線が複数本集合して全体の断面輪郭が円形になった集合線を束ねるように絶縁テープを巻回して第1絶縁被覆とする。複数本のエナメル線を円形ダイスに通して外側より円形に圧縮して集合線を製造する場合、集合線の外周面に相当するエナメル層が円形ダイスとの摩擦で損傷し、集合線の外周面の絶縁特性が低下する。しかし、集合線の外周に少なくとも1層の絶縁被覆を設けるため、十分な絶縁特性が得られる。また、テープ巻きにより集合線のバラケを防止することが出来るため、コイルに巻線した際にも均一な仕上がり外径が得られる。さらに、単線に比べて高周波銅損を低減できるため、高周波特性に優れている。
上記第2の観点による絶縁電線では、複数本のエナメル線を撚らずに平行に束ねるため、撚った場合よりも仕上がり外形を小さく出来る。また、線長を短縮できる。さらに、直流抵抗を低減できる。また、複数本のエナメル線を撚る場合、その撚り加工工程は、圧縮工程やテープ巻工程と比べて加工線速が遅いため、生産性が悪くなり、製造コストを押し上げる要因となるが、その撚り加工工程を必要としないので、生産性を向上でき、製造コストを低減することが出来る。
上記第3の観点による絶縁電線では、銅線を軟磁性層で被覆するため、渦電流損を発生させる磁束は、銅線部分よりも表面の磁性層を通り易い。磁性層は銅よりも固有抵抗が高いため、渦電流損を低減することが出来る。従って、高周波銅損をさらに低減でき、高周波特性をさらに向上できる。
上記第4の観点による絶縁電線では、断面輪郭が非円形のエナメル線および裸銅線が複数本集合して全体の断面輪郭が円形になり且つ裸銅線同士が隣接しない配置になった集合線を束ねるように絶縁テープを巻回して第1絶縁被覆とする。複数本のエナメル線および裸銅線を円形ダイスに通して外側より円形に圧縮して集合線を製造する場合、集合線の外周面に相当するエナメル層が円形ダイスとの摩擦で損傷し、集合線の外周面の絶縁特性が低下する。しかし、集合線の外周に少なくとも1層の絶縁被覆を設けるため、十分な絶縁特性が得られる。また、テープ巻きにより集合線のバラケを防止することが出来るため、コイルに巻線した際にも均一な仕上がり外径が得られる。また、単線に比べて高周波銅損を低減できるため、高周波特性に優れている。さらに、一部に裸銅線を使用するため、全てをエナメル線にするよりも半田付け性を向上できると共にコストを低減できる。
上記第5の観点による絶縁電線では、複数本のエナメル線および裸銅線を撚らずに平行に束ねるため、撚った場合よりも仕上がり外形を小さく出来る。また、線長を短縮でき、直流抵抗を低減できる。また、複数本のエナメル線および裸銅線を撚る場合、その撚り加工工程は、圧縮工程やテープ巻工程と比べて加工線速が遅いため、生産性が悪くなり、製造コストを押し上げる要因となるが、その撚り加工工程を必要としないので、生産性を向上でき、製造コストを低減することが出来る。
上記第6の観点による絶縁電線では、銅線を軟磁性層で被覆するため、渦電流損を発生させる磁束は、銅線部分よりも表面の磁性層を通り易い。磁性層は銅よりも固有抵抗が高いため、渦電流損を低減することが出来る。従って、高周波銅損をさらに低減でき、高周波特性をさらに向上できる。
上記第7の観点による絶縁電線では、集合線の一部に錫めっき層が露出しているため、半田付け性を向上することが出来る。
上記第8の観点による絶縁電線では、絶縁テープを3層以上巻くため、安全規格で定める強化絶縁電線とみなされ、スイッチング電源等に使用される高周波トランスに使用した場合、一次・二次間に絶縁隔壁を設ける必要がなくなるなど、高周波トランスの小型化などにも寄与しうる。
上記第9の観点による絶縁電線では、巻線性を向上することが出来る。また、十分な絶縁特性が得られる。そこで、例えばスイッチング電源等の高周波トランスのコイルに使用でき、この場合に一次・二次間に絶縁隔壁を設ける必要がなくなるなど、高周波トランスの小型化などにも寄与しうる。
上記第10の観点による絶縁電線では、コイルの形状保持性を得ることが出来る。なお、自己融着層の内側の層を樹脂押出層とすれば、自己融着層の形成が容易になる。
上記第11の観点によるコイルでは、高周波特性および絶縁特性に優れた絶縁電線を用いるため、高周波特性および絶縁特性に優れたコイルとなる。また、小型化することが容易になる。例えばスイッチング電源等の高周波トランスのコイルに使用でき、この場合に一次・二次間に絶縁隔壁を設ける必要がなくなるなど、高周波トランスの小型化などに寄与しうる。
本発明のコイルによれば、高周波特性および絶縁特性を向上できる。また、小型化することが容易になる。
図1は、実施例1に係る絶縁電線101を示す側面図である。図2は、図1のA−A’断面図である。
この絶縁電線101は、断面輪郭が非円形の7本のエナメル線4が平行に集合して全体の断面輪郭が円形になった集合線11と、集合線11を束ねるように集合線11の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆1と、第1絶縁被覆1に絶縁テープを巻回してなる第2絶縁被覆2と、第2絶縁被覆2に絶縁テープを巻回してなる第3絶縁被覆3とを具備してなる。
エナメル線4は、銅線4aの外周にエナメル層4bを焼き付けたものである。
(1)同一の導体断面積をもつ単線に比べて高周波損失を低減できる。
(2)3層の絶縁被覆1,2,3を有し、絶縁特性に優れている。
(3)絶縁テープを巻くことにより圧縮された集合線11のバラケを防止できる。
(4)エナメル線4を撚らずに平行に束ねるため、撚った場合よりも外形を小さく出来る。また、線長を短縮できる。さらに、直流抵抗を低減できる。
(5)複数本のエナメル線4を撚る場合、その撚り加工工程は、圧縮工程やテープ巻工程と比べて加工線速が遅いため、生産性が悪くなり、製造コストを押し上げる要因となるが、その撚り加工工程を必要としないので、生産性を向上でき、製造コストを低減することが出来る。
図3は、実施例2に係る絶縁電線102を示す断面図である。
この絶縁電線102は、断面輪郭が非円形の7本のエナメル磁性線5が平行に集合して全体の断面輪郭が円形になった集合線12と、集合線12を束ねるように集合線12の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆1と、第1絶縁被覆1に絶縁テープを巻回してなる第2絶縁被覆2と、第2絶縁被覆2に絶縁テープを巻回してなる第3絶縁被覆3とを具備してなる。
エナメル磁性線5は、銅線4aの外周に軟磁性層5aを形成し、その外周にエナメル層4bを焼き付けたものである。
図4は、実施例3に係る絶縁電線103を示す断面図である。
この絶縁電線103は、断面輪郭が非円形の1本の裸銅線6の周りに断面輪郭が非円形の6本のエナメル線4を平行に集合して全体の断面輪郭が円形になった集合線13と、集合線13を束ねるように集合線13の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆1と、第1絶縁被覆1に絶縁テープを巻回してなる第2絶縁被覆2と、第2絶縁被覆2に絶縁テープを巻回してなる第3絶縁被覆3とを具備してなる。
図5は、実施例4に係る絶縁電線104を示す断面図である。
この絶縁電線104は、断面輪郭が非円形の1本のエナメル磁性線5の周りに断面輪郭が非円形の3本のエナメル磁性線5および断面輪郭が非円形の3本の錫メッキ銅線7を平行に集合して全体の断面輪郭が円形になり且つ錫めっき銅線7同士が隣接しない配置になった集合線14と、集合線14を束ねるように集合線14の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆1と、第1絶縁被覆1に絶縁テープを巻回してなる第2絶縁被覆2と、第2絶縁被覆2に絶縁テープを巻回してなる第3絶縁被覆3とを具備してなる。
図6は、実施例5に係る絶縁電線105を示す側面図である。
この絶縁電線105は、断面輪郭が非円形の7本のエナメル線4が平行に集合して全体の断面輪郭が円形になった集合線11と、集合線11を束ねるように集合線11の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆1と、第1絶縁被覆1の外周を樹脂押出しにより被覆してなる第2絶縁被覆2’と、第2絶縁被覆2’の外周を樹脂押出しにより被覆してなるに第3絶縁被覆3’とを具備してなる。
図7は、実施例6に係る絶縁電線106を示す断面図である。
この絶縁電線106は、実施例5の絶縁電線105の最外周に自己融着層9を形成したものである。
実施例1〜実施例6の各要素を適宜組み合わせてもよい。例えば、実施例1の第3絶縁被覆3の外周に自己融着層9を設けてもよい。また、実施例3の裸銅線6の代わりに錫めっき銅線を用いてもよい。
実施例1に係る絶縁電線101(導体断面積0.191平方mm、外径0.69mm)を巻回し、巻数52ターン、コイル長5mm、コイル内径20mmの空芯コイルを製作した。
この空芯コイルのコイル層数は7層、コイル外径は30mm、コイル直流抵抗は0.360Ω、100kHzでの実効抵抗は0.82Ω、200kHzでの実効抵抗は2.17Ωであった。
外径0.5mmの断面輪郭が円形の銅線の外周にテープ巻きを3段階に行って単線(導体断面積0.196平方mm、外径0.68mm)を製作した。この単線を巻回し、巻数52ターン、コイル長5mm、コイル内径20mmの空芯コイルを製作した。
この空芯コイルのコイル層数は7層、コイル外径は30mm、コイル直流抵抗は0.355Ω、100kHzでの実効抵抗は2.76Ω、200kHzでの実効抵抗は5.70Ωであった。
実施例8のコイルは、比較例1のコイルと外径寸法は同一ながら高周波特性に優れている。
外径0.2mmの断面輪郭が円形の銅線に耐熱ウレタン樹脂を膜厚1.5μmに焼き付けたエナメル線を7本撚って集合線を製作し(撚り加工工程)、その集合線の外周にテープ巻きを3段階に行ってリッツ線(導体断面積0.220平方mm、外径0.84mm)を製作した。このリッツ線を巻回し、巻数52ターン、コイル長5mm、コイル内径20mmの空芯コイルを製作した。
この空芯コイルのコイル層数は9層、コイル外径は35mm、コイル直流抵抗は0.341Ω、100kHzでの実効抵抗は0.78Ω、200kHzでの実効抵抗は2.02Ωであった。
実施例8のコイルは、比較例2のコイルと高周波損失は略同等ながら小型化に優れている。
2,2’ 第2絶縁被覆
3,3’ 第3絶縁被覆
4 エナメル線
4a 銅線
4b エナメル層
5 エナメル磁性線
5a 軟磁性層
6 裸銅線
7 錫めっき銅線
7a 錫めっき層
9 自己融着層
11〜14 集合線
101〜106 絶縁電線
Claims (11)
- 断面輪郭が非円形のエナメル線が複数本集合して全体の断面輪郭が円形になった集合線と、前記集合線を束ねるように前記集合線の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆とを具備したことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項1に記載の絶縁電線であって、前記複数本のエナメル線を撚らずに平行に束ねたことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項1または請求項2に記載の絶縁電線であって、前記複数本のエナメル線の全部または一部の銅線の外周に軟磁性層を形成したことを特徴とする絶縁電線。
- 断面輪郭が非円形のエナメル線および裸銅線が複数本集合して全体の断面輪郭が円形になり且つ裸銅線同士が隣接しない配置になった集合線と、前記集合線を束ねるように前記集合線の外周に絶縁テープを巻回してなる第1絶縁被覆とを具備したことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項4に記載の絶縁電線であって、前記複数本のエナメル線および裸銅線を撚らずに平行に束ねたことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項4または請求項5に記載の絶縁電線であって、前記複数本のエナメル線の全部または一部の銅線および裸銅線の全部または一部の少なくとも一方の外周に軟磁性層を形成したことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項4から請求項6のいずれかに記載の絶縁電線であって、前記裸銅線の全部または一部の最外周に錫めっき層を形成したことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の絶縁電線であって、前記第1絶縁被覆の外周に絶縁テープを巻回して第2絶縁被覆とし、前記第2絶縁被覆の外周に絶縁テープを巻回して第3絶縁被覆としたことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の絶縁電線であって、前記第1絶縁被覆の外周に樹脂押出して第2絶縁被覆を形成し、前記第2絶縁被覆の外周に樹脂押出して第3絶縁被覆を形成したことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項1から請求項9のいずれかに記載の絶縁電線であって、最外周に自己融着層を設けたことを特徴とする絶縁電線。
- 請求項1から請求項10のいずれかに記載の絶縁電線を巻回したことを特徴とするコイル。
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