以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
次に、本発明に係る画像形成装置の一実施例を図1〜図13を参照して説明する。先ず、画像形成装置の全体構成について説明する。
(画像形成装置)
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例である電子写真画像形成装置100の概略構成を示す。図1は、特に、本実施例の画像形成装置100にて、電子写真プロセスの中でも帯電、露光、現像、転写、クリーニング部分を表したものである。
図1に示す本実施例の画像形成装置100内の像担持体10は、シリンダ状の導電性基体外周面に有機光半導体や非結晶性シリコン等の感光材料を塗布して薄膜化したものである。この像担持体10は、駆動部201(図12参照)に設けられた像担持体駆動手段により一定の周速度で回転駆動される。像担持体10は、回転しつつ、潜像形成手段204(図12参照)を構成する帯電部202に設けた非接触帯電手段としてのコロナ帯電器11により、暗部電位VDとしておよそ−720Vに一様帯電される。コロナ帯電器11には、高圧電源(図示せず)から所定の高圧が印加される。
一様に帯電された像担持体10表面に、潜像形成手段204を構成する露光部203(図12参照)に設けられた露光手段としてのスキャナ12で読み取った画像情報に応じたレーザビームで露光する。これによって、像担持体10上には明部電位VLとして凡そ−220Vの静電潜像が形成される。
このようにして形成された静電潜像は、現像手段である現像器13の現像剤担持体13aに保持された現像剤であるトナーにより、像担持体10上の電位差に応じて現像されて可視化され、トナー像となる。この像担持体10上のトナー像が転写器14において、トナー像と逆極性の電圧を印加することで、図示していない給紙カセットから給紙ローラにより搬送されてくる紙等の記録媒体Pに転写される。
この転写工程において転写されずに像担持体10上残った現像剤や紙粉等は、クリーニング手段であるクリーニング装置15へと運ばれ、像担持体10からクリーニングブレード16によって掻き取られる。その後、回収トナー搬送スクリュー18で回収トナーボックスへと運ばれる。この際、クリーニング装置15で回収した回収トナーが飛散するのを防止するために、回収トナー飛散防止シート17が設けられている。
一方、トナー像が転写された記録媒体Pは、図示していない定着器で熱や圧力を加えてトナーを融着させ、トナー像定着後にトレイ上に排紙される。
また、装置本体内には、像担持体10上の静電潜像の電位を測定する電位検知手段としての微小表面電位計19により検知される信号強度を記録しておくためのメモリ(記憶手段)101(図12参照)が内蔵されている。メモリ101は、画像形成装置にて初めて電源を入れた際に形成される静電潜像の信号強度を記録しておくことができる。そして、適宜出力された信号強度と比較することができるようになっている。
さらに、微小表面電位計19による像担持体上の静電潜像の誘導電流検知結果を画像形成装置外部のモニター手段300(図12参照)に送信し、常時モニター(監視)できるように構成することができる。これによって、異常が発生した場合にはいつでも対応可能とされる。
次に、画像形成装置100の主要構成部材について、更に説明する。
(像担持体)
像担持体としては主に、コストが安く寿命も短い有機光半導体系の像担持体(即ち、有機光半導体感光体)と、コストが高く高硬度で長寿命のアモルファスシリコン系の像担持体(即ち、アモルファスシリコン感光体)がある。
先ず、有機光半導体系の像担持体の構成について説明する。
有機光半導体を使用した像担持体(即ち、有機光半導体感光体)10は、図2にて、アルミニウム等の金属製の基板、即ち、本実施例では導電性シリンダ10a上に厚さ20〜50μm程度の光導電層10bが塗布されている。この光導電層10bは、光を照射すると正及び負の電荷を発生させる機能を有する電荷発生層と、電荷発生層で発生した正電荷を輸送する機能を有した電荷輸送層から成っている。
先ず、帯電プロセスにおいて帯電器11にて像担持体10を負に帯電させると、基板10aには正電荷が誘起される。その状態で露光を行うと、光が照射された部分の電荷発生層に正及び負の電荷が発生する。発生した正電荷は電荷輸送層を通って像担持体表面24上の負電荷と中和し、発生した負電荷の方は基板中の正電荷と中和する。露光後には像担持体上の光が照射された部分の負電荷は除去され、光が照射されていない部分の負電荷が残ることによって、スキャナ12で読み取った原稿と同じ静電潜像を形成することができる。
また、アモルファスシリコンを使用した像担持体(即ち、アモルファスシリコン感光体)10の構造は、アルミニウム等の金属製基板11a上にアモルファスシリコン層と表面層から成る光導電層10bを有している。アモルファスシリコン層は主に電荷発生層と電荷輸送層に分類することができる。なお、アモルファスシリコン系の像担持体10における静電潜像形成メカニズムは、有機光半導体系の場合とほぼ同じである。
(像担持体加熱ヒータ)
本実施例にて像担持体10の内部には加熱手段である像担持体加熱ヒータHが設置されている。像担持体加熱ヒータHとしては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等を支持体としてニクロム線等の発熱体を挟み込んだ面状発熱体やセラミック発熱体等が用いられる。しかし、本実施例における像担持体加熱ヒータHは、これらに限定されるものではない。
像担持体加熱ヒータHは、画像形成装置100の電源がオンの状態にされると電源がオンになり、像担持体10の表面温度は、像担持体10に内蔵されたサーミスタ等の温度検出手段(図示せず)で温度を検出しながら目的の温度まで昇温される。目的の温度まで昇温するとその温度を維持するように制御される。そして、像担持体加熱ヒータHにより像担持体表面24が温められると、像担持体10に付着した水分が蒸発し始める。これにより、像担持体表面24上の水分が除去され、画像流れの発生を防ぐことができる。
像担持体表面24の温度範囲は、通常50%RH以上の環境では30℃〜65℃が好ましく、特に70%RH以上の環境では40℃〜50℃に像担持体温度を維持することが望ましい。そのため、画像流れを解消するためには、電源投入時から画像形成までの間に像担持体の温度を上記温度範囲に保ちながら回転させることが有効である。これにより、像担持体表面近傍の相対湿度を低減させることが可能となり、高湿環境においても画像領域全面に渡って良好な画像を得ることができる。
(帯電)
帯電方式としては一般的に、非接触系、接触系、注入系に大別できるが、ここでは非接触系と接触系の帯電方式について説明する。
先ず、本実施例で使用する非接触系の帯電方式についてであるが、代表的な方式としてコロナ帯電方式があり、図2(a)、(b)を用いて詳しく説明する。
コロナ帯電方式は、空気中でコロナ放電させることによって、放電線21近傍で発生した正または負のイオンを像担持体表面24に与える方式である。コロナ放電とは不均一な電界中で行われる局所的な空気の絶縁破壊によって生じる持続的な放電である。
先ず、図2(a)に示すように、アルミニウム等の金属で作製された断面コ字状のシールド22にて囲包されシールドされた直径50〜100μm程度のタングステン製やステンレス製の放電線21に高圧電源23から高圧を印加する。これによって、放電線21はコロナ放電を行い、像担持体表面24を帯電させる。
この方式はコロトロン帯電方式と呼ばれているが、像担持体表面24を一定電位に帯電させる制御が難しい。そのため、図2(b)に示すように、帯電量を調節するためにシールド22の開口部に放電線21とは絶縁して数本のグリッド線25を設けたタイプがある。これはスコロトロン帯電方式と呼ばれ、グリッド線25に印加された電圧によって像担持体表面24への帯電量を制御することができる。
コロナ帯電方式は、主に高速機で用いられているが、放電線21の汚れや劣化による放電ムラの発生、放電線21の振動、画像流れ発生の要因と考えられている放電生成物の生成量が大きい等の問題点が指摘されている。
一方、接触式の帯電方式については、後で実施例2として図14を参照して説明するが、代表的な方式としてローラ帯電方式がある。このローラ帯電方式では電圧印加した導電性の弾性ローラ等を像担持体表面に接触させ、非接触部の微小ギャップでコロナ放電を起こして像担持体表面を帯電させる。帯電ローラの構成は、導電性の芯金(鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒)を有する。この芯金の上にEPDM、ウレタン、NBR、シリコーンゴムやIR等の弾性材や弾性発泡体に抵抗調整のためにウレタン等の樹脂、カーボンブラックや金属酸化物等の導電性粒子、硫化剤、発泡剤等が処方された抵抗層を有している。弾性材等は、芯金の上にローラ状に形成されている。ローラ帯電方式は、コロナ帯電方式よりも印加電圧が低いため、電源をコストダウンすることができる。さらに、放電電流量がコロナ方式よりも少なくて済むため、オゾンの発生量も少なく環境対策にも優れており、最近では低・中速機を中心に採用されている。
(現像)
一般的に、像担持体上に形成された静電潜像の現像方法は、以下の4種類に大別される。
(1)1成分非接触現像
非磁性トナーについては、ブレード等で現像剤担持体上にコーティングし、磁性トナーは磁気力によってコーティングして搬送し、像担持体に対して非接触状態で現像する方法。
(2)1成分接触現像
上記のようにしてコーティングしたトナーを像担持体に対して接触状態で現像する方法。
(3)2成分接触現像
トナー粒子に対して磁性のキャリアを混合したものを現像剤として用いて磁気力によって搬送し、像担持体に対して接触状態で現像する方法。
(4)2成分非接触現像
上記の2成分現像剤を非接触状態にして現像する方法。
現在では、高画質化や現像安定性の面から上記(3)の2成分接触現像法が多く用いられている。
本実施例における現像方法は、上記(1)の1成分非接触現像であるジャンピング現像法を用いたが、上記のいずれの現像方法を用いても同様の効果が得られる。
一般的に、現像剤担持体13上のトナーは像担持体10上へ全て現像されることはなく、現像直後においても現像剤担持体13上にはトナーは存在することになる。特に磁性トナーを用いたジャンピング現像法においてはその傾向が強く、現像効率はさほど高くはない。
(現像剤)
本発明に用いられる現像剤は、従来より知られている種々の方法を採用することができるが、本実施例においては粉砕法により製造された磁性黒色トナーを用いた。
具体的には、結着樹脂、着色剤及び/または磁性体、荷電制御剤またはその他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分混合し、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉して樹脂類を互いに相溶する。次いで、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、その後に粉砕物を分級して得ることができる。
一般的に、トナー粒子には環境変動に対する被帯電性能安定化や流動性の向上のためにシリカ等を外添している。本実施例で用いた現像剤にはトナー粒子100重量部に対して、シリカ母体の表面をシランカップリング剤及びシリコーンオイルで疎水化処理した疎水性シリカ(体積平均粒径10nm)を1.0重量部外添している。また、本実施例で用いた現像剤にはトナー粒子100重量部に対して、酸化チタン(体積平均粒径50nm)を0.8重量部外添している。
(研摩剤)
本実施例において、研摩剤として使用される研摩粒子は一般的に用いられているチタン酸ストロンチウムを使用した。しかし、同様な研摩粒子として酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニア、酸化クロム、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化銅、酸化錫、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム等の酸化物、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタン等の炭化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物や他の一般的な有機物粒子等も用いられる。
本実施例で用いた現像剤中に一定量の研摩粒子を混合する方法では、帯電した研摩粒子の電荷極性によって像担持体上11上に付着する研摩粒子の量が変化する。研摩粒子が現像剤と同極性に帯電した場合には、現像剤と一緒に像担持体10に付着することによって記録媒体に転写される。逆極性に帯電した場合には現像剤とは別離して転写には寄与しない白地部に多く現像されるため、転写残トナーとしてクリーナー部15に到達しやすくなる。
(クリーニング装置)
次に、本実施例に係るクリーニング装置15について説明する。
本実施例のクリーニング装置15は、板金に支持されたクリーニング部材としてのクリーニングブレード16、回収トナー飛散防止シート17及び回収トナー搬送スクリュー18で構成されている。
転写工程を終えた像担持体10上には転写残トナー等が介在しているが、これらは転写に寄与できなかったトナーであり、概して粒径の小さなトナーや外添剤等が多い。これらの介在物はクリーニング装置15を構成するクリーニングブレード16によって像担持体10から除去され、クリーニングブレード16から除去された転写残トナーは回収トナー搬送スクリュー18によって回収トナーボックスへと送られる。
従って、電子写真方式におけるクリーニングとしては、像担持体10の表面がトナー像形成に繰り返し使用されるため、記録媒体Pへのトナー像転写後に記録媒体Pに転写されずに像担持体10上に残る残留トナーを十分に除去することが必要となる。
残留トナーを除去する方法としては従来から様々な提案が成されている。その中でも、弾性材料から成るクリーニングブレード16を像担持体10の表面に当接させ、残留トナーを掻き取る方法が低コストで電子写真システム全体を簡単でコンパクトな構成にでき、トナー除去効率も優れているため広く実用化されている。クリーニングブレード16の材質としては、高硬度で弾性に富み、耐磨耗性や機械的強度、耐油性、対オゾン性等に優れ、像担持体10を傷つけないポリウレタンゴムが好ましい。しかし、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、二トリルゴム、クロロプレンゴム等のエラストマー等適度な弾性と硬度を有する材料であればいずれでも良い。さらに、永久歪が小さいことを考えて2液性熱硬化型ポリウレタン材料を用いることもある。硬化剤としては、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ハイドロキノンジエチロールエーテル、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の一般的なウレタン硬化剤を用いることができる。
本実施例で用いたクリーニングブレード16は、図3に示すように板金33の先端部に一体的に保持されたポリウレタンゴム32から成る。ブレード先端部32は、像担持体10に対して所定の設定角α、侵入量eの条件で当接されており、実施例1、及び、後述の実施例2では設定角αは23°、侵入量eは1.30mmに設定した。
設定角α及び侵入量eは、図3に示すように、ブレード先端部32の角部32aが当接する位置における像担持体10に対する接線Tを基準として測定したものである。
(微小表面電位計)
図4(a)、(b)、(c)〜図12を参照して、本実施例で用いた微小表面電位計19の詳細について説明する。
本実施例で用いた微小表面電位計19は、像担持体上における微小領域の電位変化、即ち、像担持体表面の面方向電荷密度分布を誘導電流として検出する電位測定装置である。表面電位計19は、後述するように電位センサ41と、増幅回路44a、A/D変換器44b等を含む回路要素44とにより構成されている。
図4(a)、(b)、(c)を参照すると、この微小表面電位計19にて、電位センサ41は、検知電極42aと、この検知電極42aを回路要素44に電気的に接続する導線42bを有する。また、検知電極42a及び導線42bを支持する絶縁性支持体43を有している。絶縁支持体43は、回路要素44に一体に取り付けられている。
つまり、電位センサ41の検出部分、即ち、検知電極42aは、導線42bにより信号強度を増大させる増幅回路44aを備えた回路要素44に接続されている。また、この電位センサ41は、像担持体表面24に垂直、且つ、電位センサ41と表面24との相対移動方向に平行となる面Hにおける電位センサ41の検知電極42aの断面形状がエッジを持たない湾曲形状とされる点に特徴を有している。本実施例では、電位センサ41は、固定しており、像担持体10が回転する。
更に説明すると、電位センサ41は、その検知電極42aとして、導電性部材である断面円形状の導電性ワイヤを用いて作成することができる。この電位センサ41の検知電極42aに用いる材質は導電性の物質であればよい。中でもW、Au、Pt、Cu、Fe、Ti、Cr、Ag、Ta等の物質は導電性に優れ、本実施例にて使用する電位センサ41に適した材質である。その中でもWは、加工の容易さに優れており、電位センサ用の材料としてトータル的に最も適した材質である。
本実施例では、電位センサ41の検出部分(検知電極)である導電性ワイヤ42aの断面形状は円形で材質としてはWを用いた。また、本実施例では、導線42bは、検知電極42aである導電性ワイヤにて検知電極42aと一体に形成した。
また、絶縁性支持体43としては、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂であるPI(ポリイミド:polyimide)を用いた。信号強度を増幅させる回路要素44としては一般的に用いられているトランジスタ(FET)と抵抗(R1〜R4)を組み合わせて図6のような増幅回路44aを用いた。
つまり、増幅回路44aの足(端子)は、即ち、入力端子Taは電位センサ(信号検出部)41のセンサ部である検知電極(アンテナ部)42aに接続されており、出力端子Tbは出力波形を表示させる測定器(オシロ)に接続されている。また、電源端子Tcは直流電源バイアス部に接続されており、アース端子Tdは、接地されている。
また、電位センサ41の導電性ワイヤ42aの径(d)は、検出分解能を大きく左右する。基本的に、ワイヤ径(d)は小さい方が望ましいが、小さくするにつれて信号強度が低下するためワイヤ径(d)には下限があり、径(d)が1〜500μmの範囲内であることが望ましい。さらに、電位センサ41の信号検出部分(検知電極)42aの相対移動方向を横切る方向における長さ(h)、即ち、像担持体10に対する電位センサ41の主走査方向の長さ(h)も、検出する信号の強度を左右する。長くすると信号強度は増大するが、ワイヤ42aの直線性や平行性が低下しやすく、分解能の低下につながりやすい。このため、ワイヤ42aの長さ(h)は0.2〜10mmの範囲内であることが望ましい。この場合、図4に示したように検出部分42aは、測定する表面24に対して平行、かつ相対移動方向に対して垂直になるように配置される。
つまり、図4にて、電位センサ41の検出部分(導電性ワイヤ)42aの相対移動方向をX、像担持体表面24の法線方向(垂直方向)をY、X及びYに垂直な方向をZとする。このとき、電位センサ41の検出部分(導電性ワイヤ)42aは、X方向に1〜500μm(直径d)、Y方向の像担持体表面との間隔(△E)が10〜300μm、Z方向に0.2〜10mm(長さh)でZ軸と平行に検出部分が配置されている。間隔△Eについては、後述する。
検出の分解能は、電位センサ41の検出部分(検知電極)42aの直線性及び平行性に対する依存性が強い。このため、検知電極42aの直線性及び測定表面に平行、且つ、相対移動方向に垂直方向(図4(c)にて紙面に垂直方向)との平行性は、300%以内であることが好ましい。
ここで、検知電極42aの直線性及び平行性は、図5(a)、(b)に示すように、定義したものである。
つまり、図5(a)、(b)は、図4(c)の右側或いは左側方向から見た電位センサ検出部分42aの拡大図であり、図5(a)は、直線性を定義する模式図である。また、図5(b)は、平行性を定義する模式図であり、上述のように、相対移動方向(本実施例では像担持体の回転方向)Xは、紙面に垂直方向であり、Yは像担持体表面に対して法線方向(垂直方向)を示し、Zは、X及びYに対して垂直方向を表している。図5(a)、(b)にて、式中の符号d及びhは、それぞれ、検知電極42aのワイヤ径及び長さであり、wは基準よりの偏倚量である。
本実施例では、ワイヤ径(d)として100μm、検出部分(検知電極)42aの主走査方向の長さ(h)は2.5mmのものを用いた。
この電位センサ41と、像担持体表面24との間に相対移動が生じたとき、電位の変化量をdV、相対移動速度をdx/dtとすると、電位センサ41には、
dV/dt=(dV/dx)・(dx/dt)
に比例する誘導電流が発生する。
検出される信号、即ち、誘導電流は、上述のように相対移動速度に比例しているため、相対移動速度を速くすることで信号強度が増大し、SNの良い信号を得ることができる。
しかしながら、速くし過ぎると接続している回路要素等に起因する時定数の影響により、却ってS/Nが悪くなる場合が生じる。このため、相対移動速度は10〜10000mm/secの範囲内であることが好ましい。
また、相対移動中に電位センサ41と被測定表面24との間の間隔が変化することはあまり好ましくない。そこで、電位センサ41と被測定表面24の間隔を一定に保つ手段として、例えばコロやスペーサーを用いて機械的に一定間隔を保つ機構を設けることができる。また、レーザー隙間センサや渦電流変位センサを用いて間隔をモニターして常に一定間隔を保つようにモーター等で制御を行う方法などが挙げられる。
さらに、測定間隔の設定値は測定精度に影響を与える。表面の電位形状を測定するためには、測定間隔(△E)は小さい方が好ましいが、あまり測定間隔を小さくしすぎると電位センサと表面の間に放電が起こって電界が乱れてしまう場合が生じる。このため、測定間隔(△E)は10〜300μmの範囲内であることが好ましい。
ただし、導電性ワイヤ42aを絶縁性支持体43で被膜することで像担持体表面24に接触させても放電発生を防ぐことができる。そのため、本実施例では、導電性ワイヤ42の像担持体10に接触する領域は、絶縁性支持体43である厚さおよそ50μmのPIで被膜する。これにより、電位センサ41を像担持体45に接触させている場合でも実際には常に50μm程度の間隔が確保されており、像担持体45の回転方向Xに対して図4(c)のように接触させている。
本実施例では、微小表面電位計19による出力波形の信号強度の変化率によって画像流れの定量評価を行った。
図7は、画像流れの発生していない状態と発生している状態の潜像波形及び微小表面電位計により検出できる潜像微分波形のイメージ図である。
画像流れが進行すると図7に示すように、画像流れの発生していない場合と比較して潜像波形が歪んでしまうと考えられている。従来では、この歪みを像担持体の表面電位を測定することで検出しようと試みられていたが、従来の電位計では非接触で測定していたために測定スポット径が広くなってしまい、検出される潜像波形は広領域における電位の平均値となる。
画像流れを潜像の歪みで評価するためには非常に微小な領域の潜像を検出しなければならないため、従来の非接触表面電位計では潜像の歪みによって画像流れを定量評価するのは非常に難しかった。
しかし、本実施例で用いる、上記特許文献3(特開平11−183542号公報)に記載された電位計では、高分解能のため像担持体上の微小な領域の潜像微分波形を検出することができる。この電位計で出力される微分波形は像担持体上の電位変化(即ち、像担持体表面の面方向電荷密度分布)を誘導電流として検知している。そして、信号強度の最も大きな部分はある瞬間において最も電位変化の大きい部分の変化率(ピーク強度変化率)、即ち潜像微分波形のある瞬間における傾きの最大値を示している。画像流れが進行すると画像流れの発生していない状態に比べて潜像の歪みが大きくなるため、ある瞬間における潜像の傾きの最大値も低下するはずである。この結果、出力される潜像微分波形の信号強度(ピーク強度変化率)も低下してしまうため、この信号強度(ピーク強度変化率)の低下率を用いて画像流れを定量評価することができる。
まず、定量化の方針としては、画像流れの発生していない状態における潜像微分波形の信号強度を測定する。その後に様々な画像流れの状態を作り出し、そのときの潜像微分波形の信号強度が画像流れの発生していない状態の信号強度と比較して、どの程度低下しているのかを求める。これによって、それぞれの状態における画像流れの程度を潜像微分波形の信号強度で定量化することができる。実際にこの手法を用いて実画像と潜像微分波形の出力波形、信号強度の低下率を示したのが図8である。
図7にて、確かに実画像上で画像流れの状態が悪化するにつれて潜像微分波形の信号強度が低下しており、画像レベルと信号強度低下率の相関があることが分かる。この画像レベルをその流れレベルによってランク分けし、それぞれの信号強度の低下率との関係を示したのが図9である。
主観的な評価による画像流れのレベルは、信号強度の低下率が15%以下の場合であり、15%以上になると出力画像上でもはっきりと画像流れの発生を認識できるため、この状況に陥った場合には何らかの画像流れ対応策を実施する必要がある。
なお、検出した誘導電流は、表面電位の傾きに関する情報を含んでいるため、積分解析することにより表面電位形状を推定することが可能となる。このとき、解析時に用いる積分定数は、予め電位形状の分かっている表面を測定したときにその形状を再現するように決定されるが、そのためには出力される微分波形のピーク強度を回路素子の部分で実際の出力に合わせるよう回路設計を行う必要がある。その反面、本実施例では潜像微分波形のピーク強度変化率で定量化を行う。このため、今回用いた微小表面電位計では出力波形の絶対値はあまり気にする必要がなく、画像流れが発生していないときの信号強度(ピーク強度変化率)と、ある状態におけるピーク強度変化率の比(信号強度の低下率)を把握すればよい。従って、出力される微分波形を積分解析し潜像に変換して画像流れの定量化を行うよりも、簡易で正当な評価を行うことができる。
次に、本実施例の特徴部分について更に説明する。
本実施例では、図1に示すように、上述の構成とされる画像形成装置にて、帯電器11の位置から現像器13の位置の間に像担持体10上における微小領域の潜像微分波形を検出することのできる微小表面電位計19を設けた。つまり、微小表面電位計19は、詳しくは、露光位置Eと、現像剤担持体13aが像担持体10に対向する現像位置Aとの間に配置される。
像担持体10としては、有機光半導体系の感光剤を塗布したOPC系の表面層を薄膜化及び高硬度にすることによって高画質化及び長寿命化を実現するドラム形状の電子写真感光体を用いた。
また、帯電及び転写方式としては一般的に用いられている非接触系のコロナ方式を、現像方式としては1成分非接触系の磁性トナーでジャンピング現像法を用いた。さらに、像担持体上に付着した放電生成物のクリーナー部における除去効率を上げるために、現像剤中に研摩粒子として広く一般的に用いられている酸化セリウムを1重量部外添した。
上記電子写真プロセスで最近用いられる像担持体としては、出力画像の高画質化、低ランニングコスト化等の要求が高まり、高分解能の必要性からより感光層膜厚の薄いものが使用されている。さらに、低ランニングコスト化のために像担持体自身の寿命を長くする必要性から像担持体表面の電気的、機械的強度や耐磨耗性向上が図られている。
これらに対して近年では、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる試みがなされている。また、電荷移動層に炭素−炭素二重結合を有するモノマーを含有させ、電荷移動材の炭素−炭素二重結合と熱あるいは光のエネルギーによって反応させて電荷移動層硬化膜を形成する試みがなされている。これらの試みにより、高感度を保持したままより硬く、より削れにくくする検討がなされている。
本実施例にて使用される像担持体10は、表面層が重合或いは架橋し、硬化させた化合物を含有している電子写真用像担持体(電子写真感光体)であり、その硬化手段としては熱や可視光、紫外線等の光、放射能を用いることができる。そのため、像担持体10の表面層が熱や可視光、紫外線等の光、さらに放射線により重合あるいは架橋し硬化させることができる化合物を含有していれば良い。
ただし、像担持体10としての特性、特に残留電位等の電気的特性及び耐久性の点より電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の像担持体構成、またはこの構成で積層された感光層上に表面保護層を形成した構成が好ましい。
本実施例において、表面層の重合あるいは架橋させる化合物の硬化法は、像担持体特性が劣化せず残留電位の上昇が起こらない十分な硬度を示すことができる点で、電子線及びガンマ線等の放射線を用いることが好適である。
重合或いは架橋し硬化させることのできる表面層用化合物としては、反応性の高さ、反応速度の速さ、硬化後に達成される硬度の高さの点から分子内に不飽和重合性官能基を持つものが好ましい。さらにその中でもアクリル基、メタクリル基及びスチレン基を持つ化合物が特に好ましい。
本実施例における不飽和重合性官能基を有する化合物とは、その構成単位の繰り返しによりモノマーとオリゴマーに大別される。モノマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがなく比較的分子量の小さいものを示し、オリゴマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である。さらに、ポリマーまたはオリゴマーの末端のみに不飽和重合性官能基を有するマクロノマーも本発明の表層用の硬化性化合物として使用可能である。
また、本実施例で用いる不飽和重合性官能基を有する化合物は、表面層として必要な電荷輸送機能を満足するために前記化合物が電荷輸送化合物であるとさらに好ましい。その中でも正孔輸送機能を持った不飽和重合性化合物であることがさらに好ましい。
本実施例で用いられる像担持体表面保護層の膜厚は、0.2〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜6μmの範囲である。
本実施例におけるHU(ユニバーサル硬さ値)及び弾性変形率は、圧子に連続的に荷重をかけ荷重下での押し込み深さを直読し、連続的硬さを求められる微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。圧子は対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用した。荷重の条件は最終荷重6mNまで段階的に(各点0.1sの保持時間で273点)測定した。HU(ユニバーサル硬さ値:以下HUと呼ぶ)は、6mNで押し込んだ時の同荷重下での押し込み深さから下記式(1)によって規定される。
HU=試験荷重(N)/試験荷重でのビッカース四角錐ダイヤモンド圧子の表面積(mm2)
=0.006/26.43h2(N/mm2) (1)
h:試験荷重下での押し込み深さ(mm)
弾性変形率は、圧子が膜に対して行った仕事量、即ち圧子の膜に対する荷重の増減によるエネルギーの変化より求めたものであり、下記式(2)からその値は求まる。
弾性変形率=We/Wt×100(%) (2)
ここで、
We:弾性変形の仕事量
Wt:全仕事量
である。
前述のように、有機光半導体感光体とされる電子写真用像担持体に求められる性能として機械的劣化に対する耐久性の向上が挙げられる。一般的に、膜の硬度は外部応力に対する変形量が小さいほど高く、電子写真用像担持体も当然の如く鉛筆硬度やビッカース硬度が高いものが機械的劣化に対する耐久性が向上すると考えられている。HUと弾性変形率の値がある範囲の場合に像担持体表面層の機械的劣化が起こり難くなる。
即ち、25℃湿度50%の環境下で、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて硬度試験を行う。この硬度試験において、最大荷重6mNで押し込んだ時のHUが150N/mm2以上220N/mm2以下であり、かつ弾性変形率が40%以上65%以下である電子写真像担持体を用いることが好ましい。また、さらなる特性の向上にはHU値が160N/mm2以上200 N/mm2以下であることがより好ましい。
HUと弾性変形率を切り離して捉えることはできないが、例えばHUが220N/mm2を超えるものであるとき、弾性変形率が50%未満であるとクリーニングブレードや帯電ローラに挟まれた紙粉やトナーが像担持体の弾性力が不足している。そのために、弾性変形率が65%より大きいと弾性変形率は高くても弾性変形量は小さくなってしまう。従って、結果として局部的に大きな圧力がかかり、深い傷が発生してしまう。よって、HUの高いものが必ずしも像担持体として最適ではないと考えられる。また、HUが150N/mm2未満で弾性変形率が65%を超えるものの場合、たとえ弾性変形率が高くても塑性変形量も大きくなってしまう。そのために、クリーニングブレードや帯電ローラに挟まれた紙粉やトナーが擦られることで削れたり細かい傷が発生したりしてしまう。
次に、微小表面電位計19を設置する位置であるが、帯電・露光プロセスによって形成された潜像の外形変化を検出する必要がある。そのため、微小表面電位計19はスキャナにより読み取った画像情報を像担持体上に露光する位置よりも下流側に設置しなければならない。さらに、現像器では像担持体上に形成された潜像の外形に従って現像剤を現像するため、接触式の表面電位計では現像後の像担持体上の潜像を検出することができない。
従って、微小表面電位計19は、像担持体10上の露光位置Eと現像剤現像位置A、即ち現像器13との間に設置しなければならない。また、像担持体10上における主走査方向の微小表面電位計設置位置は、ちょうど像担持体10の中央にセンサが接触するよう配置した。このとき、センサ41を像担持体10に接触させるときの侵入量δ及び角度θは、次のように設定する。
図10に示すように、センサ41が像担持体10に接触していないときの侵入量δ(δ=0)を基準の原点とし、接触し始めてから0.1mm刻みで1.0mmまで潜像微分波形における信号強度のS/Nの変化を調べた。さらに、接触させる角度θを像担持体表面の法線方向を0°と定義し、基準の位置から現像器13側にθ=15°傾けたときのS/Nの変化も同時に調べた。その結果、信号強度のセンサ侵入量δ及び接触角度θの依存性は、図11に示す通りであった。
この結果、センサの侵入量δに関しては0.3mm以上1.0mm以下の場合は信号強度のS/Nにはほとんど差がなく、侵入量δをこの範囲に調整すればいずれの侵入量でもほぼ同等のS/Nを確保することができる。また、センサの接触角度θについては法線方向から接触させるよりも少し傾けて接触させた方が大きなS/Nを得ることができると判明した。従って、本実施例ではセンサの接触角度θを法線方向から現像器13方向に15°傾け、像担持体10への侵入量δを0.5mmに設定した。
微小表面電位計19を作動する条件として、本実施例では雰囲気中の絶対水分量が18g/kg以上の高温高湿環境のみで作動するよう限定した。作動条件を高温高湿環境に限定したのは、画像流れの発生が最も顕著になるのが帯電プロセスによって像担持体上に完全に除去しきれなかった放電生成物が付着している状態において、高温高湿環境下で一定時間放置した場合だからである。像担持体10に付着した放電生成物は、大気中の水分を吸収することで画像流れが発生しやすくなり、さらに流れの状態や範囲も悪化する。
そこで、画像形成装置100の設置場所の周囲の温湿度を検知するため、装置内に電子式湿度センサ102(図12参照)を取り付けた。この湿度センサ102は、感湿膜中の水分量によりセンサ素子のインピーダンスが変化することを利用して相対湿度を検出する電気抵抗式の湿度センサである。感湿膜が高分子の場合、高分子中のマイナスイオンが周囲の水分(湿度)によってイオン伝導を起こし、可動イオンとして存在する。湿度の増減による感湿膜の含有水分量の変化によって可動イオン濃度が変化し、それがインピーダンスの変化として計測されて相対湿度を検出することができる。その電気抵抗値は指数関数的に変化し、相対湿度の低い0〜20%RHの範囲においては高抵抗になるため、相対湿度の検出が困難となるものが多い。
ただし、画像流れの発生が顕著になるのは高湿環境下であり、さらにセンサから電気信号を取り出す変換回路が簡単で小型化及びコストダウンが容易等の利点があるため、本実施例においてはこの電気抵抗式湿度センサを用いた。そして、この湿度センサ102が高湿環境であると検知したときのみに像担持体10上に形成された潜像の変化を微小表面電位計19で検知することにした。
また、この微小表面電位計19で潜像微分波形の信号強度(ピーク強度変化率)が画像流れの発生していない場合よりも低下しているとき、即ち画像流れが発生していると判断された場合の対処法として、「画像流れ防止工程」を実行する。本実施例では、画像流れ防止工程としては、像担持体を加熱するヒータHを作動させる。
ただし、像担持体を加熱するヒータHは、近年のコスト削減や省エネ志向の高まりによって、画像形成装置内に実装するのは敬遠されてきている。しかしながら、高温高湿環境下において放電生成物の付着した像担持体は非常に画像流れを起こしやすく、像担持体をヒータで加熱することで近傍の水分を蒸発させるため、画像流れ対策としては非常に効果的である。そこで、本実施例では省エネに留意しつつ画像流れの発生を防止するための画像流れ防止工程として、特定の条件を満たしたときのみにヒータHで加熱することにした。
つまり、本実施例では画像流れ防止工程として像担持体加熱ヒータHを作動させる条件を、前述したように画像形成装置に内蔵した雰囲気中の温湿度を検知するセンサによって周囲が高温高湿環境と判断された場合とした。
この場合において、本体の主電源を入れた直後も含めて像担持体が10分以上回転せずに停止しているときに潜像パターン発生手段204、即ち、帯電部202及び露光部203を作動させる。即ち、像担持体10を回転させ、3dotの静電潜像パターンを像担持体一周分だけ描かせる。静電潜像パターンは、像担持体表面の移動方向電荷密度分布を有している。そして、像担持体10と微小表面電位計19を相対的に移動させることによって、即ち、本実施例では、像担持体10を回転させることによって、そのときの像担持体上の潜像微分波形を微小表面電位計19によって検知する。
このときの出力波形の信号強度(即ち、ピーク強度変化率)が装置内に搭載してあるメモリ101に記録された初期、即ち画像流れの発生していない場合の信号強度と比較する。そして、信号強度が15%以上小さくなっているときに画像流れ防止工程を実行し、像担持体10をヒータで加熱して昇温させる。そして、信号強度、即ち、ピーク強度変化率が30%以下にまで低下している場合は、像担持体の表面温度が40℃に達するまで、30〜50%の場合は45℃に達するまで、そして50%以上の場合は50℃に達するまで像担持体10をヒータHで加熱する。これにより、近傍の水分を蒸発させる。
本実施例では、潜像パターン発生手段204にて静電潜像パターンを発生させるための潜像微分波形検出チャートとして3dotを用いた。その理由は、次の通りである。
つまり、像担持体上の副走査方向に描く潜像の線幅が細いほど顕著に画像流れの発生を判断することができ、潜像微分波形の信号強度の変化を検出しやすく、画像流れの検出精度を上げることができるためである。
ただし、本実施例で用いた微小表面電位計19のセンサ42aの径(d)はおよそ100μm程度であるため、100μm以下の線幅では正確に信号強度の変化を検出できていない可能性がある。本実施例で用いた画像形成装置の副走査方向の書き込み解像度は600dpiであるため1dotはおよそ42μmとなる。そこで、100μm以上を達成する線幅のうち最も細い3dotの線幅を潜像微分波形ピーク強度の検出用チャート(潜像パターン)として用いた。
本実施例で用いた画像形成装置100におけるこれらの関係をブロック図として示したのが図12である。電位センサ41で検知された信号が、図6で示した信号増幅回路44aにより増幅され、その信号がA/D変換器44bによりA/D変換されてCPU100に送られる。CPU100は受け取った信号に応じてコントローラ200に画像流れの発生を防止するための「画像流れ防止工程」を実行する命令を出す。コントローラ200によりこれらの命令が実行に移される。つまり、コントローラ200は、駆動部201を構成する像担持体駆動手段、また、必要に応じてセンサ駆動手段などを制御し像担持体10(及び/又は表面電位計19)の駆動を制御し、像担持体10とセンサ41との相対速度を制御する。また、コントローラ200は、帯電器11を備えた帯電部202及びスキャナ12を備えた露光部203にて構成される潜像パターン発生手段204を制御する。更に、コントローラ200は、ヒータ制御部205を介して像担持体加熱ヒータHを制御する。
次に、図13を参照して、本実施例に従った像担持体10の画像流れの発生を防止する回復動作(画像流れ防止工程)を行う画像形成動作態様を説明する。
先ず、画像形成に先立って、画像形成装置の電源がオンとされる(S1)。
次いで、本実施例では、湿度センサ102にて雰囲気中の絶対水分量が18g/kg以上の高温高湿環境であるか否かを判断し(S2)、絶対水分量が18g/kgに達していない場合(S2にてNOの場合)には、画像形成動作に移行する(S9)。
絶対水分量が18g/kg以上である場合(S2にてYESの場合)には、ステップ3(S3)に進む。S3にて、本体の主電源を入れた直後も含めて像担持体が10分以上回転せずに停止しているか否かを判断し(S4)、像担持体が回転せずに停止して時間が10分に達していない場合(S3にてNOの場合)には、画像形成動作に移行する(S9)。
像担持体が回転せずに停止して時間が10分以上である場合(S3にてYESの場合)には、ステップ4(S4)に進む。そして、画像形成時以外の時期に、例えば、前回転時等に像担持体を回転させ、潜像パターン発生手段204にて、像担持体10上に3dotの潜像パターンを像担持体一周分だけ描かせる。そして、像担持体上の潜像微分波形を微小表面電位計19によって検知する。このときの出力波形の信号強度(ピーク強度変化率)が装置内に搭載してあるメモリに記録された初期、即ち画像流れの発生していない場合の信号強度に比べてその低下率が所定値、本実施例では15%以上となっているか否かを判断する(S5)。低下率が所定値以下の場合、即ち、低下率が15%を超えていない場合(S5にてNOの場合)には、像担持体10を空回転させる(S9)。
ここで、信号強度の低下率が15%を超えていない場合には、出力画像上ではほとんど確認できないもののわずかに画像流れが発生している可能性が高い。従って、何の対処もせずにそのまま放置しておくと雰囲気中の水分と反応して画像流れが悪化する恐れがある。そこで、上述のように、信号強度の低下率が15%を超えていない場合においても所定時間、本実施例では10分間だけ像担持体を空回転させる。空回転中に画像形成動作が行われる場合には、そのまま画像形成動作を行う。これは像担持体上に付着した放電生成物をクリーニング装置15で構成されるクリーナー部に溜まった研摩剤で摺擦することによって、放電生成物を除去するためである。従って、この場合は、クリーニング装置15は、像担持体摺擦手段として機能する。同時に、像担持体の表面温度も上昇させることができるため、像担持体近傍の水分も蒸発させることができる。このように、放電生成物の除去効率を高めることによって、高温高湿環境中でも像担持体の表面抵抗が低下するのを抑制することができ、画像流れの発生を防止することができる。
信号強度の低下率が15%以上である場合(S5にてYESの場合)には、像担持体ヒータHをオンとし、像担持体をヒータHで加熱して昇温させる(S7)。そして、像担持体が所定温度に達したとき像担持体ヒータHをオフとし(S8)、画像形成動作に移行する(S9)。
画像形成動作が終了すると(S10)、像担持体の駆動を停止し、画像形成装置の電源をオフとするか否かを判断する(S11)。
画像形成装置の電源をオフとする場合には、終了し、オフとしない場合には、ステップ2(S2)に戻り、上記フローをたどる。
以上で述べたように、画像形成装置内に内蔵された雰囲気中の温湿度を検知するセンサによって、絶対水分量が18g/kg以上の高温高湿環境下と判断された場合において、
(1)微小表面電位計19によって検知した信号強度が画像流れの発生していない場合よりも低下率が15%を超えないときは、像担持体を10分間空回転し、
(2)15%以上低下しているときは、像担持体を所定の温度に達するまで加熱する、
ことで、削れ量の少ない像担持体を用いた場合においても従来より少ないエネルギーで効率よく画像流れを防止することができ、良質な画像形成を行うことができた。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。図14に、本実施例における画像形成装置100の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、図1に示す実施例1で説明した画像形成装置100と同様の構成とされる。ただ、本実施例では、図14に示す実施例1で使用していた非接触式であるコロナ方式帯電器11及び転写器14を、接触式であるローラ方式の帯電器111と転写器114に変更した点でのみ異なる。従って、本実施例の画像形成装置100にて、実施例1の画像形成装置100と構成及び機能の同じ部材には、同じ参照番号を付し、実施例1の説明を援用し、詳しい説明は省略する。
実施例1のコロナ方式では、図2の放電線21から像担持体表面24までの距離が数cm程度あるため、放電線21に大きな電圧を印加しなければならない。その結果、像担持体10を所定の電圧に帯電させるために必要な放電電流量も多くなり、その分オゾンの発生量も多くなる。そのため、コロナ方式では放電生成物が生成されやすくなり、画像流れが発生しやすいという問題があった。
そこで、放電電流量を減らすよう接触帯電式のローラ方式に変更した。ローラ方式では像担持体10とローラ帯電器111が接触していない微小なギャップで放電させる。そのため、像担持体10を所定の値に帯電させるための放電電流量がコロナ帯電方式よりも少なくて済む。この結果、コロナ方式よりもローラ方式の方が帯電中の放電電流量を10分の1以下に抑えることができる。従って、オゾンの発生量及び放電生成物の生成量を抑制することができ、実施例1の非接触帯電方式の場合よりも画像流れを発生させづらくすることができる。
本実施例では、適用される画像形成装置100及び微小表面電位計19の作動条件については実施例1と同様であるため、詳細については省略する。
ただし、実施例1においては微小表面電位計19を作動させるために、画像形成装置100が設置されている近傍の雰囲気中に含まれる絶対水分量が18g/kg以上であることを必要条件と設定していた。
しかし、実際には高温高湿環境以外の場合でも画像流れが発生しやすくなる状況が考えられる。この場合、仮に画像流れが発生したとしても画像流れの発生防止処置、即ち、画像流れ防止工程を実行することができず、本発明の効果が発揮されない。
本実施例では、湿度センサ102による環境モニタを解除することで、画像流れが発生しやすい如何なる場合においても画像流れ発生防止処置を取ることができ、湿度センサ設置によるコストを削減することができる。
これらの理由から、本実施例では湿度センサ102を撤去してコスト削減を図ることができ、なお且つ、如何なる場合においても画像流れが発生しそうな場合にはいち早く画像流れを検知でき、画像流れ発生防止の処置を施すことが可能になる。
次に、本実施例においても画像流れの発生を防止する対策としては、像担持体加熱ヒータHを使用することは画像流れに対して非常に効果的ではある。しかし、近年ではコスト削減や省エネ志向が高まっている。そのために、画像形成装置内にヒータを搭載することは難しくなってきている。そこで、本実施例ではヒータHによる像担持体近傍の水分量減少という方針ではなく、放電生成物の除去効率を実施例1の場合よりもさらに向上させるという方針をとった。この方法として、実施例1で現像剤に混合していた研摩粒子を酸化セリウムから小粒径でなお且つ形状分布がシャープな小粒径のチタン酸ストロンチウムに変更した。小粒径のチタン酸ストロンチウムは、像担持体131と研摩粒子との接触面積が大きいため、他の研摩粒子に比べて研摩効果が非常に大きい。
本実施例で現像剤中に添加した研摩粒子として、粒子形状が概略立方体または直方体であるペロブスカイト型結晶の無機微粉体を用いることで、像担持体131上に付着した放電生成物の除去をより効率的に行うことができる。該研摩粒子の粒子形状が概略立方体または直方体であることで、研摩粒子と像担持体131の表面との接触面積を大きくすることができ、研摩粒子の立方体または直方体のエッジが形成されていることでクリーニングブレード16に保持されやすくなる。
本実施例において使用されたペロブスカイト型結晶の無機微粉体であるチタン酸ストロンチウムは、一次粒子の平均粒径が30〜300nm、好ましくは40〜300nmであり、40〜250nmであることがさらに好ましい。平均粒径が30nm未満ではクリーナー部における当該粒子の研摩効果が不十分であり、300nmを超えると研摩効果が強すぎ像担持体131に傷が発生するため適さない。また、該ペロブスカイト型結晶の無機微粉体は、トナー粒子表面に必ずしも一次粒子として存在するとは限らず凝集体として存在する場合もある。しかし、その場合でも600nm以上の粒径を有する凝集体の含有率が1個数%以下であれば、良好な結果が得られる。600nm以上の粒子及び凝集体を1個数%以上含有している場合には、一次粒径が300nm未満であっても像担持体131に傷が発生するため適さない。
本実施例において用いたペロブスカイト型結晶の無機微粉体の平均粒径については、電子顕微鏡にて5万倍の倍率で撮影した写真から100個の粒径を測定し、一次粒子の最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2として求めた。また、本実施例で用いるペロブスカイト型結晶無機微粉体中の粒子形状が概略立方体または直方体である粒子の含有率を50個数%以上にすることで、さらに効率的に放電生成物の除去が行えるので好ましい。
本実施例では、この小粒径のチタン酸ストロンチウムをトナーに1重量部外添したより研摩力の向上した現像剤を用いて検討を行った。
また、本実施例では実施例1のように像担持体上の1箇所の微小領域表面電位を検出するのではなく、図15に示すように、微小表面電位計19(19a〜19j)を像担持体10の主走査方向10箇所に配備した。これによって、複数の場所における潜像微分波形を同時にモニタリングできるようにした。
実施例1のようにある特定の1箇所でしか出力波形を検知しない場合だと、印字される画像比率が小さい領域においては現像剤に混合した研摩剤がクリーナー部に供給されにくくなるため、局所的に画像流れが発生してしまう。そのため、検知できない部分で画像流れが発生してしまった場合でも放電生成物の除去動作を開始することができず、画像流れの発生を未然に防止することができない。
そこで、図15に示すように主走査方向全体に均一に10箇所、微小表面電位計19(19a〜19j)を像担持体10上の画像形成領域内に設置することによって、より精度の良い画像流れ検出を行った。
また、実施例1では画像流れの発生していない初期の信号強度を基準としてある瞬間における信号強度がどのくらい変化しているのかを検知していたが、初期の場合は信号強度が場所によらずほぼ一定である。そのため、常にメモリ101に保存した初期の信号強度と比較する必要はない。
そこで、本実施例では、予め初期の信号強度に対する変化量を求めておき、その値を閾値としてメモリ101に保存しておくことで、ある瞬間における信号強度の絶対値のみで画像流れの発生防止策、即ち、画像流れ防止工程の実行を判断できるようにした。
ここで、画像流れが発生していないときの信号強度は、およそ120mV程度とほぼ一定であり、従って、本実施例では、この値に対しておよそ15%低下した場合、即ち100mV以下になった場合に画像流れ防止策を施すようにした。
閾値を15%以下の低下率に設定した理由としては、低下率が15%を超えなければ、例え画像流れが発生している状況でも出力画像上ではほとんど判別できず、問題視されることはない。しかしながら、信号強度の低下率が15%以上となると出力画像上でも視認されるようになる。そのため、少なくとも15%以上変化した場合には何らかの画像流れ対策を施す必要があるためである。
本実施例では画像流れ不発生時の信号強度が100mV以下になった場合における画像流れ対策として、画像流れ防止工程を実行する。画像流れ防止工程は、像担持体が停止状態から次に画像形成される際の前回転及び画像形成が終了し像担持体が停止する直前の後回転中に、像担持体上に帯電及び露光し、前述した3dotのチャートを使用して静電潜像パターンを形成する。このとき、像担持体上の主走査方向に配備された10個の微小表面電位計のうち、検出された信号強度がいずれも100mVを超える場合には画像流れ防止策を施さない。しかし、少なくとも1個以上の微小表面電位計19において100mV以下の信号強度を検出した場合には、画像流れ防止策として像担持体上に副走査方向1cm、主走査方向幅100%の帯とされる静電潜像パターンを現像器13にて現像する。このとき、現像器13から像担持体10上には現像剤が現像されるが、転写器114に印加する転写バイアスは記録媒体Pに転写する場合とは反対の逆バイアスを印加する。これにより、像担持体上に現像された現像剤が転写ローラ114側に移動することはなく、クリーナー部に到達する。
従って、本実施例では、現像手段である、研摩剤を含む現像剤を担持し搬送する現像剤担持体13aを備えた現像器13は、研摩剤供給手段として機能している。また、クリーナー部を構成するクリーニング手段であるクリーニング装置15は、研摩剤供給手段としての現像器13より所定量供給される研摩剤を使用して像担持体表面を摺擦する現像剤摺擦手段として機能する。
この結果、クリーナー部における像担持体10とクリーニングブレード16とのニップ部に通常よりも多く研摩剤が供給されるため、放電生成物の除去が促進されることになる。この結果、画像流れ改善への効果が期待され、常に良質な画像を得ることができる。
図16に、本実施例に従った像担持体の画像流れの発生を防止する回復動作、即ち、画像流れ防止工程を実行する画像形成動作態様を説明するフロー図を示す。
先ず、画像形成に先立って、画像形成装置の電源がオンとされる(S21)。
次いで、像担持体が回転せずに停止している場合(S22にてYESの場合)には、ステップ23(S23)に進み、前回転中に、潜像パターン発生手段204にて、像担持体10上に3dotの潜像パターンを像担持体一周分だけ描かせる。そして、像担持体上の潜像微分波形を微小表面電位計19によって検知する。このときの出力波形の信号強度が100mV以下か否かを判断する(S24)。信号強度が100mVを超えている場合(S24にてNOの場合)には、画像形成動作に移行する(S26)。
信号強度が100mv以下である場合(S24にてYESの場合)には、像担持体上の潜像を現像し(S25)、上述のようにして、像担持体上に現像された現像剤が転写ローラ側ではなくクリーナー部に到達するようにする。これによって、クリーナー部にて放電生成物の除去を行う。その後、画像形成動作に移行する(S27)。
画像形成動作が終わると、ステップ27(S27)に進み、後回転中に、潜像パターン発生手段204にて、像担持体10上に3dotの潜像パターンを像担持体一周分だけ描かせる。そして、像担持体上の潜像微分波形を微小表面電位計19によって検知する。このときの出力波形の信号強度が100mV以下か否かを判断する(S28)。信号強度が100mVを超えている場合(S28にてNOの場合)には、像担持体を停止する(S30)。
ステップ28(S28)にて、信号強度が100mv以下である場合(S28にてYESの場合)には、像担持体上の潜像を現像し(S29)、上述のようにして、像担持体上に現像された現像剤が転写ローラ側ではなくクリーナー部に到達するようにする。これによって、クリーナー部にて放電生成物の除去を行う。その後、像担持体を停止する(S30)。
像担持体10が停止すると(S30)、画像形成装置の電源をオフとするか否かを判断する(S31)。
画像形成装置の電源をオフとする場合には、終了し、オフとしない場合には、ステップ22(S22)に戻り、上記フローをたどる。
尚、ステップ22(S22)にて、像担持体10が回転している場合(S22にてNOの場合)には、上記ステップ27(S27)に進み、上述したフローをたどる。
以上で述べたように、本実施例によれば、画像流れ対策として像担持体加熱ヒータ搭載によるコストや消費電力を抑えつつ、出力画像の高画質化、像担持体の長寿命化による低ランニングコスト化及び有害物質の発生抑制等も同時に実現することができる。これによって、より環境にも配慮した改善効果を得ることができた。