以下、本発明の一実施形態である工具交換装置2について、図面を参照して説明する。図1は、工作機械1に付設された工具交換装置2の要部を破断した右側面図である。なお、以下説明において、図1の左側を工作機械1の前側とし、右側を工作機械1の後ろ側とし、紙面手前側を工作機械1の右側とし、紙面奥行き側を工作機械1の左側とする。
工作機械1の構成について概略的に説明する。図1に示すように、工作機械1は、土台となるベース(図示外)と、該ベースの上部後方に立設された柱状のコラム5と、該コラム5の前面に沿って昇降可能に支持された主軸ヘッド10と、該主軸ヘッド10の内側に回転可能に支持され、工具7を保持する工具ホルダ8が着脱可能に装着される工具装着穴(図示外)を有する主軸12と、該主軸12に装着される工具7の交換を自動的に行う工具交換装置2とを備える。主軸ヘッド10の上部には、主軸12を回転駆動させるための主軸モータ13が支持されている。ベース上には、ワークをXY方向に移動可能に保持するテーブル装置(図示外)が設置されている。工作機械1は、主軸ヘッド10が昇降すると共に、高速回転する主軸12に装着された工具ホルダ8に把持された工具7がワークに接触することで、テーブル装置に保持されたワークに所望の加工を施す。
コラム5の左右両面には、主軸ヘッド10を左右両側から挟んで前方に延設された一対のフレーム6(図1では1枚のみ図示)が設けられている。一対のフレーム6の各先端間にはマガジン支持台14が固定されている。マガジン支持台14の前面側に本発明の工具交換装置2が配設されている。マガジン支持台14の上部には、工具交換装置2の後述するマガジン本体20を保護するための側面視略L字型のマガジンカバー15が設けられている。
工具交換装置2の構造について説明する。図1に示すように、工具交換装置2は、円盤状のマガジン本体20と、該マガジン本体20の外周に沿って放射状に配置され、工具ホルダ8を把持するための複数のグリップアーム40(図1では、上下2本のグリップアーム40のみ図示)とを備えている。
マガジン本体20について説明する。図1に示すように、円盤状のマガジン本体20の中心は、マガジン支持台14から工作機械1の前側に向かって斜め下方に延びる回動軸22の先端に固定されている。回動軸22の後端は、マガジン支持台14の内側に設けられた回転割出機構(図示外)の一部に連結されている。この回転割出機構は、図示しないサーボモータ、エンコーダ、複数のギヤ及びカム等を備える。サーボモータ及びエンコーダは、工作機械1の制御装置(図示外)に接続されている。工作機械1の制御装置は、エンコーダの出力信号に基づき、サーボモータのフィードバック制御を行うことで、マガジン本体20の回転割出位置を制御する。
マガジン本体20の裏面の外周には、グリップアーム40を揺動可能に軸支するための側面視L字型の複数の支点台30が、マガジン本体20の周方向に沿って各々固定されている。支点台30は、マガジン本体20の裏面に固定された台座部31(図2参照)と、該台座部31の一端から略直角に立設された軸支部32(図2参照)とを備えている。この支点台30の軸支部32の先端部に、グリップアーム40の後述する軸支部47(図2参照)が軸支されている。グリップアーム40は支点台30を中心に揺動する。
なお、本実施形態の工具交換装置2では、主軸ヘッド10を昇降させると共に、後述するカム機構を利用することで、複数のグリップアーム40のうち、マガジン本体20の最下方位置に割り出された1本のグリップアーム40のみを揺動させる。割出状態のグリップアーム40の後述する把持部46(図2参照)が、主軸12に近接する「近接位置」と、主軸12から離間する「退避位置」との間を移動する。
マガジン本体20の裏面であって、複数の支点台30が固定された各位置よりも径方向内側には、グリップアーム40の後端側を、マガジン本体20と主軸ヘッド10との間でガイドするための板状のガイド部材80が、複数のグリップアーム40にそれぞれ対応する各位置に固定されている。ガイド部材80は、全てのグリップアーム40の揺動を安定させることができる。ガイド部材80の形状については後述する。
図2乃至図5を参照してグリップアーム40の構造について説明する。図2は、ガイド部材80にガイドされたグリップアーム40の斜視図(把持部46:近接位置)である。図3は、ガイド部材80にガイドされたグリップアーム40の斜視図(把持部46:退避位置)である。図4は、グリップアーム40の裏側を斜め下側から見た斜視図である。図5は、グリップアーム40の下側を斜め下側から見た斜視図である。
図2,図3に示すように、グリップアーム40は、支点台30に軸支される略円柱状の軸支部47と、該軸支部47の外周面から軸線に直交する方向に延設された角柱状のアーム本体45と、該アーム本体45の延設方向の先端部から緩やかに湾曲しつつ略水平に延設され、工具ホルダ8を把持するための把持部46と、前記軸支部47の外周面からアーム本体45の延設方向とは反対方向に突設されたブロック状の後端部48と、該後端部48の一部に一端側が回動可能に軸支され、他端側にローラ64(図4参照)を軸支する側面視長尺状のローラ支持部材50と、該ローラ支持部材50の他端と軸支部47との間に配設され、ローラ支持部材50の他端を軸支部47から離間する方向に付勢する円筒状の圧縮コイルバネ60とを備える。
軸支部47について説明する。図4,図5に示すように、軸支部47の両端面には、軸支部47と同軸上に突出する円柱状の突起部471,471が各々設けられている。突起部471,471は、支点台30(図2参照)の軸支部32の先端部に設けられた軸支穴(図示外)に内挿される。これにより、軸支部47が支点台30に軸支されるので、グリップアーム40が支点台30を中心に揺動可能となる。
アーム本体45について説明する。図2,図3に示すように、アーム本体45の主軸ヘッド10側に向けられた側面の幅方向一端側には、カムフォロア73を回転可能に軸支するカムフォロア支持部62が設けられている。カムフォロア73は、主軸ヘッド10の昇降により、主軸ヘッド10の前面に固定された後述する固定カム110のカム面111(図10参照)に沿って転動する。固定カム110は、主軸ヘッド10がマガジン本体20の回転可能な位置へ上昇したときに、近接位置にあるグリップアーム40を退避位置に回動させる機能を有する。なお、図2乃至図5では図示していないが、アーム本体45の外側に向かう側面に沿って、主軸12周辺から飛散する切粉から保護するためのカバー90(図7参照)が固定されている。
把持部46について説明する。図3,図5に示すように、把持部46の先端側には、工具ホルダ8を把持するための平面視略C状の把持穴463が設けられている。把持穴463に外部から工具ホルダ8が挿入されると、把持穴463の内縁部に対して、工具ホルダ8の外周面に周設された溝部18(図8参照)が係止する。把持部46の2つに分岐する各先端部には、長尺板状の支持フレーム461,462が突出している。支持フレーム461,462の中央部分には軸支穴465,465が各々設けられている。支持フレーム461,462の軸支穴465,465に対して、軸部466が内挿されている。支持フレーム461,462は、支持フレーム461,462の軸支穴465,465を中心に回動する。支持フレーム461,462の各先端には、ローラ71,72が回動可能に軸支されている。ローラ71,72は、把持穴463に直交する方向に軸心を有する。円筒状の圧縮コイルバネ464は、アーム本体45に凹状に形成されたバネ固定部(図示外)と、支持フレーム461,462の側面に凹状に形成されたバネ固定部(図示外)との間に配設されている。
把持部46に工具ホルダ8が把持される仕組みについて説明する。把持部46のローラ71,72の間から、把持穴463に向かって工具ホルダ8が押し込まれると、ローラ71,72が工具ホルダ8の溝部18に沿って転動する。このとき、ローラ71,72間は工具ホルダ8の幅によって外方に広げられ、支持フレーム461,462が回動することにより圧縮コイルバネ464が圧縮させられる。把持穴463の内縁部に工具ホルダ8の溝部18が係合すると、圧縮コイルバネ464が伸長し支持フレーム461,462が回動することにより、ローラ71,72が元の位置に向かって内方に移動する。これにより、工具ホルダ8が、ローラ71,72によって把持穴463側に付勢されるので、工具ホルダ8が把持穴463からの抜けを防止できる。従って、把持部46に工具ホルダ8が確実に把持される。
後端部48について説明する。図2,図3に示すように、後端部48の主軸ヘッド10側(図1参照)に向けられた側面には、カムフォロア74を回転可能に軸支するカムフォロア支持部63が設けられている。カムフォロア74は、主軸ヘッド10の昇降により、主軸ヘッド10の前面に固定された後述する浮動カム120(図10参照)のカム面121に沿って転動する。浮動カム120は、主軸ヘッド10がマガジン本体20の回転可能位置から下降したときに、退避位置にあるグリップアーム40を近接位置に回動させる機能を有する。
本実施形態のグリップアーム40では、カムフォロア73,74を固定カム110及び浮動カム120の各カム面111,121に各々転動させることで、グリップアーム40の揺動を安定かつ確実なものとしている。なお、固定カム110及び浮動カム120を利用したグリップアーム40の揺動動作については後述する。
図4,図5に示すように、後端部48の軸支部47に連結された部位とは反対側の部位には、板状の突起部65が設けられている。突起部65の両面には、板面に直交する方向に突出する円柱状の軸67,67が突設されている。
ローラ支持部材50の構造について説明する。図4,図5に示すように、ローラ支持部材50は、平面視略長方形の板状の連結部53と、該連結部53の幅方向の両端部に各々立設された一対の長尺状の板部51,52と、該板部51,52に回転可能に支持されたローラ64とを備える。板部51,52の長手方向一端側には軸支穴55が各々設けられ、他端側には軸支穴56が各々設けられている。板部51,52間の前記一端側に対して、後端部48の突起部65が挟まれている。突起部65の軸67,67は、板部51,52の各軸支穴55,55に内挿されている。これにより、ローラ支持部材50は、後端部48の突起部65を中心に回動する。
ローラ64の軸部68は、板部51,52の軸支穴56,56に内挿されている。ローラ64は、板部51,52間の連結部53の上側において回動する。ローラ64は、ガイド部材80のガイド面84(図2,図3参照)に沿って転動する。連結部53のローラ64に対向する上面とは反対側の下面には、圧縮コイルバネ60の上端部を当接して位置決めするために、凹状に形成された凹部531(図5参照)が設けられている。
圧縮コイルバネ60について説明する。図4,図5に示すように、円筒状の圧縮コイルバネ60は、軸支部47の外周面と、ローラ支持部材50の連結部53の下面との間に配設されている。圧縮コイルバネ60の下端部は、軸支部47の外周面に凹状に形成されたバネ固定部473(図4参照)に固定されている。圧縮コイルバネ60の上端部は、連結部53の下面に形成された凹部531(図5参照)を当接させている。図2,図3に示すように、圧縮コイルバネ60を圧縮しながらローラ64を押し下げ、ローラ64をガイド部材80のガイド面84に当接させている。
図2,図3に示すように、グリップアーム40は、ガイド部材80のガイド面84に対してローラ64を転動させている。このローラ64を転動させる機構は、従来の工具交換装置200(図16参照)のように、鋼球226をグリップアーム220の他端225に設けられた行止り孔228から直線的に出退させる機構とは異なる。つまり、ローラ64は直線的に動くのではなく回転するので、ローラ64に切粉が付着しても、その回転が妨げられることはない。よって、切粉の影響を受けることなく、ガイド面84に対してローラ64を転動させることができるので、グリップアーム40を安定して揺動させることができる。
ローラ64を軸支するローラ支持部材50は、後端部48の突起部65に対して回動可能に軸支されている。圧縮コイルバネ60は、ローラ支持部材50のローラ64が軸支されている側を付勢している。ローラ64は、圧縮コイルバネ60の弾性力によってガイド面84に向かって付勢される。ローラ64には常時圧力をかけた状態で、ガイド部材80のガイド面84を転動させることができる。圧縮コイルバネ60は、ガイド部材80のガイド面84に形成された後述する溝85,86に対してローラ64を強固に嵌着させることができる。
ローラ64を付勢する手段である圧縮コイルバネ60は交換が容易である上に安価である。従来の工具交換装置200(図16参照)では、行止り孔228内に切粉が入ると、圧縮コイルバネ60の伸縮に不具合を起こすことがあったが、本実施形態では、圧縮コイルバネ60が外部に露出されているので、圧縮コイルバネ60に切粉が付着しても振動等によって落下する。よって、圧縮コイルバネ60の伸縮を良好に維持できる。
図6を参照してグリップアーム40の後端側をガイドするガイド部材80の形状について説明する。図6は、ガイド部材80の側面図である。以下の説明では、複数のガイド部材80のうち、マガジン本体20の最下方位置にあるガイド部材80を一例として説明する。図6の上側をガイド部材80の上側とし、下側をガイド部材80の下側とし、右側を主軸ヘッド10側とし、左側をマガジン本体20側とする。
ガイド部材80は、マガジン本体20の裏面から主軸ヘッド10側(図1参照)に向かって略垂直に固定される板状のガイド部81を備えている。そのガイド部81のマガジン本体20に固定される側の一端部の両面には、マガジン本体20に固定するためのブロック状の固定部82,82が設けられている。
ガイド部81のグリップアーム40の後端側に向けられた下端部(図2参照)には、固定部82,82側からマガジン本体20に向かって山なりに湾曲したガイド面84が形成されている。そのガイド面84の固定部82,82側の一端部には、ローラ64を嵌着させるための溝85が形成されている。その反対側の他端部には、同様の溝86が形成されている。溝85にローラ64(図4参照)が嵌着することで、図2に示すように、把持部46が主軸12に近づく近接位置に移動した状態のグリップアーム40の姿勢を保持できる。溝86にローラ64が嵌着することで、図3に示すように、把持部46が主軸12から遠ざかる退避位置に移動した状態のグリップアーム40の姿勢を保持できる。
図6に示すように、ガイド部81の主軸ヘッド10側に延びる先端部87の下側には、溝86から主軸ヘッド10側に向かうにつれて、グリップアーム40の後端側から徐々に離れる方向に傾斜するテーパ面88が設けられている。テーパ面88は、グリップアーム40のローラ64を、外側からガイド面84に向かってガイドする部位である。
ガイド面84の湾曲形状は、グリップアーム40の軸支部47をP点とした場合に、そのP点を回動中心とする円の軌跡をベースにして形成されている。ガイド面84の溝85側の曲率半径(r1)は、溝86側の曲率半径(r2)よりも小さくなるように調整されている。ガイド面84を摺動するローラ64は、溝85側よりも溝86側に向かって移動し易くなっている。このようなガイド面84に沿って、グリップアーム40の後端側にあるローラ64を転動させる。
ガイド面84の曲率半径が一定でなくても、点Pとガイド面84との間の距離に応じて、ローラ支持部材50が適宜回動すると共に、ローラ64が圧縮コイルバネ60によってガイド面84に向かって付勢される。これにより、ローラ64をガイド面84に密着して転動させることができるので、グリップアーム40の後端側を、マガジン本体20と主軸ヘッド10との間で安定してガイドできる。即ち、グリップアーム40の揺動動作を安定化できる。
図7乃至図13を参照してグリップアーム40の揺動させる機構とその動作について説明する。図7は、マガジン本体20が回転可能な位置に主軸ヘッド10が上昇した様子を示した図(把持部46:近接位置)である。図8は、主軸ヘッド10の昇降によってグリップアーム40が揺動する様子を示した図(把持部46:退避位置)である。図9は、主軸ヘッド10の昇降によってグリップアーム40が揺動する様子を示した図(溝86からローラ64が離脱した状態)である。図10は、グリップアーム40の揺動動作を示す図(ローラ64が溝85に嵌着)である。図11は、グリップアーム40の揺動動作を示す図(ローラ64がガイド面84を摺動)である。図12は、グリップアーム40の揺動動作を示す図(ローラ64が溝86に嵌着)である。図13は、溝86からローラ64が離脱した際のグリップアーム40の姿勢を示した図である。
グリップアーム40を揺動させるためのカム機構について説明する。図8に示すように、主軸ヘッド10の前面には、固定カム110と、浮動カム120とが横並びに固定されている。固定カム110は、グリップアーム40のカムフォロア73に対応する位置に固定されている。浮動カム120は、グリップアーム40のカムフォロア74に対応する位置に固定されている。図10に示すように、板状の固定カム110は、主軸ヘッド10の前面に対して略垂直に立設されている。カムフォロア73に対向する側の一端部には、下側から中段位置にかけて、工作機械1の前方に向かって緩やかに湾曲しながら膨出し、その中段位置から上段位置まで垂直面を有するカム面111が形成されている。カム面111の上部には、垂直面から主軸ヘッド10側に向かって傾斜し、カムフォロア74に下側から当接して押さえることによって、グリップアーム40の揺動を制限するテーパ面112が形成されている。
板状の浮動カム120は、主軸ヘッド10の前面に対して略垂直に立設されている。カムフォロア74に対向する側の一端部には、固定カム110のカム面111とは対称的に、上側から下側にかけて、工作機械1の前方に向かって緩やかに湾曲しながら膨出するカム面121が形成されている。浮動カム120の内部には、浮動カム120を主軸ヘッド10から離間する方向に付勢する圧縮コイルバネ(図示外)が内蔵されている。浮動カム120のカム面121を転動するカムフォロア74は、内蔵された圧縮コイルバネによって主軸ヘッド10から離間する方向に付勢されている。
カム機構を利用したグリップアーム40の揺動動作について説明する。図7に示すように、マガジン本体20の回転によって最下方位置に所望のグリップアーム40が割り出される。このとき、ローラ64はガイド面84の溝85(図6参照)に嵌着しているので、把持部46が主軸12に近接する近接位置に移動した状態でその姿勢が保持されている。この状態では、把持部46に把持された工具ホルダ8は、主軸12の工具装着穴の下方に位置する。
主軸ヘッド10が下降を開始すると、主軸12の工具装着穴に工具ホルダ8が装着される。図10に示すように、カムフォロア74が浮動カム120のカム面121に当接し、カムフォロア73が固定カム110のカム面111に当接する。次いで、主軸ヘッド10がさらに下降を続けると、カムフォロア74は浮動カム120のカム面121に沿って転動し、カムフォロア73は固定カム110のカム面111に沿って転動する。グリップアーム40は、カムフォロア73と固定カム110によって時計回り(グリップアーム40を右側面から見た時)に揺動すると共に、ガイド面84の溝85からローラ64が離脱する。さらに、グリップアーム40の揺動に伴って、主軸12に装着された工具ホルダ8から把持部46が引き離される。
図11に示すように、主軸ヘッド10がさらに下降するに従いローラ64はガイド面84に沿って主軸ヘッド10側に向かって転動する。ローラ64がガイド面84に沿ってガイドされることで、グリップアーム40の後端側の軌跡がばらつかない。よって、グリップアーム40を安定して揺動させることができる。図12に示すように、グリップアーム40がさらに揺動し、ローラ64がガイド面84の溝86に嵌着すると、把持部46が退避位置に移動した状態で、グリップアーム40の姿勢が保持される。その後、主軸ヘッド10はさらに下降し、浮動カム120のカム面121からカムフォロア74が離れ、固定カム110のカム面111からカムフォロア73が離れる。こうして、グリップアーム40の揺動による主軸12への工具ホルダ8の装着が完了する。
次に、ローラ64が溝86から離脱してしまった場合のグリップアーム40の動作について説明する。
ワークの加工中の振動によって、ローラ64が溝85から離脱してしまった場合、グリップアーム40の姿勢が保持できない。このとき、グリップアーム40が勝手に揺動してしまうと、把持部46が主軸ヘッド10に干渉する虞がある。
図6に示すように、本実施形態では、ガイド部材80のガイド面84において、溝85側の曲率半径(r1)は、溝86側の曲率半径(r2)よりも小さくなっている。従って、ガイド面84を摺動するローラ64(図13参照)は、溝85側よりも溝86側に向かって移動し易くなっている。ローラ64は、圧縮コイルバネ60によってガイド面84に対して付勢されている。よって、ローラ64が溝85側から溝86側に向かって移動する方向に、圧縮コイルバネ60の付勢力が作用する。図13に示すように、溝86からローラ64が離脱してしまった場合でも、ローラ64は溝86側に向かって移動し、把持部46は主軸ヘッド10から離れるため、把持部46が主軸ヘッド10に干渉するのを防止できる。
図9,図13に示すように、本実施形態では、ローラ64が溝86から離脱し、ローラ64がガイド面84をマガジン本体20側に転動した場合でも、主軸ヘッド10が上昇する際、カムフォロア73に対して固定カム110のカム面111の上部に形成されたテーパ面112を下側から当接させることができる。テーパ面112がカムフォロア73を徐々にマガジン本体20側に押圧するため、ローラ64が溝86に嵌着する。把持部46が主軸ヘッド10に向かって移動しないので、主軸ヘッド10に干渉するのを防止できる。
本実施形態のグリップアーム40の重心は、支点台30に軸支された状態で、軸支部47よりも主軸ヘッド10側に位置するように調整されている。グリップアーム40の重心部分は、軸支部47を中心に、マガジン本体20側に向かうようにして回動する。即ち、グリップアーム40の把持部46は、退避位置に向かって移動するので、ガイド面84の溝86からローラ64が離脱してしまった場合でも、把持部46が主軸ヘッド10に干渉するのを防止できる。
図14,図15を参照してグリップアーム40のメンテナンス作業におけるローラ64のガイド面84に対する着脱方法について説明する。図14は、ローラ64をガイド部材80のガイド面84から離脱させた状態を示した図である。図15は、ローラ64をガイド部材80のテーパ面88に当接させた状態を示した図である。
ローラ64をガイド面84に外側から取り付ける方法について説明する。支点台30に軸支されたグリップアーム40の後端側を主軸ヘッド10側に引き出す。この状態で、図14に示すように、圧縮コイルバネ60を圧縮させながらローラ64を押し下げる。
次いで、図15に示すように、ローラ64を押し下げた状態で、ガイド部材80の先端部87に形成されたテーパ面88に当接させる。テーパ面88は、ガイド面84の溝86から主軸ヘッド10側に向かうにつれて、グリップアーム40の後端側から徐々に離れる方向に傾斜している。テーパ面88に沿って、ローラ64をガイド面84側に向かって転動させると、ガイド面84側に近づくにつれて、ローラ64は徐々に押し下げられる。テーパ面88と溝86との境界を越えると、圧縮コイルバネ60の弾性復帰力によって、ローラ64は溝86に勢いよく嵌着する。ローラ64をテーパ面88に当接させ、ガイド面84側に押し込むだけの簡単な作業で、ローラ64をガイド面84に当接させることができる。よって、グリップアーム40のメンテナンス時の作業性を向上できる。なお、ローラ64は、ローラ支持部材50に軸支されているので、作業中にローラ64が脱落する虞もない。
ローラ64をガイド面84から外側に取り外す方法について説明する。圧縮コイルバネ60を圧縮させながら、ローラ64を溝86から押し下げて離脱させる。次いで、ローラ64をテーパ面88と溝86との境界を乗り越えさせる。上記したように、テーパ面88は、溝86から主軸ヘッド10側に向かうにつれて、グリップアーム40の後端側から徐々に離れる方向に傾斜している。よって、テーパ面88に沿ってローラ64を少しずつ転動させることで、圧縮コイルバネ60が徐々に伸長するので、ローラ64が溝86から離脱した途端に、圧縮コイルバネ60の弾性復帰力で跳ね上がるのを防止できる。従って、ローラ64をガイド面84から外側に安全に抜き出すことができるので、グリップアーム40のメンテナンス時の作業性を向上できる。
なお、本実施形態のガイド部材80は、従来の工具交換装置200のように、グリップアームの後端側から鋼球を圧縮コイルバネで出退可能に支持するものに利用することもできる。例えば、ガイド面84から鋼球を抜き出す際に、テーパ面88に沿って鋼球を摺動させることによって、鋼球が勢いよく飛び出すのを防止できる。
以上説明したように、本実施形態の工具交換装置2では、マガジン本体20の外周に沿って複数のグリップアーム40を備えている。グリップアーム40は、支点台30によって揺動可能に軸支されている。マガジン本体20の中心側から外側に向かって延びるグリップアーム40の先端部には、工具ホルダ8を把持するための把持部46が設けられている。その反対の後端側は、マガジン本体20の裏面に固定されたガイド部材80のガイド面84に沿ってガイドされる。
第1の特徴として、グリップアーム40の後端側には、ガイド面84に沿って転動させるローラ64が設けられている。ローラ64は、後端部48の突起部65に回動可能に軸支されたローラ支持部材50に軸支される。ローラ支持部材50のローラ64が軸支される側は、軸支部47に一端側が固定された圧縮コイルバネ60によってガイド面84に向かって付勢される。これにより、ローラ64をガイド部材80のガイド面84に対して密着させながら転動させることができる。ローラ64は、切粉の影響を受けることなく、ガイド面84に沿って転動することができるので、グリップアーム40を安定して回動させることができる。
第2の特徴として、ローラ64を転動させるガイド部材80のガイド面84の湾曲形状は、グリップアーム40の軸支部47をP点とした場合に、P点を回動中心とする円の軌跡に沿ってほぼ形成されている。ガイド面84の溝85側の曲率半径(r1)は、溝86側の曲率半径(r2)よりも小さくなるように調整されている。ガイド面84を摺動するローラ64は、溝85側よりも溝86側に向かって移動し易くなっている。例えば、溝86からローラ64が離脱してしまった場合、ローラ64を溝86側に向かって自動的に移動させることができる。これにより、把持部46が主軸ヘッド10に干渉するのを防止できる。
ローラ64は、圧縮コイルバネ60によってガイド面84に対して付勢されているので、ローラ64が溝85側から溝86側に向かって移動する方向に、圧縮コイルバネ60の付勢力が作用する。溝86からローラ64が離脱してしまった場合でも、ローラ64は溝86側に向かって移動し、把持部46は主軸ヘッド10から離れるため、把持部46が主軸ヘッド10に干渉するのを防止できる。
第3の特徴として、ローラ64が溝86から離脱してしまった場合、カムフォロア73に対して、固定カム110のカム面111の上部に形成されたテーパ面112が下側から当接させる。テーパ面112がカムフォロア73を徐々にマガジン本体20側に押圧するため、ローラ64が溝86に嵌着する。把持部46が主軸ヘッド10に向かって移動しないので、主軸ヘッド10に干渉するのを防止できる。
第4の特徴として、ガイド部材80の先端部87には、テーパ面88が形成されている。テーパ面88は、ガイド面84の溝86から主軸ヘッド10側に向かうにつれて、グリップアーム40の後端側から徐々に離れる方向に傾斜している。例えば、ローラ64をガイド面84に対して外側から押し込む場合、ローラ64を押し下げ、テーパ面88に沿ってガイド面84側に向かって転動させる。ローラ64はガイド面84に近づくにつれて徐々に押し下げられ、テーパ面88と溝86との境界を越えると、圧縮コイルバネ60の弾性復帰力によって、溝86に勢いよく嵌着する。よって、ローラ64をテーパ面88に当接させて、ガイド面84側に押し込むだけの作業で、ローラ64をガイド面84に当接させることができるので、取り付け時の作業性を向上できる。
ローラ64をガイド面84から外側に抜き出す場合、ローラ64を溝86から押し下げて離脱させる。次いで、ローラ64をテーパ面88と溝86との境界を乗り越えさせ、テーパ面88に沿ってローラ64を転動させる。このとき、圧縮コイルバネ60が徐々に伸長するので、ローラ64が溝86から離脱した途端に、圧縮コイルバネ60の弾性復帰力で跳ね上がるのを防止できる。このようにして、ローラ64をガイド面84から外側に安全に抜き出すことができる。
なお、本発明の工具交換装置は、上記実施形態に限らず、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、上記実施形態では、グリップアーム40のローラ64を付勢する手段として圧縮コイルバネ60を用いたが、板バネや、ねじりコイルバネ等を用いてもよい。