JP5292626B2 - インホイールモータ駆動装置およびインホイールモータ駆動装置用ケーシング - Google Patents

インホイールモータ駆動装置およびインホイールモータ駆動装置用ケーシング Download PDF

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Description

本発明は、車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置に関し、特にトレーリングアーム、ロアアーム、またはトーションビームといったサスペンジョン部材との取り付け構造に関する。
近年、車両の技術分野において、車輪のロードホイールの内空領域に一部あるいは全部配置されて、車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置が注目を浴びている。従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特開2008−44537号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載されているインホイールモータ駆動装置は、駆動モータと、この駆動モータから駆動力を入力されて回転数を減速して車輪側に出力する減速機と、減速機の出力軸と結合する車輪のハブ部材とが同軸かつ直列に配置されている。この減速機はサイクロイド減速機構であり、従来の減速機として一般的な遊星歯車式減速機構と比較して高減速比が得られる。したがって、駆動モータの要求トルクを小さくすることができ、インホイールモータ駆動装置のサイズおよび重量を低減することができるという点で頗る有利である。
特開2008−44537号公報
ところで、車輪をサスペンション装置で車体に懸架する必要から、車輪と結合するインホイールモータ駆動装置は、サスペンション装置のサスペンション部材に結合される。これにより、車輪は車体に懸架される。車輪の懸架方式として、トーションビーム方式、セミトレーリングアーム方式、フルトレーリングアーム方式、ストラッド方式、ダブルウィッシュボーン方式といったものがあり、選択された懸架方式に応じて、トーションビーム、トレーリングアーム、ロアアームといったサスペンション部材に、インホイールモータ駆動装置を結合する。
車両自体の重量や走行中の路面からの外乱、旋回時のモーメント荷重などタイヤにかかる輪荷重によってユニットと結合しているサスペンション部材は上下方向にストロークする。その際、サスペンション部材およびインホイール駆動装置それぞれに変形が発生するが、この変形によってインホイール駆動装置内部の部材に悪影響が及ぶ懸念がある。
トレーリングアームを例に具体的に説明すると、かかるインホイールモータ駆動装置を備えた車両の走行安定性を実現するため、各車輪に設けられたインホイールモータ駆動装置を、それぞれトレーリングアームの遊端と連結する。具体的には、インホイールモータ駆動装置のうち、ロードホイールの内空領域から突出する部位ないしは内空領域に存在するものの内空領域の開口部近傍の部位と、トレーリングアームとを結合する。すなわち、インホイールモータ駆動装置の駆動モータ部分およびサイクロイド減速機部分が、車両前後方向に延在するトレーリングアームの後端部に取り付けられるのが一般的である。
しかし、上記のような取り付け構造にあっては、車輪ハブ部材から入力した輪荷重によって、トレーリングアームおよびそれに連結されているインホイール駆動装置全体に変形が発生する。そのため、駆動装置内部においても減速機や駆動モータ部分に変形が発生する。駆動モータはモータケーシング両端面に設けられた軸受によって軸両端部で支持され高速回転するロータと、ケーシング側に固定されるステータとが僅かな半径方向隙間を介して対面しているためインホイール駆動装置の変形の影響を受けやすく、ロータがステータと接触するという問題が生じやすい。
一方、走行安定性の更なる向上のため、サスペンション装置よりも路面側に配置されるインホイールモータ駆動装置を含めた下部構造を軽量化する要求がある。インホイール駆動装置自体の軽量化手段としてケーシング部材の薄肉化が挙げられるが、上記の問題から実施が難しい。
本発明は、上述の実情に鑑み、インホイールモータ駆動装置の薄肉化、軽量化の要求のもとで、左右のインホイールモータ駆動装置をトレーリングアーム等のサスペンション部材と結合する場合であっても、駆動モータ部分のステータとロータとの接触を回避することができるインホイールモータ駆動装置を提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるインホイールモータ駆動装置は、モータと、車輪ハブ部材と、モータの出力を減速して車輪ハブ部材に伝達するサイクロイド減速機とを備え、モータはモータの外郭を形成するモータケーシングを有しサイクロイド減速機の軸線方向一方側に同軸に配置され、車輪ハブ部材はサイクロイド減速機の軸線方向他方側に同軸に配置され、サイクロイド減速機は、サイクロイド減速機の外郭を形成し、モータケーシングの外径寸法よりも小さな外径寸法を有する減速機ケーシングを有し、減速機ケーシングの一部には、モータケーシングよりも外径側に張り出す張り出し部分と、張り出し部分から軸線方向一方側に延びてモータの軸線方向位置に達するとともにモータから離隔する延設部分とが形成され、張り出し部分および延設部分には、これらモータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材を車体に懸架するサスペンション装置のサスペンション部材と結合するための座部が設けられる
かかる本発明によれば、輪荷重によるインホイール駆動装置内部に発生する変形はサイクロイド減速機のみに伝達することになる。したがって、モータ部分は変形せず、モータ内部でロータとステータとが接触することがない。
好ましくは、座部は、インホイールモータ駆動装置の軸線を挟んで一方側および他方側にそれぞれ設けられた平坦面である。これにより、サスペンション部材がインホイールモータ駆動装置の回動モーメントを好適に受け止めて、モータの変形を防止することができる。
より好ましくは、座部は、インホイールモータ駆動装置の軸線よりも下側に配置される。これにより車両前後方向前側および後側ならびに車幅方向内側および外側それぞれに座部を配置して、座部を平面視で少なくとも4箇所設けることが可能になり、インホイールモータ駆動装置のサスペンション部材への取り付け安定性が向上する。
本発明は一実施形態に限定されるものではないが、サイクロイド減速機の減速機ケーシングに、車輪を制動するディスクブレーキ用キャリパと結合するためのキャリパ座部をさらに設けてもよい。かかる実施形態によれば、サイクロイド減速機をナックルとして利用することが可能になり、サスペンション装置よりも路面側に配置される下部構造のコンパクト化に寄与することができる。
また、本発明によるインホイールモータ駆動装置用ケーシングは、モータと、車輪ハブ部材と、モータの出力を減速して車輪ハブ部材に伝達するサイクロイド減速機とを、これらモータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材の順に直列かつ同軸配置となるよう、モータおよびサイクロイド減速機の外郭を形成するとともに車輪ハブ部材を回転自在に支持し、サイクロイド減速機の外郭の外径寸法がモータの外郭の外径寸法よりも小さく、サイクロイド減速機の外郭の一部には、モータの外郭よりも外径側に張り出す張り出し部分と、かかる張り出し部分から軸線方向一方側に延びてモータの軸線方向位置に達するとともにモータから離隔する延設部分とが形成され、これらモータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材を車体に懸架するサスペンション装置のサスペンション部材と結合するための座部を、サイクロイド減速機の外郭の張り出し部分および延設部分のみに備える。
かかる本発明によれば、輪荷重によるインホイール駆動装置内部に発生する変形はサイクロイド減速機のみに伝達することになる。したがって、モータが変形せず、モータ内部でロータとステータとが接触することがない。
このように本発明のインホイールモータ駆動装置は、モータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材を車体に懸架するサスペンション装置のサスペンション部材と結合するための座部を、サイクロイド減速機のケーシングに備える。また本発明のインホイールモータ駆動装置用ケーシングは、モータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材を車体に懸架するサスペンション装置のサスペンション部材と結合するための座部を、サイクロイド減速機の外郭のみに備える。これら本発明によれば、輪荷重によるインホイールモータ駆動装置の変形はサイクロイド減速機のみに伝達することになる。したがって、モータが変形せず、モータ内部でロータとステータとが接触することがない。この結果、インホイールモータ駆動装置の耐久性能が向上する。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1は、本実施例のインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。図2は、同実施例を図1のII−IIで断面とし、同断面を軸線方向からみた状態を示す横断面図である。図3は、同実施例を軸線方向からみた状態を示す正面図である。図4は、同実施例の側面図である。
車輪のロードホイール内空領域に配置されて、当該車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を図示しない駆動輪に伝える車輪ハブ軸受部Cとを備える。そして、モータ部A、減速部B、車輪ハブ軸受部Cの順に直列かつ同軸に配置される。インホイールモータ駆動装置21は、例えば電気自動車またはハイブリッド駆動車両のホイールハウジング内に取り付けられる。
モータ部Aは、外郭を形成するモータ部ケーシング22aと、モータ部ケーシング22aに固定されるステータ23と、ステータ23の内側に径方向に開いた隙間を介して対面する位置に配置されるロータ24と、ロータ24の内側に固定連結されてロータ24と一体回転するモータ側回転部材25とを備えるラジアルギャップモータである。
モータ部ケーシング22aは、円筒形状であり、軸線O方向一方(図1の左方)で減速部ケーシング22bの他端と結合する。モータ部ケーシング22aの内周はステータ23を支持する。
モータ側回転部材25は、モータ部Aの駆動力を減速部Bに伝達するためにモータ部Aから減速部Bにかけて配置され、減速部Bの入力軸に相当する。そして、減速部B内部に配置される一端が偏心部材25a,25bと結合する。このモータ側回転部材25は、ロータ24と嵌合すると共に、減速部Bの両端で転がり軸受36a,36bによって支持される。モータ側回転部材25はインホイールモータ駆動装置21の回転軸線Oと一致して延在するが、偏心部材25a,25bの中心は軸線Oと一致しない。さらに、2つの円盤形状の偏心部材25a,25bは、偏心運動による遠心力で発生する振動を互いに打ち消し合うために、180°位相を変えて設けられている。
減速部Bは、外郭を形成する減速部ケーシング22bと、偏心部材25a,25bに回転自在に保持される公転部材としての曲線板26a,26bと、曲線板26a,26bの外周部に係合する外周係合部材としての複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を車輪側回転部材28に伝達する運動変換機構と、曲線板26a,26bの隙間に取り付けられてこれら曲線板26a,26bの傾きを防止するセンターカラー29とを備える。
減速部ケーシング22bは、モータ部ケーシング22aよりも小さな径の円筒形状であり、軸線O方向他方(図1の右方)でモータ部ケーシング22aの一端と結合し、軸線O方向一方(図1の左方)でハブ部ケーシング22cの他端と結合する。これらケーシング22a,22b,22cは1つのケーシング22を構成する。ケーシング22は、前述した転がり軸受36aや、後述する車輪ハブ軸受33等の各種軸受を介してケーシング22内部の回転要素を回転自在に支持する。したがって減速部ケーシング22bの内周は、後述する曲線板26a,26b等の回転要素と離隔しており、回転要素と接触しない。このため、減速部ケーシング22bはモーメントによる変形に対して回転要素の運動に支障を来たし難く、サスペンション部材との結合および輪荷重の支持に関して有利である。
車輪側回転部材28は、回転軸線Oに一致して減速部Bから車輪ハブ軸受部Cまで延在し、フランジ部28aと軸部28bとを有する。減速部Bに配置されるフランジ部28aの端面には、車輪側回転部材28の回転軸線Oを中心とする円周上の等間隔に内ピン31を固定する穴が形成されている。車輪ハブ軸受部Cに配置される軸部28bの外径面には、車輪ハブ32が固定されている。
図2を参照して、曲線板26bは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する複数の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26bの自転軸心Xを中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、後述する内ピン31を受入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26bの中心Xに設けられており、曲線板26bの内周になる。曲線板26bは、偏心部材25bの外周に相対回転可能に取り付けられる。
曲線板26bは、転がり軸受41によって偏心部材25bに対して回転自在に支持されている。この転がり軸受41は、その内径面が偏心部材25bの外径面に嵌合し、その外径面に外側軌道面を有する内輪部材42と、内輪部材42および貫通孔30bの孔壁の間に配置される複数のころ44と、周方向で隣り合うころ44の間隔を保持する保持器(図示省略)とを備える円筒ころ軸受である。あるいは深溝玉軸受であってもよい。曲線板26aについても同様である。
外ピン27は、モータ側回転部材25の回転軸線Oを中心とする円周軌道上に等間隔に設けられる。そして、曲線板26a,26bが公転運動すると、外周の曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。
なお、ケーシング22に配設された外ピン27は、ケーシング22に直接保持されているわけではなく、図1に示すようにケーシング22の内壁に嵌合固定されている外ピン保持部45に保持されている。より具体的には、軸方向両端部を外ピン保持部45に設けられた針状ころ軸受27aによって回転自在に支持されている。このように、外ピン27を外ピン保持部45に回転自在とすることにより、曲線板26a,26bとの係合による接触抵抗を低減することができる。
運動変換機構は、車輪側回転部材28に保持された複数の内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される。内ピン31は、車輪側回転部材28の回転軸線Oを中心とする円周軌道上に等間隔に設けられており、その軸方向一方側端部が車輪側回転部材28に固定されている。また、曲線板26a,26bとの摩擦抵抗を低減するために、曲線板26a,26bの貫通孔30aの内壁面に当接する位置に針状ころ軸受31aが設けられている。一方、貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受31aを含む最大外径」を指す。以下同じ。)より所定分大きく設定されている。
車輪ハブ軸受部Cは、ハブ部ケーシング22cと、車輪側回転部材28に固定連結された車輪ハブ32と、車輪ハブ32をケーシング22に対して回転自在に保持する車輪ハブ軸受33とを備える。
ハブ部ケーシング22cは、減速部ケーシング22bよりも小さな径の円筒形状であり、軸線O方向他方(図1の右方)で減速部ケーシング22bの一端と結合する。車輪ハブ軸受33は複列アンギュラ玉軸受であって、その内輪33cが車輪ハブ32の外径面(円筒形状の中空部32a)に嵌合固定される。車輪ハブ軸受33の外輪は、ハブ部ケーシング22cの内周に固定される。車輪ハブ32は、円筒形状の中空部32aとフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって図示しない駆動輪のロードホイールが固定連結される。これにより、車輪ハブ32の軸線O方向一方端(図1の左方)には車輪が取り付けられ、軸線Oが車両の車幅方向に一致する。また、車幅方向の左右両端に配置される車輪それぞれに、インホイールモータ駆動装置21が設けられる。
上記構成のインホイールモータ駆動装置21の作動原理を詳しく説明する。
モータ部Aは、例えば、ステータ23のコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石または磁性体によって構成されるロータ24が回転する。
これにより、ロータ24に接続されたモータ側回転部材25が回転すると、曲線板26a,26bはモータ側回転部材25の回転軸線Oを中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a,26bの曲線形状の波形と転がり接触するよう係合して、曲線板26a,26bをモータ側回転部材25の回転とは逆向きに自転運動させる。
貫通孔30aに挿通する内ピン31は、貫通孔30aの内径よりも十分に細く、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが車輪側回転部材28を介して車輪ハブ軸受部Cに伝達される。
このとき、軸線Oと同軸に配置された車輪側回転部材28は、減速部Bの出力軸として曲線板26a,26bの自転を取り出し、モータ側回転部材25の回転が減速部Bによって減速されて車輪側回転部材28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪に必要なトルクを伝達することが可能となる。
なお、上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZ、曲線板26a,26bの波形の数をZとすると、(Z−Z)/Zで算出される。図2に示す実施形態では、Z=12、Z=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27を外ピン保持部45に対して回転自在とし、内ピン31の曲線板26a,26bに当接する位置に針状ころ軸受31aを設けたことにより、摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
インホイールモータ駆動装置21は、車両左右側の駆動輪にそれぞれ取り付けられている。このようなインホイールモータ駆動装置21を備える車両につき、乗り心地性能の向上のため、左右それぞれのインホイールモータ駆動装置21を、図3に示すように車両前後方向に延在するトレーリングアーム61の後端部と結合する。トレーリングアーム61はサスペンション装置のサスペンション部材である。サスペンション装置は車輪および車輪と結合するインホイールモータ駆動装置21を車体に懸架する。具体的には、トレーリングアーム61の図示しない前端部が車体側に回動可能に取り付けられる。そしてトレーリングアーム61の前端部を基端としトレーリングアーム61の後端部を遊端として、トレーリングアーム61の後端部は、上下方向に揺動可能である。かかる構成により、路面に凹凸があった場合は、トレーリングアーム61が揺動して車輪およびインホイールモータ駆動装置21の上下方向運動を極力吸収し、車体側に路面の凹凸が伝達することを抑制して乗り心地性能が向上する。
図3に示すように、減速部ケーシング22bの外部表面には、第1および第2の座部51,52が設けられている。座部51,52は減速部Bのケーシング22になる減速部ケーシング22bのうち軸線Oよりも下側で周方向に離れた2箇所に設けられるが、モータ部Aのケーシング22になるモータ部ケーシング22aには設けられない。
減速部Bのケーシング22の外径寸法は、モータ部Aのケーシング22の外径寸法よりも小さい。このため、減速部Bのケーシング22の一部を、モータ部Aのケーシング22よりも車両前後方向に張り出すように形成し、軸線Oより車両前方の張り出し部分に座部52を設ける。また、軸線Oより車両後方の張り出し部分に座部51を設ける。また、座部51,52は、モータ部Aよりも下方に張り出している。座部51,52は、下向きの平坦面であり、それぞれ、平坦面から上向きに穿孔して形成された雌ねじ53を備える。
図示しない車体の底面に架設され、車両前後方向に延在するトレーリングアーム61の後端は、インホイールモータ駆動装置21の後方の座部51と結合する。またトレーリングアーム61は、後端よりもやや前方部分で前方の座部52と結合する。トレーリングアーム61の座部51,52への取り付けは、トレーリングアーム61にボルトを挿通し、このボルトを雌ねじ53に螺合して行う。
好ましくは、減速部ケーシング22bのみにディスクブレーキ用キャリパ62と結合するためのキャリパ座部54,55をさらに設ける。モータ部ケーシング22aにはキャリパ座部を設けない。キャリパ座部54,55は、周方向に離れた2箇所に位置する車両後ろ向きの平坦面であり、それぞれ、平坦面から穿孔して形成された雌ねじ56を備える。キャリパ座部54は軸線Oより上方に配置される。キャリパ座部55は軸線Oより下方に配置される。ディスクブレーキ用キャリパ62のキャリパ座部54,55への取り付けは、ディスクブレーキ用キャリパ62にボルトを挿通し、このボルトを雌ねじ56に螺合して行う。
キャリパ座部54,55は、減速部Bのうち軸線O方向で車輪ハブ32に最も近い部位に設けられる。キャリパ座部54,55に取り付けられたディスクブレーキ用キャリパ62は、車輪ハブ32と一体回転するブレーキディスク63を制動して、車輪ハブ32の回転を減速ないし停止する。
好ましくは、図4に示すように、減速部ケーシング22bから突出した第1の座部51の構成部材を、軸線方向他方(図4の右方)へ延設し、この軸線方向他方端に第3の座部57をさらに設ける。座部57も減速部ケーシング22bの外周と結合し、モータ部ケーシング22aから離隔している。座部57も下向きの平坦面であり、ボルト締めによってトレーリングアーム61の後端と結合する。同様に、第2の座部52の構成部材を軸線方向他方(図4の右方)へ延設して第4の座部をさらに設ける。第4の座部は第3の座部57より前方でトレーリングアーム61の後端部と結合する。
ところで、本実施例によれば、車両前後方向に延在するトレーリングアーム61と結合するため2個の座部51,52を、図3および図4に示すように、減速部ケーシング22bに設け、モータ部Aは、座部51,52と間隔をあけて、減速部Bの軸線O方向他方側に同軸に配置されることから、輪荷重によるインホイールモータ駆動装置21の変形は減速部Bのみに伝達することになる。したがって、モータ部Aが変形せず、モータ部Aの内部でロータ24とステータ23とが接触することがない。
また、トレーリングアーム61は車輪を車体に懸架するサスペンション装置の構成部品であるサスペンション部材であるから、減速部Bがトレーリングアーム61で車体を支持する構成となり、車体の輪荷重を、トレーリングアーム61と、減速部Bと、車輪ハブ軸受部Cと、車輪ハブ32に取り付けられた車輪とを介して、路面上で支持することが可能になって、モータ部A自身が輪荷重を支持することがない。したがって、軸線Oを撓む方向になる輪荷重のモーメントがモータ部Aに作用することがなくなって、モータ部Aが変形することがない。
また本実施例によれば、座部51は減速部ケーシング22bのうち軸線Oよりも車両前方に設けられ、座部52は減速部ケーシング22bのうち軸線Oよりも車両後方に設けられる。これにより、トレーリングアーム61が、これら2個の座部51,52を介して、車両の加減速走行に伴うインホイールモータ駆動装置21の回動モーメントを好適に受け止めて、走行安定性を向上させることができる。なお本実施例の他、座部を減速部ケーシング22bのうち軸線Oを挟んで車両上方および車両下方にそれぞれ設けてもよい。
また本実施例によれば、インホイールモータ駆動装置21の軸線Oよりも下側で軸線O方向一方側、すなわち車幅方向外側、に配置される第1の座部51および第2の座部52の他、インホイールモータ駆動装置21の軸線Oよりも下側でこれら座部51,52よりも軸線O方向他方側、すなわち車幅方向内側、に第3の座部57および第4の座部をさらに配置してもよい。これにより、座部を平面視で少なくとも4箇所設けることが可能になり、インホイールモータ駆動装置21のトレーリングアーム61への取り付け安定性が向上する。また、4箇所の座部でトレーリングアーム61以外のサスペンション部材に結合する場合であっても、第1〜第4の座部が減速部Bに設けられることから、モータ部Aの捻れ変形や撓み変形を回避することができる。
また本実施例によれば、減速部ケーシング22bのみに、車輪を制動するディスクブレーキ用キャリパ62と結合するためのキャリパ座部54,55をさらに有する。これにより、減速部Bをナックルとして利用することが可能になり、車両のサスペンション装置よりも路面側に配置される下部構造のコンパクト化に寄与することができる。
また図示はしなかったが、本実施例の座部51,52は、トレーリングアーム61のみならず、他の方式のサスペンション装置のサスペンション部材に結合可能であり、これにより、モータ部Aが輪荷重により変形することを防止することができる。具体的には、セミトレーリングアーム方式、フルトレーリングアーム方式、ストラッド方式、マルチリンク方式、ダブルウィッシュボーン方式、といったサスペンション装置でインホイールモータ駆動装置21を懸架する車両において、座部51,52をトーションビームの一端や、ロアアームの遊端に結合することによって、モータ部Aの変形を防止することができる。また図には示さなかったが、座部51,52を上向き平坦面にして軸線Oよりも上方に設け、ストラッドの下端と結合しても、モータ部Aの変形を防止することができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
本発明は、車両の左右後輪をそれぞれ独立に駆動するインホイールモータ駆動装置に採用することができる。
本発明の一実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。 図1のII−IIにおける断面図である。 同実施例の正面図である。 同実施例の側面図である。
符号の説明
21 インホイールモータ駆動装置、22 ケーシング、23 ステータ、24 ロータ、25 モータ側回転部材、25a,25b 偏心部材、26a,26b 曲線板、27 外ピン、27a 針状ころ軸受、28 車輪側回転部材、29 センターカラー、30a,30b 貫通孔、31 内ピン、31a 針状ころ軸受、32 車輪ハブ、33 車輪ハブ軸受、45 外ピン保持部、51,52 座部、53 雌ねじ、54,55 キャリパ座部、56 雌ねじ、57 第3の座部、61 トレーリングアーム、62 ブレーキキャリパ、63 ブレーキディスク。

Claims (5)

  1. モータと、車輪ハブ部材と、前記モータの出力を減速して前記車輪ハブ部材に伝達するサイクロイド減速機とを備え、
    前記モータは、モータの外郭を形成するモータケーシングを有し、前記サイクロイド減速機の軸線方向一方側に同軸に配置され、
    前記車輪ハブ部材は、前記サイクロイド減速機の軸線方向他方側に同軸に配置され、
    前記サイクロイド減速機は、サイクロイド減速機の外郭を形成し、前記モータケーシングの外径寸法よりも小さな外径寸法を有する減速機ケーシングを有し、
    前記減速機ケーシングの一部には、前記モータケーシングよりも外径側に張り出す張り出し部分と、前記張り出し部分から軸線方向一方側に延びて前記モータの軸線方向位置に達するとともに前記モータから離隔する延設部分とが形成され、
    前記張り出し部分および前記延設部分には、これらモータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材を車体に懸架するサスペンション装置のサスペンション部材と結合するための座部が設けられる、インホイールモータ駆動装置。
  2. 前記座部は、インホイールモータ駆動装置の軸線を挟んで一方側および他方側にそれぞれ設けられた平坦面である、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記座部は、インホイールモータ駆動装置の軸線よりも下側に配置される、請求項2に記載のインホイールモータ駆動装置。
  4. 前記減速機ケーシングには、車輪を制動するディスクブレーキ用キャリパと結合するためのキャリパ座部さらに設けられる、請求項1〜3のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
  5. モータと、車輪ハブ部材と、前記モータの出力を減速して前記車輪ハブ部材に伝達するサイクロイド減速機とを、これらモータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材の順に直列かつ同軸配置となるよう、モータおよびサイクロイド減速機の外郭を形成するとともに車輪ハブ部材を回転自在に支持し、
    前記サイクロイド減速機の外郭の外径寸法が前記モータの外郭の外径寸法よりも小さく、
    前記サイクロイド減速機の外郭の一部には、前記モータの外郭よりも外径側に張り出す張り出し部分と、前記張り出し部分から軸線方向一方側に延びて前記モータの軸線方向位置に達するとともに前記モータから離隔する延設部分とが形成され、
    これらモータ、サイクロイド減速機、および車輪ハブ部材を車体に懸架するサスペンション装置のサスペンション部材と結合するための座部を、前記サイクロイド減速機の外郭の前記張り出し部分および前記延設部分のみに備える、インホイールモータ駆動装置用ケーシング。
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