JP5292141B2 - タレット刃物台のクーラント供給構造 - Google Patents

Description

本発明は、タレット刃物台の工具装着部にクーラントを供給するクーラント供給構造に関する。

従来、工具が装着されるタレットを旋回させる中空状の旋回軸と、この旋回軸の内側に配置された中空状の中間軸と、前記タレットに装着される回転工具の駆動軸とを有するタレット刃物台が公知となっている（例えば特許文献１参照）。
また、タレット刃物台に装着した工具によりワークを加工する際に、前記工具が装着されるタレットの工具装着部にクーラントを供給し、該工具装着部から工具によるワークの加工部位にクーラントを供給することが一般的に行われている（例えば特許文献２参照）。

前記特許文献２の工具装着部へのクーラント供給構造は、中空状に形成された回転工具の駆動軸の内部に挿入されたクーラント供給パイプをクーラントの流通路としている。
上記クーラント供給パイプは内部をクーラントが流通するため、クーラント供給パイプが挿入される中間軸の中心部分を空間として有効利用することができないという欠点がある。また、クーラント供給パイプは、最も内側の軸内に挿入する必要があることから、最も小径の軸を中空にする必要がある。

特開２００８−５５５７６号公報 特開２００８−８７０８９号公報

本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、中間軸の中心部分を空間として有効利用することができ、また、中間軸に駆動軸等の軸を挿通させる場合にこの軸を中空にする必要がなく、タレットの工具装着部にクーラントの供給が可能な簡単な構成のタレット刃物台のクーラント供給構造の提供を目的とする。

上記の目的を達成するために、本発明のクーラント供給装置は、工具を装着したタレットと、このタレットを旋回させる中空状の旋回軸と、この旋回軸の内側に配置された中空状の中間軸とを有するタレット刃物台に設けられ、タレットの工具装着部にクーラントを供給するクーラント供給構造において、前記中間軸に挿入された筒体を有し、前記筒体と前記中間軸との間に形成された空間をクーラントの流通路とした構成としてある。前記筒体の内部に、前記タレットに装着される回転工具の駆動軸を挿通させてもよい。
この構成によれば、筒体と中間軸との間をクーラントが流通するため、筒体が挿入される中間軸の中心部分を空間として有効利用することができる。このため、中間軸の中心に、例えばタレットに装着される回転工具の駆動軸を設けることができるとともに、駆動軸として中実軸を用いることができる。また、クーラント供給管等を挿入する必要がなく、タレットの工具装着部に供給されるクーラントの流通路を簡単に形成することができる。

また、本発明は、前記タレットに、前記工具装着部までクーラントを案内する案内流路を形成し、前記流通路から案内流路にクーラントを送出する連通路を形成した構成としてもよい。前記連通路は、前記流通路と案内流路とを連結した配管等によって構成してもよいが、前記中間軸に形成してもよい。
連通路を中間軸に形成することにより、駆動軸の先端近傍に他の回転軸等の構造部材が配置されていても、前記流通路を流通するクーラントを容易に案内流路に送出することが可能になる。これにより前記中間軸に、前記回転工具に駆動力を伝達する伝達軸を回転自在に設け、該伝達軸をタレット内の駆動軸の一端に配置することができる。

本発明によれば、タレットの工具装着部に供給されるクーラントの流通路を簡単に形成することができ、中間軸の中心部分を空間として有効利用することができるほか、中間軸に駆動軸等の軸を挿通させる場合にこの軸を中空にする必要がなくなる。
また、本発明のクーラント供給構造では、軸中心部にクーラント供給管を通してクーラントを供給する場合よりもクーラント流通孔の断面積を増大させることができ、多量のクーラントを流通させることが可能になる。
さらに、連通路を設けることで、駆動軸の先端近傍に他の回転軸や移動体その他の構造部材が配置されているような場合でも、所定の工具装着部にクーラントを供給することができる。

本発明のクーラント供給構造の一実施形態にかかり、タレット刃物台の構成を説明する正面断面図である。 図１のタレット刃物台におけるタレットの側面断面図である。

以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図１，２は、本発明のクーラント供給構造の一実施形態にかかり、図１はこの実施形態におけるタレット刃物台の構成を説明する正面断面図、図２は、図１のタレット刃物台におけるタレットの側面断面図である。なお、以下の説明では、図１及び図２の紙面の上方を「上」と記載し、同下方を「下」と記載する。

［タレット刃物台］
このタレット刃物台１は、刃物台本体１１と、この刃物台本体１１に割り出し回転自在に支持されるタレット１２とを備える。

刃物台本体１１には、上下方向に支持孔１１ａが形成され、該支持孔１１ａ内に、刃物台本体１１に回転自在に支持された中空状の旋回軸１５が挿通されている。
タレット１２は、周面に形成された複数の工具装着部の各々に工具を装着することができ、割り出し回転の中心が旋回軸１５の回転軸線上に位置するように、旋回軸１５の上端に取り付けられる。前記タレット１２側と刃物台本体１１側との間には、タレット１２を所定の旋回角度位置に位置決めして固定する位置決め手段１１ｂが設けられている。

なお、この実施形態では、位置決め手段１１ｂとしてカービングカップリングを用いているため、タレット１２を旋回軸１５と一体的に上昇させることでカービングカップリングの噛合を解除し、前記旋回軸１５を回転駆動してタレット１２を旋回軸１５と一体的に回転させ、回転終了後にタレット１２と旋回軸１５とを一体的に下降させ、カービングカップリングを噛合させてタレット１２の位置決めを行うことによって、タレット１２の割り出し回転が行われる。

旋回軸１５の貫通孔１５ａには、中空状の中間軸１９が挿入されている。該中間軸１９の下端は、旋回軸１５の下端から突出し、刃物台本体１１側に固定されている。中間軸１９の上端は旋回軸１５の上端から突出し、タレット１２の内部においてタレット１２の上面まで達している。中間軸１９の上部は、伝達軸支持部１９ｃとして形成され、該伝達軸支持部１９ｃに伝達軸１７が回転自在に水平支持されている。該伝達軸１７の一端には、前記タレット１２の旋回によって加工位置に割り出された工具装着部に装着された工具Ｔのシャンク部Ｔａと係脱自在に係合できる係合部１７ａが形成されている。

中間軸１９の貫通孔１９ａには、旋回軸１５と同心状に駆動軸１６が挿通されている。中間軸１９の下端から突出する駆動軸１６の下端は、刃物台本体１１側に回転自在に支持されている。また、駆動軸１６の上端は、中間軸１９の貫通孔１９ａ内に嵌装された軸受２２によって、回転自在に支持されている。

前記伝達軸１７は、駆動軸１６の略真上に位置し、伝達軸１７と駆動軸１６とは、傘歯車２０ａ，２０ｂを介して連結され、駆動軸１６の回転が伝達軸１７に伝達される。タレット１２の割り出し回転により、現在加工位置に割り出されている工具装着部の回転工具Ｔのシャンク部Ｔａと係合部１７ａとの係合が解除され、次に加工位置に割り出された工具装着部の回転工具Ｔのシャンク部Ｔａが係合部１７ａに係合することにより、割り出された回転工具Ｔが駆動軸１６の回転駆動によって伝達軸１７を介して回転駆動され、ワークの加工を行うことができる。

［クーラント供給構造］
前記タレット１２の上部には、タレット１２の割り出し回転中心から工具装着部のそれぞれに向けて放射状に伸びる複数の案内流路２６が形成されている。この案内流路２６は、工具装着部に装着された工具Ｔのクーラント孔Ｔｂに連通することができる。案内流路２６の一端は、タレット１２と中間軸１９の上端とが摺接する摺接面に開口している。

駆動軸１６は、中間軸１９の貫通孔１９ａの内径よりも小径に形成され、駆動軸１６と貫通孔１９ａの内周面との間には隙間が形成される。この隙間に、駆動軸１６に外嵌するように筒体２３が設けられている。この実施形態では、筒体２３の外周面と貫通孔１９ａの内周面との間の隙間が、前記案内流路２６に供給するクーラント流通路としての第一のクーラント流通路２４を構成する。

前記貫通孔１９ａの下端は、旋回軸１５の下端よりも下方位置において、筒体２３の外径とほぼ同じ内径の小径孔部として形成される。そして、この小径孔部の孔内周面と筒体２３の外周面との間に、クーラントの漏れを防止するためのＯリング等のシール部材２３ａが設けられる。貫通孔１９ａ内の上方に位置する筒体２３の上端は、貫通孔１９ａの内径とほぼ同じ外径の大径部として形成され、この大径部と貫通孔１９ａの内周面との間に、クーラントの漏れを防止するためのＯリング等のシール部材２３ｂが設けられる。

中間軸１９には、旋回軸１５の下端よりも下方位置に、第一のクーラント流通路２４と連通する孔１９ｂが形成されている。タレット刃物台１の外部に設けられたクーラント源のクーラントは、この孔１９ｂを介して第一のクーラント流通路２４に供給される。

中間軸１９には、伝達軸支持部１９ｃの下端から上端に向けて、連通路としての第二のクーラント流通路２５が形成されている。この第二のクーラント流通路２５は、シール部材２３ｂよりも下方で第一のクーラント流通路２４に連通していて、第一のクーラント流通路２４から供給されたクーラントを、中間軸１９の上端まで流通させることができるようになっている。第二のクーラント流通路２５は、前記摺接面において、ワーク加工位置に割り出された工具装着部に対応する案内流路２６の開口２６ａと対向する方向に開口２５ａを有している。

このため加工位置に割り出された工具装着部の案内流路２６の開口２６ａのみが、第二のクーラント流通路２５の開口２５ａに一致し、両開口２５ａ，２６ａを通して、第二のクーラント流通路２５と案内流路２６とが連通する。従って、本クーラント供給構造は、前記孔１９ｂを介して第一のクーラント流通路２４に供給されるクーラントが、第一のクーラント流通路２４及び第二のクーラント流通路２５を流通し、前記摺接面の開口２５ａ，２６ａを通して案内流路２６に流れ、工具装着部に供給されるように構成され、クーラントは案内流路２６から工具装着部に装着された工具Ｔに供給される。また、タレット１２の割り出し回転を行う際には、中間軸１９の上端と摺接するタレット１２の摺接面が開口２５ａを閉じ、第二のクーラント流通路２５からクーラントが漏れない。

本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、タレット１２に回転工具が水平に装着される場合を例に挙げて説明したが、回転工具を垂直方向又は斜め方向に装着する他のタレット１２にも本発明の適用は可能である。
また、上記の説明で第一のクーラント流通路２４は筒体２３と中間軸１９との間に設けられた隙間から構成されるものとしたが、第一のクーラント流通路２４はクーラントの流通ができればよく、隙間に限らず一本又は複数本の溝から構成されていてもよい。

さらに、加工位置に割り出された工具装着部に供給されたクーラントは、工具Ｔのスルーホールを通して工具の先端から加工部位に噴射されるようにしてもよいし、工具装着部に設けたノズルから前記加工部位に噴射されるようにしてもよい。
また、本発明のクーラント供給構造では、軸中心に配置したクーラント供給管を用いる場合より多量のクーラントを流通させることが可能になるため、上記のように一つのタレットの一つの工具にクーラントを供給する場合に限らず、例えば、一つのタレットに装着した複数の工具で同時に複数のワークを加工する場合や、複数のタレットに装着した複数の工具でワークを加工する場合にも、一つのタレットの単一のクーラント供給構造を通して前記複数の工具に十分な量のクーラントを供給することが可能になる。

本発明は、タレットから工具やワークの加工位置にクーラントを供給するタレット旋盤等の工作機械に広範に適用が可能である。

１ タレット刃物台
１１ 刃物台本体
１２ タレット
１５ 旋回軸
１６ 駆動軸
１７ 伝達軸
１９ 中間軸
２３ 筒体
２４ 第一のクーラント流通路（クーラントの流通路）
２５ 第二のクーラント流通路（連通路）
２６ 案内流路

Claims (4)

1. 工具を装着したタレットと、このタレットを旋回させる中空状の旋回軸と、この旋回軸の内側に配置された中空状の中間軸とを有するタレット刃物台に設けられ、タレットの工具装着部にクーラントを供給するクーラント供給構造において、
   前記中間軸に挿入された筒体を有し、
   前記筒体と前記中間軸との間に形成された空間をクーラントの流通路としたこと、
   を特徴とするタレット刃物台のクーラント供給構造。
2. 前記筒体の内部に、前記タレットに装着される回転工具の駆動軸を挿通したことを特徴とする請求項１に記載のタレット刃物台のクーラント供給構造。
3. 前記タレットに、前記工具装着部までクーラントを案内する案内流路を形成し、前記流通路から前記案内流路にクーラントを送出する連通路を前記中間軸に形成したことを特徴とする請求項１又は２に記載のタレット刃物台のクーラント供給構造。
4. 前記中間軸に、前記回転工具に駆動力を伝達する伝達軸を回転自在に設け、この伝達軸をタレット内に位置する前記駆動軸の一端側に配置したことを特徴とする請求項２又は３に記載のタレット刃物台のクーラント供給構造。

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