JP5291784B2 - 橋梁の設計方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐風安定性を目的とした橋梁の設計方法に関するものである。
橋梁が風を受けると、橋梁固有の特性によって、発散的なたわみ振動が発生することがある。この振動は、自らの変位によって振動エネルギーが供給される自励振動であるため、橋梁の崩壊につながる危険性がある。
この橋梁の振動の対策として、橋軸方向に断続して間隔が変化するような壁を橋桁上面に立設する方法(例えば特許文献1参照)、耐風付加部材の設置(例えば特許文献2、特許文献3参照)、チューンドマスダンパーの設置等が講じられる。
特開平9−21111号公報 特開平9−125312号公報 特開平11−269818号公報
しかし、昨今の橋梁は長支間化、狭幅員化される傾向があり、前記対策だけでは、橋梁の耐風性を確保することが困難な場合がある。
また、昨今の公共事業費の縮小傾向から、橋梁建設に係るコストの縮減は必須課題であり、新たに制振対策を講じるだけの予算確保が困難な傾向にある。
上記の理由から、既設の橋梁に対して新たに制振対策を講じる必要がないよう、当初の設計段階から耐風安定性を確保した橋梁設計が必要となる。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、コスト低減を達成しつつ、橋梁の耐風安定性を確保することのできる橋梁の設計方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる多径間橋梁の設計方法は、橋梁の橋軸方向に略直交する上部構造の横断面の外形状を包絡する包絡四角形の幅をB、高さをDとした場合に、橋軸方向に対して、前記包絡四角形の断面辺長比B/Dを変化させた上部構造を有し、前記上部構造は、前記断面辺長比B/Dを有する上部構造分割体が、橋軸方向に複数接続されて形成され、少なくとも1つの上部構造分割体は、他の上部構造分割体に対して異なる断面辺長比B/Dを有し、前記上部構造の揚力係数をC、前記上部構造に吹き付ける風の平均方向が水平方向となす角度をα(吹き上げ方向に正)、揚力係数勾配をdC/dαとし、前記上部構造の端部から第n番目の支間長をL、揚力係数勾配をS、支間における最大のたわみ振動モード次数をAとした場合に、(1)式の値が0以上とされていることを特徴とする。
Figure 0005291784
橋軸方向に対して、前記包絡四角形の断面辺長比を変化させることにより、橋梁全体としての耐風安定性を向上させ、発散的なたわみ振動の発生を防止することができる。
(1)式の値が0以上とされていることにより、n径間橋梁全体としての揚力係数勾配dC/dαは0以上となり、橋梁全体として発散的なたわみ振動の発生を防止することができる。
このように、橋梁の支間長または上部構造の断面形状を変化させることによって耐風安定性を確保することにより、耐風付加部材の設置等の新たな制振対策をすることを必要とせず、コストの縮減を図ることが可能である。
さらに、本発明にかかる多径間橋梁の設計方法は、鋼箱桁断面の橋桁を有することを特徴とする。
鋼箱桁断面を有する橋桁を採用することにより、さらにコストの縮減を図ることができる。
橋梁の支間長または断面形状を変化させることにより、耐風付加部材の設置等の新たな制振対策をすることを必要とせず、耐風安定性を確保しコストの縮減を図ることが可能である。
本発明に係る橋梁の概略構成を示した側面図である。 図1に示す橋梁のI−I断面における正面断面図である。 図1に示す橋梁のII−II断面における正面断面図である。 図1に示す橋梁のII−II断面における正面断面図である。 図2に示す断面の上部構造を有する単径間橋梁について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係を表した図である。 図3に示す断面の上部構造を有する単径間橋梁について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係を表した図である。 図2に示す断面の上部構造分割体と、図3に示す断面の上部構造分割体が、橋軸方向に接続されて形成された上部構造を有する多径間橋梁について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係を表した図である。 第1の実施形態に係る橋梁の概略構成を示した概略図である。 図8に示す橋梁について、発散的たわみ振動を防止するための設計手順を表したフローチャートである。 実施例に係る橋梁の概略構成を示した概略図である。 上部構造の断面辺長比と、橋梁の揚力係数勾配との関係について、風洞試験より得られた試験結果をプロットした図である。 第2の実施形態に係る橋梁の概略構成を示した概略図である。 図12に示す橋梁について、発散的たわみ振動を防止するための設計手順を表したフローチャートである。 図2に示す断面の上部構造を有する単径間橋梁の概略構成を示した側面図である。 図3に示す断面の上部構造を有する単径間橋梁の概略構成を示した側面図である。
[第1の実施形態]
以下に、本発明に係る橋梁の設計方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る橋梁の概略構成を示した側面図である。
同図に示す橋梁1は、床版2と橋桁3から構成される上部構造を有しており、この上部構造は、第1上部構造分割体4と、第2上部構造分割体5と、第3上部構造分割体6とが橋軸方向に接続されて形成されている。
図2には、第2上部構造分割体5について、橋梁の橋軸方向に略直交する横断面の形状が表されている。
同図に示す第2上部構造分割体5は、橋軸方向(紙面垂直方向)に延在する床版2と橋桁3aを備えている。また、同図に示す横断面の外形状を包絡する包絡四角形の幅をB、高さをDとした場合に、この包絡四角形の断面辺長比はB/Dとして表される。
図3には、第1上部構造分割体4および第3上部構造分割体6について、橋梁の橋軸方向に略直交する横断面の形状が表されている。
同図に示す第1上部構造分割体4および第3上部構造分割体6は、橋軸方向(紙面垂直方向)に延在する床版2と橋桁3bを備えている。また、同図に示す横断面の外形状を包絡する包絡四角形の幅をB、高さをDとした場合に、この包絡四角形の断面辺長比はB/Dとして表される。
したがって、図1に示す橋梁1の上部構造は、断面辺長比がB/Dである第1上部構造分割体4と、断面辺長比がB/Dである第2上部構造分割体5と、断面辺長比がB/Dである第3上部構造分割体6とが橋軸方向に接続されて形成されていることとなる。
ここで、第2上部構造分割体5の断面辺長比B/Dは、第1上部構造分割体4および第3上部構造分割体6の断面辺長比B/Dより小さく設定されている。
次に、橋梁の上部構造が、断面辺長比の異なる上部構造分割体を橋軸方向に接続して形成されることの作用効果を説明する。
まず、本実施形態に係る上記橋梁の比較例として、断面辺長比が橋軸方向に対して一定である上部構造を有する単径間橋梁を考える。
図14に示す橋梁7は、図2に示す横断面形状の上部構造を有する単径間橋梁であり、その上部構造の断面辺長比はB/Dである。この橋梁7について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係が、図5に表されている。図5によると、ある一定以上の風速に達すると、振動の振幅が急激に増加する発散的なたわみ振動が発生している。
図15に示す橋梁8は、図3に示す横断面形状の上部構造を有する単径間橋梁であり、その上部構造の断面辺長比はB/Dである。この橋梁8について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係が、図6に表されている。図6によると、風速が増加しても、振動の振幅が急激に増加する発散的なたわみ振動は発生していない。
次に、断面辺長比の異なる上部構造分割体を橋軸方向に接続して形成される上部構造を有する多径間橋梁について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係を考える。ここでは、図1に示す橋梁1を例として考える。
図7は、図1に示す橋梁1について、橋梁に吹き付ける風の風速と、風によって橋梁に発生する振動の振幅との関係を表している。図7によると、風速が増加しても、振動の振幅が急激に増加する発散的なたわみ振動は発生していない。つまり、発散的なたわみ振動に不安定であった単径間の橋梁7と、耐風安定性を有する単径間の橋梁8とを橋軸方向に接続することによって、橋梁全体としての耐風安定性を向上させることができることが示されている。
以上より、橋梁の上部構造の断面形状を変化させることによって耐風安定性を確保することにより、耐風付加部材の設置等の新たな制振対策をすることを必要とせず、コストの縮減を図ることが可能であることがわかる。
なお、上記実施形態において、第1上部構造分割体4および第3上部構造分割体6の橋軸方向に略直交する横断面の形状として、図3に示す横断面形状を例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図4に示す横断面形状としても、同様の作用効果を奏することができる。
また、上記実施形態において、第1上部構造分割体4と、第3上部構造分割体6の橋軸方向に略直交する横断面の形状を同一であるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、異なる横断面形状であっても、同様の作用効果を奏することができる。
以下に、本発明に係る橋梁の設計方法の一実施形態として、3径間橋梁についての安定条件を、図面を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る橋梁の概略構成を示した概略図である。
図8に示す橋梁10は、3径間橋梁であり、断面Aの上部構造分割体と、断面Bの上部構造分割体とが、橋軸方向に接続されて形成される上部構造を有している。
橋梁の橋軸方向に略直交する上部構造の横断面の外形状を包絡する包絡四角形の幅をB、高さをDとした場合に、この包絡四角形の断面辺長比はB/Dとして表される。また、橋梁の揚力係数をC、橋梁に吹き付ける風が水平方向となす角度をαとすると、橋梁の揚力係数勾配ScはdC/dαとして導かれ、発散的なたわみ振動を防止するためには、揚力係数勾配Scの値が0以上となる必要がある。
ここで、断面Aの上部構造分割体の支間長をL、断面辺長比を(B/D)、揚力係数勾配をSAと表す。また、断面Bの上部構造分割体の支間長をL、断面辺長比を(B/D)、揚力係数勾配をSBと表す。
断面Aの上部構造分割体の支間長Lを橋梁10の最大支間長とし、各径間での振動モード関数がy=sin(π/L)xと表され、上部構造の単位長さ当たりの質量が一定であり、各径間での橋軸方向に対する断面形状が一定であると仮定すると、橋梁10全体として発散的なたわみ振動を防止するための条件は、以下の(2)式により表される。
Figure 0005291784
以上より、(2)式を満足する設計条件とすることにより、橋梁10全体として発散的なたわみ振動を防止することができる。
したがって、発散的なたわみ振動に対して安定性を有する3径間橋梁を設計する場合には、図9のフローチャートに示すように、まず上部構造の断面の仮決定を行い(図9中ステップS1)、この上部構造について2SB(L/L+SAの値が0以上となるか否かの判断を行う(図9中ステップS2)。このとき、2SB(L/L+SAの値が0未満の場合には、上部構造の断面形状または支間長の変更をすることにより(図9中ステップS3)、橋梁全体としての安定性を確保することとなる。
以下に、上述の3径間橋梁の安定条件を具体的に適用した実施例を説明する。
図10に示す橋梁15は、3径間橋梁であり、断面Aの上部構造分割体と、断面Bの上部構造分割体が橋軸方向に接続されて形成される上部構造を有している。ここで、断面Aの上部構造分割体の支間長はL、断面辺長比は1.5と仮決定されている。また、断面Bの上部構造分割体の支間長Lは0.8L、断面辺長比は2.0と仮決定されている。
上述の断面の場合,上部構造の断面辺長比B/Dと、橋梁の揚力係数勾配dC/dαとの関係について、風洞試験から得られた試験結果をプロットした図11より、断面Aの上部構造分割体の揚力係数勾配SAは−4.5、断面Bの上部構造分割体の揚力係数勾配Sは−3.1と求められる。これらのL、L、S、Sの数値を(2)式に代入すると、(2)式の左辺の値は−7.7となり、発散的なたわみ振動に対して不安定であることがわかる。
そこで図9のフローチャートに従い、上部構造の断面形状、支間長の再決定を実施し、発散的なたわみ振動に対する安定性を確保する。ここでは、支間長と断面Aの形状を固定し、以下の(3)式に示すとおり、断面Bの上部構造分割体の揚力係数勾配Sが4.4以上となるよう、断面形状の再設計を行う。
Figure 0005291784
図11は、上部構造の断面辺長比B/Dと、橋梁の揚力係数勾配dC/dαとの関係について、風洞試験から得られた試験結果をプロットした図である。
同図を用いて、所定の揚力係数勾配を得るために、必要となる断面辺長比を簡易的に求めることが可能である。
本実施例にかかる橋梁において、断面Bの上部構造分割体の揚力係数勾配が4.4以上となるためには、断面辺長比を3.0以上とすれば良いことが、図11より読み取ることができる。つまり、断面Bの上部構造分割体の断面形状を変更することにより、橋梁15全体として、耐風安定性の確保が可能である。
以上の通り、本実施形態に係る橋梁の設計方法によれば、3径間橋梁について、一部の上部構造分割体の断面形状を変更することにより、橋梁全体として発散的なたわみ振動の発生を防止することができる。
したがって、橋梁の設計によって耐風安定性を確保することにより、耐風付加部材の設置等の新たな制振対策をすることを必要とせず、コストの縮減を図ることが可能である。
なお、上記実施形態において、断面Bの形状変更によって安定性を確保する設計方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、支間長や断面Aの形状を変更することによっても、同様の作用効果を奏することができる。
[第2の実施形態]
以下に、本発明に係る橋梁の設計方法の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態にかかる橋梁が、第1の実施形態と異なる点は、n径間橋梁について、発散的なたわみ振動に対する安定条件を示している点である。
図12に示す橋梁20は、n体の上部構造分割体が接続されて形成される上部構造を有するn径間橋梁である。ここで、この上部構造の端部から第n番目の上部構造分割体の断面形状は断面n、支間長はL、揚力係数勾配はS、区間最大モードはAと表される。
この場合に、各径間での振動モード関数はy=sin(π/L)xと表され、上部構造の単位長さ当たりの質量が一定であり、各径間での橋軸方向に対する断面形状が一定であると仮定すると、橋梁20全体として発散的なたわみ振動を防止するための条件は、以下の(4)式により表される。
Figure 0005291784
以上より、(4)式を満足する設計条件とすることにより、橋梁20全体として発散的なたわみ振動の発生を防止することができる。
したがって、発散的なたわみ振動に対して安定性を有するn径間橋梁を設計する場合には、図13のフローチャートに示すように、まず上部構造の断面の仮決定を行い(図13中ステップS11)、この上部構造について(4)式を満足するか否かの判断を行う(図13中ステップS12)。このとき、(4)式を満足しない場合には、上部構造の断面形状または支間長の変更をすることにより(図13中ステップS13)、橋梁全体としての安定性を確保することとなる。
以上の通り、本実施形態に係る橋梁の設計方法によれば、n径間橋梁についても、橋梁の設計によって耐風安定性を確保することにより、耐風付加部材の設置等の新たな制振対策をすることを必要とせず、コストの縮減を図ることが可能である。
1 橋梁
2 床版
3,3a,3b,3c 橋桁
4 第1上部構造分割体
5 第2上部構造分割体
6 第3上部構造分割体
7 橋梁
8 橋梁
10 橋梁
15 橋梁
20 橋梁

Claims (2)

  1. 橋梁の橋軸方向に略直交する上部構造の横断面の外形状を包絡する包絡四角形の幅をB、高さをDとした場合に、
    橋軸方向に対して、前記包絡四角形の断面辺長比B/Dを変化させた上部構造を有し、
    前記上部構造は、前記断面辺長比B/Dを有する上部構造分割体が、橋軸方向に複数接続されて形成され、
    少なくとも1つの上部構造分割体は、他の上部構造分割体に対して異なる断面辺長比B/Dを有し、
    前記上部構造の揚力係数をC、前記上部構造に吹き付ける風の平均方向が水平方向となす角度をα(吹き上げ方向に正)、揚力係数勾配をdC/dαとし、
    前記上部構造の端部から第n番目の支間長をL、揚力係数勾配をS、支間における最大のたわみ振動モード次数をAとした場合に、
    (1)式の値が0以上とされている多径間橋梁の設計方法。
    Figure 0005291784
  2. 前記上部構造は、鋼箱桁断面を有する請求項1に記載の多径間橋梁の設計方法。
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