以下、本発明の実施形態について図1〜図12を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るシートベルト装置の第一実施形態を示す概略構成図であり、(A)はシートベルト装着前、(B)はシートベルト装着後を示している。
図1(A)及び(B)に示したシートベルト装置は、車両シート1に乗員Cを拘束するシートベルト装置であり、乗員Cの肩部上方から引き出し可能に配置されたウェビング2と、ウェビング2の巻き取り及び巻き戻しを行うリトラクタ3と、ウェビング2の先端を乗員Cの腰部下方の位置で固定するベルトアンカー4と、ウェビング2と反対側の車両シート1の側面に配置されたベルトホルダー5と、を備え、ベルトホルダー5は、ウェビング2を係止するベルトアーム部51と、ベルトアーム部51をスライド可能に保持する本体部52と、を有し、ベルトアーム部51はウェビング2の張力により変形可能に構成されている。
前記車両シート1は、腰掛部1a、背もたれ部1b、ヘッドレスト1c等により構成されており、車両の床面に固定されている。図1では、運転席用の車両シート1の正面図を図示しているが、補助席用又は後部座席用の車両シートであってもよい。
前記ウェビング2は、帯状の織布であり、リトラクタ3に接続されて巻き取り又は巻き戻し可能に配置されている。ウェビング2の先端は車内に配置されたガイドアンカー6を介してベルトアンカー4に接続されている。図1(A)に示したウェビング2の配置は、通常の3点式シートベルト装置の場合を想定したものであり、リトラクタ3及びガイドアンカー6は、センターピラーに配置されている。勿論、リトラクタ3を車両シート1の内部に配置して、背もたれ部1bからウェビング2を車内に引き出すようにしてもよい。
前記リトラクタ3は、従来のシートベルト装置に通常用いられている部品を使用することができる。例えば、バネ式のリトラクタ、バネとモータを併用したリトラクタ、モータ式のリトラクタ等、種々のものを選択して使用することができる。例えば、車両衝突時や衝突予測時等にウェビング2を一時的に巻き取って乗員Cを車両シート1に拘束したい場合には、プリテンショナー付のリトラクタ3が使用される。また、車両衝突時に慣性力により前方に移動しようとする乗員Cの負荷を軽減するために、ウェビング2をリトラクタ3から引き出したい場合には、モータ付又はモータ式のリトラクタ3が使用される。
前記ベルトアンカー4は、ウェビング2の先端を車内構造物に固定する部品である。ここでは、車両シート1の腰掛部1aの下面に配置した場合を図示したが、腰掛部1aの側面に配置してもよいし、車両床面やセンターピラーに配置してもよい。車両シート1に着座した乗員Cは、図1(B)に示すように、ベルトアンカー4とガイドアンカー6の間のウェビング2を引っ張って後述するベルトホルダー5にウェビング2の中間部を係止させる。
前記ベルトホルダー5は、図1(B)に示すように、引き出されたウェビング2の中間部を係止する部品である。したがって、ベルトホルダー5は、ウェビング2が配置されたドア側と反対側の車内側に配置される。具体的には、ベルトホルダー5は、車両シート1の腰掛部1aの側面部に固定されたり、腰掛部1aの側面部に位置するように車両床面等に固定されたりする。図1に示したシートベルト装置では、ウェビング2を直にベルトホルダー5に係止させる構造を採用しているため、従来のシートベルト装置で使用されているタングは設けられていない。ベルトホルダー5には、本体部52にベルトアーム部51が挿入されてウェビング2を係止した状態を検知するセンサを設けるようにしてもよい。なお、ベルトホルダー5の詳細については、後述する。
ここで、図2は、図1に示したシートベルト装置を用いた乗員拘束方法の説明図であり、(A)は乗員着座前の状態、(B)は乗員着座後にウェビングをベルトホルダーに係止する途中の状態、(C)はベルトホルダーにウェビングを係止した状態、(D)はショルダーベルト部に所定の張力が生じた状態、を示している。
図2(A)に示すように、乗員Cが車両シート1に着座する前の状態では、ベルトアーム部51は本体部52に沿って上方にスライドした位置に配置されており、ベルトアーム部51の一部と本体部52との間にウェビング2を挿入できる隙間5aを形成しておく。また、ウェビング2は、リトラクタ3に巻き取られており、ベルトアンカー5からリトラクタ5までのウェビングは、ガイドアンカー6を介して一定の張力で張られている。
車両シート1に乗員Cが着座してシートベルトを装着する場合には、ベルトアンカー5とガイドアンカー6の間のウェビング2を引っ張ってウェビング2を引き出し、図2(B)に示すように、隙間5aにウェビング2の中間部を挿入する。
そして、ベルトアーム部51を本体部52に沿って下方にスライドさせて本体部52の内部に収容すると、隙間5aは消失し、図2(C)に示すように、ウェビング2はベルトホルダー5に係止される。このとき、ウェビング2は、ベルトアーム部51により本体部52に一定量だけ引き込まれるため、破線で示すように引き込み部2aが形成される。また、ウェビング2がベルトホルダー5に係止されると、ウェビング2には、乗員Cの腰部を拘束するラップベルト部2bと、たすき掛けされて乗員の肩部を拘束するショルダーベルト部2cとが形成される。なお、リトラクタ3がモータ付の場合には、ベルトアーム部51の挿入をセンサにより検知して、ウェビング2をベルトホルダー5に係止させた後に、ショルダーベルト部3を乗員Cに密着させるようにウェビング2をリトラクタ3で巻き取るようにしてもよい。
図2(C)に示したシートベルト装着状態において、車両衝突時等のように急減速が生じた場合には、乗員Cが慣性力により前方に移動しようとする。このとき、乗員Cの腰部はラップベルト部2bにより拘束されているためお辞儀をするように上体が前方に傾斜する。したがって、乗員Cはショルダーベルト部2cに押し付けられることになる。シートベルト装置は乗員Cを拘束する機能を担っているため、ウェビング2に一定の張力が生じるまではリトラクタ3からウェビング2を引き出さないように構成されている。従来のシートベルト装置では、ウェビング2に一定の張力が生じて、リトラクタ3からウェビング2が引き出されたとしても、乗員Cは腰部を起点にして回動しているため、引き出されたウェビング2は乗員Cの肩部又は胸部上部の負荷を軽減するに留まり、耐性の低い胸部下部の負荷を軽減することはできない。そこで、本発明のシートベルト装置では、図2(D)に示すように、ベルトホルダー5に引き込まれたウェビング2の引き込み部2aをショルダーベルト部2c側に引き出すことによって、胸部下部に密着したショルダーベルト部2cにゆとりを与えて乗員Cの負荷を軽減している。なお、このときラップベルト部2b側に引き込み部2aが引き出されないように引き込み部2aをベルトホルダー5に固定しておくことが好ましい。
したがって、図1に示したシートベルト装置を用いることによって、帯状のウェビング2の中間部を車両シート1の側面部に配置されたベルトホルダー5に係止して、乗員Cの腰部を拘束するラップベルト部2b及び肩部を拘束するショルダーベルト部2cを形成し、乗員Cを車両シート1に拘束するとともに、ショルダーベルト部2cに所定の張力が生じた場合に、ウェビング2の係止状態を維持しつつショルダーベルト部2cを係止部側(ベルトホルダー5側)から引き出して乗員Cの負荷を軽減することができる。特に、耐性の低い胸部下部の負荷を効果的に軽減することができる。
次に、本発明に係るシートベルト装置の他の実施形態について説明する。図3は、本発明に係るシートベルト装置の他の実施形態を示す正面図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、(D)は第五実施形態、(E)は第六実施形態を示している。なお、各図において、図1に示した第一実施形態と同じ構成部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
図3(A)に示した第二実施形態は、ウェビング2の引き込み部2aをショルダーベルト部2c側への引き出しに加えて、ラップベルト部2b側にも引き出せるようにしたものである。例えば、ショルダーベルト部2cの張力をTc、ラップベルト部2bの張力をTbとした場合、ベルトホルダー5は、引き込み部2aにある張力T1が生じるまではショルダーベルト部2c及びラップベルト部2bのいずれにも引き込み部2aを引き出さないように固定する。そして、ショルダーベルト部2cの張力Tcが張力T1を超える(Tc>T1)と、ベルトホルダー5はショルダーベルト部2c側に引き込み部2aを引き出して乗員Cの負荷を軽減する。このとき、ベルトホルダー5は、まだラップベルト部2b側に引き込み部2aを引き出さないように固定してウェビング2の係止状態を維持している。そして、ラップベルト部2bの張力Tbが張力T2を超える(Tb>T2>T1)と、ベルトホルダー5は、引き込み部2aのラップベルト部2b側の固定を解除して、引き込み部2aをラップベルト部2b側に引き出して乗員Cの負荷を軽減する。これらの張力T1,T2の設定値は、車両の衝突性能に合わせて適宜設定されるものである。例えば、張力T1は3〜5kN程度に設定されることが好ましい。また、張力T2は、例えば、車両の吸収エネルギーが小さく乗員Cの腰部の移動量が大きい場合、すなわち、軽自動車や小型自動車の場合には9〜14kN程度に設定され、それ以外の車両の場合には6〜10kN程度に設定されることが好ましい。このように、ウェビング2に生じる張力に合わせて引き込み部2aの引き出しを調整するようにしたことにより、乗員Cの上体に生じる負荷に応じてウェビング2の引き出し量を調節することができ、効果的に乗員Cの負荷を軽減することができる。
図3(B)に示した第三実施形態は、ベルトアンカー4に替えてプリテンショナ31をウェビング2の先端に接続したものである。プリテンショナ31は、車載されたECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサや衝突予測システムの出力に応じて作動される。プリテンショナ31が作動すると、ラップベルト部2bを引き込んで乗員Cを車両シート1に拘束する。なお、リトラクタ3にプリテンショナが設けられている場合には、同様にショルダーベルト部2cが一時的にリトラクタ3に引き込まれ、乗員Cを車両シート1に拘束する。
図3(C)に示した第四実施形態は、ベルトアンカー4に替えてリトラクタ32をウェビング2の先端に接続したものである。リトラクタ32は、モータ付又はモータ式のものが採用され、車載されたECU(電子制御ユニット)の指令に基づいてウェビング2を巻き取り又は巻き戻しすることができるように構成されている。リトラクタ32を使用することにより、プリテンショナ31の作用と同様に、加速度センサや衝突予測システムの出力に応じてラップベルト部2bを引き込んで乗員Cを車両シート1に拘束することができる。また、リトラクタ32にウェビング2の過負荷を検出するセンサを配置しておき、ウェビング2の過負荷が検出された場合には、ラップベルト部2bを引き出して乗員Cの腰部の負荷を軽減させることができる。
図3(D)に示した第五実施形態は、リトラクタ3にモータ若しくはトーションバー付又はモータ式のリトラクタを採用したものである。モータ付又はモータ式のリトラクタ3の場合には、車載されたECU(電子制御ユニット)の指令に基づいてウェビング2を巻き取り又は巻き戻しすることができるように構成されている。かかるリトラクタ3を使用することにより、プリテンショナ付のリトラクタと同様に、加速度センサや衝突予測システムの出力に応じてショルダーベルト部2cを引き込んで乗員Cを車両シート1に拘束することができる。そして、リトラクタ3にウェビング2の過負荷を検出するセンサを配置しておき、ウェビング2の過負荷が検出された場合にショルダーベルト部2cを引き出すことにより、乗員Cの肩部の負荷を軽減させることができる。また、トーションバー付のリトラクタ3の場合には、通常ロック機構を備えており、衝突時等の急減速時にウェビング2を引き出さないようにロックし、さらに過大な負荷が生じた場合にトーションバーが捩れてウェビング2を引き出すことができるように構成されている。これらのリトラクタ3を併用することにより、第一実施形態で説明したベルトホルダー5及び引き込み部2aの作用と合わせて作用させることで、ショルダーベルト部2cをリトラクタ3側及びベルトホルダー5側の両方から引き出すことができ、乗員Cの胸部全体の負荷を効果的に軽減することができる。
図3(E)に示した第六実施形態は、ベルトホルダー5のベルトアーム部51を本体部52から取り外し可能に構成したものである。すなわち、ベルトアーム部51は従来のタングに相当し、本体部52は従来のバックルに相当する。かかる実施形態では、ベルトアーム部51からウェビング2が抜けないように、隙間5aに相当する部分を塞いでおく必要がある。このように、ベルトホルダー5を従来のタング及びバックルのように使用しても、本発明ではウェビング2に引き込み部2aを形成することができ、ベルトアーム部51を変形させることによって引き込み部2aをショルダーベルト部2c側に引き出して乗員Cの負荷を軽減させることができる。なお、ベルトアーム部51を本体部52から取り外した時に、ベルトアーム部51がウェビング2に沿って落下しないように、ベルトアーム部51とウェビング2の間にはベルトアーム部51の重量を支持する留め部材を設けるようにしてもよい。
ここで、図3(A)に示した第二実施形態の効果について、図4を参照しつつ説明する。図4は、本発明に係るシートベルト装置の第二実施形態の効果を説明する図であり(A)はショルダーベルト部における比較図、(B)はラップベルト部における比較図を示している。各図において、横軸は時間、縦軸は各ベルト部の張力T及び引き出し量Lを示している。また、各図において、本発明を実線、従来技術を破線で示している。
図4(A)に示したショルダーベルト部における比較図において、従来技術として、図3(A)に示したベルトホルダー5に替えて、バックルを使用し、ウェビングにタングを摺動可能に配置したものを使用した。車両に急減速が生じると、乗員Cは慣性力により前方に移動しつつ上体が腰部を起点に前方に回動しようとする。一般に、ラップベルト部の拘束力の方が高いため、ウェビングはショルダーベルト部からラップベルト部に引き込まれることとなり、図4(A)に示すように、ショルダーベルト部の引き出し量Lpは、時間t1から徐々に減少し、ラップベルト部とショルダーベルト部の張力がバランスするLαで略一定値となる。また、ショルダーベルト部の張力Tpは、時間の経過とともに徐々に上昇し、最大値Tmに到達した後、徐々に低下する。
一方、本発明のシートベルト装置では、ウェビング2はベルトホルダー5に係止されて固定されているため、ラップベルト部2b側に張力T2が生じるまではラップベルト部2b側にウェビング2が引き出されることはない。また、ベルトホルダー5は、ショルダーベルト部2cの張力Tcが所定値T1に達すると、引き込み部2aからウェビング2をショルダーベルト部2c側に引き出すように設定されている。そして、図4(A)に示すように、ショルダーベルト部2cの張力Tcが所定値T1に達する時間t1になると、引き込み部2aが徐々にベルトホルダー5から引き出される。引き込み部2aの引き出しにより、ショルダーベルト部2cにはゆとりができるため、張力Tcの上昇が抑制される。そして、引き込み部2aの引き出しに応じて最大値Tnで略一定となる。その後、ショルダーベルト部2cの張力Tcが低下すると、引き込み部2aの引き出し量はLβで停止する。したがって、図4(A)に示すように、本発明では、張力Tcの最大値Tnを従来技術の張力Tpの最大値Tmよりも小さくする(Tn<Tm)ことができ、その分だけ乗員Cの負荷を軽減することができる。
図4(B)に示したラップベルト部における比較図において、従来技術のラップベルト部の引き出し量Lp´は、ショルダーベルト部の引き出し量Lpを基準線(引き出し量=0)を軸に上下反転した軌跡を描き、時間t1に達すると徐々に増加し、ラップベルト部とショルダーベルト部の張力がバランスするLα´で略一定値となる。また、ラップベルト部の張力Tp´は、時間の経過とともに徐々に上昇し、ラップベルト部の引き出し量Lα´により若干上昇度が緩和されるが、最終的に最大値Tm´に到達した後、徐々に低下する。
一方、本発明のシートベルト装置では、ウェビング2はベルトホルダー5に係止されて固定されているため、時間t1に達してもラップベルト部2b側にウェビング2が引き出されることはない。また、ベルトホルダー5は、ラップベルト部2bの張力Tbが所定値T2に達すると、引き込み部2aからウェビング2をラップベルト部2b側に引き出すように設定されている。そして、図4(B)に示すように、ラップベルト部2bの張力Tbが所定値T2に達する時間t2になると、引き込み部2aが徐々にベルトホルダー5から引き出され、引き出し量はLγで停止する。この引き込み部2aの引き出しにより、ラップベルト部2bにはゆとりができるため、張力Tbの上昇が抑制され、最終的に最大値Tn´に達した後、徐々に低下する。図4(B)に示すように、本発明のラップベルト部2bの引き出し量Lγは、従来技術の引き出し量Lα´よりも小さく、ラップベルト部2bが引き出されるタイミング(時間t2)も時間t1よりも遅い。この差が、乗員Cの早期の前方移動を規制する上で効果的である。また、所定値T2によるラップベルト部2bの引き出し機能を導入することにより、最大値Tn´の値をできるだけ小さくして乗員Cの腰部の負荷を軽減することができる。
次に、本発明のシートベルト装置で使用するベルトホルダー5の詳細について、図5〜12を参照しつつ説明する。ここで、図5は、ベルトホルダーの外観図であり、(A)は外側面図、(B)は内側面図である。なお、ここでは、ベルトホルダー5にウェビング2を係止する前の状態を示している。
図5(A)及び(B)に示すように、本発明のシートベルト装置で使用するベルトホルダー5は、ウェビング2を係止するベルトアーム部51と、ベルトアーム部51をスライド可能に保持する本体部52と、を有している。ベルトアーム部51は、筒状の本体部52に対して摺動可能に挿入されており、本体部52との間にウェビング2を挿入するための隙間5aを形成することができるように構成されている。
まず、ベルトアーム部51の構成について説明する。ここで、図6は、ベルトアーム部を示す図であり、(A)は正面図、(B)は図6(A)におけるB−B矢視図、(C)はベルトアーム部が変形した状態を示す図である。図6(A)に示すように、ベルトアーム部51は、略コ字状の枠体部61と、枠体部61の開放側から閉鎖側に向かってスライド可能に配置されるとともにウェビング2を係止する係止部62と、係止部62のスライド量を調整する衝撃吸収部63と、を有する。
前記枠体部61は、略コ字状の一部を形成する一対の腕部61a,61aを有し、腕部61a同士が連結されている側が閉鎖側を構成し、腕部61a同士が連結されていない側が開放側を構成している。一方の腕部61aの開放側は、他方の腕部61aよりも長く延出されて台座64に固定されている。台座64は、本体部52の内面を摺動可能に構成されている。また、腕部61aには、図6(B)に示すように、係止部62をスライドさせるための開口部61bが形成されている。枠体部61の両端を形成する開口部61bには、断面L字状の蓋部材61cがネジ等の固定具により留められている。また、腕部61aには、衝撃吸収部63を構成するJ字状部63aを有する板材を収容する溝部61dが形成されている。溝部61dは、開口部61bに沿って形成されるとともに、端部で開口部61bと連通するように連通部61eが形成されている。したがって、開口部61bと溝部61dとの間には壁部61fが形成される。連通部61eを構成する壁部61fの端部は、後述する衝撃吸収部63(板材)をしごく部分であるため、衝撃吸収部63の形状に沿うように形成されることが好ましい。そして、溝部61d及び連通部61eにJ字状部63aを有する板材を収容し、蓋部材61cで開口部61bの外側面と溝部61dを覆うことにより、衝撃吸収部63を構成する板材を腕部61a内に閉じ込めるようにしている。また、腕部61aの内側には、後述するアームロック部53と係合する溝部61gが形成されている。なお、図6(A)において、理解を容易にするために、左側の腕部61aの一部(一点鎖線で囲ったA部近傍)を切り欠いて図示している。
前記係止部62は、開口部61aに挿入されたスライドバー62aと、スライドバー62aの枠体部61の開放側に接続されたベルト接触部62bと、から構成されている。スライドバー62aには、衝撃吸収部63を構成する板材の延出部63bを収容する溝部62cが形成されている。すなわち、溝部62cは、図6(A)に示すように、スライドバー62aの両端部から長手方向に沿って形成されている。また、溝部62cの背面には、衝撃吸収部63を構成する板材のJ字状部63aを通すための凹部62dが形成されている。ベルト接触部62bは、ウェビング2と接触して係止する面であるため、ウェビング2と滑らかに接触するように曲面状に形成される。
前記衝撃吸収部63は、主としてJ字状部63a及び延出部63bを有する板材により構成される。かかる板材は、枠体部61の溝部61dと係止部62の溝部62cに収容されて、枠体部61と係止部62の間に配置される。また、この板材は、所定の荷重が負荷された場合に塑性変形するように構成されており、例えば、鉄、アルミ、ステンレス等の金属素材により形成される。このように係止部62を衝撃吸収部63(板材)を介して枠体部61に配置することにより、板材に作用する荷重が低い通常状態では、図6(B)に示すように、係止部62を枠体部61の開放側に配置しておくことができる。また、板材が塑性変形するほど大きな荷重が係止部62に負荷された場合には、図6(C)に示すように、板材は壁部61fによって扱かれ、塑性変形しながら溝部61dに沿って移動し、徐々に開口部61b側に引き出される。この板材の塑性変形により、係止部62が枠体部61の開口部61bに沿って開放側から閉鎖側にスライドし、ウェビング2をベルトホルダー5から徐々に引き出すように構成することができる。なお、上述した衝撃吸収部63の構成は単なる一例であり、板材の形状は図示した以外のものでもよいし、板材を押すことによって塑性変形させる構成であってもよいし、バネやゴムのように弾性変形する部材を採用してもよいし、粘度の高い流体や流体性のある固体を枠体部61内で押し出す構成であってもよい。すなわち、衝撃吸収部63は、通常状態では係止部62を枠体部61の開放側に配置し、係止部62に所定の荷重が負荷された場合に係止部62を枠体部61の閉鎖側にスライドさせるように構成されていればよい。
次に、本体部52の構成について説明する。図5(A)に示すように、本体部52の外側面(車両シート1に着座した乗員Cから遠い側面)には、後述するアームロック部53を保護するカバー53aが接続されている。アームロック部53には、ベルトアーム部51のロックを解除するためのリリースボタン53bが接続されており、カバー53aの上部に形成された開口部から車内に露出されている。一方、図5(B)に示すように、本体部52の内側面(車両シート1に着座した乗員Cに近い側面)には、後述するベルトロック部54が配置されている。ベルトロック部54が配置されている箇所の本体部52には、一対の切欠部52aが形成されており、切欠部52a,52aにより塑性変形部52bが形成されている。また、本体部52の下部には、ベルトホルダー5を車内構造物に接続するための連結部52cが形成されている。
ここで、図7は、ベルトロック部を説明するためのベルトホルダーの概略断面図であり、(A)は通常状態、(B)はロック状態、(C)はウェビングを引き出した状態を示している。なお、各図において、アームロック部53の図は省略してある。図7に示すように、ベルトロック部54は、本体部52のラップベルト部2b側の側面に固定される台座71と、台座71上に回動可能に配置された下部ブロック72と、下部ブロック72を回動させる上部ブロック73と、から構成されている。
前記台座71は、本体部52の側面に形成されたスリットから内部に挿入された一対のブロック支持部71aと、本体部52の側面に密着して塑性変形部52bの近傍まで延びた平板上のバックサポート部71bと、を有する。ブロック支持部71aには下部ブロック72の軸部72aを支持する凹部71cが形成されている。また、バックサポート部71bの上縁部71dは、塑性変形部52bを外方に塑性変形させる起点を形成する。したがって、バックサポート部71bは、塑性変形部52bよりも剛性の高い素材により構成される。
前記下部ブロック72は、全体として略平板形状の外形を有し、台座71の凹部71cに支持される軸部72aと、上部ブロック73と係合する係合溝72bと、ウェビング2を押え付ける接触部72cと、を有する。また、前記上部ブロック73は、全体として略平板形状の外形を有し、係合溝72bと係合する凸部73aと、ウェビング2と接触する頭部73bと、を有する。また、上部ブロック73は、塑性変形部52bを押圧して塑性変形させる部材であるため、塑性変形部52bよりも剛性の高い素材により構成される。
図7(A)に示すように、通常状態では、本体部52内にベルトアーム部51が挿入されて固定されている。このとき、ウェビング2は、ベルトアーム部51の係止部62に掛け回されており、引き込み部2a、ラップベルト部2b、ショルダーベルト部2cが形成されている。引き込み部2aは、ウェビング2が本体部52内にベルトアーム部51により引き込まれた部分である。したがって、引き込み部2aの一部は、ベルトアーム部51とベルトロック部54との間に形成されている。このとき、引き込み部2aとラップベルト部2bの境目近傍は、ベルトロック部54を構成する上部ブロック73の頭部73bと接触可能な状態となっている。上部ブロック73は、背面に塑性変形部52bを配し、下端の凸部73aが下部ブロック72の係合溝72bに係合することによって、下部ブロック72により本体部52に押し付けられている。したがって、ウェビング2により上部ブロック73の頭部73bが、外側に押し付けられたとしても、塑性変形部52bが変形するまでは、図7(A)の状態を維持する。
例えば、車両衝突時のように急減速が生じてラップベルト部2bが前方に引っ張られると、ウェビング2の張力は高くなる。そして、塑性変形部52bの剛性よりもウェビング2の張力が大きくなると、図7(B)に示すように、塑性変形部52bは上部ブロック73に押されて外側に塑性変形する。この塑性変形部52bの塑性変形によって上部ブロック73は外側に回動する。そして、上部ブロック73の凸部73aが、下部ブロック72の係合溝72bに押し付けられて下部ブロック72を内側に回動させる。下部ブロック72が内側に回動されると、接触部72cはウェビング2をベルトアーム部51に押し付ける。このベルトアーム部51と接触部72cの接触によって生じる摩擦力によりラップベルト部2b側にウェビング2が引き出されないようにウェビング2を固定している。
また、車両衝突時のように急減速が生じた場合には、ショルダーベルト部2cも前方に引っ張れることになる。そして、引き込み部2aに所定の張力が生じるとベルトアーム部51の係止部62が上方にスライドし、ショルダーベルト部2c側に引き込み部2aを引き出すことができる。すなわち、ベルトアーム部51は、本体部52に収納した状態で、スライド方向に変形可能に構成されている。したがって、ショルダーベルト部2cにゆとりを与えることができ、その分だけ乗員Cの負荷を軽減することができる。なお、ベルトアーム部51と接触部72cの接触は、例えば、10kN程度の摩擦力を生ずるようにベルトロック部54の各部材の素材やサイズが設計されており、その設定値よりも大きな張力がラップベルト部2bに生じた場合には、ウェビング2はラップベルト部2b側にも引き出されることとなる。
上述したように、本体部52は、ベルトアンカー4側のウェビング2(すなわち、ラップベルト2b)を固定するベルトロック部54を有し、ベルトロック部54は、ウェビング2に所定の張力が生じた場合に、回動してウェビング2をベルトアーム部51に押し付けて固定するように構成され、さらに大きな張力が生じた場合には、ウェビング2の固定を解除するように構成されている。
次に、アームロック部53の構成について説明する。ここで、図8はロックアームを示す図であり、(A)は外観図、(B)は側面図を示している。また、図9はアームロック部の部品構成図を示している。なお、説明の都合上、図9では、ロックアームの図を省略してある。
アームロック部53は、ベルトアーム部51を本体部52に収納した状態で固定するための機構である。図8及び図9に示すように、アームロック部53は、ベルトアーム部51を本体部52に挿入することによって本体部52の内側に回動するロックアーム81と、ロックアーム81を回動可能に支持するロックアーム支持部91と、ベルトアーム部51の固定を解除するリリースボタン53bと、を有する。
前記ロックアーム81は、図8に示すように、全体として略τ字状の形状をなしており、ロックアーム81を回動させる回動軸82と、ロックアーム81の下端部に配置されベルトアーム部51の挿入により接触する下部軸83と、下部軸83の上方の上端部に配置されるとともにベルトアーム部51の溝部61gに係合する一対のロックピン84と、ロックピン84の反対側の端部に配置されたガイドピン85と、から構成されている。
図8(B)に示すように、回動軸82は、ロックアーム81の重心位置よりも下方の位置に接続されており、下部軸83の回動径r1はロックピン84の回動径r2よりも大きくなるように構成されている。また、ガイドピン85の回動径r3は、ロックピン84の回動径r2よりも小さくなるように構成されている。かかる構成により、下部軸83の押込み量(回動量)に対してロックピン84の回動軌跡を大きくすることができるとともに、ガイドピン85の回動軌跡を小さくすることができ、ロックアーム81をコンパクトに形成することができる。また、図8(A)に示すように、ロックピン84の中間部には、ウェビング2を避けるための凹部86が形成されている。なお、ここでは、ロックピン84が回動軸82と平行となるように形成しているが、回動軸82と垂直に交差するように前方に突出させるように形成してもよい。この場合には、意図的に凹部86を形成する必要はない。
図9に示すように、本体部52の側面には、ロックアーム81を取り付けるための開口部52cが形成されている。また、開口部52cの外側には、ロックアーム81を支持するロックアーム支持部91が形成されている。このロックアーム支持部91は、本体部52と一体に形成されていてもよいし、別部材で構成されていてもよい。ロックアーム支持部91は、ロックアーム81の回動軸82を支持する軸受部92と、ロックアーム81のガイドピン85を案内するガイド孔93と、ロックアーム81の回動を阻害しないように形成された開口部94と、を有する。軸受部92にはロックアーム81の回動軸82が挿入され、ガイド孔93にはロックアーム81のガイドピン85が挿入される。したがって、ロックアーム81は、ガイド孔93の範囲で軸受部92を中心に回動される。また、ロックアーム支持部91は、リリースボタン53bに挿通される略コ字状の挿通部95と、ロックアーム支持部91及びリリースボタン53bの間に挿入されるバネ100を支持するバネ受け台座96と、を上部に有する。挿通部95の側面には、リリースボタン53bを案内するためのスライダ孔97が形成されている。また、バネ受け台座96は、ロックアーム支持部91の外側面から内側に舌状に突出するように形成されている。
また、リリースボタン53bは、図9に示すように、ロックアーム支持部91のスライダ孔97に挿入されるスライダガイド101と、バネ100を支持するバネ受け台座102と、ロックアーム81の回動を規制する反転防止部103と、スライダガイド101及び反転防止部103の間に形成されたリリース溝104と、ロックアーム81の回動を阻害しないように形成された凹部105と、を有する。なお、図9では、リリースボタン53bの内側の構造が見えるように表面の一部を切断した状態を図示している。
次に、アームロック部53の作用について説明する。ここで、図10は、アームロック部の作用を示す図であり、(A)はベルトアーム部挿入時、(B)はロックアーム係合回動時、(C)はベルトアーム部ロック時、(D)はリリースボタン押下時、(E)はロックアーム解除回動時、(F)は待機時の状態を示している。なお、各図において、ウェビング2は図を省略してある。
図10(A)に示すように、ベルトアーム部51の挿入時において、ロックアーム81は、下部軸83がベルトアーム部51の台座64と接触可能な位置に突出し、ロックピン84がベルトアーム部51と干渉しない位置に退避した状態で、リリースボタン53bにより係止されている。リリースボタン53bは、バネ100の作用により反転防止部103がガイド孔93を塞ぐ位置に配置されている。そして、ロックアーム81のガイドピン85は、ガイド孔93と反転防止部103により形成された外側の空間に係止されている。この状態がロックアーム81の待機状態である。本体部52の内部にベルトアーム部51が挿入されると、ベルトアーム部51の台座64の下端部がロックアーム81の下部軸83と接触する。
さらにベルトアーム部51を本体部52内に挿入すると、図10(B)に示すように、ロックアーム81は、回動軸82を中心に回動する。このとき、ガイドピン85は、リリースボタン53bの反転防止部103に押し付けられ、リリースボタン53bを上方に押し上げる。リリースボタン53bは、バネ100により支持されているため、スライダ孔97に沿ってスライダガイド101が移動し、上方に移動する。
さらにベルトアーム部51を本体部52内に挿入すると、図10(C)に示すように、ロックアーム81の下部軸83は台座64の側面部の位置まで回動し、ロックピン84がベルトアーム部51の溝部61gに係合してベルトアーム部51をロックする。このとき、ガイドピン85がガイド孔93に沿って最内側に移動しているため、リリースボタン53bの反転防止部103はバネ100の弾性力により再びガイド孔93を塞ぐ位置に復帰する。なお、ベルトアーム部51は、図7に示したように、本体部52の下部に配置されたバネ74を収縮させるように挿入されるため、図10(C)の状態において、ベルトアーム部51は上方に付勢されている。
ベルトアーム部51のロックを解除する場合には、図10(D)に示すように、リリースボタン53bを押し下げる。リリースボタン53bを押下すると、リリースボタン53bは、スライダ孔97に沿ってスライダガイド101が移動し、下方に移動する。リリースボタン53bが下方に移動すると、反転防止部103も下方に移動するため、ガイドピン85がガイド孔93内で開放されて外側に向かって移動可能な状態となる。そして、リリースボタン53bの押下力とベルトアーム部51の付勢力により、ロックアーム81は外側に向かって回動される。
そして、ガイドピン85は、図10(E)に示すように、リリースボタン53bのリリース溝104を通過してガイド孔93の最外側に移動する。このとき、ロックアーム81の下部軸83は台座64の下端部に入り込み、ロックピン84は完全に退避した状態となる。したがって、ベルトアーム部51は、ロックが解除されて、ベルトアーム部51はバネ74の作用により上方に押し出される。
リリースボタン53bが押下力から開放されると、バネ100の作用により、図10(F)に示すように、リリースボタン53bは上方に押し上げられる。そして、反転防止部103が再びガイド孔93を塞ぐ位置に復帰してガイドピン85を拘束し、アームロック部53は待機状態に戻る。
このように、ベルトホルダー5の本体部52にアームロック部53を形成することにより、ベルトアーム部51を本体部52に収容した状態で固定することができる。特に、アームロック部53をベルトアーム部51の挿入時に回動可能なロックアーム81で構成したことにより、ベルトアーム部51を本体部52に挿入するだけでベルトアーム部51を容易に固定することができる。
上述したアームロック部53の構成は単なる一例であり、ベルトホルダー5の本体部52にベルトアーム部51を挿入した時に、ベルトアーム部51を本体部52に収容した状態で固定することができる構成であれば、ロックアーム81を使用しないでアームロック部53を構成するようにしてもよい。ここで、図11は、アームロック部の変形例を示す図であり、(A)〜(C)は第一変形例、(D)〜(F)は第二変形例を示している。なお、各図において、ウェビング2は図を省略してある。
図11(A)〜(C)に示したアームロック部53の第一変形例は、ベルトアーム部51の挿入によって回動される回動アーム111と、回動アーム111の接触することによって通電されるソレノイド112と、ソレノイド112の通電によって本体部52の内側に突出されるロックピン113と、ソレノイド112の通電状態を解除するリリースボタン114と、を有している。
回動アーム111は、回動軸111aにより本体部52に回動可能に支持されている。回動軸111aは回動アーム111の重心位置よりも下方に配置されている。また、回動アーム111は、下端部にベルトアーム部51と接触する下部軸111bを有し、上端部にはソレノイド112を通電させるための接点111cを有する。また、ソレノイド112には回動アーム111の接点111cと接触可能な位置に配置された接点112aを有する。また、リリースボタン114は、ソレノイド112と電気的に接続されており、リリースボタン114を押下することにより、ソレノイド112の通電状態を解除できるように構成されている。
回動アーム111は、図11(A)に示すように、待機状態では自重により接点111cがソレノイド112の接点112aから離れる位置に退避している。そして、本体部52内にベルトアーム部51を挿入すると、台座64が下部軸111bと接触し、回動アーム111を回動させる。
さらにベルトアーム部51が挿入され、下部軸111bが台座64の側面部に移動すると、図11(B)に示すように、接点111cがソレノイド112の接点112aと接触し、ソレノイド112が通電され、ロックピン113がベルトアーム部51に向かって突出される。そして、ベルトアーム部51の溝部61gにロックピン113が挿入されると、ベルトアーム部51は本体部52にロックされる。
ベルトアーム部51のロックを解除したい場合には、図11(C)に示すように、リリースボタン114を押下してソレノイド112の通電状態を解除し、ロックピン113を退避させる。ロックピン113が退避すると、ベルトアーム部51は付勢力により上方に押し上げられる。そして、ベルトアーム部51が下部軸111bから離れると、回動アーム111はフリーな状態となり、自重により回動し、待機状態へと戻ることになる。
図11(D)〜(F)に示したアームロック部53の第二変形例は、第一変形例の回動アーム111に替えて、ベルトアーム部51の挿入を感知するセンサ115を配置したものである。センサ115は、ベルトアーム部51の溝部61gがロックピン113を挿入できる位置に到達したことを感知できる位置に配置されている。具体的には図11(D)に示すように、ベルトアーム部51の台座64を感知できる位置に配置される。そして、センサ115は、ソレノイド112と電気的に接続されており、図11(E)に示すように、ベルトアーム部51の挿入を感知すると、ソレノイド112を通電状態にして、ロックピン113をソレノイド112から突出させる。そして、ベルトアーム部51の溝部61gにロックピン113が挿入されると、ベルトアーム部51がロックされる。ベルトアーム部51のロックを解除したい場合には、図11(F)に示すように、リリースボタン114を押下してソレノイド112の通電状態を解除し、ロックピン113を退避させる。ロックピン113が退避すると、ベルトアーム部51は付勢力により上方に押し上げられる。
次に、ベルトホルダー5の変形例について説明する。ここで、図12は、ベルトホルダーの変形例を示す図であり、(A)はベルトホルダーの正面図、(B)は待機状態を示す側面図、(C)はロック状態を示す側面図である。
図12(A)〜(C)に示すように、ベルトホルダー5は、車両シート1の側面部に配置される本体部121と、本体部121上の載置可能に配置されたベルトアーム部122と、本体部121及びベルトアーム部122に回動可能に接続されたリンク123と、を有する。本体部121は、ベルトアーム部122を載置する台座部121aと、ベルトアーム部122との間にウェビング2を挿通させるための隙間を形成する背面部121bとを有する。また、背面部121bの一方の側面には、リンク123が回動可能に接続されている。なお、図示しないが、背面部121bには、ベルトアーム部122を固定及び解除可能なアームロック部や、ベルトアーム部122のロック時にウェビング2を固定可能なベルトロック部が設けられている。ベルトアーム部122は、基本的な構造は図6に示したベルトアーム部51と同じ構造であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ベルトアーム部122では、ベルトアーム部51の台座64は不要である。そして、ベルトアーム部122を構成する枠体部の側面にリンク123が回動可能に接続されている。
シートベルトを装着する場合には、図12(B)に示すように、本体部121及びベルトアーム部122のリンク123が接続されていない側の空間にウェビング2を挿通させて、ウェビング2をベルトアーム部122に係止させる。そして、図12(C)に示すように、ベルトアーム部122を押し下げて本体部52上にスライドさせ、本体部に設けられたアームロック部によりベルトアーム部122を固定する。かかる動作により、ウェビング2をベルトホルダー5上に引き込むことができ、ラップベルト部2b及びショルダーベルト部2cの間に引き込み部2aを形成することができる。車両衝突時のように急減速が生じた場合のベルトホルダー5の作用は、既に説明した通りである。また、シートベルトを解除する場合には、例えば、リリースボタン(図示せず)を押下してベルトアーム部122のロックを解除すればよい。
かかるベルトホルダー5の変形例によっても、ウェビング2の張力により変形してウェビング2をベルトホルダー5から引き出し可能に構成することができ、ウェビング2に所定の張力が生じた場合に乗員Cの肩部を拘束するショルダーベルト部2cを係止側から引き出すことができ、乗員Cの胸部に生じる負荷を軽減することができ、特に、耐性の低い胸部下部の負荷を効果的に軽減することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、ベルトアーム部51をバネ74で付勢させる替わりにピニオン・ラック機構によりモータを作動させてベルトアーム部51を昇降させるようにしてもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。