以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態は、所定の記録媒体に対して画像を形成する画像形成装置である。特に、この画像形成装置は、静電潜像担持体としての感光体ドラムの周囲に配設する部材を、本願発明者が鋭意研究を重ねた結果見出した条件を満たす位置に設けることにより、画像品質の向上を図ることができるものである。
まず、本発明の第1の実施の形態として示す画像形成装置について説明する。
図1に、画像形成装置の構造を説明する側方断面図を示し、図2に、画像形成装置における画像形成部の構造を説明する側方断面図を示す。画像形成装置は、図1に示すように、未画像形成の紙媒体やOHPシート等の記録媒体Pを収納する媒体トレイ11を備える。この媒体トレイ11に収納された記録媒体Pは、給紙ローラ12a,12bが回転駆動するのに応じて、図1中矢印(a)の方向へと繰り出され、さらに、当該給紙ローラ12a,12bの下流に配設されている搬送ローラ13a,13b,13c,13dが回転駆動するのに応じて、図1中矢印(b)に示すように、図示しないモータによって印刷速度に応じた周回速度で周回駆動する転写ベルト14上へと所定のタイミングで搬送されて載置される。
また、画像形成装置は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色のそれぞれに対応する4つの画像形成部20K,20Y,20M,20Cをこの順序で記録媒体Pの給紙側から排紙側へと転写ベルト14に沿って並設している。画像形成部20K,20Y,20M,20Cは、それぞれ、駆動ローラ15a,15bが回転駆動するのに応じて、図1中矢印(c)、(d)の方向へと周回する転写ベルト14上に載置された記録媒体Pに対して、各色の現像剤としてのトナーを用いた画像形成を行う。
これら画像形成部20K,20Y,20M,20Cのそれぞれによって現像された各色のトナー像は、記録媒体Pが転写ベルト14によって搬送されるのに応じて、転写ベルト14を挟むように画像形成部20K,20Y,20M,20Cのそれぞれと対向して配設された転写装置としての転写ローラ16K,16Y,16M,16Cのそれぞれによって当該記録媒体P上に順次重ね合わされて転写される。なお、転写されずに転写ベルト14の表面に残存したトナーは、クリーニングブレード17によって掻き取られ、廃棄トナータンク18に回収される。
画像形成装置は、このような4つの画像形成部20K,20Y,20M,20Cにより、記録媒体P上に順次各色の画像形成を行い、カラー画像を形成する。そして、画像形成装置は、記録媒体Pを転写ベルト14に静電気的に吸着させた状態で、図1中矢印(e)の方向へと搬送し、定着装置30に供給する。
定着装置30は、発熱ローラ31と、この発熱ローラ31とともに記録媒体Pを押圧する加圧ローラ32とを有する。発熱ローラ31は、例えばアルミニウムからなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、さらにその上にPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被覆することによって形成される。また、発熱ローラ31の芯金内には、図示しない電源によって発光するハロゲンランプ等からなる加熱ヒータ33が埋設されており、加熱ヒータ33に通電することによって発熱ローラ31を加熱する。一方、加圧ローラ32は、例えばアルミニウム製の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、さらにその上にPFAチューブを被覆することによって形成される。この加圧ローラ32は、発熱ローラ31に対向して当接されるように配設されており、記録媒体Pを挟み込む圧接部を形成する。また、定着装置30は、発熱ローラ31の表面温度検出手段としてのサーミスタ34を有する。このサーミスタ34は、発熱ローラ31の近傍位置に、当該発熱ローラ31と非接触で配設される。このような定着装置30は、発熱ローラ31及び加圧ローラ32を回転駆動させて圧接部に記録媒体Pを通紙させ、当該記録媒体Pを加熱及び押圧することにより、当該記録媒体P上のトナーを溶融させ、トナー像を熱定着させる。
なお、ここでは、ローラ式の定着装置30を備えるものとして説明したが、画像形成装置は、ベルトを使用したベルト方式、フィルムを使用したフィルム方式、発光エネルギを利用したフラッシュ方式等、他の方式の定着装置30を備えてもよい。なお、ローラ方式やベルト方式の定着装置30においては、オイル供給ローラ、オイル補給シート、及びオイルタンク等のオイル補給機構を備えたオイル補給定着方式により、発熱ローラやベルトナー等にオイルを補給し、積極的にホットオフセット現象が発生するのを防止するのが望ましい。また、オイルとしては、特定の材料である必要はないが、一般に、シリコーンオイルや鉱物オイル等のうち、比較的粘度が低いものを使用するのが望ましい。さらに、定着装置30においては、オイルを補給することなく、オイルレス定着方式によってホットオフセット現象が発生するのを防止することもできる。
画像形成装置は、このような定着装置30によって記録媒体P上に画像を定着させると、図1中矢印(f)又は矢印(g)のいずれかの方向へと当該記録媒体Pを搬送する。すなわち、画像形成装置は、記録媒体Pの片面のみに画像形成を行う場合や両面への画像形成を行った後には、可動式の記録媒体走行ガイド19aを制御するとともに、搬送ローラ41a,41bを回転駆動させ、当該記録媒体Pを図1中矢印(f)の方向へと搬送する。そして、画像形成装置は、排出ローラ42a,42bの回転に応じて、記録媒体Pを搬送して外部へと排紙させ、所定の排紙部上に積載させる。一方、画像形成装置は、画像形成した記録媒体Pの裏面にさらに画像形成を行う場合には、可動式の記録媒体走行ガイド19aを制御するとともに、搬送ローラ43a,43b及び反転ローラ44a,44bを回転駆動させ、当該記録媒体Pを図1中矢印(g)の方向へと搬送する。続いて、画像形成装置は、可動式の記録媒体走行ガイド19bを制御するとともに、反転ローラ44a,44bを逆回転駆動させることによって記録媒体Pを反転させ、図1中矢印(h)の方向へと搬送する。そして、画像形成装置は、搬送ローラ45a,45b,45c,45d,45e,45f,45g,45h,45i,45jの回転に応じて、記録媒体Pを図1中矢印(i)、(j)、(k)の方向へと搬送し、再度、転写ベルト14上に載置する。
このような画像形成装置において、画像形成部20K,20Y,20M,20Cは、それぞれ、図2に示すように構成される。なお、画像形成装置においては、上述したブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色のそれぞれに対応する4つの画像形成部20K,20Y,20M,20Cが全て同じ構成であることから、以下では、例えば画像形成部20のように、各部に付す符号として、K,Y,M,Cを除いた番号を用いて説明するものとする。
画像形成部20は、図2に示すように、静電潜像担持体としての感光体ドラム21と、この感光体ドラム21の周面を帯電させる帯電装置としての帯電ローラ22と、画像データに基づいて感光体ドラム21の周面に選択的に光を照射して露光し、静電潜像を形成させる露光装置23と、感光体ドラム21の周面に形成された静電潜像をトナーTによって現像する現像剤担持体としての現像ローラ24と、この現像ローラ24にトナーTを供給する現像剤供給体としての供給ローラ25と、現像ローラ24に供給するトナーTを収容する現像剤収容体としてのトナーカートリッジ26と、現像ローラ24に供給されるトナーTを薄層化する現像剤規制部材としての現像ブレード27と、感光体ドラム21の周面に残存したトナーTをクリーニングして回収する現像剤回収装置としてのクリーニングブレード28とを有する。
感光体ドラム21は、例えばアルミニウム製の金属パイプからなる導電性支持体に、光導電層としての電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した有機系感光体から構成される。この感光体ドラム21は、図示しないモータや駆動を伝達するギヤ等により、図2中矢印(l)の方向へと回転駆動する。
帯電ローラ22は、例えば金属シャフトに半導電性エピクロロヒドリンゴム層を被覆して構成される。この帯電ローラ22は、図示しない電源によって所定の電圧が印加された状態で、図示しないモータや駆動を伝達するギヤ等によって感光体ドラム21の周面に圧接しながら図2中矢印(m)の方向へと回転駆動することにより、当該感光体ドラム21を帯電させる。
露光装置23は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)を配列したLEDヘッドやレーザヘッドとして構成され、図示しない電源及び制御部の制御のもとに、図示しないインターフェース部を介して外部装置から受信した画像データに基づいて、対向して配設されている感光体ドラム21の周面に選択的に光を照射して露光し、静電潜像を形成させる。
現像ローラ24は、例えば金属シャフトに半導電性ウレタンゴム層を被覆して構成される。この現像ローラ24は、図示しない電源によって所定の電圧が金属シャフトに印加された状態で、図示しないモータや駆動を伝達するギヤ等によって感光体ドラム21の周面に圧接しながら図2中矢印(n)の方向へと回転駆動することにより、当該感光体ドラム21にトナーTを付着させる。なお、現像ローラ24は、感光体ドラム21との相対回転速度の大きさや回転方向を変化させて使用することもできる。
供給ローラ25は、例えば金属シャフトに半導電性発泡シリコーンスポンジ層を被覆して構成される。この供給ローラ25は、現像ローラ24の周面に回転可能に接触して又は非接触で配設されており、図示しない電源によって所定の電圧が金属シャフトに印加された状態で、図示しないモータや駆動を伝達するギヤ等によって図2中矢印(o)の方向へと回転駆動することにより、当該現像ローラ24にトナーTを供給する。
トナーカートリッジ26は、所定の筐体内にトナーTを収容する。このトナーカートリッジ26に収容されているトナーTは、供給ローラ25が回転駆動するのにともない、自重によって排出され、現像ローラ24に供給される。
現像ブレード27は、例えばステンレスから構成される。この現像ブレード27は、現像ローラ24の周面に当接するように配設されており、図示しない電源によって印加される所定の電圧に基づいて、当該現像ローラ24の周面上に供給されたトナーTを薄層化して帯電させる。なお、この現像ブレード27と、上述した現像ローラ24及び供給ローラ25とは、現像装置を構成する。
クリーニングブレード28は、感光体ドラム21の周面に圧接するように配設されており、例えば金属シャフトにウレタンスポンジ層を被覆して構成された転写ローラ16による転写が完了すると、記録媒体P上にトナーTが転写されずに感光体ドラム21の周面に残存したトナーTを掻き取ることによってクリーニングする。
このような画像形成部20は、図示しない制御部の制御のもとに、所定の電圧が印加された帯電ローラ22によって感光体ドラム21の周面を一様電圧に帯電させた上で、当該感光体ドラム21が回転駆動するのにともない、その帯電された周面が露光装置23の近傍に到達すると、当該露光装置23によって画像変調された光を当該感光体ドラム21に照射して静電潜像を形成する。続いて、画像形成部20は、形成された静電潜像に現像ローラ24から供給されるトナーTを付着させることにより、トナー像を生成する。そして、画像形成部20は、記録媒体Pが転写ベルト14によって図2中矢印(e)の方向へと搬送されるとともに、感光体ドラム21が回転駆動するのにともなって転写ローラ16が図2中矢印(p)の方向へと回転駆動するのに応じて、現像したトナー像を記録媒体P上に転写する。このとき、転写ローラ16には、図示しない電源によって所定の電圧が印加される。
さて、このような画像形成部20を備える画像形成装置においては、回転駆動している感光体ドラム21に圧接する各圧接部材、すなわち、帯電ローラ22、現像ローラ24、クリーニングブレード28、及び転写ローラ16のそれぞれの配設位置を、これら各圧接部材から当該感光体ドラム21が受ける圧接力と、これら各圧接部材と感光体ドラム21との摩擦力とに基づいて、当該感光体ドラム21に対する各圧接部材の配設位置を決定する。具体的には、画像形成装置においては、回転駆動している感光体ドラム21に圧接する各圧接部材からの圧接力と、これら各圧接部材と感光体ドラム21との摩擦力との合力が、感光体ドラム21の回転中心軸において所定値よりも小さくなる位置に各圧接部材を配設する。
本願発明者は、このような各圧接部材の配設位置が極めて妥当であることを証明するために実験を行った。以下、この実験内容について具体例を用いて説明する。実験では、感光体ドラム21として、直径30mm、厚さ1mmのアルミニウム製のパイプに、光導電層を厚さ18μmでコーティングしたものを用い、帯電ローラ22として、直径6mmのステンレス製のシャフトに、ヤング率1.6MPa、厚さ3mmの半導電性エピクロロヒドリンゴムを被覆したものを用い、現像ローラ24として、直径10mmのステンレス製のシャフトに、ヤング率3.24MPa、厚さ3mmの半導電性ウレタンゴムを被覆したものを用い、転写ローラ16として、直径6mmのステンレス製のシャフトに、ヤング率0.887MPa、厚さ3.5mmのウレタンスポンジを被覆したものを用いた場合を想定した。
また、ここでは、図3に示すように、各圧接部材から感光体ドラム21が受ける圧接力をPn(n=1〜4)、各圧接部材と感光体ドラム21との摩擦力をUn(n=1〜4)、感光体ドラム21の回転中心軸を直交座標系の中心としたときの各圧接部材の配設位置を示す角度をθn(n=1〜4)とする。より具体的には、現像ローラ24から感光体ドラム21が受ける圧接力をP1、現像ローラ24と感光体ドラム21との摩擦力をU1、現像ローラ24の配設位置を示す角度をθ1とする。なお、角度θ1は、感光体ドラム21の回転中心軸を直交座標系の中心としたときに、この回転中心軸から現像ローラ24の回転中心軸までを結んだ直線がなす角度である。また、帯電ローラ22から感光体ドラム21が受ける圧接力をP2、帯電ローラ22と感光体ドラム21との摩擦力をU2、帯電ローラ22の配設位置を示す角度をθ2とする。なお、角度θ2は、感光体ドラム21の回転中心軸を直交座標系の中心としたときに、この回転中心軸から帯電ローラ22の回転中心軸までを結んだ直線がなす角度である。さらに、クリーニングブレード28から感光体ドラム21が受ける圧接力をP3、クリーニングブレード28と感光体ドラム21との摩擦力をU3、クリーニングブレード28の配設位置を示す角度をθ3とする。なお、角度θ3は、感光体ドラム21の回転中心軸を直交座標系の中心としたときに、この回転中心軸からクリーニングブレード28が感光体ドラム21に圧接する先端部までを結んだ直線がなす角度である。さらにまた、転写ローラ16から感光体ドラム21が受ける圧接力をP4、転写ローラ16と感光体ドラム21との摩擦力をU4、転写ローラ16の配設位置を示す角度をθ4とする。なお、角度θ4は、感光体ドラム21の回転中心軸を直交座標系の中心としたときに、この回転中心軸から転写ローラ16の回転中心軸までを結んだ直線がなす角度であり、270°で固定である。また、図3中、圧接力Pn及び摩擦力Unのそれぞれを示す矢印は、その力が作用する方向を示している。
まず、各圧接部材の配設位置を決定するために必要なパラメータ、すなわち、圧接力Pn及び摩擦力Unの測定方法について説明する。なお、転写ローラ16は、感光体ドラム21との間に転写ベルト14を介在させて配設されるものであり、転写ベルト14は、感光体ドラム21の周速度と速度差なく周回するものであることから、摩擦力U4が作用することはない。また、転写ローラ16は、例えばステンレス製のシャフトの両端からバネ50の付勢力を用いて感光体ドラム21に圧接力P4で圧接している。そのため、本発明においては、バネ50を変更することにより、転写ローラ16から感光体ドラム21が受ける圧接力P4を変化させるものとする。したがって、ここでは、現像ローラ24、帯電ローラ22、及びクリーニングブレード28についてのパラメータを求める。
圧接力Pn(n=1〜3)を求めるにあたっては、摩擦力Un(n=1〜3)と、感光体ドラム21と各圧接部材との間の動摩擦係数μn(n=1〜3)とを求める必要がある。ここでは、動摩擦係数μnを、図4に示すような測定手段を用いて測定した。すなわち、動摩擦係数μnを測定するために、感光体ドラム21を模擬した感光体板51と、現像ローラ24、帯電ローラ22、及びクリーニングブレード28をそれぞれ模擬した3種類の圧接部材板52とを用いた。感光体板51は、100mm四方の厚さ2mmのアルミニウム製の板に、厚さ18μmの光導電層を積層したものである。また、圧接部材板52は、30mm四方の厚さ2mmのアルミニウム製の板に、上述した現像ローラ24の材料、帯電ローラ22の材料、クリーニングブレード28の材料を、それぞれ、厚さ5mmで積層したものである。
このような感光体板51及び圧接部材板52を用意した上で、まず、光導電層側が上方向となるように感光体板51を固定し、固定された光導電層の表面にトナーTを薄くまぶした。そして、光導電層と、圧接部材板52における各圧接部材の材料側とが対向するように当該圧接部材板52を設置し、当該圧接部材板52の上に0.5kgのおもり53を載置し、バネばかり54を介して、図4中矢印(q)の方向へと移動させた。動摩擦係数μnは、このときのバネばかり54に表示される荷重値N[N]と、鉛直方向の荷重値Pref[kg]とを用いて、次式(1)によって求めた。なお、鉛直方向の荷重値Prefは、おもり53の重量0.5kgと各圧接部材板52の重量との和である。また、次式(1)におけるgは、重力加速度であり、ここでは、g=9.80655[m/s2]とした。なお、現像ローラ24及びクリーニングブレード28のそれぞれを模擬した圧接部材板52の場合には、上述したように、感光体板51の光導電層の表面にトナーTを薄くまぶした。一方、帯電ローラ22を模擬した圧接部材板52の場合には、感光体板51の光導電層の表面にトナーTをまぶさずに、当該圧接部材板52を感光体板51に直接設置した。
また、感光体ドラム21と各圧接部材との摩擦力Un[N]は、図5に示すような方法によって測定した。すなわち、ここでは、図5中(a)〜(c)に示すように、感光体ドラム21に対して、帯電ローラ22、現像ローラ24、クリーニングブレード28のいずれかのみをそれぞれ圧接させた状態で、感光体ドラム21を140rpmで回転駆動させ、そのときの感光体ドラム21にかかるトルクTmes[Nm]をトルク計測装置によって計測した。また、図5中(d)に示すように、全ての圧接部材を除去した状態で感光体ドラム21を140rpmで回転駆動させ、そのときの感光体ドラム21にかかるトルクTref[Nm]をトルク計測装置によって計測した。そして、これらトルクTmes,Trefの差分値に基づいて、摩擦力によるトルクT[Nm]を求め、得られたトルクTを用いて、次式(2)によって摩擦力Unを求めた。なお、次式(2)におけるr[m]は、感光体ドラム21の半径である。
このようにして動摩擦係数μn及び摩擦力Unを測定すると、圧接力Pn[N]は、次式(3)によって求めた。
現像ローラ24、帯電ローラ22、及びクリーニングブレード28についての動摩擦係数μn、摩擦力Un、及び圧接力Pnは、このようにして求めることができる。上述した転写ローラ16についての摩擦力Un及び圧接力Pnを含め、各圧接部材についての動摩擦係数μn、摩擦力Un、及び圧接力Pnと、各圧接部材を取り付けた角度θnとをまとめた結果を、次表1に示す。
転写ローラ16を感光体ドラム21に圧接させるためのバネ50としては、次表2に示すように10種類のものを使用し、上表1に示した現像ローラ24、帯電ローラ22、及びクリーニングブレード28についての動摩擦係数μn、摩擦力Un、及び圧接力Pnと、これら10種類のバネ50による圧接力P4とを組み合わせた各ケースを、それぞれ、実験例1乃至実験例10とした。なお、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力F[N]と、この合力Fが生じる方向φ[°]は、次式(4)乃至次式(6)によって求めた。
また、次表3に示すように、帯電ローラ22の配設位置のみを変化させた場合における現像ローラ24、帯電ローラ22、及びクリーニングブレード28についての動摩擦係数μn、摩擦力Un、及び圧接力Pnと、実験例10にて用いたバネ50による圧接力P4とを組み合わせた各ケースを、次表4に示す実験例11とした。
これら実験例1乃至実験例11の各条件について、感光体ドラム21の偏心及び自励振動を測定した。具体的には、図6に示すように、レーザドップラ振動計55を感光体ドラム21の鉛直方向及び水平方向のそれぞれに設置してレーザを照射し、回転駆動している感光体ドラム21の変位量を測定した。レーザドップラ振動計55としては、株式会社小野測器製レーザドップラ振動計LV−1610を使用した。この測定結果を次表5に示す。なお、次表5に示す変位量は、感光体ドラム21の最大変位量である。
この結果から、実験例7乃至実験例11においては、実験例1乃至実験例6に比べ、感光体ドラム21の変位量が小さくなっており、当該感光体ドラム21の偏心及び自励振動を防止することが可能なことがわかる。
つぎに、実験例1乃至実験例11の各条件を満たす画像形成部20を用いて実際に画像形成を行い、その画像品質の評価を行った。具体的には、図7に示すように、横210mm×縦297mmのA4サイズの記録媒体Pを用意し、その印刷可能領域PA(横197.3mm×縦284.3mm)に、10mm間隔で幅14.215mmの5本の帯状線Lからなる印刷パターンを画像形成した。そして、画像形成によって得られた原稿を、株式会社キーエンス製ディジタルマイクロスコープVHX−100を用いて500倍に拡大し、付属のソフトウェアを用いて、5本の帯状線Lのそれぞれの間隔d1,d2,d3,d4を測定し、この値に基づいて画像品質を評価した。
評価は、5本の帯状線Lのそれぞれの間隔di(i=1,2,3,4)を用いて、次式(7)に示す|δi|を評価基準値として定義したとき、次式(8)である場合を、5本の帯状線Lの印刷位置のずれが小さく、画像品質が良好である旨を示す"○"とし、次式(9)である場合を、5本の帯状線Lの印刷位置のずれが通常程度であり、画像品質が普通である旨を示す"△"とし、次式(10)である場合を、5本の帯状線Lの印刷位置のずれが大きく、画像品質が劣悪である旨を示す"×"として行った。
なお、上式(8)及び上式(9)において、評価基準値の閾値を40μmとしたのは、同一箇所において3つのトナー粒子が重なった場合を想定し、上に重なった2つのトナー粒子がずれて記録媒体Pの表面に落下した場合を許容するものとした場合に、トナー粒子の直径が約5μmであることから、ずれて落下した2つのトナー粒子によって生じる最大の値が10μmとなり、それが4つの間隔分あることによる。また、上式(9)及び上式(10)において、評価基準値の閾値を400μmとしたのは、目視で印刷位置のずれが明らかに把握できる値を1つの間隔につき100μmとし、それが4つの間隔分あることによる。この評価結果を次表6に示す。
この結果からわかるように、実験例1乃至実験例4の各条件の場合、すなわち、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力Fが10Nよりも大きい場合には、感光体ドラム21の偏心に起因して印刷位置のずれが多く発生し、良好な画像品質を得ることができなかった。また、実験例5及び実験例6の各条件の場合、すなわち、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力Fが10N以下である場合には、多少の印刷位置のずれが発生しているものの、目視で確認する程度には問題がない画像品質を得ることができた。そして、実験例7乃至実験例11の各条件の場合、すなわち、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力Fが4.8N以下である場合には、感光体ドラム21の偏心に起因する印刷位置のずれが小さく、良好な画像品質を得ることができた。
この実験では、実験例11が、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力Fが最小である場合であるが、この合力Fが小さいほど画像品質が良好となることが容易に推測される。すなわち、画像形成装置においては、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力Fが0Nになるような各圧接部材の配設位置が最も理想的である。ただし、このような状況は、現実的には困難である。そこで、画像形成装置においては、各圧接部材の大きさ等の制限によって許容される範囲内で、感光体ドラム21の回転中心軸上での合力Fができる限り小さくなるような位置に、換言すれば、合力Fが所定値よりも小さくなるような位置に、各圧接部材を配設すればよい。この所定値は、上述したように、10N以下であるのが望ましく、画像形成装置においては、各圧接部材の大きさや所望する画像品質等に応じて変化させればよい。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態として示す画像形成装置においては、感光体ドラム21が回転駆動している際に当該感光体ドラム21に圧接する各圧接部材からの圧接力Pnと、これら各圧接部材と感光体ドラム21との摩擦力Unとの合力Fが、感光体ドラム21の回転中心軸において所定値よりも小さくなる位置に各圧接部材を配設することにより、当該感光体ドラム21が偏心することなく、良好な画像品質を得ることができる。
なお、この第1の実施の形態では、上表1乃至上表4に示したように、圧接部材(現像ローラ24、帯電ローラ22、クリーニングブレード28、及び転写ローラ16)による圧接力Pn、摩擦力Un、動摩擦係数μn、及び角度θnを変更することにより、合力Fを調整しているが、上表1乃至上表4に示した設定内容の他に、例えば次表7及び次表8に示すような設定を行った場合にも、上述した実験例8と同じ合力Fとすることができる。すなわち、上述した設定はあくまでも一例に過ぎず、画像形成装置においては、上表1乃至上表4、次表7及び次表8に示す設定に限らず、圧接部材による圧接力Pn、摩擦力Un、動摩擦係数μn、及び角度θnを適宜変更することにより、合力Fを調整することが可能である。
つぎに、第2の実施の形態として示す画像形成装置について説明する。
この第2の実施の形態として示す画像形成装置は、第1の実施の形態として示した画像形成装置を改良し、現像ローラ上のトナー層の厚さの変動に応じて、当該現像ローラによる圧接力を調整する機構を設けたものである。したがって、この第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
画像形成装置においては、トナーTが印刷環境の雰囲気等の外的な要因の影響を受けることにより、供給ローラ25を介して現像ローラ24上に搬送されてくるトナーTの量が変化し、現像ローラ24上のトナー層の厚さが変動することがある。そこで、画像形成装置は、かかるトナー層の厚さの変動を考慮し、現像ローラ24上のトナー層の厚さの変化を検出し、当該現像ローラ24による圧接力を調整する機構を設ける。
具体的には、画像形成装置は、図8に示すように、現像ローラ24の周面のトナー層の厚さを検出する厚さ検出部60を備える。この厚さ検出部60は、可変電圧源61によってコンデンサ62に充電した電荷を、スイッチ63及び現像ローラ24の周面に当接した当接部材64を介して、当該現像ローラ24に対して放電するように構成される。なお、厚さ検出部60の当接部材64は、図9及び図10に示すように、記録媒体Pの印刷可能領域PAの外部に設置される。
このような厚さ検出部60において、コンデンサ62から放電された電荷に基づいてトナーTに流れる電流i(t)[A]は、次式(11)によって表すことができる。なお、次式(11)において、C[F]は、コンデンサ62の容量を示し、V0[V]は、コンデンサ62の充電電圧を示し、R[Ω]は、トナー層の電気抵抗値を示している。
コンデンサ62に対する充電時間をT1[秒]とし、コンデンサ62からの放電時間をT2[秒]とすると、コンデンサ62の充電過程ではトナー層に電流が流れないことから、平均電流値I[A]は、次式(12)によって表すことができる。
したがって、上式(11)及び上式(12)から、電気抵抗値R[Ω]は、次式(13)によって表すことができる。
また、厚さ検出部60の当接部材64と現像ローラ24とのニップ部のトナー層の横幅、長さ、厚さを、それぞれ、W[m]、L[m]、d[m]とすると、電気抵抗率ρ[Ω/m]は、次式(14)によって表すことができる。
したがって、上式(13)及び上式(14)から、トナー層の厚さd[m]は、次式(15)によって求めることができる。
画像形成装置は、このような厚さ検出部60を用いることにより、現像ローラ24の周面のトナー層の厚さを検出することができる。
また、画像形成装置においては、現像ローラ24を感光体ドラム21に圧接させるための手段として電磁コイルを用いる。この電磁コイルは、図11に示すように、コア材として直径10mm、長さ10mmの鉄芯に直径0.5mmのホルマン線を100周巻回した第1の電磁コイル71と、コア材として直径10mm、長さ30mmの鉄芯に直径0.5mmのホルマン線を300周巻回した第2の電磁コイル72とを用いて構成されている。これら第1の電磁コイル71及び第2の電磁コイル72は、互いの磁力線が対向するように100μmの間隙を空けて設置されている。
画像形成装置は、このような電磁コイルを用いることにより、現像ローラ24から感光体ドラム21が受ける圧接力P1を調整することができる。
このような厚さ検出部60及び電磁コイルを備えた画像形成装置は、図12に示すような一連の手順にしたがって、トナー層の厚さの変動に応じて、現像ローラ24による圧接力P1を調整する。
まず、画像形成装置は、図12に示すように、ステップS1において、トナー層に流れる電流を計測し、上式(11)乃至上式(15)を用いてトナー層の厚さdを求める。なお、トナー層に流れる電流は、現像ローラ24の金属シャフトに流れる電流としてもよい。したがって、ここでは、現像ローラ24の金属シャフトに流れる電流を計測するものとする。
続いて、画像形成装置は、ステップS2において、求めたトナー層の厚さd[μm]の変化率が所定値以上であるか否かを判定する。ここでは、トナー層の厚さd[μm]の変化率が20%以上であるか否かを判定するものとする。
画像形成装置は、トナー層の厚さd[μm]の変化率が20%未満である場合には、現像ローラ24による圧接力P1の調整を行う必要がないことから、ステップS1からの処理を繰り返し、トナー層に流れる電流の計測を継続する。
一方、画像形成装置は、トナー層の厚さd[μm]の変化率が20%以上である場合には、ステップS3において、電磁コイルに流れる電流量を調整し、ステップS4において、電流量を調整した電磁コイルによる電磁力に基づいて、現像ローラ24による圧接力P1を調整し、ステップS1からの処理を繰り返す。
画像形成装置は、このような一連の手順にしたがって、トナー層の厚さの変動に応じて、現像ローラ24による圧接力P1を調整することができる。
本願発明者は、このようなトナー層の厚さの変動に応じた圧接力P1の調整機構の妥当性を証明するために実験を行った。以下、この実験内容について具体例を用いて説明する。
実験は、画像形成を行う雰囲気を、温度28℃、湿度50%(以下、高温・高湿環境という。)と、温度10℃、湿度15%(以下、低温・低湿環境という。)の2つの環境条件に設定し、各環境条件について、感光体ドラム21の偏心及び自励振動を測定した。また、画像形成部20としては、上述した実験例1乃至実験例3の各条件を満たし、且つ、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えていないものと、上述した実験例1乃至実験例3の各条件を満たし、且つ、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えたものとを使用した。このとき、後者の画像形成部20においては、厚さ検出部60の当接部材64と現像ローラ24とのニップ部のトナー層の横幅Wを15mmとし、長さLを5mmとした。また、現像ローラ24による圧接力P1を得るために必要な電流は5Aであった。感光体ドラム21の偏心及び自励振動の測定は、先に図6に示したように、レーザドップラ振動計55を使用して行った。
この結果、高温・高湿環境下でのトナー層の厚さdは40μmであり、低温・低湿環境下でのトナー層の厚さdは20μmであった。厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えていない画像形成装置においては、高温・高湿環境下及び低温・低湿環境下の双方で、感光体ドラム21の変位量として30μmが観測された。これに対して、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えた画像形成装置においては、高温・高湿環境下及び低温・低湿環境下の双方で、感光体ドラム21の変位量が5μmであった。
このように、画像形成装置は、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えることにより、感光体ドラム21の変位量を小さくすることができ、当該感光体ドラム21の偏心及び自励振動を防止することが可能なことがわかる。
つぎに、高温・高湿環境下及び低温・低湿環境下のそれぞれにおいて実際に画像形成を行い、その画像品質の評価を行った。評価は、先に図7に示したように、5本の帯状線Lからなる印刷パターンを画像形成した原稿を用い、5本の帯状線Lのそれぞれの間隔d1,d2,d3,d4に基づいて画像品質を評価した。
この結果、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えていない画像形成装置においては、高温・高湿環境下及び低温・低湿環境下の双方で、印刷指示位置からの5本の帯状線Lの印刷位置のずれが110μmと大きく発生した。これに対して、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えた画像形成装置においては、高温・高湿環境下及び低温・低湿環境下の双方で、5本の帯状線Lの印刷位置のずれが50μm以下となり、良好な画像品質が得られた。
このように、画像形成装置は、厚さ検出部60及び電磁コイルによる調整機構を備えることにより、感光体ドラム21の偏心に起因する印刷位置のずれが小さく、良好な画像品質を得ることができることがわかる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態として示す画像形成装置においては、感光体ドラム21が回転駆動している際に当該感光体ドラム21に圧接する各圧接部材からの圧接力Pnと、これら各圧接部材と感光体ドラム21との摩擦力Unとの合力Fが、感光体ドラム21の回転中心軸において所定値よりも小さくなる位置に各圧接部材を配設し、さらに、トナー層の厚さの変動に応じて、現像ローラ24による圧接力を調整する機構を設けることにより、印刷環境の雰囲気等の影響によるトナー層の厚さが変動した場合であっても、良好な画像品質を得ることができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、転写ローラ16のみ、バネ50(弾性部材)による圧接を行うものとして説明したが、本発明は、他の圧接部材についても同様に弾性部材による圧接を行うようにしてもよく、また、弾性部材の他に、磁石や電磁コイル等による電磁力を利用した圧接を行うようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、圧接部材が、現像ローラ24、帯電ローラ22、クリーニングブレード28、及び転写ローラ16の4つの部材であるものとして説明したが、本発明は、かかる圧接部材の個数や種類に限定されるものではない。
さらに、本発明は、画像形成を行う機能を有する装置であればいかなるものであっても適用することができ、例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、その他の機能を複合的に備える装置に適用することもできる。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。