JP5282357B2 - ポリイミド前駆体、ポリイミド、これらを用いた樹脂組成物及び物品 - Google Patents

ポリイミド前駆体、ポリイミド、これらを用いた樹脂組成物及び物品 Download PDF

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Description

本発明は、紫外領域の電磁波に対して透明性に優れるポリイミド前駆体に関し、特に、電磁波によるパタ−ニング工程を経て形成される製品又は部材の材料(例えば、光学製品、光学部品の成形材料、絶縁材料、層形成材料又は接着剤など)として好適に利用することが出来ることに加えて、イミド化後の耐熱性に優れるポリイミド前駆体に関し、さらには、当該ポリイミド前駆体から誘導されるポリイミド、当該ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物、及び、当該ポリイミド前駆体、当該ポリイミド又は当該樹脂組成物を用いて作製した物品にも関するものである。
高分子材料は、加工が容易、軽量などの特性から身の回りのさまざまな製品に用いられている。1955年に米国デュポン社で開発されたポリイミドは、耐熱性に優れることから航空宇宙分野などへの適用が検討されるなど、開発が進められてきた。以後、多くの研究者によって詳細な検討がなされ、耐熱性、寸法安定性、絶縁特性といった性能が有機物の中でもトップクラスの性能を示すことが明らかとなり、航空宇宙分野にとどまらず、電子部品の絶縁材料等への適用が進められた。現在では、半導体素子の中のチップコ−ティング膜や、フレキシブルプリント配線板の基材などとしてさかんに利用されてきている。
また、近年、ポリイミドの有する課題を解決する為に、類似の加工工程を有し、低吸水性で低誘電率を示すポリベンゾオキサゾ−ルや、基板との密着性に優れるポリベンゾイミダゾ−ル等も精力的に研究されている。
ポリイミドは、ジアミンと酸二無水物から合成される高分子である。ジアミンと酸二無水物を溶液中で反応させることで、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)となり、その後、脱水閉環反応を経てポリイミドとなる。一般に、ポリイミドは溶媒への溶解性に乏しく加工が困難なため、前駆体のポリアミド酸の状態で所望の形状にし、その後、加熱を行うことでポリイミドとする場合が多い。ポリアミド酸は熱や水に対し不安定な場合が多く、保存安定性がよくない。この点を考慮し、分子構造に溶解性に優れた骨格を導入し、ポリイミドとした後に溶媒に溶解して成形又は塗布できるように改良が施されたポリイミドも開発されたが、これを用いる場合には前駆体方式に比べ耐薬品性や、基板との密着性に劣る傾向にある。そのため、目的に応じて前駆体を用いる方式と溶媒溶解性ポリイミドを用いる方式とが使い分けられている。
また、技術の進歩に従いポリイミドを所望の形状にパタ−ニングしたいとの要求も出てきた。その為、紫外線等の電磁波を用い、露光・現像等のプロセスを通してパタ−ン形成できるポリイミドも開発された。ポリイミドをパタ−ニングするためには、いくつかの手法が提案されている。そのひとつが、ポリイミド前駆体の状態でパタ−ニングを行い、その後熱処理等によりイミド化を行い、ポリイミドのパタ−ンを得る方法であり、もうひとつが、ポリイミド自身に有機物や金属等でレジストパタ−ンを形成し、その開口部をヒドラジン、無機アルカリ、有機アルカリ等の溶液や有機極性溶媒、またはそれらの混合物で処理することによって、分解または溶出させることによりパタ−ンを得る方法である。
前者は、溶媒溶解性に優れる前駆体を用いることで加工特性に優れ、後者は、高温の熱処理等が必要とされるイミド化のプロセスをパタ−ン形成後に行う必要が無いという利点があり、それぞれの用途に応じて使い分けられている。
20世紀後半から目覚しい発展を遂げてきた半導体分野において、現在、主に前駆体を利用するタイプのパタ−ニング可能なポリイミドが用いられている。それは、シリコンウェハ上にポリイミドを形成するため、イミド化に必要な300℃〜400℃という高温の熱処理にも基板が耐えられることが、その理由のひとつとして挙げられる。
前駆体を利用するタイプのポリイミドのパタ−ニングをする手段としても、種々の手法が提案されている。その代表的な手法は、以下の2つに大別される。
(1) ポリイミド前駆体自身にはパタ−ニング能力がなく、感光性樹脂層をその表面に形成し、その感光性樹脂のパタ−ンによってポリイミド前駆体がパタ−ニングされる手法。
(2) ポリイミド前駆体自身に感光性部位を結合や配位させて導入し、その作用によりパタ−ン形成する手法、または、ポリイミド前駆体に感光性成分を混合し樹脂組成物とし、その感光性成分の作用でパタ−ン形成する手法。さらには、感光性部位の導入と感光性成分の混合の両方を組み合わせた手法。
上記(1)のグル−プに属する手法の代表的なものとして、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸がアルカリ溶液に可溶であることを利用し、その塗膜上にアルカリ現像可能なレジストを塗布し、所望の形状に電磁波を照射後、レジストの現像と同時に、現像によって現れたレジストの開口部から露出したポリアミド酸も現像液に溶出させパタ−ンを形成した後、ポリアミド酸が不溶なアセトン等の有機溶媒で表面のレジスト層を剥離し、その後にイミド化を行い、ポリイミドパタ−ンを得る手法がある。
一方、上記(2)のグル−プに属する手法の代表的なものとして:
(a) ポリイミドの前駆体のポリアミド酸に、電磁波の露光前は溶解抑止剤として作用し、露光後は、カルボン酸を生成し溶解促進剤となる、ナフトキノンジアジド誘導体を混合し、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでパタ−ン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパタ−ンを得る手法;
(b) ポリイミドの前駆体のポリアミド酸に、電磁波の露光によりイミド化の触媒作用を示す塩基性物質となるニフェジピン誘導体等の化合物を混合し、露光後に、適度な温度で加熱することにより、露光部に発生した塩基性物質の作用で露光部は部分的にイミド化されるため、現像液に対する溶解性が低下し、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでパタ−ン形成を行い、その後、完全にイミド化を行い、ポリイミドパタ−ンを得る手法;
(c) ポリイミド前駆体としてラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する骨格を結合させたものを用い、そこに光ラジカル発生剤を混合することで露光部に架橋構造を形成して現像液に対する溶解性を低下させ、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでパタ−ン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパタ−ンを得る手法;
(d) ポリイミド前駆体のポリアミド酸と塩基性部位を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する骨格を混合することで、両者をイオン結合させ、そこに光ラジカル発生剤を混合することで露光部に架橋構造を形成して現像液に対する溶解性を低下させ、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでパタ−ン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパタ−ンを得る手法;
及び、
(e) ポリイミドの前駆体のポリアミド酸に、光酸(または光塩基)発生剤と架橋剤を混合し、露光後、加熱することで露光によって発生した酸(または塩基)の作用によって架橋を進行させ、現像液に対する溶解性が低下させることで、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくしパタ−ン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパタ−ンを得る手法、などの手法が提案されている。
上記(1)のグル−プに属する手法は、プロセスが煩雑になるものの、用いるポリイミド前駆体の組成の自由度が大きく、また、感光性成分等を混合していないため最終的なポリイミドにはポリイミド以外の不純物を含まず、信頼性が高いという特徴がある。
一方、(2)のグル−プに属する手法では、ポリイミド前駆体(または、ポリイミド前駆体樹脂組成物)自身がパタ−ン形成能を有するため、(1)のグル−プで用いたようなレジスト層が必要なく、プロセスが大幅に簡便になるという特徴があるが、ポリイミド前駆体自身が露光波長を十分に透過しないと、感光性成分に電磁波が届かず感度の低下や、パタ−ンが形成できない等の問題が発生するため、露光波長に対し透過率の高い骨格を選ぶ必要がある。
より微細なパタ−ンを形成したいという市場の要求に伴い、露光波長も436nmから405nm、365nmへと段階的に短波長化している。これらの手法に用いられるポリイミド前駆体は、その化学構造によって吸収波長が異なるが、一般に450nm付近から短波長側にかけては吸収を有する場合が多い。特に芳香族構造を多く有し、それらの一部、または、大部分が共役状態にあるものについては、その傾向が強い。また、それらの吸収を小さくする為に工夫されたものについても、400nm以下の波長に吸収を有する場合が多く、より微細な加工が可能である365nm以下の波長による露光に対応させる為、より短い波長に対する透過率を向上させるために検討がされてきた。
特に、耐熱性が高く、低膨張率を示す芳香族骨格を有するポリイミド前駆体は、より長波長領域に吸収をもつ傾向がある。
ポリイミド前駆体の吸収の原因は、電荷の移動によるものと言われており、最近では、特にその分子内の電荷移動が着色に大きく関わっていると報告されている(非特許文献1)。 つまり、分子内の電荷移動をなくすことで、吸収をより短波長領域にシフトさせたポリイミド前駆体を作ることができる。この原理に基づき、これまでにポリイミド前駆体の吸収を短波長化させる手法として、大きく2つの手法が提案されている。
一つは、通常、芳香族骨格が多いポリイミド前駆体の骨格内に脂肪族構造、特に脂環構造を導入し、骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害し、吸収の短波長化を図るというものである。特に、原料であるジアミンに脂環骨格を導入することが効果的であるといわれている。(非特許文献1、特許文献1)
もう一つは、ポリイミド前駆体骨格内にフッ素を導入し、骨格内の電子状態を電荷移動しにくくすることで透明性を付与するものである。(特許文献2)
特開平10−310639号公報 特開平5−1148号公報 Polymer Preprints, Japan 48 [5]939(1999) POLYMER LETTERS Vol.6, p821−825 (1968)
ポリイミド前駆体の透明性を向上させるために従来とられていた上記いずれの手法とも、それらの手法を採用することによって、最終的に得られるポリイミドの物性の低下を招いている。
前記第一の手法では、脂環式構造は、芳香族構造に比べ酸化されやすく、空気中で加熱すると酸化により着色をしてしまうという問題がある。その為、脂環式構造を導入したポリイミドは、不活性雰囲気下での加熱が推奨されている。また、脂環式構造を導入したポリイミドは、芳香族ポリイミドに比べ熱分解温度も低いため、耐熱性に劣る。さらに、線熱膨張係数が大きくなり、金属、金属酸化物あるいはシリコンウェハ等の熱膨張率の小さな物質と界面を形成する場合には、熱履歴がかかることによって反りの発生や密着不良などの原因となる。
また、原料に脂環構造を有するジアミンを用いる場合には、芳香族ジアミンに比べ脂環構造のジアミンの方が塩基性が高いため、酸二無水物との重合反応の際に、生成したポリアミド酸のカルボン酸と塩を形成し、分子量を大きくすることを難しくする。その為、シリル化法(アミノ基をシリル化してから酸二無水物と重合する方法)などが提案されているが、合成の工程が1工程増えるためコスト増の原因となる。
一方、前記第二の手法では、ポリイミドにフッ素を導入することで原料の価格が上昇しコストが高くなるという問題がある。また、フッ素の導入により界面の密着性が低下し、基材から剥がれやすい。また、耐溶剤性も低下し、ガラス転移温度も低下する。さらに、線熱膨張係数が大きくなることで、熱膨張率の小さな基材上へ形成した場合、基材の反りや密着性低下の原因となる。
また、従来ポリイミド前駆体の1種であるポリアミド酸は、用いられているテトラカルボン酸二無水物が芳香族の場合、最終的にイミド結合を形成する2つのカルボニル基がπ共役状態にある同一の芳香族環に結合しており、ジアミンと反応しポリイミド前駆体となった状態において、アミド結合とカルボン酸が近傍に存在し、しかもそれらの芳香族環との結合位置が固定されている。酸無水物とアミンの反応は可逆反応である為、このような状態であると、より逆反応が進行しやすい。その為、長期の保存や加熱によって逆反応が進行し、分子鎖の切断が起こり分子量が低下したり、逆反応によって精製した反応性末端が種々の部位と反応することによるゲル化を引き起こす。その為、ポリアミド酸に代表されるポリイミド前駆体は低温保存、冷凍保存が推奨されており取り扱い上の問題があった。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、最終的に得られるポリイミドが耐熱性等の本来ポリイミドが有する特性を損なわずに、電磁波に対してより短波長領域に高い透過率を有し、且つ保存安定性に優れるポリイミド前駆体を提供することを第一の目的とするものである。
また、上記ポリイミド前駆体を用いて、高感度であり、より短波長の電磁波によって露光が可能となり、且つ保存安定性に優れる感光性樹脂組成物を提供することを第二の目的とするものである。
更に、本発明の別の目的は、電磁波に対して短波長領域でも高い透過率を有し、且つ保存安定性が良好な上記ポリイミド前駆体を用いて、該前駆体から誘導されるポリイミドから形成されるか又は該ポリイミドを含有する様々な製品や部材を提供することにある。
本発明は、これらの目的のうち少なくともひとつを解決するものである。
上記課題を解決するために、本発明は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体を提供する。
Figure 0005282357
(式中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。但し、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、芳香族基であるか、或いは、R 及びR のいずれかの1つが、R 〜R 16 のいずれかの1つと一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。また、R 及びR 13 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、芳香族基であるか、或いは、R 及びR 13 のいずれかの1つが、R 〜R のいずれか1つと一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。R 17、R18はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基である。R19、R20はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、Yは、2価の有機基である。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
本発明者は、全く新しい考え方に基づきポリイミドの分子設計を行い、高耐熱という特徴を有する芳香族ポリイミド、特に好ましくは全芳香族ポリイミドの前駆体でありながら、フッ素を導入せずに高い透明性を有するポリイミド前駆体を発明し、それを感光性樹脂組成物としてパタ−ン形成に応用するに至った。つまり、電磁波の吸収の原因となるポリイミド前駆体分子鎖上でのπ共役をひき起こさないようにする為に、異なったπ平面を有する芳香族環に結合するアミド結合とカルボン酸および、その誘導体によってイミド結合を形成するようなメカニズムを導入し、ポリイミド前駆体の分子鎖のπ電子の共役構造を、骨格の立体配座を制御することで断ち切るという考え方をポリイミド前駆体に適用した。
すなわち、上記式(1)の繰り返し単位に含まれるビフェニル骨格は、平面に配置しようとすると不安定であるため、当該骨格に含まれる酸二無水物由来のビフェニル構造の2つのベンゼン環の相対的位置がねじれ、2つのベンゼン環の間のπ結合の共役が立ち切られる。
本発明に係るポリイミド前駆体は、このような分子構造の空間配置を有するため、ポリイミド前駆体分子鎖上のπ共役が阻止され、より短波長に吸収を有するポリイミド前駆体となる。また、これらのポリイミド前駆体から最終的に得られるポリイミドは芳香族ポリイミドゆえの耐熱性を有する。また、その構造にもよるが、多くのジアミンとの組み合わせにおいて400nm以上に吸収を有さず構造の選択の幅が広い。その結果、吸収波長に制限されることなく、低熱膨張や低吸湿、低誘電率や低誘電正接など、求める物性に応じて、骨格を選択できる。
また、最終的にイミド結合を形成するカルボニル基とアミド基が、π共役構造となっている同一の芳香族環に結合していない為、ポリイミド前駆体となった場合にそれらの間の距離が立体的に離れることから、従来のポリアミド酸等に比べ保存安定性が良好である。
前記本発明に係るポリイミド前駆体においては、前記式(1)におけるが、直接結合、または、芳香族環を有する2価の有機基であることが、耐熱性の観点、及び線熱膨張係数を小さくし、ガラス転移温度を高くする観点から好ましい。
前記本発明に係るポリイミド前駆体においては、下記式(2)で表される繰り返し単位をさらに有していても良い。
Figure 0005282357
(式中、R21、R22はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R23、R24はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、Lは4価の有機基であり、Mは2価の有機基である。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
本発明に係るポリイミド前駆体の好ましい一形態においては、440nm以下の波長を有する電磁波の照射によって、ポリイミド前駆体それ自体が硬化するか、又は、ポリイミド前駆体それ自体の溶解性を変化させる作用を発現するか、或いは、440nm以下の波長を有する電磁波に吸収を有する化合物の作用によって、ポリイミド前駆体それ自体が硬化するか、又は、ポリイミド前駆体それ自体の溶解性を変化させる作用を発現する部位を、分子内に有する、ポリイミド前駆体が提供される。
ポリイミド前駆体が、その分子内に上記したような反応性部位を有する場合には、放射線、特に短波長領域の電磁波によるパタ−ニングを行うことが可能である。
次に、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、上記本発明に係るポリイミド前駆体を含有することを特徴とする。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物の好ましい一形態においては、前記ポリイミド前駆体が、その分子内に440nm以下の波長を有する放射線の照射によって、ポリイミド前駆体樹脂組成物を硬化させるか、ポリイミド前駆体樹脂組成物の溶解性を変化させる感光性部位を有するポリイミド前駆体であるか、及び/又は、該感光性部位を有する感光性成分をさらに含有するポリイミド前駆体樹脂組成物が提供される。これらは、ポリイミド前駆体樹脂組成物中に単独で含有されても良いし、または2種以上を同じポリイミド前駆体樹脂組成物に含有させても良い。
ポリイミド前駆体樹脂組成物が感光性部位を有するポリイミド前駆体、及び/又は、該感光性部位を有する感光性成分を含有する場合には、放射線、特に短波長領域の電磁波、更には400nm以下の波長の電磁波によるパタ−ニングを行うことが可能である。
次に、本発明に係るポリイミドは、上記本発明に係るポリイミド前駆体を反応させて得られたポリイミドであることを特徴とする。
さらに、本発明に係るポリイミド樹脂組成物は、上記本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物を反応させて得られたポリイミド樹脂組成物であることを特徴とする。
ポリイミド前駆体から得られた最終生成物であるポリイミド、及び、ポリイミド前駆体樹脂組成物から得られた最終生成物である高透明性ポリイミドは、パタ−ン形成材料(レジスト)、コ−ティング材、塗料、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、フレキシブルディスプレ−用フィルム、光学部材など、樹脂材料が用いられる公知の全ての分野・製品に利用できる。
本発明に係るポリイミド及びポリイミド樹脂組成物は、主にパタ−ン形成材料(レジスト)として用いられ、それによって形成されたパタ−ンは、耐熱性や絶縁性を付与する永久膜として機能する。また、本発明に係るポリイミド及びポリイミド樹脂組成物は、前駆体だった段階と同様に最終生成物となった後も分子内の共役状態が切断され又は希薄となっているので、高い透明性を有する。
そのため、特に、耐熱性や絶縁性とともに透明性が要求される分野・製品、例えば、塗料、印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレ−用フィルム、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、その他の光学部材又は建築材料を形成するのに適している。
以上に述べたように、本発明に係るポリイミド前駆体は、電磁波に対してより短波長領域に高い透過率を有し、透明性及び保存安定性に優れるという効果を奏する。
また、本発明のポリイミド前駆体は、そのメカニズムから、反応するジアミンの種類によらず透明性を維持でき、従来のフッ素や脂環骨格を導入する方法では最終的にポリイミドとなったときに避けられなかった、耐熱性、寸法安定性等のポリイミド本来の物性が低下する問題や、コスト高となる問題を解消することができ、従来の芳香族ポリイミドと同等の耐熱性を有するポリイミドの塗膜、フィルム或いは成形品を得ることできる。
さらに、本発明のポリイミド前駆体は、1つのビフェニル構造に対して、1つのイミド結合を有する構造となっている為、イミド化反応が進行しやすい。
また、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、電磁波に対して短波長領域まで透過率が高く、優れた保存安定性を示す上記ポリイミド前駆体を含有する為、高感度で且つ保存安定性に優れる感光性樹脂組成物として用いることができる。上記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、高感度であり、それによって得られるポリイミドは、耐熱性、寸法安定性、絶縁性を有することから、ポリイミドが適用されている公知の全ての部材用のフィルムや塗膜として好適であり、例えば、半導体素子、光回路部品、電子部品、カラーフィルター等のディスプレ−部材等の高耐熱性のフィルムや構造物、塗膜としての利用が期待される。
本発明は、ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体樹脂組成物、及びそれを用いた物品に関するものである。以下、ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体樹脂組成物、及びそれを用いた物品について順に説明する。
まず、本発明に係るポリイミド前駆体を詳しく説明する。
本発明に係るポリイミド前駆体は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とし、最終生成物として7員環ポリイミド構造を含むポリイミドを与える前駆体である。
Figure 0005282357
(式中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。X〜Xは連結基Xがm個存在することを示し、Xが複数存在する場合にはX〜Xは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。mは1〜4の整数である。R17、R18はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基である。R19、R20はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、Yは、2価の有機基である。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
本発明に係るポリイミド前駆体は、上記特定の式(1)で表される繰り返し単位を有することにより、電磁波に対してより短波長領域に高い透過率を有し、透明性及び保存安定性に優れる。
従来の、ピロメリット酸二無水物由来のポリイミド前駆体に代表される芳香族5員環酸2無水物由来のポリイミド前駆体と、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体に代表される芳香族6員環酸2無水物構造を有するポリイミド前駆体は、最終的にイミド結合を形成するカルボニル基が同一π平面状に配置するため、π電子の共役構造がポリイミド前駆体分子鎖上に広がりやすい。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来されるポリイミド前駆体も、分子内閉環反応可能なアミド基とカルボキシル基が、同じベンゼン環に結合している為、それら2種の置換基の位置が固定されており、逆反応が進行しやすい。
また、酸無水物由来の2つのベンゼン環を結ぶ単結合は自由回転が可能であり、それらがπ共役構造を形成することが可能である為、低波長領域の電磁波の透過率が低い場合が多い。
2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来されるポリイミド前駆体も、分子内閉環反応可能なアミド基とカルボキシル基は、同一のベンゼン環に結合しており、逆反応が進行しやすい。
また、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来されるポリイミド前駆体は、酸無水物由来の2つの芳香族環は立体的に共役しにくいが、その前駆体から誘導されるポリイミドは、5員環のイミド構造を有することから着色が大きく、さらに、分子鎖が屈曲性の構造である為、膨張率を低下させにくく、適用できる用途が限定される。
特に、酸成分として芳香族酸二無水物を用いるだけでなく、ジアミン成分も芳香族ジアミンを用いる全芳香族ポリイミドの場合には、共役構造がポリイミド分子鎖上の広い範囲に亘り広がりやすいので、着色現象を生じやすい。
これに対して、本発明に用いられる式(1)の繰り返し単位は、2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物又はその芳香族環上に置換基を有する部位を、2分子分、1繰り返し単位内に有する構造を有しているが、2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物のビフェニル由来の2つの芳香族環は、平面に配置しようとすると立体的に不安定となる。そのため、ポリイミド前駆体に含まれるビフェニル構造の2つのベンゼン環の相対的位置がねじれ、π結合の共役が断ち切られる。
本発明に係るポリイミド前駆体は、繰り返し単位中のビフェニル構造においてπ結合の共役が断ち切られた分子構造の空間配置を有するため、最終的なイミド化物は芳香族ポリイミドゆえの耐熱性を有しながら、ポリイミド前駆体分子鎖上のπ共役が阻害され、吸収波長がより短波長化したポリイミド前駆体となる。
また、本発明に係るポリイミド前駆体は、最終的にイミド結合を形成するカルボニル基とアミド基が、π共役構造となっている同一の芳香族環に結合していない為、ポリイミド前駆体となった場合にそれらの間の距離が立体的に離れることから、逆反応が進行しにくい為、分子の加水分解が抑制され、良好な保存安定性も示す。
さらに、1つのビフェニル骨格に1つのイミド基が結合する形となるため、分子内のひずみが小さく、イミド化反応が速やかに進行し、さらに、生成したポリイミドの熱分解温度が高いという特徴がある。
また、本発明者が既に特願2006−057230において開示した2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来されるポリイミド前駆体は、上述と同様に、特異な立体構造により透明性、保存安定性に優れる一方で、その2つの7員環構造を有するイミド基同士が同一のビフェニル骨格に結合している為、立体的な影響でイミド化の反応が進行しにくく、ポリイミド前駆体が剛直な骨格を有する場合は、加熱のみでは完全にイミド化し難い場合があった。
ポリイミド前駆体の1つであるポリアミック酸を例に取ると、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来されるポリアミック酸は、片方のイミド基が形成されると、それによって、分子が剛直化し、もう一方のイミド基を形成するアミド結合とカルボキシル基の距離が近づきにくくなる。その為、イミド化反応が起こりにくくなると推測される。
これに対し、本発明に係る式(1)の構造には2つの2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物を連結する連結基Xが含まれるため、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて製造したポリイミド前駆体に比べて分子の剛直化が緩和され、イミド化反応が進行しにくい場合があるという課題を解決することができる。従って、本発明に係るポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体本来の性質と共に、その高い透明性、保存安定性、高いイミド化反応性を生かすことが出来る分野での好適な応用を期待できる。
上記式(1)で表される繰り返し単位において、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。本発明におけるポリイミド前駆体は、式(1)の繰り返し単位を含んでいれば、透明性が良好となり、R〜R16に置換基が導入されても同様の効果が期待できる。
水素原子以外にR〜R16の位置に導入し得る1価の有機基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、フェニル、ナフチル等の芳香族基、アリル基等が挙げられる。R〜R16は、互いに同一であっても異なっていても良い。
〜Rまたは、R〜Rのうちの2つ又は3つ、及び/又は、R〜R12または、R13〜R16のうちの2つ又は3つは、互いに結合して環状構造を形成していても良い。
水素原子以外の1価の有機基として導入される置換基R〜R16は、原料の状態で導入し、酸二無水物の状態で既に置換基が導入されたものを用いても良いし、ジアミンと反応させてポリイミドやポリアミド酸の状態で導入しても良い。また、置換基を導入することで吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法 第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。
〜Rのいずれか1つと、R〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。
2価の有機基としては、具体的には、炭素数が1〜50の飽和、不飽和炭化水素基であり、直鎖でも分岐でも環状の炭化水素基を含んでいてもよい。これらは、途中に脂肪族及び/または芳香族の環状の部位、及び/または、エステル結合、エ−テル結合、チオエ−テル結合、アミノ結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメ−ト結合、カルボジイミド結合、カ−ボネ−ト結合、単結合、アルキレン結合等を、1つ以上、単独または、2種以上の混合で含んでもよい。さらには、2つの芳香族環が上記の結合を介して直接結合していてもよい。
具体的には、例えば以下の構造が挙げられるが、特に限定されない。
Figure 0005282357
(R25〜R29は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、連結基Zである。連結基Zは、連結基Z’に対して、ベンゼン環のオルト位、メタ位または、パラ位に結合する。Z、及びZ’は、それぞれ独立にエステル結合、エ−テル結合、チオエ−テル結合、アミノ結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメ−ト結合、カルボジイミド結合、カ−ボネ−ト結合、単結合、メチレン結合であり、mが2以上の場合は、構造式中のZは、同じでも全てが異なっていてもよく、それぞれ独立して選択できる。mは、0または、1以上の自然数である。)
水素原子以外にR25〜R29の位置に導入し得る1価の有機基としては、上記R〜R16の位置に導入し得る1価の有機基と同様のものが挙げられる。また、R25〜R29は、それらが結合し、ナフタレン環やアントラセン環の様な環状構造をとってもよい。
中でも連結基Xは、耐熱性の観点から環状構造、及び/又は芳香族構造を含んでいることが好ましい。特にベンゼン骨格やピリジン骨格等の芳香族構造を含んでいることが耐熱性の点から好ましい。前記式(1)におけるX〜Xの少なくとも1つが、好ましくは全部が、直接結合、または、芳香族環を有する2価の有機基であることが、耐熱性の点から望ましい。さらには、X〜Xの少なくとも1つが、好ましくは全部が、全芳香族構造であることが好ましい。この場合の全芳香族構造とは、Xに含まれる全ての炭素が芳香族構造に含まれていることを言う。
また、上記式(1)で表される繰り返し単位において、X〜Xは連結基Xがm個存在することを示し、Xが複数存在する場合にはX〜Xは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。mは1〜4の整数であるが、合成の簡便さ、及びコストの点から、好ましくは1又は2である。
上記式(1)の好適な例としては、以下の式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)が挙げられる。
Figure 0005282357
(式中、R〜RとR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R〜R12のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。R〜RとR13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基である。その他の各符号は式(1)と同じである。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
Figure 0005282357
(式中、R〜RとR13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R13〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。R〜RとR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基である。その他の各符号は式(1)と同じである。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
Figure 0005282357
(式中、R〜RとR13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R13〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。R〜RとR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基である。その他の各符号は式(1)と同じである。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
Figure 0005282357
(式中、R〜RとR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R〜R12のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。R〜RとR13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基である。その他の各符号は式(1)と同じである。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
式(1)中のR17およびR18は、水素原子および/または、1価の有機基であり、その具体例としては、1価の有機基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、フェニル、ナフチル等の芳香族基、アリル基、エチレン性不飽和結合含有基等が挙げられる。R17〜R18は、互いに同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位ごとに複数種が混合していても良い。
エチレン性不飽和結合含有基とは、エチレン性不飽和結合を1つ以上有する置換基であり、具体的に例示すると、アリルオキシ基、2−アクリロイルオキシエチルオキシ基、2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ基、2−アクリロイルオキシエチルアミノ基、2−メタクリロイルオキシエチルアミノ基、2−アクリロイルオキシプロピルアミノ基、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルオキシ基、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルオキシ基、2−ヒドロキシ−4−ペンテニルオキシ基、2−アクリロイルオキシエチル・ジメチルアンモニウム基、2−メタクリロイルオキシプロピル・トリメチルアンモニウム基およびその誘導体が挙げられる。
式(1)中のYは2価の有機基であり、その具体例としては、後述する各ジアミン成分に対応する2価の有機基、すなわち、ジアミン成分からポリイミド鎖の形成に関与する両末端アミノ基を取り除いた構造が挙げられる。なお、同じポリイミド鎖内に存在する各繰り返し単位間において、同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。
19、R20はそれぞれ独立に、水素原子、及び/又は1価の有機基である。その具体例としては、1価の有機基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、フェニル、ナフチル等の芳香族基、アリル基、エチレン性不飽和結合含有基等が挙げられる。R19、R20は、互いに同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位ごとに複数種が混合していても良い。
本発明に係るポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミドの耐熱性及び寸法安定性を優れたものとする観点から、酸二無水物由来の部分が芳香族構造を有し、さらにジアミン由来の部分も芳香族構造を含む全芳香族ポリイミド前駆体であることが好ましい。それゆえ、ジアミン成分由来の構造であるYも芳香族ジアミンから誘導される構造であることが好ましい。ここで、全芳香族ポリイミド前駆体とは、芳香族酸成分と芳香族アミン成分の共重合、又は、芳香族酸/アミノ成分の重合により得られるポリイミド前駆体である。また、芳香族酸成分とは、ポリイミド骨格を形成する4つの酸基が全て芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族アミン成分とは、ポリイミド骨格を形成する2つのアミノ基が両方とも芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族酸/アミノ成分とはポリイミド骨格を形成する酸基とアミノ基がいずれも芳香族環上に置換している化合物である。ただし、後述する原料の具体例から明らかなように、全ての酸基又はアミノ基が同じ芳香族環上に存在する必要はない。
本発明のポリイミド前駆体は、分子構造中に置換基を導入することで溶解性を向上させることもできる。この観点からは、上記置換基R〜R16は、炭素数1〜15の飽和及び不飽和アルキル基、炭素数1〜15の飽和及び不飽和アルコキシ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基、ニトロ基、1〜3級アミノ基等が好ましい。また、これらの基が、上記2価の有機基XやYに存在していても良い。
本発明のポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミドの透明性・耐熱性・寸法安定性等の特性を向上させるという本発明の目的を達成できる範囲内であれば、式(1)以外の繰り返し単位を有していても良い。
例えば、本発明のポリイミド前駆体は、式(1)以外の構造を持つ繰り返し単位を含んでいてもよいし、アミド構造の繰り返し単位(ポリアミドの繰り返し単位)のようなイミド構造ではない繰り返し単位を含んでいても良い。
式(1)以外の構造を持つ繰り返し単位としては、例えば、下記式(2)で表すものが挙げられる。
Figure 0005282357

(式中、R21、R22はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R23、R24はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、Lは4価の有機基であり、Mは2価の有機基である。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位を含むポリイミドは、下記式(3)で表すことができる。なお、式(3)で表されるポリイミドは、式(1)と式(2)以外の繰り返し単位を含んでいても良い。
Figure 0005282357
(上記式(3)において、各符号は式(1)又は式(2)と同じである。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は、異なる原子又は構造であっても良い。o及びpは1以上の自然数である。式(1)及び式(2)の各単位は、ランダムな配列であっても良いし規則性を持った配列であっても良い。)
式(1)以外のイミド構造は、2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物やその誘導体以外の酸二無水物を用いることによりポリイミド前駆体鎖内に導入される。
本発明のポリイミド前駆体を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、(1)酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミド酸を合成する手法;(2)酸2無水物に1価のアルコ−ルやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させて合成した、エステル酸やアミド酸モノマ−のカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させてポリイミド前駆体を合成する手法などが挙げられるが、これに限定されない。
先に述べた様に、ここで用いる酸二無水物は2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物のビフェニル部位に水素だけが置換基として導入されているものだけでなく、目的に応じて予めR〜R16のいずれか一箇所以上に置換基が導入された誘導体を用いても良い。また、酸二無水物としては、2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物及び/又はその誘導体以外のものを併用しても良い。2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物及び/又はその誘導体、さらに、その他の酸二無水物は、ポリイミド前駆体の透明性を確保できる範囲内であれば2種以上を併用することができる。
2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物及び/又はその誘導体と併用できる酸二無水物は、耐熱性の観点から芳香族酸二無水物が好ましいが、目的の物性に応じて、酸二無水物全体の50モル%、好ましくは30モル%を超えない範囲で2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物以外の酸二無水物を用いても良い。
2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物及び/又はその誘導体と併用可能な他の酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、透明性をそれほど損なわずに溶解性や最終的に得られるポリイミドの熱膨張率等の物性を調整することが可能である。また、ピロメリット酸無水物や、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるが、透明性の向上を阻害する傾向があるので、目的に応じて共重合割合に注意しながら併用してもよい。
一方、アミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エ−テル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エ−テル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エ−テル、ビス(2−アミノエチル)エ−テル、ビス(3−アミノプロピル)エ−テル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エ−テル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エ−テル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エ−テル、
1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エ−テル、ジエチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エ−テル、トリエチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エ−テル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネ−ト基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、このポリイミド前駆体から誘導されるポリイミドは低膨張率となる。
剛直なジアミンとしては、同一の芳香族環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(4)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
Figure 0005282357
(aは1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
さらに、上記式(4)において、他のベンゼン間との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、本発明のポリイミド前駆体、および、それより誘導されるポリイミドを光導波路、光回路部品として用いる場合には、芳香族環の置換基としてフッ素を導入すると1μm以上の波長の電磁波に対しての透過率を向上させることができる。
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、本発明のポリイミド前駆体、および、それより誘導されるポリイミドは弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
次に、本発明に係るポリイミド前駆体の原料となる2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物を合成する手法、及び、ポリイミド前駆体を合成する手法をこれより具体的に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物は、2−ヒドロキシ−2’,6−ビフェニルジカルボン酸のカルボキシル基をメタノ−ルによってメチルエステル化を行った後、1/2等量のテレフタル酸クロライドと反応させ、その後、末端のメチルエステル部位を加水分解し、テトラカルボン酸を得る。そのテトラカルボン酸を無水酢酸中で120℃で3時間程度加熱し、無水酢酸を留去することで、2つの2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位が、2つのエステル結合で結ばれた酸二無水物が得られる。
次に、酸成分として上記2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物、及び、アミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルを用いてポリイミド前駆体を合成する例を述べる。先ず、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルを溶解させたN−メチルピロリドンなどの有機極性溶媒を冷却しながら、反応液の液温が上昇しないように等モルの2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物を徐々に加え撹拌する。
2,6−ビフェニルジカルボン酸無水物部位を2つ有する化合物が、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとほぼ等モルになるように添加した後、1〜5時間程度冷却しながら撹拌することで、目的のポリアミック酸の溶液が得られる。その溶液から再沈殿法によりポリアミド酸を精製し得ることができる。そのポリアミド酸を再びN−メチルピロリドン等の有機極性溶媒に溶解し、ガラスなどの基板上に塗布乾燥し、ポリアミド酸の塗膜を成形できる。また、それを加熱することでポリイミドの塗膜が得られる。
また、加熱脱水のかわりに化学的イミド化を行う場合には、脱水触媒としてピリジンやβ−ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ−ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。
このようにして合成される本発明のポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミド本来の耐熱性及び寸法安定性を優れたものとするために、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドであることが特に好ましい。
また、透明性を達成する観点から、本発明のポリイミド前駆体は、高分子骨格に存在するポリイミド前駆体構造の繰り返し単位の50モル%以上、特に70モル%以上が式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。また、耐熱性及び寸法安定性の観点から、式(1)で表される繰り返し単位は、全芳香族ポリイミド前駆体の繰り返し単位であることが好ましい。
このようにして合成される本発明のポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミドが、耐熱性や寸法安定性に優れるにもかかわらず、高い透明性を有することを特徴としており、少なくとも436nm,405nm、365nm、248nm、193nmの波長の電磁波のうち、1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で20%以上、好ましくは30%、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。本発明のポリイミド前駆体は、厚み1μmのフィルムに成膜した時に、436nm、405nm、365nmのいずれの波長においても透過率が、20%以上、更に30%以上、より更に50%以上、特に70%以上であることが好ましい。
本発明のポリイミド前駆体の高透明性の効果は、膜厚が厚い場合に、より顕著に現れる。本発明のポリイミド前駆体は、更に厚み2μm以上、具体的には3μm、5μm、10μmのフィルムに成膜した時であっても、少なくとも436nm、405nm、365nm、248nm及び193nmの波長のうち1つの波長の電磁波に対する透過率、望ましくは436nm、405nm、365nmの全ての波長の電磁波に対する透過率が、20%以上、更に30%以上、より更に50%以上であることが好ましい。
436nm、405nm、365nmは、一般的に感光性樹脂の露光に利用される高圧水銀ランプの発光波長であり、248nm、193nmはそれぞれKrF,ArFといったレ−ザ−の発光波長である。これらの波長に対して透過率が高いということは、それだけ、光のロスが少なく、高感度の感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明のポリイミド前駆体から最終的に得られるポリイミドは、高い透明性を有することを特徴としており、1μm好ましくは2μmの厚みのフィルムに成膜した時に400nm〜800nmの波長領域の各波長において電磁波の透過率が85%以上とすることができる。この時、最終生成物であるポリイミドは、可視光領域に透明性を要求されるフィルムなどの用途の場合、全光線透過率(JIS K7105)が90%以上であることが、好ましい。
本発明のポリイミド前駆体の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000以下であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミドとした際の膜の強度も低くなる。10,000以下であると着色の原因になるポリマ−末端の数が相対的に多くなることから、得られるポリイミドが着色する場合がある。一方、1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
本発明に係るポリイミド前駆体は、逆反応が進行しにくい為、良好な保存安定性を有する。具体的に保存安定性としては、実質的に水を含むN−メチルピロリドンを用いた0.5重量%溶液を23℃で25時間保存した後の、ゲル浸透クロマトグラフィ−によるポリスチレン換算の重量平均分子量の変化率が20%以下、更に10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。更にまた、上記0.5重量%溶液を23℃で50時間、150時間、300時間保存した後のゲル浸透クロマトグラフィ−によるポリスチレン換算の重量平均分子量の変化率が20%以下、更に10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。なお、”実質的に水を含む”とは、前述のようにN−メチルピロリドンが脱水されていない状態を意味し、N−メチルピロリドン中の含水率が0.001重量%〜10重量%、更に0.005重量%〜1重量%である状態をいう。
本発明のポリイミド前駆体より得られるポリイミドは、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等のポリイミド本来の特性も損なわれておらず、良好である。
例えば、本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドの窒素中で測定した5%重量減少温度は、250℃以上が好ましく、300℃以上がさらに好ましい。特に、はんだリフロ−の工程を通るような電子部品等の用途に用いる場合は、5%重量減少温度が300℃以下であると、はんだリフロ−の工程で発生した分解ガスにより気泡等の不具合が発生する恐れがある。ここで、5%重量減少温度とは、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(換言すればサンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。同様に10%重量減少温度とはサンプル重量が初期重量から10%減少した時点の温度である。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドのガラス転移温度は、耐熱性の観点からは高ければ高いほど良いが、光導波路のように熱成形プロセスが考えられる用途においては、120℃〜380℃程度のガラス転移温度を示すことが好ましく、200℃〜380℃程度のガラス転移温度を示すことがさらに好ましい。ここで本発明におけるガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))のピ−ク温度から求められるものである。動的粘弾性測定としては、例えば、粘弾性測定装置Solid Analyzer RSA II(Rheometric Scientific社製)によって、周波数3Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドの寸法安定性の観点から線熱膨張係数は、70ppm以下が好ましく、60ppm以下が更に好ましく、40ppm以下がより更に好ましい。半導体素子の用いる場合等で、シリコンウェハ上形成する場合には、密着性、基板のそりの観点から20ppm以下がさらに好ましい。ここで本発明における線熱膨張係数は、熱機械的分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製)によって、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2として得られる値である。
以上に述べたように、本発明に係るポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、フッ素や脂環骨格を導入しなくても良好な透明性を示す。従って、従来、フッ素や脂環骨格の導入により避けられなかった耐熱性、寸法安定性等の最終的に得られるポリイミド本来の物性が低下する問題や、コスト高となる問題を解消することができ、従来の芳香族ポリイミドと同等の耐熱性を有するポリイミドの塗膜、フィルム或いは成形品を得ることできる。
本発明に係るポリイミド前駆体は、そのまま製品や部材を作製するためのコ−ティングや成形プロセスに供してもよいが、本発明に係るポリイミド前駆体を、必要に応じて溶剤に溶解又は分散させ、さらに、光又は熱硬化性成分、本発明に係るポリイミド前駆体以外の非重合性バインダ−樹脂、その他の成分を配合して、ポリイミド前駆体樹脂組成物を調製してもよい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を溶解、分散又は希釈する溶剤としては各種の汎用溶剤を用いることが出来る。また、ポリイミド前駆体の合成反応により得られた溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良い。
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコ−ルジメチルエ−テル、エチレングリコ−ルジエチルエ−テル、プロピレングリコ−ルジメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルジエチルエ−テル等のエ−テル類;エチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、エチレングリコ−ルモノエチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テル等のグリコ−ルモノエ−テル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコ−ルモノエ−テル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテ−ト、エチルセロソルブアセテ−ト)、メトキシプロピルアセテ−ト、エトキシプロピルアセテ−ト、修酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、ヘキサノ−ル、シクロヘキサノ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、グリセリン等のアルコ−ル類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独もしくは組み合わせて用いられる。
また、光硬化性成分としては、エチレン性不飽和結合を1つ又は2つ以上有する化合物を用いることができ、例えば、アミド系モノマ−、(メタ)アクリレ−トモノマ−、ウレタン(メタ)アクリレ−トオリゴマ−、ポリエステル(メタ)アクリレ−トオリゴマ−、エポキシ(メタ)アクリレ−ト、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレ−ト、スチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。また、ポリイミド前駆体が、ポリアミック三等のカルボン酸成分を構造内に有する場合、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和結合含有化合物を用いると、そうでない場合に比べてポリイミド前駆体のカルボン酸とイオン結合を形成し、感光性樹脂組成物としたときの露光部、未露光部の溶解速度のコントラストが大きくなる。ここで、(メタ)アクリレ−トとは、アクリレ−ト又はメタクリレ−トのいずれであっても良いことを意味する。
このようなエチレン性不飽和結合を有する光硬化性化合物を用いる場合には、さらに光ラジカル発生剤を添加してもよい。光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル及びベンゾインイソプロピルエ−テル等のベンゾインとそのアルキルエ−テル;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−タ−シャリ−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタ−ル及びベンジルジメチルケタ−ル等のケタ−ル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のモノアシルホスフィンオキシドあるいはビスアシルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;並びにキサントン類等が挙げられる
また、本発明のポリイミド前駆体にN−フェニルジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジエチルアミノベンゼン、ジアザビシクロオクタン等の3級アミンを加えても、紫外線吸収によってポリイミド前駆体と電荷移動錯体を形成し、現像液への溶解性に変化を与えることができる。(「最新ポリイミド」P.340〜341 2002年 エヌ・ティ−・エス社刊)
その他に、本発明のポリイミド前駆体に感光性部位を導入して、ポリイミド前駆体それ自体に感光性を付与しても良い。
本発明のポリイミド前駆体は、440nm以下の波長を有する電磁波の照射によって、ポリイミド前駆体それ自体が硬化するか、又は、ポリイミド前駆体それ自体の溶解性を変化させる作用を発現するか、或いは、440nm以下の波長を有する電磁波に吸収を有する化合物の作用によって、ポリイミド前駆体それ自体が硬化するか、又は、ポリイミド前駆体それ自体の溶解性を変化させる作用を発現する部位を、分子内に有していても良い。
このような部位としては、エチレン性不飽和基、グリシジル基、オキセタニル基等が例示される。
或いは、電磁波の吸収によって酸、塩基を発生させる感光性成分或いは、電磁波の吸収によって他の作用を発現する感光性成分を加え、本発明のポリイミド前駆体には、これらの感光性成分の作用により反応する間接的な感光性部位を導入することにより、樹脂組成物を調製しても良い。
すなわち、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記ポリイミド前駆体が、その分子内に440nm以下の波長を有する放射線の照射によって、ポリイミド前駆体樹脂組成物を硬化させるか、ポリイミド前駆体樹脂組成物の溶解性を変化させる感光性部位を有するポリイミド前駆体であるか、及び/又は、該感光性部位を有する感光性成分をさらに含有するものであっても良い。
光によって酸を発生させる化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジドあるいは1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する感光性ジアゾキノン化合物があり、米国特許明細書第2,772,972号、第2,797,213号、第3,669,658号に提案されている。例えば、フェノ−ル化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステルとして結合したもの、アミノ化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がアミドとして結合したものなどが挙げられ、上記ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸又は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸が挙げられる。
具体的には、例えば、以下のものを例示できる。
Figure 0005282357
このような感光性ジアゾキノン化合物を用いる場合の配合量は、上記ポリイミド前駆体100重量部に対して0.5〜50重量部、更に1〜40重量部であることが好ましい。
0.5重量部を下回ると良好なパタ−ンが得られず、40重量部を越えると得られたパタ−ン又は加熱処理を加えたものの膜物性が低下する場合がある。具体的には、膜強度や耐熱性、柔軟性が低下する場合が多い。さらには、加熱処理後の膜厚の減少も顕著となる。
また、トリアジンやその誘導体、スルホン酸オキシムエステル化合物、スルホン酸ヨ−ドニウム塩、スルホン酸スルフォニウム塩等、公知の光酸発生剤を用いることができる。
光によって塩基を発生させる化合物としては、例えば2,6−ジメチル−3,5−ジシアノ−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンなどが例示できる。これらは、活性光線に曝されると分子構造が分子内転移を経てピリジン骨格を有する構造に変化して塩基性を呈するようになり、その後の150℃以上での加熱処理によって、ポリイミド前駆体のイミド化が進行し、溶解性が低下し、良好なネガ型パタ−ン形成ができる。
本発明に係る樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カ−ボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラ−、繊維等がある。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、式(1)で表されるポリイミド前駆体を、樹脂組成物の固形分全体に対し、通常、5〜99.9重量%の範囲内で含有させる。また、その他の任意成分の配合割合は、ポリイミド前駆体樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜95重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、95重量%を越えると、樹脂組成物の特性が最終生成物に反映されにくい。なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の固形分とは溶剤以外の全成分であり、液状のモノマ−成分も固形分に含まれる。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、パタ−ン形成材料(レジスト)、コ−ティング材、塗料、印刷インキ、接着剤、充填剤、半導体素子、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等、樹脂材料が用いられる公知の全ての分野・製品に利用できる。
特に本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、最終的に得られるポリイミドが耐熱性、寸法安定性、絶縁性等のポリイミド本来の特性を備えているにもかかわらず、吸収波長が短波長化していることから高感度であり、従来用いることができなかった短い波長の電磁波の適用が可能になる為、より微細なパタ−ンを形成できる。
(実施例1)
4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル 2.00g(10mmol)を100mlの3つ口フラスコに投入し、32mlの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ窒素気流下、氷浴で冷却しながら撹拌した。そこへ、少しずつ30分おきに、10等分した下記の構造を有する酸二無水物(酸二無水物1)の 6.11g(10mmol)を添加し、添加終了後、氷浴中で5時間撹拌し、その溶液を、脱水されたジエチルエ−テルによって再沈殿し、その沈殿物を室温で減圧下、17時間乾燥し、白色固体を8.07g(前駆体1)を得た。
Figure 0005282357
[熱物性評価]
前駆体1の20wt%NMP溶液をガラス上にスピンコ−トし、100℃10分で乾燥させた後、窒素雰囲気下、室温から300℃まで10℃/分で昇温し、その後300℃で1時間保持し、ポリイミドフィルム1を得た。(厚み15±1.5μm)
(動的粘弾性評価)
上記のフィルムを、粘弾性測定装置Solid Analyzer RSA II(Rheometric Scientific社製)によって、周波数3Hz、昇温速度5℃/minで動的粘弾性測定を行い、tanδからガラス転移温度(Tg)を求めた。その結果、ガラス転移温度は275℃であった。

Claims (19)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体。
    Figure 0005282357
    (式中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、1価の有機基であるか、又は、R〜Rのいずれか1つと、R〜R16のいずれかの1つが、一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、芳香族基であるか、或いは、R及びRのいずれかの1つが、R〜R16のいずれかの1つと一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。また、R及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノ−ル基、アルコキシ基、ニトロ基、アセトキシ基、スルホン基、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、芳香族基であるか、或いは、R及びR13のいずれかの1つが、R〜Rのいずれか1つと一体となって2つの芳香族環を結合する連結基Xである。連結基Xは、直接結合又は2価の有機基である。R17、R18はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基である。R19、R20はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、Yは、2価の有機基である。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
  2. 前記式(1)におけるXが、直接結合、または、芳香族環を有する2価の有機基である、請求項1に記載のポリイミド前駆体。
  3. 下記式(2)で表される繰り返し単位をさらに有する、請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体。
    Figure 0005282357
    (式中、R21、R22はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R23、R24はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、Lは4価の有機基であり、Mは2価の有機基である。同一分子内に存在する繰り返し単位間において同一符号で表される基同士は異なる原子又は構造であっても良い。)
  4. 前記式(1)で表される繰り返し単位の合計量が、前記ポリイミド前駆体の高分子骨格を構成する繰り返し単位の50モル%以上を占める、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  5. 少なくとも436nm,405nm、365nm、248nm、193nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時に20%以上である、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  6. イミド化後の400nm〜800nmの間の電磁波の透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時に、各波長において85%以上である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  7. イミド化後のガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  8. イミド化後の線熱膨張係数が70ppm以下であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  9. 実質的に水を含むN−メチルピロリドンを溶媒に用いた0.5重量%溶液を23℃で25時間保存した後の、ゲル浸透クロマトグラフィ−によるポリスチレン換算の重量平均分子量の変化率が20%以下である、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  10. 全芳香族ポリイミド前駆体の繰り返し単位である、請求項1乃至9のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  11. パタ−ン形成材料として用いられることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載されたポリイミド前駆体。
  12. 440nm以下の波長を有する電磁波の照射によって、ポリイミド前駆体それ自体が硬化するか、又は、ポリイミド前駆体それ自体の溶解性を変化させる作用を発現するか、或いは、440nm以下の波長を有する電磁波に吸収を有する化合物の作用によって、ポリイミド前駆体それ自体が硬化するか、又は、ポリイミド前駆体それ自体の溶解性を変化させる作用を発現する部位を、分子内に有する、請求項1乃至11のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  13. 前記請求項1乃至12のいずれかに記載されたポリイミド前駆体を含有するポリイミド前駆体樹脂組成物。
  14. 前記ポリイミド前駆体が、その分子内に440nm以下の波長を有する放射線の照射によって、ポリイミド前駆体樹脂組成物を硬化させるか、ポリイミド前駆体樹脂組成物の溶解性を変化させる感光性部位を有するポリイミド前駆体であるか、及び/又は、該感光性部位を有する感光性成分をさらに含有する、請求項13に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  15. パタ−ン形成材料として用いられることを特徴とする、請求項13又は14に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  16. 前記請求項1乃至12のいずれかに記載されたポリイミド前駆体を反応させて得られたポリイミド。
  17. パタ−ン形成材料として用いられることを特徴とする、請求項16に記載のポリイミド。
  18. 前記請求項13又は14に記載されたポリイミド前駆体樹脂組成物を反応させて得られたポリイミド樹脂組成物。
  19. パタ−ン形成材料として用いられることを特徴とする、請求項18に記載のポリイミド樹脂組成物。
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