以下、本発明に係る照明光学系とそれを用いた画像投影装置の実施の形態等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
《第1の実施の形態(図1〜図3,図16,図17)》
図1(A)に、第1の実施の形態に係る照明光学系IL1を備えた画像投影装置の主要な光学配置を上面側から示す。この画像投影装置は、表示素子10と、その画像表示面10aを照明するための照明光学系IL1と、画像表示面10aに表示される画像をスクリーン(不図示)に対して拡大投影するための投影光学系POと、を備えている。照明光学系IL1は、レーザーアレイ光源1R,1G,1B;反射ミラー3R,3G,3B;ダイクロイックミラー4R,4G;凹レンズ7a;ロッドインテグレータ8;リレー光学系9等で構成されており、ロッドインテグレータ8よりも後の光学構成、つまり、リレー光学系9,表示素子10,TIR(Total Internal Reflection)プリズム11,及び投影レンズ12は、放電ランプを用いた一般的な画像投影装置と同様の構成になっている。
レーザーアレイ光源1Rからは赤色(R)の照明光が出射され、レーザーアレイ光源1Gからは緑色(G)の照明光が出射され、レーザーアレイ光源1Bからは青色(B)の照明光が出射される。つまり、3原色R,G,Bの照明光をそれぞれ出射する3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bが順次点滅し、表示素子10が照明光の色に応じた画像を画像表示面10aに表示することにより、カラー画像の表示が行われる。
各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bの光源配列は、いずれも扁平になっている(例えば1列又は2列×10数列)。このため、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される照明光は、いずれも扁平な光束断面を有している。そして、3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bは、各照明光の光束断面の長尺方向が略一直線状になるように配列されており、3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bには共通のヒートシンク2が取り付けられている。図1(C)に、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bに取り付けられた状態のヒートシンク2を側面側(つまり図1(A)における矢印D2側)から示す。
図1(A)に示すように、ヒートシンク2の側面側には冷却ファン6が配置されており、冷却ファン6からヒートシンク2に風6aが送られて、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bが冷却される構成になっている。図1(C)から分かるように、ヒートシンク2には複数のフィン2aが形成されている。冷却ファン6からの風6aは、3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bの配列方向に沿って流れるように、フィン2aによってガイドされる。この冷却構成は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bを一直線状に配列することによって採用可能となる。つまり、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bのレイアウトを一直線状にすることにより、共通の冷却機構を使用することが可能となり、冷却箇所も一箇所で済み、非常に効率良く冷却することが可能となる。特に半導体レーザーやLED(light emitting diode)等の光源を扱う場合には、その冷却が発光量にも影響を及ぼすため、照明光学系において上記レイアウトは重要なポイントとなる。
また図1(A)に示すように、R,G,Bの各レーザーアレイ駆動を行うための端子5R,5G,5Bは、同一平面・同一方向に配置されており、制御基板(不図示)との接続が行い易いようになっている。半導体レーザーやLED等の光源を扱う場合には、大きな電流を流すことになるため、効率,安全性等の観点からも、上記レイアウトでレーザーアレイ光源1R,1G,1Bを配列することは重要である。
レーザーアレイ光源1Rから出射したRの照明光は、反射ミラー3Rで反射された後、ダイクロイックミラー4Rで反射される。ダイクロイックミラー4RはRの照明光を反射し、G,Bの照明光を透過するので、Rの照明光はダイクロイックミラー4Rで反射されることにより、G,Bの照明光と同一の光軸に光路合成される。光路合成後のRの照明光は、凹レンズ7aに入射して発散される。レーザーアレイ光源1Gから出射したGの照明光は、反射ミラー3Gで反射された後、ダイクロイックミラー4Gで反射される。ダイクロイックミラー4GはGの照明光を反射し、Bの照明光を透過するので、Gの照明光はダイクロイックミラー4Gで反射されることにより、Bの照明光と同一の光軸に光路合成される。光路合成後のGの照明光は、ダイクロイックミラー4Rを透過し、凹レンズ7aに入射して発散される。レーザーアレイ光源1Bから出射したBの照明光は、反射ミラー3Bで反射された後、ダイクロイックミラー4G,4Rを順に透過することにより、R,Gの照明光と同一の光軸に光路合成される。光路合成後のBの照明光は、凹レンズ7aに入射して発散される。
上記のように、3枚の反射ミラー3R,3G,3Bと2種類のダイクロイックミラー4R,4Gによって、R,G,Bの各照明光が同一の光路に合成される。この光路合成(つまり色合成)により、R,G,Bの各照明光は、同軸になるとともに各発光面からロッドインテグレータ8までの光路長が互いに等しくなる。その結果、光路合成後の同一面における光束断面が略等しくなる。これについては後で詳しく説明する。
光路合成後のR,G,Bの各照明光は、凹レンズ7aで発散された後、ロッドインテグレータ8に入射する。ロッドインテグレータ8は、4枚の平面ミラーを貼り合わせて成る中空ロッド方式の光強度均一化手段である。入射端面から入射してきた照明光は、ロッドインテグレータ8の側面(すなわち内壁面)で何度も繰り返し反射されることによりミキシングされ、照明光の空間的なエネルギー分布が均一化されて出射端面から出射する。ロッドインテグレータ8の入射端面と出射端面の形状は、表示素子10の画像表示面10aと略相似の四角形になっており、また、ロッドインテグレータ8の出射端面は表示素子10の画像表示面10aに対して共役になっている。したがって、上記ミキシング効果により出射端面での輝度分布が均一化されることにより、表示素子10は効率良く均一に照明されることになる。
なお、ロッドインテグレータ8は中空ロッドに限らず、四角柱形状のガラス体から成るガラスロッドでもよい。また、表示素子10の画像表示面10aの形状と適合するならば、その側面についても4面に限らない。つまり、断面形状は長方形等の四辺形に限らない。したがって、用いるロッドインテグレータ8としては、複数枚の反射ミラーを組み合わせて成る中空筒体、多角柱形状のガラス体等が挙げられる。
前述したように、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される照明光は、いずれも扁平な光束断面を有している。主要な光学配置を上面側から示している図1(A)では、凹レンズ7aとロッドインテグレータ8は光束幅の大きい方から見た状態で示されている。凹レンズ7aとロッドインテグレータ8を図1(A)における矢印D1側、つまり光束幅の小さい方から見た状態を図1(B)に示す。この照明光学系IL1では、図1(A),(B)から分かるように、凹レンズ7aで光束Pに角度をつけることによりロッドインテグレータ8内で反射しやすくしている。このように、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからの照明光が凹レンズ7aで発散する(あるいは後述する凸レンズ7b(図4,図6,図9)で集光する)構成にすれば、ロッドインテグレータ8に対してより角度を持って入射すること(つまり、入射端面に対する入射角度が大きいこと)になるため、ロッドインテグレータ8内での反射回数が多くなり、均一な照度分布がより得やすくなる。
しかし、照明光の光束断面は扁平な形状をしているため、図16に示すように、光束幅S1と光束幅S2との差によって光束の屈折角度U1,U2は異なってしまう。つまり、光束幅の大きい方S1に比べると、光束幅の小さい方S2ではロッドインテグレータ8に対してあまり角度がつかなくなる。このため、ロッドインテグレータ8内では、その方向の反射回数が少なくなり、均一な照度分布や等方的なNA分布が得にくくなる。
この照明光学系IL1では上記問題点を解消するため、ロッドインテグレータ8へ照明光が入射する際、その入射方向に対し垂直な断面において、照明光の光束断面の長尺方向と、ロッドインテグレータ8の断面形状の長辺方向と、が平行でも垂直でもない所定の角度(この照明光学系IL1では45°)を成すようにしている。図2(A)に、照明光の光束Pの断面とロッドインテグレータ8の断面との関係を示す。ロッドインテグレータ8は、その断面形状の長辺方向が光束Pの断面の長尺方向に対して角度α=45°を成すように配置されている。光束Pの断面形状は、光束Pがロッドインテグレータ8に入射するときのNA分布とほぼ一致するので、断面が扁平な光束Pを角度α=45°で入射させた場合、図2(B)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=2α=90°を成す2方向となった状態で、光束Pがロッドインテグレータ8から出射することになる。つまり、扁平なNA方向をもう1方向増やすことができ、それによって、扁平なNA分布をより等方的な分布に変換することができるのである。
この照明光学系IL1の構成によると、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bを備え、かつ、コンパクトな構成でありながら、等方的なNA分布を有する照明光束が得られるので、高い照明効率と高い解像力を保持しつつ、均一な照度分布を得ることができる。しかも、扁平な光束断面の照明光を上記のように所定の角度を持ってロッドインテグレータ8に入射させると、ロッドインテグレータ8の断面形状の短辺方向の反射面でも容易に反射させることができるため、均一な照度分布がより得やすくなる。したがって、この照明光学系IL1を画像投影装置が備えることにより、コンパクト化,低コスト化,高性能化,高機能化等に大きく寄与することができる。
図2(A)に示すように、ロッドインテグレータ8へ照明光束Pが入射する際、その入射方向に対し垂直な断面において、照明光束Pの断面の長尺方向と、ロッドインテグレータ8の断面形状の長辺方向と、が角度α=45°又は略45°を成す構成にすると、NAの大きい方向が直交する結果、最も等方的なNA分布を達成することができる。ただし、NAの等方性を増すために有効な角度αは45°又は略45°に限らない。実際的には、角度α=20°〜70°を成す構成であれば、等方的なNA分布への変換をより効果的に行うことができる。
例えば図3(A)に示すように、ロッドインテグレータ8へ照明光束Pが入射する際、その入射方向に対し垂直な断面において、照明光束Pの断面の長尺方向と、ロッドインテグレータ8の断面形状の長辺方向と、が角度α=30°を成すように配置してもよい。断面が扁平な光束Pを角度α=30°を持って入射させた場合、図3(B)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=2α=60°を成す2方向となった状態で、光束Pがロッドインテグレータ8から出射することになるため、扁平なNA分布はより等方的な分布へと変換される。このように、扁平なNA分布を有する光束Pをロッドインテグレータ8に対して所定角度α傾けて入射させると、その傾き度合いに応じてNA分布の扁平度合いを改善することができる。
この実施の形態や後述する他の実施の形態では、ロッドインテグレータの断面形状の長辺方向に対して、扁平な光束断面の長尺方向が成す角度を規定しているが(例えば、平行でも垂直でもない所定の角度、あるいはδ=22.5°又は45°等である。)、長辺方向に対して成す角度に限らず、四辺形の辺方向に対して平行でも垂直でもない所定の角度であれば、扁平なNA分布をより等方的な分布に変換することができる。
この照明光学系IL1では、照明光束Pの断面の長尺方向の最大NAの光線が、ロッドインテグレータ8の内面を構成するすべての面でそれぞれ2回以上反射するように構成されている。照明光束Pの断面の長尺方向の最大NAの光線が、ロッドインテグレータ8の内面を構成するすべての面でそれぞれ2回以上(つまり4面で8回以上)反射するように構成すれば、2方向のそれぞれで5つ以上(つまりNAの小さい方向でも5つ以上)の2次光源による重ね合わせが可能となる。したがって、均一な照度分布を効果的に得ることができる。
ところで、レーザー光源のように点光源に近い光源から、図17に示すように、同じ微小角度Δの発散角を持って発光した光束は、その光路長T1,T2の差がそのまま光学部品(ここでは凹レンズ7a)での光束幅の差になる。このため、R,G,Bの各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからの光路長T1,T2が異なれば、凹レンズ7aでの光束幅の差異の比率が比較的大きくなり、凹レンズ7aで色ごとの発散角度V1,V2に大きな差異が発生する。したがって、色ごとにNAの差異が生じて色ムラが生じることになる。図1に示す照明光学系IL1では、光路合成されたR,G,Bの3つの光束が同じ発散度合いでロッドインテグレータ8に入射するように光学配置されているため、上記のような色ムラが生じる危険性は排除される。そして、色ムラの発生が抑えられることにより、各色光で略等しい均一な照度分布での照明をより確実に達成することが可能となる。また、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからロッドインテグレータ8までの光路長が等しい光学配置を採用することにより、色ムラの発生防止をより簡単な構成で行うことが可能となる。
図1(A)に示すように、ロッドインテグレータ8から出射した照明光は、照明用のリレー光学系9を通ってTIRプリズム11に入射する。TIRプリズム11に入射した照明光は、TIRプリズム11のエアギャップ面11aで全反射した後、表示素子10の画像表示面10aを均一に照明する。このときリレー光学系9は、照明光をリレーしてロッドインテグレータ8の出射端面を表示素子10の画像表示面10a上で結像させる。つまり、表示素子10の画像表示面10a上にはロッドインテグレータ8の出射端面の像が形成されることになる。
表示素子10の画像表示面10aでは、照明光の強度変調により2次元画像が形成される。ここでは、表示素子10としてデジタル・マイクロミラー・デバイス(digital micromirror device)を想定している。ただし、使用される表示素子10はこれに限らず、投影光学系POに適した他の非発光・反射型(又は透過型)の表示素子(例えば液晶表示素子)を用いても構わない。表示素子10としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合には、それに入射した光は、ON/OFF状態(例えば±12°の傾き状態)の各マイクロミラーで反射されることにより空間的に変調される。その際、ON状態のマイクロミラーで反射した光のみが、TIRプリズム11のエアギャップ面11aを全反射無しに透過し、投影レンズ12に入射してスクリーン上に投射される。一方、OFF状態のマイクロミラーで反射した光は、TIRプリズム11の照明光の進入側とは反対側に大きく偏向されるため、投影レンズ12には入射しない。このように、投影光学系POを構成する投影レンズ12のパワーにより、画像表示面10aの表示画像がスクリーン上に拡大投影される。
《第2の実施の形態(図4,図5)》
図4に、第2の実施の形態に係る照明光学系IL2の要部を拡大して示す。図4は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからロッドインテグレータ8までの部分を、扁平な照明光束Pの光束幅の小さい方から見た状態で示している。この照明光学系IL2の特徴は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからの照明光を集光させてロッドインテグレータ8に入射させる凸レンズ7bを偏心状態で有する点にあり、その凸レンズ7bを前記凹レンズ7aの代わりに有するほかは、前記第1の実施の形態と同様の構成になっている。
光路合成後の照明光束Pは、凸レンズ7bで集光されてロッドインテグレータ8に入射する。凹レンズ7aの代わりに凸レンズ7bを用いても、前記第1の実施の形態と同様、照明光束Pに角度をつけることができる。したがって、照明光束Pは凸レンズ7bでの集光によりロッドインテグレータ8内で反射しやすくなり、ロッドインテグレータ8内での反射回数が多くなることによって均一な照度分布が得やすくなる。
照明光束Pの中心軸PXと凸レンズ7bの中心軸AXとが相対的に偏心しているため、照明光束Pは斜め方向に曲がって、ロッドインテグレータ8の入射端面に対し傾いて入射することになる。図5(A)に、そのときの照明光束Pの断面とロッドインテグレータ8の断面との関係を示す。凸レンズ7bの偏心方向が照明光束Pの断面の短尺方向(つまり光束幅の小さい方向)に設定されているため、ロッドインテグレータ8に入射する光束PはNAの小さい方向に傾く。ロッドインテグレータ8は、その断面形状の長辺方向が光束Pの断面の長尺方向に対して角度α=45°を成すように配置されているので、図5(B)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=2α=90°を成す2方向となり、かつ、凸レンズ7bで斜め偏向方向にNAが大きくなるため、光束PはNA分布の扁平度合いがより一層改善された状態でロッドインテグレータ8から出射することになる。
また、偏心のない状態でレンズを使うとNAの小さい方向には角度がつきにくいが、この実施の形態ではNAの小さい方向へのレンズ偏心によりロッドインテグレータ8への入射角度が大きく設定されているため、NAの小さい方向にロッドインテグレータ8への入射光が傾いている分、その方向でのロッドインテグレータ8の内面での反射回数が増える。したがって、均一な照度分布がより得やすくなる。
《第3の実施の形態(図6〜図8)》
図6(A)に、第3の実施の形態に係る照明光学系IL3を備えた画像投影装置の主要な光学配置を上面側から示す。この照明光学系IL2の主たる特徴は、ロッドインテグレータ8が、レーザーアレイ光源1R,1G,1B側から順に、第1ロッドインテグレータ8aと第2ロッドインテグレータ8bとの2つの部分から成る点にある。また、凸レンズ7bを前記凹レンズ7aの代わりに有し、反射ミラー3R,3Gをそれぞれ2枚有し、冷却ポンプ13を前記冷却ファン6の代わりに有し、ヒートシンク2には液冷パイプ2bがフィン2aの代わりに取り付けられているほかは、前記第1の実施の形態(図1)と同様の構成になっている。
レーザーアレイ光源1Rからは赤色(R)の照明光が出射され、レーザーアレイ光源1Gからは緑色(G)の照明光が出射され、レーザーアレイ光源1Bからは青色(B)の照明光が出射される。つまり、3原色R,G,Bの照明光をそれぞれ出射する3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bが順次点滅し、表示素子10が照明光の色に応じた画像を画像表示面10aに表示することにより、カラー画像の表示が行われる。
各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bの光源配列は、いずれも扁平になっている(例えば1列又は2列×10数列)。このため、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される照明光は、いずれも扁平な光束断面を有している。そして、3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bは、各照明光の光束断面の長尺方向が略一直線状になるように配列されており、3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bには共通のヒートシンク2が取り付けられている。図6(B)に、冷却ポンプ13,液冷パイプ2b及びヒートシンク2を底面側(つまりレーザーアレイ光源1R,1G,1Bが設けられている側の反対側)から示す。
図6(A)に示すように、ヒートシンク2の側面側には冷却ポンプ13が配置されており、冷却ポンプ13から液冷パイプ2bに冷却液を流してヒートシンク2から熱を奪うことにより、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bを冷却する構成になっている。図6(B)から分かるように、3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bの配列方向に沿って冷却液が流れるように、液冷パイプ2bが配置されている。この冷却構成は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bを一直線状に配列することによって採用可能となる。つまり、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bのレイアウトを一直線状にすることにより、共通の冷却機構を使用することが可能となり、冷却箇所も一箇所で済み、非常に効率良く冷却することが可能となる。特に半導体レーザーやLED(light emitting diode)等の光源を扱う場合には、その冷却が発光量にも影響を及ぼすため、照明光学系において上記レイアウトは重要なポイントとなる。
また図6(A)に示すように、R,G,Bの各レーザーアレイ駆動を行うための端子5R,5G,5Bは、同一平面・同一方向に配置されており、制御基板(不図示)との接続が行い易いようになっている。半導体レーザーやLED等の光源を扱う場合には、大きな電流を流すことになるため、効率,安全性等の観点からも、上記レイアウトでレーザーアレイ光源1R,1G,1Bを配列することは重要である。
レーザーアレイ光源1Rから出射したRの照明光は、2枚の反射ミラー3Rで反射された後、ダイクロイックミラー4Rで反射される。ダイクロイックミラー4RはRの照明光を反射し、G,Bの照明光を透過するので、Rの照明光はダイクロイックミラー4Rで反射されることにより、G,Bの照明光と同一の光軸に光路合成される。光路合成後のRの照明光は、凸レンズ7bに入射して集光される。レーザーアレイ光源1Gから出射したGの照明光は、2枚の反射ミラー3Gで反射された後、ダイクロイックミラー4Gで反射される。ダイクロイックミラー4GはGの照明光を反射し、Bの照明光を透過するので、Gの照明光はダイクロイックミラー4Gで反射されることにより、Bの照明光と同一の光軸に光路合成される。光路合成後のGの照明光は、ダイクロイックミラー4Rを透過し、凸レンズ7bに入射して集光される。レーザーアレイ光源1Bから出射したBの照明光は、反射ミラー3Bで反射された後、ダイクロイックミラー4G,4Rを順に透過することにより、R,Gの照明光と同一の光軸に光路合成される。光路合成後のBの照明光は、凸レンズ7bに入射して集光される。
上記のように、5枚の反射ミラー3R,3G,3Bと2種類のダイクロイックミラー4R,4Gによって、R,G,Bの各照明光が同一の光路に合成される。この光路合成(つまり色合成)により、R,G,Bの各照明光は、同軸になるとともに各発光面からロッドインテグレータ8までの光路長が互いに等しくなる。その結果、光路合成後の同一面における光束断面が略等しくなる。これについては前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。つまり、レーザー光源のように点光源に近い光源から同じ微小角度の発散角を持って発光した光束は、その光路長の差がそのまま光学部品での光束幅の差になる。R,G,Bの各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからの光路長が異なれば、凸レンズ7bでの光束幅の差異の比率が比較的大きくなり、凸レンズ7bで色ごとの発散角度に大きな差異が発生する。このため、色ごとにNAの差異が生じて色ムラが生じることになる。図6に示す照明光学系IL3では、光路合成されたR,G,Bの3つの光束が同じ発散度合いでロッドインテグレータ8に入射するように光学配置されているため、上記のような色ムラが生じる危険性は排除される。そして、色ムラの発生が抑えられることにより、各色光で略等しい均一な照度分布での照明をより確実に達成することが可能となる。また、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからロッドインテグレータ8までの光路長が等しい光学配置を採用することにより、色ムラの発生防止をより簡単な構成で行うことが可能となる。
光路合成後のR,G,Bの各照明光は、凸レンズ7bで集光された後、第1ロッドインテグレータ8aと第2ロッドインテグレータ8bとの2つの部分から成るロッドインテグレータ8に入射する。第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bは、それぞれ4枚の平面ミラーを貼り合わせて成る中空ロッド方式の光強度均一化手段であり、各入射端面から入射してきた照明光は、第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bの側面(すなわち内壁面)でそれぞれ何度も繰り返し反射されることによりミキシングされ、照明光の空間的なエネルギー分布が均一化されて各出射端面から出射する。
第2ロッドインテグレータ8bの入射端面と出射端面の形状は、表示素子10の画像表示面10aと略相似の四角形になっており、第2ロッドインテグレータ8の出射端面は表示素子10の画像表示面10aに対して共役になっている。したがって、上記ミキシング効果により出射端面での輝度分布が均一化されることにより、表示素子10は効率良く均一に照明されることになる。一方、第1ロッドインテグレータ8aの断面形状は正方形になっている。第1ロッドインテグレータ8aの出射端面は表示素子10の画像表示面10aに対して共役になっていないので、第1ロッドインテグレータ8aの出射端面は表示素子10の画像表示面10aと相似形である必要はない。
なお、第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bは中空ロッドに限らず、四角柱形状のガラス体から成るガラスロッドでもよい。また、第1ロッドインテグレータ8aの側面は4面に限らず、第2ロッドインテグレータ8bの側面についても表示素子10の画像表示面10aの形状と適合するならば4面に限らない。つまり、第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bの断面形状は長方形等の四辺形に限らない。したがって、用いる第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bとしては、複数枚の反射ミラーを組み合わせて成る中空筒体、多角柱形状のガラス体等が挙げられる。
この照明光学系IL3では、照明光束Pの断面の長尺方向の最大NAの光線が、ロッドインテグレータ8の内面を構成するすべての面でそれぞれ2回以上反射するように構成されている。照明光束Pの断面の長尺方向の最大NAの光線が、ロッドインテグレータ8の内面を構成するすべての面でそれぞれ2回以上(つまり4面で8回以上)反射するように構成すれば、2方向のそれぞれで5つ以上(つまりNAの小さい方向でも5つ以上)の2次光源による重ね合わせが可能となる。したがって、均一な照度分布を効果的に得ることができる。なお、この照明光学系IL3では、ロッドインテグレータ8が第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bに2分割されているが、ロッドインテグレータ8全体として照明光が均質分布になるだけの反射回数が上記のように確保されれば、3分割又は4分割以上に分割数を増やしてもよい。
前述したように、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される照明光は、いずれも扁平な光束断面を有している。この照明光学系IL3では、図6(A)から分かるように、凸レンズ7bで光束Pに角度をつけることによりロッドインテグレータ8内で反射しやすくしている。このように、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからの照明光が凸レンズ7bで集光する構成にすれば、ロッドインテグレータ8に対してより角度を持って入射すること(つまり、入射端面に対する入射角度が大きいこと)になるため、ロッドインテグレータ8内での反射回数が多くなり、均一な照度分布がより得やすくなる。
しかし、照明光の光束断面は扁平な形状をしているため、前述したように(図16)、光束幅S1と光束幅S2との差によって光束の屈折角度U1,U2は異なってしまう。つまり、光束幅の大きい方S1に比べると、光束幅の小さい方S2ではロッドインテグレータ8に対してあまり角度がつかなくなる。このため、ロッドインテグレータ8内では、その方向の反射回数が少なくなり、均一な照度分布や等方的なNA分布が得にくくなる。
この照明光学系IL3では上記問題点を解消するため、第1ロッドインテグレータ8aへ照明光が入射する際、その入射方向に対し垂直な断面において、照明光の光束断面の長尺方向と、第1ロッドインテグレータ8aの断面形状の長辺方向と、が平行でも垂直でもない所定の角度(この照明光学系IL3では45°)を成し、第2ロッドインテグレータ8bへの照明光の入射方向に対し垂直な断面において、第1ロッドインテグレータ8aの断面形状の長辺方向と、第2ロッドインテグレータ8bの断面形状の長辺方向と、が平行でも垂直でもない所定の角度(この照明光学系IL3では22.5°)を成すようにしている。
図7(A)に、照明光の光束Pの断面と第1ロッドインテグレータ8aの断面との関係を示す。ロッドインテグレータ8aは、その断面形状の長辺方向(この実施の形態では断面形状が正方形なので一方の辺の方向である。)が光束Pの断面の長尺方向に対して角度α=45°を成すように配置されている。光束Pの断面形状は、光束Pがロッドインテグレータ8に入射するときのNA分布とほぼ一致するので、断面が扁平な光束Pを角度α=45°で入射させた場合、図7(B)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=2α=90°を成す2方向となった状態で、光束Pが第1ロッドインテグレータ8aから出射することになる。したがって、扁平なNA方向がもう1方向増えた分だけNA分布が等方的なものに変換され、第1ロッドインテグレータ8aから出射した光束Pは、第2ロッドインテグレータ8bに入射する。
図7(C)に、第1ロッドインテグレータ8aから出射した2つの照明光束Pの断面と、第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bの断面と、の関係を示す。第2ロッドインテグレータ8bは、その断面形状の長辺方向が第1ロッドインテグレータ8aの断面形状の一辺の方向に対して角度β=22.5°を成すように配置されている。2つの光束Pの断面形状は、2つの光束Pが第2ロッドインテグレータ8bに入射するときのNA分布とほぼ一致するので、断面が扁平な2つの光束Pが第2ロッドインテグレータ8bに入射すると、図7(D)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=45°を成す4方向となった状態で、4種類の光束Pが第2ロッドインテグレータ8bから出射することになる。したがって、扁平なNA方向が更に2方向増えた分だけNA分布が等方的なものに変換されて、光束PはNA分布の扁平度合いがより一層改善された状態で第2ロッドインテグレータ8bから出射することになる。
上記のように、ロッドインテグレータ8は第1ロッドインテグレータ8aと第2ロッドインテグレータ8bとの2つの部分から成っているため、第1ロッドインテグレータ8aで扁平なNA方向を1つ増やし、第2ロッドインテグレータ8bで扁平なNA方向を更に2つ増やすことができる。したがって、NA分布をより等方的にすることができる。また、デジタル・マイクロミラー・デバイスを使ったプロジェクターの場合、通常、ロッドインテグレータ断面の長辺方向に45°の角度を持って光束を入射させると、NAの大きい方向は投影画面の斜め45°方向になる。しかし、画素配列は上下・左右方向なので、この方向のNAが相対的に小さくなり、解像力が十分でなくなるおそれがある。ロッドインテグレータを2つの部分に分割することによってその機能をもう1つ追加すれば、上下・左右方向にもNAを大きくすることができる。また、第2ロッドインテグレータ8bに入射する光束が、NAの大きい方向を2つ有しているので、第2ロッドインテグレータ8b内での反射回数が増えて、均一な照度分布がより得やすくなる。
この実施の形態では、第2ロッドインテグレータ8bへの照明光の入射方向に対し垂直な断面において、第2ロッドインテグレータ8bへ入射する光束について、その光束断面の長尺方向と、第2ロッドインテグレータ8bの断面形状の長辺方向と、が平行でも垂直でもない所定の角度を成す構成になっているため、第2ロッドインテグレータ8bによる等方的なNA分布への変換をより確実で効果的に行うことができる。
この実施の形態では、図7に示すように、α=45°,β=22.5°となっているが、図8に示すように、α=22.5°,β=45°としてもよい。図8(A)に示すように、第1ロッドインテグレータ8aへ照明光束Pが入射する際、断面が扁平な光束Pを角度α=22.5°を持って入射させると、図8(B)に示すように、NAの大きな方向が角度θ=2α=45°を成す2方向となった状態で、光束Pが第1ロッドインテグレータ8aから出射して第2ロッドインテグレータ8bへ入射することになる。第2ロッドインテグレータ8bは、図8(C)に示すように、その断面形状の長辺方向が第1ロッドインテグレータ8aの断面形状の一辺の方向に対して角度β=45°を成すように配置されているので、2つの光束Pが第2ロッドインテグレータ8bに入射すると、図8(D)に示すように、NAの大きな方向が角度θ=45°を成す4方向となった状態で、4種類の光束Pが第2ロッドインテグレータ8bから出射することになる。
したがって、図8に示すロッドインテグレータ8の構成によれば、図7に示すロッドインテグレータ8の構成と同様、NA分布が等方的なものに変換されて、光束PはNA分布の扁平度合いがより一層改善された状態で第2ロッドインテグレータ8bから出射することになる。上記のようにα=45°,β=22.5°か、又はα=22.5°,β=45°の構成にすれば、NAの大きい方向が45°ごとの4方向になるため、より等方的なNA分布を達成することができ、また、デジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合には、画素の配列方向の解像力も確保することができる。
図6(A)に示すように、第2ロッドインテグレータ8bから出射した照明光は、照明用のリレー光学系9を通ってTIRプリズム11に入射する。TIRプリズム11に入射した照明光は、TIRプリズム11のエアギャップ面11aで全反射した後、表示素子10の画像表示面10aを均一に照明する。このときリレー光学系9は、照明光をリレーして第2ロッドインテグレータ8bの出射端面を表示素子10の画像表示面10a上で結像させる。つまり、表示素子10の画像表示面10a上には第2ロッドインテグレータ8bの出射端面の像が形成されることになる。
表示素子10の画像表示面10aでは、照明光の強度変調により2次元画像が形成される。ここでは、表示素子10としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを想定している。ただし、使用される表示素子10はこれに限らず、投影光学系POに適した他の非発光・反射型(又は透過型)の表示素子(例えば液晶表示素子)を用いても構わない。表示素子10としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合には、それに入射した光は、ON/OFF状態(例えば±12°の傾き状態)の各マイクロミラーで反射されることにより空間的に変調される。その際、ON状態のマイクロミラーで反射した光のみが、TIRプリズム11のエアギャップ面11aを全反射無しに透過し、投影レンズ12に入射してスクリーン(不図示)上に投射される。一方、OFF状態のマイクロミラーで反射した光は、TIRプリズム11の照明光の進入側とは反対側に大きく偏向されるため、投影レンズ12には入射しない。このように、投影光学系POを構成する投影レンズ12のパワーにより、画像表示面10aの表示画像がスクリーン上に拡大投影される。
《第4の実施の形態(図9,図10)》
図9に、第4の実施の形態に係る照明光学系IL4の要部を拡大して示す。図9は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bからロッドインテグレータ8までの部分を、扁平な照明光束Pの光束幅の小さい方から見た状態で示している。この照明光学系IL4は、前述した照明光学系IL2,IL3双方の特徴を備えている。つまり、第3の実施の形態において凸レンズ7bを偏心状態で有する点(図4)に特徴があり、そのほかは、前記第3の実施の形態と同様の構成になっている。
光路合成後の照明光束Pは、凸レンズ7bで集光されてロッドインテグレータ8に入射する。照明光束Pは凸レンズ7bでの集光によりロッドインテグレータ8内で反射しやすくなるため、ロッドインテグレータ8内での反射回数が多くなることによって均一な照度分布が得やすくなる。また、照明光束Pの中心軸PXと凸レンズ7bの中心軸AXとが相対的に偏心しているため、照明光束Pは斜め方向に曲がって、第1ロッドインテグレータ8aの入射端面に対し傾いて入射することになる。図10(A)に、そのときの照明光束Pの断面と第1ロッドインテグレータ8aの断面との関係を示す。
凸レンズ7bの偏心方向が照明光束Pの断面の短尺方向(つまり光束幅の小さい方向)に設定されているため、第1ロッドインテグレータ8aに入射する光束PはNAの小さい方向に傾く。第1ロッドインテグレータ8aは、その断面形状の一辺の方向が光束Pの断面の長尺方向に対して角度α=45°を成すように配置されているので、図10(B)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=2α=90°を成す2方向となり、かつ、凸レンズ7bで斜め偏向方向にNAが大きくなるため、光束PはNA分布の扁平度合いがより一層改善された状態で第1ロッドインテグレータ8aから出射し、第2ロッドインテグレータ8bに入射する。
図10(C)に、第1ロッドインテグレータ8aから出射した4つの照明光束Pの断面と、第1,第2ロッドインテグレータ8a,8bの断面と、の関係を示す。第2ロッドインテグレータ8bは、その断面形状の長辺方向が第1ロッドインテグレータ8aの断面形状の一辺の方向に対して角度β=22.5°を成すように配置されている。4つの光束Pの断面形状は、4つの光束Pが第2ロッドインテグレータ8bに入射するときのNA分布とほぼ一致するので、断面が扁平な4つの光束Pが第2ロッドインテグレータ8bに入射すると、図10(D)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束Pの断面の長尺方向)が角度θ=45°を成す4方向となった状態で、8種類の光束Pが第2ロッドインテグレータ8bから出射することになる。したがって、扁平なNA方向が更に2方向増えた分だけNA分布が等方的なものに変換されて、光束PはNA分布の扁平度合いが非常に改善された状態で第2ロッドインテグレータ8bから出射することになる。
また、偏心のない状態でレンズを使うとNAの小さい方向には角度がつきにくいが、この実施の形態ではNAの小さい方向へのレンズ偏心によりロッドインテグレータ8への入射角度が大きく設定されているため、NAの小さい方向にロッドインテグレータ8への入射光が傾いている分、その方向でのロッドインテグレータ8の内面での反射回数が増える。したがって、均一な照度分布がより得やすくなる。
《第5の実施の形態(図11〜図13)》
図11に、第5の実施の形態に係る照明光学系IL5の要部を拡大して示す。図11は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射した照明光が前記凹レンズ7a(図1)又は凸レンズ7b(図4,図6,図9)に入射する前までの光学配置を、上面側(A)と側面側(B)から見た状態でそれぞれ示している。この照明光学系IL5は、各々3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bから成る2つの光源セット21,22を有し、合成された2つの光束の進行方向に対し垂直な断面において、2つの光束の断面の長尺方向が平行でない所定の角度(この照明光学系IL5では90°)を成す点に特徴があり、そのほかは前記第1の実施の形態と同様の構成になっている。
各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bの光源配列は、いずれも扁平になっている(例えば1列又は2列×10数列)。このため、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される照明光は、いずれも扁平な光束断面を有している。そして、各光源セット21,22における3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bは、各照明光の光束断面の長尺方向が略一直線状になるように配列されており、2つの光源セット21,22は同一平面に沿って並列に配置されている。また、図11(B)に示すように、2つの光源セット21,22が有する合計6つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bの背面には、共通のヒートシンク2が取り付けられている。このヒートシンク2を用いた冷却は、第1の実施の形態(図1)と同様、冷却ファン6で行われる。
第1の光源セット21は、図11(A)に示すように、紙面に対して垂直な方向に発光し、紙面に対して垂直な面内で光路合成(つまり色合成)が行われる。色合成は第1の実施の形態(図1)と同様に行われ、色合成によってR,G,Bの各照明光が同軸になるとともに各発光面からロッドインテグレータ8までの光路長が互いに等しくなる。色合成された第1の光源セット21からの照明光束P1は、反射ミラー16で偏光ビームスプリッター17の方へと偏向される。一方、第2の光源セット22は、図11(A)に示すように、紙面に対して垂直な方向に発光し、その照明光束P2は長尺の反射ミラー15で紙面に対して平行な面に沿って偏向され、紙面に対して平行な面内で光路合成(つまり色合成)が行われる。色合成は第1の実施の形態(図1)と同様に行われ、色合成によってR,G,Bの各照明光が同軸になるとともに各発光面からロッドインテグレータ8までの光路長が互いに等しくなる。そして、色合成された第2の光源セット22からの照明光束P2は、偏光ビームスプリッター17の方へと進行する。
第1,第2の光源セット21,22でそれぞれ色合成された照明光束P1,P2は、いずれも光束断面の扁平方向に依存した直線偏光である。また、偏光ビームスプリッター17では、各照明光束P1,P2の断面の長尺方向が互いに90°を成す関係にある。したがって、偏光ビームスプリッター17で一方の光束P1を反射させ、他方の光束P2を透過させることにより、照明光束P1,P2を容易に同一光軸に合成することができる。また偏光ビームスプリッター17での偏光合成の前に、波長板等を用いて少なくとも一方の照明光束P1,P2を任意の偏光方向に偏光させる等の処理を施せば、偏光ビームスプリッター17を第1の光源セット21側に配置したり、偏光合成後の進行方向を変えたり、画像投影装置としてのレイアウトを都合に応じて変更したりすることが容易に可能となる。
図12(A)に、同一光軸に偏光合成された照明光束P1,P2の断面形状を示す。図12(A)から分かるように、偏光合成された2つの照明光束P1,P2は、その進行方向に対し垂直な断面において、断面形状の長尺方向が角度γ=90°を成している。そして、そのように光束合成された状態で凹レンズ7a(図1)又は凸レンズ7b(図4,図6,図9)を介し、ロッドインテグレータ8へと入射する。ロッドインテグレータ8以降、投影レンズ12までの構成は第1の実施の形態(図1)と同様である。
図12(B)に、照明光束P1,P2の断面とロッドインテグレータ8の断面との関係を示す。ロッドインテグレータ8は、その断面形状の長辺方向が合成後の2つの照明光束P1,P2の対称軸に対して角度δ=22.5°を成すように配置されている。照明光束P1,P2の断面形状は、照明光束P1,P2がロッドインテグレータ8に入射するときのNA分布とほぼ一致するので、断面が扁平な照明光束P1,P2が角度δ=22.5°でロッドインテグレータ8に入射すると、図12(C)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束P1,P2の断面の長尺方向)が角度θ=2δ=45°を成す4方向となった状態で、4種類の照明光束P1,P2がロッドインテグレータ8から出射することになる。したがって、扁平なNA方向が2方向増えた分だけNA分布が等方的なものに変換されて、照明光束P1,P2はNA分布の扁平度合いがより一層改善された状態でロッドインテグレータ8から出射することになる。
上記のように、照明光学系IL5は同一色のレーザーアレイ光源1R,1G,1Bを2つ有し、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射した照明光が同一方向に進行するように光束P1,P2を合成する構成になっているため、等方的なNA分布への変換をより効果的に行うことができる。このようにレーザーアレイ光源1R,1G,1Bを光源セット21,22として2つ使うことによっても、ロッドインテグレータ8が2つの部分8a,8bから成る第3の実施の形態の場合(図6)と同様、より等方的なNA分布を得ることができる。しかもこの場合、同一色の同時発光により明るさを2倍にすることができるので、この構成を有する照明光学系IL5はシネマ用等の高出力なプロジェクターに最適である。また、光束合成された2つの光束の断面の長尺方向が平行でない所定の角度を成してロッドインテグレータ8に入射するため、ロッドインテグレータ8内での反射回数が増えて、均一な照度分布がより得やすくなる。
また照明光学系IL5では、光束合成部材として偏光ビームスプリッター17を用いているため、光束の合成を効率的に行うことができる。レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される光束はアレイの配列方向に直線偏光しているため、偏光ビームスプリッター17を用いることによって同軸の光束合成を容易かつ効率良く行うことができる。
この実施の形態では、図12に示すように、γ=90°,δ=22.5°となっているが、図13に示すように、γ=45°,δ=45°としてもよい。第2の光源セット22の長尺の反射ミラー15の角度を変えて、色合成方向を図11(A)の紙面に対し45°方向に設定し、波長板で偏光方向を補正すれば、図13(A)に示すような偏光合成も可能である。図13(B)に示すように、ロッドインテグレータ8へ照明光束P1,P2を角度δ=45°を持って入射させると、図13(C)に示すように、NAの大きな方向が角度θ=45°を成す4方向となった状態で、4種類の光束Pがロッドインテグレータ8から出射することになる。
したがって、図13に示すロッドインテグレータ8の構成によれば、図12に示すロッドインテグレータ8の構成と同様、NA分布が等方的なものに変換されて、照明光束P1,P2はNA分布の扁平度合いがより一層改善された状態でロッドインテグレータ8から出射することになる。上記のようにγ=90°,δ=22.5°か、又はγ=45°,δ=45°の構成にすれば、NAの大きい方向が45°ごとの4方向になるため、より等方的なNA分布を達成することができる。また、デジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合には、画素の配列方向の解像力も確保することができる。
《第6の実施の形態(図14,図15)》
図14に、第6の実施の形態に係る照明光学系IL6の要部を拡大して示す。図14は、レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射した照明光が前記凹レンズ7a(図1)又は凸レンズ7b(図4,図6,図9)に入射する前までの光学配置を、上面側(A)と側面側(B)から見た状態でそれぞれ示している。この照明光学系IL6は、各々3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bから成る4つの光源セット21,22,23,24を有し、合成された4つの光束の進行方向に対し垂直な断面において、そのうちの2つの光束が他の2つの光束に対し、断面の長尺方向が平行でない所定の角度(この照明光学系IL6では90°)を成す点に特徴があり、そのほかは前記第1の実施の形態と同様の構成になっている。
各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bの光源配列は、いずれも扁平になっている(例えば1列又は2列×10数列)。このため、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される照明光は、いずれも扁平な光束断面を有している。そして、各光源セット21〜24における3つのレーザーアレイ光源1R,1G,1Bは、各照明光の光束断面の長尺方向が略一直線状になるように配列されている。第1,第2の光源セット21,22は、同一平面に沿って並列に配置されており、図14(B)に示すように、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bの背面に共通のヒートシンク2が取り付けられた状態で、第1の光源ユニット31を構成している。同様に、第3,第4の光源セット23,24は、同一平面に沿って並列に配置されており、図14(B)に示すように、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bの背面に共通のヒートシンク2が取り付けられた状態で、第2の光源ユニット32を構成している。各光源ユニット31,32におけるヒートシンク2を用いた冷却は、第1の実施の形態(図1)と同様、冷却ファン6で行われる。
第1の光源セット21は、図14(A)の紙面に対して垂直な方向(図14(B)の紙面に対して平行な方向)に発光し、その照明光束P1は長尺の反射ミラー15で、図14(A),(B)の紙面に対して平行な面に沿って偏向される。第2の光源セット22も同様であり、図14(A)の紙面に対して垂直な方向(図14(B)の紙面に対して平行な方向)に発光し、その照明光束P2は長尺の反射ミラー15で、図14(A),(B)の紙面に対して平行な面に沿って照明光束P1と同じに方向に偏向される。このとき、図14(B)に示すように、長尺の反射ミラー15の配置高さが異なっているため、照明光束P1,P2は並行して配置されることになる。これらの並行した照明光束P1,P2は、共通の色合成機構により色合成(つまり光路合成)される。色合成は第1の実施の形態(図1)と同様に行われ、色合成によってR,G,Bの各照明光が同軸になるとともに各発光面からロッドインテグレータ8までの光路長が互いに等しくなる。そして、照明光束P1と照明光束P2は、並行して偏光ビームスプリッター17の方へと進行する。ここまでが第1の光源ユニット31の構成である。
第3の光源セット23と第4の光源セット24は、図14(A)の紙面に対して垂直な方向(図14(B)の紙面に対して平行な方向)に発光する。第3の光源セット23からの照明光束P3は、2枚の長尺の反射ミラー15で反射されて、第4の光源セット24からの照明光束P4の近傍を並行するように光路を変更される。これらの並行した照明光束P3,P4は、共通の色合成機構により色合成(つまり光路合成)される。色合成は第1の実施の形態(図1)と同様に行われ、色合成によってR,G,Bの各照明光が同軸になるとともに各発光面からロッドインテグレータ8までの光路長が互いに等しくなる。そして、図14(A)に示すように、照明光束P3と照明光束P4は反射ミラー16で偏光ビームスプリッター17の方へと偏向される。ここまでが第2の光源ユニット32の構成である。
第1の光源ユニット31から出射した照明光束P1,P2と、第2の光源ユニット32から出射した照明光束P3,P4は、それぞれ光束断面の扁平方向に依存した直線偏光である。また、偏光ビームスプリッター17では、照明光束P1,P2と照明光束P3,P4とで光束断面の長尺方向が互いに90°を成す関係にある。したがって、偏光ビームスプリッター17で一方の光束P1,P2を透過させ、他方の光束P3,P4を反射させることにより、照明光束P1〜P4を容易に同一光軸に合成することができる。また、偏光ビームスプリッター17での偏光合成の前に、波長板等を用いて少なくとも1つの照明光束P1〜P4を任意の偏光方向に偏光させる等の処理を施せば、偏光ビームスプリッター17の配置、偏光合成後の進行方向、画像投影装置としてのレイアウト等を都合に応じて容易に変更することが可能となる。
図15(A)に、同一光軸に偏光合成された照明光束P1〜P4の断面形状を示す。図15(A)から分かるように、偏光合成された4つの照明光束P1〜P4は、その進行方向に対し垂直な断面において、断面形状の長尺方向が角度γ=90°を成している。そして、そのように光束合成された状態で凹レンズ7a(図1)又は凸レンズ7b(図4,図6,図9)を介し、ロッドインテグレータ8へと入射する。ロッドインテグレータ8以降、投影レンズ12までの構成は第1の実施の形態(図1)と同様である。
図15(B)に、照明光束P1〜P4の断面とロッドインテグレータ8の断面との関係を示す。ロッドインテグレータ8は、その断面形状の長辺方向が合成後の2つの照明光束P1,P2の対称軸に対して角度δ=22.5°を成すように配置されている。照明光束P1〜P4の断面形状は、照明光束P1〜P4がロッドインテグレータ8に入射するときのNA分布とほぼ一致するので、断面が扁平な照明光束P1〜P4が角度δ=22.5°でロッドインテグレータ8に入射すると、図15(C)に示すように、NAの大きな方向(すなわち光束P1〜P4が断面の長尺方向)が角度θ=2δ=45°を成す4方向となった状態で、4種類の照明光束P1〜P4がロッドインテグレータ8から出射することになる。したがって、扁平なNA方向が2方向増えた分だけNA分布が等方的なものに変換されて、照明光束P1〜P4はNA分布の扁平度合いが非常に改善された状態でロッドインテグレータ8から出射することになる。
上記のように、照明光学系IL6は同一色のレーザーアレイ光源1R,1G,1Bを4つ有し、各レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射した照明光が同一方向に進行するように光束P1〜P4を合成する構成になっているため、等方的なNA分布への変換をより効果的に行うことができる。このようにレーザーアレイ光源1R,1G,1Bを光源セット21〜24として4つ使うことによっても、前記第4の実施の形態(図9)の場合(つまり、ロッドインテグレータ8が2つの部分8a,8bから成り、凸レンズ7bを偏心状態で有する構成)と同様、非常に等方的なNA分布を得ることができる。しかもこの場合、同一色の同時発光により明るさを4倍にすることができるので、この構成を有する照明光学系IL6はシネマ用等の高出力なプロジェクターに最適である。また、光束合成された4つの光束の断面の長尺方向が平行でも垂直でもない所定の角度を成してロッドインテグレータ8に入射するため、ロッドインテグレータ8内での反射回数が増えて、均一な照度分布がより得やすくなる。
また照明光学系IL6では、照明光学系IL5と同様、光束合成部材として偏光ビームスプリッター17を用いているため、光束の合成を効率的に行うことができる。レーザーアレイ光源1R,1G,1Bから出射される光束はアレイの配列方向に直線偏光しているため、偏光ビームスプリッター17を用いることによって同軸の光束合成を容易かつ効率良く行うことができる。また、上記のようにγ=90°,δ=22.5°か、又はγ=45°,δ=45°の構成にすれば、NAの大きい方向が45°ごとの4方向になるため、より等方的なNA分布を達成することができる。また、デジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合には、画素の配列方向の解像力も確保することができる。