JP5281147B2 - 沖合風力タービン用の支持材、その製造プロセス、および設置方法 - Google Patents

Description

発明の詳細な説明

〔発明の目的〕
発明の名称に示したように、本発明は、沖合風力タービン用の支持材、その製造プロセス、および設置方法に関する。該支持材は、基礎構造体およびその上方にスラブを有する。本発明の第一目的は、支持材が海底に載置されており、スラブが海面および波のレベルに留まることにある。

本発明の第二目的は、支持材を形成する基礎構造体が、簡易の滑動式型枠方法によって製造されるものであり、海上の船舶で製造できるという利点をさらに有する。

本発明の第三目的は、基礎構造体の複数の空洞を部分的に充填することによって、支持材が、その製造場所から沖合の設置場所まで曳航するのに十分な安定性をもって浮遊することにある。

本発明の他の目的は、支持材を設置場所まで曳航する間、支持材上に風力タービンの様々な部品を載せて搬送することができることにある。

〔技術分野〕
本明細書は、沖合風力タービン用の支持材、その製造プロセス、および設置方法を開示しており、上記支持材は、海面および波のレベルに露出したまま、海底の岩盤上に載置されるように適合されている。

〔背景技術〕
周知のように、沖合での風力タービンの設置には様々な技術的な問題および経済的問題がある。最も大きなものとしてはユニットの設置、および海底への風力タービンの固定方法が挙げられる。

したがって、これらのシステムの様々なモデルが開発されている。特許出願ＵＳ２００７／０２４３０６３に開示されたシステムを検討すると、沖合風力タービン用の構造、およびその方法が開示されており、その目的は、風力タービンの折り畳みブレードが特徴的な構造である風力タービンアセンブリを昇降させることにある。

同様に、特許出願ＷＯ０１３４９７７Ａ１についても検討すると、該文献には、重力によって海底に固定されるシステムが開示されている。このシステムは、該システムを海底に固定するために水が充填される単一の空洞を有する。この設計では、風力タービンタワー部が波および潮流の作用に晒される。

また、特許出願ＥＰ１７７７３４８Ａ１には、沖合風力タービンの支持に適した、内部に単一の空洞を有する円錐形の重力基礎（gravity foundation）が開示されている。

〔発明の説明〕
本願は、沖合風力タービン用の支持材、その製造プロセスおよび設置方法を開示するものである。支持材は、
・円形または多角形の基底部と、複数の鉛直壁および該基底部に類似する断面を有しており、円形または多角形の断面を有する部分の高さ方向全体にわたって延在（extend）する複数の鉛直空洞を有するシャフトとを備える基礎構造体と、
・該基礎構造体のシャフト上に設置され、風力タービンを支持して固定するスラブとを備える。

海底の岩盤上に載置されている支持材は、海面および波のレベルより上方に上部スラブを有し、それらは風力タービンのタワー部が落ちないように構成されている。

一方、基礎構造体のシャフト上に載置され、上記風力タービンを支持して固定するスラブは、下方で支持する基礎構造体の複数の鉛直空洞に対応する一群の貫通孔を有する。

さらに、風力タービンの支持／固定用スラブは厚さが一様ではなく、風力タービンの支持／固定領域において厚くなっている。

支持材の基礎構造体の形状および質量分布は、支持材の複数の鉛直空洞を部分的に充填することによって安定化（ballasted）することで、支持材を設置場所まで曳航するために充分な安定性をもって浮遊するような形状および質量分布である。

同様に、風力タービンの支持／固定用スラブは、ユニットの部品の取り付け、および交換するための建設クレーンを接続するための接続面を有していてもよい。

さらに、スラブは、上記風力タービンのタワー部の開始部（a first portion）と結合することができる。

支持材の基礎構造体は、ほぼ鉄筋コンクリート製であって、その基底部から上部基部までを滑動式型枠を用いて製造される。

支持材の基礎構造体は、海上の船舶で製造される。

一方で、支持材の組み立て方法は、
・支持材が充分な安定性をもって浮遊できるように、上記基礎構造体の複数の鉛直空洞を部分的に充填することによって上記支持材を安定化し、
・上記支持材を、その製造場所から沖合風力タービンの設置場所まで海上を曳航し、
・上記支持材を海面および波のレベルから露出させたまま、支持材が海底の岩盤上に載置されるまで、複数の鉛直空洞を完全に充填することによって支持材を固定し、
・上記風力タービンを組み立てることを含む。

基礎構造体の複数の鉛直空洞の充填は、スラブの貫通孔を介して実施され、該複数の空洞の充填完了後に、該孔はそれぞれ塞がれる。

基礎構造体の複数の鉛直空洞のうち少なくとも一つが、風力タービンの下方に位置し、少なくともその上方の部分がコンクリートで充填されている。

風力タービンの一部の部品が、その搬送のために、支持材の基礎構造体のスラブの上に仮固定され、コストを低減することができる。

さらに、風力タービンの支持／固定用スラブが、ユニットの部品の取り付け、および交換するための建設クレーンを接続するための接続面を有していてもよく、これは、そのアセンブリおよび保全作業のために大型クレーン船が必要ではないという利点をもつ。

説明を補足するため、および本発明の特徴をよりよく理解するのを助けるために、本願に図面を添付している。添付図面では、本発明に係る殆どの特徴の詳述が例示的および非限定的に示されている。

〔図面の簡単な説明〕
図１は、海底の浅瀬底部上に載置された支持材上に組み立てられた風力タービンの正面図である。支持材は、基礎構造体および上部スラブを有する。

図２は、支持材の基礎構造体における複数の鉛直空洞と対応する上部スラブの貫通孔を示す、風力タービンの支持材の平面図である。

図３は、図２のＡ−Ａ断面図であり、基底部およびシャフトを有する基礎構造体上に結合された上部スラブを示しており、該シャフトがその高さ方向全体にわたって延在する複数の鉛直空洞を有する。

図４は、浮遊するドック上で滑動式型枠システムによって支持材の基礎構造体システムを製造する状態を示す概略図である。

図５は、コンクリートが固まるにつれて小型の滑動式型枠を上昇させる方法を示す基礎構造体の製造プロセスの正面図である。

図６は、外壁、一群のコア、および上部固定構造体によって滑動式型枠を構成する方法を示す基礎構造体の製造プロセスの平面図、および滑動式型枠本体部の正面図である。

図７は、上部スラブが風力タービンの様々な部品の搬送のための支持材として使用される状態を示す、風力タービン用の支持材を曳航する図である。

図８は、基礎構造体を海底の岩盤上に配置することによって風力タービン用の支持材を形成する場合の、基礎構造体の複数の鉛直空洞を充填することによる固定方法を示す。

図９は、風力タービンを組み立てるための支持材の上部スラブ上に組み立てられた風力タービンのタワー部、およびクレーンを示す図であり、支持材の基礎構造体における複数の空洞が、海底の岩盤上でその設置のために充填される方法を示す。

〔好適な実施形態の説明〕
上述した図面および使用する部材番号を参照すると、支持材８が、基礎構造体１、ならびに対応する風力タービン３を支持および固定するスラブ２をどのように備えているかがわかる。

基礎構造体１は、円形または多角形の基底部４、および同様の断面を有するシャフト５によって構成されている。該シャフト５は、その円形または多角形の断面を有する部分の高さ方向全体にわたって延在する一群の複数の鉛直空洞６を形成している。構造体１は、浮遊するドック７上で滑動式型枠システムによって製造される。

したがって、支持材８は、基礎構造体１、並びに少なくとも風力タービン３を支持／固定する上部スラブ２によって形成される。支持材８の上部構造であるスラブ２は、基礎構造体１の鉛直空洞６に対応する一群の貫通孔９を特徴としている。

風力タービン３の支持／固定スラブ２は厚さが一様ではなく、風力タービン３の支持／固定領域１３において厚くなっていてもよい。

基礎構造体１が製造され、上部構造であるスラブ２が結合されて支持材８の複数の鉛直空洞６が部分的に充填されると、この基礎構造体１は曳航するのに充分な安定性をもって設置場所まで浮遊する。

さらに、充填のための複数の独立した空洞６を有するので、確実な浮遊安定性が確保でき、転覆の可能性を回避することができる。

同様に、本発明に係る実施形態では、風力タービン３の支持／固定スラブ２は、風力タービン３のタワー部１０の少なくとも一部１４に結合されていてもよい。

一方、風力タービン３の支持／固定スラブ２が大きな面を規定することを鑑みると、ナセル１１やタワー部１５、ハブなどの風力タービン３の様々な部品を載せて沖合の設置場所に搬送することができ、搬送作業のコスト削減につながる。

同様に、スラブ２において、クレーン１６を接続するための接続面１７も利用することができ、この接続面１７を介してユニットの部品を組み立てる、および交換することができる。これは、クレーンを搭載した船舶が高コストであるにも関わらず有用性が低いことを鑑みると、組み立て作業および保全作業において大幅なコスト削減が可能となることを意味する。

基礎構造体１の製造プロセスに関して、この構造体１は、コンクリートで充填されて、垂直方向に移動する滑動式型枠を用いて製造される。これは、経済的かつ簡易なシステムとなる。

したがって、図４、図５および図６を参照すると、滑動式型枠は、高さが低いことを特徴とする構造体２０によって形成され、外壁２１および構造２３によって支持された一群のコア２２によって規定されているのがわかる。これによって、複数のコア２２が基礎構造体１内側の複数の空洞６を形成し、その製造プロセスを海上の船舶７で行うことができる。

このようにして、コンクリート２４を連続プロセスによって流し込み、コンクリートが固まるにつれて、滑動式型枠の構造体２０を漸次持ち上げる。このように、小型で単一の滑動式型枠を用いて、風力タービンを支持する設置場所の水深に応じて、必要に応じた高さのシャフト５を製造することができる。

一方、風力タービン３は、ナセル１１と複数のブレード１２からなる回転翼とを支持するタワー部１０によって構成されたタイプの風力タービンである。

支持材８が設置場所に搬送されると、該支持材が完全に海底の岩盤１９に載置されるまで複数の鉛直空洞６を完全に充填して固定し、風力タービン３のタワー部１０の支持／固定スラブ２が海面および波のレベルよりも上方にあるようにする。

一方、風力タービン３を支持する支持材８の組み立て方法についても提供する。方法は、
・支持材８を、複数の鉛直空洞６を支持材８の上部スラブ２の貫通孔９を介して部分的に充填することによって安定化し、
・上記支持材８を、その製造場所から沖合風力タービンの設置場所まで海上を曳航し、
・上記支持材８を海面および波のレベルから露出させたまま、支持材が海底の岩盤１９上に載置されるまで、複数の鉛直空洞６を完全に充填することによって支持材８を固定し、
・上記風力タービン３を組み立てることを含む。

したがって、基礎構造体１上に結合されるのは、少なくとも風力タービン３の支持／固定スラブ２であり、このスラブ２は、複数の鉛直空洞６に対する一群の貫通孔９を特徴とし、この貫通孔９によって支持材８を形成する基礎構造体１の複数の鉛直空洞６を充填することができる。

このように、基礎構造体１が製造され、上部構造であるスラブ２がその上部に結合され、支持材８を形成する基礎構造体１の複数の鉛直空洞６を部分的に充填することによって製造場所から設置場所まで曳航する間に支持材８を確実に安定して浮遊させるようにする。

複数の安定化空洞６を設けることによって支持材８の浮遊の安定性が補助され、転覆の可能性を回避することができる。

ある実施形態では、風力タービン３の下方に配置された複数の鉛直空洞６の少なくとも１つは、少なくともその上部がコンクリート１８で充填される。好適な実施形態では、風力タービン３の下方に配置された複数の鉛直空洞６の上部をコンクリート１８で部分的に充填し、風力タービンのタワー部１０の下方の基礎構造体１の上部構造であるスラブ２を補強する。

同様に、タワー部１５の部分、ナセル１１、ハブなどの風力タービン３の部品が、その搬送のために支持材８の上部スラブ２に仮配置される。

さらに、支持材８の上部スラブ２が、風力タービン３を組み立て、保全作業を行うためのクレーン１６を接続するための接続面１７を有する。

上述のように、この実施形態には、支持材の全部品を搬送するための大型船舶を必要とせず、有用性が低くコストが高いクレーン搭載の船舶を必要としないことから、大幅なコスト削減につながるという極めて大きな利点がある。

図１は、海底の浅瀬底部上に載置された支持材上に組み立てられた風力タービンの正面図である。支持材は、基礎構造体および上部スラブを有する。 図２は、支持材の基礎構造体における複数の鉛直空洞と対応する上部スラブの貫通孔を示す、風力タービンの支持材の平面図である。 図３は、図２のＡ−Ａ断面図であり、基底部およびシャフトを有する基礎構造体上に結合された上部スラブを示しており、該シャフトがその高さ方向全体にわたって延在する複数の鉛直空洞を有する。 図４は、浮遊するドック上で滑動式型枠システムによって支持材の基礎構造体システムを製造する状態を示す概略図である。 図５は、コンクリートが固まるにつれて小型の滑動式型枠を上昇させる方法を示す基礎構造体の製造プロセスの正面図である。 図６は、外壁、一群のコア、および上部固定構造体によって滑動式型枠を構成する方法を示す基礎構造体の製造プロセスの平面図、および滑動式型枠本体部の正面図である。 図７は、上部スラブが風力タービンの様々な部品の搬送のための支持材として使用される状態を示す、風力タービン用の支持材を曳航する図である。 図８は、基礎構造体を海底の岩盤上に配置することによって風力タービン用の支持材を形成する場合の、基礎構造体の複数の鉛直空洞を充填することによる固定方法を示す。 図９は、風力タービンを組み立てるための支持材の上部スラブ上に組み立てられた風力タービンのタワー部、およびクレーンを示す図であり、支持材の基礎構造体における複数の空洞が、海底の岩盤上でその設置のために充填される方法を示す。

Claims (5)

1. ・円形または多角形の基底部（４）と、複数の鉛直壁および該基底部に類似する断面を有し、円形または多角形の断面を有する部分の高さ方向全体にわたって延在する複数の鉛直空洞（６）を有するシャフト（５）とを備える基礎構造体（１）と、
   ・該基礎構造体（１）のシャフト（５）上に設置され、風力タービン（３）を支持して固定することが可能なスラブ（２）とを備え、該スラブ（２）は、下方の基礎構造体（１）の複数の鉛直空洞（６）に対応する一群の貫通孔（９）を有する、沖合風力タービン（３）用の支持材（８）の組み立て方法であって、
   上記基礎構造体（１）の複数の鉛直空洞（６）を部分的に充填することによって、上記支持材（８）が設置場所まで曳航するために充分な安定性をもって浮遊するように、上記支持材（８）を安定化し、
   ・上記支持材（８）を、その製造場所から沖合風力タービンの設置場所まで海上を曳航し、
   ・支持材が海底の岩盤（１９）上に載置されるまで、複数の鉛直空洞（６）を完全に充填することによって支持材（８）を固定し、該充填は、上記スラブ（２）の貫通孔（９）を介して実施され、該複数の空洞（６）の充填完了後に該孔は塞がれ、
   ・上記風力タービン（３）を組み立て、
   さらに、上記支持材（８）の上記曳航の前に、上記風力タービンのタワー部の開始部を上記支持材上に設置することを特徴とする、沖合風力タービン（３）用の支持材（８）の組み立て方法。
2. 上記スラブ（２）を海面および波のレベルから露出させたまま、岩盤上に載置することを特徴とする、請求項１に記載の沖合風力タービン（３）用の支持材（８）の組み立て方法。
3. 上記基礎構造体（１）の複数の鉛直空洞（６）のうちの少なくとも一つは、上記風力タービン（３）の下方に位置し、少なくともその上方の部分がコンクリートで充填されていることを特徴とする、請求項２に記載の沖合風力タービン（３）用の支持材（８）の組み立て方法。
4. 上記風力タービン（３）の一部の部品は、その搬送のために、上記支持材（８）の基礎構造体（１）の上部スラブ（２）に仮固定されることを特徴とする、請求項１に記載の沖合風力タービン（３）用の支持材（８）の組み立て方法。
5. 上記支持材（８）の支持／固定用スラブ（２）は、ユニットの部品の取り付け、および交換するための建設クレーン（１６）を接続するための接続面（１７）を有することを特徴とする、請求項１に記載の沖合風力タービン（３）用の支持材（８）の組み立て方法。

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