JP5280069B2 - 塗装方法およびそれにより得られる塗装体 - Google Patents

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Description

本発明は、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して硬化処理を施す塗装方法およびそれにより得られる塗装体に関する。
2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層した後、硬化処理を施す塗装方法により積層塗膜を形成する場合において、従来は、すべての塗料を積層した後に積層塗膜を構成するすべての層が同じ加熱温度で硬化するように各層を形成する熱硬化型塗料を選択し、積層塗膜全体を硬化していた。この場合、下層を焼き付けてから最上層を形成する塗料を積層して焼き付けた場合に比べて、積層塗膜の肌および光沢が劣るという問題があった。このため、積層塗膜の肌および光沢を向上させるために種々の方法が提案されている。
例えば、特開2002−35679号公報(特許文献1)には、電着塗装された素材の上に、中塗り塗料、ベース塗料およびクリア塗料を順次塗装し、3層を一度に焼き付け硬化させる塗膜形成方法において、不揮発分90質量%における温度に対する最低粘度が中塗り塗料≧ベース塗料≧クリア塗料の条件を満たし、硬化開始温度が中塗り塗料≦ベース塗料≦クリア塗料の条件を満たすような各塗料を用いることにより、優れた仕上がり外観が得られることが開示されている。
また、特開2005−177680号公報(特許文献2)には、中塗り塗料と上塗り塗料とをウェットオンウェットで塗布してこれらを同時に焼き付ける際に、硬化速度の違いを利用して中塗り塗膜を上塗り塗膜より先に硬化させる塗装方法が開示されており、この塗装方法により鮮映性を確実に確保することが可能となることも開示されている。
このように、従来から積層塗膜の肌および光沢を向上させるために種々の方法が提案されているが、例えば、自動車用鋼板などではより外観品質に優れた塗装体が求められており、ウェットオンウェットによる塗装方法の更なる改良が望まれている。
特開2002−35679号公報 特開2005−177680号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して高耐久性の確保などのために少なくとも最上層を硬化させても、最上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることができる塗装方法、およびそれにより得られる外観品質に優れた塗装体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、積層塗膜の最上層の下層のうちの少なくとも1層を、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が所定値以下である下層用塗料を使用して形成することにより、前記最上層のゲル化開始時においても前記下層用塗料を使用して形成された下層の流動性を確保し、最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の積層塗膜の収縮による凹凸の形成を最小限に抑えることができ、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して硬化処理を施しても外観品質に優れた積層塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の塗装方法は、
基材上に形成された少なくとも1層の下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
前記最上層を形成するための最上層用塗料として化学反応によって架橋構造を形成する硬化型塗料を準備し、且つ、前記下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料を準備し、該熱硬化型塗料のうちの少なくとも1種類として、前記最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下である熱硬化型塗料を準備する工程と、
前記基材上に前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する工程と、
前記未硬化積層塗膜に硬化処理を施して少なくとも前記最上層用塗料を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
本発明の塗装方法において、前記最上層用塗料として熱硬化型塗料を使用し、前記硬化処理として熱硬化処理を施すことが好ましい。また、前記最上層用塗料としては、その硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の塗料が好ましい。
また、本発明の塗装方法において、前記相対損失弾性率が1s−2以下である熱硬化型塗料としては、前記最上層用塗料の硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の熱硬化型塗料が好まし
前記下層が2層以上である場合には、前記下層を形成するための下層用塗料のすべてが前記相対損失弾性率が1s−2以下の熱硬化型塗料であることが好ましい。
さらに、本発明の塗装体は、基材上に形成された少なくとも1層の下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を有する塗装体であって、本発明の塗装方法により得られたことを特徴とするものである。
なお、本発明の塗装方法によって2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して硬化処理を施した場合でも積層塗膜の表面の凹凸が少なくなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のウェットオンウェットにより形成した積層塗膜では、最上層を含めすべての層で熱硬化型塗料が用いられ、各層を同じ加熱温度で硬化させたり、下層から順に硬化を開始するように設計されているため、最上層を形成する熱硬化型塗料を熱処理により硬化させる際には、その下層においても熱硬化型塗料の硬化が進行して既に流動性を失った状態となっている。積層塗膜の各層では縮合反応や硬化剤の脱ブロック反応の後の付加反応により熱硬化型塗料を硬化させるため、この縮合反応や脱ブロック反応により生成した揮発性生成物が、残存する溶媒とともに揮発し、積層塗膜が収縮して塗膜表面に凹凸が形成される。この塗膜表面の凹凸は各層が十分に流動性を有している間はその流動などにより緩和されるが、最上層の流動性が硬化により著しく低下した場合には下層も硬化して流動性をほぼ失っているため、凹凸は緩和されず、基材表面や各層の界面の凹凸が最上層表面に転写され、積層塗膜の肌や光沢が悪化するものと推察される。
一方、本発明の塗装方法では、下層のうちの少なくとも1層を、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が所定値以下である下層用塗料を使用して形成するため、最上層が硬化する際にも前記下層用塗料を使用して形成された下層においては流動性が確保され、積層塗膜が収縮して塗膜表面に凹凸が形成した場合でもこの下層が流動することにより凹凸が緩和され、塗膜表面における凹凸の顕在化が抑制されるものと推察される。
本発明によれば、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して高耐久性の確保などのために少なくとも最上層を硬化させても、最上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることができる。これにより、肌(表面平滑性)や光沢など外観品質に優れた塗装体を得ることができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の塗装方法は、基材上に形成された少なくとも1層の下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
前記最上層を形成するための最上層用塗料として化学反応によって架橋構造を形成する硬化型塗料を準備し、且つ、前記下層を形成するための下層用塗料のうちの少なくとも1種類として、前記最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下である塗料を準備する工程と、
前記基材上に前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する工程と、
前記未硬化積層塗膜に硬化処理を施して少なくとも前記最上層用塗料を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
本発明の塗装方法では、基材上に1種類以上の下層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の下層を形成する。次いで、この未硬化の下層の上に最上層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の最上層を形成する。その後、得られた未硬化積層塗膜に硬化処理を施して少なくとも前記最上層用塗料を硬化させる。
基材としては、特に限定されず、例えば、金属(鉄、銅、アルミニウム、錫、亜鉛およびこれらの金属の合金など)、鋼板、プラスチック、発泡体、紙、木、布、ガラスなどが挙げられる。中でも、外観品質に対する要求特性が高い自動車用鋼板に本発明は好適に適用される。これら基材表面は、予め電着塗装などの処理が施されていてもよい。
本発明の塗装方法においては、最上層用塗料としては化学反応によって架橋構造を形成する硬化型塗料を使用する。このような最上層用硬化型塗料としては熱硬化型塗料が好ましく、例えば、塗膜形成可能な熱硬化性樹脂および硬化剤(例えば、前記熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物や樹脂)を含むものであればよく、通常の焼付塗装の最上層用塗料として使用される熱硬化型塗料(例えば、特開2004−275966号公報に記載のクリア塗料など)が挙げられる。その形態は溶剤型、水性、粉体のいずれでもよい。
最上層用熱硬化型塗料に含まれる塗膜形成可能な熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。最上層用熱硬化型塗料に含まれる硬化剤としてはアミン化合物、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、およびイソシアネート樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂および硬化剤はそれぞれ1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる最上層用塗料の硬化温度Tは特に限定されないが、通常40℃以上200℃以下であり、好ましくは60℃以上160℃以下である。また、前記最上層用塗料は硬化反応において実質的に揮発性生成物を生成しない硬化型塗料であることが好ましい。このような塗料としてはその硬化温度Tにおける重量減少率が0.5質量%以下のものが好ましく、0.3質量%以下のものがより好ましく、0.1質量%以下のものが特に好ましい。このような重量減少率が小さい塗料を最上層用塗料として使用すると硬化処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の塗膜の収縮を最小限にすることができる傾向にある。このような観点から揮発性生成物を生成しない硬化型塗料(重量減少率が0質量%)が最も好ましい。
なお、本発明において、「塗料の硬化温度」とは、対象とする塗料を基材上に塗装して熱処理などの硬化処理を施し、塗膜を硬化せしめて基材上に定着させるために硬化時間などの硬化条件との関係で最も効率よく硬化できる温度をいい、一般的には塗料毎に設定(設計)されている焼付温度をいう。本発明では、この硬化温度(焼付温度)としてカタログ値を採用することができる。また、「塗料の重量減少率」は、以下の方法により測定される値である。すなわち、対象とする塗料を硬化処理後の膜厚が積層塗膜での目標膜厚となるようにアルミ箔上に塗装し、得られたアルミ箔試料を最上層用塗料の硬化温度Tよりも40℃低い温度[T−40℃]および10−2Torr以下の真空条件で90分間乾燥した後、加熱脱着導入装置(例えば、GERSTEL社製Thermal Desorption System)付きガスクロマトグラフ/質量分析装置(例えば、Agilent社製6890GC/5975MSD)を用いて最上層用塗料の硬化温度Tで30分間加熱して揮発性生成物量(Rc(単位:g))と残存溶媒量を定量し、式(1)により重量減少率を算出する。この重量減少率は、塗膜中の全バインダー量に対する前記揮発性生成物量の割合である。
重量減少率=100×Rc/W×100/(100−P) (1)
式(1)中、Wは前記真空乾燥工程で得られた塗膜の質量(単位:g)であり、Pはその塗膜100gに含まれる顔料の質量(単位:g)である。なお、顔料の質量は塗料の配合表の値(カタログ値など)を採用できる。
本発明において最上層用塗料として熱硬化型塗料を用いる場合の熱硬化性樹脂と硬化剤との好ましい組み合わせとしては、水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネート化合物および/またはイソシアネート樹脂との組み合わせ、エポキシ基含有アクリル樹脂と多価カルボン酸化合物および/またはカルボキシル基含有樹脂との組み合わせなどが挙げられる。このような組み合わせからなる熱硬化型塗料を用いると熱による硬化処理において揮発性生成物が生成しにくくなる傾向にある。
また、本発明に用いられる最上層用塗料には、必要に応じて従来公知の着色顔料や光輝性顔料などが従来公知の範囲で含まれていてもよい。また、各種物性を調整するために粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などの各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
本発明の塗装方法においては、基材上に少なくとも1層の下層を形成するが、前記下層のうちの少なくとも1層は、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下である塗料(以下、「低損失弾性率塗料」という)を用いて形成される。具体的には、下層が1層の場合にはこの下層を前記低損失弾性率塗料を用いて形成し、下層が2層以上の場合にはそれらのうちの少なくとも1層を前記低損失弾性率塗料を用いて形成する。下層が2層以上の場合、積層塗膜表面の凹凸をより緩和できる点で最上層に近い下層が前記低損失弾性率塗料を用いて形成されることが好ましく、すべての下層が前記低損失弾性率塗料を用いて形成されることがより好ましい。前記低損失弾性率塗料としては、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下の塗料であれば、硬化反応を起こさず、架橋構造を形成しない非硬化型のものでも、化学反応によって架橋構造を形成する硬化型のものでもよい。
本発明において、「最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率」とは、以下の方法により測定される相対損失弾性率で定義されるものである。すなわち、先ず、最上層用塗料を40mm×50mmのステンレス鋼板(厚さ0.5mm)に硬化処理後の膜厚が35±5μmとなるように塗布する。具体的には、前記ステンレス鋼板を水平な台に配置し、前記ステンレス鋼板の対向する2辺の縁からそれぞれ5mm程度の領域に厚さ70μmの粘着テープを貼り付け、刃先が直線であるナイフを前記テープ上で滑らせて、前記ステンレス鋼板とナイフの刃先との隙間に最上層用塗料を塗り込む。
このようにして最上層用塗料からなる塗膜を形成してから7±1分間後に、前記塗膜の相対貯蔵弾性率(E’)を測定する。測定は、刃先角度40°のナイフエッジを取り付けた直径74mmの円環状振子を装着した剛体振子型物性試験器((株)エー・アンド・デイ製RPT−5000型)を使用して実施する。測定時の温度プログラムは、室温(25℃)から最上層用塗料の硬化温度まで昇温速度20±4℃/分で昇温し、その後、前記硬化温度を維持するように設定する。
得られた相対貯蔵弾性率(E’)の測定値を時間に対してプロットすると、図1に示すように、時間の経過に従って下に凸の曲線から上に凸の曲線に変化する(以下、この変化する時点を「変曲点」という)という結果が得られる。この変曲点から15分間の部分について下記式(2):
’=A〔1−exp{k(t−t)}〕 (2)
(式(2)中、Aおよびkは定数であり、tは時間を示す。)
を当てはめ、非線形最小二乗法により時間軸切片tを求める。このtは、測定を開始してから最上層用塗料がゲル化が開始するまでの時間を表す。
次に、対象とする下層用塗料について、前記最上層用塗料の場合と同様にして塗膜を形成し、前記最上層用塗料の場合と同一条件で相対損失弾性率(E”)を測定する。この測定結果から前記時間tにおける相対損失弾性率(E”)を求め、これを「最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率」とする。
なお、前記相対貯蔵弾性率(E’)および前記相対損失弾性率(E”)は、それぞれ一般的な貯蔵弾性率(E’)および相対損失弾性率(E”)と下記式:
’=BE’
”=BE”
で関連付けることができる。ここで、Bは測定条件によって決まる値あり、下記式:
B=(bhcosφ)/(Isinθ)
(式中、bは塗膜とナイフエッジとが接する長さ[単位:m]を示し、hは塗膜の膜厚[単位:m]を示し、φは静止した振子のナイフエッジ面と基材(上記の場合はステンレス鋼板)の表面とがなす角度を示し、Iは振子の刃先を軸とした回転慣性モーメント[単位:kg・m]を示す)
で表されるものである。したがって、測定条件が固定されればBは一定値となる。
本発明に用いられる非硬化型の低損失弾性率塗料としては、最上層を硬化させる際に実質的に硬化反応を起こさない非硬化型塗料であればよく、使用する最上層用塗料の硬化温度Tにおける重量減少率が0.5質量%以下のものが好ましく、0.3質量%以下のものがより好ましく、0.1質量%以下のものが特に好ましい。このような重量減少率が小さい非硬化型塗料を用いると硬化処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の積層塗膜の収縮を小さくできる傾向にある。さらに、このような観点から塗膜形成可能な樹脂を含み硬化剤を含まない塗料が最も好ましい。前記非硬化型塗料の形態は、溶剤型、水性、粉体のいずれでもよいが、揮発性有機化合物の排出量を削減できる点で水性または粉体が好ましい。
前記非硬化型塗料に含まれる塗膜形成可能な樹脂としては、それ単独では硬化反応を起こさない樹脂が好ましく、例えば、特開2004−275966号公報に記載の中塗り塗料やベース塗料などから硬化剤を除いた樹脂成分、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂の中から硬化反応を起こさないものを2種以上選択して併用してもよい。
一方、本発明に用いられる硬化型の低損失弾性率塗料としては、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下のものであれば、通常の焼付塗装に使用される熱硬化型塗料を好適に使用することが可能であり、例えば、塗膜形成可能な熱硬化性樹脂および硬化剤(例えば、前記熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物や樹脂)を含み且つ最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下のものが挙げられる。前記硬化型低損失弾性率塗料の形態は、溶剤型、水性、粉体のいずれでもよいが、揮発性有機化合物の排出量を削減できる点で水性または粉体が好ましい。
また、硬化処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の塗膜の収縮を低減できる点で、最上層を硬化させる際に実質的に揮発性生成物を生成しない硬化型低損失弾性率塗料を用いることが好ましい。このような塗料としては、使用する最上層用塗料の硬化温度Tにおける重量減少率が0.5質量%以下のものが好ましく、0.3質量%以下のものがより好ましく、0.1質量%以下のものが特に好ましい。このような重量減少率が小さい硬化型低損失弾性率塗料を下層用塗料として使用すると硬化処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の塗膜の収縮を最小限にできる傾向にある。また、このような観点から最上層を硬化させる際に揮発性生成物を生成しない硬化型低損失弾性率塗料(重量減少率が0質量%)が最も好ましい。
このような硬化型低損失弾性率塗料に含まれる塗膜形成可能な熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、前記硬化型低損失弾性率塗料に含まれる硬化剤としては、イソシアネート化合物、イソシアネート樹脂、アミン化合物、アミノ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂および硬化剤はそれぞれ1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記熱硬化性樹脂および前記硬化剤の組成や配合比を調整したり、添加剤を配合するなどして、例えばガラス転移温度や架橋密度などを低くすることによって、硬化型低損失弾性率塗料についての最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率を1s−2以下にすることができる。
本発明においては、非硬化型低損失弾性率塗料と硬化型低損失弾性率塗料のうち、積層塗膜の収縮を最小限にできる点では非硬化型低損失弾性率塗料を使用することが好ましく、他方、積層塗膜の強度を確保できる点で硬化型低損失弾性率塗料を使用することが好ましく、これらは用途などに応じて適宜使い分けることができる。
また、本発明においては、下層が2層以上の場合、それらのうちの少なくとも1層が前記低損失弾性率塗料を用いて形成された層であれば、残りの層は、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超える塗料(以下、「高損失弾性率塗料」という)を用いて形成してもよい。このような高損失弾性率塗料としては、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超えるものであれば、通常の焼付塗装に使用される熱硬化型塗料を使用することが可能であり、例えば、塗膜形成可能な熱硬化性樹脂および硬化剤(例えば、前記熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物や樹脂)を含み且つ最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超えるものが挙げられる。前記高損失弾性率塗料の形態は、溶剤型、水性、粉体のいずれでもよいが、揮発性有機化合物の排出量を削減できる点で水性または粉体が好ましい。
また、硬化処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の塗膜の収縮を低減できる点で、最上層を硬化させる際に実質的に揮発性生成物を生成しない高損失弾性率塗料を用いることが好ましい。このような塗料としては、使用する最上層用塗料の硬化温度Tにおける重量減少率が0.5質量%以下のものが好ましく、0.3質量%以下のものがより好ましく、0.1質量%以下のものが特に好ましい。このような重量減少率が小さい高損失弾性率塗料を下層用塗料として使用すると硬化処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の塗膜の収縮を最小限にできる傾向にある。また、このような観点から最上層を硬化させる際に揮発性生成物を生成しない高損失弾性率塗料(重量減少率が0質量%)が最も好ましい。
このような高損失弾性率塗料に含まれる塗膜形成可能な熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、前記高損失弾性率塗料に含まれる硬化剤としては、イソシアネート化合物、イソシアネート樹脂、アミン化合物、アミノ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂および硬化剤はそれぞれ1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記熱硬化性樹脂および前記硬化剤の組成や配合比を調整して、例えばガラス転移温度や架橋密度などを高くすることによって、硬化型低損失弾性率塗料についての最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率を1s−2を超えるものとすることができる。
また、本発明においては、最上層用塗料および下層用塗料(低損失弾性率塗料および/または高損失弾性率塗料)のいずれにおいても熱硬化型塗料を使用する場合に、硬化温度が同じ最上層用塗料と下層用塗料とを用いることも可能であり、硬化温度が異なる最上層用塗料と下層用塗料とを用いることも可能である。前者の場合には、後述する硬化処理(好ましくは加熱処理)を1段で実施する場合に適しており、他方、後者の場合には2段以上の硬化処理(好ましくは加熱処理)を施す場合に適している。
後者の場合、最上層用塗料の硬化温度Tと下層用塗料の硬化温度Tは、下記式(3):
≦T−30 (3)
で表される条件を満たすことが好ましい。下層用塗料として前記式(3)で表される条件を満たすものを用いると、低温加熱処理と高温加熱処理の2段の加熱処理を施すことができるとともに、これらの加熱温度の差を十分に広げることができ、その結果、最上層と下層とを別個独立して硬化させることが可能となる。また、このような観点から硬化温度TとTは下記式(3a)
≦T−40 (3a)
(式(3a)中、TおよびTは前記式(3)中のTおよびTと同義である。)
で表される条件を満たすことがより好ましく、下層が2層以上の場合には、いずれの下層用塗料についてもその硬化温度Tが前記式(3)または(3a)で表される条件を満たすことが特に好ましい。
なお、本発明に用いられる下層用塗料(低損失弾性率塗料および/または高損失弾性率塗料)には、必要に応じて従来公知の着色顔料や光輝性顔料などが従来公知の範囲で含まれていてもよい。また、各種物性を調整するために粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などの各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
本発明の塗装方法では、先ず、前記基材上に前記下層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒を蒸発させて未硬化の下層を形成する。このとき、下層が1層の場合にはこの下層を前記低損失弾性率塗料を用いて形成する。下層が2層以上の場合にはそれらのうちの少なくとも1層を前記低損失弾性率塗料を用いて形成し、残りの層は高損失弾性率塗料を用いて形成することができるが、積層塗膜の収縮により形成された塗膜表面の凹凸をより緩和できる点ですべての下層を前記低損失弾性率塗料を用いて形成することが好ましい。
下層用塗料を塗布する際、熱硬化型塗料および非硬化型塗料のいずれの塗料を使用する場合でもエアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装などの従来公知の方法を適用することができる。
下層の各層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、硬化処理後の膜厚で5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。各下層の膜厚が前記下限未満では均一な下層の塗膜が得にくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると最上層の塗膜に含まれる溶媒などを多く吸収する傾向にあるとともにその層自身に含まれる溶媒の揮発も抑制され積層塗膜の外観品質を悪化させる傾向にある。
次に、前記未硬化の下層の上に前記最上層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒を蒸発させて未硬化の最上層を形成する。最上層用塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装などの従来公知の方法が挙げられる。
最上層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、硬化処理後の膜厚で15〜60μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。最上層の膜厚が前記下限未満では流動性が不十分であり積層塗膜の外観品質が悪化する傾向にあり、他方、前記上限を超えると流動性が過度に大きくなり鉛直方向に塗装する場合にはタレなどの欠陥が発生する傾向にある。
このようにして、前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して形成された未硬化積層塗膜に硬化処理(好ましくは加熱処理)を施して少なくとも前記最上層用塗料を硬化させる。
本発明の塗装方法において前記硬化処理として加熱処理を施す場合には、1段の加熱処理を施してもよいし、2段以上の加熱処理を施してもよいが、少なくとも最上層が硬化する温度以上での加熱処理(以下、「高温加熱処理」といい、このときの加熱温度を「高温加熱温度T」とする)、例えば[前記最上層用塗料の硬化温度T−20℃]以上の温度Tでの加熱処理を施すことが好ましい。この高温加熱温度Tは、1段の加熱処理または2段以上の加熱処理のいずれの場合においても、下記式(4):
−20≦T≦T+40 (4)
で表される条件を満たすことがより好ましく、下記式(4a):
≦T≦T+20 (4a)
で表される条件を満たすことが特に好ましく、下記式(4b):
=T (4b)
で表される条件を満たすことが最も好ましい。なお、式(4)、(4a)および(4b)中のTは式(3)中のTと同義である。高温加熱温度が前記下限未満になると最上層が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると最上層が過度に硬化して割れやすくなったり、黄変したりする傾向にある。
高温加熱時間は最上層用塗料の硬化時間の50%以上150%以下であることが好ましく、60%以上100%以下であることがより好ましい。具体的には、最上層用塗料の硬化時間が30分の場合、高温加熱時間は15分以上45分以下であることが好ましく、18分以上30分以下であることがより好ましい。高温加熱時間が前記下限未満になると最上層が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると最上層が過度に硬化して割れやすくなったり、黄変したりする傾向にある。
また、本発明の塗装方法においては、前記高温加熱処理の前に高温加熱温度Tよりも低い温度(以下、「低温加熱温度T」という)で加熱処理(以下、「低温加熱処理」という)を施すといった2段以上の加熱処理を実施してもよい。この低温加熱処理により最上層を硬化させる前に積層塗膜中の揮発分の濃度を低減することが可能となる傾向にある。さらに、低温加熱処理時の最上層の硬化を防止できるという観点から、前記低温加熱温度Tは、[前記最上層用塗料の硬化温度T−20℃]未満の温度が好ましく、[T−30℃]未満の温度がより好ましく、[T−40℃]未満の温度が特に好ましい。
さらに、下層用塗料として熱硬化型塗料を使用する場合には、最上層を硬化させる前に下層を十分に硬化させることができるという点で、前記低温加熱温度Tは下記式(5):
−20≦T≦T−30 (5)
で表される条件を満たすことがより好ましく、下記式(5a):
≦T≦T−30 (5a)
で表される条件を満たすことが特に好ましく、下記式(5b):
+10≦T≦T−40 (5b)
で表される条件を満たすことが最も好ましい。なお、式(5)、(5a)および(5b)中のTおよびTは前記式(3)中のTおよびTと同義である。
低温加熱時間としては、下層用塗料として非硬化型塗料を使用する場合には、最上層を実質的には硬化させずに積層塗膜の揮発分濃度を低減することができるという点で、最上層用塗料の硬化時間の10%以上50%未満であることが好ましく、20%以上40%以下であることが好ましい。また、下層用塗料として熱硬化型塗料を使用する場合には、下層用塗料の硬化時間の10%以上100%以下であることが好ましく、20%以上80%以下であることがより好ましい。低温加熱時間が前記下限未満になると下層が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると全体の加熱時間が増加し、生産性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の塗装方法では、ウェットオンウェットにより積層された未硬化積層塗膜を安定させるために、前記加熱処理前、特に前記低温加熱処理前に室温で静置(セッティング)させることが好ましい。セッティング時間は通常1〜20分に設定される。
また、本発明においては、さらに高級な外観を得るためには、前記塗装方法により得られた塗装体の前記最上層の上にさらに塗料を塗布して硬化処理を施し、表面層を形成することが好ましい。前記塗料としては、前記最上層用塗料として例示したものを使用することができる。また、前記塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装などの従来公知の方法が挙げられる。
本発明の塗装体は、前記本発明の塗装方法により製造されたものであり、積層塗膜表面の凹凸が従来のウェットオンウェットで製造した積層塗膜よりも少なく、外観品質に優れている。このような塗装体は、特に乗用車、トラック、バス、オートバイなどの自動車用車体やその部品として有用である。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、最上層用塗料のゲル化開始時における下層用塗料の相対損失弾性率および塗料の熱処理による重量減少率は以下の方法により測定した。
<最上層用塗料のゲル化開始時における下層用塗料の相対損失弾性率>
先ず、最上層用塗料を40mm×50mmのステンレス鋼板(厚さ0.5mm)に熱処理後の膜厚が35±5μmとなるように塗布した。具体的には、前記ステンレス鋼板を水平な台に配置し、前記ステンレス鋼板の対向する2辺の縁からそれぞれ5mm程度の領域に厚さ70μmの粘着テープを貼り付け、刃先が直線であるナイフを前記テープ上で滑らせて、前記ステンレス鋼板とナイフの刃先との隙間に最上層用塗料を塗り込んだ。
このようにして最上層用塗料からなる塗膜を形成してから7±1分間後に、前記塗膜の相対貯蔵弾性率(E’)を測定した。測定は、刃先角度40°のナイフエッジを取り付けた直径74mmの円環状振子を装着した剛体振子型物性試験器((株)エー・アンド・デイ製RPT−5000型)を使用して実施した。測定時の温度プログラムは、室温(25℃)から最上層用塗料の硬化温度まで昇温速度20±4℃/分で昇温し、その後、前記硬化温度を維持するように設定した。
得られた相対貯蔵弾性率(E’)の測定値を時間に対してプロットし、上記した変曲点から15分間の部分について下記式(2):
’=A〔1−exp{k(t−t)}〕 (2)
(式(2)中、Aおよびkは定数であり、tは時間を示す。)
を当てはめ、非線形最小二乗法により時間軸切片、すなわち測定を開始してから最上層用塗料がゲル化が開始するまでの時間tを求めた。
次に、対象とする下層用塗料について、前記最上層用塗料の場合と同様にして塗膜を形成し、前記最上層用塗料の場合と同一条件で相対損失弾性率(E”)を測定した。この測定結果から前記時間tにおける相対損失弾性率(E”)を求め、これを「最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率」とした。
<重量減少率の測定>
対象とする塗料を熱処理後の膜厚が積層塗膜の目標膜厚となるようにアルミ箔上に塗装し、得られたアルミ箔試料を最上層用塗料の硬化温度Tよりも40℃低い温度[40−T℃]および10−2Torr以下の真空条件で90分間乾燥した後、加熱脱着導入装置(例えば、GERSTEL社製Thermal Desorption System)付きガスクロマトグラフ/質量分析装置(例えば、Agilent社製6890GC/5975MSD)を用いて最上層用塗料の硬化温度Tで30分間加熱して揮発性生成物量(Rc(単位:g))と残存溶媒量を定量し、式(1)により重量減少率を算出した。この重量減少率は、塗膜中の全バインダー量に対する前記揮発性生成物量の割合である。
重量減少率=100×Rc/W×100/(100−P) (1)
式(1)中、Wは前記真空乾燥工程で得られた塗膜の質量(単位:g)であり、Pはその塗膜100gに含まれる顔料の質量(単位:g)である。なお、顔料の質量は塗料の配合表の値を使用した。
(合成例1)アクリル樹脂Aの合成
メタクリル酸4.5質量部、アクリル酸エチル26.0質量部、水酸基含有モノマー(ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM−1」)64.5質量部、メチルスチレンダイマー(三井東圧化学社製、商品名「MSD−100」)5.0質量部およびアゾイソブチロニトリル13.0質量部を混合して混合溶液Aを調製した。
攪拌機、温度調節器および還流冷却管を備えた反応容器にキシレン82.0質量部を仕込み、次いで前記混合溶液Aのうちの20.0質量部を加え、攪拌しながら加熱して温度を上昇させた。その後、還流させながら前記混合溶液Aの残り93.0質量部を3時間かけて滴下して、次いでアゾイソブチロニトリル1.0質量部およびキシレン12.0質量部からなる溶液を30分間かけて滴下して反応を行なった。得られた反応溶液をさらに1時間攪拌しながら還流させ、数平均分子量2000のアクリル樹脂Aを含む樹脂溶液Aを得た。この樹脂溶液Aを固形分濃度が75質量%になるまでエバポレータで脱溶媒し、アクリル樹脂ワニスAを得た。
(合成例2)アクリル樹脂Bの合成
アクリル酸5.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル17.0質量部、メタクリル酸n−ブチル66.0質量部、アクリル酸ステアリル12.0質量部およびアゾビスイソブチロニトリル0.8質量部を混合して混合溶液Bを調製した。
攪拌機、温度調節器および還流冷却管を備えた反応容器にイソプロピルアルコール82.0質量部を仕込み、窒素置換した後、温度80℃まで加熱した。次いで前記混合溶液B(100.8質量部)を5時間かけて滴下した後、1時間攪拌を継続して数平均分子量15000のアクリル樹脂Bを含む樹脂溶液Bを得た。この樹脂溶液Bを固形分濃度が80質量%になるまでエバポレータで脱溶媒した後、ジメチルエタノールアミン6.0質量部およびイオン交換水36.0質量部を添加し、固形分濃度60質量%のアクリル樹脂ワニスBを得た。
(調製例1)熱硬化型水性中塗り塗料Aの調製
反応容器に合成例1で作製した固形分濃度75質量%のアクリル樹脂ワニスAを337質量部と酸化チタン(石原産業社製、商品名「CR−93」)1000質量部とカーボンブラック(デグサ社製、商品名「FW−200P」)10質量部とを仕込み、次いで酢酸ブチル163質量部とキシレン84質量部とを添加した。その後、仕込み全重量と同じ重量のガラスビーズ(粒径1.6mm)を投入し、卓上SGミルで3時間分散した。グラインドゲージによる分散終了時の粒度は5μm以下であった。その後、キシレン84質量部を添加した後、ガラスビーズを濾別し、顔料ペーストを作製した。この顔料ペーストに、前記アクリル樹脂ワニスAとメラミン樹脂(サイテック社製、商品名「サイメル254」)とをアクリル樹脂とメラミン樹脂との固形分重量比が10:1.5になるように、且つ中塗り塗膜中の顔料濃度が50.0質量%になるように添加し、イオン交換水で希釈して固形分濃度が50質量%の熱硬化型水性中塗り塗料Aを調製した。この熱硬化型水性中塗り塗料Aの硬化温度は140℃であり、140℃での重量減少率は1.6質量%(P=50.0として算出)であった。
(調製例2)熱硬化型水性中塗り塗料Bの調製
前記アクリル樹脂ワニスAとメラミン樹脂(サイテック社製、商品名「サイメル254」)とをアクリル樹脂とメラミン樹脂との固形分重量比が10:3になるように使用した以外は調製例1と同様にして固形分濃度が50質量%の熱硬化型水性中塗り塗料Bを調製した。この熱硬化型水性中塗り塗料Bの硬化温度は140℃であり、140℃での重量減少率は3.3質量%(P=50.0として算出)であった。
(調製例3)非硬化型水性ベース塗料Aの調製
合成例2で作製した固形分濃度60質量%のアクリル樹脂ワニスBにその固形分重量と同じ重量の1−t−ブトキシ−2−プロパノールを添加し、さらに水性塗料用アルミペーストをベース塗膜中の顔料濃度が17.7質量%になるように添加し、イオン交換水で希釈して固形分濃度が20質量%の非硬化型水性ベース塗料Aを作製した。この非硬化型水性ベース塗料Aの140℃での重量減少率は0質量%であった。
(調製例4)熱硬化型(メラミン硬化型)水性ベース塗料Bの調製
合成例2で作製した固形分濃度60質量%のアクリル樹脂ワニスBにメラミン樹脂(サイテック社製、商品名「サイメル325」)をアクリル樹脂とメラミン樹脂との固形分重量比が10:2になるように添加し、さらに水性塗料用アルミペーストをベース塗膜中の顔料濃度が17.7質量%になるように添加し、イオン交換水で希釈して固形分濃度が20質量%の熱硬化型(メラミン硬化型)水性ベース塗料Bを作製した。この熱硬化型水性ベース塗料Bの硬化温度は140℃であり、140℃での重量減少率は1.6質量%(P=17.7として算出)であった。
(調製例5)熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料Aの調製
表1に示す割合でポリオール、添加剤および溶剤を混合して2液型の熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料の主剤を調製した。また、前記熱硬化型クリア塗料の硬化剤として表1に示すイソシアネート硬化剤を使用した。以下の実施例および比較例ではこの主剤と硬化剤とを表1に示す割合で混合したもの(固形分濃度55質量%)を熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料Aとして使用した。この熱硬化型クリア塗料Aの硬化温度は140℃であり、140℃での重量減少率は0質量%であった。
Figure 0005280069
(実施例1)
最上層用塗料として調製例5で調製した熱硬化型クリア塗料A(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=0質量%)を使用し、下層用塗料として調製例3で調製した非硬化型水性ベース塗料A(重量減少率(140℃)=0質量%)を使用した。前記熱硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記非硬化型水性ベース塗料Aの相対損失弾性率は0.29s−2であった。
電着塗装板(神東ハーバーツ社製、商品名「サクセード80V グレー」)の表面に前記非硬化型水性ベース塗料Aを熱処理後の膜厚が20μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水および有機溶剤などを揮発させた。次いで、この非硬化型水性ベース塗料Aの層の上に前記熱硬化型クリア塗料Aを熱処理後の膜厚が35μmになるように塗装し、非硬化型水性ベース塗料Aと熱硬化型クリア塗料Aとをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。この未硬化積層塗膜を室温で10分間静置(セッティング)した後、90℃で10分間の加熱処理と140℃で30分間の加熱処理を順次施して熱硬化型クリア塗料Aを硬化させた。
得られた積層塗膜について、ウェーブスキャン(BYK−Gardner社製Wave−Scan Dual)を用いてウェーブスキャン値〔Wa(波長<0.3mm)、Wb(波長0.3〜1mm)、Wc(波長1〜3mm)、Wd(波長3〜10mm)〕を測定した。その結果を表2に示す。これらのウェーブスキャン値は、Waが小さいほど光沢が優れ、Wdが小さいほど肌がよいことを意味する。
(比較例1)
下層用塗料として前記非硬化型水性ベース塗料Aの代わりに調製例4で調製した熱硬化型水性ベース塗料B(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=1.6質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして積層塗膜を作製し、熱処理後の積層塗膜のWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記熱硬化型水性ベース塗料Bの相対損失弾性率は1.1s−2であった。また、前記熱硬化型水性ベース塗料Bはアクリル樹脂の水酸基とメラミン樹脂とが縮合反応して硬化が進行し、この縮合反応において揮発性のアルコールや水が生成する。
Figure 0005280069
表2に示した結果から明らかなように、本発明のように最上層の下層に最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下の塗料を使用したウェットオンウェットによる積層塗膜(実施例1)のWa〜Wdはいずれも、最上層の下層に最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超える塗料を使用した積層塗膜(比較例1)に比べて1/2以下であり、実施例1の積層塗膜は光沢、肌ともに比較例1の積層塗膜よりも大幅に向上していることが確認された。
(実施例2)
最上層用塗料として調製例5で調製した熱硬化型クリア塗料A(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=0質量%)を使用し、下層用塗料として調製例1で調製した熱硬化型水性中塗り塗料A(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=1.6質量%)および調製例3で調製した非硬化型水性ベース塗料A(重量減少率(140℃)=0質量%)を使用した。なお、前記熱硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記熱硬化型水性中塗り塗料Aおよび前記非硬化型水性ベース塗料Aの相対損失弾性率は、それぞれ4.7s−2および0.29s−2であった。また、前記熱硬化型水性中塗り塗料Aはアクリル樹脂の水酸基とメラミン樹脂とが縮合反応して硬化が進行し、この縮合反応において揮発性のアルコールや水が生成する。
電着塗装板(神東ハーバーツ社製、商品名「サクセード80V グレー」)の表面に前記熱硬化型水性中塗り塗料Aを熱処理後の膜厚が20μmになるように塗装し、100℃で3分間加熱して水および有機溶剤などを揮発させ、この熱硬化型水性中塗り塗料Aの層の上に前記非硬化型水性ベース塗料Aを熱処理後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水および有機溶剤などを揮発させ、この非硬化型水性ベース塗料Aの層の上に前記熱硬化型クリア塗料Aを熱処理後の膜厚が35μmになるように塗装した以外は実施例1と同様にして積層塗膜を作製し、熱処理後の積層塗膜のWa〜Wdを測定した。その結果を表3に示す。
(比較例2)
下層用塗料のうちの中塗り塗料として前記熱硬化型水性中塗り塗料Aの代わりに調製例2で調製した熱硬化型水性中塗り塗料B(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=3.3質量%)を用い、ベース塗料として前記非硬化型水性ベース塗料Aの代わりに調製例4で調製した熱硬化型水性ベース塗料B(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=1.6質量%)を用いた以外は実施例2と同様にして積層塗膜を作製し、熱処理後の積層塗膜のWa〜Wdを測定した。その結果を表3に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記熱硬化型水性中塗り塗料Bおよび前記熱硬化型水性ベース塗料Bの相対損失弾性率は、それぞれ7.5s−2および1.1s−2であった。また、前記熱硬化型水性中塗り塗料Bおよび前記熱硬化型水性ベース塗料Bはアクリル樹脂の水酸基とメラミン樹脂とが縮合反応して硬化が進行し、この縮合反応において揮発性のアルコールや水が生成する。
Figure 0005280069
表3に示した結果から明らかなように、本発明のように最上層の下層のうちの少なくとも1層に最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下の塗料を使用したウェットオンウェットによる積層塗膜(実施例2)のWa〜Wdはいずれも、最上層の下層の全てに最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超える塗料を使用した積層塗膜(比較例2)に比べて小さく、実施例2の積層塗膜は光沢、肌ともに比較例2の積層塗膜よりも向上していることが確認された。
(実施例3)
最上層用塗料として調製例5で調製した熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料A(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=0質量%)を使用し、下層用塗料としてブロックイソシアネート硬化型の溶剤型ベース塗料A(関西ペイント社製、商品名「SFX800」、硬化温度=80℃)を使用した。なお、前記イソシアネート硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aの相対損失弾性率は0.60s−2であった。また、前記ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aはブロックイソシアネートの脱ブロック反応で生成するイソシアネート化合物の付加反応により硬化するが、この脱ブロック反応において揮発性のブロック剤が生成する。
電着塗装板(神東ハーバーツ社製、商品名「サクセード80V グレー」)の表面に前記ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aを熱処理後の膜厚が25μmになるように塗装し、60℃で10分間加熱して有機溶剤を揮発させた。次いで、このブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aの層の上に前記イソシアネート硬化型クリア塗料Aを熱処理後の膜厚が35μmになるように塗装し、ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aとイソシアネート硬化型クリア塗料Aとをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。この未硬化積層塗膜を室温で10分間静置(セッティング)した後、90℃で10分間の低温加熱処理を施してブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aを硬化させ、次いで140℃で30分間の高温加熱処理を施してイソシアネート硬化型クリア塗料Aを硬化させた。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表4に示す。
(比較例3)
下層用塗料としてブロックイソシアネート硬化型の溶剤型ベース塗料A(硬化温度=80℃)の代わりに調製例4で調製した熱硬化型(メラミン硬化型)水性ベース塗料B(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=1.6質量%)を使用した以外は実施例3と同様にして2段の加熱処理(90℃および140℃)を実施して積層塗膜を作製し、熱処理後の積層塗膜のWa〜Wdを測定した。その結果を表4に示す。なお、前記イソシアネート硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記メラミン硬化型水性ベース塗料Bの相対損失弾性率は1.1s−2であった。また、前記メラミン硬化型ベース塗料Bはアクリル樹脂の水酸基とメラミン樹脂とが縮合反応して硬化が進行し、この縮合反応において揮発性のアルコールや水が生成する。
Figure 0005280069
表4に示した結果から明らかなように、本発明のように最上層の下層に最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下の塗料を使用したウェットオンウェットによる積層塗膜(実施例3)のWa〜Wdはいずれも、最上層の下層に最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超える塗料を使用した積層塗膜(比較例3)に比べて大幅に低下し、実施例3の積層塗膜は光沢、肌ともに比較例3の積層塗膜よりも大幅に向上していることが確認された。
(実施例4)
最上層用塗料として調製例5で調製した熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料A(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=0質量%)を使用し、下層用塗料としてイソシアネート硬化型(2液型)の溶剤型中塗り塗料A(関西ペイント社製、商品名「SFX5333」、硬化温度=80℃)および実施例3で使用したブロックイソシアネート硬化型ベース塗料A(硬化温度=80℃)を使用した。なお、前記イソシアネート硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記イソシアネート硬化型中塗り塗料Aおよびブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aの相対損失弾性率は、それぞれ17s−2および0.60s−2であった。また、前記イソシアネート硬化型中塗り塗料Aはイソシアネート化合物の付加反応により硬化するため、揮発性生成物は実質的に生成せず、140℃での重量減少率は0質量%であった。前記ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aはブロックイソシアネートの脱ブロック反応で生成するイソシアネート化合物の付加反応により硬化するが、この脱ブロック反応において揮発性のブロック剤が生成する。
電着塗装板(神東ハーバーツ社製、商品名「サクセード80V グレー」)の表面に1層目の下層として前記イソシアネート硬化型中塗り塗料Aを熱処理後の膜厚が20μmになるように塗装し、60℃で10分間加熱して有機溶剤などを揮発させ、このイソシアネート硬化型中塗り塗料Aの層の上に2層目の下層として前記ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aを熱処理後の膜厚が15μmになるように塗装し、60℃で10分間加熱して有機溶剤などを揮発させ、このブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Aの層の上に前記イソシアネート硬化型クリア塗料Aを熱処理後の膜厚が35μmになるように塗装した以外は実施例3と同様にして積層塗膜を作製し、熱処理後の積層塗膜のWa〜Wdを測定した。その結果を表5に示す。なお、表5には比較のために比較例2の結果も示した。
(実施例5)
最上層用塗料として調製例5で調製した熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料A(硬化温度=140℃、重量減少率(140℃)=0質量%)を使用し、下層用塗料としてブロックイソシアネート硬化型の溶剤型中塗り塗料B(関西ペイント社製、商品名「SFX3300CD」、硬化温度=90℃)およびブロックイソシアネート硬化型の溶剤型ベース塗料C(関西ペイント社製、商品名「SFX420」、硬化温度=90℃)を使用した。なお、前記イソシアネート硬化型クリア塗料Aのゲル化開始時における前記ブロックイソシアネート硬化型中塗り塗料Bおよびブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Cの相対損失弾性率は、それぞれ0.70s−2および0.09s−2であった。また、これらのブロックイソシアネート硬化型塗料はブロックイソシアネートの脱ブロック反応で生成するイソシアネート化合物の付加反応により硬化するが、この脱ブロック反応において揮発性のブロック剤が生成する。
1層目の下層用塗料としてイソシアネート硬化型中塗り塗料A(硬化温度=80℃、重量減少率(140℃)=0質量%)の代わりに前記ブロックイソシアネート硬化型中塗り塗料Bを使用し、2層目の下層用塗料としてブロックイソシアネート硬化型ベース塗料A(硬化温度=80℃)の代わりに前記ブロックイソシアネート硬化型ベース塗料Cを使用し、1段目の加熱条件を100℃、10分間に変更した以外は実施例4と同様にして積層塗膜を作製し、熱処理後の積層塗膜のWa〜Wdを測定した。その結果を表5に示す。
Figure 0005280069
表5に示した結果から明らかなように、本発明のように最上層の下層のうちの少なくとも1層に最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下の塗料を使用したウェットオンウェットによる積層塗膜(実施例4〜5)のWa〜Wdはいずれも、最上層の下層の全てに最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超える塗料を使用した積層塗膜(比較例2)に比べて大幅に低下し、実施例4〜5の積層塗膜は光沢、肌ともに比較例2の積層塗膜よりも大幅に向上していることが確認された。
なお、実施例と比較例における塗膜表面の凹凸の違いは以下のようにして起こるものと推察される。比較例1〜3の積層塗膜では、最上層の下層の全てが、最上層の硬化時に溶剤や硬化反応で生成する揮発性成分が多量に揮発する塗料を下層用塗料として使用して形成されたため、最上層の硬化時の積層塗膜の収縮が大きく、塗膜表面に多数の凹凸が形成された上に、この下層用塗料が、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2を超える塗料であるため、最上層のゲル化開始時においては下層の流動性が乏しく、最上層の硬化時に塗膜表面に形成された多数の凹凸が緩和されず、塗膜表面に凹凸が多く残存したものと推察される。これに対して、実施例1〜5の積層塗膜では、最上層の下層のうちの少なくとも1層の下層用塗料として最上層の硬化時に溶剤や揮発性成分の揮発が少ない塗料を使用しているため、最上層の硬化時の積層塗膜の収縮が抑制され、塗膜表面の凹凸が形成されにくくなった上に、この下層用塗料が、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下の塗料であるため、最上層のゲル化開始時においても下層の流動性が確保され、最上層の硬化時に塗膜表面にわずかに形成された凹凸が下層の流動により緩和され、塗膜表面の凹凸がより少なくなったものと推察される。
以上説明したように、本発明によれば、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付けて少なくとも最上層を硬化させても、最上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることができる。これにより、肌(表面平滑性)や光沢など外観品質に優れた塗装体を得ることができる。
したがって、本発明は、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付ける場合においても外観品質に優れた塗装体を得ることができる塗装方法として有用であり、特に乗用車、トラック、バス、オートバイなどの自動車用車体やその部品の塗装方法として有用である。
相対貯蔵弾性率(Er’)の経時変化を模式的に示すグラフである。
符号の説明
A…変曲点、t…時間、t…最上層用塗料について相対貯蔵弾性率の測定を開始してからゲル化が開始するまでの時間。

Claims (6)

  1. 基材上に形成された少なくとも1層の下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
    前記最上層を形成するための最上層用塗料として化学反応によって架橋構造を形成する硬化型塗料を準備し、且つ、前記下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料を準備し、該熱硬化型塗料のうちの少なくとも1種類として、前記最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−2以下である熱硬化型塗料を準備する工程と、
    前記基材上に前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する工程と、
    前記未硬化積層塗膜に硬化処理を施して少なくとも前記最上層用塗料を硬化させる工程と、
    を含むことを特徴とする塗装方法。
  2. 前記最上層用塗料が熱硬化型塗料であり、前記硬化処理が熱硬化処理であることを特徴とする請求項1に記載の塗装方法。
  3. 前記最上層用塗料が、その硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の塗料であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装方法。
  4. 前記相対損失弾性率が1s−2以下である熱硬化型塗料が、前記最上層用塗料の硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の熱硬化型塗料であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の塗装方法。
  5. 前記下層が2層以上であり、前記下層を形成するための下層用塗料のすべてが前記相対損失弾性率が1s−2以下の熱硬化型塗料であることを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の塗装方法。
  6. 基材上に形成された少なくとも1層の下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を有する塗装体であって、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の塗装方法により得られたものであることを特徴とする塗装体。
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