以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る三次元形状測定装置における支持装置により支持された被検物3と、測定ヘッド13との相対移動制御の概要を説明する。被検物3の一例として図1に示す略直方体形状の部材があり、その被検物3の表面を測定ヘッド13(光プローブ20)で撮像して得られた画像から被検物3の三次元形状を測定するように構成された形状測定装置の作動原理を図1を用いて説明する。
この形状測定装置は、被検物3を支持する支持装置30(図2を参照)を有し、この支持装置30は、上下方向に延びる軸Zを中心として回転自在(矢印Aで示す回転)に被検物3を支持し、この状態で軸Z上の点O1を通り軸Zと直交して水平(左右)に延びる軸Xを中心として被検物3が回転自在(矢印Bで示す方向)となるように支持するように構成されている。このように支持装置30により支持された被検物3の上方に、測定ヘッド13に搭載される光プローブ20がX軸方向に沿って左右に移動(矢印D(X)で示す移動)可能で、且つZ軸方向に沿って上下に移動(矢印D(Z)で示す移動)可能、さらに、これらX軸およびZ軸に直交して延びるY軸に沿って前後に移動(矢印D(Y)で示す移動)可能になって配設されている。なお、光プローブ20は被検物3に対して光を照射する照明光学系と、この被検物3からの光を撮像面に結像する撮像光学系と、CCD等の固体撮像素子からなる撮像面とを有し、制御ユニットによりこれらを制御して、被検物3の表面の形状計測を行うようになっている。
このような光プローブ20のX,Y,Z軸方向の移動、および支持装置30による被検物3のX,Z軸回りの回転移動は、操作装置であるジョイスティック43(図8を参照)を操作することで行われるようになっている。ジョイスティック43には、光プローブ20のX,Y,Z軸方向の移動を操作するための操作レバー45や、支持装置30のX,Z軸回りの回転移動を操作するための複数のジョグダイアル46,47が設けられており、操作レバー45を傾倒もしくは回動することで光プローブ20のX,Y,Z軸移動を可能にし、各ジョグダイアル46,47を回動させることで被検物3のX,Z軸回りの回転移動を可能にする。なお、このジョイスティック43の操作によって移動する光プローブ20の位置および支持装置の位置(回転位置)は、三次元形状測定装置を統括的に制御する制御ユニットによって検出される。
このように支持装置30により支持された被検物3の表面を撮像して所望の計測を行うには、光プローブ20の先端部と被検物3の観察位置との間の距離が所定のワークディスタンスWDとなるように光プローブ20および被検物3を位置させて、光プローブ20の先端部からその照射光の光軸上に沿ってワークディスタンスWDだけ隔てて位置する視点(観察点)を被検物3の観察対象点に一致させる必要がある。また、このとき、光プローブ20からの光の照射方向が被検物3の観察対象面に対して計測に最適な向きとなるように向かせる必要がある。ここで、ワークディスタンスWDは、光プローブ20の先端部(点P0)と被検物3との距離(光プローブ20の撮像画像の焦点が合う距離)であり、撮像光学系の焦点距離等によって所定の値に定まるものである。
このとき、例えば、被検物3の表面における図示の点P1(観察対象点)に光プローブ20より光を照射して撮像を行うには、光プローブ20からの光の光軸上において光プローブ20の先端部(点P0)から所定のワークディスタンスWDだけ離れた視点の位置を観察対象点P1に位置決めする必要がある。
このため、ジョイスティック43の操作レバー45を操作して、光プローブ20をX軸方向に沿って左右移動させるとともにY軸方向に沿って前後移動させ、さらにZ軸方向に沿って上下移動させる動作を組み合わせることで、光プローブ20の先端部(点P0)と被検物3の観察対象点P1とがワークディスタンスWDだけ離れた位置に接近させ、光プローブ20による視点を観察対象点P1に一致させる。
このとき被検物3の形状によっては、撮像光学系によって結像されるべき被検物3の一部が被検物3自身によって隠れてしまう所謂死角が生じる場合がある。このような場合には、光プローブ20の観察光学系および照明光学系と被検物3の位置関係が最適となるように、被検物3に対する光プローブ20の向きを調整するため、例えば、ジョイスティック43のジョグダイアル46,47を操作して被検物3をX,Z軸回りに回転させると、被検物3の観察対象点P1が光プローブ20による視点からずれるように移動してしまうこととなる。このため、光プローブ20の視点を観察対象点に再び合わせるためには、ジョイスティック43の操作レバー45を操作して、光プローブ20をX,Y,Z軸方向に移動させて位置合わせを行う必要がある。さらに、この状態から被検物3に対する光プローブ20の向きを微調整するため被検物3をX,Z軸回りに回転させると、観察対象点と視点とがずれることとなり、観察対象点に視点の位置を合わせる操作と、被検物3に対する光プローブ20の向きを合わせる操作とが繰り返し行われる結果となってしまう。
そこで、本実施形態に係る三次元形状測定装置では、光プローブ20と被検物3との相対移動制御において2つの作動制御モードを有している。第1のモードは、上記のようにジョイスティック43の操作に応じて、単に光プローブ20と被検物3とをX,Y,Z軸方向に相対移動、およびX,Z軸回りに相対回転させる制御を行う(以降の説明では、この第1のモードを「通常動作モード」と称する)。
一方、第2のモードでは、通常動作モードによるジョイスティック操作とは意味づけを変更し、光プローブ20のワークディスタンスWDおよび測定ベクトル(光プローブから視点への向きであり、本実施形態では常に鉛直下向き)より視点の位置を決定し、ジョイスティック43による光プローブ20と被検物3との相対回転移動に伴って変化する視点を常に撮像面上で動かない(固定される)ように、光プローブ20と被検物3との相対移動(X,Y,Z移動)が制御されるようになっている(以降の説明では、この第2のモードを「視点固定モード」と称する)。
例えば、図2に示すように、光プローブ20の視点が被検物3の観察対象点P1に合わせられた状態からジョイスティック43のダイアル47の操作が行われて被検物3がX軸回りに回転されると、この回転に伴ってそれまで視点とされていた被検物3上の点P1も点P2まで移動することになるが、この視点固定モードでは、この被検物3の回転移動に追従するように光プローブ20の視点をY,Z軸方向に移動させて当該視点が点P2に一致するように被検物3の姿勢が制御される。
具体的には、図3に示すように、まず光プローブ20の視点の位置は、制御ユニットによって検出される光プローブ20の先端部の位置(点P0)から測定ベクトルの向き(下方)にワークディスタンスWDだけ離れた位置(点P1)にあると決定される。ここで、点P0の座標を(X1,Y1,Z1)と表すと、点P1の座標は(X1,Y1,Z1−WD)と表すことができる。一方、被検物3をX軸回りに角度φ1から角度φ2までの角度Δφ(=φ1−φ2)だけ回転させる場合、この回転角度Δφは制御ユニットにより検出され、角度φ1の大きさおよび回転半径Rは回転中心O1の座標と点P1の座標から算出され、角度φ2の大きさはφ1−Δφより算出される。よって、被検物3の回転移動に伴って光プローブ20の視点を点P1から点P2に移動させるためには、光プローブ20をY軸方向にRcosφ2−Rcosφ1だけ変位させ、Z軸方向にRsinφ1−Rsinφ2だけ変位させる移動制御(視点固定制御)が行われる。
なお、この移動制御では、光プローブ20を点P1から点P2までY,Z軸方向に各軸ごとに直線的に移動させても、Y,Z軸方向に同時2軸で直線移動または円弧移動させてもよい。また、前述の視点固定制御を極短い時間間隔で行うことで、撮像面で得られる像では常に観察対象点(目標点)が同じ位置に見えることになる。
同様に、図4に示すように、光プローブ20の視点が被検物3の観察対象点P3に合わせられた状態からジョイスティック43のジョグダイアル46の回動操作が行われて被検物3がZ軸回りに水平面内で回転されると、被検物3上でそれまで視点とされていた点3も点P4まで移動することになるが、視点固定モードでは、これに追従するように光プローブ20の視点をX,Y軸方向に移動させて当該視点が点P4に一致するように位置決めされる。この場合には、光プローブ20をZ軸方向の位置を保持しつつ、被検物3の回転移動量に応じてX,Y軸方向に移動させればよい。このとき、光プローブ20を点P3から点P4まで、X,Y軸方向に各軸ごとに移動させても、X,Y軸方向に同時2軸で直線移動または円弧移動させてもよい。
また、この視点固定モードにおいては、視点が観察対象点からずれて焦点が合っていないような場合には、図5に示すように、光プローブ20による視点の位置を調整することが可能なように、操作レバー45の操作量に応じて光プローブ20による照射光の光軸方向(測定ベクトル)に沿って、すなわちZ軸方向に沿って視点を上下移動させることができるようになっている。
このように視点固定モードによれば、視点を常に観察対象点に一致させた状態を保持しつつ、光プローブ20と被検物3とを相対回転移動させることが可能になるため、測定のための位置合わせ作業を簡単にすることができる。
以上説明した作動原理に基づいて、被検物の形状測定を行うための具体的な三次元形状測定装置構成を図6および図7を参照して説明する。ここで、本実施形態に係る三次元形状測定装置の概略構成を図6に示すとともに、三次元形状測定装置のブロック図を図7に示している。この三次元形状測定装置は、測定機本体1と、制御ユニット40とを主体に構成されている。
測定機本体1は、図6に示すように、水平な基台2と、この基台2上に設けられ測定ヘッド13を支持する門型構造体10と、基台2上に設けられ被検物3を載置する支持装置30とを主体に構成される。
門型構造体10は、基台2上にY方向(紙面に垂直な方向でこれを前後方向とする)に延びて設けられたガイドレール(図示せず)上をY方向に移動自在に設けられた支柱11,11と、両支柱11,11の間で水平に延びるように架け渡された水平フレーム12と、水平フレーム12上をX方向(左右方向)に移動自在に設けられたキャリッジ(図示せず)に対してZ方向(上下方向)に移動自在に設けられた測定ヘッド13とを有して構成される。
門型構造体10には、図7に示すように、入力される駆動信号に基づき測定ヘッド13を3方向(X,Y,Z方向)に電動で移動させるヘッド駆動部14と、測定ヘッド13の座標を検出し測定ヘッド13の座標値を表す信号を出力するヘッド位置検出部15とが設けられている。ヘッド駆動部14は、支柱11をY方向に駆動するY軸用モータ、キャリッジをX方向に駆動するX軸用モータ、測定ヘッド13をZ方向に駆動するZ軸モータを有して構成される。ヘッド位置検出部15は、測定ヘッド13のX軸、Y軸、およびZ軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ、Y軸用エンコーダ、およびZ軸用エンコーダを有して構成される。
支持装置30は、被検物3を載置するステージ31と、基台2上に設けられステージ31を垂直(Z軸方向)に延びる回転軸θを中心として水平面内で回転可能、且つ、水平(X軸方向)に延びる回転軸φを中心として回転(揺動)可能に支持する支持テーブル32とを有して構成される。
支持装置30には、図7に示すように、入力される駆動信号に基づきステージ31を回転軸θ,φ回りに電動でそれぞれ回転駆動させるステージ駆動部33と、ステージ31の座標を検出し、ステージ座標値を表す信号を出力するステージ位置検出部34とが設けられている。ステージ駆動部33は、ステージ31を回転軸θ,φ回りにそれぞれ回転駆動するロータリ軸モータおよびチルト軸モータを有して構成される。ステージ位置検出部34は、ステージ31の回転軸θ,φ回りの回転位置をそれぞれ検出するロータリ軸用エンコーダおよびチルト軸用エンコーダを有して構成される。
測定ヘッド13は、光切断プローブ20a、SFFプローブ20b、およびタッチプローブ29の3つの測定プローブを有して構成される。各プローブ20a,20b,29はそれぞれ独立して制御可能であり、被検物3の形状の特性等に応じて適宜選択される。
光切断プローブ20aは、光切断方式により被検物の表面形状を求めるものであり、図7に示すように、被検物にシート状のスリット光を照射するスリット光照明部21と、スリット光照明部21の照射方向に対して光軸を所定角度ずらして配置され、被検物の表面にその断面形状に対応して形成される光切断線を撮像するCCDカメラ22とを備えて構成される。光切断プローブ20aでは、スリット光照明部21から被検物にスリット光を照射し、それにより被検物の表面に、その断面形状に対応して形成される光切断線をCCDカメラ22で撮像した画像を後述の画像処理部により画像処理し、これらスリット光照明部21やCCDカメラ22等の位置関係を基に撮像された画像に対して、画素ごとに三角測量の原理を用いて幾何学的に計算することによってその位置データを求めて、被検物に照射されるスリット光(光切断プローブ20a)を所定の方向に走査させることにより、被検物3の表面形状を求めることができる。なお、スリット光ではなく被検物3を一様に照明(例えば拡散照明)した状態では、CCDカメラ22によって被検物3の撮像部位の状態を観察できる。
SFFプローブ20bは、Shape from Focus方式(以下、「SFF方式」と称する)により被検物の表面形状を求めるものであり、図7に示すように、落射照明光学系23の他に、被検物からの光を結像する結像光学系24と、この結像光学系24により結像された被検物の像を検出し(すなわち、被検物の一部分を撮像し)、検出した像の光強度分布に応じた信号を出力するCCDカメラ25とを備えて構成される。また、SFFプローブ20bには、オートフォーカス機能が搭載されており、光プローブ20bと被検物とのZ軸方向の相対的な距離を変化させて、被検物3に対して自動で焦点を合わせることができる。ここで、SFF方式の原理について簡単に説明すると、この方式は、落射照明光学系23から被検物3に面状の所定のパターン光を照射し、SFFプローブ20bと被検物とをZ方向(焦点方向)に相対移動しながら被検物の画像を設定距離ごとにCCDカメラ25で取得し、後述する画像処理部によって、得られた画像に対して空間フィルタ(微分演算)をかけ各画素毎に合焦測度を求めて被検物表面の形状情報を得る手法である。このように光プローブ20bと被検物との位置関係を変化させて被検物に対して求めた各画素毎の合焦測度(コントラスト)が最大となる位置、すなわち合焦位置を算出することで被検物の表面形状を求めることができる。
タッチプローブ29は、このタッチプローブ29が被検物に接触したときの測定座標値と測定方向(タッチプローブ29の移動方向)とに基づいて被検物の表面形状を計測するものであり、上記光切断プローブ20aおよびSFFプローブ20bによる画像計測では計測困難な被検物に対して用いられる。
なお、以降の説明においては、タッチプローブ29についての説明は省略し、さらに、測定ヘッド13の光切断プローブ20aもしくはSFFプローブ20bのいずれかを用いる場合には、上記の作動原理でも説明したように、これらを総称して単に「光プローブ20」と称して説明する。
制御ユニット40は、図7に示すように、位置検出部15,34からの電気信号が入力される座標検出部51と、光切断プローブ20aおよびSFFプローブ20b(CCDカメラ22,25)からの電気信号が入力される画像処理部52と、駆動部14,33の制御や光プローブ20の光学系の倍率や照明光量等を制御する駆動制御部53と、測定条件テーブル54と、測定手順の教示、記憶、再現等のティーチング機能を有するティーチング処理部55と、測定データテーブル56と、測定データを出力するデータ出力部57とを備えている。この制御ユニット40は、図6に示すように、CPU(中央演算処理装置)等を有するコンピュータ41と、各種指示情報を入力するキーボードなどの入力装置42と、測定ヘッド13やステージ31の移動を操作するジョイスティック43と、計測画面、指示画面、計測結果等を表示するモニタ44とを備えたコンピュータシステムで構成されている。
座標検出部51は、ヘッド位置検出部15およびステージ位置検出部34から出力される座標信号によって、各プローブ20a,20bおよびステージ31の位置、すなわち水平方向における観察位置(光軸中心位置)と上下方向における観察位置(合焦位置等)とを検出するとともに、各プローブ20a,20bとステージ31との相対的な移動経路、移動速度などを検出する。
画像処理部52は、光プローブ20のCCDカメラ22,25の各画素から出力される電気信号を画像処理し、検出した被検物3の像をモニタ44の画面上に画像として表示させるための画像信号をデータ出力部57を介してモニタ44に出力するように構成されている。また、画像処理部52は、前述した方式(光切断方式、SFF方式)によってCCDカメラ22,25から出力される電気信号を画像処理して得た画像情報と、当該撮像取得が行われるときに座標検出部51から得た光プローブ20およびステージ31の座標値とに基づき各測定ポイントの座標値を演算し、その演算結果を測定データテーブル56へ順次出力するように構成されている。
駆動制御部53は、ジョイスティック43からの操作信号に基づいて、または、ティーチング処理部55からの指令信号に基づいて、ヘッド駆動部14およびステージ駆動部33に駆動信号を出力して、測定ヘッド13(光プローブ20)およびステージ31の駆動制御を行う。
ジョイスティック43内には、図8に示すように、測定ヘッド13のX,Y,Z軸方向の移動操作を行うための操作レバー45と、ステージ31の回転軸θ,φ回りの各回転操作を行うためのジョグダイアル46,47と、測定ヘッド13およびステージ31の相対移動制御をモード切り換え可能な視点固定スイッチ49とが設けられている。
操作レバー45は自動復帰位置を中立位置として前方、後方、左方、および右方へ傾動操作することが可能であるとともに、その軸回りに回動操作をすることが可能である。また、ジョグダイアル46,47は、その軸回りにそれぞれ回動操作することが可能である。視点固定スイッチ49は、上記作動原理でも説明した第1のモードである通常動作モードと、第2のモードである視点固定モードとを有し、この視点固定スイッチ49をオン・オフ操作することで、これら2つのモードのうちいずれかを選択可能に構成されている。
駆動制御部53は、ジョイスティック43の視点固定スイッチ49がオン・オフ操作されることで、ジョイスティック43のレバー操作およびダイアル操作に対して上記2つのモードを相互に切り換えてヘッド駆動部14およびステージ駆動部33の駆動制御を行う。
駆動制御部53は、視点固定スイッチ49がオフのときは、ジョイスティック43の操作信号に対して通常動作モードによる駆動制御を行う。すなわち、操作レバー45を中立位置から左右方向に傾倒操作したときには測定ヘッド13がX軸方向に駆動され、中立位置から前後方向に傾倒操作したときに測定ヘッド13がY軸方向に駆動される。また、操作レバー45を回動操作したときは測定ヘッド13がZ軸方向に駆動される。一方、ジョグダイアル46を回動操作するとステージ31が回転軸θ回りに回転され、ジョグダイアル47を回動操作するとステージ31が回転軸φ回りにチルト回転される。
一方、視点固定スイッチ49がオン操作されると、駆動制御部53はジョイスティック操作の意味づけを変更し、ジョイスティック43の操作信号に対して視点固定モードによる駆動制御を行う。この視点固定モードでは、操作レバー45による前後方向および左右方向の傾倒操作(X,Y操作)を無効にして(無視して)、操作レバー45の回動操作、およびジョグダイアル46,47の回動操作のみを有効に扱う。ここで、ジョグダイアル46,47を回動操作したときは、この操作量に応じてステージ31を回転軸θ,φ回りに回転駆動させるとともに、光プローブ20の視点をこのステージ回転移動に追従させるように目標位置および移動速度を算出して、この算出された速度で目標位置に到達するように測定ヘッド13の駆動を制御する。
なお、図4でも示したような、回転軸θ回りの光プローブ20(の視点)の追従移動は、スリット光の向きに対してプローブ走査方向が決められている光切断プローブ20aを利用した場合等に有効であり、光切断プローブ20aの走査方向に対して最適となるように被検物3の向きを変えることができる。
また、視点固定モードにおいて操作レバー45を回動操作したときは、図5に示すように、光プローブ20の測定ベクトルを一致させたまま視点の位置を調節するようにレバー操作量に応じた移動量および移動速度で光プローブ20(測定ヘッド13)をZ軸方向に駆動制御する。
ここで、このように光プローブ20の視点位置をマニュアル調整する場合は、光プローブ20で撮像されモニタ44で表示される被検物3の画像のコントラストが正確に合うように光プローブ20と被検物3との相対位置を変化させて行われるが、この画像のコントラスト値を示すインジケータを設ける構成とすれば、インジケータを参照しながら操作することで、視点の位置合わせ精度が向上し、オペレータによるばらつきが解消される。このインジケータは、コントラスト値をグラフィックイメージによって画面に表示するグラフィックインジケータ等で構成されることが好ましい。
測定条件テーブル54は、測定条件や測定手順等の所定のティーチングデータ、被検物の測定開始点(最初の測定ポイント)および測定終了点(最後の測定ポイント)等の座標値、測定開始位置での測定目標方向、各測定ポイントの間隔(例えば、一定間隔の測定ピッチ)を表すデータなどが予め入力装置42などにより設定されて記憶されている。ここで、被検物3の測定開始点および測定終了点等の座標値は、入力装置42による当該座標値のキー入力の他、予めジョイスティック43の操作によって測定ヘッド13およびステージ31を相対移動させ、被検物3および光プローブ20を所望の姿勢に位置決めして当該測定ポイントの座標値を取り込むことで行われる。なお、この測定開始点および測定終了点等の情報により測定データの取得範囲や、光プローブ20と被検物3との相対移動経路などが決定される。
ティーチング処理部55は、測定条件テーブル54に登録されたティーチングデータ等に基づいて、登録されたデータ取得範囲に応じた移動経路にしたがって測定ヘッド13およびステージ31を移動させるべく駆動制御部53を介して各駆動部14,33に移動指令を送信する。また、ティーチング処理部55は、ティーチングデータ等に基づいて、駆動制御部53に制御信号を出力して光プローブ20の光学系の制御を行う。
測定データテーブル56は、画像処理部52から出力される各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データを格納するようになっている。
データ出力部57は、測定終了後に測定データテーブル56に格納された測定データ(全測定ポイントの座標値)等をモニタ44に表示、またはプリンタ(図示せず)で印刷して出力するためのものである。
次に、このように構成された三次元形状測定装置において、通常動作モードから視点固定モードに変更する場合の作動について図9を追加参照して説明する。
まず、被検物3の測定において、通常動作モードによりジョイスティック43の操作レバー45を操作して光プローブ20をX,Y,Z軸方向に移動させ、光プローブ20の視点を被検物3上の所望の観察位置に位置させた状態にした後、ジョイスティック43の視点固定スイッチ49をオン操作する(ステップS101)。視点固定スイッチ49がオン操作されることで、ジョイスティック43による光プローブ20のX,Y軸方向の移動操作が無効になって(ステップS102)、これより視点固定モードに移行される(S103)。
そして、視点固定スイッチ49が再度操作されたか否かが判断され(ステップS104)、この状態でオフ操作によるスイッチ入力があれば、再び通常モードに戻される(ステップS114)。スイッチ入力が無ければこのまま視点固定モードが続行されて、ジョイスティック操作の意味づけが変更され、このジョイスティック43における操作レバー45またはジョグダイアル46,47の回動操作が行われることで光プローブ20および被検物3の視点固定モードによる相対移動制御が行われる(ステップS105)。
視点固定モードにおいて、ジョイスティック43のジョグダイアル46が回動操作されたときは(ステップS106)、この操作量に応じた回転移動量でステージ31が回転軸θ回りに回転駆動されるとともに、このステージ31の回転駆動に伴って光プローブ20の視点位置を追従させるように、光プローブ20における回転軸θを中心として、この回転軸θから光プローブ20の現在の視点位置までの距離を回転半径とした円弧状において、ステージ31の回転移動量から視点の目標位置を算出する(S109)。
また、ジョグダイアル47が回動操作されたときは(ステップS107)、この操作量に応じた回転移動量でステージ31が回転軸φ回りに回転駆動されるとともに、このステージ31の回転駆動に伴って光プローブ20の視点位置を追従させるように、光プローブ20における回転軸φを中心として、この回転軸φから光プローブ20の現在の視点位置までの距離を回転半径とした円弧状において、ステージ31の回転移動量から視点の目標位置を算出する(S110)。
そして、光プローブ20の視点の現在位置および目標位置から、駆動制御部53において光プローブ20の追従移動におけるX,Y,Z軸方向の移動速度が算出される(ステップS111)。
一方、ジョイスティック43の操作レバー45が回動操作されたときは(ステップS108)、この回動操作量から視点位置の調整のためのZ軸方向の目標位置が算出されるとともに、光プローブ20のZ軸方向の移動速度が算出される(ステップS112)。
このようなジョイスティック43の操作に基づいて、駆動制御部53がヘッド駆動部14およびステージ駆動部33に駆動信号を出力して(各軸の移動量および移動速度を指令して)、測定ヘッド13およびステージ31を動作させる(ステップS113)。これにより、視点固定モードによる測定ヘッド13とステージ31との相対移動制御が行われる。
引き続き、以上のような構成の三次元形状測定装置を用いて、被検物3の三次元形状を自動測定する場合の手順について説明する。
まず、ジョイスティック43の視点固定スイッチ49を操作して通常動作モードもしくは視点固定モードに適宜切り換えて、ジョイスティック43のレバー操作やダイアル操作によりステージ31上に載置された被検物3に対して光プローブ21の視点を所望の測定開始点(最初の測定目標点)に位置決めするとともに、被検物3に対して光プローブ20を最適な向きに向かせる。そして、光プローブ20によりこの測定開始点における画像を取得して制御ユニット40の画像処理部52によって処理された画像情報(エッジ座標値など)と、座標検出部51により出力される光プローブ20およびステージ31の座標値とに基づいて測定開始点の座標値が演算されて、この座標値が測定条件テーブル54に取り込まれて登録される。
同様に、ジョイスティック43を操作してモードを適宜切り換えつつ光プローブ20およびステージ31を相対移動させ、光プローブ20の視点を次の測定目標点(経過点)や測定終了点(最後の測定目標点)に位置決めするとともに、被検物3に対する光プローブ20の向きを測定に最適な向きに合わせ、この測定ポイントの座標検出を行っていくことで、当該座標値が測定条件テーブル54に次々と登録され、測定データの取得範囲が決定される。
このように測定条件テーブル54にデータ取得範囲が設定され、さらに、入力装置42から測定条件テーブル54に測定ピッチ等が設定されると、ティーチング処理部55において測定ポイントと測定データを取得する順番が決定される。すなわち、測定データを取得する順番は、測定開始点から測定終了点に向けて光プローブ20およびステージ31が測定ピッチずつ相対移動されるようにして測定データが取得されるような順番になっている。
ティーチング処理部55は、測定条件テーブル54に取り込まれた測定目標点の座標値や、予め測定条件テーブル54に設定された測定ピッチ、測定目標方向等により定まるティーチングデータに基づき、光プローブ20およびステージ31の駆動制御をして、測定開始点から測定終了点までの測定経路に従って被検物3上の測定ポイントが順次変更されながら、各測定ポイントでの三次元座標(点群データ)が取得される。この点群データは測定データテーブル56に格納されていく。
全ての測定ポイントの点群データが取得され測定終了が検出されると、データ出力部57により、測定データテーブル56に格納された点群データとともに、この点群データに基づく三次元形状がモニタ44に表示される。
このように本実施形態の三次元形状測定装置では、光プローブ20と被検物3との相対移動制御を、位置合わせの目的に応じて通常動作モードおよび視点固定モードの2つのモード制御で切り換えて行うことができるため、ジョイスティック操作による位置合わせを簡単に行うことが可能になるとともに、位置合わせ時の光プローブ20および被検物3の移動回数が減少し、三次元形状測定装置による測定時間を短縮することが可能になる。
次に、三次元形状測定装置の第2実施形態について説明する。この実施形態においては、上述した第1実施形態の三次元形状測定装置に対して同一の構成要素は同一の符号を付して重複説明を省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。ここで、第2実施形態に係る三次元形状測定装置の概略構成を図10に示すとともに、この三次元形状測定装置のブロック図を図11に示している。
この第2実施形態の三次元形状測定装置は、図10に示すように、測定機本体101と、制御ユニット140とを主体に構成されている。測定機本体101は、取付治具104等を介して被検物103を支持する水平な基台102と、この基台102上に設けられ光プローブ120を着脱自在に支持する門型構造体110とを主体に構成される。
門型構造体110は、基台102上にY方向(紙面に垂直な方向でこれを前後方向とする)に延びて設けられたガイドレール(図示せず)上をY方向に移動自在に設けられた支柱111,111と、両支柱111,111の間で水平に延びるように架け渡された水平フレーム112と、水平フレーム112上をX方向(左右方向)に移動自在に設けられたキャリッジ(図示せず)に対してZ方向(上下方向)に移動自在に設けられた測定ヘッド113とを有して構成されており、この測定ヘッド113の先端部(下端部)に光切断プローブやSFFプローブ等の光プローブ120がクランプ機構(図示せず)により着脱自在に支持される。このように測定ヘッド113は、被検物103の形状の特性等に応じて適宜選択される光プローブ120が取り付けられるようになっており、図10では、スリット光照明部21およびCCDカメラ22を備えた光切断プローブが取り付けられた状態が図示されている。
また、図13に示すように、測定ヘッド113には3軸の回動機構が設けられ、水平に延びる回転軸116(φ1)を中心として回転自在(矢印Cで示す回転)に光プローブ120を支持するとともに、回転軸116に直交する方向に延びる回転軸117(φ2)を中心として光プローブ120を回転自在(矢印Dで示す回転)に支持し、さらに、上下方向に延びるZ軸に平行な回転軸118(θ)を中心として光プローブ120を水平面内で回転自在(矢印Eで示す回転)に支持する。
門型構造体110には、図11に示すように、入力される駆動信号に基づき測定ヘッド113(光プローブ120)を3方向(X,Y,Z方向)に電動で移動させるとともに、光プローブ120を回転軸116(φ1),117(φ2),118(θ)回りに電動で回転させるヘッド駆動部114と、測定ヘッド113のX,Y,Z座標および光プローブ120のθ,φ1,φ2座標を検出して、測定ヘッド113および光プローブ120の座標値を表す信号を出力するヘッド位置検出部115とが設けられている。ヘッド駆動部114は、支柱111をY方向に駆動するY軸用モータ、キャリッジをX方向に駆動するX軸用モータ、測定ヘッド113をZ方向に駆動するZ軸モータ、光プローブ120を回転軸θ,φ1,φ2回りに回転させる第1〜第3回転モータを有して構成される。ヘッド位置検出部115は、測定ヘッド113のX軸、Y軸、およびZ軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ、Y軸用エンコーダ、およびZ軸用エンコーダや、光プローブ120の回転軸θ,φ1,φ2回りの回転位置を検出する第1〜第3ロータリエンコーダを有して構成される。
制御ユニット140は、図11に示すように、ヘッド位置検出部115からの電気信号が入力される座標検出部151と、光プローブ120(CCDカメラ)からの電気信号が入力される画像処理部52と、ヘッド駆動部114の制御や光プローブ120の光学系の倍率や照明光量等を制御する駆動制御部153と、測定条件テーブル54と、測定手順の教示、記憶、再現等のティーチング機能を有するティーチング処理部55と、測定データテーブル56と、測定データを出力するデータ出力部57とを備えている。
座標検出部151は、ヘッド位置検出部115から出力される座標信号によって、光プローブ120の位置(三次元座標値)や回転姿勢(回転角度)を検出するとともに、光プローブ120の移動経路、移動速度などを検出する。
駆動制御部153は、ジョイスティック143からの操作信号に基づいて、または、ティーチング処理部55からの指令信号に基づいて、ヘッド駆動部114に駆動信号を出力して、測定ヘッド113の駆動制御を行う。
ジョイスティック143内には、図12に示すように、測定ヘッド113のX,Y,Z軸方向の移動操作を行うための操作レバー45と、光プローブ120の回転軸φ1,φ2,θ回りの各回転操作を行うためのジョグダイアル146,147,148と、測定ヘッド113の移動制御をモード切り換え可能な視点固定スイッチ49とが設けられている。
駆動制御部153は、ジョイスティック143の視点固定スイッチ49がオン・オフ操作されることで、ジョイスティック143のレバー操作およびダイアル操作に対して、通常動作モードと視点固定モードとの2つのモードを相互に切り換えてヘッド駆動部114の駆動制御を行う。
駆動制御部153は、視点固定スイッチ49がオフのときは、ジョイスティック143の操作信号に対して通常動作モードによる駆動制御を行う。すなわち、操作レバー45を中立位置から前後方向に傾倒操作したときには測定ヘッド113がX軸方向に駆動され、中立位置から左右方向に傾倒操作したときに測定ヘッド113がY軸方向に駆動される。また、操作レバー45を回動操作したときは測定ヘッド113がZ軸方向に駆動される。一方、ジョグダイアル146を回動操作すると光プローブ120が回転軸118(θ)回りに回転され、ジョグダイアル147を回動操作すると光プローブ120が回転軸116(φ1)回りに回転され、さらに、ジョグダイアル148を回動操作すると光プローブ120が回転軸117(φ2)回りに回転される。
一方、視点固定スイッチ49がオン操作されると、駆動制御部153はジョイスティック操作の意味づけを変更し、ジョイスティック143の操作信号に対して視点固定モードによる駆動制御を行う。この視点固定モードでは、操作レバー45による前後方向および左右方向の傾倒操作(X,Y操作)を無効にして(無視して)、操作レバー45の回動操作、およびジョグダイアル146,147,148の回動操作のみを有効に扱う。
この視点固定モードにおいて、光プローブ120の撮像(撮像光学系の光軸)方向がZ軸と一致していればジョグダイアル146を回動操作したときは、光プローブ120の回転軸118回りの回転(水平面内での回転)に伴って視点の位置は変わらないため、この回転移動に伴う光プローブ120のX,Y,Z軸方向への追従移動の制御は行われない。なお、この回転移動は、光切断プローブを用いた場合に、照射されるシート光の向きを変えるときなどに行われる。
一方、ジョグダイアル147を回動操作したときは、図13に示すように、その操作量に応じて光プローブ120を回転軸116(φ1)回りに回転させるとともに、その視点の位置(点P5)が固定された上で、光プローブ120を、回転軸116に垂直な面内において当該視点を中心としワークディスタンスWDを半径とする円弧上に沿って揺動させる制御が行われる。これにより、光プローブ120の回転軸116回りの回転に伴って光プローブ120の視点がずれることなく、常に光プローブ120を被検物103の観察対象点P5に対して所定のワークディスタンスWDを隔てたまま、光プローブ120を被検物103に対して最適な向きに向かせることができる。
なお、ジョグダイアル148を回動操作して光プローブ120を回転軸117(φ2)回りに回転させる場合にも、追従移動の制御は上記と同様であるため、その説明は省略する。すなわち、回転軸116および回転軸117は相互に直交する方向に延びるため、光プローブ120を回転軸118回りに90度回転させる度に回転軸116と回転軸117とは交互に軸方向が一致する関係にあるからである。
一方、ジョイスティック143の操作レバー45を回動操作すると、図14に示すように、光プローブ120の測定ベクトルを一致させたまま視点位置を調整可能なように、光プローブ120を測定ベクトルに沿って、それまでの視点位置に対して接近または離隔する方向に移動するように駆動制御する。これにより、測定ベクトルを同一に維持したまま視点位置のみを調整することが可能になる。
このように第2実施形態の三次元形状測定装置においても、光プローブ120と被検物103との相対移動制御を、位置合わせの目的に応じて通常モードおよび視点固定モードの2つのモード制御で切り換えて行うことができるため、ジョイスティック操作による位置合わせを簡単に行うことが可能になるとともに、位置合わせ時の光プローブ120および被検物103の移動回数が減少し、三次元形状測定装置による測定時間を短縮することが可能になる。
なお、上述した実施形態では、測定ヘッドに搭載される光プローブを光切断方式およびSFF方式に適用した例について説明したが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、共焦点方式やSFD(Shape From Defocus)方式等の他の方式の光プローブを用いて構成してもよい。また、撮像素子としてCMOS等の1次元または2次元の固体撮像素子を用いることができる。