JP5278082B2 - シミュレーションシステム - Google Patents

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Description

本発明は、シミュレーションシステムに関し、詳しくは、石油・石油化学などのプロセス産業で使用されるプロセスシミュレータをはじめとする各種シミュレータにおけるパラメータ調整の改善に関するものである。
たとえば石油・石油化学などのプロセス産業では、プラント操業の安全や効率化に向けて、計算機上に実プロセスを忠実に再現するシミュレータを構築し、このシミュレーションの結果を操業へ活用しようとする関心が近年急速に高まっている。
これは、計算機上にプラントを忠実に模擬するシミュレータを構築することにより、
(1)実際に測定できない内部状態の可視化
(2)様々な運転条件による予測シミュレーション
(3)プロセスシミュレーションを自動制御に組み込むモデルベース制御
(4)生産コストや製品品質の最適化
などの実現が期待できるからである。
このように、プロセスシミュレータをプラントの実操業に活用することで大きなメリットが得られるが、プロセスシミュレータをプラントの実操業に適用できるか否かはそのプロセスモデルの持つパラメータを現実プロセスに適合させることができるかどうかにかかっている。
ところが、プラント全体がモデル化されたプロセスモデルには膨大な数のパラメータがあり、また物理化学的原理に基づいて構築された厳密モデルにおいては個々のパラメータに物理的意味があるため、プロセスモデルのパラメータチューニングには、プロセス全体の理解や多くの経験が必要となり、熟練した技術者にとっても試行錯誤を伴う困難な作業となっている。
そこで、上記のようなプロセスモデリングの困難さを軽減するために、プロセスモデルのパラメータ設定を支援するための提案が特許文献1や特許文献2などで行われている。これらの提案では、あるプロセス出力に対して感度の高いモデルパラメータを、プロセスモデルの持つ大量のパラメータから抽出し調整することが行われている。
特許文献1は、プロセスの内部構造を熟知していないプロセス技術者がパラメータ調整を簡単に行えるプロセスモデルのパラメータ調整装置および調整支援装置および方法に関するものである。
特許文献2は、パラメータ設定を自動的に行い、予測誤差を感度よく低減させ、時間短縮を図った下水処理プロセスシミュレーション方法と装置に関するものである。
非特許文献1は、評価法の計算方法に関するものである。
特開2002−328702号公報 特開2004−121953号公報
足立修一著,「MATLABによる制御のための上級システム同定」,第1版第1刷,東京電機大学出版,2004年3月10日,p.13
図7は、従来の石油・石油化学などのプロセス産業で使用されるプラントシミュレーションシステムの一例を示す構成図である。図7において、プラントシミュレーションシステムは、プラント1と、プラント運転データDB2と、コンソール画面3と、プラントシミュレータ4とで構成されている。
プラント1は、入力データに応じたデータを出力する。プラント運転データDB2には、これらプラント1の入力データと出力データが順次書き込まれる。
一方、プラント1のオペレータは、コンソール画面3を介してプロセスモデルのパラメータを設定し、プラントシミュレータ4にシミュレーションの実行命令を出力する。
そして、プラントシミュレータ4は、この実行命令を受けてプロセスモデルのパラメータを設定し、シミュレーションに必要なプラント1への入力をプラント運転データDB2から読み込み、シミュレーションを実行する。
シミュレーション実行後、プラント1のオペレータは、プラント運転データDB2に蓄えられているプラント1の出力データとプラントシミュレータ4で計算されたシミュレーション出力をコンソール画面3で比較検討しながら、プロセスモデルのパラメータを調整する。
しかし、現状のプラントシミュレーションシステムには過去に設定されたパラメータを管理して再利用する機能が設けられていないため、ユーザは莫大なパラメータの履歴を手探りで確認しながら所望のモデルパラメータを引き出さなければならず、多大の作業時間がかかってしまうという問題がある。
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、その目的は、過去に設定されたモデルパラメータを効率よく再利用できるシミュレーションシステムを実現することにある。
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
実際のシミュレーション対象に入力されたデータに基づきシミュレーションを実行しながら、前記シミュレーション対象の出力と前記シミュレーションの結果が一致するようにパラメータを調整するシミュレーションシステムにおいて、
前記シミュレーションの結果を保存するシミュレーション結果データベースと、
前記シミュレーション時に設定した前記パラメータの履歴を保存するパラメータ履歴データベースと、
このパラメータ履歴データベースから前記シミュレーション対象の出力値に対応するモデルパラメータについて前記シミュレーションをした結果と前記シミュレーション対象の出力一致度を時系列的に計算する適合率計算部と
前記モデルパラメータの選択を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により前記モデルパラメータの選択を受け付ける際に、前記適合率計算部における計算結果を表示する表示手段と、
を有することを特徴とする。

請求項2は、請求項1記載のシミュレーションシステムにおいて、
前記適合率計算部は、前記シミュレーション対象の出力と前記シミュレーションのモデルパラメータの変更前後における前記シミュレーションの結果との適合率の変化量から計算することを特徴とする。
請求項3は、請求項1または2記載のシミュレーションシステムにおいて、
前記適合率計算部の結果は、前記履歴について適合率を棒グラフ化して表示されることを特徴とする。
請求項4は、請求項1記載のシミュレーションシステムにおいて、
前記シミュレーション結果は、任意に選択したパラメータ毎に履歴を棒グラフ化して表示されることを特徴とする。
請求項5は、請求項1記載のシミュレーションシステムにおいて、
前記シミュレーション対象の出力に対応して、任意に選択した履歴がトレンド表示されることを特徴とする。
請求項6は、請求項1から5のいずれかに記載のシミュレーションシステムにおいて、
前記シミュレーション対象は、プロセスプラントであることを特徴とする。
このように構成することにより、過去に設定されたモデルパラメータを効率よく再利用できる。
本発明に基づくシミュレーションシステムの一実施例を示すブロック図である。 図1の動作を示すフローチャートである。 パラメータ履歴DB6に格納されているデータの一例を示す説明図である。 パラメータ履歴DB6から選択されたモデルパラメータの具体例を示すトレンド画面例図である。 各履歴aからfの適合率計算結果を棒グラフ化して示したグラフ画面例図である。 プロセス出力と選択された履歴のモデルパラメータ出力とのトレンド表示画面例図である。 従来の石油・石油化学などのプロセス産業で使用されるプラントシミュレーションシステムの一例を示す構成図である。
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のシミュレーションシステムの一実施例を示すブロック図であり、図7と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1に示す本発明のシミュレーションシステムと図7に示す従来のシミュレーションシステムとの相違点は、プラントシミュレータ4のシミュレーション結果を保存するシミュレーション結果データベース(以下DBという)5と、プラントシミュレータ4のシミュレーション時のパラメータを設定した履歴を保存するパラメータ履歴DB6と、プラントシミュレータ4のシミュレーション結果と前記プラント1の出力との一致度を時間の経過にしたがって時系列的に計算する適合率計算部7を設けていることである。
図2は、図1のシミュレーションシステムの動作を示すフローチャートである。
開始にあたり、オペレータは、コンソール画面3から、シミュレーションを行う区間1≦k≦Lを指定し、シミュレーション実行命令を出す。
ステップS1では、オペレータがコンソール画面3でモデルパラメータを再設定するかどうかを選択する。そして、モデルパラメータを再設定する場合は次のステップS2に進み、再設定しない場合は終了処理が行われる。
なお、再設定しない場合は、現状のモデルパラメータの状態でプラントシミュレータ4はシミュレーション処理を実行する。すなわち、プラント1の入出力データがプラント1からプラント運転データDB2に逐次書き込まれ、コンソール画面3にはプラント1の出力とプラントシミュレータ4のシミュレーション出力が表示される。
ステップS2では、オペレータがプラント運転データ2に保存されたプロセスデータの中から評価に使用するプロセスデータを選択する。たとえば、プロセスデータとして、温度や流量などを選択する。
ステップS3では、プラントシミュレータ4はパラメータ履歴DB6から履歴パラメータを読み込み、コンソール画面3に表示する。すなわち、オペレータが何らかの方法で変更するモデルパラメータを事前に決定することにより、プラントシミュレータ4はオペレータが任意に設定した過去のパラメータの履歴をパラメータ履歴DB6から抽出する。一方、変更しなかったパラメータは、現行のモデルパラメータと同じ履歴について、オペレータが任意に設定した回数だけパラメータ履歴を読みこむ。
図3はパラメータ履歴DB6に格納されているデータの一例を示す説明図であり、履歴aからfについて、それぞれパラメータが1からm個まであることを示している。パラメータ履歴DB6に保存される履歴データは、このような図3のモデルパラメータの値の組み合わせとして構成されている。そして、各時刻でモデルパラメータの値をチューニングなどにより変更すると、パラメータを変更する度にパラメータ履歴DB6に記録される。
図4は、パラメータ履歴DB6から選択されたモデルパラメータの具体例を示すトレンド画面例図であり、オペレータがパラメータ履歴DB6から任意にパラメータ1、2、n−1、nを選択して変更した場合のそれぞれに対応するモデルパラメータの各履歴aからfの値のトレンドを棒グラフ化して示している。これら図4のトレンド画面例図は、コンソール画面3に表示される。
図4のようなトレンド画面例図により、オペレータは過去に調査したパラメータ値について知ることができ、調査予定のパラメータの推移方向を把握できる。
図2に戻り、ステップS4において、プラントシミュレータ4はパラメータ履歴DB6から読み込まれた各履歴でのモデルパラメータの組み合わせをモデルパラメータとして設定し、それぞれの履歴に対してシミュレーションを実行する。
ステップS5では、適合率計算部7が計算した適合率を表示する。すなわち、適合率計算部7は各履歴aからfにおける適合率を計算し、図5に示すような各履歴aからfの適合率計算結果を棒グラフ化して示したグラフ画面をコンソール画面3に表示する。なお、図5のグラフにおける各履歴aからfの適合率表示の端部に設けられている「○」の記号表示8は、それぞれの履歴についてトレンドを確認したい場合に操作されるトレンド確認ボタンとして機能する。
プラントシミュレータ4は、プラント運転データDB2に保存されているプラント1の入力{us(k)}(1≦s≦q)と、変更前のモデルパラメータセット{θj}(1≦j≦M)に基づきシミュレーションを実行し、そのシミュレーション結果{yi ~(k)}(1≦i≦N)をシミュレーション結果DB5へ保存する。なお、モデルパラメータとは、たとえばプラント1内に反応器が有る場合、この反応器の高さや大きさなどのことをいう。
プロセス運転データDB2に保存されたプラント1の出力{yi(k)}とシミュレーション結果DB5に保存されたシミュレーション結果{yi ~(k)}に基づき、時間の経過にしたがった両者の一致度を、時系列的な適合率{Ai}(1≦i≦N)として適合率計算部7で計算する。
ここで、適合率Aiの計算方法としては、たとえば非特許文献1に記載されている次式などが挙げられる。
Figure 0005278082
図2に戻り、ステップS6では、図5の適合率計算結果グラフ画面でトレンド確認ボタン8が操作された履歴について、コンソール画面3に、図6に示すようなプロセス出力とモデルパラメータ出力のトレンド表示を行う。
なお、トレンド確認ボタン8は複数の履歴について選択できるものであり、図6では履歴e、fを選択してこれら履歴e、fのトレンドを重畳表示する例を示している。
図5に示すように過去に調査したパラメータの適合率をグラフ化することにより、図6に示すように実際のプラント1の出力に対応する任意に選択した履歴のトレンドを一目で把握できる。
図2に戻り、ステップS7では、モデルパラメータの設定変更を行う。
オペレータが所望の応答履歴を図6の画面の履歴窓9に入力して変更ボタン10を押すと、押した時点でのパラメータの組み合わせがプラントシミュレータ4のモデルパラメータとして設定される。また、プラントシミュレータ4は、パラメータ履歴DB6にプラントシミュレータ4に設定されたモデルパラメータの履歴を追加保存する。
そして、一連の処理を終了する。
このように構成することにより、オペレータはパラメータを設定した際のパラメータ初期値を決定できる。
また、任意の時点におけるプロセスの応答を基準にしてパラメータのチューニング中に探索したパラメータをパラメータ履歴のデータベースに記憶することにより、図4のようなトレンド画面から過去に調査したパラメータ値について知ることができ、オペレータは調査予定のパラメータが推移する方向を把握できる。
さらに、図5に示すように過去に調査したパラメータの適合率をグラフ化することにより、図6に示すように実際のプラント1の出力に対応する任意に選択した履歴のトレンドを一目で把握できる。
なお、上記実施例では、石油・石油化学などのプロセス産業で使用されるプロセスシミュレータにおけるパラメータ調整の例について説明したが、本発明は、電子回路や半導体デバイスなどで用いられるシミュレータのパラメータ調整にも有効である。
以上説明したように、本発明によれば、データベースに今まで設定したモデルパラメータの値を履歴として蓄積して過去に設定したモデルパラメータを再設定するとともに、現状のデータに対する各履歴の比較を視覚化することにより、履歴の中から所望のモデルパラメータを探索する労力を大幅に軽減できることからパラメータ設定に要する時間を大幅に短縮でき、効率よくシミュレーションが実行できる各種のシミュレーションシステムを実現できる。
1 プラント
2 プラント運転データDB
3 コンソール画面
4 プラントシミュレータ
5 シミュレーション結果DB
6 パラメータ履歴DB
7 適合率計算部

Claims (6)

  1. 実際のシミュレーション対象に入力されたデータに基づきシミュレーションを実行しながら、前記シミュレーション対象の出力と前記シミュレーションの結果が一致するようにパラメータを調整するシミュレーションシステムにおいて、
    前記シミュレーションの結果を保存するシミュレーション結果データベースと、
    前記シミュレーション時に設定した前記パラメータの履歴を保存するパラメータ履歴データベースと、
    このパラメータ履歴データベースから前記シミュレーション対象の出力値に対応するモデルパラメータについて前記シミュレーションをした結果と前記シミュレーション対象の出力一致度を時系列的に計算する適合率計算部と
    前記モデルパラメータの選択を受け付ける受付手段と、
    前記受付手段により前記モデルパラメータの選択を受け付ける際に、前記適合率計算部における計算結果を表示する表示手段と、
    を有することを特徴とするシミュレーションシステム。
  2. 前記適合率計算部は、前記シミュレーション対象の出力と前記シミュレーションのモデルパラメータの変更前後における前記シミュレーションの結果との適合率の変化量から計算することを特徴とする請求項1記載のシミュレーションシステム。
  3. 前記適合率計算部の結果は、前記履歴について適合率を棒グラフ化して表示されることを特徴とする請求項1または2記載のシミュレーションシステム。
  4. 前記シミュレーション結果は、任意に選択したパラメータ毎に履歴を棒グラフ化して表示されることを特徴とする請求項1記載のシミュレーションシステム。
  5. 前記シミュレーション対象の出力に対応して、任意に選択した履歴がトレンド表示されることを特徴とする請求項1記載のシミュレーションシステム。
  6. 前記シミュレーション対象は、プロセスプラントであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシミュレーションシステム。
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