以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。図1は、実施例1によるMIMO送信装置の構成を示す図である。このMIMO送信装置101は、2つの異なる送信データ系列a,bを、予め設定されたシンボルブロック単位に切り替えることにより、2つの送信アンテナ10−1,10−2からそれぞれ送信するものである。送信アンテナ10−1,10−2は、互いに異なる偏波の信号を出力するものとする。
MIMO送信装置101は、2系統の処理部を備えている。具体的には、送信データ系列aを処理するLDPC(Low Density Parity Check)符号化部1−1、インタリーブ部2−1、マッピング部3−1、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)フレーム構成部4−1、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部5−1、GI(Guard Interval)付加部6−1、直交変調部7−1、D/A変換部8−1及び周波数変換部9−1を備え、送信データ系列bを処理するLDPC符号化部1−2、インタリーブ部2−2、マッピング部3−2、OFDMフレーム構成部4−2、IFFT部5−2、GI付加部6−2、直交変調部7−2、D/A変換部8−2、周波数変換部9−2を備え、さらに、GI付加部6−1,6−2と直交変調部7−1,7−2との間にデータ系列切り替え部11を備えている。OFDM変調については、例えば、ARIB STD−B33「テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システム」の規格が適用される。
LDPC符号化部1−1は、送信データ系列aを入力し、LDPC符号化により誤り訂正を行い、符号化した信号を出力する。インタリーブ部2−1は、LDPC符号化部1−1から符号化された信号を入力し、1本のサブキャリアに割り当てる1ビットまたは複数ビットをインタリーブの1単位としてインタリーブし、インタリーブしたサブキャリア単位の信号を出力する。LDPC符号化部1−2は、送信データ系列bを入力し、LDPC符号化部1−1と同様の処理を行う。また、インタリーブ部2−2は、インタリーブ部2−1と同様の処理を、送信データ系列bについて行う。これにより、LDPC符号化部1−1,1−2により符号化された信号は時間軸方向にそれぞれ分散される。ここでは、説明を簡単にするために、各系統のLDPC符号化部1−1,1−2は同じ符号化器を用い、インタリーブ部2−1,2−2も同じインタリーブパターンを用いるものとする。
マッピング部3−1は、インタリーブ部2−1からインタリーブされたサブキャリア単位の信号を入力し、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)等のキャリア変調のコンスタレーション配置上にマッピングし、マッピングした信号を出力する。マッピング部3−2は、マッピング部3−1と同様の処理を、送信データ系列bについて行う。
OFDMフレーム構成部4−1は、マッピング部3−1からマッピングされた信号を入力し、この信号をデータ信号として扱い、CP(Continual Pilot)、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)、AC(Auxiliary Channel)等の信号をリファレンスあるいは制御信号としてデータ信号内に挿入すると共に、予め設定された周波数に配置してフレームを構成し、OFDM信号として出力する。OFDMフレーム構成部4−2は、OFDMフレーム構成部4−1と同様の処理を、送信データ系列bについて行う。
IFFT部5−1は、OFDMフレーム構成部4−1からフレーム構成されたOFDM信号を入力し、IFFT(逆高速フーリエ変換)を行い、周波数軸データから時間軸データに変換し、時間軸データのOFDM信号を出力する。IFFT部5−2は、IFFT部5−1と同様の処理を、送信データ系列bについて行う。
GI付加部6−1は、IFFT部5−1から時間軸データのOFDM信号を入力し、GI信号を付加する。GI付加部6−2は、GI付加部6−1と同様の処理を、送信データ系列bについて行う。
データ系列切り替え部11は、GI付加部6−1からGI信号が付加された送信データ系列aのOFDM信号を入力し、GI付加部6−2からGI信号が付加された送信データ系列bのOFDM信号を入力する。そして、データ系列切り替え部11は、OFDMフレームの先頭シンボルを基準にして、予め設定されたシンボルブロック単位に、送信データ系列aのOFDM信号と送信データ系列bのOFDM信号との系統を切り替えて、垂直偏波を有する送信アンテナ10−1系統の直交変調部7−1に出力すると共に、水平偏波を有する送信アンテナ10−2系統の直交変調部7−2に出力する。この場合、送信データ系列aのOFDM信号を直交変調部7−1に出力しているときは、送信データ系列bのOFDM信号を直交変調部7−2に出力し、逆に、送信データ系列bのOFDM信号を直交変調部7−1に出力しているときは、送信データ系列aのOFDM信号を直交変調部7−2に出力するように、信号を交互に選択して系統を切り替える。切り替えはデジタル信号処理で行われ、送信アンテナ10−1,10−2から送信される信号には、一時的に無信号となるような不連続な状態が生じないものとする。データ系列切り替え部11による信号切り替え処理の詳細については後述する。
直交変調部7−1は、データ系列切り替え部11から出力された第1のOFDM信号を入力し、ここまで実数と虚数の2つずつの組合せ信号(複素数)として処理されてきたOFDM信号を、同相信号と直交信号に載せて直交化する直交変調を行い、直交変調したOFDM信号を出力する。直交変調部7−2は、直交変調部7−1と同様の処理を、データ系列切り替え部11から出力された第2のOFDM信号について行う。
D/A変換部8−1は、直交変調部7−1から直交変調されたOFDM信号を入力し、デジタル信号をアナログ信号に変換する。周波数変換部9−1は、D/A変換部8−1によりアナログ信号に変換された信号を入力し、入力した信号の周波数を無線周波数に変換する。このようにして処理された信号は、図示しない送信アンテナ10−1を介して垂直偏波の信号として送信される。D/A変換部8−2及び周波数変換部9−2は、それぞれD/A変換部8−1及び周波数変換部9−1と同様の処理を行い、処理された信号は、図示しない送信アンテナ10−2を介して水平偏波の信号として送信される。
このように、MIMO送信装置101は、送信アンテナ10−1,10−2を介して、送信データ系列aの信号と送信データ系列bの信号とを、予め設定されたシンボルブロック単位で交互に送信する。そして、送信アンテナ10−1,10−2から送信された送信データ系列aの信号及び送信データ系列bの信号は、空間領域において多重される。
ここで、送信アンテナ10−1,10−2は、互いに異なる偏波の信号を送信する。例えば、前述したとおり、送信アンテナ10−1が垂直偏波の信号を、送信アンテナ10−2が水平偏波の信号をそれぞれ送信する。送信アンテナ10−1が水平偏波の信号を、送信アンテナ10−2が垂直偏波の信号をそれぞれ送信するようにしてもよい。これにより、互いの干渉を空間領域で事前に減少させることができるから、MIMO受信装置において、IDD方式により送信データ系列a,bを高精度に復号することができる。尚、送信アンテナ10−1,10−2は、互いに等しい偏波の信号を出力するようにしてもよい。
(データ系列切り替え部の処理)
次に、データ系列切り替え部11の処理について詳細に説明する。MIMO受信装置は、空間領域において多重された信号(MIMO送信装置101からの送信データ系列aの信号及び送信データ系列bの信号が多重された信号)を受信する。そして、MIMO受信装置は、受信した多重信号を送信データ系列a及び送信データ系列bに復調するための処理として、送信データ系列a及び送信データ系列bの分離及び検出処理のために伝搬チャネルを推定する。伝搬チャネルの推定は、通常数シンボルを1ブロック(以下、「伝搬チャネル推定用シンボルブロック」という。)として、1伝搬チャネル推定用シンボルブロック単位に行われ、伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間内では伝搬チャネルの変動または不連続性がないことが前提条件となる。
したがって、データ系列切り替え部11では、少なくとも伝搬チャネル推定用シンボルブロックより短い期間で、送信データ系列a,bの切り替えは行わないものとする。データ系列切り替え部11は、伝搬チャネル推定用シンボルブロック(この期間をBとする。)の整数倍(K)の期間を1周期とした一定のタイミングで切り替える。すなわち、データ系列切り替え部11は、OFDMフレームの先頭シンボルを基準にして、B×Kのシンボルブロック期間の周期で、直交変調部7−1への送信データ系列aの出力、及び直交変調部7−2への送信データ系列bの出力と、直交変調部7−1への送信データ系列bの出力、及び直交変調部7−2への送信データ系列aの出力とを切り替える。
図2は、K=1のときの切り替え処理を説明する図であり、MIMO受信装置において、伝搬チャネルを推定するために必要な伝搬チャネル推定用シンボルブロックが2シンボルであり、MIMO送信装置101のデータ系列切り替え部11において、送信データ系列a,bの切り替え周期を、伝搬チャネル推定用シンボルブロックと同じ2シンボルとした場合、すなわち、B=2,K=1とした場合を示している。
図2において、Ttはシンボルブロックの切り替え単位(切り替え周期)を示しており、tはシンボルブロックの番号である。また、Sn_iはシンボルを示している。nは、送信データ系列aのときに1、送信データ系列bのときに2である。iはシンボル番号である。
データ系列切り替え部11は、T0の期間において、GI付加部6−1から入力した送信データ系列aにおけるシンボル番号0の信号S1_0及びシンボル番号1の信号S1_1を直交変調部7−1に出力する。また、GI付加部6−2から入力した送信データ系列bにおけるシンボル番号0の信号S2_0及びシンボル番号1の信号S2_1を直交変調部7−2に出力する。信号S1_0,S1_1は送信アンテナ10−1から送信され、信号S2_0,S2_1は送信アンテナ10−2から送信される。
そして、データ系列切り替え部11は、T1の期間において、GI付加部6−1から入力した送信データ系列aにおけるシンボル番号2の信号S1_2及びシンボル番号3の信号S1_3を直交変調部7−2に出力する。また、GI付加部6−2から入力した送信データ系列bにおけるシンボル番号2の信号S2_2及びシンボル番号3の信号S2_3を直交変調部7−1に出力する。信号S1_2,S1_3は送信アンテナ10−2から送信され、信号S2_2,S2_3は送信アンテナ10−1から送信される。
このように、データ系列切り替え部11は、B×K=2×1=2シンボルのシンボルブロック毎に、GI付加部6−1,6−2から入力した送信データ系列a,bを切り替えて、直交変調部7−1,7−2にそれぞれ出力する。そして、2シンボルのシンボルブロック毎に切り替えられた送信データ系列a,bの信号が、送信アンテナ10−1,10−2から交互に送信される。
図3は、K=2のときの切り替え処理を説明する図であり、MIMO受信装置において伝搬チャネル推定用シンボルブロックが2シンボルであり、MIMO送信装置101のデータ系列切り替え部11において、送信データ系列a,bの切り替え周期を、伝搬チャネル推定用シンボルブロックの2倍の周期である4シンボルとした場合、すなわち、B=2,K=2とした場合を示している。Tt,Sn_iは図2と同様である。
データ系列切り替え部11は、T0の期間において、GI付加部6−1から入力した送信データ系列aにおけるシンボル番号0の信号S1_0、シンボル番号1の信号S1_1、シンボル番号2の信号S1_2及びシンボル番号3の信号S1_3を直交変調部7−1に出力する。また、GI付加部6−2から入力した送信データ系列bにおけるシンボル番号0の信号S2_0、シンボル番号1の信号S2_1、シンボル番号2の信号S2_2及びシンボル番号3の信号S2_3を直交変調部7−2に出力する。信号S1_0,S1_1,S1_2,S1_3は送信アンテナ10−1から送信され、信号S2_0,S2_1,S2_2,S2_3は送信アンテナ10−2から送信される。
そして、データ系列切り替え部11は、T1の期間において、GI付加部6−1から入力した送信データ系列aにおけるシンボル番号4の信号S1_4、シンボル番号5の信号S1_5、シンボル番号6の信号S1_6及びシンボル番号7の信号S1_7を直交変調部7−2に出力する。また、GI付加部6−2から入力した送信データ系列bにおけるシンボル番号4の信号S2_4、シンボル番号5の信号S2_5、シンボル番号6の信号S2_6及びシンボル番号7の信号S2_7を直交変調部7−1に出力する。信号S1_4,S1_5,S1_6,S1_7は送信アンテナ10−2から送信され、信号S2_4,S2_5,S2_6,S2_7は送信アンテナ10−1から送信される。
このように、データ系列切り替え部11は、B×K=2×2=4シンボルのシンボルブロック毎に、GI付加部6−1,6−2から入力した送信データ系列a,bを切り替えて、直交変調部7−1,7−2にそれぞれ出力する。そして、4シンボルのシンボルブロック毎に切り替えられた送信データ系列a,bの信号が、送信アンテナ10−1,10−2から交互に送信される。
尚、MIMO受信装置は、MIMO送信装置101の送信アンテナ10−1,10−2から交互に送信された送信データ系列a,bを受信し、OFDMフレームの先頭シンボルを基準にして、シンボルブロック単位で、チャネル推定、ウェイト演算、信号分離及び検出の各処理を行う。
以上のように、実施例1によるMIMO送信装置101によれば、データ系列切り替え部11が、伝搬チャネルの変動または不連続性がない伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間を整数倍したシンボルブロックの期間(B×K)の周期で、入力した送信データ系列a,bを切り替えるようにした。そして、送信アンテナ10−1は、送信データ系列a,bの信号をB×Kのシンボルブロックの周期で交互に送信し、送信アンテナ10−2は、送信データ系列b,aの信号をB×Kのシンボルブロックの周期で交互に送信する。これにより、送信アンテナ10−1から交互に送信された送信データ系列a,bの信号と、送信アンテナ10−2から交互に送信された送信データ系列b,aの信号とが空間領域において多重された信号となる。MIMO受信装置は、このような多重信号を受信し、誤り訂正後の信号を用いてより干渉レプリカを生成し、その干渉レプリカによるキャンセルと誤り訂正の復号とを並列に繰り返して行うIDD方式によって、送信データ系列a,bを分離及び検出する。
これにより、送信データ系列a,bを送信するMIMO送信装置101における送信アンテナ10−1,10−2間の出力電力の違い、送信アンテナ10−1,10−2自体の特性の違い、または伝搬経路の違いがあったとしても、送信アンテナ10−1から送信データ系列a,bの信号が交互に送信され、送信アンテナ10−2から送信データ系列b,aの信号が交互に送信されるから、これらの違いは、送信データ系列aの信号及び送信データ系列bの信号に対して同じように反映されることになる。つまり、MIMO受信装置が受信する送信データ系列aの信号と送信データ系列bの信号との間で、伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間を整数倍したシンボルブロックの期間、すなわち、送信データ系列a,bの切り替え期間において、その受信品質の差は存在するが、送信データ系列a, bの切り替え期間に比べて十分長い期間をLDPC符号の1ブロックとする場合、この1ブロックの期間の平均的な受信品質の差をなくすことができる。したがって、MIMO受信装置においてIDD方式により分離及び検出される送信データ系列aと送信データ系列bとの間の受信品質を等しくすることができ、IDD方式の復号性能を向上させることができる。
すなわち、実施例1によるMIMO送信装置101によれば、複数の送信アンテナ10−1,10−2を用いて空間多重伝送を行う場合、MIMO送信装置101の出力電力、アンテナ特性及び伝搬経路の違いがある場合でも、MIMO受信装置において分離及び検出される送信データ系列a,bの受信品質、すなわち平均BER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を等しくすることができ、IDD方式の復号性能を向上させることができる。また、送信アンテナ10−1,10−2から送信される送信データ系列a,bの伝搬経路が高頻度に切り替えられるから、空間インタリーブ効果により誤り訂正の符号化利得を向上させることができる。さらに、偏波の異なるアンテナを用いるMIMO方式に適用することで送信データ系列a,bにおける伝搬経路間の相関を下げ、送信データ系列a,bの分離及び検出性能を一層向上させることができる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。図4は、実施例2によるMIMO送信装置の構成を示す図である。このMIMO送信装置102は、2つの異なる送信データ系列a,bの位相を、予め設定されたシンボルブロック単位にシフトして合成した後、2つの送信アンテナ12−1,12−2からそれぞれ送信するものである。2つの送信アンテナ12−1,12−2を用いてビームパターンを形成するため、送信アンテナ12−1,12−2は、互いに等しい偏波の信号を出力するものとする。
MIMO送信装置102は、2系統の処理部を備えている。具体的には、送信データ系列aを処理するLDPC符号化部1−1、インタリーブ部2−1、マッピング部3−1、OFDMフレーム構成部4−1、IFFT部5−1、GI付加部6−1、直交変調部7−1、D/A変換部8−1及び周波数変換部9−1を備え、送信データ系列bを処理するLDPC符号化部1−2、インタリーブ部2−2、マッピング部3−2、OFDMフレーム構成部4−2、IFFT部5−2、GI付加部6−2、直交変調部7−2、D/A変換部8−2、周波数変換部9−2を備え、さらに、直交変調部7−1,7−2とD/A変換部8−1,8−2との間に送信ビームパターン生成部13を備えている。
実施例1のMIMO送信装置101と、実施例2のMIMO送信装置102とを比較すると、両装置は、LDPC符号化部1−1,1−2、インタリーブ部2−1,2−2、・・・及び周波数変換部9−1,9−2を備えている点で同一である。これに対し、実施例2のMIMO送信装置102は、実施例1のデータ系列切り替え部11の代わりに送信ビームパターン生成部13を備えている点で相違する。また、実施例1のデータ系列切り替え部11は、GI付加部6−1,6−2と直交変調部7−1,7−2との間に設けられているのに対し、実施例2の送信ビームパターン生成部13は、直交変調部7−1,7−2とD/A変換部8−1,8−2との間に設けられている点で相違する。
LDPC符号化部1−1,1−2からGI付加部6−1,6−2までは、実施例1と同様であるから、ここでは説明を省略する。直交変調部7−1は、GI付加部6−1からGI信号が付加された送信データ系列aのOFDM信号を入力し、ここまで実数と虚数の2つずつの組合せ信号(複素数)として処理されてきたOFDM信号を、同相信号と直交信号に載せて直交化する直交変調を行い、直交変調したOFDM信号を出力する。直交変調部7−2は、直交変調部7−1と同様の処理を、送信データ系列bのOFDM信号について行う。
送信ビームパターン生成部13は、直交変調部7−1から直交変調された送信データ系列aのOFDM信号を入力し、直交変調部7−2から直交変調された送信データ系列bのOFDM信号を入力する。そして、送信ビームパターン生成部13は、予め設定されたシンボルブロック単位に、送信データ系列aのOFDM信号における位相を異なる位相に切り替えると同時に、送信データ系列bのOFDM信号における位相を異なる位相に切り替える。そして、送信データ系列aのOFDM信号と異なる位相に切り替えた送信データ系列bのOFDM信号とを合成し、送信データ系列bのOFDM信号と異なる位相に切り替えた送信データ系列aのOFDM信号とを合成し、前者の送信データ系列a,bの合成信号を、送信アンテナ12−1系統のD/A変換部8−1に出力し、後者の送信データ系列b,aの合成信号を、送信アンテナ12−2系統のD/A変換部8−2に出力する。この場合、同じシンボルブロックの期間において、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列aのビームパターンと送信データ系列bのビームパターンとの間で、互いに重なりが少なくなるように、切り替え前後の位相が設定されているものとする。互いに重なりが少ないビームパターンの説明については後述する。位相の切り替えはデジタル信号処理で行われ、送信アンテナ12−1,12−2から送信される信号には、一時的に無信号となるような不連続な状態が生じないものとする。
送信ビームパターン生成部13は、位相制御器131−1,131−2及び加算器132−1,132−2を備えている。送信ビームパターン生成部13は、入力した送信データ系列aのOFDM信号を複製し、一方のOFDM信号を、送信アンテナ12−1系統の加算器132−1に出力し、他方のOFDM信号を、送信アンテナ12−2系統の位相制御器131−2に出力する。また、入力した送信データ系列bのOFDM信号を複製し、一方のOFDM信号を、送信アンテナ12−2系統の加算器132−2に出力し、他方のOFDM信号を、送信アンテナ12−1系統の位相制御器131−1に出力する。
位相制御器131−1は、送信データ系列bのOFDM信号を入力し、その位相をφ2だけシフトする。位相制御器131−2は、送信データ系列aのOFDM信号を入力し、その位相をφ1だけシフトする。ここで、位相シフト量φ1,φ2は予め設定された値である。例えば、φ1に0及び3.13が設定され、φ2に3.13及び0が設定されている場合、あるシンボルブロックの期間において、位相制御器131−1は、送信データ系列bのOFDM信号の位相をφ2=3.13だけシフトし、位相制御器131−2は、送信データ系列aのOFDM信号の位相をφ1=0だけシフトする(シフトしない)。そして、次のシンボルブロックの期間において、位相制御器131−1は、送信データ系列bのOFDM信号の位相をφ2=0だけシフトし(シフトせず)、位相制御器131−2は、送信データ系列aのOFDM信号の位相をφ1=3.13だけシフトする。このようなシンボルブロックの期間は交互に繰り返される。
加算器132−1は、送信データ系列aのOFDM信号と、位相制御器131−1からφ2だけ位相シフトした送信データ系列bのOFDM信号とをそれぞれ入力し、これらのOFDM信号を加算して合成し、合成信号としてD/A変換部8−1に出力する。合成信号S1は、以下の式で表すことができる。
S1=a+b・exp(jφ2)
また、加算器132−2は、送信データ系列bのOFDM信号と、位相制御器131−2からφ1だけ位相シフトした送信データ系列aのOFDM信号とをそれぞれ入力し、これらのOFDM信号を加算して合成し、合成信号をD/A変換部8−2に出力する。合成信号S2は、以下の式で表すことができる。
S2=b+a・exp(jφ1)
D/A変換部8−1は、送信ビームパターン生成部13から、合成信号S1を入力し、デジタル信号をアナログ信号に変換する。周波数変換部9−1は、D/A変換部8−1によりアナログ信号に変換された合成信号S1を入力し、合成信号S1の周波数を無線周波数に変換する。このようにして処理された信号は、図示しない送信アンテナ12−1を介して送信される。D/A変換部8−2及び周波数変換部9−2は、それぞれD/A変換部8−1及び周波数変換部9−1と同様の処理を行い、処理された信号は、図示しない送信アンテナ12−2を介して送信される。
このように、MIMO送信装置102は、送信アンテナ12−1,12−2を介して、送信データ系列aとφ2だけ位相シフトした送信データ系列bとの間の合成信号S1、及び、送信データ系列bとφ1だけ位相シフトした送信データ系列aとの間の合成信号S2を送信する。この場合、位相シフト量φ1,φ2は、送信アンテナ12−1,12−2において、送信データ系列aのビームパターンと送信データ系列bのビームパターンとの間の重なりが少なくなるように、シンボルブロックの期間毎に、予め設定された第1の位相シフト量と第2の位相シフト量とが交互に切り替えられる。そして、送信アンテナ12−1,12−2から送信された合成信号S1,S2は、空間領域において多重される。
(送信ビームパターン生成部における位相制御器の処理)
次に、送信ビームパターン生成部13における位相制御器131−1,131−2の処理について詳細に説明する。MIMO受信装置では、実施例1にて説明したとおり、伝搬チャネルの推定が伝搬チャネル推定用シンボルブロック単位に行われ、伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間内では伝搬チャネルの変動または不連続性がないことが前提条件となる。
したがって、位相制御器131−1,131−2では、少なくとも伝搬チャネル推定用シンボルブロックより短い期間で、位相シフト量φ1の切り替え及び位相シフト量φ2の切り替えは行わないものとする。位相制御器131−1,131−2は、伝搬チャネル推定用シンボルブロック(この期間をBとする。)の整数倍(K)の期間を1周期とした一定のタイミングで位相シフト量を切り替える。すなわち、位相制御器131−1は、B×Kのシンボルブロック期間の周期で、位相シフト量φ2を異なる位相シフト量に切り替える。また、位相制御器131−2も、B×Kのシンボルブロック期間の周期で、位相制御器131−1と同じタイミングで、位相シフト量φ1を異なる位相シフト量に切り替える。
ここで、具体的な数値を用いて説明する。例えば、送信アンテナ12−1と送信アンテナ12−2との間隔dを無線周波数の1.5倍(d=1.5λ(λは波長))とし、あるシンボルブロック期間T0では、位相シフト量(φ1,φ2)=(0,3.13)(単位:ラジアン)が設定されるものとする。
図5(1)は、d=1.5λ、(φ1,φ2)=(0,3.13)のときの送信ビームパターンの組み合わせ例を説明する図である。円周に沿って付した数値(0,30,60,・・・,330)は、送信される信号の水平面内における方向(方位)を示しており、円の中心に向かって付した数値(0,−10,−20,−30)は、最大を0dBとした指向性利得、すなわち、アンテナ利得の大きさを示している。円以外の実線は、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列aのビームパターンAを示しており、円及び直線以外の破線は、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列bのビームパターンBを示している。
仮に、送信データ系列aのビームパターンAと送信データ系列bのビームパターンBとが同じである場合、伝搬チャネルの違いがなくなり、MIMO受信装置は、受信した多重信号から送信データ系列a,bを分離及び検出することができない。このため、送信データ系列aのビームパターンAと送信データ系列bのビームパターンBとは、互いにできるだけ重ならないように予め選択されている必要がある。つまり、MIMO送信装置102は、送信ビームパターン生成部13の位相制御器131−1,131−2において、送信アンテナ12−1,12−2が互いにできるだけ重なりの少ないビームパターンA及びビームパターンBで送信データ系列a,bを送信することができるように、位相シフト量φ1,φ2を予め設定しておく必要がある。
そこで、送信データ系列aのビームパターンにおける各方向の指向性利得と、送信データ系列bのビームパターンにおける各方向の指向性利得との間の差を、全方位に渡って積分して求め、その値が最も大きくなるように、ビームパターンの組み合わせが選択されるものとする。いま、送信データ系列aにおいて、位相シフト量がφ
1のときのビームパターンをG
A(θ,φ
1)とする。また、送信データ系列bにおいて、位相シフト量がφ
2のときのビームパターンをG
B(θ,φ
2)とする。互いに重なりが最も少ないそれぞれのビームパターンを生成する位相シフト量(φ
1,φ
2)の組み合わせは次式で表される。
ただし、
は、関数f(x)を最大にする変数xの値を出力する関数とする。
このように、MIMO送信装置102において、送信ビームパターン生成部13の位相制御器131−1,131−2が使用する位相シフト量φ1,φ2は、前述の(1)式に基づいて予め設定される。つまり、予め多数の位相シフト量に対する送信データ系列aのビームパターン及び送信データ系列bのビームパターンが測定され、多数のビームパターンの中から前述の(1)式を満足する、重なりが最も少ないビームパーンが選定され、そのときの位相シフト量φ1,φ2が用いられる。このようにして設定された位相シフト量は、d=1.5λの例として、図5(1)に示すように、(φ1,φ2)=(0,3.13)であり、後述する図5(2)に示すように、(φ1,φ2)=(3.13,0)である。すなわち、ビームパターンA,Bのときに互いの重なりが最も少なくなるから、そのときの位相シフト量が用いられる。
また、位相制御器131−1,131−2において、例えば、送信アンテナ12−1と送信アンテナ12−2との間隔dを無線周波数の1.5倍(d=1.5λ)とし、あるシンボルブロック期間T1では、位相シフト量(φ1,φ2)=(3.13,0)が設定されるものとする。
図5(2)は、d=1.5λ、(φ1,φ2)=(3.13,0)のときの送信ビームパターンの組み合わせ例を説明する図であり、図5(1)におけるφ1,φ2の値を切り替えたときの図である。円以外の実線は、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列aのビームパターンBを示しており、図5(1)に示した送信データ系列bのビームパターンB(破線)と同じである。また、円及び直線以外の破線は、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列bのビームパターンAを示しており、図5(1)に示した送信データ系列aのビームパターンA(実線)と同じである。
このように、MIMO送信装置102は、あるシンボルブロック期間T0において、送信ビームパターン生成部13の位相制御器131−1が送信データ系列bの位相をシフトさせず、位相制御器131−2が送信データ系列aの位相を3.13シフトさせ、送信アンテナ12−1,12−2から、送信データ系列aの信号を図5(1)に示した実線のビームパターンAで送信し、送信データ系列bの信号を図5(1)に示した破線のビームパターンBで送信する。そして、MIMO送信装置102は、次のシンボルブロック期間T1になると、位相制御器131−1,131−2が異なる位相にそれぞれ切り替える。すなわち、MIMO送信装置102は、あるシンボルブロック期間T1において、位相制御器131−1が送信データ系列bの位相を3.13シフトさせ、位相制御器131−2が送信データ系列aの位相をシフトさせず、送信アンテナ12−1,12−2から、送信データ系列aの信号を図5(2)に示した実線のビームパターンBで送信し、送信データ系列bの信号を図5(2)に示した破線のビームパターンAで送信する。そして、MIMO送信装置102は、図5(1)(2)に示したビームパターンA,Bで送信するように、位相制御器131−1において、予め設定された2つの位相シフト量(0及び3.13)を交互に切り替え、それと同じタイミングで、位相制御器131−2において、予め設定された2つの位相シフト量(3.13及び0)を交互に切り替える。
図6は、位相制御器131−1,131−2において、K=1のときの切り替え処理(伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間で、位相シフト量φ1,φ2を異なる位相シフト量に切り替える処理)を説明する図である。具体的には、図6は、MIMO受信装置において、伝搬チャネル推定用シンボルブロックが2シンボルであり、MIMO送信装置102の位相制御器131−1,131−2において、位相シフト量φ1,φ2を異なる位相シフト量に切り替える周期を、伝搬チャネル推定用シンボルブロックと同じ2シンボルとした場合を示している。
図6において、Ttはシンボルブロックの切り替え単位(切り替え周期)を示しており、tはその番号である。また、Sn_iはシンボルを示している。nは、送信データ系列aのときに1、送信データ系列bのときに2である。iはシンボル番号である。
位相制御器131−1は、T0の期間において、直交変調部7−2から入力した送信データ系列bにおけるシンボル番号0の信号S2_0及びシンボル番号1の信号S2_1に対し、その位相をφ2(=3.13)だけシフトする。そして、加算器132−1は、送信データ系列aにおけるシンボル番号0の信号S1_0及びシンボル番号1の信号S1_1と、φ2(=3.13)だけ位相がシフトした送信データ系列bにおけるシンボル番号0の信号S2_0及びシンボル番号1の信号S2_1とを合成する。また、位相制御器131−2は、T0の期間において、直交変調部7−1から入力した送信データ系列aにおけるシンボル番号0の信号S1_0及びシンボル番号1の信号S1_1に対し、その位相をφ1(=0)だけシフトする(シフトしない)。そして、加算器132−2は、送信データ系列bにおけるシンボル番号0の信号S2_0及びシンボル番号1の信号S2_1と、φ1(=0)だけ位相がシフトした(シフトしていない)送信データ系列aにおけるシンボル番号0の信号S1_0及びシンボル番号1の信号S1_1とを合成する。これにより、送信データ系列aにおけるシンボル番号0の信号S1_0及びシンボル番号1の信号S1_1は、図5(1)の実線で示したビームパターンAで送信され、送信データ系列bにおけるシンボル番号0の信号S2_0及びシンボル番号1の信号S2_1は、図5(1)の破線で示したビームパターンBで送信される。
そして、位相制御器131−1は、T1の期間において、直交変調部7−2から入力した送信データ系列bにおけるシンボル番号2の信号S2_2及びシンボル番号3の信号S2_3に対し、その位相をφ2(=0)だけシフトする(シフトしない)。そして、加算器132−1は、送信データ系列aにおけるシンボル番号2の信号S1_2及びシンボル番号3の信号S1_3と、φ1(=0)だけ位相がシフトした(シフトしていない)送信データ系列bにおけるシンボル番号2の信号S2_2及びシンボル番号3の信号S2_3とを合成する。また、位相制御器131−2は、T1の期間において、直交変調部7−1から入力した送信データ系列aにおけるシンボル番号2の信号S1_2及びシンボル番号3の信号S1_3に対し、その位相をφ1(=3.13)だけシフトする。そして、加算器132−2は、送信データ系列bにおけるシンボル番号2の信号S2_2及びシンボル番号3の信号S2_3と、φ1(=3.13)だけ位相がシフトした送信データ系列aにおけるシンボル番号2の信号S1_2及びシンボル番号3の信号S1_3とを合成する。これにより、送信データ系列aにおけるシンボル番号2の信号S1_2及びシンボル番号3の信号S1_3は、図5(2)の実線で示したビームパターンBで送信され、送信データ系列bにおけるシンボル番号2の信号S2_2及びシンボル番号3の信号S2_3は、図5(2)の破線で示したビームパターンAで送信される。T2の期間以降のシンボルブロック期間については、図5(1)(2)に示すようなビームパターンが繰り返される。
このように、位相制御器131−1は、B×K=2×1=2シンボルのシンボルブロック毎に、送信データ系列bの位相をφ2(=3.13,0)に交互に切り替える。また、位相制御器131−2は、B×K=2×1=2シンボルのシンボルブロック毎に、送信データ系列aの位相をφ1(=0,3.13)に交互に切り替える。
尚、MIMO受信装置は、MIMO送信装置102の送信アンテナ12−1,12−2から送信された合成信号S1,S2を受信し、OFDMフレームの先頭シンボルを基準にして、シンボルブロック単位で、チャネル推定、ウェイト演算、信号分離及び検出の各処理を行う。
以上のように、実施例2によるMIMO送信装置102によれば、送信ビームパターン生成部13が、伝搬チャネルの変動または不連続性がない伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間を整数倍したシンボルブロック期間(B×K)の周期で、入力した送信データ系列a,bの位相をシフトし、送信データ系列aと位相シフトした送信データ系列bとを合成すると共に、送信データ系列bと位相シフトした送信データ系列aとを合成するようにした。そして、送信データ系列a,bの位相シフト量をそれぞれ切り替えることにより、送信データ系列aのビームパターンと送信データ系列bのビームパターンとの重なりが最少になるように、合成した信号(合成信号S1,S2)を送信アンテナ12−1,12−2から送信するようにした。これにより、送信アンテナ12−1,12−2からそれぞれ送信された合成信号S1,S2が空間領域において多重された信号となる。MIMO受信装置は、このような多重信号を受信し、誤り訂正後の信号を用いて干渉レプリカを生成し、その干渉レプリカによる干渉成分のキャンセルと誤り訂正の復号とを並列に繰り返して行うIDD方式によって、送信データ系列a,bを分離及び検出する。
これにより、合成信号S1,S2を送信するMIMO送信装置102の送信アンテナ12−1,12−2間の出力電力の違い、送信アンテナ12−1,12−2自体の特性の違い、または伝搬経路の違いがあったとしても、送信アンテナ12−1,12−2から合成信号S1,S2が送信され、送信データ系列a,bの重なりが最少のビームパターンに交互に切り替えられるから、これらの違いは、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列aの信号及び送信データ系列bの信号に対して同じように反映されることになる。つまり、MIMO受信装置が受信する送信データ系列aの信号と送信データ系列bの信号との間で、伝搬チャネル推定用シンボルブロックの期間を整数倍したシンボルブロックの期間、すなわち、送信データ系列a,bの位相をシフトする期間において、その受信品質の差は存在するが、送信データ系列a, bの位相をシフトする期間に比べて十分長い期間をLDPC符号の1ブロックとする場合、この1ブロックの期間の平均的な受信品質の差をなくすことができる。また、図5(1)(2)に示したように、送信データ系列aの指向性利得が大きい値となる方向と送信データ系列bの指向性利得が大きい値となる方向とが異なって、送信データ系列aの放射方向と送信データ系列bの放射方向とが異なるから、MIMO受信装置の受信アンテナである受信点まで到達する送信データ系列a,bの伝搬経路の違いをもたらすことになる。つまり、送信データ系列a,bにおける伝搬経路の相関を小さくすることができる。したがって、MIMO受信装置においてIDD方式による分離及び検出を容易にし、IDD方式の復号性能を向上させることができる。
すなわち、実施例2によるMIMO送信装置102によれば、複数の送信アンテナ12−1,12−2を用いて空間多重伝送を行う場合、送信データ系列a,bに対応する出力電力、アンテナ特性及び伝搬経路の違いがある場合でも、MIMO受信装置において分離及び検出される送信データ系列a,bの受信品質、すなわち平均BERを等しくすることができ、IDD方式の復号性能を向上させることができる。また、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列a,bの伝搬経路が高頻度に切り替えられるから、空間インタリーブ効果により誤り訂正の符号化利得を向上させることができる。さらに、互いにできるだけ重なりの少ないビームパターンで送信データ系列a,bを送信することで、送信データ系列a,bにおける伝搬経路間の相関が低下するから、送信データ系列a,bの分離及び検出性能を一層向上させることができる。
すなわち、実施例2によるMIMO送信装置102によれば、複数の送信アンテナ12−1,12−2を用いて空間多重伝送を行う場合、送信データ系列a,bに対応する出力電力、アンテナ特性及び伝搬経路の違いがある場合でも、MIMO受信装置において分離及び検出される送信データ系列a,bの受信品質、すなわちBERを等しくすることができ、IDD方式の復号性能を向上させることができる。また、送信アンテナ12−1,12−2から送信される送信データ系列a,bの伝搬経路が高頻度に切り替えられるから、インタリーブ効果により誤り訂正の符号化利得を向上させることができる。さらに、送信データ系列a,bにおける伝搬経路間の相関が低下するから、送信データ系列a,bの分離及び検出性能を一層向上させることができる。
尚、ここでは、2つのビームパターンA,Bを切り替える手法について具体例を挙げて説明したが、4つのビームパターンを切り替えるようにしてもよい。例えば、ビームパターンA,B,C,Dを切り替える場合、送信ビームパターン生成部13の位相制御器131−1,131−2において、それぞれのビームパターンに対応する位相シフト量p,q,r,sを予め設定しておく。そして、T0の期間において、位相制御器131−1が送信データ系列bの位相シフト量qを用いて処理を行い、位相制御器131−2が送信データ系列aの位相シフト量pを用いて処理を行い、送信データ系列aをビームパターンAで送信し、送信データ系列bをビームパターンBで送信する。そして、T1の期間において、位相制御器131−1が送信データ系列bの位相シフト量pを用いて処理を行い、位相制御器131−2が送信データ系列aの位相シフト量qを用いて処理を行い、送信データ系列aをビームパターンBで送信し、送信データ系列bをビームパターンAで送信する。
そして、T2の期間において、位相制御器131−1が送信データ系列bの位相シフト量sを用いて処理を行い、位相制御器131−2が送信データ系列aの位相シフト量rを用いて処理を行い、送信データ系列aをビームパターンCで送信し、送信データ系列bをビームパターンDで送信する。そして、T3の期間において、位相制御器131−1が送信データ系列bの位相シフト量rを用いて処理を行い、位相制御器131−2が送信データ系列aの位相シフト量sを用いて処理を行い、送信データ系列aをビームパターンDで送信し、送信データ系列bをビームパターンCで送信する。すなわち、T0〜T3期間において、送信データ系列aのビームパターン及び送信データ系列bのビームパターンを、(A,B)→(B,A)→(C,D)→(D,C)に切り替える。そして、これらの順番を繰り返す。
また、MIMO送信装置102は、最初に、2つのビームパターンの切り替えを行う処理を行い、手動にてまたは所定の時間後に自動的に、4つのビームパターンの切り替えを行う処理に変更するようにしてもよい。具体的には、送信ビームパターン生成部13の位相制御器131−1,131−2は、切り替えを行う位相シフト量φ1として使用する値の数を、2から4に変更し、位相シフト量φ2として使用する値の数も、2から4に変更する。
(実験結果)
図7は、実際の市街地において移動伝送を行った場合の野外実験結果を示す図である。図7(1)は、水平面内無指向性の各送信アンテナ12−1,12−2からそれぞれの送信データ系列a,bを一様に送信した場合の実験結果、すなわち、位相シフトを行わず、ビームパターンの切り替えを行わない場合の実験結果である。図7(2)は、MIMO送信装置102において実施例2により位相シフトを行い、ビームパターンの切り替えを行った場合の実験結果である。縦軸が、MIMO受信装置において測定した平均BERであり、横軸が時間である。
図7(1)から、ビームパターンの切り替えを行わない場合は、送信データ系列a,b間に受信品質の差が生じていることがわかる。一方、図7(2)から、実施例2によりビームパターンの切り替えを行う場合は、移動環境であっても送信データ系列a,b間に受信品質の差はなく、常に等しい受信品質が保たれていることがわかる。
図8は、LDPC符号及びMMSEアルゴリズムを用いたIDD方式の実験結果を比較する図である。図8(1)は、時間インタリーブの処理がなく、ビームパターンの切り替えも行わない場合の実験結果である。図8(2)は、本出願の出願時に未公開の特許出願(特願2008−203529号公報)に記載された時間インタリーブの処理があり、ビームパターンの切り替えを行わない場合の実験結果である。図8(3)は、前記時間インタリーブの処理があり、MIMO送信装置102において実施例2によるビームパターンの切り替えを行った場合の実験結果である。縦軸が、MIMO受信装置において測定したBERであり、横軸がサンプルフレームの番号である。また、バツ印は、MIMO受信装置において、MMSEの空間フィルタリングアルゴリズムを用いてウェイトベクトルを算出し、このウェイトベクトルを用いて送信データ系列a,bを分離した後のBERであって、LDPCによる誤り訂正がされていない状態のBERを示している。三角印は、ウェイトベクトルを用いて送信データ系列a,bを分離し、LDPCによる誤り訂正を1回行った後のBERを示している。丸印は、ウェイトベクトルを用いて送信データ系列a,bを分離し、LDPCによる誤り訂正を3回行った後のBERを示している。
図8(3)から、時間インタリーブの処理があり、実施例2によるビームパターンの切り替えを行った場合は、図8(2)に比べ、BERが改善される方向(下方向)に丸印が分布していることがわかる。つまり、LDPCによる誤り訂正を1回行った後のBERが2×10−3から2×10−2までのサンプルだけを抽出し、これらのサンプルがIDD方式によってどの程度改善されるかに着目すると、図8(3)が最も改善効果が得られている。
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施例1,2では、2つの送信データ系列a,bに対して2系統の処理部により2つの送信アンテナ10−1,10−2または送信アンテナ12−1,12−2から信号を送信するようにしたが、本発明は、送信データ系列、処理系統、送信アンテナの数を限定するものではない。